(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
3次元方向へのビームを形成可能な指向性アンテナにより異なる3次元方向への複数のビームが形成される場合に、前記指向性アンテナにより形成される個別のビームにそれぞれ対応する複数の通信領域の各々を仮想的なセルとみなして通信制御を行い、前記複数の通信領域の個別の通信領域ごとの制御信号が生成され、対応する個別の通信領域へ当該制御信号が送信されるように、通信制御を行う制御部
を備え、
前記制御信号は、共通リファレンス信号を含み、
前記複数の通信領域の個別の通信領域ごとの共通リファレンス信号が、前記複数のビームのうちの対応するビームで送信され、
前記複数の通信領域に共通の共通リファレンス信号が、前記指向性アンテナにより形成される無指向性のビームで送信され、
前記制御部は、前記複数の通信領域のいずれかの通信領域に位置する端末装置に、当該端末装置が位置する通信領域に隣接する通信領域に対応するビームの重み係数を提供する、
通信制御装置。
前記制御部は、前記複数の通信領域の個々の通信領域において、当該通信領域に対応するビームの受信電力が、前記マクロセルの基地局により送信される信号の受信電力よりも大きくなるように、前記複数のビームの送信電力を決定する、請求項6に記載の通信制御装置。
前記制御部は、前記マクロセルの前記基地局により送信される信号の受信電力であって、前記複数の通信領域の個々の通信領域にける前記受信電力に関する情報を取得し、当該情報に基づいて、前記個々の通信領域に対応するビームの送信電力を決定する、請求項7に記載の通信制御装置。
前記制御部は、前記指向性アンテナにより形成されるビームが段階的に変化するように、前記指向性アンテナのビームの形成を制御することにより、前記通信領域の追加、削除又は変更を段階的に行う、請求項10に記載の通信制御装置。
前記制御部は、前記指向性アンテナにより形成されるビームに対応する通信領域の大きさが段階的に変化するように、前記指向性アンテナのビームの形成を制御する、請求項11又は12に記載の通信制御装置。
3次元方向へのビームを形成可能な指向性アンテナにより異なる3次元方向への複数のビームが形成される場合に、前記指向性アンテナにより形成される個別のビームにそれぞれ対応する複数の通信領域の各々を仮想的なセルとみなして通信制御を行うことと、
前記複数の通信領域の個別の通信領域ごとの制御信号が生成され、対応する個別の通信領域へ当該制御信号が送信されるように、通信制御を行うことと、
を含み、
前記制御信号は、共通リファレンス信号を含み、
前記複数の通信領域の個別の通信領域ごとの共通リファレンス信号が、前記複数のビームのうちの対応するビームで送信され、
前記複数の通信領域に共通の共通リファレンス信号が、前記指向性アンテナにより形成される無指向性のビームで送信され、
前記複数の通信領域のいずれかの通信領域に位置する端末装置に、当該端末装置が位置する通信領域に隣接する通信領域に対応するビームの重み係数が提供される、
通信制御方法。
3次元方向へのビームを形成可能な指向性アンテナにより異なる3次元方向への複数のビームが形成される場合に、前記指向性アンテナにより形成される個別のビームにそれぞれ対応する複数の通信領域の各々を仮想的なセルとみなして通信制御を行い、前記複数の通信領域の個別の通信領域ごとの制御信号が生成され、対応する個別の通信領域へ当該制御信号が送信されるように、通信制御を行う基地局と、無線通信する無線通信部と、
前記複数の通信領域の各々を仮想的なセルとみなして通信処理を行う制御部と、
を備え、
前記制御信号は、共通リファレンス信号を含み、
前記複数の通信領域の個別の通信領域ごとの共通リファレンス信号が、前記複数のビームのうちの対応するビームで送信され、
前記複数の通信領域に共通の共通リファレンス信号が、前記指向性アンテナにより形成される無指向性のビームで送信され、
前記基地局から、前記複数の通信領域のうちの、自身が位置する通信領域に隣接する通信領域に対応するビームの重み係数が提供される、
