特許第6194617号(P6194617)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6194617
(24)【登録日】2017年8月25日
(45)【発行日】2017年9月13日
(54)【発明の名称】積層フィルムおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/40 20060101AFI20170904BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20170904BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20170904BHJP
   B05D 7/04 20060101ALI20170904BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20170904BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20170904BHJP
   C08K 5/3477 20060101ALI20170904BHJP
   C08K 5/29 20060101ALI20170904BHJP
   C08J 7/04 20060101ALI20170904BHJP
   C08G 18/75 20060101ALI20170904BHJP
   C08G 63/91 20060101ALI20170904BHJP
【FI】
   B32B27/40
   B32B27/00 M
   B05D7/24 302T
   B05D7/04
   C08L75/04
   C08L67/00
   C08K5/3477
   C08K5/29
   C08J7/04 E
   C08G18/75
   C08G63/91
【請求項の数】8
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2013-83607(P2013-83607)
(22)【出願日】2013年4月12日
(65)【公開番号】特開2013-240993(P2013-240993A)
(43)【公開日】2013年12月5日
【審査請求日】2016年4月5日
(31)【優先権主張番号】特願2012-97299(P2012-97299)
(32)【優先日】2012年4月23日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】太田 一善
(72)【発明者】
【氏名】阿部 悠
(72)【発明者】
【氏名】高田 育
【審査官】 中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−153290(JP,A)
【文献】 特開2006−301572(JP,A)
【文献】 特開2011−140124(JP,A)
【文献】 特開平06−255056(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00− 43/00
C08J 7/04− 7/06
B05D 1/00− 7/26
C08G 18/00− 18/87
63/00− 64/42
71/00− 71/04
C08K 3/00− 13/08
C08L 1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも一面に、アクリル変性ポリエステル樹脂(A)および脂肪族ウレタン樹脂(B)を含む樹脂組成物(II)を塗布して、樹脂層(α)を形成せしめる工程を有する積層フィルムの製造方法であって、樹脂層(α)が(i)及び(ii)の特性を満たす積層フィルムの製造方法。
(i)樹脂層(α)の表面自由エネルギー(分散力と極性力の和)が30mN/m以上、45mN/m以下
(ii)樹脂層(α)の極性力が5.0mN/m以上、15.0mN/m以下
【請求項2】
アクリル変性ポリエステル樹脂(A)が、下記式(1)〜(5)の少なくとも1つ以上の構造を有する請求項1に記載の積層フィルムの製造方法。
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【請求項3】
前記樹脂組成物(II)が、脂環式ウレタン樹脂を含む請求項1または2に記載の積層フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記樹脂組成物(II)中における、アクリル変性ポリエステル樹脂(A)と脂肪族ウレタン樹脂(B)の含有量の質量比((A)の含有量[質量部]/(B)の含有量[質量部])が、50/50〜90/10である請求項1〜3のいずれかに記載の積層フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記樹脂組成物(II)中における、アクリル変性ポリエステル樹脂(A)と脂肪族ウレタン樹脂(B)の含有量の合計が、樹脂組成物に対して、60質量%以上である、請求項1〜4のいずれかに記載の積層フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記樹脂組成物(II)が、メラミン化合物および又はカルボジイミド化合物を含む請求項1〜5のいずれかに記載の積層フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記樹脂組成物(II)において、メラミン化合物とカルボジイミド化合物の質量の合計が、アクリル変性ポリエステル樹脂(A)と脂肪族ウレタン樹脂(B)の含有量の合計を100質量部としたとき、10質量部以上40質量部以下である請求項6記載の積層フィルムの製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の積層フィルムの製造方法によって製造された、積層フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂フィルム、中でも熱可塑性樹脂フィルムに樹脂層が積層された積層フィルムに関する。さらに詳しくは、幅広いケン化度を有するポリビニルアルコール(以下、「PVA」と略す。)に対して、汎用接着性だけでなく、高温高湿環境下においても接着性を維持することができる透明樹脂層を有する積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂フィルム、中でも二軸延伸ポリエステルフィルムは、機械的性質、電気的性質、寸法安定性、透明性、耐薬品性などに優れた性質を有することから磁気記録材料、包装材料などの多くの用途において基材フィルムとして広く使用されている。特に近年、フラットパネルディスプレイやタッチパネル分野において、偏光板保護フィルムや透明導電フィルムなど、各種光学用フィルムの需要が高まっている。特に、偏光板保護フィルム用途では、低コスト化を目的として、従来のTAC(トリアセチルセルロース)フィルムから二軸延伸ポリエステルフィルムへの置換えが盛んに検討されている。偏光板保護フィルム用途でTAC代替として二軸延伸ポリエステルフィルムを用いる場合は、偏光板の素材として広く用いられているPVAとの接着性が必須となる。
【0003】
しかしながら、従来検討されている二軸延伸ポリエステルフィルムでは、PVAとの接着性が十分ではなく、また高温高湿環境下ではPVAとの接着性が悪化するなどの課題を有しており、最終製品として実用に適用できないことがあった。
【0004】
上記の課題を解決するため、ポリエステルフィルム上にガラス転移点の低い樹脂層を積層し、加工性や耐高湿性の付与する方法(特許文献1)や、ポリエステルフィルム上に親水基を有する共重合樹脂を用いた樹脂層を積層する方法(特許文献2)、ポリエステルフィルムに積層する樹脂層の中にPVAなどの水溶性高分子を入れて、接着させる相手と表面エネルギー近似させる方法(特許文献3)、ポリエステルフィルムの製造の工程内で塗布を行うインラインコート法により親水性の樹脂層を積層させる方法(特許文献4)などが提案されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−156848号公報
【特許文献2】特開平5−279502号公報
【特許文献3】特開2000−336309号公報
【特許文献4】特表2001−179913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、ポリエステルフィルム表面にガラス転移点の低い樹脂層を積層しているため、樹脂層がガラス転移点以上の温度になると、樹脂層が変化し、樹脂層の白化や親水性材料との接着性が劣る場合がある。またポリエステルフィルムをロール状態で保管した場合、ポリエステルフィルム同士がブロッキングすることがあり、実用に適さないことがある。特許文献2のように、ポリエステルフィルム上に親水基を有する共重合樹脂を用いた樹脂層を積層する方法は、樹脂層に含まれる親水基とPVAが形成する水素結合によって一定の接着性を向上させることができるが、その接着性は十分ではなく、また耐高温高湿環境下での接着性は十分でない。また、特許文献3のように、ポリエステルフィルム上に積層する樹脂層の中に水溶性高分子を入れる方法は、樹脂層とPVAとの表面自由エネルギーを近似させることによって接着性を向上させるというものなので、あるケン化度を有するPVAとの接着性が良好だったとしても、ケン化度が異なるPVAとの接着性は悪化するなど汎用接着性に課題がある。さらに、高温高湿環境下では樹脂層が膨潤してしまうので、耐湿熱接着性が劣る。特許文献4のように、ポリエステルフィルムの製造の工程内で塗布を行うインラインコート法により親水性の樹脂層を積層させる方法も、特許文献3と同様の課題を有している。
【0007】
そこで、本発明では上記の欠点を解消し、幅広いケン化度を有するPVAに対して、汎用接着性を有し、また高温高湿環境下においても、その接着性を維持することができる樹脂層を有する積層フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は次の構成からなる。すなわち、
