(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はその実施の形態のみに限定されない。なお、本明細書においては、特に断りがない限り、酸素透過度とはJIS K 7126に準拠して25℃で測定され、「mL・20μm/(m
2・atm・day)」の単位で表される値である。
【0016】
<酸素吸収層(a層)>
本実施形態の酸素吸収層(a層)は、(I)酸素吸収剤と、(II)熱可塑性樹脂αとを含有する酸素吸収性樹脂組成物からなる。ここで酸素吸収性とは、かかる樹脂組成物を設置した周囲の雰囲気中から酸素を選択的に吸収することができることをいう。
【0017】
本実施形態の酸素吸収層(a層)の25℃における酸素透過度は、8×10
3mL・20μm/(m
2・atm・day)以上であり、1×10
4mL・20μm/(m
2・atm・day)以上が好ましく、1.5×10
4mL・20μm/(m
2・atm・day)以上がより好ましく、2×10
4mL・20μm/(m
2・atm・day)以上が好ましい。a層の酸素透過度を上記好ましい値以上とすることで、中空容器の酸素吸収速度をより高めることが出来る。
【0018】
酸素吸収層(a層)の酸素透過度を8×10
3mL・20μm/(m
2・atm・day)以上とする方法は特に限定されない。例えば、[1]熱可塑性樹脂αに酸素透過度の高い樹脂を用いる方法、[2]熱可塑性樹脂αに酸素透過度の低い樹脂を用い、酸素吸収性樹脂組成物に酸素透過度の高い樹脂を配合する方法、[3]酸素吸収性樹脂組成物にフィラーを配合する方法、[4]延伸によってa層に空隙を設ける方法、[5]酸素吸収性樹脂組成物に発泡剤を配合する方法、が挙げられる。上記[1]〜[5]の方法は、単独で又は2種以上の方法を組み合わせて用いることが出来る。
【0019】
上記[1]の方法で用いる酸素透過度の高い樹脂としては、LDPE、LLDPE、ポリメチルペンテン(TPX樹脂、三井化学株式会社製)などが例示される。
【0020】
上記[2]の方法で用いる酸素透過度の低い樹脂としては、HDPEなどが挙げられる。また、上記[2]の方法で酸素吸収性樹脂組成物に配合する酸素透過度の高い樹脂としては、上記[2]の方法で説明したものと同様のものを好ましく用いることができる。
【0021】
上記[3]の方法で用いるフィラーは特に限定されず、無機フィラー、有機フィラー、金属フィラーなど公知のフィラーを用いることが出来る。無機フィラーとしては、ガラス繊維、ガラス、鉱物ウール、石英粉、シリカ、砂、クリストバライト、ウオラストナイト(CaSiO
3)、マイカ(ケイ酸塩鉱物)、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、カオリン(Al
4Si
4O
10(OH)
8)、タルク、酸化鉄、チタン、酸化チタン、各種無機顔料、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、石膏(硫酸カルシウム)などが例示される。有機フィラーとしては、パルプ系フィラ−、棉、麻、タンパク質系として羊毛などが挙げられる。また、金属フィラーとしては、銅、アルミニウム、銀、鉄、亜鉛などが使用できる。容器が使用される用途、調達コストや、加工コスト、改質効果などを鑑みて適宜選択すれば良い。さらに、カップリング剤を添加することで、フィラーと樹脂界面での剥離を抑制することが出来る。
【0022】
上記[4]の方法では、例えば中空容器をブロー成形法によって膨らませ延伸することで、(I)酸素吸収剤と熱可塑性樹脂αとの界面で剥離が発生し、空隙を作成することができる。さらに上記[3]の方法と組み合わせることで、フィラーと熱可塑性樹脂αとの界面でも剥離が発生するので、より多くの空隙を作製することが出来る。
【0023】
上記[5]の方法で用いる発泡剤は特に限定されず、公知の発泡剤を用いることが出来る。
【0024】
<(I)酸素吸収剤>
本実施形態において用いられる酸素吸収剤は、下記の2成分、即ち、(A)鉄、コバルト、ニッケル、および銅からなる群より選択される少なくとも1種の遷移金属と、(B)アルミニウムとを含む合金を、アルカリ水溶液と接触させて、上記の成分(B)の少なくとも一部を溶出除去して得られる金属((I)の金属)からなり、前記成分(B)の少なくとも一部を溶出除去して得られる金属の、BET法により測定される比表面積が、少なくとも10m
2/g以上であるものである。なお、本明細書において、「酸素吸収剤」とは、かかる剤を設置した周囲の雰囲気中から酸素を選択的に吸収することができるものをいう。
【0025】
本実施形態において用いられる酸素吸収剤には、国際公開第2012/105457号に記載されたものを、好ましく用いることが出来る。
【0026】
<(I)の金属>
本実施形態の酸素吸収性樹脂組成物に含まれる「(I)の金属」は、上記したように、(A)鉄、コバルト、ニッケル、および銅からなる群より選択される少なくとも1種の遷移金属と、(B)アルミニウムとを含む合金を、アルカリ水溶液と接触させて、上記の成分(B)の少なくとも一部を溶出除去して得られるものである。
