【文献】
藤原琢也 ほか,揺動する循環流動層内における触媒粉体濃度分布の可視化計測,平成22年度 日本大学理工学部 学術講演会論文集,2010年11月27日,pp. 747-748
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術では、反復計算の過程においてセンシティビティマップSeは常に一定としているが、本来、誘電率分布に応じて感度は変化し得るため、反復計算により誘電率を決定するのであれば誘電率分布の変更毎に感度を更新しなければならず、感度一定では正確な再構成を得ることは困難である。その一方、センシティビティマップ、あるいはセンシティビティ行列は、m個の要素のうち1つの誘電率が変化したときの差分感度をm個全ての要素について求めて線形結合したものであり、その作成に必要な数値シミュレーションの回数は再構成する画像の解像度と計測した静電容量の数の積だけ必要となるため、多大な時間を要する問題がある。さらに、感度は繰返し計算で変化する誘電率分布に応じて求め、その感度に基づいて誘電率分布を変更するべきであるが、従来技術では基準となる誘電率分布から1要素を変化させたときの感度の線形和を常に利用しているため、繰り返し計算で利用する感度が不正確である。
【0006】
また、誘電率分布を連続変数として扱った場合、特定の媒体の誘電率でない中間的な誘電率を許容することになるが、これを除外する手段はなく、結果として再構成画像が不鮮明となる問題がある。
【0007】
本発明の目的は、媒体分布の再構成画像の精度を向上させることができる装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、少なくとも2つの媒体が存在する管路において、その周囲に配置された複数の電極を有するセンサと、前記電極間の静電容量を計測する計測手段と、前記管路内部の前記少なくとも2つの媒体の分布画像を再構成する画像再構成手段と、再構成した分布画像を表示する表示手段とを備え、前記画像再構成手段は、前記計測手段で得られた静電容量と一致する前記管路内部の媒体の誘電率分布を反復計算により算出する際に、誘電率分布の変化が静電容量
に与える影響を誘電率分布の更新毎に算出し、算出して得られた感度を用いて反復計算を実行
し、前記画像再構成手段は、管路内部の誘電率分布εからポアソン方程式を用いた数値シミュレーションにより得られた静電容量をCiとし、前記計測手段で得られた静電容量をCi0とした場合に、CiとCi0の差を評価する目的関数f1が0ないしその近傍となる誘電率分布εを反復計算により算出するものであり、誘電率分布εの変化が目的関数f1に与える影響である感度と数学的に等価の値を算出する手段と、前記等価の値を用いて反復計算中の誘電率分布εを順次更新する手段と、前記等価の値が0ないしその近傍であるか否かを判定する手段とを備え、前記等価の値が0ないしその近傍である場合に反復計算を終了し、前記画像再構成手段は、さらに、CiとCi0を、所定の誘電率ε1、ε2からポアソン方程式を用いた数値シミュレーションにより得られた静電容量であるCi1、Ci2を用いて正規化する手段を備える。
【0009】
管路内部の誘電率分布を反復計算により算出する際には誘電率分布が常に異なるものとなる。誘電率分布が変化したときの静電容量に与える影響、すなわち感度は、管路内部の誘電率分布に応じて変化する。従って、反復計算中の誘電率分布に対して逐次、感度を再計算することにより、正確な感度に基づく誘電率分布を推定することが可能となり、媒体分布の再構成画像の精度が向上する。
【0011】
目的関数f1の感度が0ないしその近傍であれば目的関数f1の極値となる誘電率分布ε
optを求めたことになる。ε
optは、目的関数f1が凸関数であれば全ての誘電率分布の中で目的関数f1を最小とする値であり、非凸関数であれば誘電率分布ε
