(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように電池スタックの外部に電圧検出手段が設けられる構造であると、電圧検出手段を構成する基板(特許文献1では信号処理基板12)と電池セルとを配線で接続する作業が煩雑化する。また、基板や電池スタックと配線の接続部分に応力が発生しやすい(接続不良が発生しやすい)。
【0005】
本発明は、基板と電気機器の配線作業が容易であり、電気的接続の信頼性にも優れる配線モジュール、およびこれを備えた電池ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明にかかる配線モジュールは、複数の電池セルから構成される電池スタックと基板とを接続するための配線モジュールであって、前記複数の電池セルの各端子と基板に形成された導電パターンとを電気的に接続する複数の配線部材と、前記複数の配線部材に固定され、これら配線部材同士の間隔を規制する配線保持部材と、を備えることを特徴とする。
【0007】
前記複数の配線部材は、前記配線保持部材に固定された部分と、前記配線保持部材に固定された部分よりも前記電気機器側の部分であって、前記配線保持部材に固定されていない第一余長部と、を有することを特徴とする。
【0008】
前記第一余長部の長さは、前記各配線部材の一端が、対応する端子以外の端子に接続不可能な長さであるとよい。
【0009】
前記複数の配線部材は、前記配線保持部材に固定された部分と、前記配線保持部材に固定された部分よりも前記基板側の部分であって、前記配線保持部材に固定されていない第二余長部と、を有するとよい。
【0010】
前記配線保持部材が可撓性材料で形成されているとよい。
【0011】
前記配線保持部材は、可撓性材料で形成された第一保持部および第二保持部を有し、前記配線部材は、前記第一保持部と前記第二保持部の間に挟まれることにより、前記配線保持部材に固定されているとよい。
【0012】
前記配線保持部材にスリットが形成されているとよい。
【0013】
前記配線保持部材が硬質材料で形成されているとよい。
【0014】
前記配線保持部材に前記基板が載置される基板載置面が設けられているとよい。
【0015】
前記配線部材は、前記配線保持部材の前記基板載置面から突出し、前記導電パターンに接続される基板側接続端子部を有するとよい。
【0016】
複数の前記基板のそれぞれに形成された導電パターン同士を電気的に接続する基板中継部材が前記配線保持部材に埋設されているとよい。
【0017】
前記配線保持部材には、前記第一余長部が引っ掛けられる引掛部が設けられているとよい。
【0018】
前記配線保持部材が前記基板に接続される基板接続部を有するとよい。
【0019】
前記複数の配線部材は、フレキシブル基板に形成された導電パターンであるとよい。
【0020】
前記フレキシブル基板における前記各配線部材間にスリットが形成されているとよい。
【0021】
上記課題を解決するために本発明にかかる電池ユニットは、上記配線モジュールと、導電パターンが形成された基板と、複数の電池セルから構成される電池スタックと、を備え、前記複数の配線部材は、それぞれの一端が前記複数の電池セルの各端子に接続され、他端が前記導電パターンに接続されていることを特徴とする。
【0022】
前記基板には、前記導電パターンの一部である複数のランド部が前記複数の電池セルの並列方向に沿って並ぶように形成されており、前記複数の配線部材は、前記複数の電池セルの並列方向に沿って並ぶように、それぞれの一端が前記複数の電池セルの各端子に接続され、他端が前記各ランド部に接続されているとよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明にかかる配線モジュールは、複数の配線部材が固定される配線保持部材を有するものであるため、配線作業の際に配線部材同士が絡まることが防止され、配線作業が容易になる。また、配線保持部材によって配線部材の動きが規制されるため、基板と配線部材、電気機器の端子と配線部材の接続部分にかかる応力が低減される。つまり、電気的接続の信頼性に優れる。
【0024】
配線保持部材に固定された部分よりも電気機器の端子側の部分である第一余長部が配線部材に設けられた構成とすれば、第一余長部の分、配線部材の一端が動くことが可能であるため、配線部材の一端と端子を容易に接続すること(誤差を吸収すること)ができる。また、配線部材と端子の接続部分に生ずる応力が低減される。