【0027】
<成分(A)>
酸素吸収剤を構成する成分(A)として使用可能な遷移金属は、鉄、コバルト、ニッケル、および銅から選択される1種以上のものである。これらは単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることが出来る。例えば、鉄とニッケルが選択される場合、成分(A)として、Fe−Ni合金を使用しても良い。成分(A)としては、好ましくは、鉄、またはニッケルであり、より好ましくは、鉄である。このうち、鉄は、安全性が高く安価であるため好ましい。
【0028】
<成分(B)>
酸素吸収剤を構成する成分(B)は、アルミニウムである。アルミニウムは取り扱いが容易であり安価であるため好ましい。
【0029】
<成分(C)>
本実施形態においては、成分(A)と成分(B)とを含む合金を調製するが、このとき、合金には、添加金属としてさらに、モリブデン、クロム、チタン、バナジウム、タングステンなどを加えても良い。シアン酸類等の添加成分をさらに含有していても良い。
【0030】
本実施形態においては、成分(A)と成分(B)とを含む合金を、溶融法により調製する。このとき、合金中の成分(A)と成分(B)の組成比(成分(A):成分(B))は、好ましくは20:80〜80:20であり、より好ましくは30:70〜70:30である。より具体的な例を挙げると、成分(A)が鉄またはニッケルである場合、成分(A)と成分(B)の合計100質量部に対して、鉄またはニッケルの割合は30〜55質量部、成分(B)アルミニウムの割合は45〜70質量部であることが好ましい。
【0031】
得られる合金は、そのまま、アルカリ水溶液と接触させてもよいが、通常は、微粉砕した後に、アルカリ水溶液に接触させる。本明細書において、「合金」とは、特定の結晶構造を有している単一組成のもののみならず、それらの混合物及び金属自体の混合物を含むものをいう。
【0032】
合金を微粉砕する方法としては、慣用の金属の解砕・粉砕のための方法を適宜使用することができ、例えば、ジョークラッシャーや、ロールクラッシャー、ハンマーミル等で粉砕し、さらに必要に応じてボールミルで微粉砕することができる。あるいは、上記の合金の溶湯をアトマイズ法等の急冷凝固法により微粉化してもよい。ここでアトマイズ法による場合には、アルゴンガス等の不活性ガス中で行なうのが好ましい。アトマイズ法としては、例えば特開平5−23597号公報に記載の方法を使用することができる。
【0033】
得られる合金粉末の粒径は、5〜200μmの範囲内となることが好ましく、またこの粒径分布はできるだけ狭いことが好ましい。粒径の大きなものを排除したり、粒径分布をそろえたりする観点から、市販のメッシュ篩(例えば、200メッシュ篩など)を使用して篩い分け(分級)を適宜行っても良い。なお、アトマイズ法による場合、粉末は球状に近くなる傾向にあり、また、粒径分布を狭くできる傾向にある。
【0034】
本実施形態においては、得られた合金または合金粉末を、アルカリ水溶液と接触させて、合金から、成分(B)の少なくとも一部を溶出させ除去する。すなわち、本実施形態では、合金から成分(B)の少なくとも一部を溶出させ除去した後に得られる金属を使用する。ここで使用するアルカリ水溶液としては、成分(A)を溶解しないか殆ど溶解しないものである一方で、成分(B)分を、溶解し、除去できるもの、すなわち合金から成分(B)を浸出させることができるものであれば特に制限はなく、いずれのものも使用可能である。アルカリ水溶液におけるアルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、アンモニアなどを使用することができる。これらアルカリ水溶液については単独で、または2種以上を組み合わせて用いることが出来る。
【0035】
本実施形態の好ましい態様によれば、上記のアルカリ水溶液は、水酸化ナトリウム水溶液である。例えば、アルカリ水溶液として水酸化ナトリウムを用いると、水洗により過剰量の水酸化ナトリウムを除去し、また溶出したアルミニウムを除去することが容易であり、このため、水洗回数を削減できるという効果が期待できる。
【0036】
アルカリ水溶液との接触において、通常は、合金粉末であれば、合金粉末を上記の水溶液中へ攪拌しながら少しずつ投入するが、合金粉末を水中にいれておき、ここに濃厚なアルカリを滴下しても良い。
【0037】
アルカリ水溶液との接触において、使用するアルカリ水溶液の濃度は、例えば、5〜60質量%であり、より具体的には、例えば水酸化ナトリウムの場合、10〜40質量%が好ましい。
【0038】
アルカリ水溶液との接触においては、該水溶液の温度を、例えば、20〜120℃程度に加温して使用することが好ましい。好ましくは、アルカリ水溶液の温度は25〜100℃である。
【0039】
