(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリエステル繊維が、少なくとも(A)ポリエポキシド化合物、(B)ガラス転移温度(Tg)が−40℃〜10℃であるゴムラテックス、(C)クロロ変性レゾルシンの3種を含む第1処理剤によって被覆され、さらにその外層としてレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(RFL)を含む第2処理剤によって被覆されてなるホース補強用ポリエステル繊維コードであって、かつ、第1処理剤に含まれる(C)クロロ変性レゾルシンが、第1処理剤の固形分100重量%に対して、0.2〜10重量%であること、およびガーレー硬さが5mN〜80mNであることを特徴とするホース補強用ポリエステル繊維コード。
前記第1処理剤に含まれる(B)ゴムラテックスが、第1処理剤の固形分100重量%に対して20〜70重量%であることを特徴とする請求項1に記載のホース補強用ポリエステル繊維コード。
前記第1処理剤に含まれる(A)ポリエポキシド化合物が、第1処理剤の固形分100重量%に対して20〜70重量%である請求項1〜2いずれかに記載のホース補強用ポリエステル繊維コード。
前記第1処理剤に含まれる(A)ポリエポキシド化合物、(B)ゴムラテックス、(C)クロロ変性レゾルシンの3種の合計が、第1処理剤の固形分100重量%に対して85〜100重量%である請求項1〜3いずれかに記載のホース補強用ポリエステル繊維コード。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のホース補強用ポリエステル繊維コード(以下コードと称す)は、自動車用ホース、特に自動車ブレーキホース用途として、産業上実用的なコードを創出すべく、鋭意検討した結果、EPDM系ゴムとの良好な接着性、ホース製造時のコードからの接着剤の脱落の少ない良好な工程通過性、カシメ部での耐液漏れ性を兼ね備えたホース補強用ポリエステル繊維コードを得るに至ったものである。
【0022】
本発明で用いるポリエステル繊維としては、ジカルボン酸とグリコール成分とからなるポリエステルが好ましく挙げられ、特にテレフタール酸とエチレングリコールからなるポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0023】
本発明のホース補強用ポリエステル繊維コードは、高強度、高タフネス、高弾性率、低収縮、高耐疲労性等の優れた機械的特性をおよび高接着性を有するため、本発明で用いるポリエステル繊維は、以下の特性を有することが好ましい。
(1)固有粘度(IV)=0.7〜1.2、より好ましくは0.8〜1.1
(2)カルボキシル末端基(COOH)=10〜30eq/t、より好ましくは12〜25eq/t
(3)ジエチレングリコール(DEG)の含有量=0.5〜1.5重量%、好ましくは0.5〜1.2重量%
(4)強度(T)=6.0〜10.0cN/dtex、より好ましくは7.0〜9.0cN/dtex
(5)伸度(E)=8〜20%、より好ましくは10〜16%
(6)中間伸度(ME)=4.0〜6.5%、より好ましくは4.5〜6.0%
(7)乾熱収縮率(ΔS150℃)=2.0〜12.0%、より好ましくは3.0〜10.0%
【0024】
本発明のホース補強用ポリエステル繊維コードに用いるポリエステル繊維が特に化学的耐久性を有するためには、粘度が高く、カルボキシル末端基が少なく、ジエチレングリコールが少ないことが有利である。
【0025】
本発明で用いるポリエステル繊維は、繊度、フィラメント数、断面形状等の制約を受けないが、通常、200〜5000dtex、30〜1000フィラメント、円断面糸が用いられ、250〜3000dtex、50〜500フィラメント、円断面糸が好ましい。
【0026】
本発明の第1処理剤には、接着性や耐液漏れ性を向上させる観点から、(A)ポリエポキシド化合物を混合することが必要である。
【0027】
