(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6194887
(24)【登録日】2017年8月25日
(45)【発行日】2017年9月13日
(54)【発明の名称】淡水製造方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/44 20060101AFI20170904BHJP
B01D 61/58 20060101ALI20170904BHJP
C02F 1/24 20060101ALI20170904BHJP
C02F 1/52 20060101ALI20170904BHJP
C02F 1/72 20060101ALI20170904BHJP
C02F 1/28 20060101ALI20170904BHJP
B01D 24/02 20060101ALI20170904BHJP
C02F 3/12 20060101ALI20170904BHJP
C02F 9/14 20060101ALI20170904BHJP
C02F 9/08 20060101ALI20170904BHJP
C02F 9/04 20060101ALI20170904BHJP
C02F 9/00 20060101ALI20170904BHJP
【FI】
C02F1/44 H
B01D61/58
C02F1/24 B
C02F1/52 Z
C02F1/72 Z
C02F1/28 A
B01D23/16
C02F3/12 N
C02F9/14
C02F9/08
C02F9/04
C02F9/00
【請求項の数】16
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-530045(P2014-530045)
(86)(22)【出願日】2014年3月19日
(86)【国際出願番号】JP2014057615
(87)【国際公開番号】WO2014148580
(87)【国際公開日】20140925
【審査請求日】2017年1月13日
(31)【優先権主張番号】特願2013-59548(P2013-59548)
(32)【優先日】2013年3月22日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100090343
【弁理士】
【氏名又は名称】濱田 百合子
(74)【代理人】
【識別番号】100129160
【弁理士】
【氏名又は名称】古館 久丹子
(74)【代理人】
【識別番号】100177460
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 智子
(72)【発明者】
【氏名】前田 智宏
(72)【発明者】
【氏名】高畠 寛生
(72)【発明者】
【氏名】谷口 雅英
【審査官】
岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−149100(JP,A)
【文献】
特開2010−207805(JP,A)
【文献】
特許第4933679(JP,B2)
【文献】
国際公開第2011/077815(WO,A1)
【文献】
特許第5929195(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/12
C02F 9/00
C02F 9/04
C02F 9/08
C02F 9/14
C02F 1/44
B01D 61/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水Aを第1の半透膜ユニットで処理して淡水を製造すると共に、前記第1の半透膜ユニットで処理した際に生じる第1の濃縮水Acを、溶質濃度が前記第1の濃縮水Acよりも高い被処理水Bに混合させ、その混合水を第2の半透膜ユニットで処理して淡水を製造する方法であって、
前記第1の濃縮水Acを有機物/微生物除去ユニットに通し、前記第1の濃縮水Acの有機物濃度または微生物濃度を低減するとともに前記被処理水Bと混合する有機物/微生物除去ラインと、
前記第1の濃縮水Acを前記有機物/微生物除去ユニットを経由せずに前記被処理水Bと混合するバイパスラインを有し、
前記有機物/微生物除去ユニットの上流側における前記第1の濃縮水Ac中の有機物濃度または微生物濃度、および、前記第1の半透膜ユニットの供給水の圧力から前記第1の濃縮水Acの圧力を差し引いて算出される前記第1の半透膜ユニットの流入側と非透過側の差圧の変化の少なくとも1つに応じて、前記有機物/微生物除去ユニットへの前記第1の濃縮水Acの通水量を制御する淡水製造方法。
【請求項2】
前記第1の半透膜ユニットの流入側と非透過側の差圧の変化が所定値を超えたときは、前記差圧の変化に応じて前記有機物/微生物除去ユニットへの前記第1の濃縮水Acの通水量を制御し、前記第1の半透膜ユニットの流入側と非透過側の差圧の変化が所定値以下のときは、前記第1の濃縮水Ac中の有機物濃度または微生物濃度に応じて前記有機物/微生物除去ユニットへの前記第1の濃縮水Acの通水量を制御する、請求項1に記載の淡水製造方法。
【請求項3】
前記被処理水Aを、前記第1の半透膜ユニットで処理する前に、前処理ユニットで処理する、請求項1または請求項2に記載の淡水製造方法。
【請求項4】
前記有機物/微生物除去ユニットを構成する処理プロセスが、前記被処理水Aにおける前記前処理ユニットを構成する処理プロセスと少なくとも1つは異なる処理プロセスを含む、請求項3に記載の淡水製造方法。
【請求項5】
前記有機物/微生物除去ユニットの上流側に、前記第1の濃縮水Acを減圧することによって微細気泡を発生させる微細気泡発生ユニットを備え、前記第1の濃縮水Acに微細気泡を発生させる、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の淡水製造方法。
【請求項6】
前記有機物/微生物除去ユニットが、前記第1の濃縮水Acの水圧を利用して分離する加圧ろ過ユニットである、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の淡水製造方法。
【請求項7】
前記第2の半透膜ユニットのろ過材料と同素材のろ過材料を、前記有機物/微生物除去ユニットのろ過材料に使用する、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の淡水製造方法。
【請求項8】
前記有機物/微生物除去ユニットの処理排水と、前記第2の半透膜ユニットの濃縮水を混合し、系外へ放流する、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の淡水製造方法。
【請求項9】
被処理水Aを、溶質濃度が前記被処理水Aよりも高い被処理水Bを混合させ、その混合水を半透膜ユニットで処理して淡水を製造する方法であって、
前記被処理水Aを有機物/微生物除去ユニットに通し、前記被処理水Aの有機物濃度または微生物濃度を低減するとともに前記被処理水Bと混合する有機物/微生物除去ラインと、