合金または合金粉末をアルカリ水溶液と接触させておく時間は、使用する合金の形状、状態、およびその量、アルカリ水溶液の濃度、処理する際の温度等により変化し得るが、通常は、3〜300分間程度で良い。処理時間を調整することで、合金からの成分(B)の溶出量を調節することもできる。
【0040】
本実施形態においては、アルカリ水溶液との接触によって、合金から、成分(B)の少なくとも一部を溶出除去する。ここで、「成分(B)の少なくとも一部」を溶出除去するとは、成分(A)および成分(B)を含む合金から、成分(B)の一部を溶出させ除去することに加えて、成分(B)の全部を合金から溶出させ除去する場合も包含する意味である。なお、溶出の過程では、結果として成分(A)の一部が溶解する可能性も否定できないので、「成分(B)の少なくとも一部」には、成分(B)のみがアルカリ水溶液との接触によって溶出される場合に限定して解釈する必要はない。
【0041】
アルカリ水溶液との接触によって、成分(B)の少なくとも一部、好ましくはその大部分が合金から溶出する。合金からの成分(B)の溶出の割合は、溶出除去によって得られる金属における成分(B)の含有率(質量基準)(残存率)で示すことができる。
【0042】
酸素吸収剤として用いられる(I)の金属において、成分(B)の含有率は、好ましくは0.1〜50質量%であり、より好ましくは1〜40質量%である。より具体的には、例えば、合金が、Al−Fe合金である場合、アルカリ水溶液との接触によってアルミニウムを溶出除去した後に得られる金属におけるアルミニウムの含有率は、好ましくは0.1〜50質量%であり、より好ましくは1〜40質量%である。なお、酸素吸収性樹脂組成物に含まれる(I)の金属中の成分(B)の含有率は、例えば、ICP法により測定することができる。
【0043】
溶出除去処理を行った後、通常は水洗を行う。このようにして得られた金属または金属粉末は、通常、大気中では直ちに酸化劣化してしまうため、必要に応じて、水中で保存することができる。
【0044】
酸素吸収剤として用いられる(I)の金属を得るにあたっては、成分(A)と成分(B)を含む合金を、アルカリ水溶液と接触させる際に、その処理以降については、金属および合金が、酸素に極力触れさせないように配慮する必要がある。このため、これら一連の処理を、水溶液中および水中で行ってそのまま保存したり、無酸素条件下、または不活性ガス下において行ったりすることが望ましい。また、使用に際しては、水中から出して金属を乾燥させる必要がある場合には、例えば、真空乾燥などの手段により、酸素による影響をできるだけ排除した条件にて乾燥を行い、保持することが望ましい。
【0045】
上記のようにして得られた(I)の金属は、多孔質形状(または多孔体)である。ここで、多孔質形状とは、電子顕微鏡にて確認できる程度の多数の細孔を表面および内部に有している状態をいう。本実施形態においては、金属が有する多孔質形状の程度は、その比表面積にて表すことができる。具体的には、本実施形態による酸素吸収性樹脂組成物に用いられる金属のBET法による比表面積は少なくとも10m
2/gであり、好ましくは少なくとも20m
2/gである。
【0046】
例えば、本実施形態において、成分(A)として鉄を用いた場合、得られる多孔質形状の金属の比表面積(BET法によるもの)は、例えば、20〜40m
2/g程度である一方で、多孔質ではない通常の鉄粉(還元鉄粉またはアトマイズ鉄粉)の場合、その比表面積は0.07〜0.13m
2/g程度であり、多孔質形状であるか否かは明らかである。
【0047】
また、金属が有する多孔質形状の程度は、かさ密度で表すこともできる。酸素吸収剤として用いられる(I)の金属のかさ密度は、2g/cm
3以下であり、好ましくは、1.5g/cm
3以下である。因みに、多孔質ではない通常の鉄粉(還元鉄粉またはアトマイズ鉄粉)の場合、そのかさ密度は、2より大きく3g/cm
3以下程度である。
【0048】
本実施形態において、成分(A)として鉄を用い、成分(B)としてアルミニウムを用いた場合、得られる多孔質形状の(I)の金属粉体の平均粒子径は、通常、1〜1,000μm、好ましくは10〜500μmである。本明細書において、「平均粒子径」は、レーザー回折法によって粒子径を測定し、得られた粒度分布から算出した値であり、例えば、レーザー回折散乱式粒度分布測定器(株式会社セイシン企業製SKレーザーマイクロンサイザーLMS−2000e)を用いて測定することができる。
【0049】
酸素吸収剤として用いられる多孔質の(I)の金属は、高い酸素吸収活性を有しているため、低湿度条件(例えば、30%RH(相対湿度)(25℃)以下の条件)の雰囲気下であっても、酸素吸収剤としての性能を好適に発揮することができる。
【0050】
本実施形態による酸素吸収性樹脂組成物に含まれる酸素吸収剤は、30%RH(25℃)以下の低湿度の雰囲気においても酸素を吸収するものである。より詳しくは、30%RH(相対湿度)(25℃)以下の低湿度の雰囲気において、酸素吸収剤として用いられる(I)の金属が少なくとも5mL/gの酸素、より好ましくは10mL/gの酸素を吸収する。上記の(I)の金属の酸素吸収量は、例えば、30%RH(相対湿度)(25℃)以下の低湿度の雰囲気において、5〜150mL/gである。