本発明において処理剤として使用するポリエポキシド化合物は、一分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を有し、ポリエポキシド化合物100gあたり0.1g当量以上含有する化合物を挙げることができる。具体的には、ペンタエリスリトール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、ソルビトールなどの多価アルコール類とエピクロルヒドリンの如きハロゲン含有エポキシド類との反応生成物、過酸化または過酸化水素などで不飽和化合物を酸化して得られるポリエポキシド化合物、すなわち、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキセンカルボキリレート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチル−シクロヘキシルメチル)アジペート、フェノールノボラック型、ハイドロキノン型、ビフェニル型、ビスフェノールS型、臭素化ノボラック型、キシレン変性ノボラック型、フェノールグリオキザール型、トリスオキシフェニルメタン型、トリスフェノールPA型、ビスフェノール型のポリエポキシド等の芳香族ポリエポキシド等が挙げられる。特に好ましいのは、ソルビトールグリシジルエーテル型やクレゾールノボラック型のポリエポキシドである。
【0028】
第1処理剤の全固形分100重量%に対して、(A)ポリエポキシド化合物は20〜70重量%含むことが好ましく、35〜65重量%含むことがより好ましい。20重量%より少ないと接着力や耐液漏れ性および工程通過性が低下する可能性があり、70重量%より多いとやはり接着力や耐液漏れ性が低下する可能性や耐疲労性が低下する可能性がある。
【0029】
本発明の第1処理剤には、接着性や耐液漏れ性を向上させる観点から、(B)Tgが−40℃〜10℃であるゴムラテックスを混合することが必要であり、好ましくは−30℃〜0℃である。Tgが−40℃未満だと工程通過性が悪化する可能性が有り、10℃を超えると耐BF性が悪化する可能性がある。
【0030】
本発明において処理剤として使用するゴムラテックスとしては、天然ゴムラテックス、スチレン−ブタジエンゴムラテックス、アクリロニトリル−ブタジエンゴムラテックス、クロロプレンゴムラテックスおよびビニルピリジン−スチレン−ブタジエンゴムラテックス、ポリブタジエンラテックス、エチレン−プロピレン−非共役ジエン系三元共重合体ゴムラテックスなどが挙げられ、これらを単独または混合して使用することができる。より好ましくはスチレン−ブタジエンゴムラテックス、アクリロニトリル−ブタジエンゴムラテックス、およびビニルピリジン−スチレン−ブタジエンゴムラテックスが挙げられ、さらに好ましくは、アクリロニトリル−ブタジエンゴムラテックスが挙げられる。
【0031】
第1処理剤の全固形分100重量%に対して、(B)ゴムラテックスは20〜70重量%含むことが好ましく、35〜65重量%含むことがより好ましい。20重量%より少ないと接着力や耐液漏れ性が低下する可能性があり、70重量%より多いとやはり接着力や耐液漏れ性が低下する可能性がある。
【0032】
本発明の第1処理剤には、接着性や工程通過性を向上させる観点から、(C)クロロ変性レゾルシンを混合することが必要である。本発明で用いるクロロ変性レゾルシンとは、下記一般式で表される化合物である。
【0034】
ただし、式中のWはCH
2、またはS、S−Sを、X、Yの少なくとも一部はClを示し、残りはBr、I、H、OHおよびC
1〜C
6のアルキル基から選ばれた基を示し、mは1〜15の整数である。なお上記式の少なくとも一部にレゾルシン骨格を含むものとする。上記式で示されるクロロ変性レゾルシンは、ハロゲン化フェノール化合物とホルムアルデヒド、任意成分としてその他のフェノール化合物との初期縮合物、硫黄変性レゾルシンとホルムアルデヒド、任意成分としてその他のフェノール化合物との初期縮合物またはハロゲン化硫黄変性レゾルシンとホルムアルデヒド、任意成分としてその他のフェノール化合物との初期縮合物であり、原料の少なくとも一部に塩素の置換基を有する原料、レゾルシン骨格を有する原料を用いて得られる(1種の原料において塩素の置換基とレゾルシン骨格を有していてもよい)ものである。
【0035】
これらクロロ変性レゾルシンの調整方法は特に限定されないが、例えば、塩素の置換基を有するハロゲン化フェノールとして、パラクロロフェノール、オルソクロロフェノールなどが出発原料として挙げられ、なかでもパラクロロフェノールが好ましく挙げられる。これらの他、パラブロモフェノール、パラヨウドフェノール、レゾルシン、オルソクレゾール、パラクレゾール、パラターシャルブチルフェノールおよび2,5−ジメチルフェノールなどを出発原料として併用することが好ましく、なかでもレゾルシン、パラブロモフェノール、パラクレゾール、およびパラターシャルブチルフェノールがより好ましく、特にレゾルシンを併用することが好ましい。
