特許第6194874号(P6194874)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6194874
(24)【登録日】2017年8月25日
(45)【発行日】2017年9月13日
(54)【発明の名称】製鋼用メンテナンスワイパー
(51)【国際特許分類】
   B21B 28/04 20060101AFI20170904BHJP
   B24D 11/00 20060101ALI20170904BHJP
   B21B 27/10 20060101ALI20170904BHJP
【FI】
   B21B28/04 A
   B24D11/00 D
   B24D11/00 Q
   B21B27/10 D
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-247805(P2014-247805)
(22)【出願日】2014年12月8日
(65)【公開番号】特開2016-107303(P2016-107303A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2016年8月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000107619
【氏名又は名称】スターライト工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100163577
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 正人
(72)【発明者】
【氏名】松本 剛
(72)【発明者】
【氏名】西浦 幸一
【審査官】 國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭57−076905(JP,U)
【文献】 特開2004−306175(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2010−0044947(KR,A)
【文献】 実開平02−144201(JP,U)
【文献】 実開昭55−177901(JP,U)
【文献】 特公昭48−032503(JP,B1)
【文献】 登録実用新案第3008286(JP,U)
【文献】 特開平05−111876(JP,A)
【文献】 特開2002−075934(JP,A)
【文献】 特開2006−130607(JP,A)
【文献】 特表2007−510816(JP,A)
【文献】 米国特許第04934444(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 27/00−35/14
B24D 3/00−99/00
Google Scholar
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製鋼用圧延機ロールの冷却水を除去する水切りワイパーに、ロール表面を研磨する研磨機能を備えた製鋼用メンテナンスワイパーであって、砥粒が不織布中に均一に分散された研磨用樹脂積層成形板の表面に、樹脂含浸フェルト若しくは不織布からなる水切りパッド材が積層されたことを特徴とする製鋼用メンテナンスワイパー。
【請求項2】
製鋼用圧延機ロールの冷却水を除去する水切りワイパーに、ロール表面を研磨する研磨機能を備えた製鋼用メンテナンスワイパーであって、織布に熱硬化性樹脂を含浸させたプリプレグを積層した布ベースの熱硬化性樹脂積層板の片面に砥粒が不織布中に均一に分散された研磨用樹脂積層成形板を接着するとともに、該研磨用樹脂積層成形板の表面に、樹脂含浸フェルト若しくは不織布からなる水切りパッド材が積層されたことを特徴とする製鋼用メンテナンスワイパー。
【請求項3】
前記研磨用樹脂積層成形板は、砥粒充填材を不織布に付着させた砥粒付き不織布に、熱硬化性樹脂ワニスを含浸させてプリプレグとし、該プリプレグを複数積層して加圧加熱成形し、前記砥粒が均一に分散されたものである請求項1又は2記載の製鋼用メンテナンスワイパー。
【請求項4】
前記研磨用樹脂積層成形板は、炭化珪素砥粒、アルミナ砥粒の少なくとも1種からなる砥粒充填材を不織布に付着させた砥粒付き不織布に、熱硬化性樹脂ワニスを含浸させてプリプレグとし、ここで前記砥粒付き不織布が60〜90重量%、熱硬化性樹脂ワニスの固形成分が10〜40重量%の配合量であり、前記プリプレグを複数積層して加圧加熱成形したものである請求項3記載の製鋼用メンテナンスワイパー。
【請求項5】
前記研磨用樹脂積層成形板は、前記不織布がポリアミド樹脂で作製され、前記熱硬化性樹脂が、エポキシ類、フェノール類から選ばれる少なくとも1種類以上の樹脂からなり、前記炭化珪素砥粒若しくはアルミナ砥粒の平均粒径が27〜75μmであり、成形板全体に対して、前記不織布が36〜54重量%、前記砥粒充填材が24〜36重量%の配合量である請求項4記載の製鋼用メンテナンスワイパー。