【0051】
本実施形態による酸素吸収中空容器を構成する酸素吸収層(a層)において、(I)の金属を、下記の(II)熱可塑性樹脂αと混合するとき、a層中の(I)の金属の含有量は1〜80質量%が好ましく、より好ましくは5〜70質量%であり、特に好ましくは10〜60質量%である。(I)の金属の含有量が上記好ましい範囲内の場合、より高い酸素吸収性能が得られると同時に、金属含有量増加に伴うa層の粘度上昇を抑制出来るので成形加工を良好に維持できる。
【0052】
<(II)熱可塑性樹脂α>
本実施形態の酸素吸収層(a層)に用いる(II)熱可塑性樹脂αは特に限定されず、従来公知の熱可塑性樹脂を用いることができる。酸素吸収層(a層)の酸素透過度を8×10
3mL・20μm/(m
2・atm・day)以上とする為に、上記[1]の方法を用いる場合には、熱可塑性樹脂αの酸素透過度は、5×10
3mL・20μm/(m
2・atm・day)以上が好ましく、1×10
4mL・20μm/(m
2・atm・day)以上がより好ましく、2×10
4mL・20μm/(m
2・atm・day)以上が特に好ましい。酸素透過度が上記好ましい値以上の樹脂を用いることで、中空容器の酸素吸収速度をより高めることが出来る。
【0053】
(II)熱可塑性樹脂αのメルトフローレイト(JIS K7210準拠、以下MFRとも表記する)は0.2〜8g/10分であることが好ましく、0.2〜5g/10分がより好ましく、0.2〜2.0g/10分が特に好ましい。
【0054】
(II)熱可塑性樹脂αの25℃における水蒸気透過度は、0.5g・20μm/(m
2・day)以上が好ましく、2.0g・20μm/(m
2・day)以上がより好ましい。水蒸気透過度が上記好ましい値以上の樹脂を用いることで、中空容器の成型時に酸素吸収剤に含まれる水分が外部に抜けやすく発泡をより抑制できるため、容器外観を良好にすることが出来る。
【0055】
(II)熱可塑性樹脂αの融点は250℃以下が好ましく、200℃以下がより好ましく、160℃以下であることが更に好ましい。融点が上記好ましい温度以下の樹脂を用いることで、より低温で成形することが可能となるため、中空容器の成型時に酸素吸収剤に含まれる水分に起因する発泡をより抑制することが出来る。
【0056】
本実施形態で好ましく用いられる(II)熱可塑性樹脂αとしては、ポリオレフィン樹脂が挙げられる。ポリオレフィン樹脂としては、従来公知のポリオレフィン樹脂を用いることができる。例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、メタロセン触媒によるポリエチレン等の各種ポリエチレン類(PE)、ポリスチレン、ポリメチルペンテン、プロピレンホモポリマー、プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体等のポリプロピレン類が挙げられる。酸素吸収性能やフィルム加工性から、ポリオレフィン樹脂としては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、メタロセン触媒によるポリエチレン等の各種ポリエチレン類が特に好ましく用いられる。これらポリオレフィン樹脂は単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることが出来る。さらに、これらポリオレフィン樹脂には、必要に応じて、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、熱可塑性エラストマーを添加してもよい。
【0057】
熱可塑性樹脂αには、本発明の効果を本質的に損なわない限り、ワックス、界面活性剤等の分散剤、酸化チタン等の着色顔料、酸化防止剤、スリップ剤、帯電防止剤、安定剤等の添加剤、炭酸カルシウム、クレー、マイカ、シリカ等の充填剤、乾燥剤、消臭剤、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤、難燃剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、脱臭剤、帯電防止剤、粘着防止剤、防曇剤、表面処理剤等の任意成分を配合することができる。特に、酸素吸収剤の分散を向上させるためには分散剤を添加するのが良い。また、製造中に発生した端材をリサイクルし、再加工するためには、酸化防止剤を添加するのが良い。配合方法は、特に制限されないが、樹脂と溶融混練することが一般的である。
【0058】
本実施形態においては、酸素吸収速度向上の観点から、前記酸素吸収中空容器の酸素吸収層(a層)の厚さが30〜500μmであることが好ましく、50〜300μmがより好ましく、100〜200μmが特に好ましい。
【0059】
