特許第6194738号(P6194738)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 荒川化学工業株式会社の特許一覧

特許6194738重合ロジングリシジルエステルおよびその製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6194738
(24)【登録日】2017年8月25日
(45)【発行日】2017年9月13日
(54)【発明の名称】重合ロジングリシジルエステルおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/14 20060101AFI20170904BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20170904BHJP
【FI】
   C08G59/14
   C08L63/00 C
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-215315(P2013-215315)
(22)【出願日】2013年10月16日
(65)【公開番号】特開2014-129510(P2014-129510A)
(43)【公開日】2014年7月10日
【審査請求日】2016年7月4日
(31)【優先権主張番号】特願2012-261854(P2012-261854)
(32)【優先日】2012年11月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000168414
【氏名又は名称】荒川化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田中 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】恵崎 陽一郎
【審査官】 久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第101220134(CN,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0172440(US,A1)
【文献】 特開平01−069680(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00−59/72
C08L 1/00−101/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1):
【化1】
(式中、Roは重合ロジン残基を表す。)で表わされる成分を60重量%以上含有する色調がガードナー3以下、軟化点が65〜120℃、エポキシ当量が300〜400g/eqである重合ロジングリシジルエステル。
【請求項2】
一般式(1):
【化2】
(式中、Roは重合ロジン残基を表す。)で表される成分の含有率が80重量%以上である請求項1に記載の重合ロジングリシジルエステル。
【請求項3】
色調がガードナー2以下、軟化点が145〜200℃、酸価が160〜185mgKOH/gであり、かつ二量体の含有率が60重量%以上である重合ロジンと、エピハロヒドリンとをエステル化触媒の存在下に反応させて重合ロジンエピハロヒドリンエステルとし、ついで該エステルをアルカリにより脱ハロゲン化水素する重合ロジングリシジルエステルの製造方法。
【請求項4】
前記二量体の含有率が80重量%以上である重合ロジンを用いる請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
重合ロジングリシジルエステルの色調がガードナー3以下、軟化点が65〜120℃、エポキシ当量が300〜400g/eqであり、かつ一般式(1)で表される成分の含有率が60重量%以上である請求項3に記載の製造方法。
【請求項6】
重合ロジングリシジルエステルの色調がガードナー3以下、軟化点が65〜120℃、エポキシ当量が300〜400g/eqであり、かつ一般式(1)で表される成分の含有率が80重量%以上である請求項4に記載の製造方法。
【請求項7】
前記エステル化触媒がアミン塩である請求項3に記載の製造方法。
【請求項8】
請求項1または2に記載の重合ロジングリシジルエステルを含有する硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項9】
更に、溶剤、顔料、エポキシ樹脂用硬化剤、およびエポキシ樹脂のうちのいずれか少なくとも1種を含有する請求項8に記載の樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の重合ロジングリシジルエステルおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】

近年、化学原料や化学素材に対して、バイオマス利用の要求が一層高まっている。バイオマスとしては、例えば、天然ロジンやこれを変性して得られる各種の変性ロジン、該誘導体が知られている。
【0003】