【請求項6】
前記水切りパッド材は、羊毛からなるフェルト又はナイロン繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、メタアラミド繊維の何れかからなる不織布にフェノール樹脂ワニスを含浸させてプリプレグを作製し、それを積層して加圧加熱成形したものである請求項1又は2記載の製鋼用メンテナンスワイパー。
【請求項7】
前記布ベースの熱硬化性樹脂積層板は、織布にフェノール樹脂ワニスを含浸させてプリプレグを作製し、それを積層して加圧加熱成形したものである請求項2記載の製鋼用メンテナンスワイパー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製鋼用メンテナンスワイパーに係わり、更に詳しくは製鋼用圧延機ロールの冷却水を除去する水切りワイパーに、ロール表面を研磨する研磨機能を備えた製鋼用メンテナンスワイパーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、製鋼用圧延機は、圧延鋼板の上下面を一対のワークロールで挟み、その外側から一対のバックアップロールで挟み込む構造であり、これらのロール対が圧延鋼板の送り方向に多数列設されたものである。ワークロールは熱い圧延鋼板と接触するので、温度の上昇を抑制するために冷却水がノズルよりシャワーリングされているが、この冷却水が圧延鋼板にかからないようにするため水切りワイパーが設けられている(特許文献1、2参照)。また、圧延操作中にワークロール表面には、金属溶着物の付着やヒートクラックの発生が避けられず、これらが圧延鋼板に転写すると品質が低下する。また、バックアップロールにも表面に金属屑が付着し、またワークロールとの圧接により微小なクラック、肌荒れ、偏摩耗が生じる。そのため、通常は、ワークロールは傷みが激しいので数時間で交換し、バックアップロールは1ヶ月に1回程度の頻度で交換している。これら圧延ロールの交換には、圧延ラインを停止する必要があり、生産効率を低下させる大きな要因となっている。
【0003】
圧延ロールの交換頻度を下げて生産性を向上させるとともに、圧延鋼板の品質を維持する目的で、圧延ロールの表面劣化の進行を抑制するために、オンライン上で圧延ロールを研磨する装置(ORG)を設置することも多い(特許文献3参照)。つまり、圧延機内にロール研磨装置を設置して、圧延操作中に研磨材をワークロールの外周面に所定の面圧で接触させてワークロールの表面を修正研磨することにより、常に適正なロール形状を保持して、ワークロールの摩耗による障害を解消し、圧延鋼板の品質向上とともに生産性の向上を狙うのである。
【0004】
一方で、圧延機に広く採用されている水切りワイパーは圧延機冷却水の水が圧延鋼板にかかるのを防ぐ作用はあるが、ロール表面を研磨する機能は持たない。特許文献4に記載された圧延ロールのオンラインワイパー装置は、ワークロールの回転方向上流部に向かって水切り機能を有する弾性軟質ワイパーと研磨機能を有する砥粒入り硬質ワイパーを共通のガイドロッドのヘッドに順次配置し、圧力が2段階に設定可能な圧縮空気経路を有するエアシリンダにより、軟質ワイパーと硬質ワイパーを押し付けることで表面研磨効果と水切り効果を使い分けることが可能なシステムである。ここで、軟質ワイパーの面圧はコイルスプリングの弾性力で一定に保たれ、硬質ワイパーの面圧はエアシリンダによるガイドロッドの駆動力で軟質ワイパーの面圧より高い範囲に調整できるようになっている。
【0005】
特許文献3,4に記載の装置は、動力スペースを必要とするため既存設備への組み込みが難しく、設備更新時に導入する必要があり、イニシャルコスト及び操作のためのメンテナンス費用(ランニングコスト)がかかる。何れの技術も水切りワイパーとは別装置となるため、コストが高く、設置スペースの制約も受ける。
従来使われてきた研磨砥粒(レジノイド砥石等)をワイパーと複合化しようとすると、脆性のため加圧成形で一体化できず、また貼り合わせても熱膨張量や吸水寸法変化量の差により剥離してしまう。
【0006】
ところで、従来から研磨砥粒を樹脂中に充填させた樹脂研磨材は各種提供されている。代表的なものとして、積層成形物(繊維強化プラスチック)へ研磨砥粒を充填するには以下の方法がある。積層成形物の材料となるプリプレグは、平織ガラス繊維クロスやカーボン繊維クロス等の基材に、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等を溶液にした樹脂(ワニス)を付着させ作製する。ここで、研磨砥粒を充填する場合は、樹脂の溶液に予め混入・分散しておき、樹脂と共に基材に付着させるのである。例えば、特許文献5には、主として合成繊維を素材とした嵩高不織布基材に、研磨砥粒を含有した熱硬化性樹脂結合剤を含浸し、研磨砥粒を基材に固着して構成した不織布研磨材が記載されている。しかし、この方法は、一定量を超える研磨砥粒を充填すると、研磨砥粒との比重差の影響を受けて溶液内で均質分散して安定させることが困難となり、付着量のムラが発生して充填量の分布のばらつきが生じてしまう。特に比重が重い研磨砥粒では顕著となる。その結果、充填材が過充填となり層間で剥離する等、積層成形物の品質が安定しない。
