【実施例】
【0014】
図1から
図10を用いて本発明の一実施例による振動環境下での波長走査を用いた形状計測装置及び形状計測方法を説明する。
図1は同形状計測装置に適したスペックル干渉撮影装置の構成図、
図2は同形状計測装置を機能実現手段で現したブロック図である。
本実施例による形状計測装置に適したスペックル干渉画像撮影装置(スペックル干渉画像撮影手段)10は、従来から用いられているスペックル干渉計と基本構成は同じである。
スペックル干渉画像撮影装置10は、波長可変レーザー11から特定波長による光を照射し、照射された光は、レンズ12で拡大された後に半透明鏡13で2つの光路に分かれる。
半透明鏡13で反射された一方の光は、測定対象物20の表面に至り、測定対象物20の表面で反射した光は、半透明鏡13を通過して対物レンズ14、半透明鏡15を通過してCCDカメラ16に入る。
半透明鏡13を通過した他方の光は、参照光路となり、参照面(反射鏡)17、18で反射され、半透明鏡15で反射してCCDカメラ16に入る。
測定対象物20で反射された光と、参照面17、18で反射された光とは、CCDカメラ16の撮像素子上で重ねられて結像されることで、スペックル干渉像が撮影される。
【0015】
スペックル干渉画像撮影装置10は、生産現場における不規則な垂直振動環境下に設置されて用いられる。ここで、不規則な垂直振動環境下とは、本実施例のスペックル干渉画像撮影装置10でのスペックル干渉像の撮影のために、ピエゾ素子などを用いて発生させるものではなく、生産現場における作業者や機器の存在によって発生する振動である。ただし,振動下で取り込む複数枚の干渉像が干渉による最大光強度と最小光強度を含まないほどに振動が小さい場合は,ピエゾ素子で振動を故意に大きくさせる場合もある.
半透明鏡13で反射された一方の光は、測定対象物20の表面に対して垂直方向から照射される。また、測定対象物20の計測対象となる表面は、半透明鏡13で反射された一方の光の鉛直方向に位置させる。
本実施例に適した測定対象物20は、例えば電子基板上に搭載された部品のように、不連続な粗面を有するものである。
波長可変レーザー11は、あらかじめ設定した複数の特定波長を出力できる。波長可変レーザー11は、それぞれ出力される波長の異なる複数のレーザーからなり、それぞれのレーザー光を切り替えることができるものでもよい。
【0016】
図2に示すように、本実施例による形状計測装置は、スペックル干渉画像撮影手段10と、記憶手段30と、処理手段40と、出力手段50とを備えている。
スペックル干渉画像撮影手段10では、特定波長で複数枚のスペックル干渉像を撮影する。特定波長として、少なくとも第1特定波長と第2特定波長を用いる。好ましくは、特定波長として4つ以上の波長を用いる。
それぞれの特定波長毎に、15枚以上40枚以下のスペックル干渉像を撮影する。実験結果から、15枚より少ない場合には十分な精度を得られず、40枚で十分な精度を得ることができた。
【0017】
記憶手段30には、スペックル干渉画像撮影手段10で撮影したスペックル干渉像の画像を記憶する画像記憶部31と、波長別に抽出した複数の画像の位相変化量を記憶する位相変化量記憶部32と、波長別に1枚の画像における全ての画素についてのスペックル干渉像の位相を記憶するスペックル干渉像位相記憶部33を有する。
【0018】
処理手段40は、複数枚の画像からπ/2の位相差を有する第1測定画素と第2測定画素とを抽出することで、1枚の画像における全ての画素についてのスペックル干渉像の位相を算出して測定対象物20の粗面の高さを計測する。
処理手段40は、波長抽出部41a、画像抽出部41b、及び画素抽出部41cを有している。
波長抽出部41aでは、画像抽出部41bで抽出する波長情報を抽出する。波長抽出部41aは、例えば画像記憶部31に記憶されている画像とともに記憶されている波長情報を抽出する。
画像抽出部41bでは、画像記憶部31に記憶されている画像の中から、特定波長についての複数枚の画像を抽出する。画像抽出部41bで抽出するすべての画像は、波長抽出部41aで抽出する波長で撮影されたものである。
