(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る照明装置の一実施形態を、
図1から
図6を参照しながら説明する。すべての図面において、実施形態が異なる場合であっても、同一、または相当する部材には同一の符号を付し、共通する説明は省略する。また、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の厚さや寸法の比率は適宜異ならせてある。
【0014】
図1に示すように、本実施形態の照明装置10は、自然光ではない白色光を放射する光源1と、光源1の放射光路R上に支持体2、散乱層3、カラーシフト層4をこの順で備えている。すなわち、本照明装置10は、光源1と、光源1の放射面1a上に配置された支持体2と、支持体2の光源1とは反対側に配置された散乱層3と、散乱層3の支持体2とは反対側に配置されたカラーシフト層4とを備えている。
なお、支持体2、散乱層3、およびカラーシフト層4は、光源1の放射光路R上に備えられていればよく、光源1に支持体2、散乱層3、およびカラーシフト層4を直接貼り合せてあってもよい。光源1と支持体2との間、支持体2と散乱層3との間、および散乱層3とカラーシフト層4との間の少なくとも1か所に、中間層を設けていてもよい。
【0015】
光源1としては、自然光を除く白色光、すなわち人工光である白色光を放射する光源であれば、いずれの光源も用いることができる。光源1としては、例えば、白熱灯やハロゲンランプ、蛍光灯(放電灯)、発光ダイオード(LED)、無機EL(Electro Luminescence)、有機ELなどから適宜選択して用いることができる。
光源1は、放射面1aから白色光を放射する。
【0016】
支持体2としては、光源1から放射される光、すなわち白色光を透過できるものであれば、いずれの支持体も用いることができ、例えば、透明なソーダ石灰ガラス、鉛ガラス、ホウケイ酸ガラス、石英ガラスなどの無機酸化ガラスや、無機フッ素化合物ガラスなどの無機ガラスやあるいは、透明なポリエチレンテレフタレート樹脂(PET樹脂)等のポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−(ポリ)スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリールフタレート系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、リエチレンナフタレート系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、エポキシン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂、ポリ乳酸系樹脂等の高分子フィルム等、あるいは、不透明のシリコン、ゲルマニウム、炭化シリコン、ガリウム砒素、窒化ガリウム等の半導体材料、あるいは、顔料等を含んだ透明基板材料や表面に絶縁処理を施した金属材料等から適宜選択して用いることができる。
【0017】
散乱層3としては、光源1から放射される光を散乱できるものであれば、いずれの構成でもよい。散乱層3の構成としては、例えば、透明粒子に透明樹脂や感光樹脂などを使用するものや、透明樹脂や感光樹脂を用いてレンズを形成するものなどがある。
【0018】
透明粒子については、特に限定されるものでなく、例えば、アクリル、ポリスチレン、ポリカーボネート等のポリマー系粒子やシリカ、ガラス、酸化チタン、硫化バリウム、炭酸カルシウム、タルク、マイカ等の無機系粒子や粉末等を用いることができる。
【0019】
透明樹脂については、紫外線、電子線、熱線等の活性エネルギーによる重合反応によって硬化体が形成される活性エネルギー線硬化樹脂であって、例えば、その組成が、活性エネルギー線重合反応により硬化体を形成するベース樹脂材料からなる第1の成分(以下、成分〔A〕と称する場合がある)と、重合開始剤からなる第2の成分(以下、成分〔B〕と称する場合がある)と、を含有することが好ましい。
【0020】
また、この活性エネルギー線硬化樹脂の他の成分としては、例えば、可塑剤、分散剤、加水分解防止剤、各種レベリング剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、粘性改質剤、潤滑剤、光安定化剤等が適宜配合されてもよい。
【0021】
上述の成分〔A〕は、特に限定されるものではなく、活性エネルギー線重合反応により硬化体を構成し得る樹脂のモノマー(単量体)、オリゴマーであれば、公知の何れの合成樹脂の組成でも使用可能である。
【0022】
例えばポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、アクリロニトリル−(ポリ)スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)等のポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリールフタレート系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、リエチレンナフタレート系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂等が挙げられ、これらの樹脂のモノマー、オリゴマーを1種又は2種以上混合して、上述の成分〔A〕に使用することができる。
【0023】
上述のポリウレタン系樹脂の原料であるポリオールとしては、例えば水酸基含有不飽和単量体を含む単量体成分を重合して得られるポリオールや、水酸基過剰の条件で得られるポリエステルポリオールなどが挙げられ、これらを単体で又は2種以上混合して使用することができる。
【0024】
水酸基含有不飽和単量体としては、(a)例えばアクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アリルアルコール、ホモアリルアルコール、ケイヒアルコール、クロトニルアルコール等の水酸基含有不飽和単量体、(b)例えばエチレングリコール、エチレンオキサイド、プロピレングリコール、プロピレンオキサイド、ブチレングリコール、ブチレンオキサイド、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、フェニルグリシジルエーテル、グリシジルデカノエート、プラクセルFM−1(ダイセル化学工業株式会社製)等の2価アルコール又はエポキシ化合物と、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸との反応で得られる水酸基含有不飽和単量体などが挙げられる。これらの水酸基含有不飽和単量体から選択される1種又は2種以上を重合してポリオールを製造することができる。
【0025】
また上述のポリオールは、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸エチルヘキシル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸エチルヘキシル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸シクロヘキシル、スチレン、ビニルトルエン、1−メチルスチレン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、酢酸アリル、アジピン酸ジアリル、イタコン酸ジアリル、マレイン酸ジエチル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、エチレン、プロピレン、イソプレン等から選択される1種又は2種以上のエチレン性不飽和単量体と、上述の(a)及び(b)から選択される水酸基含有不飽和単量体とを重合することで製造することもできる。
【0026】
水酸基含有不飽和単量体を含む単量体成分を重合して得られるポリオールの数平均分子量は、1000以上500000以下であり、好ましくは5000以上100000以下である。また、その水酸基価は5以上300以下、好ましくは10以上200以下、さらに好ましくは20以上150以下である。
【0027】
水酸基過剰の条件で得られるポリエステルポリオールは、(c)例えばエチレングリコール0、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、グリセリン、ペンタエリスリトール、シクロヘキサンジオール、水添ビスフェノルA、ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ハイドロキノンビス(ヒドロキシエチルエーテル)、トリス(ヒドロキシエチル)イソシヌレート、キシリレングリコール等の多価アルコールと、(d)例えばマレイン酸、フマル酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、トリメット酸、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸等の多塩基酸とを、プロパンジオール、ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、トリメチロールプロパン等の多価アルコール中の水酸基数が前記多塩基酸のカルボキシル基数よりも多い条件で反応させて製造することができる。
【0028】
上述の水酸基過剰の条件で得られるポリエステルポリオールの数平均分子量は、500以上300000以下であり、好ましくは2000以上100000以下である。また、その水酸基価は5以上300以下、好ましくは10以上200以下、さらに好ましくは20以上150以下である。