熱可塑性樹脂の少なくとも一面に、脂肪族ウレタン構造を含有する樹脂組成物(I)を用いてなる樹脂層(α)を有し、且つ樹脂層(α)が(i)及び(ii)の特性を満たす積層フィルム
(i)樹脂層(α)の表面自由エネルギー(分散力と極性力の和)が30mN/m以上、45mN/m以下
(ii)樹脂層(α)の極性力が5.0mN/m以上、15.0mN/m以下
である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の積層フィルムは、幅広いケン化度を有するPVAに対して良好な汎用接着性、耐湿熱接着性を有する効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の積層フィルムについて詳細に説明する。
【0011】
本発明は、熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも一面に樹脂層(α)が積層された積層フィルムである。本発明の積層フィルムは、幅広いケン化度を有するPVAに対して、良好な汎用接着性、および耐湿熱接着性を発現する。
【0012】
(1)樹脂層(α)
本発明の積層フィルムの樹脂層(α)は、樹脂層(α)の表面自由エネルギー(分散力と極性力の和)が30mN/m以上、45mN/m以下、且つ樹脂層(α)の極性力が5.0mN/m以上、15.0mN/m以下であることが必要である。本発明でいう表面自由エネルギー、分散力、極性力とは、後述する測定方法によって算出される値をいう。樹脂層(α)の表面自由エネルギーを30mN/m以上とすることで、樹脂層(α)上にPVAからなる親水性溶液を塗布した際に、ハジキや塗布ムラは発生せず樹脂層(α)上にPVAを均一に積層することが可能となる。一方、樹脂層(α)の表面自由エネルギーを45mN/m以下とすることで、樹脂層(α)はPVAの疎水成分である炭化水素鎖部分と表面自由エネルギーが近似するため、低ケン化度のPVAとの良好な接着性を付与させることができる。また高温高湿環境下においても、樹脂層が水分によって膨潤してPVAとの接着性が低下することを抑制し、良好な耐湿熱接着性を発現させることができる。一方、樹脂層(α)の表面自由エネルギーを45mN/mより大きくなると、高ケン化度のPVAとの接着性は良好となるが、高温高湿環境下では接着性が悪化し、また低ケン化度のPVAとの接着性は悪化してしまう。特許文献3や特許文献4に記載される従来技術では、樹脂層の表面自由エネルギーを、接着させるPVAの表面自由エネルギーと近似させることによって接着性を上げようとしていたため、高ケン化度PVAとの接着性を高めるためには、一般的に樹脂の表面自由エネルギーを45mN/mより大きくする必要があり、上記のような課題を回避することはできなかった。
【0013】
また樹脂層(α)の表面自由エネルギーの構成成分である極性力を5.0mN/m以上とすることで、PVAの水酸基との水素結合により接着性を付与させることができる。一方、極性力を15.0mN/m以下とすることで、高温高湿環境下においても、樹脂層(α)水分によってが膨潤することなくPVAとの接着性を維持することができる。
【0014】
本発明の樹脂層(α)を形成する樹脂組成物(I)は、脂肪族ウレタン構造を含有することが必要である。樹脂層(α)を形成する樹脂組成物(I)が、脂肪族ウレタン構造を含有することによって、樹脂層(α)に高ケン化度のPVA層に対する汎用接着性、及び耐湿熱接着性を発現させることが可能となる。上記の効果は、次のメカニズムによるものと推定している。まず、樹脂層(α)を形成する樹脂組成物(I)がウレタン構造を有することで、樹脂層(α)はPVAの水酸基との水素結合を形成することができるので、特に高ケン化度のPVAとの接着性を高くできる。次に、樹脂層(α)を形成する樹脂組成物(I)が脂肪族鎖を有することで、樹脂層の硬度を低くすることができるので、PVAが高温高湿環境下において水分を吸収して膨潤しても、PVAの膨潤に追従することが可能であり、高湿熱接着性を発現することが可能となる。
【0015】
すなわち、樹脂層(α)を形成する樹脂組成物(I)が、ウレタン構造と脂肪族鎖が結合した脂肪族ウレタン構造を有することで、初めて樹脂層は高ケン化度のPVA層に対して、汎用接着性、及び耐湿熱接着性を発現させることができる。
【0016】
また、本発明の樹脂層(α)を形成する樹脂組成物(I)は、下記のような理由においても脂肪族ウレタン構造を含有することが好ましい。樹脂層(α)を有する積層フィルムを偏光板保護フィルム用途として用いる場合、樹脂層(α)を有する積層フィルム上にPVAを設ける必要があるが、その方法としては、PVAを水などの各種溶媒に溶かした親水性溶液を塗布、乾燥し積層させる方法や、各種親水性材料からなるフィルムやシートを熱や圧力により積層させる方法などが挙げられる。PVAを水などの各種溶媒に溶かした親水性溶液を塗布、乾燥し積層させる方法では、積層フィルム上にPVAの親水性溶液を塗布後、溶媒乾燥過程において、PVAは積層フィルムに付着しているため、厚さ方向以外では自由な体積収縮が束縛され、収縮応力が発生する。この収縮応力によって、PVAと積層フィルムの接着性が悪化する場合がある。本発明の少なくとも一面に樹脂層(α)を有している積層フィルムにおいては、樹脂層(α)がPVAと水素結合を形成し、かつ樹脂層の硬度が低いためにPVAの収縮に追従することが可能であるため、PVAとの高い接着性を維持することができる。そのため、本発明の積層フィルムは、偏光板保護フィルムとして好適に用いることができる。
【0017】
樹脂層(α)を形成する樹脂組成物(I)に含有される脂肪族ウレタン構造は、脂環式ウレタン構造であることが好ましい。脂環式ウレタン構造を有する樹脂組成物は、脂肪族ウレタン構造を有する樹脂組成物の中ではガラス転移点が高くなる。そのため、脂環式ウレタン構造を有する樹脂組成物からなる樹脂層(α)は、PVA層を積層する際や高温高湿環境下においてかかる熱に対して、軟化や溶融することなく、また樹脂層表面へのブリードアウトの発生が抑制される。そのため、樹脂層(α)を形成する樹脂組成物(I)に脂環式ウレタン構造を含むと、特に耐湿熱接着性に優れた樹脂層(α)を得ることができる。
【0018】
一方、脂肪族ウレタン構造の代わりに芳香族ウレタン構造を適用した場合、芳香族ウレタン構造を有する樹脂組成物は、芳香族鎖の影響により剛直になるためPVA層の収縮や膨潤に対して追従できず、接着性が低下してしまう。また、樹脂層に光が当たると黄変してしまうなどの問題が発生し、積層フィルムとして使用することが困難になる。
【0019】
本発明の積層フィルムは、熱可塑性フィルムの少なくとも一面の最外層に樹脂層(α)を有していることが好ましい。熱可塑性フィルムの少なくとも一面の最外層に樹脂層(α)を有することにより、PVA層との接着性を良好にすることができる。
【0020】
また、樹脂層(α)を形成する樹脂組成物(I)は、式(1)〜(5)の少なくとも1つ以上の構造を有することが好ましい。式(1)〜(5)はPVAの水酸基と水素結合を形成する極性基であるので、樹脂層(α)はPVAと脂肪族ウレタン構造部位だけでなく、式(1)〜(5)の部位でも水素結合を形成することが可能となり、PVAとの接着性を向上させることができる。
【0021】
【化1】
【0022】
【化2】
【0023】
【化3】
【0024】
【化4】
【0025】
【化5】
【0026】
なお、本発明において樹脂組成物(I)とは、樹脂層(α)を形成している樹脂組成物を表し、樹脂組成物(II)とは、樹脂層(α)を形成する前の樹脂組成物を表す。樹脂組成物(II)を、熱可塑性樹脂フィルムに塗布、積層することにより、樹脂組成物(I)から形成される樹脂層(α)が形成される。
【0027】
脂肪族ウレタン構造を有する樹脂組成物(I)は、後述する脂肪族ウレタン樹脂(B)を樹脂組成物(II)中に含有せしめることにより得ることができる。樹脂組成物(II)は、アクリル変性ポリエステル(A)を含有していることが好ましく、メラミン化合物及び/又はカルボジイミド化合物(C)を含有していても良い。
【0028】
以下、(2)〜(4)において、樹脂組成物(II)について説明する。
【0029】
なお、本発明の樹脂組成物(II)は、後述する(2)〜(4)の樹脂をそれぞれ単独で用いてもよく、2種類以上混合および/または共重合して用いてもよく、また(2)〜(4)以外の樹脂や易滑剤や無機粒子、有機粒子、界面活性剤、表面処理剤、安定剤、末端封鎖剤、フィラーなどの各種添加剤を含有させても良い。
【0030】
(2)アクリル変性ポリエステル樹脂(A)
本発明の樹脂層(α)を形成する樹脂組成物(II)は、アクリル変性ポリエステル樹脂(A)を含有していることが好ましい。樹脂組成物(II)中にアクリル変性ポリエステル樹脂(A)が含有し、樹脂組成物(II)中におけるアクリル変性ポリエステル樹脂(A)の含有量やアクリル変性ポリエステル樹脂(A)の組成を変更することで、樹脂層(α)の表面自由エネルギー、極性力を(i)、(ii)の範囲にすることができる。
【0031】
本発明で用いることのできるアクリル変性ポリエステル樹脂(A)は、アクリル樹脂成分とポリエステル樹脂成分とが互いに混合および/または結合したものであって、例えばグラフトタイプ、ブロック共重合タイプを包含する。また、アクリル変性ポリエステル樹脂(A)中のアクリル樹脂成分とポリエステル樹脂成分の混合比率、共重合比率は、どちらが高くてもよい。
【0032】
アクリル変性ポリエステル樹脂(A)は、例えばポリエステルの両端にラジカル開始剤を付加してアクリル単量体の重合を行わせたり、ポリエステルの側鎖にラジカル開始剤を付加してアクリル単量体の重合を行わせたり、あるいはアクリル樹脂の側鎖に水酸基をつけ、末端にイソシアネート基やカルボキシル基を有するポリエステルと反応させる等によって製造することができる。
