(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
モータによって回転される回転ミラーを有し、前記回転ミラーの1回転中に当該回転ミラーが所定角度回転する都度、検知光を監視エリアに向けて出射すると共に、前記出射した検知光が物体で反射され、その反射検知光が前記回転ミラーに入射した場合、前記検知光を出射したときの前記回転ミラーの回転角度位置および前記検知光を出射してから前記反射検知光を受光するまでの時間に基づいて前記検知光を反射した物体の居る方向と当該物体までの距離を検出するセキュリティ装置において、
前記回転ミラーが連続回転するとき、当該回転ミラーに、検知光を出射しながら回転するスキャン回転と、検知光を出射せずに回転するスキャンパス回転とを行わせ、前記スキャンパス回転中に検知光を受光したとき、自身が出射した検知光の反射光ではなく、他から出射された検知光を受光したと判定する判定手段と、
前記スキャン回転において前記検知光を反射した物体が当該物体に反射された検知光を出射した時の前記回転ミラーの回転位置方向に居る不審者であるかどうかを推定する不審者侵入推定手段と、
前記検知光を反射した物体が不審者であると推定された後の前記スキャンパス回転において他から出射された検知光を受光したと判定されたとき、当該他から出射された検知光を受光した時の前記回転ミラーの回転角度位置が前記スキャン回転において不審者であると推定された時の前記回転ミラーの回転角度位置と同じであったとき、前記不審者侵入推定手段による不審者の推定は誤推定の可能性ありとする注意手段と、
を設けたことを特徴とするセキュリティ装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
セキュリティ装置は、
図2に示すセンサ部1と
図1に示す処理部2とを備えている。セキュリティ装置は、例えば
図3に示す家屋3の敷地4内に侵入する不審者を検出する。
図3の例では、A,Bで示す2台のセキュリティ装置が設置されている。
【0017】
上記センサ部1は、
図3に示すように、家屋3の外壁5に取り付けられている。このセンサ部1は、前方の監視エリアに向けて走査光、つまりレーザー光(検知光)を出射すると共に、出射したレーザー光(以下、出射レーザー光L)が反射物体(人を含む)により反射されて戻ってくるレーザー光(以下、反射レーザー光M)を検出(受光)する。
【0018】
センサ部1は、
図2に示すように、外壁5に固定された本体ケース6内に、レーザー光出射ユニット7と受光ユニット8とを設けてなる。レーザー光出射ユニット7は、投光素子としての半導体レーザー9と、この半導体レーザー9の前方に45°傾けて配設された固定ミラー10と、この固定ミラー10の鉛直下方に45°傾けて回転可能に配設された回転ミラー11とを備えている。なお、固定ミラー10は下面を鏡面とし、回転ミラー11は上面を鏡面としている。
【0019】
本体ケース6の内底面には、例えばインバータ制御される直流モータからなるモータ12が固定されている。このモータ12の回転軸12aは、鉛直上向きで、その回転中心線は固定ミラー11により鉛直下方に反射されるレーザー光Lと一致している。
半導体レーザー9からは、レーザー光が前方に水平に出射される。出射レーザー光Lは固定ミラー10により鉛直下方に反射され、更に、回転ミラー11によって水平方向に反射され、本体ケース6の前面から左右両側面にかけて形成された窓6aから当該本体ケース6の外へと出射される。なお、窓6aには透明カバー13が装着されている。
【0020】
回転ミラー11は、モータ12によって一定の速度で回転される。このため、回転ミラー11によって反射される出射レーザー光Lは、一つの水平な平面内において出射されるが、その出射方向は、回転ミラー11、ひいてはモータ12の回転角度位置によって変化する。この実施形態では、モータ12が例えば0°から180°まで回転する間、0°の位置を含めて所定角度、例えば1°回転する度にレーザー光を短時間だけ出射するようになっている。従って、出射レーザー光Lはパルス状のものとなる。
【0021】
ここで、