<隔離層(b層)>
本実施形態において、熱可塑性樹脂βを含有する隔離層(b層)は、中空容器に収容する内容物と酸素吸収剤との接触を避ける為に設けられる。
【0060】
本実施形態においては、隔離層(b層)の25℃における酸素透過度は2×10
3mL・20μm/(m
2・atm・day)以上が好ましく、5×10
3mL・20μm/(m
2・atm・day)以上がより好ましく、1×10
4mL・20μm/(m
2・atm・day)以上がさらに好ましい。隔離層(b層)の酸素透過度を上記好ましい値以上とすることで、中空容器内の酸素がより速やかに酸素吸収層(a層)に到達するので、酸素吸収速度をより高めることが出来る。
【0061】
隔離層(b層)の酸素透過度を大きくする方法は特に限定されない。酸素吸収層(a層)の酸素透過度を達成する為の方法と同一の手法をとれば良く、例えば、フィラーを配合する方法、熱可塑性樹脂βとして酸素透過度の高いものを用いる方法、延伸等によってb層に空孔や空隙を設ける方法が挙げられる。しかしながら、用途によっては、容器に収納される製品への酸素吸収層からの溶出による化学物質の移行や、隔離層にいれたフィラー等の脱落等による化学物質の移行が問題となる場合には、熱可塑性樹脂βをLDPEやLLDPEやポリメチルペンテン(TPX樹脂、三井化学株式会社製)などを使用する手法や、熱可塑性樹脂βを、例えばHDPEなどの、低い酸素透過度である樹脂をベースに、その樹脂に対し、別の酸素透過度の高い熱可塑性樹脂であるLDPEやLLDPEやポリメチルペンテン(TPX樹脂、三井化学株式会社製)などを適宜加えることで改質する手法を選択することが好まれる。
【0062】
<熱可塑性樹脂β>
隔離層(b層)に用いる熱可塑性樹脂βは、特に限定されないが、上記の熱可塑性樹脂αで説明したものと同様のものを好ましく用いることができる。
【0063】
隔離層(b層)の酸素透過度を大きくする為には、熱可塑性樹脂βに酸素透過度の大きな樹脂を用いる場合には、熱可塑性樹脂βの酸素透過度は2×10
3mL・20μm/(m
2・atm・day)以上が好ましく、5×10
3mL・20μm/(m
2・atm・day)以上がより好ましく、1×10
4mL・20μm/(m
2・atm・day)以上がさらに好ましく、2×10
4mL・20μm/(m
2・atm・day)以上が特に好ましい。酸素透過度が上記好ましい値以上の樹脂を用いることで、中空容器内の酸素がより速やかに酸素吸収層(a層)に到達するので、酸素吸収速度をより高めることが出来る。
【0064】
本実施形態において、熱可塑性樹脂αのメルトフローレイトと熱可塑性樹脂βのメルトフローレイトとの差は、0〜2g/10分が好ましく、0〜1g/10分がより好ましく、0〜0.5g/10分が特に好ましい。メルトフローレイトの差が上記好ましい範囲となるように熱可塑性樹脂αと熱可塑性樹脂βを選択することで、酸素吸収中空容器の成型において、せん断圧力の差異による偏肉をより抑制することが出来る。
【0065】
隔離層(b層)の厚みは0.1〜100μmであることが好ましい。厚みが上記好ましい範囲内の場合、中空容器に収容する内容物と酸素吸収剤との接触を避けると同時に、酸素吸収速度を向上させることができる。
【0066】
<ガスバリア層(c層)>
本実施形態の酸素吸収中空容器は、ガスバリア性物質を含有するガスバリア層(c層)を有する。c層の25℃における酸素透過度は20mL・20μm/(m
2・atm・day)以下が好ましく、10mL・20μm/(m
2・atm・day)以下がより好ましい。酸素透過度が上記好ましい値以下の樹脂を用いることで、中空容器内への酸素の侵入をより低減することが出来る。
【0067】
ガスバリア性物質としては、シリカやアルミナなどの無機酸化物をポリエステルやポリアミド等の熱可塑性樹脂に蒸着した各種蒸着フィルム、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリメタキシリレンアジパミド樹脂、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコールが挙げられる。
【0068】
ガスバリア層(c層)の厚みは特に限定されないが、1〜200μmが好ましく、より好ましくは3μm〜100μmである。より好ましくは5μm〜50μmである。厚みを上記好ましい範囲とすることで、ダイレクトブロー法による中空容器製造の際に容器のコーナーで延伸によるバリア層の薄膜化を抑制できガスバリア性を高められると共に製造コストを低くすることが出来る。
【0069】
<任意の層>
本実施形態の酸素吸収中空容器においては、上述した酸素吸収層(a層)、隔離層(b層)、ガスバリア層(c層)以外に、任意の層を含んでいてもよい。そのような任意の層としては、例えば、接着性樹脂層、保護層、遮光層等が挙げられる。
【0070】
<接着性樹脂層(d層)>
