(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1は、ブラスト処理方法を示すフローチャートである。ブラスト処理方法は、研削材冷却工程(S10)と、研削材投射工程(S12)と、を備えている。
【0018】
研削材冷却工程(S10)は、金属またはセラミックスで形成された研削材を、水蒸気を含む研削材投射空間の露点温度より低い温度に冷却する工程である。
【0019】
研削材は、金属またはセラミックスで形成されている。研削材には、アルミナ、銅スラグ、ガーネット、スチールグリット、珪砂、炭化珪素等の一般的な研削材が使用可能である。研削材には、例えば、JIS Z0311に規定されている鋳鉄グリットや高炭素鋳鋼グリット等のブラスト処理用金属系研削材や、JIS Z0312に規定されている溶融アルミナ等のブラスト処理用非金属系研削材が用いられる。
【0020】
研削材は、後述する研削材投射工程(S12)で研削材に結露水を付着させるために、水蒸気を含む研削材投射空間の露点温度より低い温度に冷却される。研削材投射空間は、研削材がブラストノズルから投射されて、被処理物に至るまでの研削材の投射空間であり、研削材に結露水を付着させるために水蒸気を含んでいる。研削材は、研削材投射空間の露点温度より低い温度に冷却され、例えば、−50℃以下に冷却されることが好ましい。冷却した研削材の温度がより低いほど、研削材により多くの結露水40(後述する
図3)を付着させることが可能となるからである。
【0021】
研削材の冷却方法については、研削材を冷却機器等で冷却する方法や、研削材と冷却剤とを混合させて研削材を冷却する方法が適用可能である。冷却機器には、一般的な冷凍機等を用いることができる。冷却剤には、液体窒素等の液化ガスや、二酸化炭素を固化したドライアイス粒を用いることが可能である。液体窒素の沸点は−196℃であり、ドライアイスの昇華温度は−79℃であるため、これらの冷却剤は、研削材を、水蒸気を含む研削材投射空間の露点温度より低い温度に冷却する能力を有していると共に、常温で揮発するためブラスト処理後の清掃作業等を簡略化できるからである。
【0022】
研削材と、液体窒素やドライアイス粒等の冷却剤と、を混合する場合には、例えば、発泡スチロール製の容器に研削材と冷却剤とを入れて攪拌することにより混合してもよいし、後述するブラスト処理装置の貯留タンクに研削材を投入した後に、液体窒素やドライアイス粒等の冷却剤を入れて混合するようにしてもよい。
【0023】
研削材と冷却剤との混合比については、質量比で1:1から4;1であることが好ましい。冷却剤が1に対して研削材の比率が1より小さい場合には、研削効果が低下するからである。冷却剤が1に対して研削材の比率が4より大きい場合には、研削材の冷却効果が低下するからである。
【0024】
冷却剤としてドライアイス粒を用いる場合には、ペレットドライアイスや雪状ドライアイス(スノードライアイス)等を用いることが可能である。ドライアイス粒の平均粒径は、研削材の平均粒径より小さいことが好ましい。研削材の平均粒径より小さい平均粒径のドライアイス粒を用いることにより、研削材をより急速かつ均一に冷却することが可能になるからである。ドライアイス粒は、粉末状のドライアイス粒であることがより好ましい。粉末状のドライアイス粒の平均粒径は、例えば、10μmから30μmである。
【0025】
研削材を冷却する前には、水分を除去するために研削材を乾燥炉等で乾燥させておくことが好ましい。水分を含んだ状態で研削材を冷却すると、研削材が相互に固着する場合があるからである。乾燥条件については、例えば、乾燥温度が120℃から150℃であり、乾燥時間が3時間から5時間である。乾燥炉には、一般的な加熱炉を用いることができる。
【0026】
研削材投射工程(S12)は、冷却した研削材を、水蒸気を含む研削材投射空間へ投射し、結露水を付着させて被処理物に衝突させる工程である。
【0027】
まず、ブラスト処理を行うためのブラスト処理システムについて説明する。
図2は、ブラスト処理システム10の構成を示す図である。ブラスト処理システム10は、研削材を投射するためのブラスト処理装置12を備えている。
【0028】