端末装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付の図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0013】
なお、説明は以下の順序で行うものとする。
1.はじめに
1.1.3GPPにおける無線通信の技術
1.2.技術的課題
2.本実施形態の概要
2.1.技術的課題の解決手段
2.2.仮想セル
3.無線通信システムの概略的な構成
4.eNodeBの構成
5.UEの構成
6.処理の流れ
7.第1の変形例
7.1.概要
7.2.eNodeBの構成
7.3.処理の流れ
8.第2の変形例
8.1.概要
8.2.eNodeBの構成
8.3.UEの構成
8.4.処理の流れ
9.第3の変形例
9.1.概要
9.2.eNodeBの構成
9.3.処理の流れ
10.応用例
10.1.eNodeBに関する応用例
10.2.UEに関する応用例
11.まとめ
【0014】
<<1.はじめに>>
はじめに、3GPP(3rd Generation Partnership Project)における無線通信の技術及び技術的課題を説明する。
【0015】
<1.1.3GPPにおける無線通信の技術>
まず、
図1〜
図3を参照して、3GPPにおける無線通信の技術を説明する。
【0016】
(Massive MIMOの背景と必要性)
現在、3GPPでは、爆発的に増加するトラフィックに対応するために、通信容量を向上するための検討が進められている。将来的には、現在の1000倍程度の通信容量が必要と言われている。現在検討されているMU−MIMO、CoMP(Coordinated Multipoint transmission/reception)等の技術では、数倍の通信容量も得られない可能性がある。そのため、通信容量を増加させるための画期的な手法が求められている。
【0017】
3GPPのリリース10では、eNodeBが8本のアンテナを搭載することが規格化されている。よって、当該アンテナによれば、SU−MIMOの場合に8レイヤのMIMOを実現することができる。8レイヤのMIMOとは、独立な8つのストリームを空間的に多重する技術である。また、4ユーザに2レイヤのMU−MIMOを実現することもできる。
【0018】
UE(User Equipment)ではアンテナの配置のためのスペースが小さいこと、及びUEの処理能力には限界があることに起因して、UEのアンテナを増やすことは難しい。しかし、近年のアンテナ実装技術の進歩により、eNodeBに100本程度のアンテナを配置することは不可能ではなくなってきている。
【0019】
このように100本程度のアンテナを基地局が備えることにより、アンテナにより形成されるビームの半値幅(−3dBのアンテナゲインを伴う角度)は、狭くなることが予想される。即ち、鋭いビームを形成することが可能になることが予想される。さらに、アンテナ素子を平面に配置することにより、所望の3次元方向のビームを形成することが可能になる。このような3次元方向のビームで、基地局よりも高い位置にある特定のビルに向けて信号を送信することが、提案されている。
【0020】
また、アンテナ本数が増えるので、MU−MIMOでのユーザ数を増やすことが可能になる。UEのアンテナ数が2本である場合には、1つのUEについての空間的に独立したストリームの数は2本であるので、1つのUEについてのストリーム数を増やすよりも、MU−MIMOのユーザ数を増やす方が合理的である。
【0021】
(3Dビームフォーミング)
2次元のビームフォーミングでは、水平方向でビームの方向を変えることが可能である。一方、3次元のビームフォーミングでは、水平方向に加えて垂直方向にもビームの方向を変えることが可能である。以下、この点について
図1を参照して説明する。
【0022】
(3Dビームフォーミングの重み係数の算出手法)
ビームフォーミングのための各アンテナ素子の重み係数は、複素数として表される。この点について