図3に示すように、回転軸12aの中心軸線を通って本体ケース6の真正面に向かう直線を引いたとき、この直線が回転角度位置90°、この回転角度位置90°の直線を、回転軸12aを中心にして時計方向および反時計方向に90°回転した時の位置を回転角度位置0°および回転角度位置180°の位置とする。従って、回転角度位置0°、180°の直線は家屋3の外壁5とほぼ平行となる。
【0022】
一方、前記受光ユニット8は、孔明き固定ミラー14と、集光レンズ15と、受光素子としてのフォトダイオード16を備えている。孔明き固定ミラー14は、レーザー光出射ユニット7の固定ミラー10と回転ミラー11との間に、45°傾けて配設されている。孔明き固定ミラー14は、中心部に前記固定ミラー10で反射された出射レーザー光Lが通過する孔14aを有する。なお、孔明き固定ミラー14は、下面が鏡面となっている。
【0023】
本体ケース6の窓6aから出射された出射レーザー光Lは、物体に当って反射される。反射物体で反射されたレーザー光Mは、窓6aから本体ケース6内に入り、回転ミラー11に入射して鉛直上方に反射される。そして、固定ミラー11に反射された反射レーザー光Mは、孔明き固定ミラー14により集光レンズ15に向けて反射され、集光レンズ15により集光される。この集光レンズ15により集光された反射レーザー光Mをフォトダイオード16が受光する。
【0024】
前記処理部2は、本体ケース6に設けられ、または、本体ケース6とは別体に構成されて家屋3内に設置されている。この処理部2は、
図1に示すように、制御装置(制御手段)17を備えている。制御装置17は、CPU、ROM、RAMなどを備えたマイクロコンピュータを主体として構成されている。この制御装置17は、前記モータ12を制御する。即ち、モータ12には、回転軸12aの回転位置を検出する周波数発電機やロータリーエンコーダなどの回転検出装置(回転検出手段)18が設けられ、この回転検出装置18は制御装置17に回転軸12aの回転位置情報を送る。制御装置17は、回転位置情報から回転軸12aの回転速度を検出し、検出した回転速度と目標回転速度とを比較して回転軸12aが目標回転速度となるようにモータ12をインバータ制御する。
【0025】
また、制御装置17は、回転検出装置18からの回転位置情報により、回転軸12aが0°の回転角度位置に回転したことを検出すると、半導体レーザー9に出力信号を送り、以後、回転軸12aが180°の回転角度位置まで回転する間、1°回転したことを検出する度に、半導体レーザー9に出力信号を送る。半導体レーザー9は制御装置17からの出力信号を受けると、レーザー光をごく短時間だけ出力、つまりパルス状のレーザー光を出射する。これにより、センサ部1から監視エリアに向けて回転角度位置0°から180°までの間で1°おきに順次パルス状のレーザー光(走査光)が出射される。
【0026】
前記フォトダイオード16は、受光量に応じた電流を発生する。このフォトダイオード16には増幅器19が接続されており、フォトダイオード16が発生した電流はこの増幅器19で増幅される。更に、増幅器19には電流‐電圧変換回路20が接続されており、増幅器19で増幅された電流は、この電流‐電圧変換回路20によって電流に応じた電圧に変換される。
【0027】
電流‐電圧変換回路20の変換電圧は、比較器21の非反転入力端子V
+に入力される。比較器20の反転入力端子V
−に与えられる前記基準電圧は、反射レーザー光Mの入射がないときに電流‐電圧変換回路20が発生する電圧をやや超える程度の値に定められている。この比較器21は、非反転入力端子V
+に入力された電圧(電流‐電圧変換回路20の変換電圧)が基準電圧よりも高くなると、つまり反射レーザー光Mの入射があったとき、当該反射レーザー光Mを検出したことを報知する受光信号を出力する。
【0028】
比較器21から出力される受光信号は、制御装置17に接続された時間計測IC(時間計測手段)22に与えられると共に、制御装置17にも与えられる。制御装置17は、半導体レーザー9に出力信号を出力すると同時に時間計測IC22にスタート信号を出力する。時間計測IC22は、制御装置17からスタート信号を受けると(半導体レーザー9から出射レーザー光Lが出射されると)、その時点から比較器21から受光信号が入力される時点までの時間tを計測する。この計測時間tは制御装置17に与えられ、制御装置17は、この時間tに基づいて反射物体までの距離を演算する。