ロジン誘導体としては、例えばロジン塩、ロジンアルコール、ロジンエステルなどが挙げられる。ロジンエステルの一例として、ロジングリシジルエステルがあるが、該化合物は、反応性希釈剤、アルキド樹脂やポリエステルなどの合成樹脂用の原料や改質剤、塗料や接着剤の配合成分など各種用途に適用されている。
【0004】
ロジングリシジルエステルの製造方法は、例えば特許文献1、2などに開示されている。該特許文献には、ロジングリシジルエステルの原料ロジンとして、天然ロジンの他、重合ロジンなどの変性ロジンが列挙されている。また、特許文献3には、重合ロジングリシジルエステルおよびその製造方法が記載されている。
【0005】

しかしながら、特許文献1および2には、得られる重合ロジングリシジルエステルの性状や物性については一切明示されていない。特許文献3には、出発原料である重合ロジンの性状・物性に関する記載がなく、また得られる重合ロジングリシジルエステルの純度やこれを用いてなるエポキシ樹脂組成物について一切の教示も示唆もなされていない。
【0006】
重合ロジングリシジルエステルは、バイオマスを利用したエポキシ樹脂とみなすことができ、その性状や純度次第では新規で高性能なエポキシ樹脂が提供できると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭64−69680号公報
【特許文献2】特開平4−72369号公報
【特許文献3】中国特許公開第101220134号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、環境負荷が低減され、硬化性に優れた重合ロジングリシジルエステルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、環境配慮型で高性能なエポキシ樹脂となりうる重合ロジングリシジルエステルに着目し、その性状・物性について鋭意検討を重ねた結果、所定の条件を満足する重合ロジングリシジルエステルがかかる課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、
一般式(1):
【0011】
【化1】
【0012】
(式中、Roは重合ロジン残基を表す。)で表わされる成分を60重量%以上含有する色調がガードナー3以下、軟化点が65〜120℃、エポキシ当量が300〜400g/eqである重合ロジングリシジルエステル、(2)色調がガードナー2以下、軟化点が145〜200℃、酸価が160〜185mgKOH/gであり、かつ二量体の含有率が60重量%以上である重合ロジンと、エピハロヒドリンとをエステル化触媒の存在下に反応させて重合ロジンエピハロヒドリンエステルとし、ついで該エステルをアルカリにより脱ハロゲン化水素する重合ロジングリシジルエステルの製造方法、および
(3)前記重合ロジングリシジルエステルを含有する硬化性エポキシ樹脂組成物に係る。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、環境配慮型で優れた性状・物性を有する重合ロジングリシジルエステルを提供できる。該重合ロジングリシジルエステルは、アルキド樹脂やポリエステルなどの合成樹脂用の原料、改質剤などとして、また接着剤、塗料、成形材用の配合剤として使用できる他、環境配慮型のエポキシ樹脂として各種用途に適用できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の重合ロジングリシジルエステルは、一般式(1):
【0015】
【化2】
【0016】
(式中、Roは重合ロジン残基を表す。)で表される成分を60重量%以上、より好ましくは80重量%以上含有し、かつ色調がガードナー3以下、軟化点が65〜120℃、エポキシ当量が300〜400g/eqであるという条件を同時に満足するものである。なお、色調は、JIS K5902により測定した値であり、軟化点は、JIS K2207(環球法)により測定した値であり、エポキシ当量は、JIS K7236:2001により測定した値である。
【0017】
得られる重合ロジングリシジルエステルが該性状を発現するためには、原料重合ロジンとして、色調がガードナー2以下、酸価が160〜185mgKOH/g、軟化点が145〜200℃であり、かつ二量体含有率が60重量%以上、より好ましくは80重量%以上のもの(以下、特定重合ロジンという)を用いる。原料重合ロジン中の二量体含有率が60重量%未満である場合は、得られる重合ロジングリシジルエステルの性状・物性が前記数値範囲を逸脱することになる。該重合ロジングリシジルエステルのより好ましい性状としては、色調がガードナー2以下、軟化点が70〜110℃、エポキシ当量が320〜380g/eqとされる。
【0018】
特定重合ロジンを得るには、蒸留や再結晶などの方法により得られる精製ロジンを出発原料として用いたり、こうして得られる重合ロジンを更に水素化したりすることが好ましい。該色調は、より好ましくはガードナー1以下であり、更に好ましくはハーゼン水準(JIS K0071−1による)のものとされる。該特定重合ロジンの製造法としては、格別限定されず、公知各種の方法を採用できる。例えば、重合反応触媒として、ペンダントスルホン基を有する高分子を用いる方法(特開2006−45396号公報);ギ酸、p−トルエンスルホン酸、塩化亜鉛などを用いる方法などが挙げられる。
