(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記機能膜は、前記ガラス基板中のアルカリ金属イオンと水分との接触を防止するよう水分を遮断する性質を有すると共に、前記アルカリ金属イオンの前記機能膜中の移動を妨げる性質を有する請求項1又は2記載の物理量検出素子。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0014】
〈第1の実施の形態〉
図1は、第1の実施の形態に係る物理量検出素子を例示する断面図である。
図1を参照するに、第1の実施の形態に係る物理量検出素子10は、ダイヤフラム部20と、ガラス基板30と、機能膜40とを有する。物理量検出素子10は、例えば、絶対圧力センサに搭載することができる。
【0015】
物理量検出部であるダイヤフラム部20(感圧ダイヤフラム部)は、物理量検出素子10のセンサ面を構成する部位であり、圧力により発生した応力を、電気信号に変換して検出する機能を有する。ダイヤフラム部20は、ダイヤフラム面21と、ダイヤフラム支持部22とを有する。なお、ダイヤフラム部20は、物理量検出部の一例を示したものであり、物理量は圧力以外のものであってもよい。
【0016】
ダイヤフラム面21は圧力を検出する面であり、例えば、薄膜状に形成されている。ダイヤフラム面21には、圧力が加わると撓みが生じ、その撓みにより、ダイヤフラム面21に印加された圧力が検出できるように構成されている。又、ダイヤフラム支持部22は、ダイヤフラム面21を支持する機能を有する。
【0017】
ダイヤフラム部20は、例えば、シリコン基板(Si基板)に形成される。なお、本願において、シリコン基板とはシリコンを主成分とする基板を指し、例えば、SOI(Silicon on Insulator)基板等も含むものとする。ダイヤフラム部20としてSOI基板を用いる場合には、シリコン活性層でダイヤフラム面21を形成し、埋め込み酸化膜及び裏面のシリコン基板でダイヤフラム支持部22を形成できる。
【0018】
ガラス基板30は、ダイヤフラム部20を支持する支持部材であり、例えば、ガラス基板30の一方の面の外縁部にダイヤフラム部20のダイヤフラム支持部22の裏面が陽極接合により固定されている。なお、ガラス基板30として、多層化されたガラス基板を用いてもよい。
【0019】
ダイヤフラム部20がガラス基板30の一方の面に接合されることで、密封された空間である空洞部23が形成される。物理量検出素子10が絶対圧力センサに搭載される場合、空洞部23は真空状態に保たれた真空基準室となる。
【0020】
機能膜40は、ガラス基板30の他方の面(裏面)を被覆するように形成されている。機能膜とは、一般に所定の機能を有する薄膜を指すが、本願における所定の機能は、ガラス基板30の他方の面と大気中水分との接触を防止する機能である。つまり、機能膜40は、ガラス基板30に含まれるアルカリ金属イオン(Na
+、K
+等)と大気中の水分とが接触することを防止する機能を有する。機能膜40の材料としては、水分を遮断する性質を有すると共に、アルカリ金属イオン(Na
+、K
+等)の移動を妨げる性質を有するものを選択することができる。
【0021】
このような性質を有する機能膜40の一例としては、金属膜やシリコン窒化膜(SiN膜)、DLC膜(ダイヤモンドライクカーボン膜)等の無機膜、特殊ウレタン樹脂やフッ素樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂等の有機膜等を挙げることができる。
【0022】
機能膜40として金属膜を用いる場合の一例としては、膜厚100nm程度のチタン膜(Ti膜)、膜厚150nm程度の金膜(Au膜)等を挙げることができる。チタン膜(Ti膜)や金膜(Au膜)は、例えば、スパッタリング法により成膜できる。なお、金膜(Au膜)を成膜する場合には、例えば、膜厚35nm程度のチタンタングステン膜(TiW膜)を下地とすることができる。機能膜40を形成することの具体的な意義については後述する。
【0023】
図2は、第1の実施の形態に係る物理量検出素子のダイヤフラム面を例示する平面図である。
図2を参照するに、ダイヤフラム面21は、ピエゾ抵抗素子211と、不純物抵抗配線212と、金属配線213と、パッド214とを備えている。ピエゾ抵抗素子211及び不純物抵抗配線212は、ホイートストーンブリッジ回路を構成し、出力電圧を検出できるように構成されている。
