特許第6194741号(P6194741)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6194741
(24)【登録日】2017年8月25日
(45)【発行日】2017年9月13日
(54)【発明の名称】動電型スピーカー
(51)【国際特許分類】
   H04R 9/02 20060101AFI20170904BHJP
   H04R 7/12 20060101ALI20170904BHJP
   H04R 7/14 20060101ALI20170904BHJP
【FI】
   H04R9/02 A
   H04R9/02 103Z
   H04R7/12 K
   H04R7/14 K
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-216865(P2013-216865)
(22)【出願日】2013年10月18日
(65)【公開番号】特開2015-80121(P2015-80121A)
(43)【公開日】2015年4月23日
【審査請求日】2016年7月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】710014351
【氏名又は名称】オンキヨー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】豊福 健一郎
【審査官】 堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/135745(WO,A1)
【文献】 特開2000−036995(JP,A)
【文献】 特開2009−200919(JP,A)
【文献】 特開2008−141663(JP,A)
【文献】 特開2005−269334(JP,A)
【文献】 特開2005−252925(JP,A)
【文献】 特開2006−222989(JP,A)
【文献】 特開2011−004308(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 9/02
H04R 7/12
H04R 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の磁気空隙を規定する磁気回路と、該磁気空隙に振動可能に配置される筒状のコイルならびにボビンを有するボイスコイルと、該ボイスコイルの該ボビンに内周部が連結する第1振動板と、該第1振動板の外周部にダンパー内周部が連結するダンパーならびに第2振動板と、該ダンパーのダンパー外周部ならびに該第2振動板の外周部ならびに該磁気回路にそれぞれ連結するフレームと、その外周部が該第1振動板の該内周部および該外周部の中間位置に振動する方向に凸状の断面の曲面が形成される本体部に連結して該ボイスコイルおよび該磁気回路の該磁気空隙を覆うダストキャップと、を備える、
動電型スピーカー。
【請求項2】
前記ダンパーが、前記第1振動板の前記外周部に連結する前記ダンパー内周部と、前記フレームに連結する前記ダンパー外周部と、該ダンパー内周部と該ダンパー外周部との間に規定される可動支持部と、を有し、該可動支持部の内径寸法が、前記磁気回路の外径寸法よりも大きく構成されて、該可動支持部が規定する内部空間に少なくとも該磁気回路の一部を配置する、
請求項1に記載の動電型スピーカー。
【請求項3】
前記ダストキャップの前記外周部を規定する断面半径Bが、前記第1振動板の前記内周部を規定する断面半径Aの約2倍に設定され、該第1振動板の前記外周部を規定する断面半径Cが、前記断面半径Aの約3倍に設定され、前記第2振動板の前記外周部を規定する断面半径Dが、前記断面半径Aの約4倍に設定される、
請求項1または2に記載の動電型スピーカー。
【請求項4】
前記第1振動板が、前記本体部に放射状に形成される複数のリブをさらに含み、該リブが規定する溝部に、前記ボイスコイルのコイルに接続するリード線が配置されている、
請求項1から3のいずれかに記載の動電型スピーカー。
【請求項5】
前記第2振動板が、前記第1振動板の前記外周部に連結するコーン状の第2振動板本体と、該第2振動板本体の外周部および前記フレームを振動可能に連結するエッジと、を含む、