【0036】
このような出発原料をアルカリ触媒存在下にホルムアルデヒドと縮合させることによって、または、出発原料を予め酸触媒の存在下で反応させ得られた縮合物をアルカリ触媒の存在下でホルムアルデヒドと反応させることによって、クロロ変性レゾルシンを得ることができる。
【0037】
クロロ変性レゾルシンの具体例としては、2,6−ビス(2’,4’−ジヒドロキシ−フェニルメチル)−4−クロロフェノール(トーマスワン(株)製“カサボンド”、ナガセ化成工業(株)製“デナボンド”など)が挙げられるが、なかでも特にベンゼン核を3以上有するクロロフェノール化合物を主成分とするものが接着性および工程通過性の点から好ましく用いられる。
【0038】
第1処理剤の全固形分100重量%に対して、(C)クロロ変性レゾルシンは、0.2〜10重量%含むことが必要である。0.2重量%より少ないと接着性や工程通過性が低下する可能性があり、10重量%より多いと耐液漏れ性や工程通過性が低下する可能性がある。また、(C)クロロ変性レゾルシンの好ましい配合量は、第1処理剤の全固形分100重量%に対して0.5〜5重量%である。
【0039】
本発明の第1処理剤に含まれる(A)ポリエポキシド化合物、(B)ゴムラテックス、(C)クロロ変性レゾルシンの3種の合計は、工程通過性や耐液漏れ性の観点から第1処理剤の固形分100重量%に対して85〜100重量%であることが好ましく、より好ましくは90〜100%である。
【0040】
本発明の第1処理剤には、接着性を向上させる観点から、ブロックドポリイソシアネートが混合されていても良い。
【0041】
その場合用いられるブロックドイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、メタフェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアンネート等のポリイソシアネート化合物とフェノール、クレゾール、レゾルシン等のフェノール類、ε−カプロラクタム、バレロラクタム等のラクタム類、アセトキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサンオキシム等のオキシム類およびエチレンイミン等のブロック化剤との反応物が用いられ、加熱によりブロック剤が遊離して活性なイソシアネート化合物を生じるものである。これらに化合物のうち、特にメチルエチルケトオキシムでブロックされた芳香族ポリイソシアネート化合物、およびジフェニルメタンジイソシアネートの芳香族化合物が特に好ましく使用される。
【0042】
また、本発明で使用することのできるブロックドイソシアネートは、接着性や耐疲労性の観点からポリイソチアネート化合物とブロック化剤との解離温度が120℃〜180℃であることが好ましく、より好ましくは150℃〜170℃である。
【0043】
第1処理剤の全固形分100重量%に対して、本発明で使用することのできるブロックドポリイソシアネート化合物は耐疲労性の観点から0〜15重量%の配合にするのが良く、特に0〜10重量%とするのがよい。
【0044】
本発明のホース補強用コードは、第1処理剤塗布および熱処理後に第2処理剤としてレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(RFL)を塗布する必要がある。
【0045】
ここで、レゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックスとは、レゾルシンとホルムアルデヒドの初期縮合物とゴムラテックスの混合物である。レゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物とは、アルカリ触媒または酸触媒の存在下で、レゾルシンとホルムアルデヒドを縮合させたものであって、接着性の観点からレゾルシン(R)とホルムアルデヒド(F)のモル比が1/0.5〜1/3であることが好ましい。より好ましくは、1/1〜1/3の範囲である。
【0046】