例えば、隣接する2つの層の間の層間接着強度をより高める観点から、当該2つの層の間に接着性樹脂層(d層)を設けることが好ましい。接着性樹脂層(d層)は、接着性を有する熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。接着性を有する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン樹脂;ポリエステル系ブロック共重合体を主成分としたポリエステル系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。また、接着性を高める観点から、接着する層に用いられている熱可塑性樹脂と同種の樹脂を変性したものが好ましい。なお、接着性樹脂層(d層)の厚みは、特に限定されないが、実用的な接着強度を発揮しつつ成形加工性を確保するという観点から、1〜200μmが好ましく、より好ましくは3〜100μmである。より好ましくは5〜50μmである。さらに、ガスバリア層(c層)に隣接する層に接着性樹脂層(d層)を設ける場合、c層とd層との厚みの差が小さいほど、層間のラミネート強度が安定するために好ましい。
【0071】
本発明の態様においては、前記酸素吸収中空容器のd層を構成する接着性樹脂の成分中、不飽和カルボン酸またはその酸無水物に由来する構成単位の含有量が、0.01〜20重量部であることが好ましい。接着性樹脂層(d層)を構成する樹脂は、、そのまま構成樹脂として使用しても良いが、他の熱可塑性樹脂に配合することで希釈して使用してもよい。
【0072】
<保護層(e層)>
本実施形態による酸素吸収中空容器において、熱可塑性樹脂γを含有する保護層(e層)を設けることで、水蒸気の侵入を抑制することが出来る。熱可塑性樹脂γは特に限定されないが、水蒸気透過度が5g・10μm/(m
2・atm・day)以下であることが好ましく、より好ましくは1g・10μm/(m
2・atm・day)以下である。特に、高密度ポリエチレン系樹脂が実用上有用である。保護層(e層)の厚みは、100μm〜1000μmが好ましく、より好ましくは200μm〜800μmである。
【0073】
本実施形態においては、酸素吸収中空容器の内側面から外側面へ、隔離層(b層)、酸素吸収層(a層)、ガスバリア層(c層)、保護層(e層)の順に配置されてなることが特に好ましい。中空容器の容量によっては、落下強度を強くする要求が高まるため、ガスバリア層(c層)と酸素吸収層(a層)及び、ガスバリア層(c層)と保護層(e層)の間に、層間強度改善の為、接着性樹脂による接着性樹脂層(d層)が配置されていても良く、その場合、酸素吸収中空容器の内側面から外側面へ、隔離層(b層)、酸素吸収層(a層)、接着性樹脂層(d層)、ガスバリア層(c層)、接着性樹脂層(d層)、保護層(e層)の順に配置されてなること好ましい。
【0074】
本実施形態においては、酸素吸収層由来の着色による外観上の色ムラが無いことが好ましい。また、水による溶出試験において、金属の溶出濃度が1ppm以下であることがさらに好ましい。ここで、上記の溶出濃度は、実施例に記載した方法で測定される値を意味する。
【0075】
<酸素吸収中空容器の製造方法>
本発明による酸素吸収中空容器の製造方法は、従来公知の方法を用いることができ、特に限定されない。例えば、溶融押出成形によりパリソンを成形しこれをブローして成形を行う押出中空成形と、射出成型によりプリフォームを成形し、これをブローして成形を行う射出中空成形などが例示される。本発明においては、4種6層以上の多層容器の成型に実績のある、押出中空成型による成型法が望ましい。
【0076】
本発明による酸素吸収中空容器の製造方法としては、酸素吸収剤にトリガーが存在しないことから、成形中に酸素吸収性樹脂組成物が高温の空気にさらされる場合、徐々に酸素を吸収し性能劣化が生じうる。その為、中空成形機中のa〜e層を構成する樹脂の原料供給部のうち少なくとも1部に対し不活性ガスの吹き付けを施し、押出機ホッパー・バレル内を不活性ガスで置換することによって酸素吸収樹脂組成物の性能劣化を防止することができる。また、このときの押出機ホッパー・バレル内の酸素濃度は5容量%以下であることが好ましく、より好ましくは1容量%以下である。
【0077】
本発明による酸素吸収中空容器の製造方法としては、酸素吸収剤にトリガーが存在しないことから、押出機より押し出される溶融した中空の樹脂(パリソン)に対し、エアーを吹き込んで予備ブロー、またはブローする際、大量のエアーと溶融した高温の樹脂が接触し、徐々に酸素を吸収し性能劣化が生じうる。その為、中空容器成型時において、パリソンの予備ブロー、本ブロー少なくともどちらか一方のブローの為に使用される気体に、不活性ガスを使用してもよい。不活性ガスの酸素濃度は、10容量%以下であることが好ましく、より好ましくは5容量%以下であり、特に好ましくは1容量%以下である。また、ガス気体の吹き込みにより容器成形をおこなった後、容器口部をカッターで開口せずに、調整されたガス気体で満たしたまま製造し、中空容器の開口部を使用時に熱線カッター等で開口させることで、中空容器の製造時から使用時までの期間において、該中空容器の酸素吸収性能の低下を防ぐとともに、該中空容器の内部クリーン性を担保してもよい。
