特許第6194750号(P6194750)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6194750-車両用制動兼駆動装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6194750
(24)【登録日】2017年8月25日
(45)【発行日】2017年9月13日
(54)【発明の名称】車両用制動兼駆動装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 7/00 20060101AFI20170904BHJP
   B60B 35/14 20060101ALI20170904BHJP
   F16D 65/12 20060101ALI20170904BHJP
   F16C 19/06 20060101ALI20170904BHJP
   F16C 19/08 20060101ALI20170904BHJP
   F16C 35/063 20060101ALI20170904BHJP
   F16C 35/067 20060101ALI20170904BHJP
   B60B 35/18 20060101ALI20170904BHJP
   H02K 7/102 20060101ALI20170904BHJP
【FI】
   B60K7/00
   B60B35/14 Q
   F16D65/12 Z
   F16D65/12 R
   F16C19/06
   F16C19/08
   F16C35/063
   F16C35/067
   B60B35/18 A
   H02K7/102
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-222661(P2013-222661)
(22)【出願日】2013年10月25日
(65)【公開番号】特開2015-83440(P2015-83440A)
(43)【公開日】2015年4月30日
【審査請求日】2016年9月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】蓮田 康彦
(72)【発明者】
【氏名】東山 佳路
【審査官】 林 政道
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−163037(JP,A)
【文献】 特開2013−182317(JP,A)
【文献】 特開2011−240882(JP,A)
【文献】 特開2008−307917(JP,A)
【文献】 特開2011−079519(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/00− 6/12
B60K 7/00− 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホイールと、
車体に固定される物体、または、車体の一部分であるブラケット、前記ブラケットと結合したインナーステータ、および、前記ホイールと結合したアウターロータを含み、前記ホイールの内部に形成された空間に配置され、前記ホイールを回転させるインホイールモータと、
前記ホイールと同軸を有し、前記ブラケットの内部に形成された空間に配置され、
前記ホイールを構成する部品の1つであるセンターディスクと結合したハブと、
前記アウターロータと結合し、前記ホイールを制動するブレーキディスクと、
前記ブラケットのうちの前記アウターロータの径方向内側に存在する部分と前記アウターロータとの間、および、前記ブラケットのうちの前記ブレーキディスクの径方向内側に存在する部分と前記ブレーキディスクとの間の少なくとも一方に配置されたラジアル軸受である外側軸受と
前記ハブと前記ブラケットとの間に配置されたラジアル軸受である内側軸受と、
前記アウターロータまたは前記ブレーキディスクと前記ブラケットとの間に配置され、前記ブラケットに取り付けられたステータ、および、前記アウターロータまたは前記ブレーキディスクに取り付けられたロータを含むレゾルバとを含み、
前記レゾルバの前記ロータは前記インナーステータよりも車幅方向内側に配置されるアウターホイールの内周部分から車幅方向内側に向けて突出している小径シリンダの内周部分に配置され、前記レゾルバの前記ステータが前記ハブの外周部分との間に配置されることにより、前記小径シリンダの径方向において、前記レゾルバが前記小径シリンダの内周部分と前記ハブの外周部分との間に配置され、かつ、車幅方向において、前記レゾルバが前記外側軸受と前記内側軸受の間に配置されている
車両用制動兼駆動装置。
【請求項2】
前記外側軸受の外輪、ならびに、前記アウターロータおよび前記ブレーキディスクの少なくとも一方のはめあいが、しまりばめであり、
前記外側軸受の内輪および前記ブラケットのはめあいが、すき間ばめである
請求項1に記載の車両用制動兼駆動装置。
【請求項3】
前記インナーステータよりも径方向内側に配置され、前記アウターロータまたは前記ブレーキディスクと前記ブラケットとの間に形成された空間の開口部分を閉塞するオイルシール
をさらに含む請求項1または2に記載の車両用制動兼駆動装置。
【請求項4】
前記ブレーキディスクを構成する部品の1つであり、前記アウターロータまたは前記ブレーキディスクのうちの前記外側軸受により支持された部分よりも径方向外側に配置されたブレーキロータ
をさらに含む請求項1〜のいずれか一項に記載の車両用制動兼駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用制動兼駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、従来の車両用制動兼駆動装置(車両用ホイール駆動装置)の一例を開示している。特許文献1の車両用制動兼駆動装置は、タイヤが取り付けられるホイール、ホイールを回転させるインホイールモータ、および、ホイールを制動するディスクブレーキを含む。