【0007】
また、特許文献6には、耐熱性樹脂で被覆した不織布の繊維に、熱硬化性樹脂からなる接着剤前駆体を塗布し、その接着剤前駆体の上に砥粒を散布して付着させ、それから接着剤前駆体から有機溶媒や水を蒸発させて乾燥させて不織布研磨材を製造する点が記載されている。そして、砥粒が接着された嵩高の不織布研磨材を複数積層し、それを加圧加熱成形し、高密度化した立体形状の研磨材を製造する点も記載されている。ここで、耐熱性樹脂は、不織布の繊維よりも少なくとも20℃高い融点又は熱分解温度を有する樹脂で、メラミン架橋アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂及びウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である。しかし、この特許文献6に記載のものは、不織布の内部の繊維に至るまで均一に砥粒を付着させることが困難であるので、立体成形物の内部に砥粒を均一に分散させることは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5−310号公報
【特許文献2】特開2002−178011号公報
【特許文献3】実開平7−33402号公報
【特許文献4】特開平5−154517号公報
【特許文献5】特開平6−155310号公報
【特許文献6】特開2007−290061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、製鋼用圧延機ロールの冷却水を除去する水切りワイパーに、圧延操業による圧延機ロール表面の劣化(例えばヒートクラックの発生や金属溶着物の付着)進行を軽減するためのロール表面の研磨機能を備え、既設設備に簡単に取付けることが可能な製鋼用メンテナンスワイパーを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前述の課題解決のために、製鋼用圧延機ロールの冷却水を除去する水切りワイパーに、ロール表面を研磨する研磨機能を備えた製鋼用メンテナンスワイパーであって、砥粒が不織布中に均一に分散された研磨用樹脂積層成形板の表面に、樹脂含浸フェルト若しくは不織布からなる水切りパッド材が積層されたことを特徴とする製鋼用メンテナンスワイパーを構成した(請求項1)。
【0011】
また本発明は、製鋼用圧延機ロールの冷却水を除去する水切りワイパーに、ロール表面を研磨する研磨機能を備えた製鋼用メンテナンスワイパーであって、織布に熱硬化性樹脂を含浸させたプリプレグを積層した布ベースの熱硬化性樹脂積層板の片面に砥粒が不織布中に均一に分散された研磨用樹脂積層成形板を接着するとともに、該研磨用樹脂積層成形板の表面に、樹脂含浸フェルト若しくは不織布からなる水切りパッド材が積層されたことを特徴とする製鋼用メンテナンスワイパーを構成した(請求項2)。
【0012】
ここで、前記研磨用樹脂積層成形板は、砥粒充填材を不織布に付着させた砥粒付き不織布に、熱硬化性樹脂ワニスを含浸させてプリプレグとし、該プリプレグを複数積層して加圧加熱成形し、前記砥粒が均一に分散されたものである(請求項3)。
【0013】
更に具体的には、前記研磨用樹脂積層成形板は、炭化珪素砥粒、アルミナ砥粒の少なくとも1種からなる砥粒充填材を不織布に付着させた砥粒付き不織布に、熱硬化性樹脂ワニスを含浸させてプリプレグとし、ここで前記砥粒付き不織布が60〜90重量%、熱硬化性樹脂ワニスの固形成分が10〜40重量%の配合量であり、前記プリプレグを複数積層して加圧加熱成形したものである(請求項4)。
【0014】
そして、前記研磨用樹脂積層成形板は、前記不織布がポリアミド樹脂で作製され、前記熱硬化性樹脂が、エポキシ類、フェノール類から選ばれる少なくとも1種類以上の樹脂からなり、前記炭化珪素砥粒若しくはアルミナ砥粒の平均粒径が27〜75μmであり、成形板全体に対して、前記不織布が36〜54重量%、前記砥粒充填材が24〜36重量%の配合量であることがより好ましい(請求項5)。
【0015】
また、前記水切りパッド材は、羊毛からなるフェルト又はナイロン繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、メタアラミド繊維の何れかからなる不織布にフェノール樹脂ワニスを含浸させてプリプレグを作製し、それを積層して加圧加熱成形したものである(請求項6)。
