特許第6194871号(P6194871)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6194871
(24)【登録日】2017年8月25日
(45)【発行日】2017年9月13日
(54)【発明の名称】コーマにおけるラップ継ぎ装置
(51)【国際特許分類】
   D01G 19/08 20060101AFI20170904BHJP
   D01G 15/42 20060101ALI20170904BHJP
   D01G 23/08 20060101ALI20170904BHJP
【FI】
   D01G19/08
   D01G15/42
   D01G23/08 Z
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-226246(P2014-226246)
(22)【出願日】2014年11月6日
(65)【公開番号】特開2016-89303(P2016-89303A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2016年4月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】薬司 誠
【審査官】 ▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−222234(JP,A)
【文献】 特開平04−257324(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01G 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
満ラップのラップ端や空に近づいたラップボビンの残ラップを吸引し、吸引した前記ラップ端を把持する把持装置を備えた吸引ノズルと、
前記吸引ノズルを、前記ラップ端を吸引する吸引作用位置と、前記満ラップから離れた待機位置とへ移動させる駆動装置とを備え、
前記駆動装置は、前記吸引ノズルの先端と前記満ラップの表面との距離が、コーマの前方側ほど大きい状態で前記ラップ端を吸引するように、前記吸引ノズルを前記吸引作用位置と前記待機位置との間を直線的に移動させることを特徴とするコーマにおけるラップ継ぎ装置。
【請求項2】
前記駆動装置は、前記吸引ノズルをノズル上下用シリンダで直動させる請求項1に記載のコーマにおけるラップ継ぎ装置。
【請求項3】
前記ノズル上下用シリンダは、前記吸引ノズルを斜めに移動するように設けられている請求項2に記載のコーマにおけるラップ継ぎ装置。
【請求項4】
前記把持装置は、ラップ把持用シリンダで駆動される把持部を備え、前記ラップ把持用シリンダは前記ノズル上下用シリンダに支持されている請求項2又は請求項3に記載のコーマにおけるラップ継ぎ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーマにおけるラップ継ぎ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コーマにおいては、使用中(紡出中)のラップボビンのラップ量が少なくなるとラップボビンを満ラップと交換するラップ交換を行い、旧ラップの端部に満ラップの端部を重合して接合するラップ継ぎを行う。このラップ継ぎを自動で行うためには、空に近づいたラップボビンから残ラップを吸引したり、満ラップからラップの端部を吸引して把持した状態でラップを切断したりして各コーミングヘッドにおけるラップ端の位置を揃える必要がある。
【0003】
従来、コーマにおけるラップ継ぎ装置として、満ラップからラップ端を吸引したり、空に近づいたラップボビンから残ラップを吸引したりする吸引ノズルを備えたものが開示されている(特許文献1参照)。図5に示すように、吸引ノズル51は、一対のラップローラ52の後方(図5における右方)において、複数のコーミングヘッドに対して共通に設けられた回転軸53に、基端が一体回転可能に固定された旋回アーム54に支持されている。
【0004】