【0029】
前述の成分〔A〕として用いられるポリオールとしては、上述のポリエステルポリオール、及び、上述の水酸基含有不飽和単量体を含む単量体成分を重合して得られ、かつ、(メタ)アクリル単位等を有するアクリルポリオールが好ましい。かかるポリエステルポリオール又はアクリルポリオールをポリマー材料とすれば耐候性が高く、透過性樹脂の黄変等を抑制することができる。なお、このポリエステルポリオールとアクリルポリオールのいずれか一方を使用してもよく、両方を使用してもよい。
【0030】
なお、上述のポリエステルポリオール及びアクリルポリオール中の水酸基の個数は、1分子当たり2個以上であれば特に限定されないが、固形分中の水酸基価が10以下であると架橋点数が減少し、耐溶剤性、耐水性、耐熱性、表面硬度等の被膜物性が低下する傾向がある。
【0031】
上述の成分〔B〕は、主に、紫外線、電子線等の活性エネルギー線照射で進行する重合反応の開始効率を向上させる等の目的で用いるものである。
成分〔B〕としては、成分〔A〕の活性エネルギー線重合反応の開始効率を向上できる重合開始剤であれば、特に限定されるものはなく、公知の何れの重合開始剤成分でも使用可能である。このような重合開始剤としては、光によりラジカルを発生する性質を有する化合物である光ラジカル重合開始剤が一般的である。また成分〔B〕の重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤と光増感剤との併用系であってもよい。
【0032】
光ラジカル重合開始剤は、具体的には、例えば、ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、メチルオルトベンゾイルベンゾエート、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、クロロチオキサントン、2−エチルアントラキノン、t−ブチルアントラキノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、メチルベンゾイルホルメート、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノプロパン−1−オン、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、2−ヒドロキシ−1−〔4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル〕−2−メチル−プロパン−1−オン等が挙げられる。
【0033】
これら光ラジカル重合開始剤の中で、硬化速度が速く架橋密度を十分に上昇できる点から、ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、及び、2−ヒドロキシ−1−〔4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル〕−2−メチル−プロパン−1−オンが好ましく、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2−ヒドロキシ−1−〔4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル〕−2−メチル−プロパン−1−オンがさらに好ましい。
【0034】
また、成分〔A〕にラジカル重合性基と共にエポキシ基等のカチオン重合性基を有する化合物が含まれる場合は、成分〔B〕に上記した光ラジカル重合開始剤と共に光カチオン重合開始剤が含まれていてもよい。光カチオン重合開始剤は特に限定されず、本発明の効果を損なわない限り公知の何れのものも可能である。
【0035】
光増感剤は、具体的には例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸アミル、4−ジメチルアミノアセトフェノン等の公知のものが挙げられる。光増感剤は1種を単独で用いてもよく、又、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
感光樹脂については、透明樹脂同様、紫外線、電子線、熱線等の活性エネルギーによる重合反応によって硬化体が形成する活性エネルギー線硬化樹脂であり、例えば、その組成が、活性エネルギー線重合反応により硬化体を形成するベース樹脂材料からなる成分〔A〕と、重合開始剤からなる第2の成分〔B〕と、を含有することが好ましい。
【0037】
また、感光樹脂は、光で重合を開始するものならどの材料でも使用することができ、例えば、透明樹脂で記載した材料を使用することができる。
【0038】
レンズの形状については、散乱性を持ったレンズであれば特に限定されるものではなく、例えば、プリズム形状や球面、非球面、または複合レンズを用いることができる。