前記被処理水Aを前記有機物/微生物除去ユニットを経由せずに前記被処理水Bと混合するバイパスラインを有し、
前記有機物/微生物除去ユニットの上流側における前記被処理水Aの有機物濃度または微生物濃度に応じて、前記有機物/微生物除去ユニットへの前記被処理水Aの通水量を制御する淡水製造方法。
【請求項10】
前記被処理水Aを、前記被処理水Bと混合する前に、前処理ユニットで処理する、請求項9に記載の淡水製造方法。
【請求項11】
前記有機物/微生物除去ユニットを構成する処理プロセスが、前記被処理水Aにおける前記前処理ユニットを構成する処理プロセスと少なくとも1つは異なる処理プロセスを含む、請求項10に記載の淡水製造方法。
【請求項12】
前記半透膜ユニットのろ過材料と同素材のろ過材料を、前記有機物/微生物除去ユニットのろ過材料に使用する、請求項9〜請求項11のいずれか1項に記載の淡水製造方法。
【請求項13】
前記有機物/微生物除去ユニットの処理排水と、前記半透膜ユニットの濃縮水を混合し、系外へ放流する、請求項9〜請求項12のいずれか1項に記載の淡水製造方法。
【請求項14】
前記有機物濃度または微生物濃度が、総有機炭素濃度(TOC)、同化可能有機炭素(AOC)、溶解性有機炭素濃度(DOC)、化学的酸素要求量(COD)、生物学的酸素要求量(BOD)、紫外線吸収量(UV)、透明細胞外高分子粒子(TEP)、アデノシン三リン酸(ATP)、バクテリアカウントおよびクロロフィルからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1〜請求項13のいずれか1項に記載の淡水製造方法。
【請求項15】
前記有機物/微生物除去ユニットが、浮上分離、沈殿分離、ラグーン処理、砂ろ過、精密ろ過、限外ろ過、ナノろ過、凝集処理、酸化処理および吸着処理からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1〜請求項14のいずれか1項に記載の淡水製造方法。
【請求項16】
前記被処理水Bを処理する前処理ユニットを備え、当該前処理ユニットを前記有機物/微生物除去ユニットと兼用する、請求項1〜請求項15のいずれか1項に記載の淡水製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海水と河川水、工場廃水、下廃水やそれら処理水との組合せのような複数種の原水から淡水を製造するための、半透膜ユニットを用いた淡水製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年深刻化してきている水環境の悪化に伴い、これまで以上に水処理技術が重要になってきており、分離膜利用技術が非常に幅広く適用されてきている。
【0003】
水処理で用いられる分離膜はサブマイクロメートルオーダーの細孔をもって分離する精密ろ過膜、さらに小さな限外ろ過膜、ナノオーダーの分離が可能なナノろ過膜、サブナノオーダーの分離が可能な逆浸透膜に大別される。この中でも、ナノろ過膜の小さな細孔を持つものや逆浸透膜は半透膜と呼ばれ、水は透過させるが、溶質は透過しない膜として分類され、特に逆浸透膜は海水やかん水から飲料水に適した淡水を得ることが出来る技術として、特に幅広く適用されている。
【0004】
海水を原水とした半透膜による淡水製造は、蒸発法に比べるとエネルギー的に優れているとはいえ、海水の高い浸透圧に起因する高圧力プロセスであるため、河川水を原水とする上水製造プロセスに比べて必要とするエネルギーは大きい。最近では、海水と河川水、工場廃水や下廃水といった海水よりも低塩濃度な水とを混合し希釈することよって浸透圧を下げ、エネルギーコストを下げるシステムが提案されている(特許文献1参照)。また、工場廃水や下廃水を浄化処理し半透膜で回収再利用するプロセスによって排出される濃縮排水を希釈水として使用することもある(特許文献2〜6参照)。
【0005】
通常、河川水、工場廃水や下廃水を半透膜処理する場合、前処理で除濁してから半透膜に供給されるが、前処理ではBOD(Biological Oxygen Demand:生物学的酸素要求量)成分やCOD(Chemical Oxygen Demand:化学的酸素要求量)成分や高分子多糖類やクロロフィル等の有機物成分や微生物成分を効率良く除去できていないことが多い。よって、有機物成分や微生物成分の多い河川水、工場廃水、下廃水やそれら濃縮排水を混合した希釈海水を半透膜処理するシステムでは、海水と比較すると、半透膜の表面で微生物が繁殖し易く、バイオファウリングが発生することによって、半透膜の性能が低下することが問題となっている。
【0006】
さらに、希釈水として使用する河川水、工場廃水や下廃水の有機物成分や微生物成分は、河川水であれば降雨や季節により変動し、下廃水であれば時間帯や季節により変動し、工場廃水であれば生産量や生産工程等により変動するため、有機物成分や微生物成分が多い期間に採取した希釈水を混合した海水を半透膜処理すると、半透膜の汚染が顕著となることも問題となっている。特に、河川水、工場廃水や下廃水の半透膜濃縮水を希釈水として使用する場合、有機物成分や微生物成分が濃縮され、希釈海水を透過水と濃縮水に分離する半透膜の汚染がより顕著となるので問題となっている。
【0007】
また、河川水、工場廃水や下廃水の半透膜処理において、半透膜表面での微生物繁殖を防止するために、非特許文献1、2のように運転しながら殺菌剤を間欠的もしくは連続的に添加したり、特許文献7のように定期的に水流によって半透膜表面を洗浄するフラッシング洗浄をしたり、特許文献8のように洗浄液を造水時の原水流入の方向とは逆の方向へ流動させて半透膜表面を洗浄する逆流洗浄をしたりすると、半透膜表面から有機物成分や微生物成分を含む汚れが半透膜濃縮水中に剥離し、希釈海水を透過水と濃縮水に分離する半透膜の汚染がより顕著となり、深刻な問題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2011/114967号
【特許文献2】日本国特開2010−207805号公報
【特許文献3】日本国特開2012−16695号公報
【特許文献4】日本国特開2012−16696号公報
【特許文献5】日本国特開2010−149100号公報
【特許文献6】日本国特開2010−149123号公報
【特許文献7】日本国特許第4472050号公報
【特許文献8】日本国特開2012−139614号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】木村拓平ら、”Innovative Biofouling Prevention on Seawater Desalination Reverse Osmosis Membrane,” Proceedings of IDA World Congress, BAH01-048 (2001).