さらには、レゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物として、あらかじめジヒドロキシベンゼンとホルムアルデヒドとを無触媒または酸性触媒の下で反応させて得られるノボラック型の樹脂を用いることもできる。具体的には、例えば、レゾルシン1モルに対してホルムアルデヒド0.7モル以下とで縮合した化合物(例えば、商品名“スミカノール700”登録商標、住友化学(株)製)である。レゾルシンとホルムアルデヒドのノボラック型縮合物を使用するに際しては、アルカリ触媒水分散液に溶解後、ホルムアルデヒドを添加し、レゾルシンとホルムアルデヒドのモル比を1/0.5〜1/3、なかでも1/1〜1/3に調整することが好ましい。ここで使用するアルカリ触媒としては、アルカリ金属水酸化物であり、好ましくは、水酸化ナトリウムなどが挙げられる。アルカリ触媒水分散液の濃度は1〜10モル濃度程度でよい。
【0047】
レゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックスで使用されるゴムラテックスとしては、天然ゴムラテックス、スチレン−ブタジエンゴムラテックス、アクリロニトリル−ブタジエンゴムラテックス、クロロプレンゴムラテックスおよびビニルピリジン−スチレン−ブタジエンゴムラテックス、エチレン−プロピレン−非共役ジエン系三元共重合体ゴムラテックスなどが挙げられ、これらを単独または混合して使用することができるが、耐熱性および接着性の点から、ゴムラテックス固形分100重量%のうち、ビニルピリジンースチレンーブタジエン三元共重合体ゴムラテックスが10重量%以上を占めるゴムラテックスが好ましく、10〜70重量%が好ましい。
【0048】
本発明の第1処理剤の固形分濃度は工程通過性の観点から10%〜35%が好ましく、より好ましくは15〜30%である。
【0049】
本発明の第2処理剤には、接着性や工程通過性を向上させる観点から、(C)クロロ変性レゾルシンを混合することが好ましい。
【0050】
第2処理剤の全固形分100重量%に対して、(C)クロロ変性レゾルシンは、5〜30重量%含むことが好ましく、5〜25重量%含むことがより好ましい。
【0051】
本発明で使用する処理剤において、レゾルシン(R)とホルマリン(F)の熟成条件は、20〜30℃の条件下、2〜8時間熟成させることが好ましく、より好ましくは5〜7時間である。
【0052】
また、RFLの熟成条件は、接着性の観点から20〜30℃の条件下、14〜48時間であることが好ましく、より好ましくは16〜36時間であるのが良い。
【0053】
本発明の第2処理剤には、接着性を向上させる観点から、ブロックドポリイソシアネートが混合されていても良い。
【0054】
その場合用いられるブロックドイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、メタフェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアンネート等のポリイソシアネート化合物とフェノール、クレゾール、レゾルシン等のフェノール類、ε−カプロラクタム、バレロラクタム等のラクタム類、アセトキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサンオキシム等のオキシム類およびエチレンイミン等のブロック化剤との反応物が用いられ、加熱によりブロック剤が遊離して活性なイソシアネート化合物を生じるものである。これら化合物のうち、特にメチルエチルケトオキシムでブロックされた芳香族ポリイソシアネート化合物、およびジフェニルメタンジイソシアネートの芳香族化合物が特に好ましく使用される。
【0055】
第2処理剤の全固形分100重量%に対して、ブロックドポリイソシアネート化合物は接着性の観点から5〜30重量%含むことが好ましく、5〜20重量%含むことが好ましい。
【0056】
次に、本発明のホース補強用ポリエステル繊維コードの製造方法の概略について説明する。
【0057】
ポリエステル繊維に撚りをかけて、未処理コードとする。ここで、撚り形態は、片撚り、諸撚りいずれでも適用できるが、本発明のホース補強用ポリエステル繊維コードでは、片撚りを施すことが好ましい。また、撚り数は、耐疲労性や工程通過性の観点から5t〜20t/10cmが好ましく、より好ましくは6t〜18t/10cmである。
【0058】
次に、該未処理コードに本発明の処理剤を付与する。本発明で使用する処理剤の総固形分濃度は、5〜30重量%が好ましく、より好ましくは7〜28重量%である。かかる範囲とすると、処理剤が安定性に優れ、ポリエステル繊維にRFL処理剤を均一に塗布することができる。