【0039】
また、散乱層3は光源1から放射される光を散乱するだけでなく、散乱層3からカラーシフト層4へ入射した光の反射光を再びカラーシフト層4へ再反射する再帰反射効果を持つ。
【0040】
例えば、透明球形粒子を用いた散乱層3を設けると、透明球形粒子の散乱分布は全方位に等方的に散乱するため、入射方向だけでなく、反対方向にも散乱が発生する。よって、散乱層3からカラーシフト層4へ入射した光の散乱層3への反射光も、再びカラーシフト層4へ再反射することができる。
【0041】
上述した効果は、散乱層3の散乱が強い方が望ましい。散乱を強くするには例えば、透明球形粒子を用いた散乱層を設けた場合、透明球形粒子と透明樹脂の屈折率比を大きくしたり、透明球形粒子の粒径を小さくしたり、透明球形粒子を高濃度にしたり、散乱層3を厚膜にするなど様々な手法がある。
【0042】
カラーシフト層4には、
図2に示すように、透明樹脂5および光干渉顔料6が含まれている。透明樹脂5は特に限定されるものでなく、散乱層3で用いられる透明樹脂であれば全て使用することができる。
【0043】
光干渉顔料6を構成する各粒子(単一粒子)6aは、雲母やパール顔料等で板状または針状に形成されている。粒子6aのうち針状に形成されているものを粒子6bとして示し、板状に形成されているものを粒子6cとして示す。すなわち、光干渉顔料6は、針状に形成された複数の粒子6bを有している場合と、板状に形成された複数の粒子6cを有している場合とがある。
それぞれの粒子6aの表面は、粒子6aの屈折率に比べて大きい(高い)屈折率を有する被膜7で被覆されている。この被膜7には、酸化チタンや酸化鉄等の金属酸化物を用いることができる。
【0044】
光干渉顔料6の粒子6aに向かう光L1は、一部の光L2が被膜7の表面で反射され、一部の光L3が被膜7を透過して粒子6aの表面で反射される。反射光である光L2および光L3が一緒になるときに光の干渉が発生する。つまり、光L2および光L3の位相が合致すると強めあい、反対に光L2および光L3の位相が半波長分ズレると打ち消しあう。この光の干渉により波長を選択的に反射することができ、光L2および光L3を合成させた光L4に色彩の視覚効果を生じさせることができる。
なお、光L5は、粒子6aおよび被膜7を透過した光である。
【0045】
また、上述の光の干渉は、被膜7の膜厚によって選択的に反射光である光L4を制御することができる。光L4のカラーシフトを強調したり婉曲したりすることはもちろんのこと、特定の色を強調することも可能である。
【0046】
カラーシフト層4は散乱層3の前面、すなわち散乱層3の支持体2とは反対側の面の少なくとも一部設けられていればよく、もちろん全面に設けてもよい。さらには、光干渉顔料において、粒子6aにより被膜7の層厚を変化させてもよい。
このように構成することで、照明装置10をバリエーション豊かなものとすることができ、さらに、カラーシフト層4を所定の形状で設けることで、照明装置10で画像を形成することも可能となる。
【0047】
光干渉顔料6の各粒子6aが配向せず(粒子6aの向きが揃わず)無秩序に配置されていれば、光の散乱が生じるため、上記光の干渉の制御を行うことができない。よって光L4が一定方向に規則的に反射するためには、針状に形成されている粒子6bの角度θ1、板状に形成されている粒子6cの角度θ2を所定の範囲内に設定することで、入射光を一定方向に規則的に反射することができ、反射角を制御することが可能となる。ここで、角度θ1は、粒子6bの軸線C方向とカラーシフト層4の厚さ方向Xとが白色光が放射される側(散乱層3に対するカラーシフト層4側)になす角度である。角度θ2は、粒子6cの厚さ方向Dと厚さ方向Xとが白色光が放射される側とは反対側になす角度θ2である。
光L4が一定方向に規則的に反射するという目的を達成する粒子6bの角度θ1、および粒子6cの角度θ2の範囲を検討するために、以下に説明する実験を行った。
【0048】
支持体2を、PET樹脂で形成した。このPETの表面に以下の透明球形粒子、紫外線硬化型透明樹脂、光干渉顔料を用いて散乱層3、カラーシフト層4を形成した。具体的には透明球形粒子と紫外線硬化型透明樹脂を混合し、PET表面にバーコーターで塗布した後、紫外線照射することで散乱層3を形成した。その後、紫外線硬化型透明樹脂と光干渉顔料6を混合し、散乱層3の上層にバーコーターで塗布し、同様に紫外線照射することでカラーシフト層4を形成した。
【0049】
実験には、下記に示す材料を使用した。
[透明球形粒子]
オプトビーズ 2000M (日産化学社製)
[紫外線硬化型透明樹脂]
アデカオプトマー KRシリーズ (ADEKA社製)
[光干渉顔料]
Colorstream T10−01 (Merck社製)
【0050】