【0033】
アクリル変性ポリエステル樹脂(A)中のアクリル樹脂成分を多くすると樹脂層(α)の表面自由エネルギーを低くすることができ、アクリル樹脂成分を少なくすると樹脂層(α)の表面自由エネルギーを高くすることができる。樹脂層(α)の表面自由エネルギーを(i)の範囲にするには、アクリル変性ポリエステル樹脂(A)中のアクリル樹脂成分とポリエステル樹脂成分の質量比(アクリル樹脂成分の含有量[質量部]/ポリエステル樹脂成分の含有量[質量部])は10/90以上、90/10以下であることが好ましい。また、本発明の熱可塑性フィルムの基材がポリエステルである場合は、アクリル変性ポリエステル樹脂(A)のポリエステル樹脂成分が、樹脂層(α)と基材である熱可塑性樹樹脂フィルムとの接着性を良好にすることができる。
【0034】
アクリル変性ポリエステル樹脂(A)は、上述した式(1)〜(5)の構造を有することが好ましい。アクリル変性ポリエステル樹脂(A)が、式(1)〜(5)の構造を有することにより、PVAとの水素結合を形成が可能となり、PVAとの接着性を向上させることができる。中でも、アクリル変性ポリエステル樹脂(A)のアクリル樹脂成分の構造として含まれるのが好ましい。
【0035】
アクリル変性ポリエステル樹脂(A)を構成するアクリル樹脂成分は、具体的にはアルキルメタクリレートおよび/またはアルキルアクリレートから構成されるアクリル樹脂の主鎖に、親水性のラジカル重合性ビニルモノマーが重合されていることが好ましい。この親水性のラジカル重合性ビニルモノマーがアクリル樹脂成分に含有されることで、アクリル変性ポリエステル(A)に、式(1)〜(5)の構造を付与することができる。
【0036】
アクリル樹脂成分全体を100質量部としたとき、親水性のラジカル重合性ビニルモノマーは20質量部以上50質量部以下が好ましい。親水性のラジカル重合性ビニルモノマーは20質量部以上50質量部以下にすることで、樹脂層(α)の極性力を(ii)の範囲にすることができるため、効果的にPVAとの水素結合を形成し、PVAとの接着性を向上させることができる。
【0037】
アルキルメタクリレートおよび/またはアルキルアクリレートとしては、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル等を用いるのが好ましい。これらは1種もしくは2種以上を用いることができる。
【0038】
親水性のラジカル重合性ビニルモノマーは、具体的には式(1)の構造になるモノマーとしては、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル等のヒドロキシアクリル酸エステル、式(2)の構造になるモノマーとしては、エチレングリコールアクリレート、エチレグリコールメタクリリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート等のグリコールエステル、式(3)の構造になるモノマーとしては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、メトキシメチロールアクリルアミド等のアクリルアミド系化合物、式(4)の構造になるモノマーとしてはアクリル酸アミノアルキル、メタクリル酸アミノアルキルエステル及びその4級アンモニウム塩等のカチオン系モノマー、式(5)の構造になるモノマーとしては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等のグリシジルアクリレート系化合物、その他、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸等の不飽和酸及びその塩等が例示できる。親水性ラジカル重合性モノマーは単独で用いてもよいし、数種組み合わせて用いてもよい。更にこれらの親水性モノマーに他の共重合可能なビニルモノマーを併用することもできる。
【0039】
共重合可能な他のビニルモノマーとしては酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル、塩化ビニル、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等の不飽和カルボン酸エステル、ジメチルビニルメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のビニルシラン、エチレン、プロピレン、スチレン、ブタジエン等のオレフィンやジオレフィン化合物等が挙げられる。
【0040】
アクリル変性ポリエステル樹脂(A)を構成するポリエステル樹脂成分は、主鎖あるいは側鎖にエステル結合を有するものでジカルボン酸成分とジオール成分とから構成される。ポリエステル樹脂を構成するカルボン酸成分としては、芳香族、脂肪族、脂環族のジカルボン酸や3価以上の多価カルボン酸を使用することができる。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、フタル酸、2,5−ジメチルテレフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸など、およびそれらのエステル形成性誘導体を用いることができる。
【0041】
ポリエステル樹脂のグリコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、などを用いることができる。
【0042】
またポリエステル樹脂成分を水系溶媒へ溶解、または分散させ水系樹脂組成物として用いる場合にはポリエステル樹脂成分の水溶性化あるいは水分散化を容易にするため、スルホン酸塩基を含む化合物やカルボン酸塩基を含む化合物を共重合することが好ましい。
【0043】
カルボン酸塩基を含む化合物としては、例えば、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、4−メチルシクロヘキセン−1,2,3−トリカルボン酸、トリメシン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−ペンタンテトラカルボン酸、などのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0044】
スルホン酸塩基を含む化合物としては、例えば、スルホテレフタル酸、5−スルホイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、4−スルホイソフタル酸、などのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩を用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0045】
本発明の樹脂層(α)を形成する樹脂組成物(II)に用いられるアクリル変性ポリエステル樹脂(A)は、例えば以下の製造法によって製造することができる。まずポリエステル樹脂成分を次のように製造する。例えばジカルボン酸成分とグリコール成分を直接エステル化反応させるか、ジカルボン酸成分とグリコール成分をエステル交換反応させる第一段階の工程と、この第一段階の反応生成物を重縮合反応させる第二段階の工程とによって製造する方法などにより製造することができる。この際、反応触媒として、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、マンガン、コバルト、亜鉛、アンチモン、ゲルマニウム、チタン化合物などを用いることができる。
【0046】
次にポリエステル樹脂成分を溶媒中に分散させるが、特に水系溶媒への分散手段としてポリエステル樹脂を撹拌下にアンモニア水、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、各種アミン類等のアルカリ性化合物の水溶液に溶解もしくは分散させる。この場合、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブチルセロソルブ、エチルセロソルブ等の水溶性有機溶媒を併用してもよい。
【0047】
続いてアクリル変性ポリエステル樹脂(A)を製造するためにポリエステル樹脂成分の分散体中に重合開始剤と必要に応じて乳化分散剤等を添加し、温度を一定に保ちながらアクリル樹脂成分を徐々に添加し、その後数時間反応させてアクリル変性ポリエステルの分散体を製造することができる。得られた分散体はアクリル変性ポリエステル樹脂成分、ポリエステル樹脂成分、アクリル樹脂成分の混合物である。
【0048】
重合開始剤としては特に限定されるものではないが一般的なラジカル重合開始剤、例えば過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素等の水溶性過酸化物、または過酸化ベンゾイルやt−ブチルハイドロパーオキサイド等の油溶性過酸化物、あるいはアゾジイソブチロニトリル等のアゾ化合物が使用できる。
【0049】
(3)脂肪族ウレタン樹脂(B)
本発明の樹脂層(α)を形成する樹脂組成物(II)は、脂肪族ウレタン樹脂(B)を含有していることが必要である。本発明に使用される脂肪族ウレタン樹脂(B)は、脂肪族ウレタン構造を有していれば特に限定はされないが、脂肪族ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物を重合したものであることが好ましい。
【0050】
まず、本発明に用いられる脂肪族ポリイソシアネート化合物について説明する。本発明に用いられる脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、分子内に複数のイソシアネート基を有するものが好ましく、例えば、1,6−ヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,4−ヘキサメチレンジイソシアネート、ビス(2−イソシアネートエチル)フマレート、ビス(4−イソシアネートシクロヘキシル)メタン、ジシクロヘキシルメタン4,4−ジイソシアナートリジンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添フェニルメタンジイソシアネート等を挙げることができる。尚、本発明に用いられる脂肪族ポリイソシアネート化合物は、1種類であってもよく、または、2種類以上であってもよい。