【0003】
インホイールモータは、ホイールの内部に形成された空間において車幅方向内側に配置され、アウターロータおよびインナーステータを含む。アウターロータは、ホイールのリムと結合している。インナーステータは、アウターロータの内周側に配置され、車体と結合している。
【0004】
ディスクブレーキは、ホイールの内部に形成された空間において車幅方向外側に配置され、ブレーキディスクおよびブレーキキャリパを含む。ブレーキディスクは、アウターロータと結合している。ブレーキキャリパは、インナーステータと結合している。
【0005】
この車両用制動兼駆動装置によれば、インナーステータに電流が供給されることにより、アウターロータおよびホイールが一体的に回転する。一方、ブレーキキャリパが駆動されることにより、ブレーキディスクに摩擦力が作用し、アウターロータおよびホイールが制動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−57732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の車両用制動兼駆動装置を含む車両が走行しているとき、タイヤが路面から反力を受ける。この反力が、ホイールの径方向および軸方向に作用する成分を含む場合、タイヤを車体に対して傾斜させる力がタイヤに作用する。この力は、ホイール、ホイールと結合したアウターロータ、および、アウターロータと結合したブレーキディスクに作用する。このため、ブレーキディスクを車体およびブレーキキャリパに対して傾斜させる力がブレーキディスクに作用する。
【0008】
特許文献1は、このような力が作用した場合におけるブレーキディスクの挙動を考慮していない。このため、ブレーキディスクが車体およびブレーキキャリパに対して傾斜すると考えられる。この場合、ブレーキディスクに振れが生じることに起因して、制動力が安定しなくなり、異音が発生するおそれがある。また、ブレーキパッドの片当たり摩耗が発生するおそれもある。
【0009】
本発明の目的は、ブレーキディスクが振れにくくなる車両用制動兼駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
〔1〕本車両用制動兼駆動装置の独立した一形態は、ホイールと、車体に固定される物体、または、車体の一部分であるブラケット、前記ブラケットと結合したインナーステータ、および、前記ホイールと結合したアウターロータを含み、前記ホイールの内部に形成された空間に配置され、前記ホイールを回転させるインホイールモータと、前記アウターロータと結合し、前記ホイールを制動するブレーキディスクと、前記ブラケットのうちの前記アウターロータの径方向内側に存在する部分と前記アウターロータとの間、および、前記ブラケットのうちの前記ブレーキディスクの径方向内側に存在する部分と前記ブレーキディスクとの間の少なくとも一方に配置されたラジアル軸受である外側軸受とを含む。
【0011】
本車両用制動兼駆動装置によれば、インナーステータに電流が供給されることにより、アウターロータが回転する。ホイールおよびブレーキディスクがそれぞれアウターロータと結合しているため、アウターロータが回転することにより、ホイールおよびブレーキディスクがアウターロータと一体的に回転する。アウターロータおよびホイールは、ブレーキディスクに摩擦力が作用することにより制動される。
【0012】
一方、外側軸受は、ホイールを介してアウターロータまたはブレーキディスクに作用する反力を受ける。このため、アウターロータおよびブレーキディスクが、ブラケットに対して傾斜しにくい。このため、ブレーキディスクの振れが生じにくい。
【0013】
〔2〕前記車両用制動兼駆動装置に従属する一形態は、前記ホイールと同軸を有し、前記ブラケットの内部に形成された空間に配置され、前記ホイールを構成する部品の1つであるセンターディスクと結合したハブと、前記ハブと前記ブラケットとの間に配置されたラジアル軸受である内側軸受とをさらに含む。
【0014】
本車両用制動兼駆動装置によれば、内側軸受が、ホイールを介してハブに作用する反力を受ける。このため、ハブがブラケットに対して傾斜しにくい。このため、ホイールが傾斜しにくい。このため、ホイールと結合したアウターロータ、および、アウターロータと結合したブレーキディスクが、ブラケットに対して傾斜しにくい。このため、ブレーキディスクの振れが生じにくい。
【0015】
〔3〕前記車両用制動兼駆動装置に従属する一形態は、次の事項を含む。前記外側軸受の外輪、ならびに、前記アウターロータおよび前記ブレーキディスクの少なくとも一方のはめあいが、しまりばめであり、前記外側軸受の内輪および前記ブラケットのはめあいが、すき間ばめである。
【0016】
外側軸受の配置形態の一例によれば、外側軸受がアウターロータとブラケットとの間に配置される。この場合、外側軸受の外輪および内輪は、一例として次のはめあいの形態を取り得る。すなわち、外輪およびアウターロータのはめあい、および、内輪およびブラケットのはめあいの両方が、しまりばめに設定される。この一例によれば、次の課題が生じるおそれがある。
【0017】