【0025】
各配線部材の一端が対応する電気機器の端子以外の端子に接続不可能な長さとなるように第一余長部の長さが設定されていれば、配線部材を誤って別の端子に接続してしまうことが防止される。
【0026】
配線保持部材に固定された部分よりも基板側の部分である第二余長部が配線部材に設けられた構成とすれば、配線部材と導電パターンの接続部分に生ずる応力がさらに低減される。
【0027】
配線保持部材が可撓性材料で形成されていれば、配線部材同士の間隔が維持される範囲で、配線部材の引き回しの自由度が向上するため、配線作業が容易になる。
【0028】
配線保持部材が可撓性材料で形成される場合、二つの可撓性材料(第一保持部および第二保持部)で配線部材を挟むことにより、配線保持部材に対し配線部材を固定することができる(製造が容易である)。
【0029】
配線保持部材にスリットが形成されていれば、配線部材と導電パターン、配線部材と端子の接続部分に生ずる応力がさらに低減される。
【0030】
配線保持部材が硬質材料で形成されていれば、当該配線保持部材による配線部材同士の間隔を維持する機能に優れる。
【0031】
配線保持部材が硬質材料で形成されている場合、基板を支持するための部材として配線保持部材を機能させることもできる。
【0032】
配線保持部材が硬質材料で形成され、基板を支持するための部材として配線保持部材を機能させる場合、配線保持部材から基板側に突出する基板側接続端子部を配線部材に設ければ、基板(導電パターン)と配線部材の接続が容易になる。
【0033】
配線保持部材には、複数の基板のそれぞれに形成された導電パターン同士を電気的に接続する中継部材を埋設しておくことができる。
【0034】
配線保持部材が硬質材料で形成されている場合、第一余長部が引っ掛けられる引掛部を配線保持部材に設けることもできる。
【0035】
配線保持部材が基板に接続されていれば、配線部材と導電パターン(基板)の接続を補強する(配線部材と導電パターンの接続部分に生ずる応力を低減する)部材として配線保持部材を機能させることができる。
【0036】
複数の配線部材を、フレキシブル基板に形成された導電パターンとする、すなわち、フレキシブル基板の基材によって複数の配線部材が一体化された構成とすれば、配線部材同士が絡まるといった状態となることはないため、配線作業が容易になる。
【0037】
フレキシブル基板における各配線部材間にスリットが形成されていれば、配線部材と導電パターン、配線部材と端子の接続部分に生ずる応力がさらに低減される。
【0038】
本発明にかかる電池ユニットは、複数の配線部材が固定される配線保持部材を有するものであるため、配線作業の際に配線部材同士が絡まることが防止され、配線作業が容易になる。また、配線保持部材によって配線部材の動きが規制されるため、基板と配線部材、電池ユニットを構成する各電池セルの端子と配線部材の接続部分にかかる応力が低減される。つまり、電気的接続の信頼性に優れる。
【0039】
また、複数の配線部材が複数の電池セルの並列方向に沿って並ぶように、それぞれの一端が各ランド部に接続されている構成とすれば、配線作業が容易である。また、大きく配線部材を引き回す構成ではないため、配線部材とランド部の接続部分に生ずる応力が低減される。さらに、基板におけるランド部同士の間隔を大きくすることができるため、ランド部間でショートするおそれが低減される。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の実施形態にかかる電池ユニット1について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、特に明示した場合を除き、以下の説明における上下方向とは各電池セル11の上下方向(端子110が設けられた側を上、その反対側を下とする)をいい、並列方向とは複数の電池セル11を並べた(積み重ねた)方向をいい、幅方向とは上下方向および並列方向に直交する方向であって、各電池セル11の二つの端子110(プラス端子とマイナス端子)を結ぶ直線方向をいうものとする。なお、これらの方向は、電池ユニット1の設置方向を限定するものではない。
【0042】