【0078】
本発明による酸素吸収中空容器の保管方法は特に限定されないが、酸素吸収性能を長期間維持できるため低酸素濃度で保管することが好ましい。例えば、25℃における酸素透過度が20(mL・20μm/m
2・atm・day)以下のバリア包装袋を用いて、脱気シーラーによって脱気包装する方法が挙げられる。さらに、該バリア包装袋に脱酸素剤を同梱することで、より長期間、低酸素濃度で保管することが出来る。
【0079】
<酸素吸収中空容器の用途>
本発明による酸素吸収中空容器は、水分活性の高い領域から低い領域まで適用可能である。これにより、水分活性が低く、低湿度の乾燥条件での保存が必要とされる物品に好適に適用できる。なお、水分活性とは物品中の自由水含有量を示す尺度で、0〜1の数字で示され、水分のない物品は0、純水は1となる。すなわち、ある物品の水分活性Awは、その物品を密封し平衡状態に到達した後の空間内の水蒸気圧をP、純水の水蒸気圧をP0、同空間内の相対湿度をRH(%)、とした場合、
Aw=P/P0=RH/100
と定義される。
【0080】
本発明による酸素吸収中空容器は、被保存物の水分の有無によらず、酸素吸収することができるものであり、中空容器の中身としては、ミネラルウオーターのような水から、0〜30%RHで保存されることが好ましいような低水分含有物や、水分を含まない物まで収容できる。低水分含有物としては粉末、顆粒食品類:(粉末スープ、粉末飲料、粉末菓子、調味料、穀物粉、栄養食品、健康食品、着色料、着香料、香辛料)、粉末,顆粒薬品:(散薬類、粉石鹸、歯磨粉、工業薬品)、これらのものの成形体(錠剤型)等水分の増加を嫌う食品、薬品を例示することができる。水分を含まない物の例としては、工業部品や医薬品類(アトルバスタチン、レボチロキシン、など)が例示される。
【実施例】
【0081】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。以下に発明に関する実施例を示す。
【0082】
(実施例1)
(Al−Fe多孔質金属粉乾燥物の作製)
Al(アルミニウム)粉とFe(鉄)粉をそれぞれ50質量%の割合で混合し、窒素中で溶解して、Al−Fe合金を得た。得たAl−Fe合金はジョークラッシャー、ロールクラッシャー及びボールミルを用いて粉砕し、粉砕物を目開き200メッシュ(0.075mm)の網を用いて分級し、200メッシュ以下のAl−Fe合金を得た。得られたAl−Fe合金粉150gを、30質量%水酸化ナトリウム水溶液中、50℃で1時間攪拌混合した後、混合溶液を静置し上層液を取り除いた。残った沈殿物をpHが10以下になるまで蒸留水で洗浄し、Al−Fe多孔質金属粉を得た。多孔質金属粉は、酸素に接触させることを回避すべく、水溶液中で保存した。
【0083】
得られた多孔質金属粉を、200Pa以下、80℃で水分量1質量%以下まで真空乾燥してAl−Fe多孔質金属粉乾燥物(以下、当該Al−Fe多孔質金属粉乾燥物を「金属粉1」と表記する)を得た。得られた金属粉1のかさ密度は1.3g/cm
3であり(JISZ2504に準拠して測定)、鉄の含有率は97.3重量%であった。この1gを、通気性小袋内に包装し、乾燥剤と共にガスバリア袋(Al箔ラミネートプラスチック袋)に入れ、500mLの空気(酸素濃度20.9容量%)を充填して密封し、25℃で7日保存した。金属粉1の比表面積を自動比表面積測定装置(株式会社島津製作所製「ジェミニVII2390」)を使用して測定した結果、金属粉1の比表面積は101.0m
2/gであった。これらの結果を表1に示した。
【0084】
(酸素吸収樹脂組成物ペレットAの作製)
金属粉1と、直鎖状低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン株式会社製、商品名:「125FN」、融点120℃、25℃における酸素透過度8290mL・20μm/(m
2・atm・day)、MFR2.2g/10min、以下「LLDPE1」ともいう)とを、金属粉1:LLDPE1=30:70(質量比)となるように、窒素ガスで置換したメインフィーダとサイドフィーダの2種類のフィーダを有する二軸押出機で溶融混練してストランド状に押出した後、ペレタイザーで裁断し、「酸素吸収性樹脂組成物ペレットA」を得た。LLDPE1はメインフィーダにより投入し、溶融したLLDPE1にサイドフィーダにより金属粉1を投入した。酸素吸収樹脂組成物ペレットAの密度は約1.2g/cm
3であった。
【0085】
(酸素吸収中空容器1の作製)