アウターロータがインホイールモータの軸方向に熱膨張したとき、外輪がアウターロータに引きつられて変位する。また、ブラケットがインホイールモータの軸方向に熱膨張したとき、内輪がブラケットに引きつられて変位する。このため、アウターロータの材料およびブラケットの材料が互いに異なる場合、アウターロータの熱膨張にともない外輪が変位する量、および、ブラケットの熱膨張にともない内輪が変位する量が互いに異なる。このため、インホイールモータの軸方向における外輪および内輪の相対的な位置が、アウターロータおよびブラケットが熱膨張することにともない変化する。このため、外輪および内輪の相対的な回転に対する抵抗が大きくなるおそれがある。なお、このような課題は、外輪がブレーキディスクとブラケットとの間に配置され、かつ、外輪およびブレーキディスクのはめあい、ならびに、内輪およびブラケットのはめあいの両方がしまりばめに設定される場合においても同様に生じ得る。
【0018】
本車両用制動兼駆動装置によれば、内輪およびブラケットのはめあいがすき間ばめのため、ブラケットがインホイールモータの軸方向に熱膨張しても、内輪がブラケットに引きつられにくい。このため、アウターロータまたはブレーキディスク、および、ブラケットが熱膨張しても、インホイールモータの軸方向における外輪および内輪の相対的な位置が変化しにくい。このため、外輪および内輪の相対的な回転に対する抵抗が大きくなりにくい。
【0019】
〔4〕前記車両用制動兼駆動装置に従属する一形態は、前記インナーステータよりも径方向内側に配置され、前記アウターロータまたは前記ブレーキディスクと前記ブラケットとの間に形成された空間の開口部分を閉塞するオイルシールをさらに含む。
【0020】
本車両用制動兼駆動装置によれば、アウターロータまたはブレーキディスクとブラケットとの間の空間に異物が入り込みにくい。オイルシールは、一例として、次の配置形態を取り得る。すなわち、オイルシールがインナーステータよりも径方向外側に配置される、または、オイルシールが径方向においてインナーステータと同じ位置に配置される。一方、本車両用制動兼駆動装置によれば、オイルシールがインナーステータよりも径方向内側に配置されている。このため、上記の一例よりもオイルシールの径が小さくなる。このため、オイルシールの摺動抵抗が小さくなる。
【0021】
〔5〕前記車両用制動兼駆動装置に従属する一形態は、前記アウターロータまたは前記ブレーキディスクと前記ブラケットとの間に配置され、前記ブラケットに取り付けられたステータ、および、前記アウターロータまたは前記ブレーキディスクに取り付けられたロータを含むレゾルバをさらに含む。
【0022】
本車両用制動兼駆動装置によれば、アウターロータまたはブレーキディスクが、外側軸受に支持さていることによりブラケットに対して傾斜しにくい。このため、アウターロータまたはブレーキディスクに取り付けられたレゾルバのロータが、レゾルバのステータに対して傾斜しにくい。このため、レゾルバのステータおよびロータの間の距離が変化しにくい。このため、レゾルバの測定精度が低下しにくい。
【0023】
〔6〕前記車両用制動兼駆動装置に従属する一形態は、前記ブレーキディスクを構成する部品の1つであり、前記アウターロータまたは前記ブレーキディスクのうちの前記外側軸受により支持された部分よりも径方向外側に配置されたブレーキロータをさらに含む。
【0024】
ブレーキロータは、一例として、次の配置形態を取り得る。すなわち、ブレーキロータが、アウターロータまたはブレーキディスクのうちの外側軸受により支持された部分よりも径方向内側に配置される。本車両用制動兼駆動装置によれば、この一例と比較して、ブレーキロータの径が大きい。このため、制動有効半径が大きくなり、大きな制動力が得られる。
【発明の効果】
【0025】
本車両用制動兼駆動装置によれば、ブレーキディスクが振れにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】実施形態の車両用制動兼駆動装置の半断面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1を参照して、車両用制動兼駆動装置1の構成について説明する。
車両用制動兼駆動装置1は、車体(図示略)に結合されている。車両用制動兼駆動装置1は、ホイール10、ハブ20、ディスクブレーキ30、インホイールモータ40、ラジアル軸受である内側軸受110、ラジアル軸受である外側軸受120、および、オイルシール130を含む。ホイール10、ハブ20、ディスクブレーキ30、および、インホイールモータ40は、図1において一点鎖線により示されるとおり、同一の回転中心線Zを有している。
【0028】
車両用制動兼駆動装置1の構成要素同士の相対的な位置関係は、径方向、径方向内側、径方向外側、車幅方向、車幅方向内側、および、車幅方向外側の用語により記述することができる。径方向は、回転中心線Zの径方向を示している。径方向内側は、任意の基準位置に対して径方向における回転中心線Z側を示している。径方向外側は、任意の基準位置に対して径方向における回転中心線Z側とは反対側を示している。回転中心線Zは、ホイール10等が車体に対して傾いていないとき、車幅方向と平行な関係を形成する。車幅方向内側は、任意の基準位置に対して車幅方向における車体側(図1中における左側)を示している。車幅方向外側は、任意の基準位置に対して車幅方向における車体側とは反対側(図1中における右側)を示している。
【0029】
ホイール10は、一例として、アルミニウムにより形成されている。ホイール10は、複数の機能部分を含めて同一の材料により形成された1つの構造体である。リム11、センターディスク12、および、複数のフィン13が、複数の機能部分の一例に該当する。
【0030】
リム11は、中空形状を有している。タイヤ300が、リム11の外周部分に装着されている。ホイール内部空間14が、リム11の内部に形成されている。センターディスク12は、ホイール内部空間14の車幅方向外側の部分を閉塞している。複数のフィン13は、センターディスク12の車幅方向外側の面に形成されている。