【0024】
ピエゾ抵抗素子211は、圧電素子の一種であり、印加される圧力に応じて抵抗値が変化する。よって、ピエゾ抵抗素子211を用いたホイートストーンブリッジ回路は、出力電圧の変化により、ダイヤフラム面21に印加された圧力が検出できるように構成されている。つまり、ダイヤフラム面21に印加された圧力をピエゾ抵抗素子211の抵抗値変化に対応する出力電圧変化により検出できる。
【0025】
又、金属配線213は、ホイートストーンブリッジ回路を形成するための配線であり、パッド214は、外部との電気的接続を行うための端子又は電極である。外部からパッド214に電源を供給してホイートストーンブリッジ回路に電圧を印加し、圧力の印加によるピエゾ抵抗素子211の抵抗値の変化から、ホイートストーンブリッジ回路の出力電圧の変化を検出する。これにより、ダイヤフラム面21に印加された圧力を検出できる。例えば、ダイヤフラム面21を
図2に示したように構成することにより、物理量検出素子10は、圧力を検出できる。
【0026】
物理量検出素子10は、例えば、以下のようにして作製できる。なお、
図3では、物理量検出素子単体を図示するが、実際には、1つのウェハに多数の物理量検出素子が形成され、最後にダイシングされて個片化された物理量検出素子となる。
【0027】
図3は、第1の実施の形態に係る物理量検出素子の製造工程を例示する図である。まず、
図3(a)に示す工程では、ダイヤフラム部20を作製する。具体的には、シリコン基板(Si基板)やSOI基板等のシリコンを主成分とする基板を準備し、準備した基板にエッチング加工等を施し、所定形状のダイヤフラム部20を作製する。なお、ダイヤフラム部20の厚さT
1は、例えば、150μm程度とすることができる。
【0028】
次に、
図3(b)に示す工程では、ガラス基板30の一方の面にダイヤフラム部20を陽極接合により固定する。具体的には、例えば300〜400℃程度の温度(接合温度)の高温環境下でダイヤフラム部20とガラス基板30とを当接させる。そして、ダイヤフラム部20とガラス基板30との間に、ガラス基板30に対してダイヤフラム部20が高電位になるように直流電源から、例えば500〜1500V程度の高電圧(接合電圧)を印加する。これにより、ガラス基板30の一方の面にダイヤフラム部20が陽極接合により固定され、密封された空間である空洞部23が形成される。なお、ガラス基板30の厚さT
2は、例えば、100μm程度とすることができる。
【0029】
次に、
図3(c)に示す工程では、ガラス基板30の他方の面(裏面)に機能膜40を形成する。機能膜40は、例えば、スパッタリング法によりガラス基板30の他方の面にチタン(Ti)膜を成膜することにより形成できる。機能膜40の厚さは、例えば、100nm程度とすることができる。なお、機能膜40として、チタン膜(Ti膜)に代えて、前述の種々の膜を形成してもよい。
図3(c)に示す工程の後、ダイシングされて個片化された複数の物理量検出素子が形成される。
【0030】
なお、機能膜40を形成する工程は特に限定されない。例えば、機能膜40を形成する前にダイシングで物理量検出素子を個片化し、その後、個片化された各物理量検出素子のガラス基板30の他方の面(裏面)に機能膜40を形成してもよい。又、
図3(b)に示す工程で、陽極接合の前にガラス基板30の他方の面(裏面)に機能膜40を形成してもよい。但し、この場合には、ガラス基板30の他方の面(裏面)の一部に、陽極接合の際に電極部として用いる領域を露出しておく必要がある。
【0031】
ここで、ガラス基板30の他方の面(裏面)に機能膜40を形成することの効果について、発明者らの行った実験結果を交えながら説明する。
【0032】
[出力変動量のガラス基板の厚さ依存性]
まず、
図3(a)及び
図3(b)に示す工程のようにして、ガラス基板30の厚さをパラメータとして、ガラス基板30の他方の面に機能膜40を形成しない複数の物理量検出素子を作製した。具体的には、ダイヤフラム部20の厚さT
1を1000μmとし、ガラス基板30の厚さT
2を1000μmとし、陽極接合の接合温度を400℃、接合電圧を600Vとして5つの物理量検出素子を作製した。これとは別に、ダイヤフラム部20の厚さT
1を150μmとし、ガラス基板30の厚さT
2を100μmとし、陽極接合の接合温度を400℃、接合電圧を600Vとして9つの物理量検出素子を作製した。