内側面から外側面へ、隔離層(b層)/酸素吸収層(a層)/接着性樹脂層(d層)/ガスバリア層(c層)/接着性樹脂層(d層)/保護層(e層)の層構成を有する容量120mLの酸素吸収中空容器1を4種6層のダイレクトブロー成形機を用い、成形温度180℃で作製した。各層の材料として、酸素吸収層(a層)には酸素吸収性樹脂組成物ペレットAを、隔離層(b層)及び保護層(e層)にはLLDPE1を、ガスバリア層(c層)にはエチレンビニルアルコール共重合樹脂(株式会社クラレ製、商品名:エバール「F101B」)を、接着性樹脂層(d層)には、100重量部のカルボン酸変性ポリオレフィン樹脂(三菱化学株式会社製)、商品名:H511を、それぞれ用いた。
【0086】
中空容器1の寸法は高さ83.5mm、容器底外径48mm、口部内径25.2mmであった。最内層の表面積は0.013m
2であった。各層の厚みは、内側面から外側面へ、40μm/200μm/200μm/250μm/200μm/100μmであった。また、酸素吸収層(a層)と隔離層(b層)では同じLLDPE1を用いており、熱可塑性樹脂αと熱可塑性樹脂βとのMFR差は0.0g/10分である。
【0087】
(酸素透過度測定)
酸素吸収層(a層)及び隔離層(b層)の酸素透過度は下記の測定機、手順によって求めた。まず射出成形機によって15cm×15cm×900μmのシートを成形した。酸素透過度測定装置(ILLINOI社製「Model 8501」)を用いて、25℃0%RHにおける酸素透過度を測定し、20μm換算での酸素透過度を算出した。
【0088】
(厚みムラ測定)
次いで、中空容器1の胴部を底部から約40mmの地点で水平方向に切断し、胴部厚みを同間隔で8か所測定した結果、隔離層(b層)の平均厚みは40μm、標準偏差は4.8μmであった。また、目視で内面を観察した所、目立った色ムラは見られなかった。
【0089】
(金属粉溶出量測定)
また、中空容器1の最内層における金属粉の溶出量を以下の方法で測定した。まず、中空容器1内に脱イオン水100mLを封入し、40℃で一ヶ月保管した。中空容器1内の水49.5mLを取り出し、10wt%の硝酸0.5mLを加え、誘導結合プラズマ発行分析装置(日立ハイテクサイエンス社製「SPS3000」)を用い、10ppbを検出限界として分析した。鉄の濃度は検出限界以下であり、鉄粉の溶出が認められないことが分かった。
【0090】
(脱酸素日数測定)
加えて、中空容器1の脱酸素日数(容器内の酸素濃度が0.1容量%以下となる日数)を以下の手順で測定した。まず、中空容器1内の充填率が全容積の約50容量%となるようにガラスビーズ及び乾燥剤を封入し、中空容器内の空気量(ヘッドスペース)を60mLとした。中空容器の開口部を、透明蒸着フィルムにより密封した。密封後は25℃で保存し、経過日数ごとの酸素濃度をタイテック株式会社製の光学式酸素濃度計、商品名「Fibox3」により測定した。その結果、9日経過後に酸素濃度が0.1容量%となった。結果を表1に示す。
【0091】
(実施例2)
(酸素吸収中空容器2の作製)
各層の材料として、保護層(e層)及び隔離層(b層)に用いたLLDPE1に代えて高密度ポリエチレン(京葉ポリエチレン株式会社製、商品名:「B5803R」、融点133℃・25℃における酸素透過度は2800mL・20μm/(m
2・atm・day)、MFR0.5g/10min、以下「HDPE1」ともいう)を、接着性樹脂層(d)で用いたLLDPE1に代えてHDPE1を、それぞれ用いたこと以外は、実施例1と同様にして容量120mLの中空容器2を作成した。酸素吸収層(a層)にはLLDPE1を、隔離層(b層)にはHDPE1を用いており、熱可塑性樹脂αと熱可塑性樹脂βとのMFR差は0.5g/10分であった。
【0092】
(厚みムラ測定)
次いで、実施例1と同様に胴部厚みを測定した結果、隔離層(b層)の平均厚みは30μm、標準偏差は10.7μmであった。また、目視で内面を観察した所、偏肉由来である縦縞状の色ムラが観察された。
【0093】
以下、実施例1と同様に、金属粉の溶出量、脱酸素日数を測定した。結果を表1に示す。
【0094】
(比較例1)
(酸素吸収樹脂組成物ペレットBの作製)
LLDPE1に代えてHDPE1を用いた以外は、実施例1と同様にして、酸素吸収性樹脂組成物ペレットBを得た。酸素吸収樹脂組成物ペレットBの密度は約1.2g/cm
3であった。
【0095】
(酸素吸収中空容器3の作製)
各層の材料として、酸素吸収層(a層)には酸素吸収性樹脂組成物ペレットAに代えて酸素吸収樹脂組成物ペレットBを、隔離層(b層)及び保護層(e層)にはLLDPE1に代えてHDPE1を、それぞれ用いたこと以外は、実施例1と同様にして容量120mLの中空容器3を作成した。酸素吸収層(a層)と隔離層(b層)では同じHDPE1を用いており、熱可塑性樹脂αと熱可塑性樹脂βとのMFR差は0.0g/10分である。
【0096】
(厚みムラ測定)
次いで、実施例1と同様に胴部厚みを測定した結果、保護層(e層)の平均厚みは40μm、標準偏差は6.2μmであった。また、目視で内面を観察した所、目視で内面を観察した所、偏肉由来である縦縞状の色ムラが観察された。
【0097】
以下、実施例1と同様に、金属粉の溶出量、脱酸素日数を測定した。結果を表1に示す。
【0098】
【表1】