図1を参照して具体的に説明する。
【0023】
図1は、各アンテナ素子の位置とビームの3次元方向との関係を説明するための説明図である。
図1を参照すると、格子状に配置されたアンテナ素子が示されている。また、アンテナ素子が配置された平面上の直行する2つの軸x、y、及び、当該平面に直行する1つの軸zも示されている。ここで、形成すべきビームの方向は、例えば、角度phi(ギリシャ文字)及び角度theta(ギリシャ文字)で表される。角度phi(ギリシャ文字)は、ビーム方向のうちのxy平面の成分とx軸とのなす角度である。また、角度theta(ギリシャ文字)は、ビーム方向とz軸とのなす角度である。この場合に、例えば、x軸方向においてm番目に配置され、y軸方向においてn番目に配置されるアンテナ素子の重み係数V
m,nは、以下のように表され得る。
【0025】
fは周波数であり、cは光速である。また、jは複素数における虚数単位である。また、d
xは、x軸方向におけるアンテナ素子の間隔であり、d
yは、y軸方向におけるアンテナ素子間の間隔である。なお、アンテナ素子の座標は、以下のように表される。
【0027】
所望の3次元方向が決定されると、当該方向及び周波数fに基づいて、各アンテナ素子の重み係数を上述した式により求めることができる。このような重み係数は例えば
図2に示されるように用いられる。
【0028】
図2は、ビームフォーミングのための重み係数の利用手法の一例を説明するための説明図である。
図2を参照すると、各アンテナ素子に対応する送信信号には、各アンテナ素子の重み係数が複素乗算される。そして、重み係数が複素乗算された当該送信信号が、アンテナ素子から送信される。例えば、重み係数の複素乗算は、アナログ信号に対して行われる。なお、重み係数の複素乗算は、デジタル信号に対して行われてもよい。
【0029】
重み係数の算出の手法の一例を説明したが、重み係数の算出手法はこれに限られない。様々な算出手法が適用され得る。
【0030】
(リリース10のピコセル)
3GPPのリリース10及びリリース11は、スモールセルに言及している。リリース10及びリリース11では、スモールセルは、具体的にはピコセルと呼ばれ、当該ピコセルを形成するeNodeBは、ピコeNodeBと呼ばれる。通常の大きさのeNodeBにより形成されるセルは、上記スモールセルに対してマクロセルと呼ばれる。また、当該マクロセルを形成するeNodeBは、マクロeNodeBと呼ばれる。
【0031】
リリース10は、ピコeNodeBの一形態として、リモートレディオヘッド(RRH:Remote Radio Head)に言及している。RRHは、例えば、主としてアナログ信号処理部分及びアンテナ部分を備え、マクロeNodeBから光ファイバで張り出される。この場合に、マクロeNodeB側に、ピコセルのための通信制御機能が実装され得る。
【0032】
マクロeNodeB及びピコeNodeBが同一の周波数帯域を使用し、マクロセルとスモールセルとが互いに重複するという形態がある。このようなセル又は基地局の配置形態は、ヘテロジニアスネットワーク(Heterogeneous Network:Het−Net)と呼ばれる。以下、この点について
図3を参照して具体的に説明する。
【0033】
図3は、Het−Netの一例を説明するための説明図である。
図3を参照すると、マクロセル10及びマクロeNodeB11が示されている。また、当該マクロセル10と重複するピコセル30及びピコeNodeB31が示されている。そして、マクロeNodeB11及びピコeNodeB31は、同一の周波数帯域を使用してUE21と通信する。
【0034】
Het−Netでは、マクロeNodeBとピコeNodeBとの間の干渉を低減することが課題となっている。当該干渉の低減を実現する技術について、3GPPで盛んに議論が行われた。例えば、マクロeNodeB11による送信をほとんど停止するサブフレームを設ける手法が検討された。このようなサブフレームは、ABS(Almost Blank Subframe)と呼ばれる。ピコeNodeBは、ピコセルのセルエッジに位置するUEにABSのリソースを割り当てることにより、マクロeNodeBとピコeNodeBとの間の干渉のうちの、特に問題となるピコセルのセルエッジでの干渉を、低減することができる。