【0016】
そして、前記布ベースの熱硬化性樹脂積層板は、織布にフェノール樹脂ワニスを含浸させてプリプレグを作製し、それを積層して加圧加熱成形したものである(請求項7)。
【発明の効果】
【0017】
以上にしてなる請求項1又は2に係る発明の製鋼用メンテナンスワイパーは、製鋼用圧延機ロールの冷却水を除去する水切りワイパーに、ロール表面を研磨する研磨機能を備えた製鋼用メンテナンスワイパーであって、砥粒が不織布中に均一に分散された研磨用樹脂積層成形板の表面に、樹脂含浸フェルト若しくは不織布からなる水切りパッド材が積層されたものであるので、製鋼用圧延機ロールの冷却水の水切り機能と同時に、圧延機ロールの微小なクラック、肌荒れ、偏摩耗を研磨除去するための研磨機能を備え、圧延機ロール表面から金属溶着物やヒートクラックを除去することでロール交換期間を延ばす効果がある。また、従来の水切りワイパーの代わりに設置することができるので設置スペースの制約がなく、イニシャルコストの低減化が可能である。このように、圧延機で標準的に使用されている圧延機ロールの冷却水が圧延鋼板にかかるのを防ぐ水切りワイパーに新規な研磨材を組み合わせることで、操業時のロール回転運動を利用して冷却水を水切りしながら圧延機ロールの表面劣化を研磨除去することができる。そして、水切りワイパーと研磨材の一体化により省スペース、コストダウンを図ることができる。
【0018】
特に、請求項2では、織布に熱硬化性樹脂を含浸させたプリプレグを積層した布ベースの熱硬化性樹脂積層板の片面に砥粒が不織布中に均一に分散された研磨用樹脂積層成形板を接着するとともに、該研磨用樹脂積層成形板の表面に、樹脂含浸フェルト若しくは不織布からなる水切りパッド材が積層されているので、布ベースの熱硬化性樹脂積層板により高い機械的強度が付与される。
【0019】
請求項3によれば、前記研磨用樹脂積層成形板は、砥粒充填材を不織布に付着させた砥粒付き不織布に、熱硬化性樹脂ワニスを含浸させてプリプレグとし、該プリプレグを複数積層して加圧加熱成形し、前記砥粒が均一に分散されたものであるので、圧延機ロールの表面を均一に研磨することができる。
【0020】
請求項4によれば、前記研磨用樹脂積層成形板は、炭化珪素砥粒、アルミナ砥粒の少なくとも1種からなる砥粒充填材を不織布に付着させた砥粒付き不織布に、熱硬化性樹脂ワニスを含浸させてプリプレグとし、ここで前記砥粒付き不織布が60〜90重量%、熱硬化性樹脂ワニスの固形成分が10〜40重量%の配合量であり、前記プリプレグを複数積層して加圧加熱成形したものであるので、従来技術よりも安定した高い研磨効果を発揮する研磨材を提供できるのである。また、従来の織布に接着剤を塗布した上に砥粒を散布し、それを積層して加圧加熱成形する手法、あるいは砥粒を混合した接着剤を織布に塗布し、それを積層して加圧加熱成形する手法に比べて、研磨砥粒を高密度で積層材内部まで全体に均一に分散させることができる。従来のこれらの手法では、研磨砥粒、例えばアルミナを織布に対して20重量%超えて充填すると均質分散が出来なくなるが、本発明では40重量%の充填量においても砥粒充填材を均一に分散した状態を保ち、充填量の過不足無く安定した研磨用樹脂積層成形物を作製することができる。
【0021】
請求項5によれば、前記研磨用樹脂積層成形板は、前記不織布がポリアミド樹脂で作製されているので、研磨用樹脂積層成形物の耐衝撃性等の機械的強度が十分に高くなるとともに、耐摩耗性に優れ、また前記熱硬化性樹脂が、エポキシ類、フェノール類から選ばれる少なくとも1種類以上の樹脂からなるので、研磨時の摺動発熱に耐えることができる研磨用樹脂積層成形物になり、そして前記炭化珪素砥粒若しくはアルミナ砥粒の平均粒径が27〜75μmであり、成形板全体に対して、前記不織布が36〜54重量%、前記砥粒充填材が24〜36重量%の配合量であるので、研磨性能も十分に発揮できるとともに、砥粒を高密度に含有したものとなる。このように、本発明で使用する研磨用樹脂積層成形板は、長時間の圧延操業で生じる摩耗と衝撃による欠けに耐え、かつ一定の研磨効果を有するとともに、熱膨張と吸水による寸法変化量が近似しているため、水切りパッド材と複合化しても剥離する恐れがない。
【0022】
請求項6によれば、前記水切りパッド材は、羊毛からなるフェルト又はナイロン繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、メタアラミド繊維の何れかからなる不織布にフェノール樹脂ワニスを含浸させてプリプレグを作製し、それを積層して加圧加熱成形したものであるので、従来の水切りワイパーと同等の水切り性能を備えている。
【0023】