請求項1から4のいずれかに記載の動電型スピーカー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
内径側の第1振動板と外径側の第2振動板とから構成される振動板を備える全高が低い薄型の動電型スピーカーに関し、低音域の音声再生能力に優れ、小型のスピーカーキャビネットに取り付けるのに適する動電型スピーカーに関する。
【背景技術】
【0002】
音声を再生するスピーカーを取り付けるディスプレイ装置、遊技機、等の音響機器においては、スピーカーを取り付けるキャビネットを含む占有空間を小型化することが要望されている。キャビネットの厚み寸法は、取り付けるスピーカーが動電型スピーカーである場合には、動電型スピーカーの全高寸法に支配される。特に、前面側のフレームの前端部分から背面側の磁気回路までの距離である全高を薄くするように薄型化を図る動電型スピーカーでは、スピーカー振動板の形状、あるいは、ボイスコイルの中心支持の構造によって限界がある場合がある。
【0003】
具体的には、薄型化によりボイスコイルを中心支持するダンパーが磁気回路に近づいても、磁気回路に接触して異音を発生しないように配慮する必要がある。動電型スピーカーでは、振動系が大きく変位する最低共振周波数f0以下の周波数において、ダンパーが磁気回路に衝突して異音を発生し易くなる、という問題がある。したがって、従来には、このような問題を解決するために様々な動電型スピーカーが提案されている。
【0004】
従来には、フレームと、外周縁部が前記フレームにより支持されたダンパーと、前記ダンパーに取り付けられ、ボイスコイルボビンを移動自在に支持する連結部材と、前記連結部材に固定された振動板と、を備え、前記連結部材の外周壁の上端近傍には周方向に沿って溝が形成されており、前記振動板の内周縁部は、前記溝内に塗布された接着剤により前記連結部材に固着していることを特徴とするスピーカーがある。スピーカーは、好ましくは、前記振動板の内周縁部は放音側と逆側に折り曲げられた部分を有し、前記折り曲げられた部分が前記溝内に挿入されていることを特徴とする(特許文献1)。
【0005】
また、従来には、駆動方向に沿って同軸に配置した第1の振動板と第2の振動板とを備え、前記第1の振動板及び前記第2の振動板の外周部は、フレーム上の振動板支持部に固定されると共に、前記第1の振動板と前記第2の振動板は接合部で接合されると共に、前記第1または前記第2の振動板の内周部はボイスコイルボビンに固定され、前記接合部の近傍にダストキャップが取り付けられることを特徴とするスピーカーがある。好ましくは、前記接合部は、前記第2の振動板の外周部と内周部との間にあり、前記第2の振動板の内周部はボイスコイルボビンに固定される。また、好ましくは、前記第2の振動板は、前記第1の振動板側に凸となる屈曲部を有し、前記接合部は前記屈曲部の頂点近傍にある(特許文献2)。
【0006】
また、従来には、中央孔9cが形成された平板振動板9の背面9aに円筒部9bが一体形成され、この円筒部9bの外側に前記背面外周部に向って放射状に延びるリブ9dが一体形成され、前記円筒部9bの内側位置であって、フレーム1内底部中央に磁気回路2が設けられ、この磁気回路2の磁気ギャップにボイスコイル巻線部8aが位置するボイスコイル8の上方外周部に前記平板振動板9の内周部が接着され、かつ前記中央孔9cから突出した前記ボイスコイル8の先端部に嵌め込んで、前記平板振動板9の前面に平板状のセンターキャップ11が取付けられ、前記磁気回路2より内径が大きく、磁気回路2と機械的に干渉しないよう前記平板振動板9の円筒部9bの外側に配置したダンパー12により円筒部9bを介し前記ボイスコイル8を支持し、前記円筒部9bにはその内側に配置された前記ボイスコイル8の発熱を外部に放熱する通気孔9eが形成され、かつこの通気孔9eとともに放熱経路Aを形成する放熱窓7が前記フレーム1に形成されたことを特徴とするスピーカーがある(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−269334号公報(図1図2
【特許文献2】特開2006−222989号公報(図2図4