【0051】
本発明において、前述した脂肪族ポリイソシアネート化合物のいずれであっても好適に用いることができるが、なかでも脂環式ポリイソシアネート化合物を用いることが好ましい。脂環式ポリイソシアネート化合物から重合された脂肪族ウレタン樹脂(B)は、脂肪族ウレタン樹脂(B)の中ではガラス転移点が高い。そのため、PVA層を積層する際や高温高湿環境下においてかかる熱に対して、樹脂層中で軟化や溶融したりせず、樹脂層表面にブリードアウトすることもなく、樹脂層中で変化せずに存在することができる。そのため、特に耐湿熱接着評価において樹脂層とPVAとの接着性を維持することができる。
【0052】
次に、本発明に用いられるポリオール化合物について説明する。本発明に用いられるポリオール化合物としては、複数の水酸基を有するものであれば特に限定されるものではない。このようなポリオール化合物としては、例えば、芳香族ポリエーテルポリオール、脂肪族ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、および、ポリカプロラクトンポリオール等を挙げることができる。以下、これらのポリオール化合物について、その具体例を順に説明する。
【0053】
芳香族ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加ジオール、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加ジオール、ビスフェノールAのブチレンオキサイド付加ジオール、ビスフェノールFのエチレンオキサイド付加ジオール、ビスフェノールFのプロピレンオキサイド付加ジオール、ビスフェノールFのプロピレンオキサイド付加ジオール、ハイドロキノンのアルキレンオキサイド付加ジオール、ナフトキノンのアルキレンオキサイド付加ジオール等を挙げることができる。
【0054】
脂肪族ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,2−ポリブチレングリコール、ポリイソブチレングリコール、プロピレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体ポリオール、エチレンオキサイドとテトラヒドロフランの共重合体ポリオール、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの共重合体ポリオール、テトラヒドロフランと3−メチルテトラヒドロフランの共重合体ポリオール、エチレンオキサイドと1,2−ブチレンオキサイドの共重合体ポリオール、また脂肪族ポリエーテルポリオールの中でも脂環族ポリエーテルポリオールとしては、水添ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加ジオール、水添ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加ジオール、水添ビスフェノールAのブチレンオキサイド付加ジオール、水添ビスフェノールFのエチレンオキサイド付加ジオール、水添ビスフェノールFのプロピレンオキサイド付加ジオール、水添ビスフェノールFのブチレンオキサイド付加ジオール、ジシクロペンタジエンのジメチロール化合物、トリシクロデカンジメタノール等を挙げることができる。
【0055】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール等の多価アルコールと、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマール酸、アジピン酸、セバシン酸等の多塩基酸とを反応して得られるポリエステルポリオール等を挙げることができる。
【0056】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、1,6−ヘキサンポリカーボネート等を挙げることができる。
【0057】
ポリカプロラクトンポリオールとしては、例えば、ε−カプロラクトンと、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,2−ポリブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ブタンジオール等の2価のジオールとを反応させて得られるポリカプロラクトンジオール等を挙げることができる。
【0058】
その他、本発明に用いることができるポリオール化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ポリβ−メチル−δ−バレロラクトン、ヒドロキシ末端ポリブタジエン、ヒドロキシ末端水添ポリブタジエン、ひまし油変性ポリオール、ポリジメチルシロキサンの末端ジオール化合物、ポリジメチルシロキサンカルビトール変性ポリオール等を挙げることができる。
【0059】
本発明においては、これらのいずれのポリオール化合物であっても好適に用いることができるが、なかでも脂肪族ポリエーテルポリオールを用いることが好ましい。脂肪族ポリエーテルポリオールを用いることで、脂肪族ウレタン樹脂(B)の硬度を低くすることができる。よって、脂肪族ウレタン樹脂(B)を含有する樹脂組成物(II)から形成される樹脂層の硬度を低くすることができるため、樹脂層にPVAを積層した際に生じるPVA層の収縮や膨潤に対して、樹脂層はウレタン構造と水素結合により接着したPVA層に追従することができる。
【0060】
尚、本発明に用いられるポリオール化合物は、1種類であってもよく、または、2種類以上であってもよい。
【0061】
以上の点から、本発明に用いられる脂肪族ウレタン樹脂(B)の具体的な構造としては、以下の脂肪族ポリイソシアネート化合物と脂肪族ポリエーテルポリオールより構成されることが特に好ましい。脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、1,6−ヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,4−ヘキサメチレンジイソシアネート、ビス(2−イソシアネートエチル)フマレート、ビス(4−イソシアネートシクロヘキシル)メタン、ジシクロヘキシルメタン4,4−ジイソシアナートリジンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添フェニルメタンジイソシアネートを挙げることができる。
【0062】
脂肪族ポリエーテルポリオールは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,2−ポリブチレングリコール、ポリイソブチレングリコールを挙げることができる。
【0063】
本発明に使用される脂肪族ウレタン樹脂(B)は、脂肪族ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物以外に、必要に応じて鎖伸長剤とを水に溶解あるいは分散させて得られるもので公知の方法により重合される。
【0064】
鎖伸長剤としては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリメチロールプロパン、トリイソプロパノールアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)アニリン、ヒドロキノン−ビス(β−ヒドロキシエチル)エーテル、レゾルシノール−ビス(β−ヒドロキシエチル)エーテル等のポリオール、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、ジフェニルジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ピペラジン、イソホロンジアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン等のポリアミン、ヒドラジン類、及び水が挙げられる。
【0065】
樹脂層(α)を形成する樹脂組成物(II)中における脂肪族ウレタン樹脂(B)の含有量は、脂肪族ウレタン樹脂(B)が奏する効果である、高ケン化度のPVA層に対する汎用接着性や耐湿熱接着性を発現する範囲であれば特に制限はないが、樹脂層(α)を形成する樹脂組成物(II)に対して、6質量%以上であることが好ましい。より好ましくは20質量%以上50質量%以下である。
【0066】
また、樹脂層(α)を形成する樹脂組成物(II)中における、アクリル変性ポリエステル樹脂(A)と脂肪族ウレタン樹脂(B)の含有量の合計は、樹脂組成物(II)に対して60質量%以上であることが好ましい。(A)と(B)の含有量の合計が、60質量%以上であることで、(A)と(B)の効果である幅広いケン化度の範囲のPVAに対して接着性が良好となり、高温高湿環境下においても良好な接着性を維持できる。
【0067】
また、樹脂層(α)を形成する樹脂組成物(II)中における、アクリル変性ポリエステル樹脂(A)と脂肪族ウレタン樹脂(B)の含有量の質量比((A)の含有量[質量部]/(B)の含有量[質量部])は、50/50〜90/10であることが好ましい。(A)の含有量[質量部]/(B)の含有量[質量部]が、50/50〜90/10であると、表面自由エネルギーと極性力の値のバランスが良好となり、幅広いケン化度の範囲のPVAに対して接着性が良好となり、高温高湿環境下においても良好な接着性を維持できる。
【0068】
また、樹脂組成物(II)中には(A)と(B)以外に後述するメラミン化合物及び/又はカルボジイミド化合物(C)や易滑剤や無機粒子、有機粒子、界面活性剤、表面処理剤などの各種添加剤を含有させることができる。