吸引ノズル51が満ラップFLからラップ端を吸引する吸引作用位置に配置されたときには、吸引ノズル51の先端と満ラップFLの表面との距離は、前側(図5における左側)と後側とでほぼ同じになる。しかし、図5に二点鎖線で示すように、ラップローラ52上の空に近いラップボビンBから残ラップを吸引する吸引作用位置では、吸引ノズル51の先端とラップボビンBの表面との距離は、吸引ノズル51の先端の前側の方が後側に比べて大きくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−257324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の装置のように、吸引ノズル51が満ラップFLからラップ端を吸引する吸引作用位置に配置されたとき、吸引ノズル51の先端と満ラップFLの表面との距離が吸引ノズル51の先端の前側と後側とでほぼ同じ場合、満ラップFLの表面が柔らかいと、ラップが2層まとめて吸引されてしまう場合がある。具体的には、図6に示すように、ラップ端55とラップ端55の内側のラップ層56とがまとめて吸引されてしまう場合がある。これを防止するため、満ラップFLの表面と吸引ノズル51の先端の前側との距離が、満ラップFLの表面と吸引ノズル51の先端の後側との距離より大きくなるように旋回アーム54の旋回中心を変更したり、先端の形状を変更したりすることが考えられる。しかし、その場合、ラップローラ52上の空に近いラップボビンBから残ラップを吸引する吸引作用位置では、吸引ノズル51の先端の前側と残ラップとの距離が、変更前における吸引ノズル51の先端の前側と残ラップとの距離よりさらに大きくなり、残ラップの吸引に支障を来す。
【0007】
また、吸引ノズル51が旋回アーム54に支持された構成では、満ラップFLに対して吸引ノズル51を位置決めする場合、吸引ノズル51の高さだけでなく、旋回アーム54の回転軸53に対しての固定角度を調整する必要があり、回転方向と高さ方向の位置決めが必要となり調整が複雑になる。さらに、機台の長手方向に回転軸53を通すため、機台後部のスペースが狭くなる。そのため、吸引ノズル51の位置決め作業がし難い。
【0008】
本発明は、前記の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は吸引ノズルが満ラップからラップ端を吸引する際にラップを2層まとめて吸引する確率が低く、満ラップに対する吸引ノズルの位置決めが容易なコーマにおけるラップ継ぎ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するコーマにおけるラップ継ぎ装置は、満ラップのラップ端や空に近づいたラップボビンの残ラップを吸引し、吸引した前記ラップ端を把持する把持装置を備えた吸引ノズルと、前記吸引ノズルを、前記ラップ端を吸引する吸引作用位置と、前記満ラップから離れた待機位置とへ移動させる駆動装置とを備え、前記駆動装置は、前記吸引ノズルの先端と前記満ラップの表面との距離が、コーマの前方側ほど大きい状態で前記ラップ端を吸引するように、前記吸引ノズルを前記吸引作用位置と前記待機位置との間を直線的に移動させる。
【0010】
この構成によれば、吸引ノズルは、満ラップのラップ端を吸引する吸引作用位置に配置された状態で、吸引ノズルの先端と満ラップの表面との距離が、コーマの前方側ほど大きい状態でラップ端を吸引する。そのため、吸引ノズルの先端の後側がラップ端と対向する状態に配置されると、吸引ノズルの先端の前側は満ラップの表面との距離が大きくなるので、吸引ノズルが満ラップからラップ端を吸引する際にラップを2層まとめて吸引する確率が低くなる。また、吸引ノズルが、空に近づいたラップボビンの残ラップを吸引する吸引作用位置に配置された状態で、吸引ノズルが残ラップを吸引し易い状態になる。また、吸引ノズルは、吸引作用位置と待機位置との間を直線的に移動するため、満ラップに対する吸引ノズルの位置決めが容易になる。
【0011】
前記駆動装置は、前記吸引ノズルをノズル上下用シリンダで直動させることが好ましい。吸引ノズルを待機位置と、待機位置より上方の吸引作用位置とに直線的に移動させる構成としてはリンク機構を用いる構成もあるが、シリンダで直動させる方が、構成が簡単になる。