本発明の第一実施形態にかかる電池ユニット1aは、ハイブリット自動車や電気自動車等の車両用電池として用いられるものであって、電池スタック10(電気機器)、基板20、配線部材30、および配線保持部材40を備える。以下、
図1〜
図4を参照して各構成について説明する。
【0043】
電池スタック10は、複数の電池セル11から構成される。ここでいう電池セル11は、一つにパッケージングされた電池をいい、一の電池セル11の定格電圧や容量といった特性は特定の値に限定されない。各電池セル11の定格値(設計値)が同じであればよく、複数の電池が接続されてなるものが一つにパッケージングされたものを一の電池セル11としてもよい。
【0044】
各電池セル11は、上側にプラス端子およびマイナス端子を有する。プラス端子は電池セル11の幅方向一方側に、マイナス端子は電池セル11の幅方向他方側に位置する。各電池セル11は、幅方向に長い平板状となっており、この平板を積み重ねるようにして並べられたものが電池スタック10となる。このように複数の電池セル11が並べられた電池スタック10が構成されると、電池スタック10の幅方向一方側および他方側において端子110が直線状に並ぶ。具体的には、電池スタック10の幅方向一方側および他方側において、プラス端子とマイナス端子が交互に並ぶように電池セル11が並べられる(幅方向一方側に直線状に並ぶ端子群を第一端子群111と、他方側に直線状に並ぶ端子群を第二端子群112と称する)。そして、一の電池セル11のプラス端子とその一方側に隣接する電池セル11のマイナス端子、および一の電池セル11のマイナス端子とその他方側に隣接する電池セル11のプラス端子が、導電性材料で形成されたバスバー(図を分かりやすくするため図示略)で接続される。つまり、電池スタック10を構成する複数の電池セル11は直列に接続されている。
【0045】
また、本実施形態では、各電池セル11の幅方向両側面における上側に、蓋部材50を電池スタック10に固定するための引掛突起113が形成されている。なお、電池スタック10を構成する各電池セル11は、詳細を後述する蓋部材50によって一体化される構造であってもよいし、蓋部材50以外のものによって一体化される構成であってもよい。例えば、各電池セル11に、隣接する電池セル11との物理的な接続を図るための構造が設けられていてもよい。
【0046】
蓋部材50は、電池スタック10を構成する複数の電池セル11の各端子110を覆うものである。蓋部材50は、絶縁性材料で形成されており、各電池セル11の端子110を物理的かつ電気的に保護する。蓋部材50の幅方向両側には、下方に向かって延びる複数の引掛片51が設けられている。幅方向両側で一対となる引掛片51は、電池スタック10全体を構成する電池セル11と同数設けられている。並設方向において、一対の引掛片51の間隔は電池セル11に設けられた一対の引掛突起113の間隔と等しい。各引掛片51の先端側には引掛突起113が通ることのできる貫通孔が形成されており、各引掛片51の貫通孔に引掛突起113を引っ掛けることにより、蓋部材50が電池スタック10に固定される。これにより、電池スタック10を構成する複数の電池セル11の各端子110が蓋部材50に覆われた状態となる。
【0047】
基板20は、各電池セル11の電圧(各電池セル11の端子110間電圧)を監視するための回路が構築されたものである。当該回路は、基板20に形成された導電パターンや実装された素子によって構築されている。導電パターンには、配線部材30が接続されるランド部21が形成されている(ランド部21以外の導電パターンは図示略)。ランド部21は、基板20の幅方向両側に、並列方向に沿って複数並ぶように形成されている。複数の電池セル11によって構成される電池スタック10は、過充電による発火等を防止するため、電池スタック10を構成する全ての電池セル11の電圧を監視する必要がある。そのため、基板20に形成された回路(導電パターンや各種素子から構成される)は、全ての電池セル11の端子110と電気的に接続される。なお、基板20には、電池スタック10(各電池セル11)を制御する電池制御回路が構築されていてもよい。
【0048】
かかる基板20は、電池スタック10の上面(端子110が位置する面)に対向するように設置される。つまり、基板20は、複数の電池セル11の並列方向に沿って設けられる。本実施形態における基板20の並列方向における長さは、当該方向における電池スタック10の長さと略等しく、基板20の幅方向における長さは、当該方向における電池スタック10の長さよりも小さい。