請求項7によれば、前記布ベースの熱硬化性樹脂積層板は、織布にフェノール樹脂ワニスを含浸させてプリプレグを作製し、それを積層して加圧加熱成形したものであるので、耐衝撃性、曲げ剛性等の機械的特性に優れたものになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の製鋼用メンテナンスワイパーを示し、(a)は研磨用樹脂積層成形板と水切りパッド材の2層構造の製鋼用メンテナンスワイパーの簡略断面図、(b)は布ベースの熱硬化性樹脂積層板と研磨用樹脂積層成形板と水切りパッド材の3層構造の製鋼用メンテナンスワイパーの簡略断面図である。
図2】比較サンプルを示し、(a)は布ベースの熱硬化性樹脂積層板と水切りパッド材の2層構造の従来の水切りワイパーの簡略断面図、(b)は単一素材構造からなるワイパーの簡略断面図である。
図3】摩耗試験機の概念図である。
図4】試験片の摩耗量を算出するための説明図である。
図5】水切り性能を評価するための水透過量試験機の要部を示し、(a)は平面図、(b)は側面図である。
図6】炭化珪素砥粒からなる研磨材を用いた場合において、ロール表面の研磨量を表面粗さ測定機にて測定し、粗さ分布より研磨深さを算出したデータであり、(a)は試験前の表面粗さ曲線、(b)は試験後の表面粗さ曲線である。
図7】炭化珪素砥粒からなる研磨材を用い、面圧を2倍に設定した場合において、ロール表面の研磨量を表面粗さ測定機にて測定し、粗さ分布より研磨深さを算出したデータであり、(a)は試験前の表面粗さ曲線、(b)は試験後の表面粗さ曲線である。
図8】アルミナ砥粒からなる研磨材を用い、面圧を2倍に設定した場合において、ロール表面の研磨量を表面粗さ測定機にて測定し、粗さ分布より研磨深さを算出したデータであり、(a)は試験前の表面粗さ曲線、(b)は試験後の表面粗さ曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、製鋼用圧延機ロールの冷却水を除去する水切りワイパーに、ロール表面を研磨する研磨機能を備えた製鋼用メンテナンスワイパーを提供するものである。第1発明の製鋼用メンテナンスワイパーAは、図1(a)に示すように、砥粒が不織布中に均一に分散された研磨用樹脂積層成形板1の表面に、樹脂含浸フェルト若しくは不織布からなる水切りパッド材2が積層されたことを特徴とするものである。また、第2発明の製鋼用メンテナンスワイパーBは、図1(b)に示すように、布ベースの熱硬化性樹脂積層板3の片面に砥粒が不織布中に均一に分散された研磨用樹脂積層成形板1を接着するとともに、該研磨用樹脂積層成形板1の表面に、樹脂含浸フェルト若しくは不織布からなる水切りパッド材2が積層されたことを特徴とするものである。
【0026】
ここで、前記研磨用樹脂積層成形板1は、砥粒充填材を不織布に付着させた砥粒付き不織布に、熱硬化性樹脂ワニスを含浸させてプリプレグとし、該プリプレグを複数積層して加圧加熱成形して作製する。更に具体的には、前記研磨用樹脂積層成形板1は、炭化珪素(SiC)砥粒、アルミナ(Al)砥粒の少なくとも1種からなる砥粒充填材を不織布に付着させた砥粒付き不織布に、熱硬化性樹脂ワニスを含浸させてプリプレグとし、ここで前記砥粒付き不織布が60〜90重量%、熱硬化性樹脂ワニスの固形成分が10〜40重量%の配合量であり、前記プリプレグを複数積層して加圧加熱成形して作製する。ここで、前記研磨用樹脂積層成形板1は、前記不織布がポリアミド樹脂で作製され、前記熱硬化性樹脂が、エポキシ類、フェノール類から選ばれる少なくとも1種類以上の樹脂からなり、前記炭化珪素砥粒若しくはアルミナ砥粒の平均粒径が27〜75μmであり、成形板全体に対して、前記不織布が36〜54重量%、前記砥粒充填材が24〜36重量%の配合量とする。前述の砥粒付き不織布において、不織布と砥粒充填材の重量比は、60:40である。そして、前記研磨用樹脂積層成形物1は、密度が0.7〜1.5g/cmの範囲になるように成形圧力を調整している。
【0027】
ここで、前記不織布が、ポリアミド樹脂で作製され、前記熱硬化性樹脂が、エポキシ類、フェノール類から選ばれる少なくとも1種類以上の樹脂からなることが好ましい。また、研磨砥粒としては、アルミナ、炭化珪素だけでなく、ダイヤモンド粒、立方晶窒化ホウ素粒を使用することもできる。
【0028】
また、前記水切りパッド材2は、羊毛からなるフェルト又はナイロン繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、メタアラミド繊維の何れかからなる不織布にフェノール樹脂ワニスを含浸させてプリプレグを作製し、それを積層して加圧加熱成形したものである。
【0029】
そして、前記布ベースの熱硬化性樹脂積層板3は、織布にフェノール樹脂ワニスを含浸させてプリプレグを作製し、それを積層して加圧加熱成形したものである。
【0030】
従来の水切りワイパーCは、図2(a)に示すように、布ベースの熱硬化性樹脂積層板3の片面に前記水切りパッド材2を接着した2層構造のものである。尚、図2(b)は、比較のために作製した単一素材構造からなるワイパーDを示している。
