【実施例1】
【0024】
図1〜
図3は、本発明の好ましい実施形態による動電型スピーカー1を説明する図である。
図1は、動電型スピーカー1の斜視図であり、
図3は、ダストキャップ7を除いた場合の動電型スピーカー1の構成を説明する斜視図である。また、
図2は、動電型スピーカー1のA−O−A’断面図である。なお、後述するように、動電型スピーカー1の一部の構造や、内部構造等は、省略している。また、Z軸が延びる方向が全高ないし厚みを規定する高さ方向である。
【0025】
本実施例の動電型スピーカー1は、呼び口径が約10cmの動電型スピーカーである。動電型スピーカー1は、Z軸方向に振動する円形のスピーカー振動板が、第1振動板2と、第2振動板3と、ダストキャップ7と、から構成されている。動電型スピーカー1では、磁気回路10が、フレーム6に収容される構造になっており、前面側のフレーム6の前端部分から背面側の磁気回路10までの距離である全高Hが、約33.5mmと動電型スピーカーとしては比較的に薄型に構成されている。したがって、動電型スピーカー1は、スピーカーを取り付ける(図示しない)キャビネットの厚みを、比較的に確保しにくい厚みが薄い機器に適するスピーカーである。フレーム6の側面側には、音声信号電流が供給されている。
【0026】
スピーカー振動板を構成する第1振動板2と、第2振動板3と、ダストキャップ7と、は、Z軸方向に沿って同軸に配置されている。内周側の第1振動板2は、後述するボイスコイル4のボビン4aに連結する内周部2aと、後述するダンパー5のダンパー内周部5aがならびに第2振動板3の内周部3aが連結する外周部2bと、断面が凸状の内周部2aおよび外周部2bの中間位置に形成される本体部2cを含む。第1振動板2の本体部2cには、放射状に形成される6カ所のリブ2dが形成されている。リブ2dは、凸状の曲面を構成する本体部2cから落とし込まれた平面部ならびに曲面と平面とを連結する斜面部を構成するので、リブ2dが形成されない場合に比べて第1振動板2の剛性を高めている。
【0027】
一方、外周側の第2振動板3は、全高が低い薄型形状のコーン状の第2振動板本体3aと、エッジ3bとによって構成されている。第2振動板本体3aは、その内周部が第1振動板2の外周部2aに連結する一方で、エッジ3bによってその外周端を支持されており、エッジ3bの外周端は、フレーム6の振動板固定部6aに固定されている。動電型スピーカー1の第1振動板2および第2振動板3の第2振動板本体3aは、スピーカー振動板の軽量化を図るために紙繊維を抄紙して成形した紙材を基材とする基体を含んで構成されている。一方、エッジ3bは、全周に渡って第2振動板3を自由支持するように薄肉のロールによるフリーエッジを形成する材料で形成されていれば良く、本実施例の場合には、発泡していないニトリルゴム(NBR)である。なお、エッジ3bは、柔軟性を有する発泡ゴムを金型内に注入して加熱発泡して形成したゴム、等の弾性体で構成してもよい。
【0028】
また、ダストキャップ7は、全高が低い薄型形状の逆ドーム状のダストキャップ本体7aと、立ち下がり部分を含む外周部7bとによって構成されている。ダストキャップ7は、後述するボイスコイル4および磁気回路10の磁気空隙14を覆い、磁気空隙14に塵が入るのを防ぐ機能を発揮するとともに、第1振動板2および第2振動板3とスピーカー振動板を構成する。ダストキャップ7の外周部7bは、第1振動板2の本体部2cに接着剤により連結される。ダストキャップ7は、第1振動板2および第2振動板3と同様に、紙繊維を抄紙して成形した紙材を基材とする基体を含んで構成されている。
【0029】
動電型スピーカー1では、第1振動板2の内周部2aには、ボイスコイル4を構成するボビン4aが連結している。ボイスコイル4は、略円筒状に形成したボビン4aと、その一端側に巻回されて音声電流が供給される略円筒状のコイル4bと、から形成される。ボビン4aは、コイル4bが巻回されない他端側が第1振動板2の内周部2aに接着剤により連結される。コイル4bは、その振動方向であるZ軸方向に対して丸線もしくは平角線を斜めにずらせてボビン4bに巻き回して形成される略円筒状のコイルである。ボイスコイル4のボビン4aおよびコイル4bは、後述する磁気回路10の磁気空隙14に、エッジ3bおよび後述するダンパー5により振動可能に支持されて配置される。