【0033】
次に、各物理量検出素子を高温高湿状態(85℃85%Rhの大気圧環境下)に100時間放置後、常温に戻して個々に通電し、出力変動量を測定した(以降、単に、試験後の出力変動量と称する)。測定した出力変動量は、試験前後における、前述のホイートストーンブリッジ回路の出力電圧の変化を圧力に換算した値(単位:Pa)である。なお、試験前のホイートストーンブリッジ回路の出力電圧を基準(ゼロ)としている。
【0034】
なお、発明者らは、試験後の出力変動量が100Pa以内であることを合格品の条件としている。この条件を満足することにより、高温高湿状態(85℃85%Rhの大気圧環境下)に1000時間放置しても出力変動量が150Pa以内に収まることが経験上わかっており、又、出力変動量が150Pa以内であれば実使用上の問題が生じないからである。但し、この条件はあくまで一例であり、物理量検出素子の用途や設計に対応して、他の条件としても構わない。
【0035】
図4は、物理量検出素子の出力変動量のガラス基板の厚さ依存性を例示する図(その1)である。
図4(a)はT
1=1000μm及びT
2=1000μmとした場合、
図4(b)はT
1=150μm及びT
2=100μmとした場合の試験後の出力変動量の測定結果を示している。
【0036】
図4(a)から、T
1=1000μm及びT
2=1000μmとした比較的厚型の物理量検出素子では、試験後の出力変動量が100Pa以内であり、上記合格品の条件を満足できていることが確認された。一方、
図4(b)から、T
1=150μm及びT
2=100μmとした比較的薄型の物理量検出素子では、試験後の出力変動量が100Paを超えており、上記合格品の条件を満足できていないことが確認された。
【0037】
次に、ダイヤフラム部20の厚さT
1を150μmとし、ガラス基板30の厚さT
2をパラメータとし、陽極接合の接合温度を400℃、接合電圧を600Vとして3つの物理量検出素子を作製し、上記と同様に試験後の出力変動量を測定した。
【0038】
図5は、物理量検出素子の出力変動量のガラス基板の厚さ依存性を例示する図(その2)である。
図5から、T
1=150μmという比較的薄型の物理量検出素子では、ガラス基板30の厚さT
2が薄いと試験後の出力変動量が大きくなるが、ガラス基板30の厚さT
2が厚くなるほど試験後の出力変動量が小さくなることがわかった。又、
図5から、T
1=150μmという比較的薄型の物理量検出素子では、上記合格品の条件を満足するためには、ガラス基板30の厚さT
2を800μm以上とする必要があることがわかった。
【0039】
[出力変動量の陽極接合条件の依存性]
前述の
図3(b)に示す工程において、陽極接合の接合温度及び接合電圧をパラメータとして、ガラス基板30の他方の面に機能膜40を形成しない複数の物理量検出素子を作製した。具体的には、ダイヤフラム部20の厚さT
1を150μmとし、ガラス基板30の厚さT
2を100μmとし、陽極接合の接合温度及び接合電圧をパラメータとして複数の物理量検出素子を作製し、上記と同様に試験後の出力変動量を測定した。
【0040】
図6は、物理量検出素子の出力変動量の接合電圧依存性を例示する図である。
図6に示す3つの物理量検出素子は、陽極接合の接合温度を400℃とし、各々接合電圧を600V、1000V、1500Vとして作製したものである。
図6から、ダイヤフラム部20の厚さT
1=150μm、ガラス基板30の厚さT
2=100μmという比較的薄型の物理量検出素子では、陽極接合の接合温度を調整しても、上記合格品の条件は満足できないことがわかった。
【0041】
図7は、物理量検出素子の出力変動量の接合温度依存性を例示する図である。
図7に示す3つの物理量検出素子は、陽極接合の接合電圧を600Vとし、接合温度を各々300℃、350℃、400℃として作製したものである。
図7から、ダイヤフラム部20の厚さT
1=150μm、ガラス基板30の厚さT
2=100μmという薄型の物理量検出素子において、陽極接合の接合電圧を調整しても、上記合格品の条件は満足できないことがわかった。
【0042】
[機能膜の検討]
次に、
図3(a)〜
図3(c)に示す工程のようにして、ガラス基板30の他方の面に機能膜40を形成した複数の物理量検出素子を作製した。具体的には、ダイヤフラム部20の厚さT
1を150μmとし、ガラス基板30の厚さT