ブラスト処理装置12は、研削材14を貯留するための貯留タンク16を有している。貯留タンク16の上部には、研削材14を貯留タンク16へ投入するための開口部17と、開口部17を覆う蓋18と、が設けられている。貯留タンク16の下部には、研削材14を排出するための研削材排出管20が設けられている。貯留タンク16は、耐圧性を備えるために金属材料等で形成されている。貯留タンク16の外周面には、研削材14を保冷するために発泡ウレタン等の断熱材を設けるようにしてもよい。また、貯留タンク16には、研削材14を冷却または保冷するために冷却機器を設けるようにしてもよい。
【0029】
貯留タンク16には、貯留された研削材14の温度を測定するために温度センサ22が設けられていることが好ましい。温度センサ22には、熱電対や白金抵抗温度計等を用いることが可能である。温度センサ22は、研削材14が排出される直前の温度を測定するために、研削材排出管20の近くに配置されることが好ましい。
【0030】
ブラスト処理装置12には、貯留タンク16に接続されており、コンプレッサ等の圧縮ガス供給源(図示せず)から圧縮空気等の圧縮ガスを送るための給気管24が設けられている。給気管24は、貯留タンク16の上部や研削材排出管20とバルブ26等を介して接続されている。
【0031】
ブラスト処理装置12は、貯留タンク16から排出された研削材14を搬送するブラストホース等の研削材搬送管28と、研削材搬送管28の先端に設けられており、研削材14を投射するためのブラストノズル30と、を有している。なお、ブラスト処理装置12には、上記のような直圧式のブラスト処理装置だけでなく、サクション式のブラスト処理装置を用いることも可能である。
【0032】
ブラスト処理システム10は、水蒸気を含む研削材投射空間31の露点温度を測定するための露点計32等の露点温度測定手段を備えている。露点計32には、静電容量式露点計や、鏡面冷却式露点計等を用いることが可能である。また、水蒸気を含む研削材投射空間31の露点温度については、研削材投射空間31の温度、湿度、及び気圧を測定して求めるようにしてもよいし、研削材投射空間31の温度と湿度とから簡略的に求めるようにしてもよい。
【0033】
次に、研削材投射空間31について説明する。研削材投射空間31は、研削材14がブラストノズル30から投射されて、被処理物38に至るまでの研削材14の投射空間である。研削材投射空間31は、研削材14に結露水40(後述する
図3)を付着させるために水蒸気を含んでいる。ブラストノズル30と被処理物38との間隔は、例えば、5cmから10cmである。研削材投射空間31は、例えば、大気中のように水蒸気を含む空気雰囲気で構成されている。研削材投射空間31の環境条件(温度、湿度等)は、ブラスト処理システム10が置かれる環境条件(温度、湿度等)と同じにしてもよいし、異なるようにしてもよい。例えば、ブラスト処理システム10が屋外に置かれている場合には、研削材投射空間31の環境条件を屋外の環境条件と同じにしてもよく、ブラスト処理システム10がブラスト室に置かれている場合には、研削材投射空間31の環境条件をブラスト室の環境条件と同じにしてもよい。
【0034】
ブラスト処理システム10は、研削材投射空間31を加湿するために加湿器34を備えていてもよい。研削材投射空間31を加湿器34で加湿することにより、研削材14により多くの結露水40(後述する
図3)を付着させることができる。研削材投射空間31を加湿した場合には、研削材投射空間31の湿度は、例えば、相対湿度で75%RHから80%RHである。加湿器34には、一般的な加湿器を用いることが可能である。
【0035】
ブラスト処理システム10は、ブラスト処理装置12、温度センサ22、露点計32、加湿器34等を制御するための制御手段36を備えることが好ましい。制御手段36は、例えば、一般的なコンピュータシステムで構成することができる。
【0036】
制御手段36は、温度センサ22から出力される貯留タンク16内の研削材14の温度や、露点計32から出力される研削材投射空間31の露点温度等が入力される入力部を有している。制御手段36は、入力部に入力された貯留タンク16内の研削材14の温度と、研削材投射空間31の露点温度と、を比較する比較部を有している。制御手段36は、貯留タンク16内の研削材14の温度と、研削材投射空間31の露点温度とを比較した結果、貯留タンク16内の研削材14の温度が研削材投射空間31の露点温度より低い場合には正常と判定し、貯留タンク16内の研削材14の温度が研削材投射空間31の露点温度以上の場合には異常と判定する判定部を有している。また、制御手段36では、判定部で異常と判定された場合には、警報を発するようにしてもよい。