【特許文献3】特開2011−4308号公報(図1図6
【0008】
しかしながら、上記特許文献1〜3の動電型スピーカーでは、ダンパーと磁気回路とが干渉しないようにするとともに、製造工程を容易にするために、特別な振動部材である連結部材等を用いる、あるいは、複数の部材から振動板を構成する、等の対策が必要になる。しかしながら、その結果、動電型スピーカーの振動系の重量が重くなり、中高音域の再生レベルが低下しやすいという問題がある。また、複数の部材から振動板を全高が低い薄型形状に構成すると、動電型スピーカーの薄型化を図ることが出来る一方で、分割振動が発生しやすくなり、音圧周波数特性が乱れて再生音質が低下するという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の従来技術が有する問題を解決するためになされたものであり、その目的は、全高が低い薄型の動電型スピーカーであって、内径側の第1振動板と外径側の第2振動板とから構成される振動板を備え、低音域の音声再生能力に優れ、小型のスピーカーキャビネットに取り付けるのに適する動電型スピーカーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の動電型スピーカーは、環状の磁気空隙を規定する磁気回路と、磁気空隙に振動可能に配置される筒状のコイルならびにボビンを有するボイスコイルと、ボイスコイルのボビンに内周部が連結する第1振動板と、第1振動板の外周部にダンパー内周部が連結するダンパーならびに第2振動板と、ダンパーのダンパー外周部ならびに第2振動板の外周部ならびに磁気回路にそれぞれ連結するフレームと、その外周部が第1振動板の内周部および外周部の中間位置に振動する方向に凸状の断面の曲面が形成される本体部に連結してボイスコイルおよび磁気回路の磁気空隙覆うダストキャップと、を備える。
【0011】
また、本発明の動電型スピーカーは、ダンパーが、第1振動板の外周部に連結するダンパー内周部と、フレームに連結するダンパー外周部と、ダンパー内周部とダンパー外周部との間に規定される可動支持部と、を有し、可動支持部の内径寸法が、磁気回路の外径寸法よりも大きく構成されて、可動支持部が規定する内部空間に少なくとも磁気回路の一部を配置する。
【0012】
また、本発明の動電型スピーカーは、ダストキャップの外周部を規定する断面半径Bが、第1振動板の内周部を規定する断面半径Aの約2倍に設定され、第1振動板の外周部を規定する断面半径Cが、断面半径Aの約3倍に設定され、第2振動板の外周部を規定する断面半径Dが、断面半径Aの約4倍に設定される。
【0013】
また、本発明の動電型スピーカーは、第1振動板が、本体部に放射状に形成される複数のリブをさらに含み、リブが規定する溝部に、ボイスコイルのコイルに接続するリード線が配置されている。
【0014】
また、本発明の動電型スピーカーは、第2振動板が、第1振動板の外周部に連結するコーン状の第2振動板本体と、第2振動板本体の外周部およびフレームを振動可能に連結するエッジと、を含む。
【0015】
以下、本発明の作用について説明する。
【0016】
本発明の動電型スピーカーは、環状の磁気空隙を規定する磁気回路と、磁気空隙に振動可能に配置される筒状のコイルならびにボビンを有するボイスコイルと、ボイスコイルのボビンに内周部が連結する第1振動板と、第1振動板の外周部にダンパー内周部が連結するダンパーならびに第2振動板と、ダンパー外周部ならびに第2振動板の外周部ならびに磁気回路にそれぞれ連結するフレームと、ボイスコイルおよび磁気回路の磁気空隙を覆うダストキャップと、を備える。ダストキャップは、その外周部が第1振動板の内周部および外周部の中間位置に振動する方向に凸状の断面の曲面が形成される本体部に連結する。
【0017】
したがって、動電型スピーカーの振動板を、比較的に全高が低い薄型形状に第1振動板および第2振動板から構成しても、ダストキャップが第1振動板の本体の凸状部に現れやすい分割振動のモードを抑制するので、音圧周波数特性の乱れを抑えて再生音質を高めることができる。また、比較的に動電型スピーカーの振動系の重量を軽くできるので、中高音域の再生レベルが低下しにくいという利点がある。なお、第2振動板は、第1振動板の外周部に連結するコーン状の第2振動板本体と、第2振動板本体の外周部およびフレームを振動可能に連結するエッジと、を含んでいてもよい。