【非特許文献2】Katariina Majamaaら、”Field Trial to Optimize the Use of DBNPA in WRU Application,” Proceedings of IDA World Congress, DB09-076 (2009).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、海水と河川水、工場廃水、下廃水やそれら処理水との組合せのような複数種の原水から淡水を製造するための、半透膜ユニットを用いた淡水製造方法において、海水を希釈するための河川水、工場廃水、下廃水やその濃縮排水中に含まれる有機物や微生物による半透膜の汚染を効率良く防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本発明は次の(1)〜(16)の構成をとる。
(1)被処理水Aを第1の半透膜ユニットで処理して淡水を製造すると共に、前記第1の半透膜ユニットで処理した際に生じる第1の濃縮水Acを、溶質濃度が前記第1の濃縮水Acよりも高い被処理水Bに混合させ、その混合水を第2の半透膜ユニットで処理して淡水を製造する方法であって、前記第1の濃縮水Acを有機物/微生物除去ユニットに通し、前記第1の濃縮水Acの有機物濃度または微生物濃度を低減するとともに前記被処理水Bと混合する有機物/微生物除去ラインと、前記第1の濃縮水Acを前記有機物/微生物除去ユニットを経由せずに前記被処理水Bと混合するバイパスラインを有し、前記有機物/微生物除去ユニットの上流側における前記第1の濃縮水Ac中の有機物濃度または微生物濃度、および、前記第1の半透膜ユニットの供給水の圧力から前記第1の濃縮水Acの圧力を差し引いて算出される前記第1の半透膜ユニットの流入側と非透過側の差圧の変化の少なくとも1つに応じて、前記有機物/微生物除去ユニットへの前記第1の濃縮水Acの通水量を制御する淡水製造方法。
(2)前記第1の半透膜ユニットの流入側と非透過側の差圧の変化が所定値を超えたときは、前記差圧の変化に応じて前記有機物/微生物除去ユニットへの前記第1の濃縮水Acの通水量を制御し、前記第1の半透膜ユニットの流入側と非透過側の差圧の変化が所定値以下のときは、前記第1の濃縮水Ac中の有機物濃度または微生物濃度に応じて前記有機物/微生物除去ユニットへの前記第1の濃縮水Acの通水量を制御する、前記(1)に記載の淡水製造方法。
(3)前記被処理水Aを、前記第1の半透膜ユニットで処理する前に、前処理ユニットで処理する、前記(1)または(2)に記載の淡水製造方法。
(4)前記有機物/微生物除去ユニットを構成する処理プロセスが、前記被処理水Aにおける前記前処理ユニットを構成する処理プロセスと少なくとも1つは異なる処理プロセスを含む、前記(3)に記載の淡水製造方法。
(5)前記有機物/微生物除去ユニットの上流側に、前記第1の濃縮水Acを減圧することによって微細気泡を発生させる微細気泡発生ユニットを備え、前記第1の濃縮水Acに微細気泡を発生させる、前記(1)〜(4)のいずれか1つに記載の淡水製造方法。
(6)前記有機物/微生物除去ユニットが、前記第1の濃縮水Acの水圧を利用して分離する加圧ろ過ユニットである、前記(1)〜(5)のいずれか1つに記載の淡水製造方法。
(7)前記第2の半透膜ユニットのろ過材料と同素材のろ過材料を、前記有機物/微生物除去ユニットのろ過材料に使用する、前記(1)〜(6)のいずれか1つに記載の淡水製造方法。
(8)前記有機物/微生物除去ユニットの処理排水と、前記第2の半透膜ユニットの濃縮水を混合し、系外へ放流する、前記(1)〜(7)のいずれか1つに記載の淡水製造方法。
(9)被処理水Aを、溶質濃度が前記被処理水Aよりも高い被処理水Bを混合させ、その混合水を半透膜ユニットで処理して淡水を製造する方法であって、前記被処理水Aを有機物/微生物除去ユニットに通し、前記被処理水Aの有機物濃度または微生物濃度を低減するとともに前記被処理水Bと混合する有機物/微生物除去ラインと、前記被処理水Aを前記有機物/微生物除去ユニットを経由せずに前記被処理水Bと混合するバイパスラインを有し、前記有機物/微生物除去ユニットの上流側における前記被処理水Aの有機物濃度または微生物濃度に応じて、前記有機物/微生物除去ユニットへの前記被処理水Aの通水量を制御する淡水製造方法。
(10)前記被処理水Aを、前記被処理水Bと混合する前に、前処理ユニットで処理する、前記(9)に記載の淡水製造方法。
(11)前記有機物/微生物除去ユニットを構成する処理プロセスが、前記被処理水Aにおける前記前処理ユニットを構成する処理プロセスと少なくとも1つは異なる処理プロセスを含む、前記(10)に記載の淡水製造方法。
(12)前記半透膜ユニットのろ過材料と同素材のろ過材料を、前記有機物/微生物除去ユニットのろ過材料に使用する、前記(9)〜(11)のいずれか1つに記載の淡水製造方法。
(13)前記有機物/微生物除去ユニットの処理排水と、前記半透膜ユニットの濃縮水を混合し、系外へ放流する、前記(9)〜(12)のいずれか1つに記載の淡水製造方法。
(14)前記有機物濃度または微生物濃度が、総有機炭素濃度(TOC)、同化可能有機炭素(AOC)、溶解性有機炭素濃度(DOC)、化学的酸素要求量(COD)、生物学的酸素要求量(BOD)、紫外線吸収量(UV)、透明細胞外高分子粒子(TEP)、アデノシン三リン酸(ATP)、バクテリアカウントおよびクロロフィルからなる群から選択される少なくとも1つを含む、前記(1)〜(13)のいずれか1つに記載の淡水製造方法。