【0035】
<1.2.技術的課題>
上述したMU−MIMOは、複数のユーザの通信を空間的に多重して同じ帯域を同時に使用することを可能とする技術であり、通信のスループットを大きく向上させるものである。
【0036】
しかし、MU−MIMOでは、異なる方向への複数のビームで信号を送信するものの、送信される制御信号(例えば、リソース割当て情報を含む物理ダウンリンク制御チャネルで送信される信号)は当該複数のビームの間で共通である。即ち、複数のビームが形成されるとしても、制御信号の量を増やすことはできない。そのため、MU−MIMOでは、制御信号の不足により、セル分割利得を十分に得られない可能性がある。
【0037】
そこで、本実施形態は、送信可能な制御信号の量をより多くすることを可能にする。
【0038】
<<2.本実施形態の概要>>
続いて、本実施形態の概要を説明する。
【0039】
<2.1.技術的課題の解決手段>
本実施形態では、3次元方向へのビームを形成可能な指向性アンテナにより異なる3次元方向への複数のビームが形成される。そして、上記指向性アンテナにより形成される個別のビームにそれぞれ対応する複数の通信領域の各々を仮想的なセル(以下、「仮想セル(Virtual Cell)」と呼ぶ)とみなして通信制御が行われる。以下、この点について
図4を参照して具体例を説明する。
【0040】
図4は、本実施形態に係る仮想セルの例を説明するための説明図である。
図4を参照すると、指向性アンテナ40が示されている。指向性アンテナ40は、3次元方向へビームを形成可能である。例えば、
図4に示されるように、指向性アンテナ40は、異なる3次元方向への複数のビーム50を形成する。例えばこのように、指向性アンテナ40は高い位置に配置され、ビーム50は、下方向に向かって放射される。すると、各ビーム50に対応する通信領域60が発生する。UEは、通信領域60Aにおいてビーム50Aにより搬送される信号を受信することができ、通信領域60Bにおいてビーム50Bにより搬送される信号を受信することができる。
【0041】
とりわけ本実施形態では、ビーム50Aに対応する通信領域60A及びビーム50Bに対応する通信領域60Bの各々を仮想セルとみなして通信制御が行われる。即ち、eNodeBは、通信領域60A(即ち、仮想セル60A)が1つのセルであるかのように、通信制御を行う。また、eNodeBは、通信領域60B(即ち、仮想セル60B)が1つのセルであるかのように、通信制御を行う。
【0042】
なお、指向性アンテナにより異なる方向への複数のビームが形成されること自体は、本実施形態に係る手法とMU−MIMOとの間に特段の差異はない。しかし、MU−MIMOでは、各ビームに対応する通信領域は、eNodeBにより形成される1つの大きなセルの一部の領域にすぎないが、本実施形態に係る手法では、上記通信領域は、eNodeBにより形成される1つのセル(1つの仮想的なセル)である。このように、本実施形態に係る手法は、MU−MIMOとは異なる。
【0043】
<2.2.仮想セルの特徴>
次に、本実施形態に係る仮想セルのいくつかの特徴を説明する。
【0044】
(仮想セルに係る手法とMU−MIMOとの相違点)
仮想セルに係る手法(即ち、本実施形態に係る手法)とMU−MIMOとの相違点をより具体的に説明する。
【0045】
−制御情報
MU−MIMOでは、送信される制御信号(例えば、リソース割当て情報を含む物理ダウンリンク制御チャネル(Physical Downlink Control Channel:PDCCH)で送信される制御信号)は当該複数のビームの間で共通である。一方、仮想セルに係る手法では、送信される制御信号(例えば、PDCCHで送信される制御信号)は当該複数のビームの間で異なる。即ち、個別の仮想セル60ごとの制御信号(例えば、PDCCHで送信される制御信号)が生成され、対応する個別の仮想セル60へ当該制御信号が送信される。以下、この点について