従って、波長抽出部41aで第1特定波長を抽出した時には、画像抽出部41bでは、第1特定波長で撮影した全ての画像を抽出し、波長抽出部41aで第2特定波長を抽出した時には、画像抽出部41bでは、第2特定波長で撮影した全ての画像を抽出する。
画素抽出部41cでは、画像抽出部41bで抽出した複数枚の画像について、画像を構成する画素の中から、測定点抽出に用いる複数の画素を抽出する。
【0019】
また、処理手段40は、光強度抽出部42、光強度演算部43、画像特定部44、第1測定画素抽出部45a、第2測定画素抽出部45b、位相変化量算出部45c、平均化処理部45dを有している。
光強度抽出部42では、画素抽出部41cで抽出した画素別に、最大光強度と最小光強度とを抽出する。
光強度演算部43では、光強度抽出部42で抽出した画素別についての、最大光強度と最小光強度との差を演算する。
第1測定画素抽出部45aでは、光強度演算部43で演算した最大光強度と最小光強度との差が大きな画素の中からいずれかを第1測定画素として抽出する。
画像特定部44では、第1測定画素が、最大光強度と最小光強度との和の1/2である画像を特定する。
第2測定画素抽出部45bでは、画像特定部44で特定した画像について、最大光強度と最小光強度との差が大きな画素の中で光強度が最大光強度となっている画素を第2測定画素として抽出する。
位相変化量算出部45cでは、第1測定画素と第2測定画素を1組の測定点として、2回規格化法を用いて、抽出した複数の画像の位相変化量を算出する。
位相変化量算出部45cで算出された位相変化量は位相変化量記憶部32に記憶される。
位相変化量算出部45cにおける複数の画像の位相変化量の算出は、異なる測定点で複数回繰り返され、このようにして算出された複数組の測定点による複数の位相変化量は、位相変化量記憶部32に記憶される。
平均化処理部45dでは、位相変化量記憶部32に記憶された、複数組の測定点による複数の位相変化量を用い、複数組の測定点による複数の位相変化量を平均化して平均位相変化量を算出する。
【0020】
また、処理手段40は、スペックル干渉像位相算出部46a、補正処理部46b、波長間位相差算出部47、形状計算部48を有している。
スペックル干渉像位相算出部46aでは、平均化処理部45dで算出した平均位相変化量から、位相変化に対する光強度変化の最小二乗近似を用いて1枚の画像における全ての画素についてのスペックル干渉像の位相を算出する。
補正処理部46bでは、スペックル干渉像位相算出部46aで算出した、1枚の画像における全ての画素についてのスペックル干渉像の位相について、高さの基準点となる基準画素を設定し、基準画素での波長変更に伴う位相変化量をゼロとする補正処理を行う。
補正処理部46bで補正処理が行われたスペックル干渉像の位相は、スペックル干渉像位相記憶部33に記憶される。
波長間位相差算出部47では、第1特定波長について補正処理部46bで補正処理が行われてスペックル干渉像位相記憶部33に記憶されたスペックル干渉像の位相と、第2特定波長について補正処理部46bで補正処理が行われてスペックル干渉像位相記憶部33に記憶されたスペックル干渉像の位相との位相変化量を算出する。
形状計算部48では、波長抽出部41aからの第1特定波長と第2特定波長との波長変化量と、波長間位相差算出部47で算出した位相変化量とから測定対象物20の粗面の高さを算出する。
形状計算部48で算出された測定対象物20の粗面の高さは、目標値との差異を示す数値として、又はビジュアルなイメージとして出力手段50から出力される。
【0021】
本実施例による振動環境下での波長走査を用いた形状計測方法では、測定対象物20は粗面であるためスペックル位相を抽出する必要がある。
その手順の概要は下記の通りである。
1)安定した波長の下で振動によって干渉位相がランダムに変化している中でスペックル干渉像を多数枚取り込む。
2)取り込んだ干渉像から干渉光強度変化のモジュレーションが大きくて位相が約π/2異なる画素A、Bの2画素を探す。