【0029】
また、制御装置17は、フォトダイオード16が他のセキュリティ装置から出射された反射光を受光する状況にあるか否かを判定する(判定手段)。この判定動作を説明するに先立って、フォトダイオード16により受光されたレーザー光が自身の半導体レーザー9から出射されたレーザー光の反射光でないことが有り得ることを説明する。
【0030】
即ち、
図3に示す例では、家屋3の外壁5に2台のセキュリティ装置A,Bが設置され、それらセキュリティ装置A,Bにより敷地4内を監視している。敷地4の周囲には、塀23が設置されており、セキュリティ装置A,Bから出射されたレーザー光は、塀23に当って反射する。
【0031】
この状況下においては、
図6に示すように、2台のセキュリティ装置A,Bの回転ミラー11の回転角度位置によっては、互いに、相手側のセキュリティ装置から出射されて塀23により反射されたレーザー光が自身の回転ミラー11に入射し、そして当該反射ミラー11によって反射されたレーザー光をフォトダイオード16が受光するという状況になることがある。すると、セキュリティ装置は、侵入者がないにもかかわらず、侵入者ありと誤判断する恐れがある。
【0032】
このような他のセキュリティ装置から出射されたレーザー光の影響を受けることをなくすために、例えば、2台のセキュリティ装置A,Bの設置時に、それらの回転ミラー11が共に0°の位置から回転するように初期設定する。このように初期設定されていれば、2台のセキュリティ装置は、互いに、相手側のセキュリティ装置から出射されたレーザー光が塀23に当って反射しても、その反射光を自身のフォトダイオード16が受光してしまうことはない。
【0033】
ところが、モータ12の特性は一台一台異なる。例えば、制御上、モータ12が1secで1回転するように設定されていたとしても、実際には、例えば、一方のセキュリティ装置Aのモータ12は正確に1secで1回転するものの、他方のセキュリティ装置Bのモータ12は1.00000001(1+1/10
8)secで1回転するというように2台のセキュリティ装置A,Bのモータ12の特性は異なる。
【0034】
すると、2台のセキュリティ装置A,Bの設置時に、それらの回転ミラー11が共に0°の位置から回転を始めるように初期設定したとしても、長期間使用していると、2台のセキュリティ装置A,Bのモータ12の回転角度位置関係が初期設定状態から次第にずれてきて、互い相手側のセキュリティ装置から出射されて塀23により反射されたレーザー光が自身の回転ミラー11に入射しフォトダイオード16が受光してしまうという事態を生ずる。このような事態が生ずると、2台のセキュリティ装置A,Bのモータ12の回転速度差がごく僅かであることから、暫くの間、相手側のセキュリティ装置の反射レーザー光を受光するという事態が続くこととなる。
【0035】
本実施形態では、相手側のセキュリティ装置から出射されたレーザー光の反射光を受光する状況にあるか否かを判定し、当該状況にあった場合には、モータ12を再起動させて相手側のセキュリティ装置から出射されたレーザー光の反射光を受光しないようにする。
このような制御は、記憶手段、例えばROMに記憶されたプログラムを実行することによって行われる。以下に、このプログラムに従って行われる制御装置17の動作を
図7および
図8のフローチャートをも参照しながら説明する。なお、
図7および
図8において、nは0から180までの整数で、レーザー光を出射する回転角度位置を表わす。
【0036】
セキュリティ装置A,Bに電源が投入されると、それらセキュリティ装置A,Bの制御装置17は、モータ12を1secで1回転するように回転制御する。本実施形態では、回転ミラー11、ひいてはモータ12の1回転として2種類の回転を設定している。一つは、レーザー光を出射しながら1回転するスキャン回転であり、他の一つは、レーザー光を出射することなく1回転するスキャンパス回転である。