【0049】
また、基板20は、各ランド部21が、対応する端子110と並列方向における位置が一致するように設置される。具体的には、一の電池セル11のプラス端子およびマイナス端子は、当該電池セル11の端子110と電気的に接続されるべき二つのランド部21(プラス端子接続用ランド部およびマイナス端子接続用ランド部)と並列方向における位置を同じにする。したがって、並列方向における各ランド部21同士の間隔は、当該方向における端子110同士の間隔と略等しい。以上の条件を満たす位置に基板20が配置されるのであれば、その固定構造は特定の構造に限定されない。本実施形態では電池スタック10の幅方向中央に設けられた基板支持部12に基板20が固定されている。基板支持部12の形状や基板支持部12に対する基板20の固定構造はどのようなものであってもよい。
【0050】
配線部材30は、基板20に形成された導電パターン(回路)と、各電池セル11の端子110とを電気的に接続するための部材である。各電池セル11の電圧を測定する必要があるため、配線部材30は複数(電池セル11の数×2)用いられる。本実施形態における配線部材30は、電線31の一方側端部に、電池セル11の端子110に接続される電池側接続端子部32が設けられ、他方側端部に基板20のランド部21に接続される基板側接続端子部33が設けられたものである。
【0051】
配線保持部材40は、配線部材30同士の間隔(厳密には配線部材30の一部同士の間隔)を規制する部材である。具体的には、幅方向一方側に位置する複数の配線部材30同士、および幅方向他方側に位置する複数の配線部材30同士を連結する部材である。複数の配線部材30は、並列方向に等間隔に並ぶようにして配線保持部材40に固定されている。本実施形態における配線保持部材40は、絶縁性の可撓性材料で形成されたフィルム状の部材であり、第一保持部41および第二保持部42という二つのフィルム状の部材が接合されてなるものである。複数の配線部材30は、第一保持部41と第二保持部42の間に挟まれることにより、配線保持部材40に固定されている。
【0052】
配線保持部材40に対する複数の配線部材30の固定構造は、例えば
図4に示す態様とすることができる。配線保持部材40となる材料として、第一保持部41と第二保持部42が中央で線対称となるものを作製する(
図4(a)参照)。一方の保持部に配線部材30を並べ、他方の保持部を対称線で折り返し(
図4(b)参照)、一方の保持部に接合する(
図4(c)参照)。これにより、複数の配線部材30が配線保持部材40に固定される(このように複数の配線部材30が配線保持部材40に固定されたものが、本発明の第一実施形態にかかる配線モジュール2a(2)に相当する)。なお、二つの保持部の間に配線部材30が固定される構成であれば、三つ以上の保持部を用いてもよい。また、後述する配線固定部45のみ、二つの保持部で構成されたものとしてもよい。
【0053】
配線保持部材40は、基板接続部43、中継部44および配線固定部45を有する。基板接続部43は、基板20に接続される部分である。中継部44は、基板接続部43と配線固定部45を繋ぐ部分である。配線固定部45は、配線部材30が固定される部分である。配線固定部45には、配線部材30の電線31の一部が固定される。つまり、配線部材30の電池側接続端子部32側および基板側接続端子部33側の一部は、配線保持部材40(配線固定部45)に固定されていない。すなわち、配線部材30における配線保持部材40に固定された部分よりも電池セル11の端子110側の部分(以下第一余長部301と称する。
図3参照)と、配線部材30における配線保持部材40に固定された部分よりも基板20側の部分(以下第二余長部302と称する。
図3参照)は、配線保持部材40による規制を受けない部分である。したがって、第一余長部301と第二余長部302は、配線保持部材40(配線固定部45)の規制を受けずに独立して動きうる。
【0054】