【0059】
本発明で使用する処理剤をポリエステル繊維に付着させるには、浸漬、ノズル噴霧、ローラーによる塗布などの任意の方法を採用することができる。例えば、リツラー社製コンピュートリーターまたは多錘型コードセッター機を用いて処理することができる。
【0060】
ポリエステル繊維に対する第1処理剤および第2処理剤の付着量は、各々乾燥重量対比で0.5〜6重量%、特に1.5〜5重量%の範囲が好ましく、この範囲とすることで、ゴムとの接着性および工程通過性が良好になる。付着量の制御は例えば、接着剤濃度、接着剤液浸漬後の液除去条件を設定することによって可能である。
【0061】
ポリエステル繊維に第1処理剤および第2処理剤を付与した後の熱処理は、接着性や工程通過性の観点から、各々80〜250℃で0.5〜5分間、より好ましくは0.7〜3分間乾燥または熱処理し、次いで150〜260℃、より好ましくは200℃〜250℃の温度で0.5〜5.0分間、より好ましくは0.7〜3分間熱処理するのが良い。また、コード物性の制御のため、乾燥は0〜3%のストレッチ、熱処理は0〜3%のストレッチをかけた後0〜3%の弛緩を与えながら行うのが良い。
【0062】
本発明のホース補強用ポリエステル繊維コードは、ガーレー硬さが5mN〜80mNである必要があり、好ましくは5mN〜60mNである。ガーレー硬さが5mNを下回るとホース製造の工程通過性が悪化する可能性が有り、80mNを超えると耐液漏れ性が悪化する可能性がある。ガーレー硬さは例えば第1処理剤に含まれるラテックスの重量割合や樹脂付着量を変更すること等で調整可能である。
【0063】
本発明のホース補強用ポリエステル繊維コードは、各種ホース、例えばブレーキホース、エアコンホース、燃料ホース等の自動車ホースの補強用コードとして用いることができる。特にブレーキホース用として好適であり、上糸あるいは下糸として用いることができる。
【0064】
さらに本発明は、少なくともホース補強用ポリエステル繊維コードと接触する部分がエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン系ゴム配合物(EPDM系ゴム)であり、かつ上述したホース補強用ポリエステル繊維コードで補強されてなる自動車ブレーキホースであることが好ましい。
【0065】
本発明のブレーキホースの形状としては、従来から周知のものを適用することができるが、内層ゴムの上に1層または2層以上に補強用繊維を巻き回し、その上に外層ゴムを被覆したものが好ましい。
【0066】
補強用繊維コードの巻き回し方法としては、一方の繊維コードと他方の繊維コードが上下交互に巻き回すブレード方式、一方の繊維コードを巻き回した上から他方の繊維コードを巻き回すスパイラル方式などがあり、補強用繊維コードが互いに密着した形状や、補強用繊維コードが互いに間隔をおいている形状があるが、特に指定はない。
【0067】
ゴムホースの加硫方法としては乾熱下での加硫と水蒸気下での加硫があり、通常、150℃〜160℃で30分〜1時間で行うが、加硫方法、加硫時間および加硫温度などの条件は適宜選択すればよい。
【0068】
本発明のホースにおいては、ホース補強用ポリエステル繊維コードに触れる状態でEPDM系ゴムが配置されていればよく、内層ゴムと外層ゴムの種類が異なっても支障はない。例えば、未加硫のEPDMゴム組成物の内管上に補強用繊維コードを2重に編組し、その上に未加硫のEPDMゴムを被覆したのち、加硫される。
【0069】
本発明の自動車ブレーキホースは、ゴムとコードの接着性が良好であり、かしめ部の耐液漏れ性が良好であることから、ブレーキホースとして実用的な耐疲労性が発現する。
【実施例】
【0070】
以下、実施例により本発明についてさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0071】
また、本発明においてゴム補強用コードの評価方法は、以下に示すとおりである。
【0072】
(1)コード剥離接着力