opt近傍において最小となる値である。従って、目的関数f1の感度が0ないしその近傍となることを反復計算の終了条件とすることで、反復計算で得られた誘電率分布εがその近傍において目的関数f1を最小とする値であることを保証できる。また、目的関数f1の感度を直接計算することが困難であっても、この感度と数学的に等価となる値を算出し、数値シミュレーションの結果から計算可能とすることで、1回の数値シミュレーションに要する時間と同じか、あるいはそれよりも少ない計算時間で感度を計算することが可能となる。なお、このように数学的に等価の値を用いて代替計算する手法は、随伴変数法として知られている。本発明は、随伴変数法を巧みに用いて目的関数f1の感度を短時間に計算するものといえる。
【0013】
計測又は計算で求めた静電容量Ciは、静電容量の計測に利用する電極の位置に応じてその大きさが異なるため、管路内の誘電率分布の変化が静電容量に明確に現われない。そこで、Ciから所定の誘電率分布ε
1を与えたときの静電容量Ci
1を差し引き、さらに、その値をCi
1ともう一つの所定の誘電率分布ε
2から計算した静電容量Ci
2の差で除することで、全ての静電容量の大きさを同程度にでき、管路内の誘電率分布の変化を静電容量で明確に表すことができる。
【0014】
本発明のさらに他の実施形態では、前記画像再構成手段は、さらに、前記目的関数f1に、誘電率分布εを明確化させる関数と、誘電率分布εを平滑化する関数を付加する手段を備えることを特徴とする。
【0015】
誘電率を連続変数で扱う場合、特定の媒体の誘電率ではない中間的な誘電率を許容することになる。中間的な誘電率は、設定された空間解像度では表現できない大きさで複数の媒体が存在すると解釈することができる。もう一つの解釈として、中間的な誘電率を持つ架空の媒体により計測した静電容量となる誘電率分布を再構成していると考えることもできる。このような状況を回避するために、目的関数f1に加えて、連続変数で表された誘電率分布εと管路内部に分布する2つの媒体1,2の誘電率の差を小さくするような関数を付加することで、誘電率分布を2つの媒体1,2の誘電率のいずれかに近づけた値を求め明確化することができる。また、n回計測された静電容量から、数値シミュレーションで計算する領域に設定したm個の誘電率を決定する場合、n=mであれば誘電率は一意に定まるが、通常n<mであるため解が不定となり、誘電率が一意に定まらない。このような状況を回避し、不足する情報を補う必要がある(正則化)。そこで、目的関数f1を正則化するために、特異な誘電率分布が得られないような関数を目的関数f1に付加する。これにより平滑化された誘電率分布を求めることができるようになる。明確化する関数を付加すると特異な誘電率分布を誘発する可能性があり、他方で、平滑化する関数を付加すると特異な誘電率分布を抑えているため媒体の界面が明確にならない。これらは互いに独立な効果であるので、これらを同時に目的関数f1に付加することで、特異な誘電率分布を抑えつつ、明確化した誘電率分布を再構成できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、反復計算において毎回正確な感度を利用することで、媒体分布の再構成画像の精度が向上する。また、本発明によれば、感度を短時間で計算することができる。また、本発明によれば、管路内部の誘電率分布の変化を静電容量又は電気抵抗で表現することが容易化される。また、本発明によれば、再構成画像の明確化及び平滑化により、再構成画像の精度が一層向上する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
【0019】
図1に、本実施形態における混相状態分布計測装置の全体構成を示す。装置は、センサ12と、静電容量計測手段14と、誘電率分布再構成手段16と、再構成画像出力手段18と、演算装置20を含む。
【0020】
センサ12は、円環状をなし、計測すべき管路10の周囲に配設される。センサ12には、複数個の電極が設けられる。
【0021】
静電容量計測手段14は、センサ12内の複数の電極と接続され、複数の電極の中から任意の2つの電極を選択して印加電極と接地電極の組み合わせを形成し、n個の静電容量Cj