(15)前記有機物/微生物除去ユニットが、浮上分離、沈殿分離、ラグーン処理、砂ろ過、精密ろ過、限外ろ過、ナノろ過、凝集処理、酸化処理および吸着処理からなる群から選択される少なくとも1つを含む、前記(1)〜(14)のいずれか1つに記載の淡水製造方法。
(16)前記有機物/微生物除去ユニットが、前記被処理水Bの前処理ユニットを兼用する、前記(1)〜(15)のいずれか1つに記載の淡水製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の淡水製造装置によれば、海水と河川水、工場廃水、下廃水やそれら処理水との組合せのような複数種の原水の混合水から淡水を製造するとき、河川水、工場廃水、下廃水やそれら処理水中に含まれる有機物や微生物による混合水を処理する半透膜の汚染を効率良く防止すること可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明に係る、淡水製造方法の実施形態の一例を示すフロー図である。
【
図2】
図2は、本発明に係る、淡水製造方法の別の実施形態の一例を示すフロー図である。
【
図3】
図3は、本発明に係る、淡水製造方法の更に他の実施形態の一例を示すフロー図である。
【
図4】
図4は、本発明に係る、淡水製造方法の更に他の実施形態の一例を示すフロー図である。
【
図5】
図5は、本発明に係る、淡水製造方法の更に他の実施形態の一例を示すフロー図である。
【
図6】
図6は、本発明に係る、淡水製造方法の更に他の実施形態の一例を示すフロー図である。
【
図7】
図7は、本発明に係る、淡水製造方法の更に他の実施形態の一例を示すフロー図である。
【
図8】
図8は、本発明に係る、淡水製造方法の更に他の実施形態の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明するが、本発明はこれら図面に示す実施態様に限定されるものではない。
【0015】
図1は、本発明に係る淡水製造方法の実施形態の一例を示すフロー図である。被処理水Aは、被処理水Aタンク1に貯留された後、被処理水A供給ポンプ2で第1の前処理ユニット3に供給され、濁質除去等の前処理を施された後、第1の前処理水タンク4に一旦貯留されてから、第1の昇圧ポンプ5によって第1の半透膜ユニット6にて処理される。第1の半透膜ユニット6では、被処理水Aを前処理した半透膜被処理水を半透膜の透過成分(透過水)と非透過成分(濃縮水)に分離し、透過水(以下、「第1の透過水Ap」ということがある。)を淡水として第1の透過水タンク7に貯留する。一方、第1の半透膜ユニット6から排出した濃縮水(以下、「第1の濃縮水Ac」という。)は、水質センサー8aを備えた第1の濃縮水タンク9に一旦貯留される。
【0016】
本発明の淡水製造方法は、この水質センサー8aの検出値に応じて、有機物/微生物除去ユニット12への第1の濃縮水Acの通水量を制御する。第1の濃縮水Acの通水量を制御する手段としては、第1の濃縮水供給弁10aと第2の濃縮水供給弁10bを例示することができる。この第1の濃縮水供給弁10aおよび第2の濃縮水供給弁10bの開閉度を調整することにより、第1の濃縮水Acが第1の濃縮水ポンプ11で、有機物/微生物除去ユニット12に流れる通水量および有機物/微生物除去ユニット12をバイパスするバイパスライン13に流れる通水量が制御される。第1の濃縮水Acは、その全量がバイパスライン13を流れてもよいし、或いはその全量が有機物/微生物除去ユニット12に通され処理されてもよい。本発明において、有機物/微生物除去ユニット12およびバイパスライン13への第1の濃縮水Acの通水量は、水質センサー8aの検出値、および/または、後述する圧力センサー21より求められる第1の半透膜ユニット6の流入側と非透過側の差圧の変化に応じて制御される。
【0017】
有機物/微生物除去ユニット12またはバイパスライン13を経由したそれぞれの第1の濃縮水Acは、有機物/微生物除去ユニット12の下流側で合流し、被処理水Bを混合する混合水タンク14で一旦貯留される。
【0018】
なお、被処理水Bは、被処理水Bタンク15に貯留された後、被処理水B供給ポンプ16で第2の前処理ユニット17に供給され、濁質除去等の前処理を施された後、混合水タンク14に供給される。混合水タンク14内の第1の濃縮水Acと被処理水Bからなる混合水を第2の昇圧ポンプ18によって加圧した後、第2の半透膜ユニット19で処理し、第2の半透膜ユニット19の透過水(以下、「第2の透過水Bp」ということがある。)は第2の透過水タンク20に貯留される。なお、第1の透過水タンク7と第2の透過水タンク20の透過水は、必要に応じてpH、ランゲリア指数、殺菌剤濃度、ミネラル濃度を適宜調整した後、使用される。
【0019】
本発明の淡水製造方法が処理対象とする被処理水Aおよび被処理水Bは、浸透圧に影響を与える溶質の濃度が異なれば特に制限はなく、例えば、高濃度である海水や濃縮海水、海水よりも低濃度である河川水、地下水、下廃水、工場廃水やそれらの処理水を用いることができる。処理水としては、ろ過水および濃縮水が例示される。
図1に例示するように、被処理水Aを半透膜ユニットで処理した第1の濃縮水Acを希釈水として用いると、通常系外に排出される濃縮排水を有効活用することができるため、効果的である。一方、
図2と
図3に例示するように、低濃度である被処理水A(例えば、下廃水)を半透膜ユニットで処理せずに、高濃度である被処理水B(例えば、海水)の希釈水として用いることで、設備投資を抑えつつ、容易に希釈海水を調製することができるため、好ましい。
図2と
図3における具体的な通水量の制御方法は、