【0037】
上記スキャン回転の連続回転数をNs、スキャンパス回転の連続回転数をNpとすると、Ns、Npは1または複数、本実施形態では、例えばNsは100回転、Npは3回転に設定されている。
図5は回転ミラー11が連続回転するときのスキャン回転とスキャンパス回転との出現状態を示すもので、スキャン回転を100回転連続させると、次にスキャンパス回転を3回転連続させるというサイクルを多数サイクル連続して実行することを示している。
【0038】
電源投入により、制御装置17は予め記憶手段であるROMに記憶されたNsとNpとを一時記憶手段であるRAMに読み出し(Ns,Npの設定:
図7のステップS1)、回転ミラー11(モータ12)をスキャン回転させる。
そして、スキャン回転では、モータ12が1回転する度に、回転角度位置0°から180°までの間、1°回転する毎に半導体レーザー9からパルス状のレーザー光Lが出射される。半導体レーザー9からレーザー光Lが出射されると、その間、制御装置17に対し、レーザー光Lの出射時点(基準時点)からフォトダイオード16が反射レーザー光Mを受光するまでの時間(受光所要時間)tが時間計測IC22から入力される。
つまり、各セキュリティ装置A,Bの前方の監視エリアには、モータ12(回転ミラー11)の回転角度位置0°から180°までの平面空間に、全部で181本のレーザー光が1°おきに出力され、出射されたレーザー光の1本毎に、受光所要時間が取得されるのである。
【0039】
そして、制御装置17は、時間計測IC22から与えられた受光所要時間tから反射物体までの距離を周知の方法によって計算する(
図7のS2〜S5)。その後、制御装置17は、このモータ12の1回転中の各出射レーザー光Lついての反射物体までの距離のデータD(n)を、記憶手段としての例えばRAMに格納する(
図7のS6〜S9)。
【0040】
続いて、制御装置17は、1°おきに出射された各レーザー光について、侵入者有無の判定を行う(
図7のS10〜S13)。このときの侵入者有無の判定は、今回のスキャン回転で取得した距離データD(n)と、前回のスキャン回転で取得した距離データD(n)とを比較し、両者に一定値以上の差があったとき、侵入者有りと判定し、所定の警報処理を行う(S11;侵入者有無判定手段)。
【0041】
つまり、反射物体が人(不審者)である場合、人は多少なりとも動きを伴う。
図4に示すように、反射物体がセキュリティ装置の近くにいる場合(a―1)と遠くにいる場合(b−1)とでは、(a−2)および(b−2)のように、出射レーザー光Lの出射から反射物体で反射された反射レーザー光Mを受光するまでの時間(受光所要時間)は近い方が短い(t1<t2)。
【0042】
そこで、制御装置17は、ある回転角度位置方向について、前回のスキャン回転と今回のスキャン回転との受光所要時間を比較し、両者に一定値以上の差がなければ、不審者無しと判定し、両者に一定値以上の差があれば、不審者が居ると判定(不審者侵入推定手段)して不審者侵入の警報処理を行う(警報処理手段)。
【0043】
以上でスキャン回転の1回転分の処理を終了する。制御装置17は、スキャン回転の1回転分の処理を終えると、Nsをデクリメントし(
図7のステップS14)、Nsが0になったか否かを判断する(
図7のステップ15)。Nsが0でなかったら、制御装置17は、前述のステップ2に戻り、次の1回転分のスキャン回転についての処理(ステップ2〜ステップ14)を行う。
【0044】
そして、スキャン回転が行われる都度、ステップS2〜ステップS14の処理を実行し、Nsが0、つまり本実施形態では、スキャン回転が100回転に達すると、制御装置17は、ステップ15で「YES」と判断し、続いてスキャンパス回転の制御に移行する。
本実施形態では、スキャンパス回転を3回転行う。
【0045】
スキャンパス回転は、レーザー光の出射を伴わずに回転ミラー11を1回転させるというものである。つまり、制御装置17は、モータ12が0°の回転位置に達したときも、その0°の回転位置から1°ずつ180°まで回転するときも半導体レーザー9には出力信号を送らないのである。
【0046】