【0031】
ハブ20は、一例として、アルミニウムにより形成されている。ハブ20は、主として、ホイール内部空間14に配置されている。複数のディスク用ボルト210が、ハブ20およびセンターディスク12を互いに固定している。雄ねじ21が、ハブ20の車幅方向内側の端部に形成されている。
【0032】
インホイールモータ40は、ホイール内部空間14に配置されている。インホイールモータ40は、アウターロータ型の3相ブラシレスモータである。インホイールモータ40は、駆動回路(図示略)から供給される電力に基づいて、ホイール10を回転させる。インホイールモータ40は、ブラケット50、インナーステータ60、アウターロータ70、および、レゾルバ80を含む。ブラケット50、インナーステータ60、アウターロータ70、および、レゾルバ80は、同軸の関係を有している。
【0033】
ブラケット50は、一例として、アルミニウムにより形成されている。ブラケット50は、主として、ホイール内部空間14に配置されている。複数のボルト(図示略)が、ブラケット50を車体に固定している。ブラケット50は、インナーステータ60を保持している。ブラケット50は、複数の機能部分を含めて同一の材料により形成された1つの構造体である。中空軸51、フランジ52、および、ホルダ53が、複数の機能部分の一例に該当する。
【0034】
中空軸51は、車幅方向においてリム11の車幅方向中心をまたいで車幅方向内側から車幅方向外側までにわたり存在している。中空軸51は、インナーステータ60、アウターロータ70、および、ディスクブレーキ30よりも径方向内側に配置されている。ハブ20の一部分が、中空軸51の内部に形成された空間である中空軸内部空間54に配置されている。
【0035】
配線孔55が、中空軸51に形成されている。配線孔55は、中空軸51の外周部分から内周部分までを貫通している。中空軸51の外周部分に形成された配線孔55の開口は、中空軸51の内周部分に形成された配線孔55の開口よりも車幅方向外側に存在している。
【0036】
ホルダ53の形状は、円筒形状である。ホルダ53は、リム11の車幅方向中心よりも車幅方向外側に配置されている。ホルダ53は、中空軸51よりも径方向外側に配置されている。ホルダ53は、中空軸51のうちの車幅方向外側の端部の外周を取り囲んでいる。ホルダ内部空間56が、中空軸51の外周部分とホルダ53の内周部分との間に形成されている。
【0037】
フランジ52の形状は、円環形状である。フランジ52は、中空軸51のうちの車幅方向外側の端部に形成されている。フランジ52は、中空軸51の外周部分とホルダ53の内周部分とを互いに連結している。フランジ52は、ホルダ内部空間56の車幅方向外側の部分を閉塞している。
【0038】
内側軸受110は、中空軸内部空間54のうちの中空軸51の内周部分とハブ20の外周部分との間に配置されている。内側軸受110は、ハブ20がブラケット50に対して回転するときにハブ20に作用するラジアル荷重を受ける。内側軸受110の一例は、複列アンギュラ玉軸受である。内側軸受110は、内側内輪111、内側外輪112、および、複数の内側転動体113を含む。
【0039】
内側内輪111およびハブ20のはめあいは、しまりばめである。内側内輪111の車幅方向外側の端面が、ハブ20の段差面に突き当てられている。ワッシャ240が、雄ねじ21の外周に嵌め込まれている。ナット230が、雄ねじ21にねじ込まれている。ナット230は、内側内輪111の車幅方向内側の端面にワッシャ240を押し付けている。内側内輪111の車幅方向の位置が、ハブ20およびナット230により固定されている。
【0040】
内側外輪112および中空軸51のはめあいは、しまりばめである。内側外輪112の車幅方向内側の端面が、中空軸51の段差面に突き当てられている。軸受押さえ250が、複数の押さえ用ボルト260により中空軸51に固定されている。押さえ用ボルト260は、内側外輪112の車幅方向外側の端面に軸受押さえ250を押し付けている。内側外輪112の車幅方向の位置が、中空軸51および軸受押さえ250により固定されている。
【0041】
インナーステータ60は、リム11の車幅方向中心よりも車幅方向外側に配置されている。インナーコア61およびコイル62が、インナーステータ60を構成している。インナーコア61は、積層された複数枚の電磁鋼鈑の集合体である。インナーコア61は、ホルダ53の径方向外側に配置されている。複数のステータ用ボルト220が、インナーコア61およびホルダ53を互いに固定している。
【0042】
コイル62は、インナーコア61の周囲に巻き付けられている。コイル62は、車幅方向外側のコイルエンドである外側コイルエンド63、および、車幅方向内側のコイルエンドである内側コイルエンド64を含む。外側コイルエンド63は、車幅方向においてセンターディスク12の車幅方向内側の面と隙間を介して対向している。外側コイルエンド63は、インナーステータ60のうちの最もセンターディスク12に接近した部分である。
【0043】
ステータ用ハーネス280が、コイル62の巻き始めの端部、および、コイル62の巻き終わりの端部と接続されている。ステータ用ハーネス280は、中空軸51の内周部分の面、配線孔55、中空軸51の外周部分の面、フランジ52の端面、および、ホルダ53の内周部分の面に沿って取り回されている。
【0044】
アウターロータ70は、リム11の車幅方向中心をまたいで車幅方向内側から車幅方向外側までにわたり存在している。アウターヨーク71および永久磁石77が、アウターロータ70を構成している。ホイール10が、アウターロータ70とともに回転する。
【0045】