図2の例では、被処理水Aを第1の前処理ユニット3で処理し、得られた前処理水の水質センサー8bでの検出値に基づき、有機物/微生物除去ユニット12および/またはバイパスライン13を経由させて混合水タンク14に供給し、被処理水Bと混合することができる。また、
図3の例では、被処理水Aの水質を水質センサー8cで検出し、得られた検出値に基づき、有機物/微生物除去ユニット12および/またはバイパスライン13に経由させて混合水タンク14に供給し、被処理水Bと混合することができる。いずれの場合も被処理水Aタンク1に備えた水質センサー8cまたは第1の前処理水タンク4に備えた水質センサー8bの検出値に応じて、有機物/微生物除去ユニットへの被処理水Aまたは被処理水Aの前処理水の通水量を制御することができる。
図2および3において、
図1と共通する符号の説明は省略する。
【0020】
前処理ユニット3は、縣濁物質や有機物を処理できるプロセスであればよく、例えば浮上分離、沈殿分離、ラグーン処理、砂ろ過、精密ろ過、限外ろ過、ナノろ過、凝集処理、酸化処理、吸着処理等を挙げることができ、複数の処理プロセスを直列に組み合わせても構わない。
【0021】
半透膜ユニット6は、小さな細孔を持つナノろ過膜、逆浸透膜等から選ぶことができる。
【0022】
有機物/微生物除去ユニット12は、除去対象物質である微生物やその代謝物、副生成物等からなる有機物成分や微生物成分を低減できる処理プロセスであればよく、例えば浮上分離、沈殿分離、ラグーン処理、砂ろ過、精密ろ過、限外ろ過、ナノろ過、凝集処理、酸化処理、吸着処理等を挙げることができる。有機物/微生物除去ユニット12は、複数の処理プロセスを直列に組み合わせても構わないし、複数の処理プロセスを並列にして、水質センサー8a,8b,8cの検出値に応じて、処理プロセスを切り替えても構わない。
【0023】
有機物/微生物除去ユニット12の除去対象物質は、微生物やその代謝物、副生成物等からなり、その有機物濃度または微生物濃度として、水処理分野で通常使用される水質指標を測定することが好ましい。有機物濃度や微生物濃度の測定に関しては、特に制約はないが、有機物濃度については、TOC(全有機炭素量)、AOC(同化可能有機炭素)、DOC(溶解性有機炭素)、COD(化学的酸素要求量)、BOD(生物学的酸素要求量)等が一般的である。微生物濃度に関しては、TEP(透明細胞外高分子粒子)、バクテリアカウント、ATP(アデノシン三リン酸)、クロロフィル等を適用することができる。
水質センサー8a,8b,8cは前述した有機物濃度や微生物濃度を測定できるものであればよい。また水質センサー8a,8b,8cは、マニュアル測定の測定器でもオンライン測定が可能な測定器でも構わないが、水質センサー8a,8b,8cは、被処理水Aおよび第1の濃縮水Acの水質変化に瞬時に対応できる観点から、オンライン測定の測定器であることが好ましい。
【0024】
また、有機物/微生物除去ユニット12への通水量を制御する手段としては、例えば流量調整の可能な各種バルブ、三方弁を例示することができる。例えば、水質センサー8a,8b,8cがTOC計の場合、第1の濃縮水AcのTOCが5mg/l未満の場合はバイパスライン13への通水量を増加させ、TOCが5mg/l以上の場合は有機物/微生物除去ユニット12への通水量を増加させるように、第1の濃縮水供給弁10aと第2の濃縮水供給弁10bの開閉度を調整することができる。
図1では、第1の濃縮水供給弁10aと第2の濃縮水供給弁10bの開閉度の調整により第1の濃縮水Acの通水量を制御しているが、第1の濃縮水供給弁に三方弁を用いて全量切替しても差し支えない。
【0025】
また、第1の半透膜ユニット6の内部で発生したバイオファウリングは、半透膜表面で過度に増殖したり、水温や水質の変化によってストレスを受けたりして、半透膜表面から有機物成分や微生物成分を含む汚れとして剥離し、第1の濃縮水Ac中に分散し、下流の第2の半透膜ユニット19を汚染する虞がある。また、殺菌剤添加や膜表面洗浄によっても剥離し、第1の濃縮水Acの水質低下を引き起こし、下流の第2の半透膜ユニット19を汚染する虞がある。この場合、バイオファウリング物質が除去(剥離)されたことによって、第1の半透膜ユニット6の供給水の圧力(供給側圧力)から、第1の半透膜ユニット6を透過せずに得られる濃縮水の圧力(非透過側圧力)を差し引いて算出される第1の半透膜ユニット6における非透過側の差圧(流路圧力損失)が低下する。すなわち、第1の半透膜ユニット6の流入側と非透過側の差圧の変化から、第1の濃縮水Acの水質変化を予測することができる。このため第1の半透膜ユニット6の流入側と非透過側の差圧の変化に応じて、第1の濃縮水供給弁10aと第2の濃縮水供給弁10bの開閉度を調整し、有機物/微生物除去ユニット12への第1の濃縮水Acの通水量を制御することができる。
【0026】
第1の半透膜ユニット6の流入側と非透過側の差圧は、
図4に示すように、第1の供給水Afと第1の濃縮水Acの圧力を検知して非透過側の差圧(流路圧力損失)を示す圧力センサー21を配置することによって、測定することができる。なお、半透膜を用いた淡水製造方法において、第1の半透膜ユニットの流入側と非透過側の差圧は、バイオファウリングの形成度合いをモニタリングするための重要なパラメータであって、半透膜を用いた淡水製造装置に半透膜ユニットの流入側と非透過側の差圧を検知する圧力センサーが設置されていることが多く、第1の半透膜ユニットの流入側と非透過側の差圧の変化に応じて、第1の濃縮水供給弁10aと第2の濃縮水供給弁10bの開閉度を制御することで、第1の濃縮水Acの水質変化をモニタリングする水質センサー8aを省くことができ、設備費を抑えることができるため好ましい。