今回用いた光干渉顔料6の各粒子6cは、板状に形成されている。粒子6cの角度θ2を0°以上15°以下に制御して、サンプル1を作製した。なお、このサンプル1は光源1を備えていない。粒子6cの配向はバーコーターで塗布する膜厚と単一粒子の長軸幅の関係より制御している。粒子6cの配向は、散乱層3とカラーシフト層4を形成したPETの断面を電子操作顕微鏡で観察し確認している。
同様に、粒子6cの角度θ2を0°以上20°以下に制御したサンプル2、0°以上25°以下に制御したサンプル3、0°以上30°以下に制御したサンプル4、0°以上35°以下に制御したサンプル5、そして0°以上40°以下に制御したサンプル6を作製した。
【0051】
作製したサンプル1から6の散乱層3、カラーシフト層4は全て同様の膜厚に設定した。光干渉顔料6の粒子6cの配向制御により、カラーシフト層4は一層ではなく、多層膜となっている。よって、サンプル1から6の照明装置の全体としての厚さは同様であるが、カラーシフト層の層数は互いに等しくはない。
作製したサンプル1から6を、光源1である面発光LEDの上部に取付けることで、実施例1から4、比較例1および2の照明装置を得た。
【0052】
今回使用した光干渉顔料6は、正面で可視光内の長波長を反射、斜面で可視光内の短波長を反射する材料となっている。よって、消灯時には、観察者Pがカラーシフト層4を正面から観察したときに赤紫色に見え、カラーシフト層4を斜めから観察したときに緑色に見えることになる。ここで言う正面から観察するとは、照明装置をカラーシフト層4側から厚さ方向Xに平行に見て観察することを意味し、斜めから観察するとは、照明装置をカラーシフト層4側から厚さ方向Xに交差するように見て観察することを意味する。
また、点灯時には、光源1から放射された光が散乱層3を通過するため、カラーシフト層4から射出される光は、光源1から放射され光と同様の光(白色光)が放射される。
【0053】
このように作製したサンプル1から6の照明装置を消灯時および点灯時に、正面、斜めから観察して発光現象を評価した。
評価は、正面、斜めから観察したときに上記記載の効果がある場合を「◎」、効果が若干ある場合を「○」、効果が無い場合を「×」で表した。上記記載の効果とは、消灯時には視認角度に応じて色彩を変化することで、点灯時には白色光を放射することである。
実験結果を表1に示す。
【0055】
表1に示すように、消灯時、点灯時ともに効果がみられたのはサンプル1から4(実施例1から4)である。これらサンプル1から6を斜めから観察したときに効果が「◎」または「○」とされているものは、厚さ方向Xに平行な軸線周りのいずれの向きから観察してもその効果が発揮される。
サンプル5および6(比較例1および2)で消灯時に効果が無い、すなわち視認角度に応じて色彩が変化しない。この理由は、カラーシフト層4にある光干渉顔料6の粒子6cが配向せず、無秩序に存在することで光の散乱が発生し、色彩が鮮明にでないからと考察される。
【0056】
また点灯時には、サンプル1から6の全てにおいて効果あったことより、カラーシフト層4にある光干渉顔料6の粒子6cが配向していても、無秩序に存在していてもよいことがわかる。これは、散乱層3が等方的に光を散乱することや、カラーシフト層4が反射した光をカラーシフト層4に再反射することで、カラーシフト層4から全ての波長の光が射出されるためと考察される。
よって、消灯時に観察できた色彩を点灯時には確認することなく、光源1から放射された光が観察者にそのまま視認されることが可能となる。
【0057】
なお、光干渉顔料6の各粒子6bが針状に形成されている場合については、実験結果は示さないが、各粒子6bの軸線Cが同じ向きに配向されているときに、各粒子6cが板状に形成されている場合と同様になる。各粒子6bの配向は、前述のように公知のバーコーターで行うことができる。
粒子6b、6cの形状によって角度の定義が変わるため、粒子6bと粒子6cとで角度の好ましい範囲は異なるが、粒子6bの前述の角度θ1を60°以上90°以下とすることで粒子6cの場合と同様の効果を奏することが分かった。ただし、この場合の効果は、照明装置10をカラーシフト層4側から斜め、かつ、粒子6bの軸線C側から(厚さ方向Xと軸線Cとを含む平面上で)観察したときのみに奏されるものであった。
【0058】
このように、板状の粒子6cについて角度θ2を0°以上30°以下とすることで、反射光である光L4を一定方向に規則的に反射させ、散乱光が目立たず、カラーシフトを問題無く視認することなくできる。
針状の粒子6bについても、角度θ1を60°以上90°以下とすることで、板状の粒子6cと同様の効果を奏することができる。
【0059】
このように構成された照明装置10を、
図3に示すように厚さ方向Xに平行に見て観察したり、
図4に示すように厚さ方向Xに交差する方向に見て観察したりする。
図3は、照明装置10をカラーシフト層4の主面の法線方向から観察した図とも言える。一方で、