ただし、制御装置17は、時計計測IC22にはスタート信号を出力する。従って、時間計測IC22は、モータ12(回転ミラー11)が0°から180°の位置まで回転する間、1°回転する毎(回転位置0°を含む)に計時動作を開始してレーザー光の反射光が入力されるまでの時間を計測する。
【0047】
そして、スキャンパス回転においては、レーザー光の出射がないのであるから、通常は比較器21から時間計測IC22に受光信号が入力されることはない。このとき、時間計測IC22は、スタート信号を受けて計時動作を開始してから次のスタート信号を受けるまでの間に比較器21から受光信号を受けることはないので、制御装置17に計測時間tを出力することはない。
【0048】
しかし、何らかの原因でフォトダイオード16にレーザー光の反射光が入射され、比較器21から時間計測IC22に受光信号が入力されることがある。この場合には、時間計測IC22は、スタート信号を受けて計時動作を開始してから次のスタート信号を受けるまでの間に受光信号を入力けることとなるので、制御装置17に計測時間tを出力する。
【0049】
制御装置17は、スキャンパス回転中、1°〜180°までの1°毎の回転位置において、時間計測IC22から計測時間tの入力がなかったとき、D(n)を0(反射光無しフラグ)にセットし、時間計測IC22から計測時間tの入力があったとき、D(n)=1(反射光受光フラグ)にセットする。
【0050】
さて、1回転目のスキャンパス回転に入ると、制御装置17は、レーザー光を出射することなく、モータ12が0°から180°の位置まで回転する間、1°回転する毎に反射光入力の有無を検出する(
図8のステップS16〜ステップS19)。そして、制御装置17は、このモータ12のスキャンパス回転中のデータD(n)を、一時記憶手段としての例えばRAMに格納する(
図8のステップS20〜ステップS23)。
【0051】
次に、制御装置17は、1回転目のスキャンパス回転中にD(n)に1があるか否かを判断する(
図8のステップS24〜ステップS27)。いずれのD(n)にも1がなければ、制御装置17はスキャンパス回転数Npをデクリメントし(
図8のステップS28)、2回転目のスキャンパス回転へと移行する(
図8のステップS29で「NO」、ステップS16)。そして、第2回目のスキャンパス回転においても上述の通り0°〜180°のD(n)を取得し、D(n)に0があるか否かを判断する(
図8のステップS16〜ステップS27)。
【0052】
2回転目のスキャンパス回転においても、いずれのD(n)も1でなければ、Npをデクリメントし、3回転目のスキャンパス回転に移行する(
図8のステップS29で「NO」)。そして、第3回目のスキャンパス回転においても上述の通り0°〜180°のD(n)を取得し、D(n)に0があるか否かを判断する(
図8のステップS16〜ステップS27)。
【0053】
3回転目のスキャンパス回転においても、いずれのD(n)も1でなければ、Npをデクリメントする。これによりNp=0となるので、制御装置17はステップS29で「YES」と判断して
図7のステップS1へと移行し、再びスキャン回転を開始する。そして、スキャン回転を100回転行うと、再びスキャンパス回転を3回転行い、スキャン回転に戻る、という動作を繰り返す。
【0054】
さて、2台のセキュリティ装置A,Bにおいて、それらのモータ12の回転速度に微差がある場合(通常はある)、長期間使用しているうちに、一方のセキュリティ装置から出射されたレーザー光が塀23で反射されて他方のセキュリティ装置の回転ミラー11に入射し、フォトダイオード16に受光されると共に、他方のセキュリティ装置から出射されたレーザー光が塀23で反射されて一方のセキュリティ装置の回転ミラー11に入射し、フォトダイオード16に受光される状況になる。
【0055】
図6は、一方のセキュリティ装置Aから見た場合に、モータ12の或る回転角度位置において、他方のセキュリティ装置Bから出射されたレーザー光が塀23で反射されてセキュリティ装置Aの回転ミラー11に入射し、フォトダイオード16に受光される状況を示す。