上記各中継部44は、各配線部材30の第二余長部302同士の間に位置するように設けられる。本実施形態では、中継部44を変形しやすくするため、当該中継部44に貫通孔である中抜き部分441が形成されている。中継部44よりも基板20側に形成される基板接続部43は、接着剤等によって基板20に接合されている。光硬化や熱硬化によって接合してもよい。基板接続部43は、ランド部21に接続される基板側接続端子部33同士の間に位置するように基板20に接合される。基板20と配線保持部材40の接続強度を高めるため、基板接続部43は中継部44よりも幅広に形成されているとよい。基板20が電池スタック10に対して所定位置に位置決めされ、この基板20に対し配線部材30および配線保持部材40が所定位置に接続された状態において、第一余長部301の長さは、各配線部材30の電池側接続端子部32が、対応する電池セル11の端子110以外の端子110に接続することが不可能な長さに設定されている。
【0055】
配線保持部材40にはスリット451が形成されている。本実施形態では、配線固定部45における幅方向外側の縁から幅方向内側に向かう(電池セル11の端子110側に向かって開口した)スリット451が形成されている。各スリット451は、各配線部材30同士の間に一または複数形成される。なお、上記第一余長部301の長さは、このスリット451や中抜き部分441の存在、配線保持部材40を構成する材料の可撓性等を加味して設定される。つまり、スリット451等や配線保持部材40を構成する材料の可撓性等によって、電池側接続端子部32の動きうる範囲が決まることとなるが、当該範囲において、各電池側接続端子部32が、対応する電池セル11の端子110以外の端子110に接続することが不可能な長さに設定されている。
【0056】
本実施形態にかかる電池ユニット1aは、次のように組み立てることができる。複数の電池セル11を並べて、電池スタック10を構成する(第一工程)。また、複数の配線部材30と配線保持部材40を一体化する。つまり、第一保持部41と第二保持部42との間に複数の配線部材30を挟みこんで固定する(第二工程)。この固定の方法の一例は上述した通りである(
図4に示した方法)。第一工程と第二工程の順は問わない。第二工程を経た後、各配線部材30の基板側接続端子部33を基板20のランド部21にはんだ付けするとともに、配線保持部材40の基板接続部43を基板20に接合する(第三工程)。これにより、基板20・配線部材30・配線保持部材40が一体となったユニットが得られる。第三工程を経た後、基板20を所定位置に取り付ける(本実施形態では基板支持部12に支持させる)とともに、各配線部材30の電池側接続端子部32を電池セル11の各端子110に接続する(第四工程)。つまり、基板20の幅方向一方側に位置する複数の配線部材30を第一端子群111に、他方側に位置する配線部材30を第二端子群112に接続する。第四工程後、蓋部材50を電池スタック10に固定する(第五工程)。つまり、各引掛片51を対応する引掛突起113に引っ掛ける。この際、配線部材30は、基板20とともに蓋部材50と電池スタック10の間の空間内に収容する。
【0057】
以上説明した本実施形態にかかる電池ユニット1aでは、各電池セル11の端子110と、その端子110と同じ方向に並ぶランド部21とを配線部材30で接続する構成であるため、配線作業が容易である。また、大きく配線部材30を引き回す構成ではないため、配線部材30とランド部21の接続部分に生ずる応力が低減される。さらに、基板20におけるランド部21同士の間隔を大きくすることができるため、ランド部21間でショートするおそれが低減される。
【0058】
また、本実施形態では、複数の配線部材30は配線保持部材40に固定されているため、配線作業の際に配線部材30同士が絡まることが防止される。かかる配線保持部材40は可撓性材料で形成されているため、配線部材30同士の間隔が維持される範囲で、配線部材30の引き回しの自由度が向上する。よって、配線作業が容易になる。
【0059】
また、各配線部材30には、配線保持部材40に固定されていない電池セル11の端子110側の部分である第一余長部301が設けられているため、当該第一余長部301の分、配線部材30の電池側接続端子部32が動くことが可能である。したがって、電池セル11の積み重ね誤差等によって各電池セル11の端子110の位置が若干ずれていても、配線部材30の一端と端子110を容易に接続すること(誤差を吸収すること)ができる。また、配線部材30と電池セル11の端子110を接続した後は、当該第一余長部301の存在により、配線部材30と端子110の接続部分に生ずる応力が低減される。