図4は、照明装置10をカラーシフト層4の主面の法線と交差する方向から観察した図とも言える。
この照明装置10では、散乱層3の全面にカラーシフト層4が設けられている。照明装置10を消灯時にある条件のもとで
図3および
図4の方向から観察する。
【0060】
消灯時には、光源1からカラーシフト層4側に放射する光(白色光)がない。このため、前述のカラーシフト層4の効果により、外部から照明装置10に入射した光(外光)がカラーシフト層4で反射して反射光となったものの色彩は、カラーシフト層4の観察角度(視認角度)を変えることで変化する。
【0061】
図5および
図6に、カラーシフト層4Aを所定の形状(例えば、文字Tの形状)で設けた照明装置10Aをある条件のもとで観察者Pが観察している様子を概略的に示す。照明装置10Aは、詳細には図示していないが、この例ではシート状の散乱層3の上にT字形に形成されたカラーシフト層4Aが形成された構成となっている。なお、T字形のカラーシフト層4Aを囲うように散乱層3を設け、カラーシフト層4Aと散乱層3とが面一なるように構成してもよい。
図5は照明装置10Aを消灯時に観察した状態を示すものである。カラーシフト層4Aが所定の形状に形成されることで、観察者Pが照明装置10Aを観察する角度により、カラーシフト層4Aによる画像の色彩が変化する。
【0062】
一方で、
図6に示すように、
図5と同様の照明装置10Aを点灯時に観察する。
点灯時には、光源1から放射する光がカラーシフト層4Aへ入射する。このときに、光は波長に応じて選択的に反射されるが、光源1とカラーシフト層4Aとの間に散乱層3が設けられているため、反射光を再度反射することができ、反射光は角度を変えて再反射されるため、カラーシフト層4Aから射出することができる。
よって、カラーシフト層4Aの光干渉効果が消滅し、観察者Pは照明装置10Aをどの角度から観察してもカラーシフト層4Aによる画像を認識することなく、光源1から放射する白色光同様の光を観察することができる。
【0063】
以上説明したように、本実施形態の照明装置10によれば、カラーシフト層4の光干渉顔料6を構成する板状の各粒子6cは、粒子6cの厚さ方向Dとカラーシフト層4の厚さ方向Xとがなす角度θ2が0°以上30°以下となるように配置されている。このため、消灯時には視認角度に応じて色彩を変化させるとともに、点灯時には、光源1が放射する白色光を放射光路R上に放射することができる。
また、光干渉顔料6を構成する針状の各粒子6bが、粒子6bの軸線C方向とカラーシフト層4の厚さ方向Xとがなす角度θ1が60°以上90°以下となるように配置されている場合でも、上記と同様の効果を奏することができる。
【0064】
照明装置10では、厚さ方向Xに見た形状を使用者の要望に応じた形状にすることができ、使用場所は限定されない。白色光を放射する従来の光源1を用いることで、点灯時の光の色が一般的に好まれる白色となり、照明装置10を様々な用途に用いることができる。
消灯時には視認角度に応じて色彩が変化することで、照明装置10の付加価値を高めることができる。
【0065】
以上、本発明の一実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせ、削除なども含まれる。
例えば、前記実施形態では、
図7に示す照明装置20のように、照明装置10の各構成に加えて、カラーシフト層4における散乱層3とは反対側にハードコート層11が設けられていてもよい。ハードコート層11には、透明樹脂同様紫外線、電子線、熱線等の活性エネルギーによる重合反応によって硬化体が形成する活性エネルギー線硬化樹脂を好適に用いることができる。活性エネルギー線硬化樹脂は、例えば、前述の散乱層3の透明樹脂で用いられた成分〔A〕、成分〔B〕、および、硬度を上げる材料からなる第3の成分(以下、成分〔C〕と称する場合がある)を含有している。成分〔C〕は硬度を上げられる材料であれば特に限定されず、例えば、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂等を挙げることができる。成分〔C〕に用いられるこれらの樹脂は、多官能モノマーから構成されている。これらの樹脂に、シラン化合物などのガラス構造を持たせてもよい。
【0066】
ハードコート層11を備えることで、カラーシフト層4の表面に傷がつくことを抑制することができる。
この変形例において、ハードコート層11の屈折率は、透明樹脂5の屈折率と同一であることが好ましい。このように構成することで、カラーシフト層4から選択的に反射してきた光をハードコート層11で屈折または反射させないようにすることができる。
【0067】
前記実施形態では、被膜7の屈折率は粒子6aの屈折率よりも大きいとしたが、被膜7の屈折率が粒子6aの屈折率よりも小さくてもよい。