図5を参照して具体例を説明する。
【0046】
図5は、本実施形態に係る仮想セルの制御信号の例を説明するための説明図である。
図5を参照すると、
図4と同様に、指向性アンテナ40、ビーム50及び通信領域60(即ち、仮想セル60)が示されている。そして、さらに各ビームで送信される信号として、PDCCH及び物理ダウンリンク共有チャネル(Physical Downlink Shared Channel:PDSCH)が示されている。
図5に示されるように、仮想セルに係る手法では、ビーム50AのPDCCHで送信される制御信号とビーム50BのPDCCHで送信される制御信号とは異なる。なぜならば、通信領域60Aと通信領域60Bとは別々のセルとみなされるので、別々の制御信号が生成されるためである。なお、MU−MIMOでは、ビーム50AのPDCCHで送信される信号とビーム50BのPDCCHで送信される信号とは同じである。また、仮想セルに係る手法では、例えば、その他の物理制御チャネルで送信される制御信号、及び、PDSCHで送信される信号のうちの制御信号も、ビーム50Aとビーム50Bとの間で異なる。また、当然ながら、PDSCHで送信される信号のうちのユーザデータ信号も、ビーム50Aとビーム50Bとの間で異なる。
【0047】
結果として、MU−MIMOでは、送信可能な制御信号の量は増えないが、仮想セルに係る手法では、送信可能な制御信号の量が増加する。
【0048】
なお、個別の仮想セル60ごとの制御信号は、PDCCHに限られない。当該制御信号は、例えば、セルの識別情報(即ち、セルID)を送信するための制御信号、即ち同期チャネルで送信される同期信号を含む。また、上記制御信号は、例えば、共通リファレンス信号(Common Reference Signal:CRS)を含む。また、上記制御情報は、例えば、システム情報に対応する制御信号(例えば、PBCHの制御信号、PDSCHのうちのシステム情報を送信するための制御信号)を含む。
【0049】
−ペアリングの負担軽減
MU−MIMOでは、同時に空間的に多重するユーザ(即ち、UE)の組合せを決定する必要がある。即ち、ユーザのペアリングを行う必要がある。eNodeBから見て異なる方向に位置するユーザについては、MU−MIMOを行いやすいが、eNodeBから見て同じ方向に位置するユーザについては、MU−MIMOを行いにくいからである。そのため、適切なペアリングが必要である。
【0050】
そして、上述したMassive MIMOのように、アンテナの本数が多数になり、MU−MIMOのユーザ数が増える場合には、その組合せの数は指数関数的に大きくなる。そのため、ユーザのペアリングにようする処理が急激に増加する。
【0051】
一方、仮想セルに係る手法では、そのようなペアリングが行われなくてもよい。なぜならば、仮想セルに係る手法では、異なるセルに位置するユーザ(即ち、UE)の通信が空間的に多重される(即ち、異なるセルに位置するUEが同時に同一の周波数を使用する)にすぎないので、ペアリングのような処理は不要である。そのため、MU−MIMOと比べて、ペアリングの負担が軽減される。
【0052】
−送信電力の観点
eNodeBの最大送信電力は、強制的な規格により決められている。そして、MU−MIMOでは、1つのeNodeBから送信する電力が複数のユーザ間で分け合われる。そのため、ビームの数が増えると、ビームあたりの送信電力は小さくなってしまう。
【0053】
一方、法制化とも関係するが、将来的には、仮想セルが1つのセルと認められる可能性もある。その場合には、仮想セルに対応するビームに、最大送信電力が割り当てられ得る。
【0054】
(通常のピコセルと仮想セルであるピコセルとの違い)
通常のピコeNodeBにより形成される通常のピコセルと、仮想セルであるピコセルとの相違点を説明する。