【0018】
好ましくは、ダンパーが、第1振動板の外周部に連結するダンパー内周部と、フレームに連結するダンパー外周部と、ダンパー内周部とダンパー外周部との間に規定される可動支持部と、を有し、可動支持部の内径寸法が、磁気回路の外径寸法よりも大きく構成されて、可動支持部が規定する内部空間に少なくとも磁気回路の一部を配置する。したがって、ダンパーと磁気回路とが干渉しないので、振動系が大きく変位する最低共振周波数f0以下の周波数においても、ダンパーが磁気回路に衝突しなくなり、異音を発生しにくくなる。
【0019】
また、この動電型スピーカーでは、好ましくは、ダストキャップの外周部を規定する断面半径Bが、第1振動板の内周部を規定する断面半径Aの約2倍に設定され、第1振動板の外周部を規定する断面半径Cが、断面半径Aの約3倍に設定され、第2振動板の外周部を規定する断面半径Dが、断面半径Aの約4倍に設定される。つまり、ほぼ軸対称な略円形のスピーカーの断面形状において、第1振動板の内周部を規定する断面半径Aを基準にして、ダストキャップの外周部を規定する断面半径Bを断面半径Aの約2倍に設定し、第1振動板の外周部を規定する断面半径Cを断面半径Aの約3倍に設定し、第2振動板の外周部を規定する断面半径Dを断面半径Aの約4倍に設定する。その結果、ダストキャップが第1振動板の本体の内周部および外周部の中間位置に形成される本体部の凸状部に連結することになり、凸状部に現れやすい分割振動のモードを抑制するとともに、第1振動板と第2振動板との強度のバランスがとれて、音圧周波数特性の乱れを抑えて再生音質を高めることができる。
【0020】
また、動電型スピーカーの第1振動板は、本体部に放射状に形成される複数のリブをさらに含んでいてもよい。第1振動板の本体部に形成されるリブが規定する溝部に、ボイスコイルのコイルに接続するリード線を配置することができる。その結果、動電型スピーカーの振動板が大きく振幅する振動モードにおけるリード線の暴れを防ぐことができ、断線等の不良の発生も抑えることが可能になる利点がある。
【発明の効果】
【0021】
全高が低い薄型の動電型スピーカーであって、内径側の第1振動板と外径側の第2振動板とから構成される振動板を備え、低音域の音声再生能力に優れ、小型のスピーカーキャビネットに取り付けるのに適する動電型スピーカーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の好ましい実施形態による動電型スピーカー1を説明する斜視図である。(実施例1)
図2】本発明の好ましい実施形態による動電型スピーカー1を説明する断面図である。(実施例1)
図3】本発明の好ましい実施形態による動電型スピーカー1の構成を説明する斜視図(ダストキャップ7を除いた場合)である。(実施例1)
図4】本発明の好ましい実施形態による動電型スピーカー1の音圧周波数特性、および、比較例の動電型スピーカーの音圧周波数特性を説明するグラフである。(実施例1/比較例)
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好ましい実施形態による動電型スピーカーについて説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【実施例1】
【0024】
図1図3は、本発明の好ましい実施形態による動電型スピーカー1を説明する図である。図1は、動電型スピーカー1の斜視図であり、図3は、ダストキャップ7を除いた場合の動電型スピーカー1の構成を説明する斜視図である。また、図2は、動電型スピーカー1のA−O−A’断面図である。なお、後述するように、動電型スピーカー1の一部の構造や、内部構造等は、省略している。また、Z軸が延びる方向が全高ないし厚みを規定する高さ方向である。
【0025】