【0060】
また、第一余長部301の長さは、各配線部材30の電池側接続端子部32が対応する電池セル11の端子110以外の端子110に接続不可能となるように設定されているため、配線部材30を誤って別の端子110に接続してしまうことが防止される。
【0061】
また、各配線部材30には、配線保持部材40に固定された部分よりも基板20側の部分である第二余長部302が設けられているため、配線部材30とランド部21の接続部分(はんだ付け部分)に生ずる応力が低減される。
【0062】
また、配線保持部材40(の少なくとも配線固定部45)が、第一保持部41および第二保持部42という二つのフィルム状の部材で構成されているため、両保持部の間に配線部材30を挟み込むことにより、配線保持部材40に対し配線部材30を固定することができ、製造(上記第二工程)が容易である。
【0063】
また、配線保持部材40にスリット451が形成されていれば、配線部材30とランド部21、配線部材30と端子110の接続部分に生ずる応力が低減される。本実施形態のように、配線固定部45における幅方向外側の縁から幅方向内側に向かう(電池セル11の端子110側に向かって開口した)スリット451が形成されていれば、特に、配線部材30と端子110の接続部分に生ずる応力が低減される。また、本実施形態とは異なり、配線固定部45における幅方向内側の縁から幅方向外側に向かう(基板20側に向かって開口した)スリット451が形成されていれば、特に、配線部材30とランド部21の接続部分(はんだ付け部分)に生ずる応力が低減される。
【0064】
また、配線保持部材40の基板接続部43が基板20に接続されているため、配線部材30とランド部21(基板20)の接続を補強する(配線部材30とランド部21の接続部分に生ずる応力を低減する)部材として配線保持部材40が機能する。
【0065】
また、配線保持部材40の中継部44に中抜き部分441が設けられていれば、中継部44が変形しやすくなるため、配線部材30とランド部21、配線部材30と端子110の接続部分に生ずる応力が低減される。
【0066】
次に、本発明の第二実施形態にかかる電池ユニット1bについて、上記第一実施形態と異なる点を中心に説明する。
図5および
図6に示す本実施形態にかかる電池ユニット1bは、配線保持部材40bの構成が上記第一実施形態と異なる。
【0067】
本実施形態における配線保持部材40bは、絶縁性の硬質材料で形成されている。配線保持部材40bは、並列方向に細長い直方体形状の部材である。配線保持部材40bの並列方向の長さは、基板20bや電池スタック10と略同じである。
【0068】
かかる配線保持部材40bに複数の配線部材30bが固定されている(このように複数の配線部材30bが配線保持部材40bに固定されたものが、本発明の第二実施形態にかかる配線モジュール2b(2)に相当する)。その固定構造はどのようなものであってもよいが、例えばインサート成形によって複数の配線部材30bを等間隔に並べた状態で、配線保持部材40bに固定することができる。本実施形態における配線部材30bの基板側接続端子部33bは、導電性の硬質材料で形成された軸状の部分である。かかる基板側接続端子部33bは、配線保持部材40bの上面である基板載置面47b(基板20b側の面)から突出している。つまり、基板側接続端子部33bは、配線保持部材40bの長手方向(並列方向)に沿って等間隔に並ぶ。なお、配線保持部材40bの下面からは、電池側接続端子部32が外側に引き出されている。当該引き出された部分が、第一余長部301となる。
【0069】
上記基板側接続端子部33b同士の間隔は、基板20bの幅方向両側において並列方向に並ぶように形成されたランド部21bの間隔と同じである。本実施形態における基板20bの幅方向両側には、並列方向に並ぶ複数のスルーホール22b(貫通孔)が形成されており、各ランド部21bは各スルーホール22bの周囲に形成されている。
【0070】
この基板20bは、幅方向両側に二つ設けられる配線保持部材40bの上面(基板載置面47b)に載置される。具体的には、配線保持部材40bの基板載置面47bから突出する各基板側接続端子部33bを、基板20bに形成された各スルーホール22bに通すことにより、基板20bが配線保持部材40b上に載置される。
【0071】