3)それら2点で最小光強度と最大光強度の探索を行い、位相変化に伴う光強度変化の規格化を行い、規格化した変化の和と差を求め、更に2回目の規格化を行って、取り込んだ多数枚の画像に対して位相変化量(ランダムなシフト量)を抽出する。
4)最後に抽出した位相変化量を利用して、位相に対する光強度の正弦波的変化への最小二乗近似を使って、最初に取り込んだ1枚の干渉位相を全画素で抽出する。この位相の抽出を波長を変えて複数回行い、波長を変える時の位相変化傾斜から光路差を計算する。
【0022】
以下にこの処理を詳細に説明する。
図3及び
図4は同形状計測方法を示すフローチャート、
図5は同形状計測方法での測定対象物である電子部品の一部を写した写真である。
まず、測定対象物20を特定する(ステップ1)。
電子部品のような測定対象物20は、プリント基板上に半導体チップなどの部品が装着されており、プリント基板と半導体チップとの間は、不連続な粗面となっている。
ステップ1において測定対象物20が特定されると、計測対象長を決定する(ステップ2)。例えば、プリント基板上に半導体チップが正確に搭載されているかを計測する場合には、プリント基板の上面から半導体チップの上面までを計測対象長として決定する。
ステップ2において計測対象長が決定されると、この計測対象長を基準にして、照射する複数の波長を決定する(ステップ3)。
例えば、特定波長として4つの波長を用いる場合には、第1特定波長と第2特定波長とを、測定対象物20の計測対象長に対して2πの位相差とし、第1特定波長と第3特定波長とを、測定対象物20の計測対象長に対して2π×n(ただしnは2以上で好ましくはn=4)の位相差とし、第1特定波長と第4特定波長とを、測定対象物20の計測対象長に対して2π×n×m(ただしmは2以上で好ましくはm=4)の位相差とする。
ステップ3において照射する複数の波長が決定されると、最初に照射する波長を選択する(ステップ4)。
そして最初に選択された波長でレーザー照射が行われる(ステップ5)。
ステップ5におけてレーザーを照射している間、複数枚のスペックル干渉像を撮影する(ステップ6)。
ステップ6における撮影ステップの後に、スペックル干渉像を撮影した複数枚の画像を記憶する(ステップ7)。
【0023】
ステップ7における記憶ステップの後に、ステップ3で決定したすべての波長での照射が終了したか否かが判断される(ステップ8)。
未照射の波長がある場合には、ステップ4において未照射の新たな波長が選択され、選択された波長のレーザーで照射して(ステップ5)、撮影ステップ(ステップ6)、記憶ステップ(ステップ7)が行われる。
ステップ3で決定された全ての波長での照射が終了したと、ステップ8で判断された場合には、撮影は終了する(ステップ9)。
【0024】
ステップ7において、特定波長についてスペックル干渉像を撮影した全ての画像が記憶されると、画像抽出ステップを行うことができる(ステップ10)。ステップ10における画像抽出ステップは、ステップ9の撮影終了後に行ってもよい。
ステップ10における画像抽出ステップでは、特定波長についてスペックル干渉像を撮影した複数の画像が抽出される。ここでの画像抽出ステップでは、基本的には照射波長が同じ全ての画像を抽出するが、必ずしも全ての画像でなくてもよい。
ステップ10で抽出した複数枚の画像について、画像を構成する画素の中から、測定点抽出に用いる複数の画素を抽出する(ステップ11)。
ステップ11における画素抽出ステップのイメージを、
図6を用いて説明する。
図6では、例えば、6枚の画像Pa、Pb、Pc、Pd、Pe、Pfを抽出した場合を示し、それぞれの画像Pa、Pb、Pc、Pd、Pe、Pfは9×9画素から構成されている。
ステップ11における画素抽出ステップでは、画像抽出部41bで抽出した6枚の画像について、測定点抽出に用いる画素Pa11、Pa21、Pa31、Pa41、Pa51、Pa61、Pa71、Pa81、Pa91を抽出する。
画素抽出ステップ(ステップ11)で抽出した画素別に、抽出した複数画像を対象に、最大光強度と最小光強度とを抽出する(ステップ12)。