本実施例の動電型スピーカー1は、呼び口径が約10cmの動電型スピーカーである。動電型スピーカー1は、Z軸方向に振動する円形のスピーカー振動板が、第1振動板2と、第2振動板3と、ダストキャップ7と、から構成されている。動電型スピーカー1では、磁気回路10が、フレーム6に収容される構造になっており、前面側のフレーム6の前端部分から背面側の磁気回路10までの距離である全高Hが、約33.5mmと動電型スピーカーとしては比較的に薄型に構成されている。したがって、動電型スピーカー1は、スピーカーを取り付ける(図示しない)キャビネットの厚みを、比較的に確保しにくい厚みが薄い機器に適するスピーカーである。フレーム6の側面側には、音声信号電流が供給されている。
【0026】
スピーカー振動板を構成する第1振動板2と、第2振動板3と、ダストキャップ7と、は、Z軸方向に沿って同軸に配置されている。内周側の第1振動板2は、後述するボイスコイル4のボビン4aに連結する内周部2aと、後述するダンパー5のダンパー内周部5aがならびに第2振動板3の内周部3aが連結する外周部2bと、断面が凸状の内周部2aおよび外周部2bの中間位置に形成される本体部2cを含む。第1振動板2の本体部2cには、放射状に形成される6カ所のリブ2dが形成されている。リブ2dは、凸状の曲面を構成する本体部2cから落とし込まれた平面部ならびに曲面と平面とを連結する斜面部を構成するので、リブ2dが形成されない場合に比べて第1振動板2の剛性を高めている。
【0027】
一方、外周側の第2振動板3は、全高が低い薄型形状のコーン状の第2振動板本体3aと、エッジ3bとによって構成されている。第2振動板本体3aは、その内周部が第1振動板2の外周部2aに連結する一方で、エッジ3bによってその外周端を支持されており、エッジ3bの外周端は、フレーム6の振動板固定部6aに固定されている。動電型スピーカー1の第1振動板2および第2振動板3の第2振動板本体3aは、スピーカー振動板の軽量化を図るために紙繊維を抄紙して成形した紙材を基材とする基体を含んで構成されている。一方、エッジ3bは、全周に渡って第2振動板3を自由支持するように薄肉のロールによるフリーエッジを形成する材料で形成されていれば良く、本実施例の場合には、発泡していないニトリルゴム(NBR)である。なお、エッジ3bは、柔軟性を有する発泡ゴムを金型内に注入して加熱発泡して形成したゴム、等の弾性体で構成してもよい。
【0028】
また、ダストキャップ7は、全高が低い薄型形状の逆ドーム状のダストキャップ本体7aと、立ち下がり部分を含む外周部7bとによって構成されている。ダストキャップ7は、後述するボイスコイル4および磁気回路10の磁気空隙14を覆い、磁気空隙14に塵が入るのを防ぐ機能を発揮するとともに、第1振動板2および第2振動板3とスピーカー振動板を構成する。ダストキャップ7の外周部7bは、第1振動板2の本体部2cに接着剤により連結される。ダストキャップ7は、第1振動板2および第2振動板3と同様に、紙繊維を抄紙して成形した紙材を基材とする基体を含んで構成されている。
【0029】
動電型スピーカー1では、第1振動板2の内周部2aには、ボイスコイル4を構成するボビン4aが連結している。ボイスコイル4は、略円筒状に形成したボビン4aと、その一端側に巻回されて音声電流が供給される略円筒状のコイル4bと、から形成される。ボビン4aは、コイル4bが巻回されない他端側が第1振動板2の内周部2aに接着剤により連結される。コイル4bは、その振動方向であるZ軸方向に対して丸線もしくは平角線を斜めにずらせてボビン4bに巻き回して形成される略円筒状のコイルである。ボイスコイル4のボビン4aおよびコイル4bは、後述する磁気回路10の磁気空隙14に、エッジ3bおよび後述するダンパー5により振動可能に支持されて配置される。
【0030】
ダンパー5は、柔軟性を有する繊維の織布を基材としてフェノール樹脂を含浸して成形するリング形状のコルゲーションダンパーである。具体的には、ダンパー5は、第1振動板2の外周部2cに連結する立ち上がり部分を含むダンパー内周部5aと、フレーム6のダンパー固定部6bに連結する立ち下がり部分を含むダンパー外周部5bと、ダンパー内周部5aとダンパー外周部5bとの間に規定される可動支持部5cと、を有する。可動支持部5cは、平ダンパーを形成するコルゲーションを有し、可動支持部5cの内径半径寸法rYは、本実施例の場合には、約30.5mmである。