【0012】
前記ノズル上下用シリンダは、前記吸引ノズルを斜めに移動するように設けられていることが好ましい。ノズル上下用シリンダは、吸引ノズルを満ラップの下方で垂直に上下移動する配置も可能であるが、斜めに移動する配置の方が配置スペースの確保が容易になり、配設位置の自由度が高くなる。
【0013】
前記把持装置は、ラップ把持用シリンダで駆動される把持部を備え、前記ラップ把持用シリンダは前記ノズル上下用シリンダに支持されていることが好ましい。把持装置の把持部をシリンダで駆動する場合、シリンダは吸引ノズルに支持されてもよい。しかし、把持部を駆動するラップ把持用シリンダがノズル上下用シリンダに支持された構成にすれば、吸引ノズルの動作に必要な機能部品を全て一つのアッシー(ACCY)に組み付けることができ、コンパクトになる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、吸引ノズルが満ラップからラップ端を吸引する際にラップを2層まとめて吸引する確率が低く、満ラップに対する吸引ノズルの位置決めが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】ラップ継ぎ装置の一部破断概略側面図。
図2】(a)は吸引ノズルの正面図、(b)は(a)のB−B線における部分切断断面図、(c)は(a)のC−C線における部分切断断面図。
図3】(a)は吸引ノズルが残ラップの吸引作用位置に配置された状態の一部破断概略側面図、(b)は満ラップがラップローラ上に配置され、吸引ノズルがラップ端と対応する状態の一部破断概略側面図。
図4】(a)は吸引ノズルが満ラップのラップ端を吸引する状態の一部破断概略側面図、(b)は吸引したラップ端を把持装置が把持した状態の一部破断概略側面図。
図5】従来技術の模式側面図。
図6】吸引ノズルがラップ端を吸引する状態の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1図4にしたがって説明する。コーマは、一般に、複数個(例えば、8個)のコーミングヘッドを備えており、各コーミングヘッドにラップ継ぎ装置が設けられている。
【0017】
図1に示すように、コーマは、一対のラップローラ11を備え、ラップローラ11の前方にキャリアローラ12及びトップローラ13が配設されている。ラップローラ11の前方とはコーマの前方を意味し、図1においてコーマの前方は左方となり、後方は右方となる。キャリアローラ12は、ラップローラ11と独立して回転駆動可能に設けられている。トップローラ13はキャリアローラ12に対して上側から押圧される作用位置と、作用位置から上方に移動した退避位置とに移動可能に設けられている。トップローラ13は、ラップ交換時のラップ切断のための作業時以外は、退避位置に保持され、ラップは自由にキャリアローラ12上を移動可能になっている。
【0018】
ラップローラ11の下方には、全てのコーミングヘッドに共通の支持ビーム14が機台の長手方向(図1の紙面と垂直方向)に沿って延びる状態で設けられている。ラップローラ11上に載置された満ラップFLのラップ端や空に近づいたラップボビンBの残ラップを吸引する吸引ノズル15は、支持ビーム14上に設けられている。吸引ノズル15は、図示しないホースを介して図示しない負圧源に接続されている。吸引ノズル15は、吸引したラップ端を把持する把持装置16を備えている。
【0019】
ラップ継ぎ装置は、吸引ノズル15を、ラップ端を吸引する吸引作用位置と、満ラップFLから離れた待機位置とへ移動させる駆動装置17を備えている。駆動装置17は、吸引ノズル15の先端と満ラップFLの表面との距離が、コーマの前方側(図1の左側)ほど大きい状態でラップ端を吸引するように、吸引ノズル15を吸引作用位置と待機位置との間を直線的に移動させる。即ち、図1に示すように、吸引ノズル15が吸引作用位置に配置された状態では、吸引ノズル15の先端の前側と満ラップFLの表面との距離Dfが最大で、吸引ノズル15の先端の後側と満ラップFLの表面との距離Drが最小になる。この実施形態では駆動装置17は、ノズル上下用シリンダ18で構成され、吸引ノズル15を直動させる。