【0069】
(4)メラミン化合物及び/又はカルボジイミド化合物(C)
本発明では、樹脂層(α)を形成する樹脂組成物(II)に、アクリル変性ポリエステル樹脂(A)と脂肪族ウレタン樹脂(B)以外に、メラミン化合物及び/又はカルボジイミド化合物(C)を含有させることが好ましい。メラミン化合物とカルボジイミド化合物(C)の質量の合計は、前記樹脂組成物(II)において、アクリル変性ポリエステル樹脂(A)と脂肪族ウレタン樹脂(B)の質量の合計を100質量部とした際に、10質量部以上40質量部以下であることが好ましい。化合物(C)の質量の合計が10質量部以上40質量部以下であることで、樹脂層の効果である親水性材料との接着性を維持しながら、樹脂層の可撓性、強靭性などの特性を向上させることができる。
【0070】
本発明で用いることのできるメラミン化合物は、具体的には、メラミンとホルムアルデヒドを縮合して得られるメチロールメラミン誘導体に、低級アルコールとしてメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等を脱水縮合反応させてエーテル化した化合物などが好ましい。
【0071】
メチロール化メラミン誘導体としては、例えばモノメチロールメラミン、ジメチロールメラミン、トリメチロールメラミン、テトラメチロールメラミン、ペンタメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミンを挙げることができる。
【0072】
カルボジイミド基を有する化合物としては、例えば、下記式(6)で表されるカルボジイミド構造を1分子当たり少なくとも1つ以上有するものであれば特に限定されないが、耐湿熱接着性などの点で、1分子中に2つ以上を有するポリカルボジイミド化合物が特に好ましい。特に、ポリエステル樹脂やアクリル樹脂などのポリマーの末端や側鎖に、複数個のカルボジイミド基を有する、高分子型のイソシアネート化合物を用いると、本発明の樹脂層をポリエステルフィルム上に設け、積層フィルムとしたときに、樹脂層の硬度向上やオリゴマー析出抑制性だけでなく、各種インキやハードコート剤などとの接着性や耐湿熱接着性、可撓性、強靭性が高まり好ましく用いることができる。
【0073】
式(6) −N=C=N−
カルボジイミド化合物の製造は公知の技術を適用することができ、一般的には、ジイソシアネート化合物を触媒存在下で重縮合することにより得られる。ポリカルボジイミド化合物の出発原料であるジイソシアネート化合物としては、芳香族、脂肪族、脂環式ジイソシアネートなどを用いることができ、具体的にはトリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルジイソシアネートなどを用いることができる。更に本発明の効果を消失させない範囲において、ポリカルボジイミド化合物の水溶性や水分散性を向上するために、界面活性剤を添加することや、ポリアルキレンオキシド、ジアルキルアミノアルコールの四級アンモニウム塩、ヒドロキシアルキルスルホン酸塩などの親水性モノマーを添加しても用いてもよい。
【0074】
また他の化合物、例えば、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物など公知の架橋剤などを任意で用いることもできる。
【0075】
(5)熱可塑性樹脂フィルム
本発明の積層フィルムは、熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも一面に樹脂層(α)を有する積層フィルムである。本発明における熱可塑性樹脂フィルムとは、熱可塑性樹脂を用いてなり、熱によって溶融もしくは軟化するフィルムの総称であり、積層フィルムの基材フィルムとして用いられる。熱可塑性樹脂の例として、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンなどのポリオレフィン樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリメタクリレート樹脂やポリスチレン樹脂などのアクリル樹脂、ナイロン樹脂などのポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレン樹脂などが挙げられる。熱可塑性樹脂フィルムに用いられる熱可塑性樹脂はモノポリマーでも共重合ポリマーであってもよい。また、複数の樹脂を用いても良い。
【0076】
これらの熱可塑性樹脂を用いた熱可塑性樹脂フィルムの代表例として、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルムやポリエチレンフィルムなどのポリオレフィンフィルム、ポリ乳酸フィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメタクリレートフィルムやポリスチレンフィルムなどのアクリル系フィルム、ナイロンなどのポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリウレタンフィルム、フッ素系フィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルムなどを挙げることができる。機械的強度、寸法安定性、透明性、耐薬品性、コストの観点からポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルムが好ましく、特にポリエステルフィルムが好ましい。
【0077】
そこで、以下、本発明において、熱可塑性樹脂フィルムとして特に好適に用いられるポリエステルフィルムを構成するポリエステル樹脂について説明する。
【0078】
ポリエステルとは、エステル結合を主鎖の主要な結合鎖とする高分子の総称であって、エチレンテレフタレート、プロピレンテレフタレート、エチレン−2,6−ナフタレート、ブチレンテレフタレート、プロピレン−2,6−ナフタレート、エチレン−α,β−ビス(2−クロロフェノキシ)エタン−4,4‘−ジカルボキシレートなどから選ばれた少なくとも1種の構成成分を主要構成成分とするものを好ましく用いることができる。本発明では、ポリエステルフィルムとしてポリエチレンテレフタレートを用いることが好ましい。また熱可塑性樹脂フィルムに熱や収縮応力などが作用する場合には、耐熱性や剛性に優れたポリエチレン−2,6−ナフタレートを用いることが好ましい。
【0079】
上記ポリエステルフィルムは、二軸配向されたものであるのが好ましい。二軸配向ポリエステルフィルムとは、一般に、未延伸状態のポリエステルシート又はフィルムを長手方向および長手方向に直行する幅方向に各々2.5〜5倍程度延伸され、その後、熱処理を施されて、結晶配向が完了されたものであり、広角X線回折で二軸配向のパターンを示すものをいう。ポリエステルフィルムが二軸配向していない場合には、積層フィルムの熱安定性、特に寸法安定性や機械的強度が不十分であったり、平面性の悪いものとなるので好ましくない。
【0080】
また、ポリエステルフィルム中には、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機系易滑剤、顔料、染料、有機又は無機の微粒子、充填剤、帯電防止剤、核剤などがその特性を悪化させない程度に添加されていてもよい。
【0081】
ポリエステルフィルムの厚みは特に限定されるものではなく、用途や種類に応じて適宜選択されるが、機械的強度、ハンドリング性などの点から、通常は好ましくは10〜500μm、より好ましくは20〜250μm、最も好ましくは30〜150μmである。また、ポリエステルフィルムは、共押出しによる複合フィルムであってもよいし、得られたフィルムを各種の方法で貼り合わせたフィルムであっても良い。
【0082】
(6)樹脂層(α)の形成方法
本発明の樹脂層(α)を形成させる方法は、熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも一面に、脂肪族ウレタン樹脂(B)を含む樹脂組成物(II)を塗布して、樹脂層(α)を形成せしめる工程によって得られる。この形成方法において、樹脂組成物(II)は脂肪族ウレタン樹脂(B)に加えて、さらにアクリル変性ポリエステル樹脂(A)を含んでいることが好ましい。
【0083】
アクリル変性ポリエステル樹脂(A)と脂肪族ウレタン樹脂(B)とを含有する樹脂組成物(II)を熱可塑性樹脂フィルム上に塗布する際に、樹脂組成物(II)には溶媒が含まれていても良い。すなわち、アクリル変性ポリエステル樹脂(A)と脂肪族ウレタン樹脂(B)を溶媒に溶解または分散せしめて、塗液とし、これを熱可塑性樹脂フィルムに塗布しても良い。塗布後に、溶媒を乾燥させ、かつ加熱することで樹脂層(α)が積層されたフィルムを得ることができる。本発明では、溶媒として水系溶媒(D)を用いることが好ましい。水系溶媒を用いることで、加熱工程での溶媒の急激な蒸発を抑制でき、均一な樹脂層を形成できるだけでなく、環境負荷の点で優れているためである。
【0084】
ここで、水系溶媒(D)とは水、または水とメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類など水に可溶である有機溶媒が任意の比率で混合させているものを指す。
【0085】
樹脂組成物(II)のポリエステルフィルムへの塗布方法はインラインコート法、オフコート法のどちらでも用いることができるが、好ましくはインラインコート法である。インラインコート法とは、ポリエステルフィルムの製造の工程内で塗布を行う方法である。具体的には、ポリエステル樹脂を溶融押し出ししてから二軸延伸後熱処理して巻き上げるまでの任意の段階で塗布を行う方法を指し、通常は、溶融押出し後・急冷して得られる実質的に非晶状態の未延伸(未配向)ポリエステルフィルム(Aフィルム)、その後に長手方向に延伸された一軸延伸(一軸配向)ポリエステルフィルム(Bフィルム)、またはさらに幅方向に延伸された熱処理前の二軸延伸(二軸配向)ポリエステルフィルム(Cフィルム)の何れかのフィルムに塗布する。