アウターヨーク71は、一例として、鉄により形成されている。アウターヨーク71は、複数の機能部分を含めて同一の材料により形成された1つの構造体である。アウターホイール72、複数のフィン73、大径シリンダ74、小径シリンダ75、および、フランジ76が、複数の機能部分の一例に該当する。
【0046】
アウターホイール72は、インナーステータ60よりも車幅方向内側に配置されている。アウターホイール72の内周部分は、インナーステータ60よりも径方向内側に存在し、中空軸51の一部分の外周を取り囲んでいる。アウターホイール72の外周部分は、インナーステータ60よりも径方向外側に存在し、リム11の内周部分と空間を介して対向している。
【0047】
内側コイルエンド64が、車幅方向においてアウターホイール72の車幅方向外側の面と隙間を介して対向している。内側コイルエンド64は、インナーステータ60のうちの最もアウターホイール72に接近した部分である。
【0048】
各フィン73は、アウターホイール72のうちのブレーキディスク31側の面に形成されている。各フィン73は、一例として、アウターホイール72の径方向中心に対して放射状に配置されている。各フィン73は、アウターホイール72のうちの内側コイルエンド64の径方向内側の部分と対応する部分からアウターホイール72の外周部分までにわたり存在している。
【0049】
大径シリンダ74は、アウターホイール72の外周部分から車幅方向外側に向けて突出している。大径シリンダ74は、リム11の車幅方向中心よりも車幅方向外側に配置されている。大径シリンダ74は、インナーステータ60の外周を取り囲んでいる。大径シリンダ74の外周部分が、リム11の内周部分に圧入されている。永久磁石77が、大径シリンダ74の内周部分に圧入または接着されている。
【0050】
小径シリンダ75は、アウターホイール72の内周部分から車幅方向内側に向けて突出している。小径シリンダ75は、車幅方向においてアウターホイール72の内周部分から中空軸51の車幅方向内側の端部までにわたり存在している。小径シリンダ75は、中空軸51の一部分の外周を取り囲んでいる。フランジ76が、小径シリンダ75の内周部分に形成されている。スリーブ270が、小径シリンダ75の車幅方向内側の端部に圧入されている。
【0051】
小径シリンダ75およびアウターホイール72、ならびに、中空軸51は、周囲空間90を形成している。周囲空間90は、小径シリンダ75の内周部分およびアウターホイール72の内周部分と、中空軸51の外周部分との間に形成されている。オイルシール130が、周囲空間90の車幅方向内側の開口部分に配置されている。オイルシール130の形状は、円環形状である。オイルシール130は、中空軸51の外周部分、および、スリーブ270の内周部分に圧入されている。周囲空間90の車幅方向外側の開口部分は、ホルダ内部空間56と連続している。
【0052】
レゾルバ80は、小径シリンダ75と中空軸51との間、すなわち、周囲空間90に配置されている。レゾルバ80の型式の一例は、可変リアクタンス型である。ステータ81、コイル82、および、ロータ83が、レゾルバ80を構成している。ステータ81およびロータ83の形状は、円環形状である。ロータ83は、アウターホイール72の内周部分に固定されている。ステータ81は、中空軸51のうちのアウターホイール72と対向する部分に固定されている。ステータ81およびロータ83は、径方向において微小な隙間を介して対向している。
【0053】
コイル82は、ステータ81の周囲に巻き付けられている。レゾルバ用ハーネス290が、コイル82の巻き始めの端部、および、コイル82の巻き終わりの端部と接続されている。レゾルバ用ハーネス290は、中空軸51の内側の面、配線孔55、および、中空軸51の外側の面に沿って取り回されている。
【0054】
外側軸受120は、小径シリンダ75と中空軸51との間、すなわち、周囲空間90に配置されている。外側軸受120は、オイルシール130よりも車幅方向外側、かつ、レゾルバ80よりも車幅方向内側に配置されている。外側軸受120は、アウターロータ70がブラケット50に対して回転するときにアウターロータ70に作用するラジアル荷重を受ける。外側軸受120の一例は、単列深溝玉軸受である。外側軸受120は、外側内輪121、外側外輪122、および、複数の外側転動体123を含む。外側内輪121、外側外輪122、および、複数の外側転動体123は、軸受鋼により形成されている。
【0055】
外側内輪121および中空軸51のはめあいは、すき間ばめである。外側内輪121の車幅方向内側の端面が、空間を介してオイルシール130と対向している。外側内輪121の車幅方向外側の端面が、空間を介してレゾルバ80のステータ81または中空軸51の段差面と対向している。
【0056】
インホイールモータ40は、中空軸51に対する車幅方向内側および車幅方向外側への外側内輪121の移動を規制する部位を含んでいない。すなわち、外側内輪121とオイルシール130との間、および、外側内輪121とステータ81との間に、車幅方向における中空軸51および外側内輪121の相対的な移動を規制する物体が存在していない。このため、小径シリンダ75および中空軸51がインホイールモータ40の軸方向に熱膨張し、それぞれの熱膨張量が互いに異なるとき、中空軸51および外側内輪121が車幅方向に相対的に移動しようとする。
【0057】
外側外輪122および小径シリンダ75のはめあいは、しまりばめである。外側外輪122の車幅方向外側の端面が、フランジ76に突き当てられている。スリーブ270が、外側外輪122の車幅方向内側の端面に突き当てられている。フランジ76およびスリーブ270が、小径シリンダ75に対する車幅方向への外側外輪122の移動を規制している。
【0058】