【0019】
用いる重合ロジンの酸価が160mgKOH/g未満である場合は、得られる重合ロジングリシジルエステルにおける一般式(1)で表される成分の含有率が低くなる傾向があり、また185mgKOH/gを超える重合ロジンは事実上収得が困難である。
【0020】
用いる重合ロジンの二量体含有率が60重量%未満である場合は、得られる重合ロジングリシジルエステルの軟化点が低下したり、エポキシ当量が前記上限値を超えたりするようになるため、得られる重合ロジングリシジルエステルを用いてなるエポキシ硬化物のガラス転移点が低くなる傾向がある。なお、重合ロジン中の二量体以外の残余成分としては、未反応ロジン、三量体以上の成分および分解物が含まれる。重合ロジンの二量体含有率が前記範囲内にあっても、酸価が前記範囲内を逸脱するようなものは、重合ロジンの製造に際して、脱炭酸して生じたモノカルボン酸体が相当量含まれている。
【0021】
得られる重合ロジングリシジルエステルの軟化点が65℃未満である場合は、これを用いてなるエポキシ硬化物のガラス転移点が低くなる傾向があり、また120℃を超える場合は該硬化物のガラス転移点が過度に高くなる傾向がある。
【0022】
得られる重合ロジングリシジルエステルのエポキシ当量が300g/eq未満の場合は、理論上その製造が困難となる。また、エポキシ当量が400g/eqを超える重合ロジングリシジルエステルは、硬化性が低下する傾向がある。
【0023】
本発明の重合ロジングリシジルエステルの製造法は、特定重合ロジンとエピハロヒドリンを反応させて重合ロジンエピハロヒドリンエステルとする工程(以下、第一工程という)と、ついでアルカリにより脱ハロゲン化水素してエポキシ閉環する工程(以下、第二工程という)とからなる。
【0024】
第一工程で用いるエピハロヒドリンとしては、例えばエピクロルヒドリン、エピブロムヒドリン、エピヨードヒドリン、エピフルオロヒドリンが挙げられるが、工業的にはエピクロルヒドリンが好ましい。エピハロヒドリンの使用量は、特定重合ロジンのカルボキシル基が反応生成物中に残存しなくなるように適宜決定する必要があり、通常は、特定重合ロジンのカルボキシル基と等モル数以上とされるが、好ましくは1〜10倍モル程度とされる。10倍モルを超えて用いた場合は、不経済であるだけでなく、副反応により、反応生成物のエポキシ当量が大きくなる傾向がある。
【0025】
第一工程で用いるエステル化触媒としては、公知各種のものを格別限定なく使用できるが、アミン塩を好ましく使用することができる。公知のエステル化触媒のうちアミンは、触媒活性が低くなる傾向がある。
【0026】
該アミン塩とは、アミンにハロゲン酸、硫酸などの強酸を反応させて得られる酸性化合物であり、第1級アミン塩、第2級アミン塩、第3級アミン塩、第4級アンモニウム塩のいずれをも有効に使用できる。
【0027】
第1級アミン塩の具体例としては、例えばメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ベンジルアミン、アニリンなどの第1級アミンの塩酸塩、臭化水素酸塩、フッ化水素酸塩、硫酸塩などが挙げられる。第2級アミン塩の具体例としては、例えばジメチルアミン、ジエチルアミン、N−メチルアニリン、ベンジルメチルアミンなどの第2級アミンの塩酸塩、臭化水素酸塩、フッ化水素酸塩、硫酸塩などが挙げられる。第3級アミン塩の具体例としては、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、ジメチルベンジルアミンなどの第3級アミンの塩酸塩、臭化水素酸塩、フッ化水素酸塩、硫酸塩などが挙げられる。また第4級アンモニウム塩の具体例としては、例えばテトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、アリルトリエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムなどの各種第4級アミンの塩素化物、臭素化物、フッ素化物、硫酸塩などが挙げられる。
【0028】
第一工程で用いるエステル化触媒の使用量は、特定重合ロジンに対して0.01〜10重量%、好ましくは0.05〜1重量%である。該使用量が0.01重量%未満である場合は、第一工程の完結に長時間を要する傾向があり、また10重量%を超える場合は不経済である。
【0029】
第一工程における反応条件は、重合ロジンハロヒドリンエステルの収率を考慮して適宜決定されるが、通常は反応温度が50〜120℃、好ましくは80〜100℃であり、反応時間は1〜10時間、好ましくは1〜4時間である。反応の終点はHLC(高速液体カラムクロマトグラフィー)測定法により容易に確認できるが、第二工程への移行は、未反応重合ロジンがほとんど残存せず、重合ロジンのカルボキシル基がほぼ完全にハロヒドリンエステルに転化したことを確認した後に行うのがよい。すなわち、反応系内に未反応重合ロジンが存在する場合には、該重合ロジンと、第二工程で得られる重合ロジングリシジルエステルとが反応して、副生物である重合ロジングリセライドを生成するからである。