【0030】
ダンパー5は、柔軟性を有する繊維の織布を基材としてフェノール樹脂を含浸して成形するリング形状のコルゲーションダンパーである。具体的には、ダンパー5は、第1振動板2の外周部2cに連結する立ち上がり部分を含むダンパー内周部5aと、フレーム6のダンパー固定部6bに連結する立ち下がり部分を含むダンパー外周部5bと、ダンパー内周部5aとダンパー外周部5bとの間に規定される可動支持部5cと、を有する。可動支持部5cは、平ダンパーを形成するコルゲーションを有し、可動支持部5cの内径半径寸法rYは、本実施例の場合には、約30.5mmである。
【0031】
フレーム6は、振動板形状に対応したバスケット状にプレス成型された鉄板フレームである。フレーム6は、前面側の動板固定部6aと、中間部分に形成されるダンパー固定部6bと、磁気回路10を固定する磁気回路固定部6cと、これらの固定部を連結する連結部と、複数の連結部の間に規定される窓と、ターミナル8を取り付ける取付部と、を備える。したがって、第1振動板2、第2振動板3、および、ダストキャップ7からなるスピーカー振動系は、フレーム6および磁気回路10に対してZ軸方向に振動可能に支持される。
【0032】
外磁型の磁気回路10は、センターポール11と、マグネット12と、プレート13と、から構成される。磁気回路10は、センターポール11の中央凸状部とプレート13の内周端部との間に、直流磁界を発生させる磁気空隙14を有する。磁気回路10を構成する各部材は、接着剤で固定される。また、磁気回路10も、フレーム6の磁気回路固定部6cに接着剤で固定される。磁気回路10は、ほぼその全体がフレーム6の内側に収容されるので、動電型スピーカー1を薄型化することができる。また、磁気回路10の径方向の最大寸法は、マグネット12の外形半径寸法rXにより規定され、本実施例の場合には、約30.0mmである。
【0033】
つまり、ダンパー5の可動支持部5cの内径半径寸法rYは、磁気回路10の外径半径寸法rXよりも大きく構成されている。したがって、動電型スピーカー1は、
図2に図示するように、ダンパー5の可動支持部5cが規定する内部空間に、少なくとも磁気回路10の一部を配置するように構成されている。動電型スピーカー1では、ダンパー5と磁気回路10とが干渉しないので、振動系が大きく変位する最低共振周波数f0以下の周波数においても、ダンパー5が磁気回路10に衝突しなくなり、異音を発生しにくくなる。
【0034】
ボイスコイル4のコイル4bの両端にあたるリード線4cは、
図1に図示するように、スピーカー振動板の前面側に一部で露出する。リード線4cは、ボビン4aと第1振動板2の内周部2aとの連結部分にまで引き出されて、
図3に図示するように、第1振動板2の本体部2cに形成されたリブ2dに沿って接着剤により固定されて、第1振動板2と第2振動板3との連結部分を超えたところで、第2振動板3に設けられたハトメを通過した錦糸線9の一方端側にそれぞれハンダ付けされて電気的に接続される。2本の錦糸線9の他端側は、それぞれターミナル8の対応する正負の入力端子に導かれて、第2振動板3が振動した際に他の部位に接触して異音を発生しないように所定の形状に成形された後に、ハンダ付けされて電気的に接続される。
【0035】
動電型スピーカー1では、ボイスコイル4のコイル4aに音声電流が供給されると、磁気空隙14に配置されたコイル4aに駆動力が作用し、ボイスコイル4はZ軸方向に振動し、連結された第1振動板2、第2振動板3、ダストキャップ7およびダンパー5もZ軸方向に振動し、音声を再生する。スピーカー振動板を構成する第1振動板2、第2振動板3、および、ダストキャップ7は、広い周波数帯域で分割振動せずにピストン振動することが好ましい。内径側の第1振動板2と外径側の第2振動板3とから構成されるスピーカー振動板を備える全高が低い薄型の動電型スピーカー1では、最低共振周波数f0付近若しくはそれ以下の周波数でも分割振動が発生しやすいので、低音域の音声再生能力を高めるには、分割振動の発生を抑制することが好ましい。