そして、一旦、このような状況になると、2台のモータ12の間での回転速度の差はごく僅かであるから、同じ回転角度位置で、他方のセキュリティ装置Bから出射されて塀23で反射されたレーザー光を受光する状態が暫く続くようになる。
【0056】
本実施形態では、他方のセキュリティ装置から出射されて塀23により反射されたレーザー光が回転ミラー11に入射するようになると、スキャンパス回転に入ったとき、1回転目で、或いは2回転目、若しくは3回転目において、0°から180°までの1°毎の回転位置のいずれか1つの回転位置、或いは複数の回転位置においてD(n)=1を呈するようになる。すると、制御装置17は、
図8のステップS25において「YES」と判断し、ステップS30に移行する。
【0057】
このステップS30で制御装置17は、他のセキュリティ装置の出力したレーザー光の影響がある(受光した)と判定し(判定手段)、次のステップS31でモータ12を停止させ、再起動させる(再起動処理手段)。
この再起動により、2台のセキュリティ装置A,Bのうち、他のセキュリティ装置の出力したレーザー光を受光したと判定した側のセキュリティ装置の回転ミラー11は、他方のセキュリティ装置の回転ミラー11との回転位置関係で、当該他のセキュリティ装置から出射されたレーザー光を受光する位置から非常に高い確率でずれを生ずるようになる。
従って、このモータ12の再起動により、2台のセキュリティ装置A,Bの回転ミラー11の回転角度位置関係が相手側のレーザー光の塀23による反射光の影響を受けないようにすることができる。
【0058】
以上説明したように、本実施形態によれば、レーザー光の反射光を受光した場合、これを他のセキュリティ装置から出射されたレーザー光の反射光か否かを判別することができる。このため、侵入者がいないのに侵入者有りとして警報処理を実行してしまう不具合の発生を極力防止できる。
【0059】
また、本実施形態では、スキャンパス回転を複数回(本実施形態では3回転)に定めているので、他のセキュリティ装置から出射されたレーザー光の反射光を受光する状況になったことを、より良く検出することができる。つまり、スキャンパス回転の第1回目回転中で他のレーザー光を受光する状況になかったのに、2回目或いは3回目の回転中に他のレーザー光を受光する状況になった場合、スキャンパス回転を1回転だけで終了するものに比べ、より早く検出できるものである。
【0060】
図9は本発明の他の実施形態を示すフローチャートである。本実施形態が上述の一実施形態と異なるところは、スキャンパス回転で他のセキュリティ装置から出射されたレーザー光の反射光を受光する状況になったと判定されたとき、その状況はスキャンパス回転に入ってから生じたというよりも、以前から、つまりスキャン回転しているときから生じていたことの方が多いのではないかということを考慮して、その場合に出した不審者侵入の警報処理に対して注意を喚起するようにしたところにある。
【0061】
図9において、A1は上述の一実施形態における
図8のS30と同じ内容の処理ステップであり、A6も上述の一実施例における
図8のS31と同じ内容の処理ステップである。そして、A1より以前の処理は上述の一実施形態における
図7および
図8のS1〜S29と同じ処理内容が順に行われ、S25の処理ステップと同じ内容の処理ステップを経てA1の処理ステップに至るものである。
【0062】
即ち、他方のセキュリティ装置から出射されて塀23により反射されたレーザー光が回転ミラー11に入射するようになると、スキャンパス回転に入ったとき、1回転目で、或いは2回転目、若しくは3回転目において、0°から180°までの1°毎の回転位置のいずれか1つの回転位置、或いは複数の回転位置においてD(n)=1を呈するようになる。すると、制御装置17は、
図8のステップS25と同じ内容の処理ステップにおいて「YES」と判断し、
図9のステップA1に移行する。
【0063】
そして、制御装置17は、上述した一実施形態の場合と同様に、
図9のステップA1において、他のセキュリティ装置の出力したレーザー光の影響がある(受光した)と判定する(判定手段)。次に、制御装置17は、スキャンパス回転に入る前のスキャン回転中に侵入者有りと判定された事実の有無を判断する(A2)。