【0086】
本発明では、結晶配向が完了する前のポリエステルフィルムのAフィルム、Bフィルム、の何れかのフィルムに、樹脂組成物(II)を塗布し、溶媒を蒸発させ、その後、ポリエステルフィルムを一軸方向又は二軸方向に延伸し、加熱し、ポリエステルフィルムの結晶配向を完了させるとともに、樹脂層を設ける方法を採用することが好ましい。この方法によれば、ポリエステルフィルムの製膜と、樹脂組成物(II)の塗布と溶媒の乾燥、および加熱(すなわち、樹脂層の形成)を同時に行うことができるために製造コスト上のメリットがある。また、塗布後に延伸を行うために樹脂層の厚みをより薄くすることが容易である。
【0087】
中でも、長手方向に一軸延伸されたフィルム(Bフィルム)に、樹脂組成物(II)を塗布し、溶媒を乾燥させ、その後、幅方向に延伸し、加熱する方法が優れている。未延伸フィルムに塗布した後、二軸延伸する方法に比べ、延伸工程が1回少ないため、延伸による樹脂層の欠陥や亀裂が発生しづらく、透明性や平滑性に優れた樹脂層を形成できるためである。
【0088】
一方、オフラインコート法とは、上記Aフィルムを一軸又は二軸に延伸し、加熱処理を施しポリエステルフィルムの結晶配向を完了させた後のフィルム、またはAフィルムに、フィルムの製膜工程とは別工程で樹脂組成物を塗布する方法である。本発明では、上述した種々の利点から、インラインコート法により設けられることが好ましい。
【0089】
よって、本発明において最良の樹脂層(α)の形成方法は、水系溶媒(D)を用いた樹脂組成物を、ポリエステルフィルム上にインラインコート法を用いて塗布し、水系溶媒(D)を乾燥させ、加熱することによって形成する方法である。
【0090】
(7)樹脂組成物(II)の調整方法
樹脂組成物(II)を作成する場合、溶媒は水系溶媒(D)を用いることが好ましい。樹脂組成物(II)は、必要に応じて水分散化または水溶化したアクリル変性ポリエステル樹脂(A)と脂肪族ウレタン樹脂(B)、メラミン化合物及び/又はカルボジイミド化合物(C)および水系溶媒(D)を任意の順番で所望の重量比で混合、撹拌することで作製することができる。次いで必要に応じて易滑剤や無機粒子、有機粒子、界面活性剤、酸化防止剤、熱開始剤などの各種添加剤を、樹脂組成物により設けた樹脂層の特性を悪化させない程度に任意の順番で混合、撹拌することができる。混合、撹拌する方法は、容器を手で振って行ったり、マグネチックスターラーや撹拌羽根を用いたり、超音波照射、振動分散などを行うことができる。
【0091】
(8)塗布方式
熱可塑性樹脂フィルムへの樹脂組成物(II)の塗布方式は、公知の塗布方式、例えばバーコート法、リバースコート法、グラビアコート法、ダイコート法、ブレードコート法等の任意の方式を用いることができる。
【0092】
(9)積層フィルム製造方法
本発明の積層フィルムは、熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも一面に、脂肪族ウレタン樹脂(B)を含む樹脂組成物(II)を塗布して、樹脂層(α)を形成せしめる工程を有する製造方法であって、樹脂層(α)が(i)及び(ii)の特性を満たす積層フィルムの製造方法によって得られる。
【0093】
(i)樹脂層(α)の表面自由エネルギー(分散力と極性力の和)が30mN/m以上、45mN/m以下
(ii)樹脂層(α)の極性力が5.0mN/m以上、15.0mN/m以下
以下に本発明の積層フィルムの製造方法について、熱可塑性樹脂フィルムとしてポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略す。)フィルムを用いた場合を例として詳述する。まず、PETのペレットを十分に真空乾燥した後、押出機に供給し、約280℃でシート状に溶融押し出し、冷却固化せしめて未延伸(未配向)PETフィルム(Aフィルム)を作製する。このフィルムを80〜120℃に加熱したロールで長手方向に2.5〜5.0倍延伸して一軸配向PETフィルム(Bフィルム)を得る。このBフィルムの片面に所定の濃度に調製した樹脂組成物(II)を塗布する。この時、塗布前にPETフィルムの塗布面にコロナ放電処理等の表面処理を行ってもよい。コロナ放電処理等の表面処理を行うことで、樹脂組成物(II)のPETフィルムへの濡れ性を向上させ、樹脂組成物のはじきを防止し、均一な塗布厚みを達成することができる。
【0094】
塗布後、PETフィルムの端部をクリップで把持して80〜130℃の熱処理ゾーン(予熱ゾーン)へ導き、塗液の溶媒を乾燥させる。乾燥後幅方向に1.1〜5.0倍延伸する。引き続き150〜250℃の加熱ゾーン(熱処理ゾーン)へ導き1〜30秒間の熱処理を行い、結晶配向を完了させるとともに、樹脂層の形成を完了させる。この加熱工程(熱処理工程)で、必要に応じて幅方向、あるいは長手方向に3〜15%の弛緩処理を施してもよい。かくして得られた積層フィルムは、(i)及び(ii)の特性を満たし、透明且つ、PVAとの汎用接着性、及び耐湿熱接着性に優れたものになる。
【0095】
(特性の測定方法および効果の評価方法)
本発明における特性の測定方法、および効果の評価方法は次のとおりである。
【0096】
(1)全光線透過率・ヘイズの測定
一辺が5cmの正方形状の積層フィルムサンプルを3点(3個)準備する。次にサンプルを常態(23℃、相対湿度50%)において、40時間放置する。それぞれのサンプルを日本電色工業(株)製濁度計「NDH5000」を用いて、全光線透過率の測定はJIS「プラスチック透明材料の全光線透過率の試験方法」(K7361−1、1997年版)、ヘイズの測定はJIS「透明材料のヘーズの求め方」(K7136 2000年版)に準ずる方式で実施する。それぞれの3点(3個)の全光線透過率およびヘイズの値を平均して、積層フィルムの全光線透過率およびヘイズの値とする。
【0097】
(2)樹脂層厚みの測定
積層フィルムをRuOを用いて染色する。次に、積層フィルムを凍結せしめ、フィルム厚み方向に切断し、樹脂層断面観察用の超薄切片サンプルを10点(10個)得る。それぞれのサンプル断面をTEM(透過型電子顕微鏡:(株)日立製作所製H7100FA型)にて1万〜100万倍で観察し、断面写真を得る。その10点(10個)のサンプルの樹脂層厚みの測定値を平均して、積層フィルムの樹脂層厚みとする。
【0098】
(3)樹脂層(α)を形成する樹脂組成物(I)の構造確認(脂肪族ウレタン構造、式(1)〜(5)の構造の確認)
樹脂層(α)を形成する樹脂組成物(I)の構造確認(脂肪族ウレタン構造、式(1)〜(5)の構造の確認)方法は、特に特定の手法に限定されないが、以下のような方法が例示できる。例えば、脂肪族ウレタン構造は、ガスクロマトグラフ質量分析(GC−MS)により、ウレタン結合部分で切断させた脂肪族イソシアネート化合物とポリオール化合物の重量ピークを確認する。式(1)〜(5)の構造も同様に構造に由来する重量ピークの有無を確認する。次に、フーリエ変換型赤外分光(FT−IR)にて、脂肪族イソシアネート化合物分とポリオール化合物、及び式(1)〜(5)の構造が有する各原子間の結合に由来するピークの有無を確認する。さらに、プロトン核磁気共鳴分光(1H−NMR)にて、脂肪族イソシアネート化合物とポリオール化合物、及び式(1)〜(5)の構造が有する水素原子の位置に由来する化学シフトの位置と水素原子の個数に由来するプロトン吸収線面積を確認する。これらの結果を合わせて総合的に確認する手法が好ましい。
【0099】
(4)表面自由エネルギー及び極性力の算出方法
まず、積層フィルムを室温23℃相対湿度65%の雰囲気中に24時間放置後した。その後、同雰囲気下で、樹脂層に対して、純水、エチレングリコール、ホルムアミド、ジヨードメタンの4種の溶液のそれぞれの接触角を、接触角計CA−D型(協和界面科学(株)社製)により、それぞれ5点測定する。5点の測定値の最大値と最小値を除いた3点の測定値の平均値をそれぞれの溶液の接触角とする。
【0100】
次に、得られた4種類の溶液の接触角を用いて、畑らによって提案された「固体の表面自由エネルギー(γ)を分散力成分(γ)、極性力成分(γ)、および水素結合力成分(γ)の3成分に分離し、Fowkes式を拡張した式(拡張Fowkes式)」に基づく幾何平均法により、本発明の分散力、極性力、及び分散力と極性力の和である表面自由エネルギーを算出する。
【0101】
具体的な算出方法を示す。各記号の意味について下記する。γは固体と液体の界面での張力である場合、数式(1)が成立する。
【0102】
γ: 樹脂層と表1に記載の既知の溶液の表面自由エネルギー
γ: 樹脂層の表面自由エネルギー
γ: 表1に記載の既知の溶液の表面自由エネルギー
γ: 樹脂層の表面自由エネルギーの分散力成分
γ: 樹脂層の表面自由エネルギーの極性力成分
γ: 樹脂層の表面自由エネルギーの水素結合力成分
γL: 表1に記載の既知の溶液の表面自由エネルギーの分散力成分
γL: 表1に記載の既知の溶液の表面自由エネルギーの極性力成分
γL: 表1に記載の既知の溶液の表面自由エネルギーの水素結合力成分
γ=γ+γ−2(γ・γ)1/2−2(γ・γp)1/2−2(γ・γ)1/2 ・・・ 数式(1)。
【0103】
また、平滑な固体面と液滴が接触角(θ)で接しているときの状態は次式で表現される(Youngの式)。
【0104】
γ=γ+γcosθ ・・・ 数式(2)。
【0105】
これら数式(1)、数式(2)を組み合わせると、次式が得られる。
・γ)1/2+(γ・γ)1/2+(γ・γ)1/2=γ(1+cosθ)/2 ・・・ 数式(3)。
【0106】
実際には、水、エチレングリコール、ホルムアミド、及びジヨードメタンの4種類の溶液に接触角(θ)と、表1に記載の既知の溶液の表面張力の各成分(γL、γL、γL)を数式(3)に代入し、4つの連立方程式を解く。その結果、固体の表面自由エネルギー(γ)、分散力成分(γ)、極性力成分(γ)、および水素結合力成分(γ)が算出される。尚、本願発明の分散力は分散力成分(γ)に該当し、本願発明の極性力は極性力成分(γ)と水素結合力成分(γ)の和に該当する。