【0037】
次に、このブラスト処理システム10を用いてブラスト処理する方法について説明する。
【0038】
ます、ブラスト処理装置12の貯留タンク16に開口部17を介して研削材14を投入して貯留する。研削材14と、液体窒素やドライアイス粒等の冷却剤とを予め混合して研削材14を冷却する場合には、研削材14と冷却剤との混合物を貯留タンク16に投入して貯留する。また、研削材14と冷却剤とを予め混合していない場合には、貯留タンク16に研削材14を投入した後に冷却剤を入れて混合して研削材14を冷却するか、または冷却機器で貯留タンク16を冷却することにより研削材14を冷却する。
【0039】
次に、貯留タンク16に貯留された研削材14の温度と、水蒸気を含む研削材投射空間31の露点温度とを測定して比較する。貯留タンク16に貯留された研削材14の温度が、研削材投射空間31の露点温度以上の場合には、貯留タンク16への冷却剤の投入や冷却機器等の運転により研削材投射空間31の露点温度より低い温度になるまで研削材14を冷却する。
【0040】
貯留タンク16に貯留された研削材14の温度が、研削材投射空間31の露点温度より低い場合には、コンプレッサ等を作動させて圧縮空気等の圧縮ガスを給気管24から貯留タンク16へ送り込み、冷却した研削材14を研削材排出管20から排出させる。そして、冷却した研削材14を、圧縮空気等の圧縮ガスにより、例えば0.1MPaから0.9MPaの圧力で圧送し、研削材搬送管28を介してブラストノズル30から研削材投射空間31へ投射し、冷却した研削材14に結露水40を付着させて被処理物38に衝突させる。被処理物38は、例えば、橋梁、船舶、プラント、ボイラ等の塗装や溶接が必要となる鋼構造部材である。
【0041】
なお、このようなブラスト処理を行う環境については、屋外のように開放された開放空間であってもよいし、ブラスト室内のように密閉された密閉空間であってもよい。
【0042】
次に、このブラスト処理方法の作用について説明する。
図3は、ブラスト処理方法の作用を説明するための模式図である。まず、ブラスト処理装置12の貯留タンク16に研削材14を投入した段階では、
図3(a)に示すように、研削材14は、液体窒素やドライアイス粒等の冷却剤や冷却機器で、水蒸気を含む研削材投射空間31の露点温度より低い温度に冷却されている。例えば、研削材投射空間31の雰囲気温度が25℃であり、そのときの研削材投射空間31の水蒸気の露点温度が3℃である場合には、研削材14は3℃より低い温度に冷却されている。
【0043】
水蒸気を含む研削材投射空間31の露点温度より低い温度に冷却された研削材14を研削材投射空間31へ投射すると、研削材投射空間31の雰囲気温度は露点温度以上であるため、
図3(b)に示すように、冷却した研削材14の周囲の雰囲気(例えば、空気)が冷却されて雰囲気中(例えば、空気中)に含まれる水蒸気が凝結し、研削材14の周りに結露水40が付着する。
【0044】
そして、
図3(c)に示すように、結露水40が付着した研削材14が被処理物38に衝突する。研削材14が被処理物38へ衝突することにより発生した粉塵(破砕された研削材14、被処理物38の切削粉等)は、研削材14に付着している結露水40により補足されて凝集する。
【0045】
図3(d)に示すように、結露水40については研削材14が被処理物38に衝突したときに発生する摩擦熱等の熱エネルギーにより蒸発するため、発生した粉塵については粉塵が凝集した凝集物42となって落下する。このようにして、粉塵の飛散や拡散が抑制される。また、冷却した研削材14の周囲の雰囲気(例えば、空気)が冷却されており、冷却した研削材14の周囲における空気等の気体の比重が大きくなるので、発生した粉塵の飛散や拡散が更に抑制される。
【0046】
なお、一般的に、スチールグリッドのような金属系研削材よりも、アルミナのような非金属系研削材のほうが脆性であるため被処理物38に衝突したときに細かく破砕されやすく粉塵がより多く発生し易いが、このブラスト処理方法によれば、非金属系研削材を用いた場合でも粉塵の飛散や拡散を抑制することが可能となる。また、発生した粉塵については、粉塵が凝集した凝集物42として落下するので、凝集物42の回収が容易となる。更に、冷却した研削材14が被処理物38に衝突するため、被処理物38に付着している付着物等が急冷されて収縮し、容易に付着物等を剥離することが可能となる。また、結露水40については蒸発するため、排水設備等が不要になると共に、例えば、被処理物38に鋼構造部材を用いた場合でも戻り錆等の腐食が抑制される。