図7のS11と同じ処理内容のステップにおいて侵入者有りと判定されていなかった場合、制御装置17は、ステップA2で「NO」と判断し、再起動処理(A6)に移行し、エンドとなる。
【0064】
ところで、スキャンパス回転中に他のセキュリティ装置の出力したレーザー光を受光した場合、この状況(他のセキュリティ装置の出力したレーザー光を受光する状況)はスキャンパス回転に入った直後の第1回転目に生じたというより、それ以前から、つまりスキャンパス回転に入る前のスキャン回転中に発生していた可能性がある。この場合には、スキャン回転中に不審者の侵入がありと判定してしまっている。
【0065】
つまり、スキャン回転中に既に他のセキュリティ装置の出力したレーザー光を受光する状況になっていた場合には、他のセキュリティ装置の出力したレーザー光を受光することにより、当該他のセキュリティ装置の出力したレーザー光を受光したときの回転ミラー11の回転角度位置方向において、前回のスキャン回転と今回のスキャン回転との間で受光所要時間tに一定値以上の差を生じ(物体までの距離が一定値以上変化している)、侵入者がいないにもかかわらず、当該回転角度位置方向に不審者が居ると判定し(誤判定)、警報処理を行ってしまう。
【0066】
このような誤判定に対し、本実施形態では、注意情報を出力するようにしている。即ち、スキャン回転中に侵入者有りと判定されていた場合には、制御装置17は、ステップA2において「YES」と判断し、次いで、侵入者が居ると判定された回転角度位置方向と、他のセキュリティ装置から出力されたレーザー光を受光した時の受光方向(回転ミラー11の回転角度位置方向)とが一致しているか否かを判断する。
【0067】
一致していなければ、侵入者有りの判定は他のセキュリティ装置から出力されたレーザー光の影響を受けることなく判定された正しいものであるから、既に行われた警報処理に対し注意情報を出力することはせず、ステップA3で「NO」となって再起動処理(A6)に移行する。
【0068】
一方、侵入者が居ると判定された回転角度位置方向と、他のセキュリティ装置から出力されたレーザー光を受光した時の受光方向とが一致している場合、制御装置17は、ステップA3で「YES」となり、次のステップA4で侵入者有りの判定は誤判定の可能性ありと判定し(正誤判定手段)、続いて次のステップA5で注意情報を出力する。その後、制御装置17は、再起動処理に移行する。なお、注意情報としては、ブザーで報知するもの、モニターに文字によって報知するもの等、報知手段によって報知するものであれば良い。そして、この注意情報により先の侵入者有りの警報に対し、大がかりな対応行動を取らずに済むようになる。
【0069】
このように本実施形態によれば、スキャン回転時に他のセキュリティ装置から出力されたレーザー光を受光することで、実際に不審者が侵入していないにもかかわらず警報処理がなされても、不審者侵入の推定は誤推定の可能性がある旨の注意情報が与えられるので、大がかりな対応行動を取らずに済ますことができる。
【0070】
なお、本発明は上記し且つ図面に示す実施形態に限定されるものではく、以下のような拡張または変更が可能である。
スキャンパス回転期間は1回転だけで終了しても良い。
スキャン回転は100回転に限られず、それ以下、或いはそれ以上に定めても良い。
スキャン回転とスキャンパス回転とは、1回転ずつ交互に行うようにしても良い。
他のセキュリティ装置の出力したレーザー光を受光したと判定したときの処理としては、モータ12を停止させて再起動するものに限られない。例えば、モータ12を少し減速し、その後、元の速度に戻すものであっても良い。
【0071】
回転ミラー11はモータ12の回転軸12aに直結でなく、モータ12の回転を減速して回転ミラー11に伝達する構成であっても良い。
半導体レーザー9は、モータ12の0°〜360°において、1°回転する度にレーザー光をパルス状に出射するように構成しても良い。但し、本体ケース6の窓6aから出射されるレーザー光の反射光だけが距離の測定対象とされる。
レーザー光の出射位置は回転ミラー11が1°回転する毎に限られず、出射させる回転角度位置は何度でも良い。