ディスクブレーキ30は、ホイール内部空間14のうちのアウターホイール72よりも車幅方向内側の部分に配置されている。ディスクブレーキ30は、アウターロータ70およびホイール10を制動する。ブレーキディスク31、ブレーキキャリパ34、および、一対のブレーキパッド35が、ディスクブレーキ30を構成している。
【0059】
ブレーキディスク31は、一例として、鉄、ステンレス、または、アルミニウムにより形成されている。ブレーキディスク31は、複数の機能部分を含めて同一の材料により形成された1つの構造体である。ブレーキロータ32およびハット33が、複数の機能部分の一例に該当する。複数のボルト(図示略)が、ハット33およびアウターホイール72を互いに固定している。
【0060】
ブレーキロータ32の形状は、円板形状である。ブレーキロータ32は、ハット33の車幅方向内側の端部から径方向外側に向けて突出している。ブレーキロータ32は、小径シリンダ75よりも径方向外側に配置され、かつ、ブレーキキャリパ34に形成された空間に挿入されている。
【0061】
ハット33の形状は、一方の開口部に天井が形成された円筒形状である。ハット33は、径方向において小径シリンダ75の外周部分と空間を介して対向している。ハット33の天井が、複数のボルト(図示略)によりアウターホイール72に固定されている。
【0062】
油圧式のブレーキキャリパ34は、鋳鉄またはアルミニウム合金により形成されている。ブレーキキャリパ34は、車体に固定されている。各ブレーキパッド35が、ブレーキキャリパ34に取り付けられ、隙間を介してブレーキロータ32と対向している。ブレーキキャリパ34は、内蔵しているピストン(図示略)を油圧により駆動することにより、各ブレーキパッド35をブレーキロータ32に押し付ける。
【0063】
車両用制動兼駆動装置1によれば、インナーステータ60のコイル62に電流が供給されることにより、アウターロータ70が回転する。ホイール10およびブレーキディスク31のそれぞれがアウターロータ70と結合しているため、アウターロータ70が回転することにより、ホイール10およびブレーキディスク31がアウターロータ70と一体的に回転する。一方、ブレーキキャリパ34のピストン(図示略)が駆動されることにより、各ブレーキパッド35がブレーキロータ32に摩擦力を発生させる。このため、ブレーキディスク31、ブレーキディスク31と結合しているアウターロータ70、および、アウターロータ70と結合しているホイール10が制動される。
【0064】
本発明の車両用制動兼駆動装置1の作用について説明する。
車両用制動兼駆動装置1を搭載した車両が走行しているとき、タイヤ300が路面から反力を受ける。この反力が、ホイール10の径方向および軸方向に作用する成分を含む場合、タイヤ300を車体に対して傾斜させる力がタイヤ300に作用する。この力は、ホイール10、ホイール10と結合したアウターヨーク71、および、アウターヨーク71と結合したブレーキディスク31に作用する。このため、アウターヨーク71およびブレーキディスク31をブラケット50に対して傾斜させる力が、アウターヨーク71およびブレーキディスク31に作用する。なお、このような現象は、路面に大きな凹凸が存在している場合、車両が曲線の道路を走行している場合、または、タイヤが路面上の物体に乗り上げた場合に現れやすい。
【0065】
一方、車両用制動兼駆動装置1によれば、外側軸受120が、アウターヨーク71の小径シリンダ75を支持している。このため、タイヤ300に作用する反力が、ホイール10およびアウターヨーク71を介して外側軸受120により受けられる。このため、アウターヨーク71およびブレーキディスク31をブラケット50に対して傾斜させる力が作用した場合、この力が外側軸受120により受けられる。このため、アウターヨーク71およびブレーキディスク31がブラケット50に対して傾斜することが抑制される。このため、ブレーキディスク31の振れが生じにくくなる。このため、制動力が安定し、異音が発生するおそれが低減される。
【0066】
車両用制動兼駆動装置1によれば、内側軸受110が、ハブ20を支持している。このため、タイヤ300に作用する反力が、ホイール10およびハブ20を介して内側軸受110により受けられる。このため、ハブ20をブラケット50に対して傾斜させる力が作用した場合、この力が内側軸受110により受けられる。このため、ハブ20がブラケット50に対して傾斜することが抑制される。このため、ハブ20と結合しているホイール10、ホイール10と結合しているアウターヨーク71、および、アウターヨーク71と結合しているブレーキディスク31が、ブラケット50に対して傾斜することが抑制される。このため、制動力を安定させて異音の発生を低減する効果がより強く得られる。
【0067】
車両用制動兼駆動装置1は、以下の効果を奏する。
(1)車両用制動兼駆動装置1は、外側軸受120を有している。このため、ブレーキディスク31の振れが生じにくい。このため、ディスクブレーキ30の制動力が不安定になることが抑制される。このため、制動力が安定しないことに起因して異音が発生することが抑制される。なお、特許文献1の車両用制動兼駆動装置によれば、アウターロータ、ブレーキディスク、および、ハブの支持構造が、車両用制動兼駆動装置1におけるアウターヨーク71、ブレーキディスク31、および、ハブ20の支持構造と相違している。このため、タイヤを車体に対して傾斜させる力がタイヤに作用した場合、アウターロータおよびブレーキディスクが車体に対して傾斜しやすい。このため、ブレーキディスクに振れが生じることに起因して、制動力が安定しなくなり、異音が発生するおそれが高い。
【0068】