【0020】
ノズル上下用シリンダ18は、吸引ノズル15を斜めに移動するように設けられている。また、この実施形態では、吸引ノズル15の待機位置は、吸引ノズル15がラップボビンBの残ラップを吸引する位置と同じに設定されている。
【0021】
次に駆動装置17即ちノズル上下用シリンダ18と吸引ノズル15との関係を詳述する。図1に示すように、吸引ノズル15は、支持ビーム14の上面に固定された支持バー19に対して、ノズル上下用シリンダ18を含む駆動アッシー20を介して取り付けられている。駆動アッシー20は、支持バー19にボルト21を介して固定される側面L字状のブラケット22に対して、シリンダフレーム23がボルト24a及びナット24bを介して固定されている。シリンダフレーム23は側面が略C字状に形成されている。
【0022】
図2(a)〜(c)に示すように、シリンダフレーム23にはガイドロッド25が固定されている。図2(a)に示すように、ガイドロッド25は、ノズル上下用シリンダ18の両側に設けられている。
【0023】
ノズル上下用シリンダ18は、前側(図2(b)、(c)の左側)に支持部18aが突設され、左右両側(図2(a)の左右両側)に取付け部18bが突設されている。図2(a)に示すように、ノズル上下用シリンダ18は、吸引ノズル15に突設された左右一対のブラケット26にそれぞれ取付け部18bにおいて、ボルト26aにより固定されている。各取付け部18bには、それぞれアジャストボルト27が設けられている。アジャストボルト27は、その突出量を変更してシリンダフレーム23と係合する位置を調整することにより、ノズル上下用シリンダ18のストロークを調整可能になっている。
【0024】
ノズル上下用シリンダ18の支持部18aには、ラップ把持用シリンダ28の基端がピン29を介して回動可能に支持されている。把持装置16は、ラップ把持用シリンダ28で駆動される把持部30を備えている。図2(b),(c)に示すように、把持部30は、吸引ノズル15の先端部の前側に設けられ、ノズル本体15aと別体に形成されるとともに、ゴム製の板材31を介してノズル本体15aに、基端において取り付けられている。把持部30の先端側にはゴム製の押圧部32が吸引ノズル15の幅方向全長にわたって延びるように固定されている。吸引ノズル15の先端部の後側には、把持部30が把持位置に配置されたときに、押圧部32と共同してラップを把持する凹部33が、吸引ノズル15の幅方向に延びるように形成されている。図2(a)に示すように、把持部30の前側面の幅方向中央には連結用突部34が形成され、連結用突部34はラップ把持用シリンダ28のピストンロッド28aの先端にピン35を介して連結されている。
【0025】
図1に示すように、ラップ継ぎ装置は、ラップローラ11上に載置された満ラップFLの端部を、満ラップFLから気流により剥がす剥離装置40を備えている。剥離装置40は、基端がラップローラ11の回動中心を中心として回動可能に設けられた一対の旋回アーム41と、旋回アーム41の先端側に支持されたノズル42と、ノズル42から噴射される圧縮空気を案内する案内板43とを備えている。
【0026】
旋回アーム41は、ラップローラ11と関わりなく回動可能に設けられている。旋回アーム41は、図1に鎖線で示すように、案内板43が前側のラップローラ11と満ラップFLとの共通接線とほぼ平行に延びる上昇位置と、図1に実線で示すように、案内板43がキャリアローラ12とトップローラ13との共通接線とほぼ平行に延びる下降位置(待機位置)とに旋回可能になっている。
【0027】
次に前記のように構成された装置の作用を説明する。
コーマの運転によりラップボビンBのラップ量が予め設定された値まで少なくなった時点でコーマの運転が停止されてラップ交換が行われる。
【0028】
ラップ交換時には、ラップローラ11上に載置されたラップボビンBからキャリアローラ12を経てニッパ装置へ繋がるラップは、キャリアローラ12及びトップローラ13に把持された状態で、そのニップ点と前側のラップローラ11との間で切断される。そして、ラップボビンBの残ラップが吸引ノズル15により吸引除去される。
【0029】