【0047】
以上、上記構成によれば、金属またはセラミックスで形成された研削材を、水蒸気を含む研削材投射空間の露点温度より低い温度に冷却する研削材冷却工程と、冷却した研削材を研削材投射空間へ投射し、結露水を付着させて被処理物に衝突させる研削材投射工程と、を備えるので、研削材投射空間に含まれる水蒸気が結露して研削材の周りに付着した結露水が粉塵を補足して凝集し、発生した粉塵の飛散や拡散が抑制される。これにより、湿式ブラストやスポンジブラストのように専用ブラスト機を用いる必要がない。また、研削材の周りに付着した結露水は、研削材が被処理物に衝突したときの摩擦熱等の熱エネルギーにより蒸発するため、湿式ジェットブラストやミストブラストのような排水処理を行う必要がない。このように上記構成によれば、専用ブラスト機や排水処理等の作業が不要となるので、より低コストで粉塵の飛散や拡散を抑制することが可能になる。
【実施例】
【0048】
ブラスト処理を行って粉塵の飛散や拡散について評価を行った。
【0049】
(被処理物)
ブラスト処理される被処理物には、一般構造用圧延材SS400製の鋼板を用いた。鋼板の大きさについては、長さ150mm×幅70mm×板厚3.2mm
tとした。
【0050】
(研削材)
研削材には、白色アルミナ研削材を使用した。白色アルミナ研削材には、WHITE ABRAX F24(サンゴバン社製)を用いた。白色アルミナ研削材のカサ比重は、1.82g/cm
3から1.94g/cm
3である。白色アルミナ研削材の化学組成は、質量比で、Al
2O
3が99.86%、SiO
2が0.01%、Fe
2O
3が0.01%、Na
2Oが0.12%である。白色アルミナ研削材のヌープ硬度は、20.4GPaである。
【0051】
白色アルミナ研削材の粒度分布については、100%通過しなければならない標準ふるい(1段)の目開きが1180μmであり、一定量までとどまってもよい標準ふるい(2段)の目開きとその量が850μm、25%であり、一定量以上とどまらなければならない標準ふるい(3段)の目開きとその量が710μm、45%であり、二つのふるいにとどまったものを合わせて一定量以上にならなければならないそれぞれの標準ふるい(3段+4段)の目開きとその量が710μm、600μm、65%であり、最大3%まで通過してもよい標準ふるい(5段)の目開きが500μmである。
【0052】
(ブラスト処理条件)
実施例1のブラスト処理条件について説明する。ブラスト処理を行うブラスト室については、水蒸気を含む空気雰囲気(大気中)からなる密閉空間とした。このブラスト室の大きさは、約1.26m
3である。ブラスト室の温度については25℃とし、ブラスト室の湿度については相対湿度で40%RHから45%RHとした。なお、このブラスト室の環境条件での露点温度は10℃から12℃である。
【0053】
実施例1のブラスト条件では、白色アルミナ研削材と、冷却剤であるドライアイス粒とを混合して、白色アルミナ研削材を、水蒸気を含む研削材投射空間の露点温度より低い温度に冷却した。研削材投射空間の温度及び湿度については、ブラスト室の温度及び湿度と同じである。混合については、白色アルミナ研削材1000gと、ドライアイス粒250gとを容器に入れて攪拌混合した。ドライアイス粒には、ペレットドライアイス(直径が約3mm、長さが約10mmの円柱状のドライアイス)を瑪瑙乳鉢で破砕してパウダー状にしたものを使用した。パウダー状にしたドライアイス粒の粒径を光学顕微鏡で測定したところ、白色アルミナ研削材の平均粒径より小さく、平均粒径で10μmから30μmであった。
【0054】
白色アルミナ研削材と、パウダー状のドライアイス粒とを混合した混合物を、ブラスト処理装置の貯留タンクに投入した。ブラスト処理装置には、直圧式ブラスト機(マイティミニブラスターS型、太陽金網株式会社製)を使用した。
【0055】
次に、貯留タンクに貯留された冷却した白色アルミナ研削材の温度が、研削材投射空間の露点温度より低いことを確認して、0.3MPaの圧力で約30秒間ブラスト処理した。白色アルミナ研削材の単位時間当たりの吐出量については、約2kg/分とした。ブラストノズルと、被処理物である鋼板との間の距離については、5cmから10cmとした。なお、パウダー状のドライアイス粒については、ブラストノズルから噴出された直後に昇華して揮発した。