2を100μmとし、陽極接合の接合温度を400℃、接合電圧を600Vとしてダイヤフラム部20とガラス基板30を陽極接合した。そして、ガラス基板30の他方の面(裏面)に機能膜40を成膜した物理量検出素子を4つ作製した。
【0043】
4つの物理量検出素子には、機能膜40として、膜厚100nmのチタン(Ti)膜、膜厚150nmの金(Au)膜、膜厚100nmのシリコン窒化膜(SiN膜)、膜厚100nmのシリコン酸化膜(SiO
2膜)を成膜した。但し、金(Au)膜を形成する際には、下地として、膜厚35nmのチタンタングステン膜(TiW膜)を形成した。
【0044】
なお、チタン(Ti)膜、金(Au)膜、及び下地のチタンタングステン膜(TiW膜)は、スッパッタリング法により成膜した。又、シリコン窒化膜(SiN膜)及びシリコン酸化膜(SiO
2膜)は、プラズマCVD法により成膜した。
【0045】
図8は、物理量検出素子の出力変動量の機能膜の膜種依存性を例示する図である。なお、
図8では比較のため、機能膜が形成されていない物理量検出素子のデータ(「無し」と表示)も示している。
図8から、ダイヤフラム部20の厚さT
1=150μm、ガラス基板30の厚さT
2=100μmという薄型の物理量検出素子でも、適切な膜種を選択してガラス基板30の他方の面に機能膜40を成膜することにより、上記合格品の条件を満足できることがわかった。
【0046】
[まとめ]
以上の実験結果をまとめると、ガラス基板30の厚さT
2が800μmよりも厚ければ、機能膜の有無にかかわらず、上記合格品の条件を満足できる(
図5参照)。しかしながら、市場における物理量検出素子の薄型化の要求に応えるために、ガラス基板30の厚さT
2を薄くすると(800μm以下にすると)、上記合格品の条件を満足できなくなる(
図5参照)。又、この結果は、陽極接合条件(接合温度及び接合電圧)を変えても改善されない(
図6及び
図7参照)。
【0047】
一方、ガラス基板30の他方の面(裏面)に機能膜40を形成すると、機能膜40の膜種によっては、機能膜40を形成しない場合に比べて出力変動量を大幅に抑制することが可能となり、上記合格品の条件を満足できる(
図8参照)。すなわち、機能膜40の膜種として、水分を遮断する性質を有すると共に、アルカリ金属イオン(Na
+、K
+等)の移動を妨げる性質を有するものを選択する。これにより、ガラス基板30の厚さT
2を薄くしても(800μm以下にしても)出力変動量を大幅に抑制することが可能となり、上記合格品の条件を満足できる。
【0048】
ここで、ガラス基板30の他方の面に機能膜40を形成することにより、ガラス基板30の厚さT
2を薄くしても(800μm以下にしても)出力変動量を大幅に抑制できる理由について説明する。
【0049】
陽極接合では、原理的にアルカリガラスが一般的に使われる。アルカリガラスの成分には、NaやK等のアルカリ金属が含まれている。ガラスの表面では、ガラス中のナトリウムイオン(Na
+)やカリウムイオン(K
+)等のアルカリ金属イオンと大気中のH
2Oとの間で、以下のような反応が発生している。なお、以下はナトリウムイオン(Na
+)について示すが、カリウムイオン(K
+)等についても同様な反応が発生している。
【0050】
Na
+(ガラス)+ H
2O(大気中)→ NaOH + H
+(ガラス内部へ)・・・(式1)
この反応は、湿度が高いほど、高温なほど発生し易い。又、ガラスの主成分であるケイ酸は、酸にはほとんど溶解しない(フッ酸を除く)。しかし、耐アルカリ性は乏しく、pHが9.8以上のアルカリ性溶液には溶解する。よって、生成されたNaOHが更に大気中の水分を取り込み、アルカリ水溶液になることでガラスが溶解し、ガラスの厚みが見かけ上薄くなることで応力バランスが崩れ、特性の変動が発生したと考えられる。
【0051】
ガラスの厚みが厚い場合(例えば、1000μm)には、ガラスの溶解された層が相対的に小さく、物理量検出素子の応力バランスの変化がほとんど発生しないため、
図4(a)に示したように特性の変動が軽微であったと解される。一方、ガラスの厚みが薄い場合(例えば、100μm)には、ガラスの溶解された層が相対的に大きく、物理量検出素子の応力バランスが変化するため、
図4(b)に示したように特性の変動が顕著であったと解される。
【0052】