0を計測する。
【0022】
誘電率分布再構成手段16は、静電容量計測手段14で計測されたn個の静電容量Cj
0に基づいて誘電率分布を再構成する。
【0023】
再構成画像出力手段18は、誘電率分布再構成手段16で再構成された誘電率分布を画像として表示する。
【0024】
演算装置20は、誘電率分布再構成手段16と協働して、計測されたn個の静電容量cj
0を用いて所定の演算を行い、誘電率分布を算出する。演算装置20は、静電容量正規化手段22と、誘電率明確化手段(フィルタ1)24と、誘電率空間勾配最小化手段(フィルタ2)26を備える。
【0025】
なお、演算装置20は、具体的にはプロセッサ、メモリ、入出力インタフェースを備えるコンピュータで構成される。また、静電容量計測手段14、誘電率分布再構成手段16、及び演算装置20を全てコンピュータで構成してもよく、再構成画像出力手段18を当該コンピュータのディスプレイで構成してもよい。
【0026】
図2に、管路10の周囲に配設されるセンサ12内の複数の電極12aの配置を示す。複数の電極12a(図では合計8個の電極)は、管路10の中心軸を中心とする同心円状に所定間隔だけ互いに離間して配置される。
図2では、これらの電極10aに、反時計回りに1,2,3、・・・、8と番号を付している。複数の電極12aは、互いに絶縁されている。静電容量計測手段14は、これら8個の電極のうち、任意の2個の電極を選択して印加電極と接地電極の組み合わせとし、静電容量Cj
0を計測する。
【0027】
次に、本実施形態におけるコンピュータでの具体的な演算手順について説明する。本実施形態の演算手順は、数理計画法に準じた手順である。
【0028】
図3に、本実施形態の演算処理をフローチャートで示す。まず、管路10内の初期誘電率分布を設定する(S101)。
【0029】
次に、初期誘電率分布から順解析を行って静電容量を算出する(S102)。ここで、「順解析」とは、誘電率分布から支配方程式(ポアソン方程式)を用いて電位(静電ポテンシャル)を求めることをいう。順解析は、静電場解析ということもできる。
【0030】
次に、順解析により得られた静電容量を用いて目的関数を計算する(S103)。目的関数は、具体的には、順解析により得られた静電容量と、計測して得られた静電容量との最小二乗誤差である。但し、本実施形態では、目的関数を定義する際に、正規化、明確化及び平滑化を行うことで画像の精度を向上させている。
【0031】
次に、目的関数の感度を計算する(S104)。感度解析とは、反復計算の終了判定、及び設定された誘電率の更新量を決定するために目的関数の感度を求めることをいう。設定された誘電率は、S101で設定された初期誘電率及び反復計算により順次決定されるその都度の誘電率をいう。
【0032】
次に、目的関数が収束したか否かを判定する(S105)。この判定は、具体的にはS104で算出された目的関数の感度が0ないしその近傍であるか否かにより行われる。目的関数の感度が0ないしその近傍である場合には計算が収束したと判定し(S105でYES)、反復計算を終了してそのときの誘電率分布を最終的な結果とする。他方、目的関数の感度が0ないしその近傍でない場合には、未だ計算が収束していないと判定し(S105でNO)、目的関数の感度に基づく設計変更、すなわち新たな誘電率分布を再設定してS102以降の処理を繰り返す。繰り返し計算の中に感度解析の処理が含まれていることから、誘電率分布が更新される毎に、これに応じて感度も再計算されて順次変化していく点に留意されたい。
【0033】