【0027】
第1の半透膜ユニット6の流入側と非透過側の差圧の変化については、例えば前記差圧が10kPa以上低下した場合、すなわち、半透膜表面のバイオフィルムが剥離した場合に、有機物/微生物除去ユニット12への通水量を増加させることが好ましく、20kPa以上低下した場合に、有機物/微生物除去ユニット12への通水量をさらに増加させること、或いは有機物/微生物除去ユニット12へ第1の濃縮水Acの全量を通水することがより好ましい。また、例えば、第1の半透膜ユニット6の被処理水に殺菌剤が添加されている場合は、無添加系と比較し、半透膜ユニット6の流入側と非透過側の差圧の低下が小さい場合でも、有機物/微生物除去ユニット12への通水量を増加させるように、第1の濃縮水供給弁10aと第2の濃縮水供給弁10bの開閉度を調整することができる。
【0028】
本発明の淡水製造方法は、
図1に示すように、水質センサー8aの検出値に応じて、有機物/微生物除去ユニット12への第1の濃縮水Acの通水量を制御するか、
図4に示すように、半透膜ユニット6の第1の供給水Afの圧力から第1の濃縮水Acの圧力を差し引いて算出される半透膜ユニット6の流入側と非透過側の差圧の変化に応じて、有機物/微生物除去ユニット12への第1の濃縮水Acの通水量を制御するか、或いは
図5に示すように、水質センサー8aの検出値および半透膜ユニット6の流入側と非透過側の差圧の変化に応じて、有機物/微生物除去ユニット12への第1の濃縮水Acの通水量を制御することができる。
【0029】
図5に示した淡水製造方法では、上記の通り水質センサーおよび圧力センサーの両方の検出値に基づき、第1の濃縮水Acの有機物/微生物除去ユニット12への通水量を制御することができる。水質センサー8aおよび圧力センサー21を同時に使用することができる。このとき、圧力センサー21で検出された第1の半透膜ユニットの流入側と非透過側の差圧の変化を優先して有機物/微生物除去ユニットへの通水量を制御することができる。例えば前記差圧の変化が10kPa未満のときは水質センサー8aの検出値、前記差圧の変化が10kPa以上のときは圧力センサーの検出値、に応じて有機物/微生物除去ユニットへの第1の濃縮水Acの通水量を制御することができる。
【0030】
なお、第1の濃縮水Ac中の有機物や微生物は、第1の前処理ユニット3では除去しきれなかった有機物や微生物も含まれることから、有機物/微生物除去ユニット12は第1の前処理ユニット3と少なくとも1つは異なる処理プロセスを含んでいることが好ましい。例えば、第1の前処理ユニット3が砂ろ過や精密ろ過、限外ろ過等の膜ろ過といった固液分離の場合は、有機物/微生物除去ユニット12でオゾンや生物処理といった酸化処理を行い、固液分離では除去できなかった有機物や微生物を分解除去してもよいし、凝集剤や吸着剤を添加して有機物や微生物を除去してもよい。例えば
図1に示すように、有機物/微生物除去ユニット12の上流側に、凝集剤タンクあるいは吸着剤タンク22aおよび凝集剤添加ポンプあるいは吸着剤添加ポンプ23aを配置することにより、第1の濃縮水Acに凝集剤や吸着剤を添加して有機物や微生物を分解除去することができる。
【0031】
さらに、有機物/微生物除去ユニット12の設備費削減の観点から、
図6に例示するように、被処理水Bを処理する第2の前処理ユニット17を有機物/微生物除去ユニットとして兼用することが好ましい。
図6において、被処理水Aは、被処理水Aタンク1に貯留された後、被処理水A供給ポンプ2で第1の前処理ユニット3に供給し、前処理を施された後、第1の前処理水タンク4に一旦貯留されてから、第1の昇圧ポンプ5によって第1の半透膜ユニット6にて処理される。第1の半透膜ユニット6では、半透膜の透過水Apを淡水として第1の透過水タンク7に貯留する。一方、第1の半透膜ユニット6から排出された第1の濃縮水Acは、水質センサー8を備えた配管に流れ出す。
図7の例では、第1の濃縮水タンクおよび第1の濃縮水ポンプを配置しておらず第1の濃縮水Acがもつ圧力により、水質センサー8の検出値に応じ、第1の濃縮水供給弁10aと第2の濃縮水供給弁10bの開閉度が調整され、第2の前処理ユニット17または被処理水Bを混合する混合水タンク14に供給される。ここで第2の前処理ユニット17の上流側に、凝集剤タンクあるいは吸着剤タンク22bおよび凝集剤添加ポンプあるいは吸着剤添加ポンプ23bを配置することにより、第1の濃縮水Acに凝集剤や吸着剤を添加して有機物や微生物を分解除去することができる。また被処理水Bは、被処理水Bタンク15に貯留された後、被処理水B供給ポンプ16で第2の前処理ユニット17に供給し、上述した第1の濃縮水Acの少なくとも一部と共に前処理を施された後、混合水タンク14に供給される。混合水タンク14内の第1の濃縮水Acと被処理水Bからなる混合水を第2の昇圧ポンプ18によって加圧した後、第2の半透膜ユニット19で処理し、第2の半透膜ユニット19の透過水(第2の透過水Bp)は第2の透過水タンク20に貯留される。
【0032】