ステップ13における第1測定画素抽出ステップでは、ステップ12における画素抽出ステップで抽出した画素別に、最大光強度と最小光強度との差が大きな画素の中からいずれかを第1測定画素として抽出する。
すなわち、画素P11〜画素P91の最大光強度と最小光強度との差が比較され、最大光強度と最小光強度との差が大きな画素を第1測定画素とする。
ステップ14における画像特定ステップでは、第1測定画素が、最大光強度と最小光強度との和の1/2である画像を特定する。
更に、ステップ15における第2測定画素抽出ステップでは、画像特定ステップで特定した画像について、最大光強度と最小光強度との差が大きな画素の中で光強度が最大光強度となっている画素を第2測定画素として抽出する。
【0025】
ステップ13における抽出ステップから、ステップ15における第2測定画素抽出ステップを、
図6を用いて説明する。
まず、画素P11について最小光強度と最大光強度を抽出する。すなわち、画像Paの画素Pa11、画像Pbの画素Pb11、画像Pcの画素Pc11、画像Pdの画素Pd11、画像Peの画素Pe11、画像Pfの画素Pf11の中から、最小光強度と最大光強度を抽出する。
また、画素P21について最小光強度と最大光強度を抽出する。すなわち、画像Paの画素Pa21、画像Pbの画素Pb21、画像Pcの画素Pc21、画像Pdの画素Pd21、画像Peの画素Pe21、画像Pfの画素Pf21の中から、最小光強度と最大光強度を抽出する。
そして同様に、画素P31、画素P41、画素P51、画素P61、画素P71、画素P81、画素P91についても、最小光強度と最大光強度を抽出する。
【0026】
ステップ13において、画素P11〜画素P91の中で、画素P91が最大光強度と最小光強度との差が最も大きい場合には、画素P91が第1測定画素として抽出される。
画素P91については、最大光強度と最小光強度との差が算出できているので、最大光強度と最小光強度との和の1/2の光強度が算出できる。
画素Pc91が、最大光強度と最小光強度との和の1/2の光強度であるとすると、ステップ14では画像Pcが特定される。
そして、ステップ15では、特定した画像Pcについて、最大光強度と最小光強度との差が大きな画素の中で光強度が最大光強度となっている画素を抽出する。画素Pc11〜画素Pc81の中で、画素P51が最大光強度と最小光強度との差が大きく、画素Pc51の光強度が最大光強度となっている場合には、画素P51が第2測定画素として抽出される。
ここで、第1測定画素として抽出された画素P91と、第2測定画素として抽出された画素P51とは、ともに最大光強度と最小光強度との差が大きく、かつほぼπ/2位相がずれた関係にある。
ステップ13で第1測定画素が抽出され、ステップ15で第2測定画素が抽出されると、第1測定画素と第2測定画素を1組の測定点として、2回規格化法を用いて、抽出した複数の画像の位相変化量を算出する(ステップ16)。
【0027】
第1測定画素と第2測定画素は、振幅が1、平均値がゼロとなるように規格化される。2回規格化法は下記の数式で表現される。
時間tにおける第1測定画素と第2測定画素の光強度I
A(t)、I
B(t)は式(1)で表せる。ここで、I
A−MaxはI
Aの最大光強度、I
B−MaxはI
Bの最大光強度、I
A−MinはI
Aの最小光強度、I
B−MinはI
Bの最小光強度である。
式(1):
I
A(t)=Acos[Φ(t)+φ
A]+A
0
I
B(t)=Bcos[Φ(t)+φ
B]+B
0
I
A−MAX=A+A
0
I
A−MIN=−A+A
0
I
B−MAX=B+B
0
I
B−MIN=−B+B
0
【0028】
式(1)の規格化を行うと、時間tにおける第1測定画素と第2測定画素の規格化した光強度I
NA(t)、I
NB(t)は式(2)で表せる。
式(2):
I
NA(t)=[2I
A(t)−(I
A―MAX+I
A―MIN)]/(I
A―MAX−I
A―MIN)=cos[Φ(t)+φ
A]
I
NB(t)=[2I
B(t)−(I
B―MAX+I
B―MIN)]/(I
B―MAX−I
B―MIN)=cos[Φ(t)+φ
B]
【0029】
第1測定画素の規格化した光強度I