【0056】
次に、実施例2のブラスト処理条件について説明する。実施例2のブラスト処理条件については、実施例1のブラスト処理条件とブラスト室の環境が相違しており、その他については実施例1のブラスト処理条件と同じ処理条件とした。実施例2のブラスト処理条件におけるブラスト室の環境については、ブラスト室内をスチーム式加湿器により加湿した。スチーム式加湿器には、(株)山善製のKP−C052(W)を用いた。ブラスト作業時には、加湿を停止した。ブラスト室の温度については25℃とし、ブラスト室の湿度については相対湿度で75%RHから80%RHとした。研削材投射空間の温度及び湿度については、加湿されたブラスト室の温度及び湿度と同じである。このように実施例2のブラスト処理条件では、白色アルミナ研削材と、パウダー状のドライアイス粒とを混合した混合物を、ブラスト処理装置の貯留タンクに投入し、加湿されたブラスト室でブラスト処理を行った。
【0057】
次に、比較例1のブラスト処理条件について説明する。比較例1のブラスト処理条件については、実施例1のブラスト処理条件と白色アルミナ研削材を冷却していない点において相違しており、その他については実施例1のブラスト処理条件と同じである。比較例1のブラスト処理条件では、白色アルミナ研削材を、実施例1のブラスト処理条件のようにドライアイス粒で研削材投射空間の露点温度より低い温度に冷却せず、白色アルミナ研削材をそのままブラスト処理装置の貯留タンクに投入してブラスト処理を行った。なお、白色アルミナ研削材の温度は、約25℃であった。
【0058】
(粉塵の測定方法)
各ブラスト処理条件によるブラスト処理直後にデジタル粉塵計LD−5D型(高濃度用、柴田科学株式会社製)をブラスト室内に配置し、粉塵測定を5分間行った。この粉塵計は、光散乱方式の粉塵計であり、直接的に粉塵の質量を測定しているのではなく、それと比例する散乱光の強弱を測定している。そのため、粉塵計の測定値については、粉塵質の散乱光量を測定して1分間の値(CPM)に換算して表される。なお、各ブラスト処理条件によるブラスト処理の直前にブラスト室内の粉塵測定を5分間行ったところ、略0CPMであった。
【0059】
(粉塵の測定結果)
次に、各ブラスト処理条件でブラスト処理した直後の粉塵測定結果について説明する。
図4は、各ブラスト処理条件によるブラスト処理直後の粉塵測定結果を示すグラフである。
図4のグラフにおいて、横軸に測定時間(秒)を取り、縦軸に粒子数(CPM)を取り、実施例1のブラスト処理条件のデータを黒四角形で表し、実施例2のブラスト処理条件のデータを黒丸で表し、比較例1のブラスト処理条件のデータを黒菱形で表している。
【0060】
比較例1のブラスト処理条件の場合には、ブラスト室内の粉塵濃度の初期値が6234CPM、5分後においても3156CPMの値を示していた。これに対して、実施例1のブラスト処理条件の場合には、ブラスト室内の粉塵濃度の初期値が4201CPM、5分後では1909CPMであり、比較例1のブラスト処理条件に対して粉塵の飛散や拡散が低減した。また、実施例2のブラスト処理条件の場合には、ブラスト室内の粉塵濃度の初期値が1789CPM、5分後では1123CPMであり、比較例1のブラスト処理条件に対して粉塵の飛散や拡散が低減した。
【0061】
このように、実施例1のブラスト処理条件の場合には、比較例1のブラスト処理条件に対して約33%から40%の粉塵が低減しており、白色アルミナ研削材に付着した結露水により粉塵が補足されて凝集し、ブラスト室内への粉塵の飛散や拡散が抑制されたと考えられる。
【0062】
実施例2のブラスト処理条件の場合には、比較例1のブラスト処理条件に対して約64%から71%の粉塵が低減しており、実施例1のブラスト処理条件と同様に、白色アルミナ研削材に付着した結露水により粉塵が補足されて凝集し、ブラスト室内への粉塵の飛散や拡散が抑制されたと考えられる。また、実施例2のブラスト処理条件の場合には、実施例1のブラスト処理条件の場合よりも粉塵の飛散や拡散が抑制されていることから、ブラスト室内を加湿することにより、白色アルミナ研削材により多くの結露水が付着することでブラスト室内の粉塵の飛散や拡散が更に抑制されたと考えられる。