図4に、比較のため、従来の演算処理をフローチャートで示す。従来においては、まず感度行列、つまりセンシティビティマップを作成する(S201)。そして、管路10内の初期誘電率分布を設定し(S202)、順解析を行って静電容量を算出する(S203)。順解析により得られた静電容量と、計測して得られた静電容量の差(最小二乗誤差)を用いて収束判定し(S204)、収束していなければS201で作成した感度行列に基づいて誘電率を再設定し(S205)、S203以降の処理を繰り返す。感度行列は最初に作成され、誘電率分布によらずに反復計算において常に一定である。また、誘電率分布を連続変数として扱っており、特定の媒体の誘電率ではない中間的な誘電率を許容しているため、最終的に得られる画像が不鮮明とならざるを得ない。
図3と
図4を比較することで、本実施形態における演算処理と従来の演算処理との相違は明らかとなろう。
【0034】
以下、各処理についてより詳細に説明する。
【0035】
<初期誘電率分布>
まず、適当な初期状態として、初期誘電率分布εを設定する。そして、この初期誘電率分布εは、電位φ(静電ポテンシャル)を求めるために用いられる。
【0036】
<順解析>
静電容量Ciは、電位φ、誘電率ε、センサ12に印加する電位差Vcを用いて、電極12aの境界Γiでの境界積分として算出される。すなわち、
【数1】
である。
【0037】
電位φは、連続変数で表した媒体の誘電率εを用いて、コンピュータにより静電場の数値シミュレーションで求める。静電場の支配方程式は、ポアソン方程式であり、
【数2】
である。(数2)式をn回の計測条件と同じ境界条件の下で数値シミュレーションし、その結果得られる電位φiから(数1)式を用いて静電容量Ciを求める。数値シミュレーションに必要なプログラムは、予めコンピュータのメモリに記憶される。
【0038】
なお、数値シミュレーションでは、公知の有限要素法(FEM)等で離散化して計算する。離散化した支配方程式(ポアソン方程式)は、誘電率分布から決まるマトリクスE、電位の分布を表すベクトルΦ、及び境界条件を離散化して生じるベクトルQを用いて、行列式として、
【数3】
と表現される。
【0039】
<目的関数計算>
次に、複数の電極12aを有するセンサ12で、その順列組合せの数だけn回計測した場合、計測した静電容量Ci
0と、数値シミュレーションで計算した静電容量Ciの最小二乗誤差f1を目的関数として定義する。
【数4】
【0040】
(数1)式を考慮して、境界の誘電率で構成されたベクトルKを用いて離散化すると、
【数5】
となる。Φは上記のように電位の分布を表すベクトルである。
【0041】
<正規化>
静電容量Ci
0、Ciは、数値シミュレーションで基準となる所定の誘電率ε
1、ε
2を与えて計算した静電容量Ci
1、Ci
2を用いて、
【数6】
のように正規化する。ここで、*は正規化された量であることを示す。
【0042】
図5に、正規化していない場合と正規化した場合における計測回数毎の静電容量の値を示す。計測又は計算で求めた静電容量Ciは、静電容量の計測に利用する電極の位置に応じてその大きさが異なるため、管路内の誘電率分布の変化が静電容量に明確に現われない。そこで、Ciから所定の誘電率分布ε
1を与えたときの静電容量Ci
1を差し引き、さらに、その値をCi
1ともう一つの所定の誘電率分布ε
2から計算した静電容量Ci
2の差で除することで、全ての静電容量の大きさを同程度にでき、管路内の誘電率分布の変化を静電容量で明確に表すことができる。
【0043】
(数6)式のように静電容量Ci
0、Ciを正規化した場合、(数4)式は、
【数7】
となる。
【0044】
(数1)式を考慮して、境界の誘電率と正規化の効果を含んだベクトルK
*を用いて離散化すると、
【数8】
となる。
【0045】
<感度解析>
次に、反復計算の収束判定、及び誘電率の更新量を決定するために、f1
*の感度を算出する。f1
*の感度は、随伴変数法を用いて算出される。f1
*に含まれる静電容量が誘電率分布εと電位分布φに依存することから、
【数9】
となる。この式において、∂Φ/∂εは、計算により直接求めることは困難である。そこで、(数3)式に示した支配方程式にベクトルΛを乗じた項を、(数6)式に加える。
【数10】
【0046】
この式において、EQ+Φは本来その値は0であるので、Fとf1