【0036】
したがって、本実施例の動電型スピーカー1では、
図2に図示するように、ダストキャップ7の外周部7bを規定する断面半径B(約20mm)が、第1振動板2の内周部2aを規定する断面半径A(約10mm)の約2倍に設定されている。また、第1振動板の外周部を規定する断面半径C(約30mm)が、断面半径Aの約3倍に設定され、第2振動板の外周部を規定する断面半径D(約40mm)が、断面半径Aの約4倍に設定される。
【0037】
つまり、動電型スピーカー1は、ほぼ軸対称な略円形のスピーカーの断面形状において、第1振動板2の内周部2aを規定する断面半径Aを基準にして、ダストキャップ7の外周部7bを規定する断面半径Bを断面半径Aの約2倍に設定し、第1振動板2の外周部2bを規定する断面半径Cを断面半径Aの約3倍に設定し、第2振動板3の本体3aの外周部を規定する断面半径Dを断面半径Aの約4倍に設定している。
【0038】
なお、上記における約2倍、約3倍、約4倍という記載は、基準とする断面半径Aをミリメートル(mm)の単位において小数点一桁で規定する場合に、整数倍した寸法2A、3A、4Aを、小数点零桁に切り下げ又は切り上げした場合に相当する値の範囲を含むものであれば良い。例えば、断面半径A(約10mm)の約2倍に設定される断面半径Bは、2倍した寸法2A(=20mm)の±10%の範囲に相当する範囲(約19.8mm〜約20.2mm)を含むものであってもよい。
【0039】
図4は、動電型スピーカー1の音圧周波数特性、および、比較例の動電型スピーカーの音圧周波数特性を説明するグラフである。具体的には、
図4(a)は、上記の動電型スピーカー1の軸上1m音圧周波数特性[/1W](〜2kHz)であって、
図4(b)は、動電型スピーカー1に比較してダストキャップの構成が異なる(図示しない)比較例の動電型スピーカー100の軸上1m音圧周波数特性[/1W](〜2kHz)である。比較例の動電型スピーカー100は、上記のダストキャップ7とは異なり、ボイスコイル4のボビン4aの前面側端部を覆おうダストキャップを備えている。
【0040】
図4(a)のグラフに示すように、本実施例の動電型スピーカー1では、ダストキャップ7が第1振動板2の本体の内周部2aおよび外周部2bの中間位置に形成される本体部2cに連結することになるので、本体部2cに現れやすい分割振動のモードを抑制するとともに、第1振動板2と第2振動板3との強度のバランスがとれて、音圧周波数特性の乱れを抑えて再生音質を高めることができる。
【0041】
一方で、
図4(b)のグラフに示すように、比較例の動電型スピーカー100では、動電型スピーカー1に比べて、スピーカー振動板において約400Hz付近で発生する分割振動を抑制することができずに、大きなピークとディップが出現する音圧周波数特性になっている。これは、ダストキャップの構成が異なり、その結果、ダストキャップの外周部を規定する断面半径Bが、第1振動板2の内周部2aを規定する断面半径Aの約2倍に設定されていないからであって、第1振動板2と第2振動板3との強度のバランスがとれなくなり、第1振動板2が分割振動するからである。
【0042】
なお、2次並びに3次の高調波歪特性に関しても、本実施例の動電型スピーカー1の方が、比較例の動電型スピーカー100よりも優れている。本実施例の動電型スピーカー1では、ボイスコイル4のリード線4cは、剛性を高められた第1振動板2のリブ2dに沿って配置されるので、第1振動板2に固定された部分での断線等の不良の発生が少なくできる。
【0043】
上記実施例では、Z軸方向に振動する第1振動板2および第2振動板3を含む薄型の動電型スピーカー1であって、第1振動板2が凸状の曲面を構成する本体部2cを有し、ダストキャップ7が本体部2cに連結する場合であるが、第1振動板2の本体部2cは、本実施例のような凸状の曲面を構成する場合に限られない。第1振動板2の本体部2cは、第2振動板3のようなコーン形状であっても良く、また、平面振動板を構成する平面形状であってもよい。