【0107】
(5)接着性評価
まず、ケン化度の異なるPVAをそれぞれ水に溶かし、固形分濃度5%のPVA溶液を4種調整した。以下に4種のPVA溶液に使用したPVAを示す。
【0108】
PVAa:完全ケン化型PVA(ケン化度:98〜99mol%)「PVA−117」((株)クラレ製)
PVAb:準完全ケン化型PVA(ケン化度:91〜94mol%)「AL−06」(日本合成化学工業(株)製)
PVAc:アセチル基変性PVA(ケン化度:92〜94mol%)「Z−320」(日本合成化学工業(株)製)
PVAd:部分ケン化型PVA(ケン化度:78〜82mol%)「KL−06」(日本合成化学工業(株)製)。
【0109】
次に、積層フィルムの樹脂層(α)上に、バーコーター(松尾産業(株)製、番手:4番、wet厚み:約8μm)を用いて、それぞれ4種のPVA溶液をそれぞれ塗布し、熱風オーブン「HIGH−TEMP−OVEN PHH−200(エスペック(株)製)」を用いて100℃で1分間乾燥させ、4種類の接着性評価用フィルムを得る。得られた接着性評価用サンプルに、JIS5600−5−6(1999年制定)に準拠し、カット間隔2mmで5×5の25マスの切れ目を入れる。次に、切れ目を入れた部分に、ニチバン18mmセロテープ(登録商標)(品番:CT−18S)を、切れ目が見えるようにしっかりと指でセロテープ(登録商標)を擦る。そして、樹脂層に対して約60°の角度でセロテープ(登録商標)を瞬間的に引き剥がす。マスの剥離数をカウントする。評価回数は5回とし、その平均値を求める。評価基準は以下のように定める。評価基準「A」「B」を良好な接着性と判定する。
【0110】
A:マスの剥離数が1マス以下
B:マスの剥離数が1マスを超えて3マス以下
C:マスの剥離数が3マスを超えて5マス以下
D:マスの剥離数が5マスを超える。
【0111】
(6)耐湿熱接着性評価
前項(5)と同様の方法で4種類の接着性評価用フィルムを得る。次にこれらの接着性評価用フィルムを60℃95%RHに設定した恒温恒湿層(エスペック(株)製LU−113)の中に10日間(240時間)静置保管させた。10日間経過後、サンプルを恒温恒湿層から取り出して、常態(23℃、相対湿度50%)にて1時間静置乾燥させた。静置乾燥後に(5)と同様の方法で接着性評価を実施する。評価基準は(5)と同様に評価基準「A」「B」を良好な接着性と判定する。
【0112】
A:マスの剥離数が1マス以下
B:マスの剥離数が1マスを超えて、3マス以下
C:マスの剥離数が3マスを超えて、5マス以下
D:マスの剥離数が5マスを超える。
【実施例】
【0113】
(実施例1)
・アクリル変性ポリエステル樹脂(A)、及び(A)を含む塗液:
ポリエステル樹脂成分はテレフタル酸50質量部、イソフタル酸50質量部、エチレングリコール50質量部、ネオペンチルグリコール30質量部を重合触媒である三酸化アンチモン0.3質量部と酢酸亜鉛0.3質量部とともに窒素パージした反応器に仕込み、水を除去しながら常圧下で190〜220℃で12時間重合反応を行い、ポリエステルグリコールを得た。次に、得られたポリエステルグリコールに5−ナトリウムスルホイソフタル酸を5質量部、溶媒としてキシレンを反応器に仕込み、0.2mmHgの減圧下、260℃にてキシレンを留去しつつ、3時間重合させポリエステル樹脂成分を得た。このポリエステル樹脂成分にアンモニア水およびブチルセルロースを含む水に溶解させた。
【0114】
次に、アクリル樹脂成分はメタクリル酸メチル40質量部、メタクリルアミド10質量部の合計50質量部を、前述したポリエステル樹脂成分を含む水分散体中にアクリル樹脂成分/ポリエステル樹脂成分=50/50の質量比になるように添加した。さらに、重合開始剤として過酸化ベンゾイルを5質量部添加し、窒素パージした反応器の中で70〜80℃で3時間重合反応を行い、アクリル変性ポリエステル(A)を含む塗液得た。
【0115】
・脂肪族ウレタン樹脂(B)、及び(B)を含む塗液:
還流冷却管、窒素導入管、温度計、攪拌機を備えた4つ口フラスコ中に、脂肪族ポリイソシアネート化合物として1,6−ヘキサンジイソシアネートを70質量部、ポリオール化合物としてポリイソブチレングリコールを30質量部、溶媒として、アセトニトリル60質量部、N−メチルピロリドン30質量部とを仕込んだ。次に窒素雰囲気下で、反応液温度を75〜78℃に調整して、反応触媒としてオクチル酸第1錫を0.06質量部加え、7時間反応させた。次いで、これを30℃まで冷却し、イソシアネート基末端脂肪族ウレタン樹脂(B)を得た。次に、高速攪拌可能なホモディスパーを備えた反応容器に、水を添加し25℃に調整して、2000rpmで攪拌混合しながら、イソシアネート基末端脂肪族ウレタン樹脂(B)を添加して水分散した。その後、減圧下で、アセトニトリルおよび水の一部を除去することにより、脂肪族ウレタン樹脂(B)を含む塗液を調製した。
【0116】
・樹脂組成物(II):
得られたアクリル変性ポリエステル樹脂(A)を80質量部、脂肪族ウレタン樹脂(B)を20質量部となるように、アクリル変性ポリエステル樹脂(A)を含む塗液と、脂肪族ウレタン樹脂(B)を含む塗液を混合した。そこに、樹脂層表面に易滑性を付与させるために、無機粒子として数平均粒子径170nmのシリカ粒子(日産化学工業(株)製 スノーテックス(登録商標)MP−2040)をアクリル変性ポリエステル樹脂(A)80質量部、脂肪族ウレタン樹脂(B)20質量部の合計100質量部に対して2質量部添加した。さらに、樹脂組成物(II)のポリエステルフィルム上への塗布性を向上させるために、フッ素系界面活性剤(互応化学(株)製 プラスコート(登録商標)RY−2)を、樹脂組成物(II)に対する含有量が0.03質量部になるよう添加した。以上の調合作業によって樹脂組成物(II)を得た。
【0117】
・積層フィルム:
実質的に粒子を含有しないPETペレット(極限粘度0.63dl/g)を充分に真空乾燥した後、押し出し機に供給し285℃で溶融し、T字型口金よりシート状に押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度25℃の鏡面キャスティングドラムに巻き付けて冷却固化せしめた。この未延伸フィルムを90℃に加熱して長手方向に3.3倍延伸し、一軸延伸フィルム(Bフィルム)とした。
【0118】
次いで、樹脂組成物(II)を一軸延伸フィルムにバーコートを用いて塗布厚み約6μmで塗布した。続いて、樹脂組成物(II)を塗布した一軸延伸フィルムの幅方向の両端部をクリップで把持して予熱ゾーンに導いた。予熱ゾーンの雰囲気温度は90℃〜100℃にし、樹脂組成物(II)に含まれる溶媒を乾燥させた。引き続き、連続的に100℃の延伸ゾーンで幅方向に3.5倍延伸し、続いて235℃の熱処理ゾーンで20秒間熱処理を施し、樹脂層(α)を形成せしめ、ポリエステルフィルムの結晶配向の完了した積層フィルムを得た。得られた積層フィルムにおいてPETフィルムの厚みは100μm、樹脂層の厚みは約100nmであった。
【0119】
積層フィルムの樹脂層(α)を形成する樹脂組成物(I)の構造について、ガスクロマトグラフ質量分析(GC−MS)により式(3)の構造に由来する重量ピークの存在を確認した。次に、フーリエ変換型赤外分光(FT−IR)にて、式((3)の構造が有する各原子間の結合に由来するピークの存在を確認した。最後に、プロトン核磁気共鳴分光(1H−NMR)にて、式(3)の構造が有する水素原子の位置に由来する化学シフトの位置とプロトン吸収線面積から水素原子の数を確認した。これらの結果を合わせて、樹脂層(α)を形成する樹脂組成物(I)中に式(3)の構造を有していることを確認した。
【0120】
得られた積層フィルムの特性等を表3及び表4に示す。表面自由エネルギーは32mN/m、極性力は8mN/mであった。PVAa〜dに対する接着性評価、及び耐湿熱接着性ともに評価はすべて「A」または「B」であり、幅広いケン化度のPVAとの接着性を有しており、かつ高温高湿環境下においても良好な接着性を維持していた。
【0121】
(実施例2〜4)
樹脂組成物(II)中のアクリル変性ポリエステル樹脂(A)、脂肪族ウレタン樹脂(B)を表2に記載の質量比に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表3及び表4に示す。実施例2〜4では脂肪族ウレタン樹脂(B)の質量を増加させたため、樹脂層(α)の極性力が増加したが、PVAa〜dに対する接着性評価、及び耐湿熱接着性評価は良好な結果であった。
【0122】
(実施例5〜8)
脂肪族ポリイソシアネート化合物として、イソホロンジイソシアネートを用いた以外は、実施例1と同様の方法で脂肪族ウレタン樹脂(B)、及び(B)を含む塗液を調整した。次に、実施例1〜4と同様の方法で、表2に記載の質量比通りに実施例5〜8の積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表3及び表4に示す。樹脂層(α)を形成する樹脂組成物(I)中の脂肪族ウレタン構造を脂環式ウレタン構造に変更したところ、PVAa〜dに対する接着性評価、及び耐湿熱接着性評価は実施例1〜4に比べて良好な結果であった。
【0123】
(実施例9)
脂肪族ポリイソシアネート化合物として、水添キシリレンジイソシアネートを用いた以外は、実施例6と同様の方法で脂肪族ウレタン樹脂(B)、及び(B)を含む塗液を調整した。次に、実施例6と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表3及び表4に示す。樹脂層(α)を形成する樹脂組成物(I)中に脂環式ウレタン構造を有する実施例9の積層フィルムでは、PVAa〜dに対する接着性評価、及び耐湿熱接着性評価ともに良好な結果であった。
【0124】
(実施例10)