*は同値であり、(数10)で定義したFの感度は、f1
*の感度と同値になる。
【0047】
Fの感度は、
【数11】
となる。Λの任意性から、右辺第2項が0となるようにΛを決定すると、
【数12】
である。このときのΛを用いると感度を計算できる。
【数13】
(数12)式と(数13)式に(数8)式を用いれば、
【数14】
【数15】
となる。上式で用いる値は、既知量あるいは数値シミュレーションの結果として求められる値である。従って、1回のマトリクス演算で感度を求めることができ、従来のように離散化した要素1つ1つの値を変更し、その都度数値シミュレーションを実施して感度を計算する場合(差分により感度を計算する場合)と比べると、計算時間を大幅に短縮できる。
【0048】
<収束判定>
(数11)式で求めた感度の値が0ないしその近傍となったときに計算が収束したものとみなして、そのときの誘電率分布がf1
*を最小とする分布とし、反復計算を終了する。目的関数f1の感度が0ないしその近傍であれば計算が収束したと判定し目的関数f1の極値となる誘電率分布ε
optを求めたことになる。ε
optは、目的関数f1が凸関数であれば全ての誘電率分布の中で目的関数f1を最小とする値であり、非凸関数であれば誘電率分布ε
opt近傍において最小となる値である。従って、目的関数f1の感度が0ないしその近傍となることを反復計算の終了条件とすることで、反復計算で得られた誘電率分布εがその近傍において目的関数f1を最小とする値であることを保証できる。本実施形態では、目的関数f1の感度と数学的に等価なFの感度が0ないしその近傍となったときを反復計算の終了条件としており、計算時間を短縮しつつ確実に反復計算を終了し得る。
【0049】
<感度に基づく設計変更>
他方、反復計算の終了条件を満足しないとき、反復計算のk回目の誘電率ε
kは、
【数16】
のように更新する。ここで、αは誘電率分布の更新量を決めるパラメータである。αを十分小さくとれば確実にf1*を小さくするように誘電率を更新できる。反復計算を効率的に行うためには、数理計画法に従ってαを決定する。このとき、目的関数はf1
*であり、設計変数はεとなる。
【0050】
<明確化>
誘電率εを連続変数で扱う場合、計測対象の媒体の誘電率とは異なる中間的な誘電率が許容されることになる。これをできる限り回避するために、管路10内の媒体が2種類の媒体1、媒体2(例えば気体と液体)からなるときに、これらの媒体の誘電率ε
1、ε
2と計算で求められる誘電率εの差を評価する関数f2
【数17】
を(数7)式に加えて、
【数18】
で定義される関数fが最小となる誘電率εを求める。但し、ε
1>ε
2とする。
【0051】
目的関数f1に加えて、連続変数で表された誘電率分布εと管路10内部に分布する2つの媒体1,2の誘電率の差を小さくするような関数f2を付加することで、誘電率分布を2つの媒体1,2の誘電率のいずれかに近づけた値を求められるようになり、誘電率分布を明確化することができる。関数f2が誘電率分布を明確化する関数である。
【0052】
<平滑化>
一般的に、計測するn個の静電容量が、誘電率分布を表すベクトルΦの要素の数mよりも少ないため、誘電率分布が一意に定まらない。そこで、誘電率の空間勾配の二乗の領域積分量f3
【数19】
を(数7)式に加えて、
【数20】
で定義される関数fが最小となる誘電率分布εを求める。
【0053】
n回計測された静電容量から、数値シミュレーションで計算する領域に設定したm個の誘電率を決定する場合、n=mであれば誘電率は一意に定まるが、通常n<mであるため解が不定となり、上記のように誘電率が一意に定まらない。従って、不足する情報を補う必要がある(正則化)。目的関数f1を正則化するために、特異な誘電率分布が得られないような関数f3を目的関数f1に付加する。これにより平滑化された誘電率分布を求めることができる。関数f3が誘電率分布を平滑化する関数である。
【0054】
関数f2及び関数f3は、独立に評価される関数である。そこで、(数18)式に(数19)式を加えて、