【0030】
第二工程で用いるアルカリとしては、アルカリ金属の水酸化物が好ましく、その具体例としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどが挙げられる。アルカリの使用形態は特に限定されないが、通常は固形のまま反応系に添加するのが好ましいが、水溶液として添加してもよい。アルカリ水溶液を用いる場合は、その濃度が40重量%以上となるよう調整するのがよく、40重量%に満たない場合は、副反応が進むため、目的物である特定重合ロジングリシジルエステルの収量が低下する傾向がある。
【0031】
アルカリの使用量は、重合ロジンエピハロヒドリンエステルの該エステル基1当量に対して少なくとも1当量、好ましくは1.0〜1.2倍当量とするのがよい。該使用量が1当量未満の場合は、反応が完結せず、また1.2倍当量を超えて使用しても反応上の優位性はなく、却って不経済となる。
【0032】
第二工程における反応条件は、目的生成物である重合ロジングリシジルエステルの収率を考慮して適宜決定されるが、通常は反応温度が50〜120℃、好ましくは100〜120℃であり、反応時間は1〜10時間、好ましくは1〜2時間である。反応の終点は、前記と同様にHLC測定法により確認すればよい。
【0033】
該反応中、アルカリとともに添加される水または反応により生成した水は、反応系から共沸などの方法で除去することにより、得られる重合ロジングリシジルエステルの加水分解による副反応を抑制するのがよい。
【0034】
反応終了後、例えば減圧蒸留等の操作により反応系内から過剰のエピハロヒドリンを除去する。ついで、得られた残留物に適当な溶媒を添加し溶解させることにより副生塩を濾別した後、該溶媒を留去して目的物である特定重合ロジングリシジルエステルを収得することができる。
【0035】
前記のようにして得られる本発明の重合ロジングリシジルエステルは、環境配慮型で且つ優れた性状・物性を有するものである。該グリシジルエステルは、反応性希釈剤、アルキド樹脂やポリエステル用の原料、改質剤、架橋剤として、また塗料、接着剤、成形材用の配合剤として使用できる他、環境配慮型のエポキシ樹脂として各種用途に適用できる。
【0036】
本発明の重合ロジングリシジルエステルは、分子中にほぼ2個のオキシラン基を有するだけではなく、重合ロジン部位由来のバルキーな構造であるため、高性能なエポキシ樹脂として利用価値は大きいものである。
【0037】
本発明の重合ロジングリシジルエステルは、硬化性樹脂組成物、例えばエポキシ樹脂組成物を調製するため有用である。該組成物には溶剤、エポキシ樹脂用硬化剤、顔料、エポキシ樹脂などの各種配合物を用途に応じて適宜に配合できる。
【0038】
前記重合ロジングリシジルエステルの含有率は、エポキシ樹脂組成物中のエポキシ化合物の総量(固形分換算100重量部)に対し、通常5〜50重量%程度(固形分換算)、好ましくは10〜40重量%とされる。重合ロジングリシジルエステルと併用可能なエポキシ樹脂としては、格別限定されず公知各種のエポキシ樹脂が使用でき、例えばノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノールエポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0039】
前記エポキシ樹脂組成物に配合されるエポキシ樹脂用硬化剤としては、各種公知の硬化剤を格別限定なく使用でき、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾールなどのイミダゾール系化合物、2−(ジメチルアミノメチル)フェノールなどの第3級アミン系化合物、トリフェニルフォスフィン化合物などが挙げられる。
【0040】
前記エポキシ樹脂組成物においては、各種公知の溶剤を格別限定なく使用でき、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、2−エチルヘキシルアルコール、ベンジルアルコールなどのアルコール類;エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのアルキレングリコールアルキルエーテル類;プロピレングリコールアセテート、セロソルブアセテート、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの酢酸エステル類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素などが挙げられる。
【0041】
前記重合ロジングリシジルエステルを含有してなる前記エポキシ樹脂組成物は、例えば塗料、接着剤、成形材料など各種の用途に適用することができる。
【実施例】
【0042】
以下に実施例および比較例をあげて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。尚、部および%は特記しない限り重量基準である。なお、本発明における重合ロジンの色調、軟化点および二量体含有率の測定・算出、ならびに重合ロジングリシジルエステルの色調、軟化点、エポキシ当量および一般式(1)で表される成分の含有率の測定・算出は、以下の方法による。