ところで、陽極接合では原理的にガラスの裏面にNaを成分とする白っぽい粉(析出物)が付着することが知られており、この成分がアルカリ水溶液となることも想定される。このため、発明者らは、陽極接合後のガラスを研磨したサンプルを同様に評価したが改善は見られなかった。この結果から、出力変動は、析出物が要因で発生するものでないことが明らかであり、上記のように、ガラス表面での反応が要因で発生すると解される。
又、機能膜40の膜種によっては、機能膜40を形成しても出力変動量を抑制できない。具体的には、
図8に示すように、機能膜40としてシリコン酸化膜(SiO
2膜)を形成しても出力変動量を抑制できない。機能膜40としてシリコン酸化膜(SiO
2膜)を形成しても効果がなかった理由は、アルカリガラスの主成分でもあるSiO
2内部をナトリウムイオン(Na
+)やカリウムイオン(K
+)等のアルカリ金属イオンが動けるためである。
【0053】
つまり、ナトリウムイオン(Na
+)やカリウムイオン(K
+)等のアルカリ金属イオンは可動性イオンであって、ガラス内のエネルギー状態を最小化するように移動する。このため、シリコン酸化膜(SiO
2膜)を形成しても、シリコン酸化膜(SiO
2膜)内を移動して大気中のH
2Oと反応するため、効果がなかったと解される。
【0054】
このように、第1の実施の形態では、ダイヤフラム部20とガラス基板30とを有する物理量検出素子10において、ガラス基板30の裏面に、ガラス基板30に含まれるアルカリ金属イオンと大気中の水分とが接触することを防止する機能膜40を形成する。これにより、ガラス基板30が薄型化(800μm以下)した場合であっても、機能膜40が、ガラス基板30中のアルカリ金属イオンと大気中の水分が反応してアルカリ水溶液が生成されてガラス基板30の裏面が溶解することを防止できる。その結果、物理量検出素子10の出力変動量について、所定の仕様(上記合格品の条件)を満足できる。
【0055】
なお、物理量検出素子10を薄型化する場合、シリコン基板の厚さとガラス基板の厚さに大小関係の優劣はないが、シリコン基板の厚さを150μmよりも薄くすることは困難である。従って、物理量検出素子10を特に薄型化する場合には、ガラス基板の厚さをシリコン基板の厚さ以下にすることが考えられる。そのような場合に、物理量検出素子10の出力変動量を抑制する手段として、機能膜40を形成することは特に有効である。但し、ガラス基板の厚さをシリコン基板の厚さより厚くすることを否定するものではない。
【0056】
なお、物理量検出素子10が絶対圧力センサに搭載される場合、空洞部23は真空状態に保たれ大気とは接しないため、ガラス基板30の一方の面(表面)に機能膜を形成する必要はない。
【0057】
〈第1の実施の形態の変形例1〉
第1の実施の形態の変形例1では、第1の実施の形態とは構造の異なる物理量検出素子の例を示す。なお、第1の実施の形態の変形例1において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する。
【0058】
図9は、第1の実施の形態の変形例1に係る物理量検出素子を例示する断面図である。
図9を参照するに、第1の実施の形態の変形例1に係る物理量検出素子10Aは、ダイヤフラム部20Aと、ガラス基板30Aと、機能膜40とを有する。物理量検出素子10Aは、例えば、絶対圧力センサに搭載することができる。
【0059】
物理量検出部であるダイヤフラム部20A(感圧ダイヤフラム部)は、物理量検出素子10のダイヤフラム部20(
図1参照)とは異なり、平板状とされている。ダイヤフラム部20Aの機能は、ダイヤフラム部20と同様である。ダイヤフラム部20Aは、ダイヤフラム部20と同様に、例えば、シリコン基板(Si基板)に形成される。このように、ダイヤフラム部20Aとして、シリコン基板(Si基板)等の全体をダイヤフラムの厚さまで薄くしたものを用いてもよい。
【0060】
ガラス基板30Aは、平板部31と、枠部32とを有する。枠部32は、平板部31の外縁部に環状に立設するように平板部31と一体に形成された部材である。ガラス基板30Aは、ダイヤフラム部20Aを支持する支持部材であり、例えば、ガラス基板30Aの一方の面である枠部32の上面にダイヤフラム部20Aの裏面の外縁部が陽極接合により固定されている。ダイヤフラム部20Aがガラス基板30Aの一方の面に接合されることで、密封された空間である空洞部23が形成される。
【0061】
機能膜40は、ガラス基板30Aの他方の面である平板部31の裏面を被覆するように形成されている。機能膜40の詳細については、第1の実施の形態で説明した通りである。