NA(t)と、第2測定画素の規格化した光強度I
NB(t)との和をI
ADD(t)とし、第1測定画素の規格化した光強度I
NA(t)と、第2測定画素の規格化した光強度I
NB(t)との差をI
SUB(t)とすると、I
ADD(t)とI
SUB(t)は式(3)となる。
式(3):
I
ADD(t)=cos[Φ(t)+φ
A]+cos[Φ(t)+φ
B]=2cos[(2Φ(t)+φ
A+φ
B)/2]cos[(φ
A−φ
B)/2]
I
SUB(t)=cos[Φ(t)+φ
A]−cos[Φ(t)+φ
B]=−2sin[(2Φ(t)+φ
A+φ
B)/2]sin[(φ
A−φ
B)/2]
【0030】
I
ADD(t)とI
SUB(t)を規格化し,これをI N SUB, I N ADDとすると式(4)となる。
式(4):
[2Φ(t)+φ
A+φ
B]/2=−tan
−1(I
N SUB/I
N ADD)
【0031】
ステップ16の位相変化量算出ステップにおいて、抽出した複数の画像の位相変化量を算出すると、第1測定画素と第2測定画素を1組の測定点とした位相変化量が位相変化量記憶部32に記憶される(ステップ17)。
図7は、抽出した複数の画像の位相変化量を示している。抽出した40枚の画像を、抽出順に横軸に並べている。
図7に示すように、振動環境下では位相変化には規則性はなく、ランダムである。
【0032】
ステップ17で位相変化量が記憶されると、必要組の測定点での算出が終了したか否かが判断される(ステップ18)。
ステップ18において、必要組の測定点での算出が終了していないと判断された場合には、ステップ11に戻って、画素抽出ステップから位相変化量算出ステップを複数回繰り返して複数組の測定点による複数の位相変化量を算出する。
ステップ18において、必要組の測定点での算出が終了したと判断された場合には、複数組の測定点による複数の位相変化量を平均化する平均化処理が行われる(ステップ19)。
【0033】
ステップ19で平均化した平均位相変化量を用いて、スペックル干渉像位相算出が行われる(ステップ20)。
ステップ20のスペックル干渉像位相算出ステップでは、平均位相変化量から、位相変化に対する光強度変化の最小二乗近似を用いて1枚の画像における全ての画素についてのスペックル干渉像の位相を算出する。
最小二乗近似を用いたスペックル位相の計算式は式(5)から式(8)を用いて式(9)で表される。
1枚の画像におけるスペックル干渉像Ii(x,y)は式(5)で表される。
【0034】
【数1】
式(5)は、式(5’)と表すことができる。
【0035】
【数2】
式(5’)において、α
0(x,y)、α
1(x,y)、α
2(x,y)は式(6)で表される。
【0036】
【数3】
式(6)におけるA(δi)とB(x,y,δi)の成分行列は式(7)と式(8)で表される。
【0037】
【数4】
【0038】
【数5】
【0039】
【数6】
【0040】
式(9)の計算式を用い、ステップ20のスペックル干渉像位相算出ステップで算出した、1枚の画像おける全ての画素についてのスペックル干渉像の位相について、高さの基準点となる基準画素を設定し、基準画素での波長変更に伴う位相変化量をゼロとする補正処理を行う(ステップ21)。
ステップ21の補正処理ステップで補正処理を行った1枚の画像における全ての画素についてのスペックル干渉像の位相をスペックル干渉像位相記憶部33に記憶する(ステップ22)。
ステップ22で特定の波長によるスペックル干渉像が記憶されると、すべての波長での位相変化量が算出されたか否かが判断される(ステップ23)。
ステップ23において、すべての波長での位相変化量の算出が終了していないと判断された場合には、ステップ10に戻って、画像抽出ステップから補正処理ステップを繰り返す。
ステップ23において、すべての波長での位相変化量の算出が終了したと判断された場合には、波長間において位相差を算出する(ステップ24)。
ステップ24の波長間位相差算出ステップでは、複数波長の中から選択した2つの波長について、第1特定波長について算出したスペックル干渉像の位相と、第2特定波長について算出したスペックル干渉像の位相との位相変化量を算出する。