【0031】
フレーム6は、振動板形状に対応したバスケット状にプレス成型された鉄板フレームである。フレーム6は、前面側の動板固定部6aと、中間部分に形成されるダンパー固定部6bと、磁気回路10を固定する磁気回路固定部6cと、これらの固定部を連結する連結部と、複数の連結部の間に規定される窓と、ターミナル8を取り付ける取付部と、を備える。したがって、第1振動板2、第2振動板3、および、ダストキャップ7からなるスピーカー振動系は、フレーム6および磁気回路10に対してZ軸方向に振動可能に支持される。
【0032】
外磁型の磁気回路10は、センターポール11と、マグネット12と、プレート13と、から構成される。磁気回路10は、センターポール11の中央凸状部とプレート13の内周端部との間に、直流磁界を発生させる磁気空隙14を有する。磁気回路10を構成する各部材は、接着剤で固定される。また、磁気回路10も、フレーム6の磁気回路固定部6cに接着剤で固定される。磁気回路10は、ほぼその全体がフレーム6の内側に収容されるので、動電型スピーカー1を薄型化することができる。また、磁気回路10の径方向の最大寸法は、マグネット12の外形半径寸法rXにより規定され、本実施例の場合には、約30.0mmである。
【0033】
つまり、ダンパー5の可動支持部5cの内径半径寸法rYは、磁気回路10の外径半径寸法rXよりも大きく構成されている。したがって、動電型スピーカー1は、図2に図示するように、ダンパー5の可動支持部5cが規定する内部空間に、少なくとも磁気回路10の一部を配置するように構成されている。動電型スピーカー1では、ダンパー5と磁気回路10とが干渉しないので、振動系が大きく変位する最低共振周波数f0以下の周波数においても、ダンパー5が磁気回路10に衝突しなくなり、異音を発生しにくくなる。
【0034】
ボイスコイル4のコイル4bの両端にあたるリード線4cは、図1に図示するように、スピーカー振動板の前面側に一部で露出する。リード線4cは、ボビン4aと第1振動板2の内周部2aとの連結部分にまで引き出されて、図3に図示するように、第1振動板2の本体部2cに形成されたリブ2dに沿って接着剤により固定されて、第1振動板2と第2振動板3との連結部分を超えたところで、第2振動板3に設けられたハトメを通過した錦糸線9の一方端側にそれぞれハンダ付けされて電気的に接続される。2本の錦糸線9の他端側は、それぞれターミナル8の対応する正負の入力端子に導かれて、第2振動板3が振動した際に他の部位に接触して異音を発生しないように所定の形状に成形された後に、ハンダ付けされて電気的に接続される。
【0035】
動電型スピーカー1では、ボイスコイル4のコイル4aに音声電流が供給されると、磁気空隙14に配置されたコイル4aに駆動力が作用し、ボイスコイル4はZ軸方向に振動し、連結された第1振動板2、第2振動板3、ダストキャップ7およびダンパー5もZ軸方向に振動し、音声を再生する。スピーカー振動板を構成する第1振動板2、第2振動板3、および、ダストキャップ7は、広い周波数帯域で分割振動せずにピストン振動することが好ましい。内径側の第1振動板2と外径側の第2振動板3とから構成されるスピーカー振動板を備える全高が低い薄型の動電型スピーカー1では、最低共振周波数f0付近若しくはそれ以下の周波数でも分割振動が発生しやすいので、低音域の音声再生能力を高めるには、分割振動の発生を抑制することが好ましい。
【0036】
したがって、本実施例の動電型スピーカー1では、図2に図示するように、ダストキャップ7の外周部7bを規定する断面半径B(約20mm)が、第1振動板2の内周部2aを規定する断面半径A(約10mm)の約2倍に設定されている。また、第1振動板の外周部を規定する断面半径C(約30mm)が、断面半径Aの約3倍に設定され、第2振動板の外周部を規定する断面半径D(約40mm)が、断面半径Aの約4倍に設定される。
【0037】
つまり、動電型スピーカー1は、ほぼ軸対称な略円形のスピーカーの断面形状において、第1振動板2の内周部2aを規定する断面半径Aを基準にして、ダストキャップ7の外周部7bを規定する断面半径Bを断面半径Aの約2倍に設定し、第1振動板2の外周部2bを規定する断面半径Cを断面半径Aの約3倍に設定し、第2振動板3の本体3aの外周部を規定する断面半径Dを断面半径Aの約4倍に設定している。