(2)車両用制動兼駆動装置1は、内側軸受110を有している。このため、ブレーキディスク31の振れが生じにくい。このため、ディスクブレーキ30の制動力が不安定になることが抑制される。このため、制動力が安定しないことに起因して異音が発生することが、一層抑制される。
【0069】
(3)小径シリンダ75は、一例として、次の配置形態を取り得る。すなわち、小径シリンダ75がインナーステータ60よりも径方向外側に配置される、または、小径シリンダ75が径方向においてインナーステータ60と同じ位置に配置される。一方、実施形態の車両用制動兼駆動装置1によれば、小径シリンダ75が、インナーステータ60よりも径方向内側に配置されている。このため、外側軸受120が、インナーステータ60よりも径方向内側に配置されている。このため、上記の一例よりも外側軸受120の径が小さくなる。このため、外側軸受120の回転抵抗が小さくなる。
【0070】
(4)外側外輪122および外側内輪121は、一例として次のはめあいの形態を取り得る。すなわち、外側外輪122および小径シリンダ75のはめあい、および、外側内輪121および中空軸51のはめあいの両方が、しまりばめに設定される。この一例によれば、次の課題が生じるおそれがある。
【0071】
アウターヨーク71がインホイールモータ40の軸方向に熱膨張したとき、外側外輪122がアウターヨーク71に引きつられて変位する。また、ブラケット50がインホイールモータ40の軸方向に熱膨張したとき、外側内輪121がブラケット50に引きつられて変位する。このため、アウターヨーク71の材料およびブラケット50の材料が互いに異なる場合、アウターヨーク71の熱膨張にともない外側外輪122が変位する量、および、ブラケット50の熱膨張にともない外側内輪121が変位する量が互いに異なる。このため、インホイールモータ40の軸方向における外側外輪122および外側内輪121の相対的な位置が、アウターヨーク71およびブラケット50が熱膨張することにともない変化する。このため、外側外輪122および外側内輪121の相対的な回転に対する抵抗が大きくなるおそれがある。
【0072】
実施形態の車両用制動兼駆動装置1によれば、外側内輪121およびブラケット50のはめあいがすき間ばめのため、ブラケット50がインホイールモータ40の軸方向に熱膨張しても、外側内輪121がブラケット50に引きつられにくい。このため、アウターヨーク71およびブラケット50が熱膨張しても、インホイールモータ40の軸方向における外側外輪122および外側内輪121の相対的な位置が変化しにくい。このため、外側外輪122および外側内輪121の相対的な回転に対する抵抗が大きくなりにくい。
【0073】
(5)オイルシール130が、周囲空間90の車幅方向内側の開口部分を閉塞している。このため、周囲空間90および外側軸受120に異物が入り込みにくい。このため、外側軸受120の回転に対する抵抗が大きくなりにくい。
【0074】
(6)オイルシール130は、一例として、次の配置形態を取り得る。すなわち、オイルシール130がインナーステータ60よりも径方向外側に配置される、または、オイルシール130が径方向においてインナーステータ60と同じ位置に配置される。一方、実施形態の車両用制動兼駆動装置1によれば、オイルシール130がインナーステータ60よりも径方向内側に配置されている。このため、上記の一例よりもオイルシール130の径が小さくなる。このため、オイルシール130の摺動抵抗が小さくなる。
【0075】
(7)オイルシール130が、小径シリンダ75の内周部分と中空軸51の外周部分との間に配置されている。小径シリンダ75が、外側軸受120に支持さていることにより、中空軸51に対する偏心、および、中空軸51に対する傾斜が生じにくい。このため、オイルシール130が変形しにくい。このため、オイルシール130の摺動抵抗が大きくなりにくい。
【0076】
(8)レゾルバ80が、小径シリンダ75の内周部分と中空軸51の外周部分との間に配置されている。小径シリンダ75が、外側軸受120に支持さていることにより中空軸51に対して傾斜しにくい。このため、ロータ83がステータ81に対して傾斜しにくい。このため、ステータ81およびロータ83の間の距離が変化しにくい。このため、レゾルバ80の測定精度が低下しにくい。
【0077】
(9)複数のフィン73が、アウターホイール72に形成されている。このため、ブレーキディスク31の熱が複数のフィン73により放出される。このため、ブレーキディスク31の熱が、アウターヨーク71を介して永久磁石77に流れることが抑制される。このため、永久磁石77が減磁しにくい。
【0078】
(10)アウターホイール72が、車幅方向において内側コイルエンド64と隣接している。複数のフィン73が、アウターホイール72に形成されている。このため、内側コイルエンド64の熱が、アウターホイール72に流れやすくなる。このため、内側コイルエンド64が高温化しにくい。
【0079】
(11)センターディスク12が、車幅方向において外側コイルエンド63と隣接している。複数のフィン13が、センターディスク12に形成されている。このため、外側コイルエンド63の熱が、センターディスク12に流れやすくなる。このため、外側コイルエンド63が高温化しにくい。
【0080】
(12)ブレーキロータ32は、一例として、次の配置形態を取り得る。すなわち、ブレーキロータ32が、アウターヨーク71のうちの外側軸受120により支持された部分である小径シリンダ75よりも径方向内側に配置される。一方、実施形態の車両用制動兼駆動装置1によれば、ブレーキロータ32が小径シリンダ75の径方向外側に配置されている。このため、上記の一例と比較して、ブレーキロータ32の径が大きい。このため、制動有効半径が大きくなり、大きな制動力が得られる。
【0081】