【0043】
(色調)
JIS K5902に準拠してガードナー色度を、JIS K0071−1に準拠してハーゼン色度を目視測定した。
【0044】
(軟化点)
JIS K2207(環球法)に準拠して測定した。
【0045】
エポキシ当量(g/eq):JIS K7236:2001に準拠して測定した。
【0046】
(二量体、一般式(1)成分の含有率)
HLC測定法により求めた。測定条件は以下の通りである。
カラム:ODS(日本分光(株)製)
溶媒:メチルアルコール/0.01%リン酸=9/1(容量比)
流速:1ml/分、
検出器:示差屈折計(日本分光(株)製)
【0047】
実施例1(重合ロジングリシジルエステルの合成)
攪拌機、温度計を備えた反応容器に、重合ロジン(酸価178mgKOH/g、軟化点150℃、色調ガードナー1、二量体含有率65%)300部とトリメチルアミン塩酸塩0.6部をエピクロルヒドリン600部に加え、窒素気流下に80℃に加熱し、3時間保温した。クロロヒドリンエステルが生成し、未反応の重合ロジンがなくなったことをHLC測定法により確認した後、反応系内を120℃に昇温し、水酸化ナトリウム40部を1時間かけて5分割して添加した。この間、生成水はエピクロルヒドリンと共沸させて除いた。ついで、エピクロルヒドリンを減圧下に留去し、さらに30mmHg、135℃にて、5分間保持した後、重合ロジングリシジルエステルを得た。該性状・物性を表1に示す。
【0048】
実施例2
実施例1において、前記重合ロジンに代えて、次の重合ロジン(酸価182mgKOH/g、軟化点171℃、色調ガードナー1、二量体含有率80%)を用いた他は、同様に反応を行い、重合ロジングリシジルエステルを得た。該性状・物性を表1に示す。
【0049】
実施例3
実施例1において、前記重合ロジンに代えて、水素化重合ロジン(酸価178mgKOH/g、軟化点167℃、色調ハーゼン100、二量体含有率80%)を用いた他は、同様に反応を行い、重合ロジングリシジルエステルを得た。該性状・物性を表1に示す。
【0050】
実施例4
実施例1において、トリメチルアミン塩酸塩0.6部に代えて、ジメチルアミン塩酸塩0.9部を用いた他は、同様に反応を行い、重合ロジングリシジルエステルを得た。該性状・物性を表1に示す。
【0051】
比較例1(比較用重合ロジングリシジルエステルの合成)
実施例1において、前記重合ロジンに代えて、比較用の重合ロジン(酸価148mgKOH/g、軟化点94℃、色調ガードナー5、二量体含有率40%)を用いた他は、同様に反応を行い、比較用重合ロジングリシジルエステルを得た。該性状・物性を表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
(エポキシ樹脂組成物の調製および試験板の作成)
実施例1〜4および比較例1で得られた重合ロジングリシジルエステルからなる各供試用サンプル70部(固形分換算)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、製品名「EP1001」、エポキシ当量約475g/eq、不揮発分100%)30部、アミン系硬化剤(大都産業(株)製、MXDA系変性アミン、活性水素当量95g/eq)15部、酸化チタン30部、リン酸アルミニウム系防錆顔料10部、および沈降性硫酸バリウム60部を混合した後、ペイントシェーカーで30分間混練し、次いで所要量のエチレングリコールモノエチルエーテルを加えることにより、固形分50%のエポキシ樹脂塗料を調製した。該塗料をそれぞれ脱脂鋼板にスプレー塗布し、常温で7日間放置して、試験板を調製した。
【0054】
(評価方法)
1)
鉛筆硬度:JIS K5400に準拠。評価結果を表2に示す。
2)
防錆性:JIS K5400の耐塩水噴霧試験
前記試験板に塩水噴霧し、120時間後の錆の発生状態を目視観察した。評価基準は、クロスカット部の剥離幅をいう。評価結果を表2に示す。
3)耐水性
前記試験板を40℃の水中に240時間浸漬した後、JIS K5400の碁盤目試験に準拠し、カッターを用いて2mm幅の碁盤目100個を作成し、次いでセロハンテープ剥離して、剥離状態を目視判定した。評価結果を表2に示す。なお、碁盤目試験結果の100/100とは、100個(分子)が全く剥離せず、全てが残存したことを示す。結果を表2に示す。
【0055】
【表2】
【0056】
表1から、本発明の重合ロジングリシジルエステルは、比較用の重合ロジングリシジルエステルに比べて性状・物性(色調、軟化点、エポキシ当量および一般式(1)で表される成分の含有率)で相違する。また表2から、特定重合ロジングリシジルエステルを用いたエポキシ系塗料が、比較用の重合ロジングリシジルエステルを用いたエポキシ系塗料に比べて、塗膜性能において優れることが分かる。従って、本発明の重合ロジングリシジルエステルは、環境配慮型のエポキシ樹脂などとして各種用途に好適であることが明らかである。