本発明の淡水製造方法において、有機物/微生物除去ユニットは、好ましくは浮上分離、沈殿分離、ラグーン処理、砂ろ過、精密ろ過、限外ろ過、ナノろ過、凝集処理、酸化処理および吸着処理からなる群から選択される少なくとも1つを含む処理ユニットである。このうち、浮上分離については、軽質油分や界面活性剤が多い場合に適しており、マイクロバブルやナノバブルといった微細気泡を加圧導入する加圧浮上分離が効果的である。微細気泡は圧縮空気を吹き込み発生させてもよく、加圧水を急減圧して発生させてもよい。さらに、広大な敷地を確保できるのであれば、上層部で好気性処理が、下層部で嫌気性処理が同時に行われるラグーン処理が、第1の濃縮水Ac中の有機物や微生物を無動力で低減できるので好ましい。ラグーン処理では、通常1.2〜2.5mの水深を有する貯留池で、5〜30日間程度滞留させることが好ましい。
【0033】
砂ろ過の場合は、自然に流下する方式の重力式ろ過を適用することも可能であり、加圧タンクの中に砂を充填した加圧式ろ過を適用することも可能である。充填する砂も、単一成分の砂を適用することが可能であるが、例えば、アンスラサイト、珪砂、ガーネット、軽石等を組み合わせて、ろ過効率を高めることが可能である。また、第1の濃縮水Acを透水層に通水し、地中に存在する光合成菌、酵母菌、乳酸菌、糸状菌、放線菌等からなる嫌気性および好気性の有用微生物の浄化分解機能を利用して、第1の濃縮水Acの有機物濃度または微生物濃度を低減させ、その後、地中の帯水層に貯まったものを希釈水としても構わない。
【0034】
精密ろ過膜や限外ろ過膜については、特に制約はなく、平膜、中空糸膜、管状型膜、プリーツ型、その他いかなる形状のものも適宜用いることができる。膜の素材についても、特に限定されるものではなく、ポリアクリロニトリル、ポリフェニレンスルフォン、ポリフェニレンスルフィドスルフォン、ポリフッ化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスルホン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルアルコール、酢酸セルロース、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド、ビニルポリマーや、セラミック等の無機素材を用いることができる。また、ろ過方式にしても供給水を加圧してろ過する加圧ろ過方式や透過側を吸引してろ過する吸引ろ過方式のいずれも適用可能である。さらに、加圧浮上と砂ろ過を併せた加圧浮上ろ過や、浸漬式膜ろ過ユニットを適用することも可能である。とくに、吸引ろ過方式の場合は、凝集沈殿槽や生物処理槽に精密ろ過膜や限外ろ過膜を浸漬してろ過する、いわゆる凝集膜ろ過や膜利用活性汚泥法(MBR)を適用することも好ましい。
【0035】
ナノろ過膜や逆浸透膜といった半透膜については、膜の素材には酢酸セルロース系ポリマー、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド、ビニルポリマー等の高分子素材を使用することができる。また、その膜構造は、膜の少なくとも片面に緻密層を持ち、緻密層から膜内部あるいはもう片方の面に向けて徐々に大きな孔径の微細孔を有する非対称膜や、非対称膜の緻密層の上に別の素材で形成された非常に薄い機能層を有する複合膜のどちらでもよい。しかし、第2の半透膜ユニット19を半透膜に吸着し易い成分から保護する観点では、有機物/微生物除去ユニットのろ過材料が、第2の半透膜ユニットのろ過材料と同素材であることが好ましい。
【0036】
有機物/微生物除去ユニットを構成する、凝集処理とは、凝集剤を添加して水中の有機物や微生物をフロック化し、固液分離を効率良くするための処理である。この場合、凝集処理した第1の濃縮水Acは、斜向板等を用いて沈降させた後、砂ろ過を行ったり、精密ろ過や限外ろ過を行ったりすることによって、第2の半透膜ユニットを通過させるのに適した供給水とすることができる。凝集剤としては、大きくは無機系凝集剤と有機系高分子凝集剤に分類され、無機系凝集剤には硫酸アルミニウム(硫酸バンド)、ポリ塩化アルミニウム(PACl)等のアルミ系凝集剤や、塩化第二鉄、ポリ硫酸第二鉄等の鉄系凝集剤がある。また、高分子有機系凝集剤にはアミノアルキル(メタ)アクリレート4級塩(共)重合体等のカチオン系高分子凝集剤、アクリルアミド/アクリル酸ソーダ共重合体等のアニオン系高分子凝集剤、ポリアクリルアミド等の非イオン系高分子凝集剤がある。これらの凝集剤は、単独で用いられる場合と、凝集助剤として無機系凝集剤と併用して用いられる場合とがある。また、無機系凝集剤よりも有機系高分子凝集剤を用いた方がスラッジの発生を抑制できることから、無機系凝集剤を単独で用いるよりも、無機系凝集剤と有機系高分子凝集剤とを併用することが好ましい。また、凝集は被処理水のpHによって作用効果が大きくことなることから、苛性ソーダ、石灰、重炭酸ソーダ等のアルカリや塩酸、硫酸等の酸を用いて、pHを適正な範囲に調整することが好ましい。
【0037】
酸化処理としては、生物処理、オゾンや紫外線またはガンマ線照射、フッ素や過酸化水素添加、触媒処理等が挙げられ、少なくとも2つを組み合わせて行う促進酸化処理を適用することも可能である。環境への影響を鑑みるとオゾンや紫外線照射、過酸化水素添加、触媒処理が好ましい。触媒としては、オゾンや過酸化水素と組み合わせて酸化力を高めることができる鉄、銅、マンガン等の触媒や、いわゆる光触媒機能を有する金属酸化物、例えば酸化チタン等を挙げることができる。促進酸化処理とは、AOP(=Advance Oxidance Process)と称され、オゾンや紫外線、過酸化水素、触媒(光触媒等)等を併用して、酸化力の大きなヒドロキシラジカルを水中に生成させ、有機物を分解する方法である。さらに、この促進酸化処理の特徴は、2次廃棄物の発生がなく、処理効果が有機物の分解に加えて、脱臭、脱色や殺菌等できることである。促進酸化処理の組み合わせとしては、酸化分解に寄与するヒドロキシラジカルをより多く生成する組み合わせが好ましく、過酸化水素と紫外線、オゾンと過酸化水素、オゾンと紫外線の組み合わせがより好ましい。そして、オゾン、紫外線、過酸化水素の3つを組み合わせる場合には、さらに酸化分解を効率良く行うことができるので好ましい。