【0062】
このように、第1の実施の形態の変形例1においても、ガラス基板30Aの他方の面(裏面)を被覆するように機能膜40が形成されているため、第1の実施の形態と同様の効果を奏する。
【0063】
〈第1の実施の形態の変形例2〉
第1の実施の形態の変形例2では、第1の実施の形態とは構造の異なる物理量検出素子の他の例を示す。なお、第1の実施の形態の変形例2において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する。
【0064】
図10は、第1の実施の形態の変形例2に係る物理量検出素子を例示する断面図である。
図10を参照するに、第1の実施の形態の変形例2に係る物理量検出素子10Bは、ダイヤフラム部20Aがダイヤフラム部20Bに置換された点が、第1の実施の形態の変形例1に係る物理量検出素子10A(
図9参照)と相違する。物理量検出素子10Bは、例えば、絶対圧力センサに搭載することができる。
【0065】
物理量検出部であるダイヤフラム部20B(感圧ダイヤフラム部)は、物理量検出素子10Aのダイヤフラム部20A(
図9参照)とは異なり、平板の外縁部にガラス基板30Aとは反対側に突起する枠状の突起部24が設けられている。ダイヤフラム部20Bの機能は、ダイヤフラム部20Aと同様である。ダイヤフラム部20Bは、ダイヤフラム部20Aと同様に、例えば、シリコン基板(Si基板)に形成される。このように、ダイヤフラム部20Bとして、シリコン基板(Si基板)等の一部(突起部24を除く部分)をダイヤフラムの厚さまで薄くしたものを用いてもよい。
【0066】
このように、第1の実施の形態の変形例2においても、ガラス基板30Aの他方の面(裏面)を被覆するように機能膜40が形成されているため、第1の実施の形態と同様の効果を奏する。
【0067】
〈第1の実施の形態の変形例3〉
第1の実施の形態の変形例3では、第1の実施の形態とは構造の異なる物理量検出素子の更に他の例を示す。なお、第1の実施の形態の変形例3において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する。
【0068】
図11は、第1の実施の形態の変形例3に係る物理量検出素子を例示する図であり、
図11(a)は平面図、
図11(b)は断面図である。但し、
図11(a)では、後述する基板50(パッド511及びピエゾ抵抗素子521を含む)のみを図示している。
【0069】
図11を参照するに、第1の実施の形態の変形例3に係る物理量検出素子10Cは、ガラス基板30B及び30Cと、機能膜40B及び40Cと、基板50とを有する。物理量検出素子10Cは、例えば、加速度センサに搭載することができる。
【0070】
基板50は、枠部51と、梁部52と、錘部53とを有する。梁部52は錘部53を支持する部位であり、梁部52の一端は枠部51に接続され、梁部52の他端に錘部53が形成されている。梁部52及び錘部53は物理量検出部であり、枠部51に対して矢印A方向(略上下方向)に回動可能に構成されている。基板50としては、例えば、シリコン基板(Si基板)を用いることができる。この場合、枠部51、梁部52、及び錘部53は、シリコンにより一体に形成することができる。
【0071】
基板50の枠部51の上面には、空洞部33を有するガラス基板30Bの一方の面が接合されている。又、基板50の枠部51の下面には、空洞部34を有するガラス基板30Cの一方の面が接合されている。基板50がシリコンである場合には、基板50とガラス基板30B及び30Cとは、例えば、陽極接合により固定することができる。空洞部33及び34は連通して密封された空間を形成し、密封された空間内に物理量検出部である梁部52及び錘部53が配置されている。
【0072】
但し、空洞部はガラス基板30B及び30Cの何れか一方のみに形成されていてもよい。その場合には、ガラス基板30B及び30Cとの間に隙間が形成されるような位置に、梁部52及び錘部53を形成すればよい。
【0073】
梁部52にはピエゾ抵抗素子521が形成されている。錘部53は、加速度がかかることにより矢印A方向(略上下方向)に回動し、錘部53を支持する梁部52も錘部53の動きによって上下に撓む。梁部52の撓みによって梁部52上のピエゾ抵抗素子521の抵抗値が変化し、この抵抗値の変化を検出することで加速度を検出できる。
【0074】