コードを隙間が無いようにアルミ板に巻き付け、アルミ板の両側に表1に示した配合組成のEPDM系ゴムを張り付け、150℃で30分間プレス加硫を行った。このとき、ゴムの厚さは3mmとし、ゴムと繊維コードの面圧が3MPaとなるように、プレス圧力を調整した。アルミ板の大きさ、繊維コードを巻き付ける面積は任意で構わなく、巻き付け時の張力は0.5cN/dtexとした。放冷後、コードが接着されたゴム側サンプルをアルミ板から取り、更にサンプルを幅20mmに切断した。このサンプルを20℃の環境下で50mm/分の速度で、ゴムと繊維コードが90°の角度になるように保ちながら、ゴムから繊維コードを剥離したときの剥離力をN/20mmで表示した。n数は4とした。
【0073】
【表1】
【0074】
(2)処理剤付着量
JIS L1017(1995年)の質量法によって求めた。
【0075】
(3)工程通過性
繊維コード1本を、
図1に示す金属間走行摩擦試験機にセットし、繊維コードを4000m走行させたときのガイド類へのカスの付着状況を指標とした。ガイド類に付着したカスを収集し、重量を測定した。
図1は金属間走行摩擦試験機であり、測定用の繊維コードサンプル1からコードを20m/minの速度で送り出す。速度は糸送り用のニップローラー2の回転数で調節する。また荷重3を調節して入り側張力測定位置4にて測定した張力が1500gになるようにする。コードは梨地クロムメッキ加工管5で擦過させられ、メッキ管にカスが付着する。その後出側の張力測定ロール6を通り、さらに上側の糸送り用のニップローラー2を通り回収される。
摩擦体:径40mm、表面粗さ12.5Z(JIS−B0601−1994、十点平均粗さ)の梨地クロムメッキ加工管
摩擦体温度:25℃
測定室の温度、湿度:25℃、65%
接触角:180゜
摩擦体入り側の張力T
1 :1000g
糸速:20m/分
n数は2とした。
【0076】
(4)耐液漏れ性
耐液漏れ性はエアーデフュージョン値で評価した。エアーデフュージョン値は次のように測定した。ホース補強用ポリエステル繊維コードをゴム板2枚の間に、2本のコードがクロスするように配置し、160℃で30分間のプレス加硫を行い、コードの長さが5cmの測定用ピースを作成する。該測定用ピースを100℃に設定した空気循環型乾熱炉中に1週間放置し、取り出した後に室温まで放冷する。測定用ピースのコード端面が露出している一方の端面に一定の空気圧をかけられるようにし、他方の端面にコード中を透過してくる空気透過性を水柱の高さ変化から計算できるようにする。空気圧を0.3MPaとし、10分間放置したときの水面の移動距離を求めて、エアーデフュージョン値(AD値)とした。AD値が小さいほど、ホースとしたときの液漏れが少ないことを意味する。ゴムは表1に示す組成のものを使用した。n数は4とした。
【0077】
(5)耐疲労性
100℃の温度条件下で、各ホースに0MPa→9.8MPa→0MPa→9.8MPaと、インパルス圧を負荷させながら、ホースを繰り返し屈曲させるものであり、ホースが破裂、破断した時の屈曲回数を測定した。n数は4とした。
【0078】
(6)ガラス転移温度(Tg)
示差走査熱量計装置(DSC−50:島津製作所製)を用いて測定した。予め、常温にて乾燥させたラテックス10mgを所定のアルミニウム−パンに封入し、−50℃から100℃まで速度5℃/minで昇温し、各ラテックスのガラス転移温度を測定した。
【0079】
(7)ガーレーコード硬さ
処理コードを長さ1mに切り出して、その一端に、金属製フックを結びつけ、他端に300gの重りを結びつけ、温度25℃、相対湿度40%に調節された環境下、空中に24時間吊してコードを鉛直にせしめ、測定試料を得た。
【0080】
これを38.1mm(1.5インチ)に切断して試験片とし、安田精機(株)製の「Gurley’s stiffness tester」でガーレーコード硬さを測定した。
【0081】
図2に「Gurley’s stiffness tester」の斜視図を示す。
【0082】
試験片の取付けおよび測定法は、(ア)試料長さに合わせてチャック21を設定位置に固定させ、試験片22を取付ける。(イ)回転棒23の下部(軸受より下部)に荷重任意設定孔が軸より25.4mm(1インチ)(
図2中のW1)、50.8mm(2インチ)(
図2中のW2)、および101.6mm(4インチ)(
図2中のW3)の位置にあるので試験片22の柔軟性に応じ荷重の重さおよび孔の位置を設定する。この場合、目盛板24に針25が2〜4に指示するように、荷重および孔の位置を選ばなければならない。(ウ)試験片22に見合う設定ができたならば、駆動ボタンを押し、駆動軸を左右に動かし、針が指す目盛板24の数値を0.1単位まで読取る。(エ)1つの試験片22につき、左右1回、試験片10本、計20回の値を求め、1試料の平均値を求める。計算法は、次のとおりである。各測定値の平均値を、次式で計算する。