【数21】
で定義される関数fが最小となる誘電率εを求めるようにすることで、明確化と平滑化をともに実現できる。明確化する関数f2を付加すると特異な誘電率分布を誘発する可能性があり、他方で、平滑化する関数f3を付加すると特異な誘電率分布を抑えているため媒体の界面が明確にならない可能性がある。これらを同時に目的関数f1に付加することで、特異な誘電率分布を抑えつつ、明確化した誘電率分布を再構成できる。
【0055】
(数18)式、(数20)式、及び(数21)式のパラメータβ、κは問題に応じて適宜設定する。例えば、初期誘電率分布をε
0としたときのf1
*に対して、f2、f3がf1
*の10%程度の大きさになるようにβ、κを決定する。
【0056】
図6に、電極12aを8個とし、1つを印加電極、他の電極のうちの1つを接地電極とした、順列組合せ28通りの計測を行って得られるn=28個の静電容量Ci
0を用いて誘電率分布を再構成した結果を示す。計測対象として(a)、(b)2つのパターンをそれぞれ示す。
【0057】
図において、f=f1は、目的関数として(数6)式の場合、つまり正規化のみを行った場合の結果である。この場合、管路10内においておおよそ媒体が存在している場所は分かるものの、媒体の界面が明確となっていない。他方、図において、f=f1+f2+f3は、(数21)式の場合、つまり正規化と明確化と平滑化を行った場合の結果である。媒体の界面が明確となり、計測対象にほぼ一致する高精度の結果が得られる。
【0058】
また、
図7に、電極12aを8個とし、1つを印加電極、他の電極を全て接地した条件で8回計測した結果における、各電極での静電容量、すなわちn=64個のCi
0を用いて誘電率分布を再構成した結果を示す。
図6と同様に、f=f1は、目的関数fとして(数6)式の場合、つまり正規化のみを行った場合の結果である。また、f=f1+f2+f3は、(数21)式の場合、つまり正規化と明確化と平滑化を行った場合の結果である。計測した静電容量が多いと、その分だけ正規化のみの場合でも媒体の存在している場所が確認できることがわかる。特に、中心部推定のための情報量が増加するため、管路10中心部における推定精度が向上する。勿論、正規化に加え、関数f2及び関数f3を付加して明確化と平滑化を行うことで精度がさらに向上し、境界が一層明確となって計測対象にほぼ一致する高精度の結果が得られる。
【0059】
以上のように、本実施形態によれば、感度を一定とするのではなく、感度が誘電率分布に応じて変化し得ることに鑑みて、反復計算毎に得られる誘電率分布に応じてその都度感度を再計算して収束したか否かを判定しているため、再構成画像の精度が向上するとともに、従来法に基づく感度計算に比べて計算時間を短縮することが可能である。また、目的関数の正規化、明確化及び平滑化を行うことで再構成画像の精度をさらに向上させ、鮮明な画像を得ることができる。
【0060】
なお、本実施形態は管路内部の混相流が導電体の場合にも応用可能である。この場合、本実施形態と同様に電位差を加え、電流を計測し、管路内部の導電率を求め、その分布から管路内部状態推定を行う。静電容量と電流、誘電率と導電率には対応関係があるため、本発明を利用することで、混相流が導電体の場合の管路内部の状態推定が可能である。
【0061】
また、本実施形態では、目的関数に対して明確化の関数f2及び平滑化の関数f3を付加しているが、必要に応じて、明確の関数f2のみを目的関数に付加する、あるいは平滑化の関数f3のみを目的関数に付加することも可能である。明確化の関数f2のみを付加して再構成した画像と、平滑化の関数f3のみを付加して再構成した画像と、関数f2及び関数f3をともに付加して明確化及び平滑化して再構成した画像をいずれもディスプレイ上に表示し、相互に比較可能に並列表示することも可能である。再構成画像を表示する際に、ユーザが適宜、明確化、平滑化を画面上で選択できるようにし、ユーザにより選択された演算のみを実行してその結果を表示してもよい。