【0038】
なお、上記における約2倍、約3倍、約4倍という記載は、基準とする断面半径Aをミリメートル(mm)の単位において小数点一桁で規定する場合に、整数倍した寸法2A、3A、4Aを、小数点零桁に切り下げ又は切り上げした場合に相当する値の範囲を含むものであれば良い。例えば、断面半径A(約10mm)の約2倍に設定される断面半径Bは、2倍した寸法2A(=20mm)の±10%の範囲に相当する範囲(約19.8mm〜約20.2mm)を含むものであってもよい。
【0039】
図4は、動電型スピーカー1の音圧周波数特性、および、比較例の動電型スピーカーの音圧周波数特性を説明するグラフである。具体的には、図4(a)は、上記の動電型スピーカー1の軸上1m音圧周波数特性[/1W](〜2kHz)であって、図4(b)は、動電型スピーカー1に比較してダストキャップの構成が異なる(図示しない)比較例の動電型スピーカー100の軸上1m音圧周波数特性[/1W](〜2kHz)である。比較例の動電型スピーカー100は、上記のダストキャップ7とは異なり、ボイスコイル4のボビン4aの前面側端部を覆おうダストキャップを備えている。
【0040】
図4(a)のグラフに示すように、本実施例の動電型スピーカー1では、ダストキャップ7が第1振動板2の本体の内周部2aおよび外周部2bの中間位置に形成される本体部2cに連結することになるので、本体部2cに現れやすい分割振動のモードを抑制するとともに、第1振動板2と第2振動板3との強度のバランスがとれて、音圧周波数特性の乱れを抑えて再生音質を高めることができる。
【0041】
一方で、図4(b)のグラフに示すように、比較例の動電型スピーカー100では、動電型スピーカー1に比べて、スピーカー振動板において約400Hz付近で発生する分割振動を抑制することができずに、大きなピークとディップが出現する音圧周波数特性になっている。これは、ダストキャップの構成が異なり、その結果、ダストキャップの外周部を規定する断面半径Bが、第1振動板2の内周部2aを規定する断面半径Aの約2倍に設定されていないからであって、第1振動板2と第2振動板3との強度のバランスがとれなくなり、第1振動板2が分割振動するからである。
【0042】
なお、2次並びに3次の高調波歪特性に関しても、本実施例の動電型スピーカー1の方が、比較例の動電型スピーカー100よりも優れている。本実施例の動電型スピーカー1では、ボイスコイル4のリード線4cは、剛性を高められた第1振動板2のリブ2dに沿って配置されるので、第1振動板2に固定された部分での断線等の不良の発生が少なくできる。
【0043】
上記実施例では、Z軸方向に振動する第1振動板2および第2振動板3を含む薄型の動電型スピーカー1であって、第1振動板2が凸状の曲面を構成する本体部2cを有し、ダストキャップ7が本体部2cに連結する場合であるが、第1振動板2の本体部2cは、本実施例のような凸状の曲面を構成する場合に限られない。第1振動板2の本体部2cは、第2振動板3のようなコーン形状であっても良く、また、平面振動板を構成する平面形状であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の動電型スピーカーは、ディスプレイ等の映像・音響機器に内蔵するスピーカーとしてのみならず、音声を再生するスピーカーを内蔵するキャビネットを有するゲーム機、スロットマシン等の遊戯機にも適用が可能である。また、本発明のスピーカー用磁気回路を備える動電型スピーカーは、全高が低く、小型・薄型のキャビネットで音声を再生するスピーカーシステムが実現できるので、設置空間が限定される車両用のスピーカーに特に適する。
【符号の説明】
【0045】
1 動電型スピーカー
2 第1振動板、
3 第2振動板
4 ボイスコイル
5 ダンパー
6 フレーム
7 ダストキャップ
8 ターミナル
9 錦糸線
10 磁気回路
11 ポールプレート
12 マグネット
13 プレート
14 磁気空隙
図1
図2
図3
図4