・ガーレーコード硬さ(mN)=R×{(W1×25.4)+(W2×50.8)+(W3×101.6)}×(L−12.7)
2/W×3.375×10
−5
ただし、
R:測定値の平均値
W1:25.4mmの荷重位置(孔)に掛ける荷重(単位g)
W2:50.8mmの荷重位置(孔)に掛ける荷重(単位g)
W3:101.6mmの荷重位置(孔)に掛ける荷重(単位g)
L :試料長さ(mm)
W :試験片の幅(コードゲージ)(mm)
【0083】
実施例1〜6、比較例1〜4
(A)ポリエポキシド化合物として“デナコール”EX614B(ナガセ化成社製)と、(B)ゴムラテックスと、(C)クロロ変性レゾルシンとして“デナボンドE”(ナガセ化成工業(株)製)と、水酸化ナトリウム、ブロックドポリイソシアネート化合物として“エラストロン”BN27(第一工業製薬株式会社)を固形分で表2に表す割合で混合した固形分濃度25重量%の第1処理剤を調製した。
【0084】
次に第2処理剤を以下の方法で調製した。
【0085】
0.1%苛性ソーダ水溶液に、レゾルシン(R)を添加し十分に攪拌し分散させる。これにホルマリン(F)をR/F比が1/1.5(モル比)になるように添加して均一に混合し、温度25℃で4時間熟成させた。次に、“ニッポール2518FS”(日本ゼオン(株)製、ビニルピリジン・スチレン・ブタジエンゴムラテックス)及び”ニッポールLX−111A”(日本ゼオン(株)製、ポリブタジエンゴムラテックス)を混合したもの(ビニルピリジン・スチレン・ブタジエンゴムラテックス/ポリブタジエンゴムラテックス=50/50(重量比))を、前記レゾルシン・ホルマリン初期縮合物分散液と固形分比率(RF/L比)で1/9の割合で混合し、温度25℃で24時間熟成した。さらに、”デナボンドE”(ナガセ化成工業(株)製、クロロ変性レゾルシン化合物20%溶液)をRFLと固形分比率(RFL/”デナボンドE”)で4/1となるように添加し、十分攪拌して、25℃で20時間熟成した。最終処理液の固形分濃度は13%であった。
【0086】
表2の中のBは以下のゴムラテックスである。
【0087】
B−1:スチレン−ブタジエンゴムラテックス“SR−100”(日本エイアンドエル(株))、Tg=27℃
B−2:スチレン−ブタジエンゴムラテックス“SR−104”(日本エイアンドエル(株))、Tg=7℃
B−3:スチレン−ブタジエンゴムラテックス“SR−107”(日本エイアンドエル(株))、Tg=−15℃
B−4:アクリロニトリル−ブタジエンゴムラテックス“NA−106”(日本エイアンドエル(株))、Tg=−35℃
B−5: ビニルピリジン−スチレン−ブタジエンゴムラテックス“ピラテックス”(日本エイアンドエル(株))、Tg=−55℃
【0088】
一方、製糸工程において、ポリエステル繊維(東レ(株)製、T705M(1670dTex−360f))のマルチフィラメント1本を8t/10cmの片撚りを施して撚糸コードを得た。
【0089】
該未処理コードを、コンピュートリーター処理機(CAリッツラー株式会社製)を用いて前記の第1処理剤に浸漬した後、120℃で1分間乾燥し(ドライ処理)、引き続き240℃で1分間の熱処理(ホット処理)を行った。続いて、第2処理剤に浸漬した後、120℃で1分間乾燥し(ドライ処理)、引き続き240℃で0.5分間熱処理(ホット処理)を行い、さらに、240℃で0.5分間熱処理(ノルマライズ処理)を行った。
【0090】
このようにして得られたコードを上記のように、エアーデフュージョン値、コード剥離接着力および工程通過性を測定した。結果を表2に示す。
【0091】
また、表1に示すEPDMゴム配合物を押出し機で押出して内管とし、その上に上記で得られた処理コードを交差角108度でブレードし、その外側に内管ゴムと同一のEPDMゴム配合物を外管として押出し被覆した。それを長尺巻取成形し、160℃で30分の蒸気缶加硫を行い、内径16mm、外径24mmの補強ゴムホースを作製した。ホースの両端に口金具を装着し、耐疲労性を測定した。結果を表2に示す。
【0092】
【表2】
【0093】
表2に示す評価結果から判るように、本発明によるホース補強用ポリエステル繊維コードは、EPDM系ゴムとの接着性に優れ、かつ工程通過性が良好なコードが得られ、ホース耐疲労性が良好であることがわかる。