ラップ交換のためにコーマが停止された状態では、吸引ノズル15は待機位置に配置されている。この状態では、図3(a)に示すように、吸引ノズル15は、その先端部のほぼ全体がラップボビンBの表面に近接した状態になっている。そして、ラップボビンBからキャリアローラ12を経てニッパ装置へ繋がるラップの切断が完了すると、吸引ノズル15に負圧源の負圧が作用する状態となり、ラップローラ11が正転されて、ラップボビンBが矢印方向に回転される状態でラップボビンBの残ラップが吸引除去される。従来技術と異なり、吸引ノズル15の先端のほぼ全体がラップボビンBの表面に近い位置となるため、残ラップの吸引が良好に行われる。
【0030】
ラップボビンBの残ラップが吸引除去され、ラップボビンBがラップローラ11上から排出された後、ラップローラ11の回転が停止された状態でラップローラ11上に満ラップFLが載置される。満ラップFLがラップローラ11上に載置された後、ラップローラ11が正転される。また、ノズル上下用シリンダ18が作動される。ノズル上下用シリンダ18は、吸引ノズル15の前面に当接する状態で固定されており、ピストンロッド18cの先端がシリンダフレーム23の下部に固定されているため、ノズル上下用シリンダ18が作動されると、吸引ノズル15は待機位置から吸引作用位置へ直動する。
【0031】
そして、図3(b)に示すように、満ラップFLのラップ端Leが、吸引作用位置に配置された吸引ノズル15の先端と対応する位置でラップローラ11が停止される。この状態では、吸引ノズル15の先端は、全体がラップ端Leと対向する状態ではなく、後部側がラップ端Leと対向する状態になる。即ち、吸引ノズル15の先端は、満ラップFLの表面との距離が、コーマの前方側ほど大きい状態で満ラップFLと対向する状態となり、吸引ノズル15が満ラップFLからラップ端Leを吸引する際にラップを2層まとめて吸引する確率が低くなる。
【0032】
次に、その状態で吸引ノズル15の吸引動作が開始されるとともに、ラップローラ11が正転され、図4(a)に示すように、満ラップFLのラップ端Leが吸引ノズル15で吸引されつつラップローラ11が正転される。ラップ端Leが凹部33と対応する位置を通過した後、ラップローラ11が停止されるとともにラップ把持用シリンダ28が作動されて、図4(b)に示すように、ラップ端Leが把持装置16により把持される。
【0033】
その後、ラップローラ11が逆転駆動されてラップ端Leが吸引ノズル15と後側のラップローラ11との間で切断される。ラップローラ11は、ラップ端Leが後側のラップローラ11を通り過ぎた後、停止される。また、ラップ把持用シリンダ28が作動されて把持部30が開放位置に配置され、把持されていたラップ端Leの切断端は吸引ノズル15で吸引除去される。
【0034】
次に、ラップローラ11が正転されて満ラップFLが正転されるとともに、剥離装置40が図1に鎖線で示す上昇位置に配置されてノズル42からの圧縮空気の噴射が開始される。そして、満ラップFLのラップ端Leが、剥離装置40のノズル42と対応する位置を通過する時点から、ノズル42から噴射される圧縮空気の作用によりラップ端Leが満ラップFLから剥がされる。剥離装置40は、ノズル42からの圧縮空気の噴射を継続した状態で下降位置まで回動される。剥離装置40の下降位置への回動に伴い、ラップは噴射気流の作用により満ラップFLから剥がされて、案内板43に沿って移動する。そして、剥離装置40が下降位置に配置されてラップの先端が前回紡出されてキャリアローラ12を経てニッパ装置に続くラップの端部に重ねられる。その後、トップローラ13が押圧位置に配置されラップ継ぎ作業が完了する。
【0035】
この実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)ラップ継ぎ装置は、満ラップFLのラップ端Leや空に近づいたラップボビンBの残ラップを吸引し、吸引したラップ端Leを把持する把持装置16を備えた吸引ノズル15と、吸引ノズル15を、ラップ端Leを吸引する吸引作用位置と満ラップFLから離れた待機位置とへ移動させる駆動装置17とを備えている。駆動装置17は、吸引ノズル15の先端と満ラップFLの表面との距離が、コーマの前方側ほど大きい状態でラップ端Leを吸引するように、吸引ノズル15を吸引作用位置と待機位置との間を直線的に移動させる。