【0055】
−セルエッジにおける受信電力
通常のピコeNodeBにより形成される通常のピコセルでは、ピコセルの中心からピコセルのセルエッジに向かうにつれて、ピコeNodeBの送信信号の受信電力は減衰していく。この点について、
図6を参照して具体例を説明する。
【0056】
図6は、通常のピコeNodeBにより形成される通常のピコセルにおける受信電力の変化の一例を説明するための説明図である。
図6を参照すると、セルの範囲における受信電力の変化が示されている。
図6に示されるように、通常のピコeNodeBにより形成される通常のピコセルでは、セルの中心(即ち、ピコeNodeB)からセルエッジに向かうにつれて、受信電力が減衰していく。
【0057】
一方、仮想セルであるピコセルでは、ピコセルの中心からピコセルのセルエッジに向かうにつれて、ピコeNodeBの送信信号の受信電力はほとんど変わらない。そして、セルエッジ付近において、受信電力が急激に変化する。
【0058】
図7は、仮想セルであるピコセルにおける受信電力の変化の一例を説明するための説明図である。
図7を参照すると、セルの範囲における受信電力の変化が示されている。
図7に示されるように、仮想セルであるピコセルでは、セルの中心(即ち、ピコeNodeB)からセルエッジに向かうにつれて、受信電力はほとんど変化しない。なぜならば、ピコeNodeBがピコセルの中心にあるわけではなく、当該ピコセルから離れた位置にeNodeBがあるからであるので、結果としてピコセル内での受信電力がほぼ均一になるからである。なお、ピコセルのセルエッジ付近で受信電力が急激に変化する。ビームが届く位置と届かない位置とで受信電力が大きく変わるからである。このように、ビームにより形成されるピコセルは、セルエッジが明確になる。UEは、仮想セルに近づくと、突然セルが現れたように受信電力を観測する。
【0059】
このように、仮想セルが用いられると、セルエッジにおけるセル間の干渉が起こりにくくなる。
【0060】
−セルの配置
通常のピコeNodeBにより形成される通常のピコセルは、基本的には、移動させることはできない。通常のピコセルを移動させるためには、ピコeNodeB自体を移動させる必要がある。また、通常のピコセルを追加する場合には、新たにピコeNodeBを設置する必要がある。
【0061】
一方、仮想セルであるピコセルは、ビームにより形成されるので、ビームを形成するための重み係数を変えることにより容易に移動させることができる。さらに、仮想セルであるピコセルは、新たなビームを形成することにより、容易に追加することができる。また、仮想セルであるピコセルは、容易に削除することもできる。
【0062】
このように、仮想セルであるピコセルは、柔軟に追加、削除及び変更を行うことができるので、無線通信システム1のより柔軟な配置及び運用を可能にする。
【0063】
(ピコeNodeBにより形成される仮想セル)
通常のピコeNodeBにより形成される通常のピコセルを、マクロeNodeBにより形成される仮想セルのピコセルに置き換えるシナリオが、考えられる。この点について
図8を参照して具体例を説明する。
【0064】
図8は、マクロeNodeBにより形成される仮想セルのピコセルの例を説明するための説明図である。
図8を参照すると、マクロeNodeB11と、マクロeNodeB11により形成される仮想セル60とが、示されている。このような仮想セル60は、ピコセルとして利用され得る。しかし、マクロeNodeBからのビームが距離に応じて広がっていくので、マクロeNodeBと仮想セル60との距離が大きい場合には、仮想セル60の半径は大きくなる。
【0065】
そこで、通常のピコeNodeBにより形成されるピコセルを、ピコeNodeBにより形成される仮想セルのピコセルに置き換えるシナリオも、考えられる。この点について
図9を参照して具体例を説明する。
【0066】
図9は、ピコeNodeBにより形成される仮想セルのピコセルの例を説明するための説明図である。