ステップ24の波長間位相差算出ステップの後に、測定対象物20の形状を計算する(ステップ25)。
ステップ25の形状計算ステップでは、第1特定波長と第2特定波長との波長変化量と、波長間位相差算出ステップで算出した位相変化量とから測定対象物20の粗面の高さを算出する。
【0041】
図8(a)は、一つの特定波長において、ステップ21の補正処理ステップで補正処理を行った1枚の画像における全ての画素についてのスペックル干渉像の位相例を示す写真である。
図8(b)は、2つの波長変化量が小さい場合の位相差マップを示す写真であり、波長変化が少ないため基準点からの位相は、全視野で±πの範囲内での変化となっている。
図8(c)及び(d)も、
図8(b)と同様に位相差マップを示す写真であるが、
図8(b)よりも
図8(c)の方が2つの波長変化量が大きく、また
図8(c)よりも
図8(d)の方が2つの波長変化量が大きくなっており、2πを大きく越えて変化している。
図8(d)では位相の光路差への感度が高い。そこで、波長差の大きい縞が多く現れるマップの縞次数を抽出し、次数と位相から高精度測定を行うことができる。
【0042】
図9は光路差と位相の関係を示す図であり、異なる光路差における波長変更時の位相変化量を示している。
λ=0
,1では波長変化が小さいためOPD全域で位相は−π〜πしか変わらない。λ=0
,1での位相が2πであることを用い、λ=0
,2の位相マップを−4π〜4πで求め、更にλ=0
,3の位相を−13π〜13πで求める。信号は常に雑音を含むため、λ=0
,3の位相を使うことで高精度なOPD計測が可能となる。
【0043】
図10は
図5で示す電子基板について、反射塗料を吹き付けない状態での形状測定結果を示す図であり、ステップ25の形状計算ステップで算出した測定対象物20の粗面の高さを出力手段50で表示させたものである。
図10に示すように、CPUプレートの段差を確認することができる。また、CPUプレートの周辺に存在する高さの違う複数素子の高さ違いも計測できている。なお、画素は100×250である。
図5で示す電子基板において、測定視野は2.5cm×1.0cmであり、左下のCPUプレートは基板から2.7mm程度浮き上がっている。
【0044】
実験では、
図1に示すスペックル干渉撮影装置の構成に加えて、振動下での疑似計測状況を作り出すために、参照光路にPZT駆動ミラーを入れて、PCからの一様乱数出力でその光路長を最大2μm変動できるようにした。
波長可変レーザー11はTOPTICAのDL_DFBレーザーであり、LD素子の温度による波長制御で778nmから780nmまでモードホップフリーで波長可変でき、最大出力は約70mWである。対物レンズ14は広い視野も確保できるよう1眼レフカメラ用のAFズームニッコール35-105である。測定対象として光路差が場所によってほぼ一様に変化するプラスチックコートされたアルミプレートを対物レンズ14前方に23cmほど離して置いた。カメラはピクセルサイズが6.45×6.45μmで12bitA/D分解能を有し赤外域に高感度なManta G−145 NIRである。
レーザー素子の温度を4度〜35度まで6段階ステップで変えた。各ステップでは温度変更後10秒置いた安定した波長で、ピエゾ素子をランダムに動かしながらスペックル干渉像を40枚撮影した。6種の各温度でこのように画像を撮影した後に、2回規格化法で位相シフト量を算出し、各温度域で最初に取り込んだ画像の位相を抽出した。このシフト量変化は画面中に2点の組を100組設け、得られた100個のシフト量での変化を平均化した。このようなシフト変化と最小二乗法から各波長での一枚目のスペックル干渉像の位相を抽出し、波長変化に伴う位相の変化を求めた。
【0045】
以上のように、波長変更に伴う干渉位相の変化が光路差に比例する関係を用い、カメラ視野の被測定面上に高さの基準点を設け、波長を変える時の視野中の各測定点と基準点での位相変化量の違いを用いることで、異なる特定波長での抽出位相の差の空間分布から形状を計算することができる。