(13)ブレーキディスク31は、一例として、次の配置形態を取り得る。すなわち、ブレーキディスク31が、ホイール10の外部に配置される。一方、実施形態の車両用制動兼駆動装置1によれば、ブレーキディスク31が、ホイール内部空間14に配置されている。このため、上記の一例と比較して、車両用制動兼駆動装置1の車幅方向の寸法が小さくなる。このため、車両への搭載性が高くなる。
【0082】
なお、本車両用制動兼駆動装置は、発明の目的が達成される範囲において、上記実施形態とは別の種々の具体的な形態を取り得る。以下に示される上記実施形態の変形例は、本車両用制動兼駆動装置が取り得る別の具体的な形態の一例である。
【0083】
・外側内輪121および中空軸51が、しまりばめの関係を有する。外側外輪122および小径シリンダ75が、すき間ばめの関係を有する。フランジ76が小径シリンダ75から省略される。スリーブ270が省略される。
【0084】
・車両用制動兼駆動装置1が、内側軸受110に代えて別の軸受を有する。別の軸受の一例は、複列アンギュラ玉軸受以外の玉軸受、または、ころ軸受である。
・車両用制動兼駆動装置1が、外側軸受120に代えて別の軸受を有する。別の軸受の一例は、単列深溝玉軸受以外の玉軸受、または、ころ軸受である。
【0085】
・車両用制動兼駆動装置1が、レゾルバ80に代えて、ブラケット50に対するハブ20の回転角を検知する第1変形レゾルバを有する。第1変形レゾルバのロータは、ハブ20の外周部分に固定される。第1変形レゾルバのステータは、ブラケット50のうちのロータと対向する部分に固定される。
【0086】
・車両用制動兼駆動装置1が、レゾルバ80に代えて、ブラケット50に対するホイール10の回転角を検知する第2変形レゾルバを有する。第2変形レゾルバのロータは、センターディスク12の対向部分に固定される。この対向部分は、径方向においてブラケット50の一部分の外周と対向する。第2変形レゾルバのステータは、ブラケット50のうちのロータと対向する部分に固定される。
【0087】
・小径シリンダ75が、アウターヨーク71から省略される。小径シリンダ75に準じた構造を有する機能部分(以下、「第1ディスクシリンダ」)が、ブレーキディスク31に形成される。第1ディスクシリンダが、中空軸51の一部分の外周を取り囲む。外側軸受120が、第1ディスクシリンダの内周部分と中空軸51の外周部分との間に配置される。より好ましい形態によれば、オイルシール130およびレゾルバ80の少なくとも一方が、第1ディスクシリンダの内周部分と中空軸51の外周部分との間に配置される。
【0088】
・小径シリンダ75の軸方向の寸法が短縮される。小径シリンダ75に準じた構造を有する機能部分(以下、「第2ディスクシリンダ」)が、ブレーキディスク31に形成される。第2ディスクシリンダおよび小径シリンダ75が、車幅方向に並べられ、それぞれ中空軸51の一部分の外周を取り囲む。第2ディスクシリンダは、一例として、その外周部分から放射状に突出した複数のリムにより、ハット33と連結される。外側軸受120が、第2ディスクシリンダの内周部分および小径シリンダ75の内周部分と中空軸51の外周部分との間に配置される。より好ましい形態によれば、オイルシール130およびレゾルバ80の少なくとも一方が、第2ディスクシリンダの内周部分および小径シリンダ75の内周部分と中空軸51の外周部分との間に配置される。
【0089】
・インナーコア61およびホルダ53を互いに結合する物体が、インナーコア61およびホルダ53の間に配置される。すなわち、インナーコア61が、ホルダ53と間接的に結合される。
【0090】
・リム11およびアウターヨーク71を互いに結合する物体が、リム11およびアウターヨーク71の間に配置される。すなわち、アウターヨーク71が、リム11と間接的に結合される。
【0091】
・アウターヨーク71およびブレーキディスク31が、ボルトとは別の方法により互いに固定される。別の固定方法の一例は、圧入による固定、または、キーおよびキー溝の嵌め合わせによる固定である。
【0092】
・ホイール10およびアウターヨーク71が、圧入とは別の方法により互いに固定される。別の固定方法の一例は、ボルトによる固定、または、キーおよびキー溝の嵌め合わせによる固定である。
【0093】
・ブラケット50が、車体の一部分として構成される。すなわち、ブラケット50が、車体の材料と同一の材料により車体と一体的に形成される。
【符号の説明】
【0094】
1…車両用制動兼駆動装置
10…ホイール、11…リム、12…センターディスク、13…フィン、14…ホイール内部空間
20…ハブ、21…雄ねじ
30…ディスクブレーキ、31…ブレーキディスク、32…ブレーキロータ、33…ハット、34…ブレーキキャリパ、35…ブレーキパッド
40…インホイールモータ
50…ブラケット、51…中空軸、52…フランジ、53…ホルダ、54…中空軸内部空間、55…配線孔、56…ホルダ内部空間
60…インナーステータ、61…インナーコア、62…コイル、63…外側コイルエンド、64…内側コイルエンド
70…アウターロータ、71…アウターヨーク、72…アウターホイール、73…フィン、74…大径シリンダ、75…小径シリンダ、76…フランジ、77…永久磁石
80…レゾルバ、81…ステータ、82…コイル、83…ロータ
90…周囲空間
110…内側軸受、111…内側内輪、112…内側外輪、113…内側転動体
120…外側軸受、121…外側内輪、122…外側外輪、123…外側転動体
130…オイルシール
210…ディスク用ボルト、220…ステータ用ボルト、230…ナット、240…ワッシャ、250…軸受押さえ、260…押さえ用ボルト、270…スリーブ、280…ステータ用ハーネス、290…レゾルバ用ハーネス
300…タイヤ
Z…回転中心線
図1