アクリル変性ポリエステル樹脂(A)のアクリル樹脂成分として、メタクリル酸メチル40質量部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル10質量部の合計50質量部に変更した以外は、実施例6と同様の方法で、積層フィルムを得た。積層フィルムの樹脂層(α)を形成する樹脂組成物(I)の構造を実施例1と同様の方法で確認したところ、樹脂組成物(I)は式(1)の構造を有していることを確認した。得られた積層フィルムの特性等を表3及び表4に示す。樹脂層(α)を形成する樹脂組成物(I)中に式(1)の構造を有する実施例10の積層フィルムは、PVAa〜dに対する接着性評価、及び耐湿熱接着性評価ともに良好な結果であった。
【0125】
(実施例11)
アクリル変性ポリエステル樹脂(A)のアクリル樹脂成分として、メタクリル酸メチル40質量部、エチレングリコールメタクリレート10質量部の合計50質量部に変更した以外は、実施例6と同様の方法で、積層フィルムを得た。積層フィルムの樹脂層(α)を形成する樹脂組成物(I)の構造を実施例1と同様の方法で確認したところ、式(2)の構造を有していることを確認した。得られた積層フィルムの特性等を表3及び表4に示す。樹脂層(α)を形成する樹脂組成物中に式(2)の構造を有する実施例11の積層フィルムは、PVAa〜dに対する接着性評価、及び耐湿熱接着性評価ともに良好な結果であった。
【0126】
(実施例12)
アクリル変性ポリエステル樹脂(A)のアクリル樹脂成分として、メタクリル酸メチル40質量部、アクリル酸トリエチルアミン10質量部の合計50質量部に変更した以外は、実施例6と同様の方法で、積層フィルムを得た。積層フィルムの樹脂層(α)を形成する樹脂組成物(I)の構造を実施例1と同様の方法で確認したところ、式(4)の構造を有していることを確認した。得られた積層フィルムの特性等を表3及び表4に示す。樹脂層(α)を形成する樹脂組成物(I)中に式(4)の構造を有する実施例12の積層フィルムは、PVAa〜dに対する接着性評価、及び耐湿熱接着性評価ともに良好な結果であった。
【0127】
(実施例13)
アクリル変性ポリエステル樹脂(A)のアクリル樹脂成分として、メタクリル酸メチル40質量部、アクリル酸グリシジル10質量部の合計50質量部に変更した以外は、実施例6と同様の方法で、積層フィルムを得た。積層フィルムの樹脂層(α)を形成する樹脂組成物(I)の構造を実施例1と同様の方法で確認したところ、式(5)の構造を有していることを確認した。得られた積層フィルムの特性等を表3及び表4に示す。樹脂層(α)を形成する樹脂組成物(I)中に式(5)の構造を有する実施例13の積層フィルムは、PVAa〜dに対する接着性評価、及び耐湿熱接着性評価ともに良好な結果であった。
【0128】
(実施例14、15)
樹脂組成物(II)中のアクリル変性ポリエステル樹脂(A)、脂肪族ウレタン樹脂(B)以外に、カルボジイミド化合物(C)として、カルボジライト(登録商標)V−04(日清紡ケミカル(株)製)を表2に記載の質量比で添加した以外は、実施例6と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表3及び表4に示す。樹脂層(α)を形成する樹脂組成物(I)中にカルボジイミド化合物(C)の構造を有する実施例14、実施例15の積層フィルムは、PVAa〜dに対する接着性評価、及び耐湿熱接着性評価は良好な結果であった。
【0129】
(実施例16)
樹脂組成物(II)中のアクリル変性ポリエステル樹脂(A)、脂肪族ウレタン樹脂(B)以外に、メラミン化合物(C)として、ニカラック(登録商標)MW−035((株)三和ケミカル製)を表2に記載の質量比で添加した以外は、実施例6と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表3及び表4に示す。樹脂層(α)を形成する樹脂組成物(I)中にメラミン化合物(C)の構造を有する実施例16の積層フィルムは、PVAa〜dに対する接着性評価、及び耐湿熱接着性評価は良好な結果であった。
【0130】
(実施例17)
樹脂組成物(II)中のアクリル変性ポリエステル樹脂(A)、脂肪族ウレタン樹脂(B)以外に、メラミン化合物(C)として、ニカラック(登録商標)MW−12LF((株)三和ケミカル製)を表2に記載の質量比で添加した以外は、実施例2と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表3及び表4に示す。樹脂層(α)を形成する樹脂組成物(I)中にメラミン化合物(C)の構造を有する実施例17の積層フィルムは、PVAa〜dに対する接着性評価、及び耐湿熱接着性評価は良好な結果であった。
【0131】
(実施例18〜21)
樹脂組成物(II)中のアクリル変性ポリエステル樹脂(A)、脂肪族ウレタン樹脂(B)以外に、メラミン化合物(C)として、ニカラック(登録商標)MW−12LF((株)三和ケミカル製)を表2に記載の質量比でそれぞれ添加した以外は、実施例6と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表3及び表4に示す。樹脂層(α)を形成する樹脂組成物(I)中にメラミン化合物(C)の構造を有する実施例18〜21の積層フィルムは、PVAa〜dに対する接着性評価、及び耐湿熱接着性評価は良好な結果であった。
【0132】
(実施例22)
脂肪族ポリイソシアネート化合物として、水添キシリレンジイソシアネートを用いた以外は、実施例6と同様の方法で脂肪族ウレタン樹脂(B)、及び(B)を含む塗液を調整した。次に、実施例18と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表3及び表4に示す。樹脂層(α)を形成する樹脂組成物(I)中に脂環式ウレタン構造を有する実施例22の積層フィルムでは、PVAa〜dに対する接着性評価、及び耐湿熱接着性評価ともに良好な結果であった。
【0133】
(実施例23)
樹脂組成物(II)中のアクリル変性ポリエステル樹脂(A)、脂肪族ウレタン樹脂(B)以外に、化合物(C)として、カルボジイミド化合物であるカルボジライト(登録商標)V−04、メラミン化合物であるニカラック(登録商標)MW−12LFを表2に記載の質量比でそれぞれ添加した以外は、実施例6と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表3及び表4に示す。樹脂層(α)を形成する樹脂組成物(I)中にメラミン化合物(C)の構造を有する実施例23の積層フィルムは、PVAa〜dに対する接着性評価、及び耐湿熱接着性評価は良好な結果であった。
【0134】
(比較例1)
脂肪族ポリイソシアネート化合物の代わりに芳香族ポリイソシアネート化合物として、トリレンジイソシアネートを用いた以外は、実施例2と同様の方法で脂肪族ウレタン樹脂(B)、及び(B)を含む塗液を調整した。次に、実施例2と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表3及び表4に示す。樹脂層(α)を形成する樹脂組成物(I)中の脂肪族ウレタン構造を芳香族ウレタン構造に変更した比較例1の積層フィルムは、PVAa〜dに対する接着性評価、及び耐湿熱接着性評価ともに実施例2よりも劣る結果であった。
【0135】
(比較例2)
樹脂組成物(II)中に、アクリル変性ポリエステル樹脂(A)、脂肪族ウレタン樹脂(B)の含有量82質量%の他に、長鎖アルキル系表面処理剤として、レゼム(登録商標)N−137(中京油脂(株)製)を17質量%添加し、実施例2と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表3に示す。樹脂層の表面自由エネルギーが30mN/m未満になったため、PVA溶液が樹脂層上ではじいてしまい、接着性評価及び耐湿熱接着評価を実施することができなかった。
【0136】
(比較例3)
アクリル樹脂成分/ポリエステル樹脂成分=8/92の質量比になるように添加した以外は、実施例2と同様の方法で積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表3及び表4に示す。樹脂層の表面自由エネルギーが45mN/mよりも大きくなったため、実施例2と比較して、特にケン化度の低いPVAとの接着性や耐湿熱接着性が劣る結果であった。
【0137】
(比較例4)
アクリル変性ポリエステル樹脂(A)のアクリル樹脂成分として、メタクリル酸メチル50質量部に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表3及び表4に示す。実施例1と樹脂層中の極性基が無くなり、極性力が5mN/m未満になったため、実施例1と比較して、特にケン化度の高いPVAとの接着性や耐湿熱接着性が劣る結果であった。
【0138】
(比較例5)
樹脂組成物(II)中に、アクリル変性ポリエステル樹脂(A)、脂肪族ウレタン樹脂(B)の含有量82質量%の他に、PVAaで使用している完全ケン化型PVA(ケン化度:98〜99mol%)「PVA−117」を17質量%添加し、実施例2と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表3及び表4に示す。樹脂層(α)を形成する樹脂組成物(I)中にPVAの構造を含有する比較例5の積層フィルムは、接着性は良好となったが、実施例2と比較して耐湿熱密着性評価は樹脂層中のPVAが膨潤してしまい大幅に劣る結果であった。
【0139】
【表1】
【0140】
【表2】
【0141】
【表3】
【0142】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0143】
本発明は、水酸基などの親水基を有する各種親水性材料、特にPVAとの汎用接着性、および高温高湿環境下においてもその接着性を維持することができる樹脂層を有する透明樹脂層を有する積層フィルムに関するものであり、ディスプレイやタッチパネル用途の光学用フィルム、特に偏光板保護フィルムへの利用が可能である。