本実施形態にかかる電池ユニット1bは、次のように組み立てることができる。複数の電池セル11を並べて、電池スタック10を構成する(第一工程)。また、複数の配線部材30bと配線保持部材40bを一体化する(第二工程)。かかる第一工程と第二工程の順は問わない。第二工程を経た後、各配線部材30bの基板側接続端子部33bを基板20bのランド部21bにはんだ付けする(第三工程)。はんだ付け部分にかかる応力を低減するため、配線保持部材40bの上面(基板載置面47b)と基板20bを接合してもよい。この場合、配線保持部材40bの上面(基板載置面47b)が基板接続部となる。これにより、基板20b・配線部材30b・配線保持部材40bが一体となったユニットが得られる。本実施形態では、基板20bを配線保持部材40b上に載置することができるため、はんだ付けが容易である。配線保持部材40bと基板20bを接着剤等によって接合すると、はんだ付け部分にかかる応力が低減されるためさらによい。第三工程を経た後、基板20bを所定位置に取り付ける(本実施形態では基板支持部12に支持させる)とともに、各配線部材30bの電池側接続端子部32を電池セル11の各端子110に接続する(第四工程)。つまり、基板20bの幅方向一方側に位置する複数の配線部材30bを第一端子群111に、他方側に位置する配線部材30bを第二端子群112に接続する。第四工程後、蓋部材50を電池スタック10に固定する(第五工程)。つまり、各引掛片51を対応する引掛突起113に引っ掛ける。この際、配線部材30bは、基板20bとともに蓋部材50と電池スタック10の間の空間内に収容する。
【0072】
以上説明した本実施形態にかかる電池ユニット1bは、配線保持部材40bが硬質材料で形成されているため、当該配線保持部材40bによる配線部材30b同士の間隔を維持する機能に優れる。
【0073】
また、配線保持部材40bが硬質材料で形成されているため、基板20bを支持するための部材として配線保持部材40bを機能させることもできる。特に、本実施形態では、配線保持部材40bの基板載置面47bから基板20b側に突出する基板側接続端子部33bが配線部材30bに設けられているため、基板20b(ランド部21b)と配線部材30bの接続が容易になる。
【0074】
本実施形態において、二つの配線保持部材40bそれぞれにおける幅方向外側の面に
図7に示すような引掛部46bを設けることができる。引掛部46bは、幅方向外側に向かって延びる部分と、その先端から上方に向かって延びる部分とを有する。配線部材30bの電池側接続端子部32と電池セル11の端子110との接続を容易にするために第一余長部301を長めに設定(余裕をもった長さに設定)した場合には、配線部材30bの電池側接続端子部32と電池セル11の端子110との接続後、第一余長部301(電線31)を引掛部46bに引っ掛けておくことで、振動等によって第一余長部301が大きく動いてしまうことが抑制できる。つまり、配線部材30bの電池側接続端子部32と電池セル11の端子110との接続部分にかかる負荷が低減される。
【0075】
また、本実施形態のように、配線保持部材40bが硬質材料で形成される場合、かつ一つのユニットに複数の基板20bが搭載される場合には、基板20b間を電気的に接続する基板中継部材23bを配線保持部材40bに固定しておくことができる。例えば
図8に示すように、コの字(Uの字)型の基板中継部材23bを、配線保持部材40bにおけるある基板20bとそれに隣り合う基板20bとの中間に埋設する。基板中継部材23bの二つの先端側の一部(先端側の部分231b)は、配線保持部材40bの上面から突出する。各基板20bには、当該突出した部分が通されるスルーホール22bおよびその周囲にランド部21bが形成されており、基板中継部材23bの二つの先端側の部分231bがランド部21bにはんだ付けされることにより、基板20b(基板20bに形成された導電パターン)同士が電気的に接続される。自動装置を用いれば、基板中継部材23bと基板20bのはんだ付けは、配線部材30bと基板20bのはんだ付けと同じ工程で行うことができる。
【0076】
次に、本発明の第三実施形態にかかる電池ユニット1cについて、上記第一実施形態と異なる点を中心に説明する。
図9に示す本実施形態にかかる電池ユニット1cは、複数の配線部材30cの構成が上記第一実施形態と異なる。