【実施例】
【0031】
先ず、本発明に使用する研磨用樹脂積層成形板(研磨材)1の製造方法を以下に示す。原料を準備した後、
1.ワニスの配合作製
2.基材の含浸
3.溶剤除去
4.予備乾燥/硬化
5.加熱成形
6.素材完成
を経て、研磨砥粒が均一分散した樹脂積層成形板を得る。成形物は機械加工して最終的な部品形状になるように形状を整える。
【0032】
更に、各製造工程を詳細に説明する。
【0033】
ここで、使用する原料は、基材、ワニス、溶剤である。
・基材: ポリアミド樹脂繊維の不織布;重量7000g/m±700g
研磨砥粒(充填材)を40重量%含む
・ワニス:レゾール型、若しくはノボラック型のフェノール樹脂
・溶剤: メタノール(一級)
【0034】
1.ワニスの配合作製
メタノールにフェノール樹脂の所定量溶解させたワニスを調製する。調製方法は、以下の通りである。容器に必要量のメタノールを入れて、撹拌機をセットする。次に、速度を100rpm程度で攪拌を開始し、メタノールと同量のノボラック型フェノール樹脂を1kg/minのペースで静かに投入する。そして、速度を200rpmにして30分間撹拌し、樹脂の凝集が無くなった事を確認する。
【0035】
2.研磨基材への含浸
基材(砥粒付き不織布)にフェノール樹脂ワニスを含浸して研磨用樹脂積層成形板の原料であるプリプレグを作製する。プリプレグの配合量は基材が60〜90重量%、フェノール樹脂ワニスが10〜40重量%であり、基材に対してフェノール樹脂ワニスを均一に含浸させる。砥粒付き不織布として、不織布に予め均一に砥粒を付着させたものを用いる。ここで、フェノール樹脂ワニスの塗布量が、10重量%未満で樹脂不足による接着不良が発生し、40重量%を超えると加熱成形時の溶融樹脂の流出が多くなり、基材変形による不良が発生する。好ましくは、プリプレグに対してフェノール樹脂ワニスの塗布量は20〜30重量%である。
【0036】
3.溶剤除去
プリプレグを100℃設定の熱風循環炉におよそ1時間投入して溶剤を除去する。
【0037】
4.予備乾燥/硬化
成形直前にプリプレグを100℃設定の熱風循環炉へ2時間投入して、吸湿した水分を除去するとともに、樹脂の予備硬化処理を行う。
【0038】
5.加熱成形
予備乾燥/硬化処理を行ったプリプレグを複数枚重ね、熱間プレスで成形する。研磨用樹脂積層成形板1の厚さの調整は、プリプレグの積層枚数によって大まかに調整し、微調整は切削加工によって行い、所定の厚さのものを得る。
【0039】
また、フェノール樹脂に代えてエポキシ樹脂を用いる場合には、以下の材料を混合してエポキシ樹脂ワニスを調製する。
エポキシ樹脂・・ビスフェノールA型エポキシ樹脂
硬化剤・・・・・アミン系硬化剤(樹脂に対して当量添加)
溶剤・・・・・・MEK(ワニス調製用)
このエポキシ樹脂ワニスを用いて研磨用樹脂積層成形板を製造する工程は、前述のフェノール樹脂ベースと同様である。
【0040】
次の表1に熱間プレスの成形条件を示す。
【表1】
【0041】
次に、前記水切りパッド材2の製造方法を説明する。前記水切りパッド材2は、不織布にフェノール樹脂ワニスを含浸させてプリプレグを作製し、それを積層して加圧加熱成形して、シート状のものを作製した。前記水切りパッド材2は、本実施例では不織布70重量%、フェノール樹脂30重量%の組成である。
【0042】
最後に、前記布ベースの熱硬化性樹脂積層板3の製造方法を説明する。布ベースの熱硬化性樹脂積層板(フェノール樹脂積層板)3は、綿布を基材とし、バインダーとしてフェノール樹脂を用いたものであり、綿布55重量%、フェノール樹脂45重量%であり、綿布にフェノール樹脂ワニスを塗布してプリプレグを作製し、それを積層して加圧加熱成形して作製した。
【0043】
実施例1の試験片は、図1(a)に示した積層構造であり、研磨用樹脂積層成形板1の片面に水切りパッド材2を接着したものである。実施例2の試験片は、図1(b)に示すように、ベース材としての布ベースの熱硬化性樹脂積層板3に、研磨用樹脂積層成形板1と水切りパッド材2を接着したものである。比較例2の試験片は、図2(a)に示すように、ベース材としての布ベースの熱硬化性樹脂積層板3に水切りパッド材2を接着したものである。比較例1、3、4の試験片は、図2(b)に示すように、研磨用樹脂積層成形板1のみ(比較例1)、布ベースの熱硬化性樹脂積層板3のみ(比較例3)、あるいはレジノイド砥石のみ(比較例4)からなる単一素材構造のものである。
【0044】
実施例1,2及び比較例2の試験片は、各材料を加圧加熱成形して作製したものに接着剤を所定量塗布して貼り合わせて作製した。接着剤は、耐衝撃性、耐水性及び80℃程度の耐熱温度を有するものであれば良い。本実施例では試料片の作製にフェノール樹脂系接着剤を用いた。