【0036】
この構成によれば、吸引ノズル15の先端の後側がラップ端Leと対向する状態に配置されると、吸引ノズル15の先端の前側は満ラップFLの表面との距離が大きくなるので、吸引ノズル15が満ラップFLからラップ端Leを吸引する際にラップを2層まとめて吸引する確率が低くなる。また、吸引ノズル15が、空に近づいたラップボビンBの残ラップを吸引する吸引作用位置に配置された状態で、吸引ノズル15が残ラップを吸引し易い状態になる。また、吸引ノズル15は、吸引作用位置と待機位置との間を直線的に移動するため、満ラップFLに対する吸引ノズル15の位置決めが容易になる。
【0037】
(2)駆動装置17は、吸引ノズル15をノズル上下用シリンダ18で直動させる。吸引ノズル15を待機位置と、待機位置より上方の吸引作用位置とに直線的に移動させる構成としてはリンク機構を用いる構成もあるが、シリンダで直動させる方が、構成が簡単になる。
【0038】
(3)ノズル上下用シリンダ18は、吸引ノズル15を斜めに移動するように設けられている。ノズル上下用シリンダ18は、吸引ノズル15を満ラップFLの下方で垂直に上下移動する配置も可能であるが、斜めに移動する配置の方が配置スペースの確保が容易になり、配設位置の自由度が高くなる。
【0039】
(4)把持装置16は、ラップ把持用シリンダ28で駆動される把持部30を備え、ラップ把持用シリンダ28はノズル上下用シリンダ18に支持されている。把持装置16の把持部30をシリンダで駆動する場合、シリンダは吸引ノズル15に支持されてもよい。しかし、把持部30を駆動するラップ把持用シリンダ28がノズル上下用シリンダ18に支持された構成にすれば、吸引ノズル15の動作に必要な機能部品を全て一つのアッシー(ACCY)に組み付けることができ、コンパクトになる。
【0040】
(5)吸引ノズル15の待機位置は、吸引ノズル15がラップボビンBの残ラップを吸引する位置と同じに設定されている。したがって、コーマの運転が停止されてラップ交換が行われる際、吸引ノズル15は待機位置から移動することなく、ラップボビンBの残ラップを吸引除去することができ、ラップ交換に要する時間を短縮することができる。
【0041】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
○ ラップ把持用シリンダ28はノズル上下用シリンダ18に取り付けられた構成に限らず、吸引ノズル15に取り付けられた構成であってもよい。この場合、ラップ把持用シリンダ28を設ける位置の自由度が大きくなる。
【0042】
○ 吸引ノズル15はノズル上下用シリンダ18によって直動される構成に限らず、例えば、リンク機構により直線的に移動される構成であってもよい。ここで、「直線的に移動される」とは、直動に限らず、移動前後において吸引ノズル15の姿勢は変化しないが、移動経路が一直線でない場合も含む。
【0043】
○ 吸引ノズル15の待機位置は、吸引ノズル15がラップボビンBの残ラップを吸引する位置と同じでなく、例えば、吸引ノズル15がラップボビンBの残ラップを吸引する位置より下方であってもよい。
【0044】
○ 剥離装置40は、基端がラップローラ11の回動中心を中心として回動可能に設けられた一対の旋回アーム41に、ノズル42及び案内板43が支持された構成に限らない。例えば、旋回アーム41の回動中心を、ラップローラ11の回動中心と別の位置としてもよい。
【0045】
以下の技術的思想(発明)は前記実施形態から把握できる。
(1)請求項1の発明において、前記待機位置は、前記吸引ノズルが前記残ラップを吸引する位置と同じに設定されている。
【符号の説明】
【0046】
B…ラップボビン、FL…満ラップ、Le…ラップ端、11…ラップローラ、15…吸引ノズル、16…把持装置、17…駆動装置、18…ノズル上下用シリンダ、28…ラップ把持用シリンダ、30…把持部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6