【0077】
本実施形態における複数の配線部材30cは、フレキシブル基板2cに形成された導電パターンである。フレキシブル基板2cは、その並列方向の長さが基板20や電池スタック10と略同じに形成されている。このフレキシブル基板2cに、並列方向に等間隔に並ぶ複数の導電パターンが形成されている。各導電パターンは、フレキシブル基板2cを幅方向に横断するように形成されている。各導電パターンの一端が基板20の各ランド部21に接続され、他端が電池セル11の各端子110に接続されることになる。このように、配線部材30cが基板20に形成された導電パターンであれば、配線部材30c同士の間隔は変化しない。つまり、フレキシブル基板2cの基材35cが、上述した第一実施形態および第二実施形態における配線保持部材40と同様の役割を果たすものである(配線部材30cとしての導電パターンが形成されたフレキシブル基板2cが、本発明の第三実施形態にかかる配線モジュール2c(2)に相当する)。
【0078】
本実施形態におけるフレキシブル基板2cには幅方向外側(電池セル11の端子110側)の縁から幅方向内側に向かう(電池セル11の端子110側に向かって開口した)スリット36cが形成されている。各スリット36cは、配線部材30cである各導電パターン間の中央に形成されている。
【0079】
本実施形態にかかる電池ユニット1cは、次のように組み立てることができる。複数の電池セル11を並べて、電池スタック10を構成する(第一工程)。また、フレキシブル基板2cに配線部材30cとなる導電パターンを形成する(第二工程)。かかる第一工程と第二工程の順は問わない。第二工程後、フレキシブル基板2cに形成された各配線部材30c(導電パターン)の基板側接続端子部33を基板20(リジッド基板)のランド部21にはんだ付けする(第三工程)。はんだ付け部分にかかる応力を低減するため、フレキシブル基板2cにおけるはんだ付けされる以外の箇所を基板20に接合してもよい。この場合、当該箇所が基板接続部43となる。これにより、基板20・配線部材30cが一体となったユニットが得られる。第三工程を経た後、基板20(リジッド基板)を所定位置に取り付ける(本実施形態では基板支持部12に支持させる)とともに、各配線部材30c(導電パターン)の電池側接続端子部32を電池セル11の各端子110に接続する(第四工程)。つまり、基板20の幅方向一方側に位置する複数の配線部材30c(導電パターン)を第一端子群111に、他方側に位置する配線部材30c(導電パターン)を第二端子群112に接続する。第四工程後、蓋部材50を電池スタック10に固定する(第五工程)。つまり、各引掛片51を対応する引掛突起113に引っ掛ける。この際、配線部材30cは、基板20とともに蓋部材50と電池スタック10の間の空間内に収容する。
【0080】
以上説明した本実施形態にかかる電池ユニット1cは、複数の配線部材30cを、フレキシブル基板2cに形成された導電パターンとする、すなわち、フレキシブル基板2cの基材35c(配線保持部材)によって複数の配線部材30cが一体化された構成であるため、配線部材30c同士が絡まるといった状態となることがなく、配線作業が容易になる。また、上記第一実施形態や第二実施形態のように、複数配線部材30cを配線保持部材40に固定する工程が無くなる(フレキシブル基板2cに導電パターンを形成すればよい)ため、ユニットの製造が容易になる。
【0081】
また、フレキシブル基板2cにおける各配線部材30c(導電パターン)間に、幅方向外側の縁から幅方向内側に向かう(電池セル11の端子110側に向かって開口した)スリット36cが形成されているため、当該スリット36cを形成した分、電池側接続端子部32の動きうる範囲が広がる。よって、電池側接続端子部32を電池セル11の各端子110に接続する作業(第四工程)が容易になる。また、配線部材30cと端子110の接続部分に生ずる応力が低減される。
【0082】
なお、配線部材30c(導電パターン)とランド部21との接続部分に生ずる応力を低減する場合には、フレキシブル基板2cにおける各配線部材30c(導電パターン)間に、幅方向内側の縁から幅方向外側に向かう(基板20側に向かって開口した)スリット36cを形成すればよい。
【0083】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。