【0045】
実施例1,2及び比較例2の研磨用樹脂積層成形板1は、何れもポリアミド樹脂繊維不織布を基材とし、バインダーとしてフェノール樹脂を用い、研磨砥粒(充填材)として炭化珪素砥粒♯320を用いて、ポリアミド樹脂繊維不織布と研磨充填材を重量比で60:40に配合し、フェノール樹脂は成形物全体に対して30重量%を配合したものを用いた(スターライト工業株式会社製 ♯19901)。尚、JISR6001にて規定された砥粒♯320の平均粒径は、40±2.5μmであり、27μm以上となっている。尚、研磨用樹脂積層成形板1の機械的強度は、布ベースの熱硬化性樹脂積層板(フェノール樹脂積層材)3の約60%であるが、十分な厚さを確保し、適当な保持部材に装着すれば、実用に耐え得る機械的強度を備えたものと言える。
【0046】
<研磨性能評価試験>
このように得られた各試験片の研磨性能評価試験を行った。試験方法は、前述の図1及び図2に示す形状に加工した試験片(長さ75mm、幅20mm、厚さ10mm)を、図3の摩耗試験機を用いて表2の試験条件にて試験を行い、摺動後の試験片と相手材ロールの摩耗量を測定する方法である。ここで、摩耗試験機は、図3に示すように、円柱状の相手材ロール4の回転軸を水平にして所定の回転速度で回転させ、該相手材ロール4の周面に対抗する位置に固定した支持台5に一端を上下回動可能に枢支したアーム6の先端に前記試験片7を取付けて、該試験片7の先端部を前記相手材ロール4の周面に上方から接触させ、その接触圧力を前記アーム6の中間に吊り下げた重り8で調節するものである。
【0047】
【表2】
【0048】
前記相手材ロール4は、直径100mm、材質がFC20であり、周面は表面粗さRa=3μmに仕上げられたものである。回転速度は、周速で1000m/minであり、摺動距離が480kmになるまで連続して運転した。試験片と相手側ロールの接触圧力(線圧)は280gf/cmであり、無潤滑である。
(1)ロール摩耗高さ(研磨深さ)
ロール研磨を想定した前述の摩耗試験機で試験を実施し、試験前後のロール表面の研磨量を表面粗さ測定機にて測定し、粗さ分布より摩耗高さを算出したデータを取得した(半径ベース、単位:μm)。このロール摩耗高さにより研磨効果を評価する。
(2)研磨材摩耗量
研磨材摩耗量は、前述の摩耗試験機で試験を実施し、図4に示すように試験前後の試験片(実施例1〜2、比較例1〜4)の摩耗による変化量を体積で示したデータである(単位:mm)。図4の斜線は摩耗部位9を示し、体積が摩耗量である。つまり、摩耗量=A×B×1/2×試験片の幅である。この研磨材摩耗量により耐摩耗性を評価する。
【0049】
<水透過量試験>
図5に示すような水透過量試験機を用いて水切り性能を評価した。水透過量試験機は、前述の摩耗試験機において、試験片7の先端部両側に相手材ロール4の外周面との間を止水するための水漏れ防止シール10,10を取付け、前記試験片7の先端と両水漏れ防止シール10,10及び相手材ロール4の外周面とで形成された窪みに水を1g/minの速度で滴下し、滴下水11が前記試験片7の先端と相手材ロール4の外周面との接触面を通過し、該相手材ロール4の外周面を下方へ伝って落ちる透過水12を容器13で受けて、害容器13に溜まった水量で評価するものである。
【0050】
次の表3に、各試験片についての研磨性能評価試験結果と水透過量試験結果を示す。評価基準は、○:良好、△:やや劣る、×:劣る、の3段階である。尚、比較例4は水切り性能が全くないので、研磨効果や耐摩耗性に優れていると予想できるが、相手材ロール4のダメージが大き過ぎるので摩耗実験は行っていない。
【0051】
【表3】
【0052】
表3の結果が示すように、実施例1,2は研磨効果、耐摩耗性、水切り性能とも「良好」である。一方、比較例1は、研磨用樹脂積層成形板のみからなるので当然に研磨効果、耐摩耗性は「良好」であるが、水切り性能が「やや劣る」という結果になった。また、比較例2は従来の水切りワイパーの構造そのものであるので、水切り性能は「良好」であるが、研磨効果は全くないという結果になった。尚、比較例2の耐摩耗性については、比較的摩耗量が多いが実用に耐えているということで「良好」と判定した。そして、実施例1,2の摩耗量についても、比較例2と同程度であるので、耐摩耗性は「良好」と判定した。また、比較例3は、フェノール樹脂積層材そのものであるので、耐摩耗性は「良好」であるが、研磨効果は全くなく、水切り性能も「やや劣る」という結果になった。総合的に本発明の製鋼用メンテナンスワイパーは、従来の水切りワイパーと同程度の水切り性能を備えるとともに、圧延機ロールを研磨する機能も備え、しかも使用に耐え得る耐久性も備えていることが分かった。
【0053】