【0038】
吸着処理は、吸着剤を添加することにより、水中の分子量数百以下の比較的小さな有機物を固体表面に吸着させる処理である。吸着剤としては、活性炭、イオン交換樹脂、ゼオライト等が挙げられ、比較的取り扱いが容易であるという観点から、粉末活性炭を用いることが好ましい。吸着剤が粒状の場合にはカラム充填して通水するように構成し、吸着剤が粉末の場合には第1の濃縮水Acに直接添加し、沈殿分離や膜ろ過のような固液分離と組み合わせて使用するとよい。また、活性炭やイオン交換樹脂等の吸着剤に体表された吸着剤フィルターを使用してもよい。
【0039】
ところで、河川水、工場廃水や下廃水のような低塩濃度水の場合、半透膜ユニット6として低圧用逆浸透膜やナノろ過膜のような半透膜が適用されるが、浸透圧が低いため高回収率運転することができ、結果的に第1の濃縮水Acの水量が少なくなる。そのため、半透膜ユニットの濃縮水を排出した下流側にエネルギー回収ユニットを設置しても回収できるエネルギーは小さく、エネルギー回収ユニットのコストパフォーマンスが小さくなり、経済的に見合わない場合が多い。このため、低塩濃度水を処理する半透膜ユニット6では通常エネルギー回収はされずに、系外に排出されることが多い。そこで、
図7に例示するように、第1の濃縮水Acの有機物濃度または微生物濃度を低減する有機物/微生物除去ユニットとして、濃縮水圧でろ過できる加圧ろ過ユニット12aが第1の半透膜ユニット6と直結されていると、無動力で有機物濃度または微生物濃度を低減できるので好ましい。加圧ろ過ユニット12aに関しては、カートリッジフィルター、ディスクフィルター、精密ろ過、限外ろ過、砂ろ過、生物担体ろ過、ナノフィルター、砂ろ過、プリコートフィルター、活性炭やイオン交換樹脂に体表された吸着剤フィルター等を用いることができる。
【0040】
また、河川水、工場廃水や下廃水のような低塩濃度な水を半透膜処理した場合、第1の濃縮水Acは0.8〜1.5MPa程度の濃縮水圧を保持している。このため、第1の濃縮水Acの圧力を急減圧させ第1の濃縮水Ac中に微細気泡を発生させる微細気泡発生ユニット24を備えることが好ましい。微細気泡発生ユニット24により、第1の半透膜ユニット6の濃縮水中に微細気泡を発生させることで、有機物/微生物除去ユニットが加圧浮上分離や生物処理の場合、微細気泡を発生させるためのブロアーやコンプレッサー等のエネルギーを削減することができ好ましく、また、有機物/微生物除去ユニットがクロスフロー方式を採用した膜分離ユニットの場合、微細気泡で膜表面を洗浄しながら透過水と濃縮水に分離することができ好ましい。第1の濃縮水Acの圧力を急減圧させる微細気泡発生ユニット24としては、例えばアスピレーター等を例示することができる。微細気泡発生ユニット24を配置する位置は、濃縮水の圧力が掛かっている配管であれば、いずれの位置でも構わないが、
図7に例示するように、第1の濃縮水Acが、その濃縮水圧を利用して、有機物/微生物除去ユニット(加圧ろ過ユニット12a)で分離される場合、分離に必要なエネルギーとのバランスを維持しつつ、微細気泡を発生させる必要がある。
【0041】
本発明では、有機物/微生物除去ユニットから有機物や微生物が多く含有した物理洗浄排水や、クロスフロー方式を採用した膜分離ユニットの濃縮排水が排出されることから、
図8に例示するように、加圧ろ過ユニット12aの洗浄排水や濃縮排水25等の処理排水と第2の半透膜ユニット19の濃縮水Bcと混合し、放流ライン26を通して、系外へ放流することで、有機物や微生物が多く含有した有機物/微生物除去ユニットの洗浄排水や濃縮排水を希釈できる共に、第2の半透膜ユニット19の高濃度の濃縮水Bcも希釈できることから、環境に優しく好ましい。
【0042】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は、2013年3月22日出願の日本特許出願(特願2013−059548)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、海水と河川水、地下水または廃水処理水との組合せのような複数種の原水から淡水を製造する、半透膜ユニットを用いた淡水の製造方法および淡水製造方法、さらに詳しくは、濃縮排水中に含まれる有機物や微生物による半透膜の汚染を効率良く防止する淡水製造方法を提供する。
【符号の説明】
【0044】
1:被処理水Aタンク
2:被処理水A供給ポンプ
3:第1の前処理ユニット
4:第1の前処理水タンク
5:第1の昇圧ポンプ
6:第1の半透膜ユニット
7:第1の透過水タンク
8、8a、8b、8c:水質センサー
9:第1の濃縮水タンク
10a:第1の濃縮水供給弁
10b:第2の濃縮水供給弁
11:第1の濃縮水ポンプ
12:有機物/微生物除去ユニット
12a:加圧ろ過ユニット
13:バイパスライン
14:混合水タンク
15:被処理水Bタンク
16:被処理水B供給ポンプ
17:第2の前処理ユニット
18:第2の昇圧ポンプ
19:第2の半透膜ユニット
20:第2の透過水タンク
21:圧力センサー
22a、22b:凝集剤タンクあるいは吸着剤タンク
23a、23b:凝集剤添加ポンプあるいは吸着剤添加ポンプ
24:微細気泡発生ユニット
25:有機物/微生物除去ユニット洗浄排水ラインあるいは濃縮排水ライン
26:放流ライン