枠部51の上面のガラス基板30Bの外側には、アルミニウム等からなるパッド511が形成されている。パッド511は、拡散配線等(図示せず)により、ピエゾ抵抗素子521と電気的に接続されている。パッド511を外部IC等と接続することにより、物理量検出素子10Cを用いた加速度センサを実現できる。
【0075】
機能膜40Bは、ガラス基板30Bの他方の面(裏面)を被覆するように形成されている。機能膜40Cは、ガラス基板30Cの他方の面(裏面)を被覆するように形成されている。機能膜40B及び40Cの機能や材料等については、第1の実施の形態で説明した機能膜40と同様であるため、その説明は省略する。
【0076】
このように、第1の実施の形態の変形例3においても、ガラス基板30B及び30Cの他方の面(裏面)を被覆するように機能膜40B及び40Cが形成されているため、第1の実施の形態と同様の効果を奏する。
【0077】
〈第2の実施の形態〉
第2の実施の形態では、第1の実施の形態に係る物理量検出素子10を備えた物理量検出装置(半導体センサ)の例を示す。なお、第2の実施の形態において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する。
【0078】
図12は、第2の実施の形態に係る物理量検出装置を例示する断面図である。
図12を参照するに、第2の実施の形態に係る物理量検出装置100は、物理量検出素子10と、基板400と、接着樹脂500と、基板600と、ボンディングワイヤ700と、リッド800とを有する。
【0079】
より詳しくは、物理量検出装置100は、以下のような構成を有する。すなわち、3段の面を有する基板600の下段面上に、接着樹脂500により基板400が接着されている。基板400に、制御IC(Integrated Circuit、集積回路)を実装してもよい。
【0080】
基板400上にはレジストスペーサ310を介して物理量検出素子10が配置され、基板400と物理量検出素子10とは、基板400と物理量検出素子10との間であってレジストスペーサ310の周囲に充填された接着樹脂320により接着されている。
【0081】
なお、レジストスペーサ310は、レジストをパターニングして形成されたものであり、物理量検出素子10を載せるための台座である。又、レジストスペーサ310は、ボンディングワイヤ700のボンディング時に圧力が印加された際に、接着樹脂320の変形を防止する機能を有する。レジストスペーサ310の厚さは、例えば、20〜30μm程度とすることができる。
【0082】
物理量検出素子10のダイヤフラム面21上にはパッド214が設けられており、基板400上にも配線用の端子としてパッド(図示せず)が設けられている。物理量検出素子10のパッド214と基板400のパッド(図示せず)とは、ボンディングワイヤ700により電気的に接続されている。
【0083】
又、基板600の中段の表面にも配線用の端子としてパッド(図示せず)が設けられており、基板400と基板600のパッド同士もボンディングワイヤ700で電気的に接続されている。基板600の上段には、リッド800が設置され、物理量検出素子10を覆っている。又、リッド800の中央には、貫通穴810が設けられ、ダイヤフラム面21が外部の圧力を感知できるように構成されている。
【0084】
物理量検出素子10は、所定の物理量を検出するための素子であり、物理量検出装置100においては、絶対圧力を検出する。ここで、絶対圧力とは、完全真空(又は絶対真空)を基準とした圧力である。そのため、物理量検出素子10の空洞部23は、真空状態に保たれた真空基準室とされている。
【0085】
このように、物理量検出素子10を用いて、絶対圧力を検出する物理量検出装置100を実現できる。但し、物理量検出素子10は、絶対圧力を検出する半導体センサ以外に、ゲージ圧力センサ、フローセンサ、加速度センサ、ジャイロセンサ、レーザ発振子、光スイッチ、ディスプレイ、光センサ、プローバリングヘッド、IRセンサ、μ―TAS(Total Analysis Systems)、インクジェットヘッド、マイクロモータ、RFスイッチ等に用いることができる。
【0086】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳説したが、本発明は、上述した実施の形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態に種々の変形及び置換を加えることができる。