本発明の製鋼用メンテナンスワイパーは、水切りワイパーに研磨機能を備えたものであるので、圧延機ロールに対する面圧は、研磨用樹脂積層成形板1と水切りパッド材2で同じになり、水切りワイパーで実施している接触条件で研磨効果が得られることは重要である。そこで、炭化珪素砥粒を用いたものとアルミナ砥粒を用いた研磨用樹脂積層成形板1のみからなる試験片をそれぞれ作製し、先ず炭化珪素砥粒を分散充填させた試験片を用い、表4の試験条件(負荷280gf/cm)で研磨試験を行い、ロール表面の研磨量を表面粗さ測定機にて測定し、粗さ分布より研磨深さを算出したデータを取得した。その結果は図6に示し、(a)は試験前の表面粗さ曲線、(b)は試験後の表面粗さ曲線であり、研磨深さは約5μmであった。次に、負荷のみを2倍の560gf/cmに設定した試験条件で同様の研磨試験を行い、その結果を図7に示す。図7(a)は試験前の表面粗さ曲線、(b)は試験後の表面粗さ曲線であり、研磨深さは約6μmであった。以上より、本発明で使用した研磨用樹脂積層成形板1の研磨性能は、負荷が2倍に変化しても研磨深さは殆ど変化しないこと、つまり接触面圧に依存しないことが分かり、水切り性能を発揮するのに適した接触条件でも十分に研磨効果を発揮できることが確認できた。
【0054】
【表4】
【0055】
図8には、アルミナ砥粒を分散充填させた研磨用樹脂積層成形板1のみからなる試験片を用い、負荷を560gf/cmに設定した試験条件で同様の研磨試験を行った結果を参考として示す。図8は、ロール表面の研磨量を表面粗さ測定機にて測定し、粗さ分布より研磨深さを算出したデータであり、(a)は試験前の表面粗さ曲線、(b)は試験後の表面粗さ曲線である。この場合の研磨深さは約7μmであった。
【0056】
最後に、研磨用樹脂積層成形板1の幾つかの作製例を表5に示し、それぞれの研磨材を用いた研磨試験結果も併せて示している。ここでの試験条件は、表2に記載されたものである。
【0057】
研磨材1〜10は、何れもポリアミド樹脂繊維不織布を基材とし、バインダーとして研磨材1〜6,9,10はフェノール樹脂を用い、研磨材7,8はエポキシ樹脂を用いたものであり、そして研磨砥粒(充填材)として研磨材1〜4,7,9,10は炭化珪素砥粒♯320、研磨材5は炭化珪素砥粒♯220、研磨材6,8はアルミナ砥粒♯320を用いたものである。また、研磨材1〜10は、全てポリアミド樹脂繊維不織布と砥粒充填材を重量比で60:40に配合し、また研磨材1〜8ではフェノール樹脂及びエポキシ樹脂は成形物全体に対してそれぞれ30重量%を配合し、研磨材9ではフェノール樹脂を成形物全体に対して10重量%を配合し、研磨材10ではフェノール樹脂を成形物全体に対して40重量%を配合した。ここで、研磨砥粒の番手は、JISR6001にて規定され、#220(平均粒径75〜45μm)、#320(平均粒径40±2.5μm、最低粒径27μm以上)の2種類を使用している。
【0058】
つまり、研磨材1〜5では、ポリアミド樹脂繊維不織布42重量%、炭化珪素砥粒28重量%、フェノール樹脂30重量%である。実施例6では、ポリアミド樹脂繊維不織布42重量%、アルミナ砥粒28重量%、フェノール樹脂30重量%である。研磨材7では、ポリアミド樹脂繊維不織布42重量%、炭化珪素砥粒28重量%、エポキシ樹脂30重量%である。実施例8では、ポリアミド樹脂繊維不織布42重量%、アルミナ砥粒28重量%、エポキシ樹脂30重量%である。研磨材9では、ポリアミド樹脂繊維不織布54重量%、炭化珪素砥粒36重量%、フェノール樹脂10重量%である。研磨材10では、ポリアミド樹脂繊維不織布36重量%、炭化珪素砥粒24重量%、フェノール樹脂40重量%である。また、研磨材1〜4は、成形圧力を変えて密度に変化を持たせた。
【0059】
表5における評価基準は、効果知見のある組成(研磨材3)の研磨量及び摩耗量の値であり、この良好な研磨材3と比べて、相手側ロールの研磨量及び試験片の摩耗量を比較する。評価は、◎は非常に優れている、○は優れている、△は普通、×は劣っている、である。
【0060】
【表5】
【0061】
この表5の結果から、研磨材1〜10は研磨効果と耐摩耗性を総合的に評価して十分に実用に供することができ、特に研磨材2,3,5は総合的に優れ、次いで研磨材7,8が優れている。研磨材1は研磨効果が少なく、また摩耗量も比較的多い。また、研磨材4,6は、研磨効果に特に優れているが、摩耗量が多くなっている。これらの研磨材は、圧延機ロールとオンライン操作中に長時間接触することを前提として設計されたものであり、十分に実用に耐え得るものである。
【符号の説明】
【0062】
1 研磨用樹脂積層成形板
2 水切りパッド材
3 布ベースの熱硬化性樹脂積層板
4 相手材ロール
5 支持台
6 アーム
7 試験片
8 重り
9 摩耗部位
10 水漏れ防止シール
11 滴下水
12 透過水
13 容器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8