図8を参照すると、マクロeNodeB11と、ピコeNodeB31と、ピコeNodeB31により形成される仮想セル60とが、示されている。このような仮想セル60は、ピコセルとして利用され得る。そして、ピコeNodeB31と仮想セル60との距離は比較的短いので、所望の半径の仮想セル60を形成しやすい。
【0067】
また、マクロeNodeBの周囲に例えば10程度のピコeNodeBを設置することは可能であるが、例えば300個程度のピコeNodeBを設置することは現実的には非常に困難である。したがって、マクロeNodeBの周囲に例えば10程度のピコeNodeBをし、当該ピコeNodeBに50個程度の仮想セルを形成させることにより、マクロeNodeBの周辺に、仮想セルである500個程度のピコセルを形成することができる。
【0068】
(仮想セルとリリース10のピコセルとの関係)
リリース10によれば、ピコeNodeBの送信電力が、マクロeNodeBの送信電力よりも小さい。したがって、マクロeNodeBの送信信号の受信電力よりも、ピコeNodeBの送信信号の受信電力が大きい領域は、ピコeNodeBの近傍の領域になる。このピコeNodeBの近傍の領域の半径、即ちピコセルの半径は、ピコeNodeBの送信電力とマクロeNodeBの送信電力と比により決まる。この点について
図10を参照して具体例を説明する。
【0069】
図10は、ピコeNodeBの送信電力とピコセルの半径との関係の例を説明するため説明図である。
図10を参照すると、ピコeNodeB31の送信電力の増加前のピコセル30と、ピコeNodeB31の送信電力の増加後のピコセル30とが、示されている。マクロeNodeBの送信電力が一定であるとすると、このようにピコeNodeB31の電力が増加すれば、ピコセル30の半径が大きくなる。
【0070】
一方、仮想セルの半径は、ビームの幅に依存するが、eNodeBの送信電力には依存しない。この点について
図11を参照して具体例を説明する。
【0071】
図11は、eNodeBの送信電力と仮想セルの半径との関係の例を説明するため説明図である。
図11を参照すると、マクロeNodeB11の送信電力の増加前の仮想セル60と、マクロeNodeB11の送信電力の増加後の仮想セル60とが、示されている。このように、送信電力の増加のみでは、仮想セル60の半径の大きさは変わらない。仮想セルに対応するビームは、重み係数に依存するからである。この例は、マクロeNodeBの例であるが、ピコeNodeBでも同様である。
【0072】
なお、仮想セル60においても、仮想セル60のダウンリンク送信信号の受信電力が、マクロセルのダウンリンク送信信号の受信電力よりも大きくなければ、UEは、仮想セル60についての信号を受信できない。この点に注意すべきである。
【0073】
上述したように、仮想セルではセルの中心から離れるにつれて電力はほとんど変化しない。そのため、仮想セルのダウンリンク送信信号の受信電力は、当該仮想セル全体にわたってほぼ均一になる。よって、仮想セルをピコセルとして利用する場合に、仮想セルであるピコセル全体にわたって、当該ピコセルのダウンリンク送信信号の受信電力を、マクロセルのダウンリンク送信信号の受信電力よりもXdBだけ大きくすることも可能である。
【0074】
仮想セルであるピコセルについての信号の受信電力を当該ピコセル全体にわたってほぼ均一になるということは、ピコセルに位置するUEへのリソースの割当て(即ち、スケジューリング)の手間が減ることを意味する。以下、この点についてより詳細に説明する。
【0075】
リリース10のピコセルの場合には、仮想セルとは異なり、ピコセルの中心近くに位置するUEは、マクロeNodeBの送信信号による干渉の影響をあまり受けないが、ピコセルのセルエッジに位置するUEは、マクロeNodeBの送信信号による干渉の影響を強く受ける。よって、ピコeNodeBは、マクロeNodeBにより信号がほとんど送信されないABSのリソースを、セルエッジに位置するUEに割り当てる。このように、リリース10のピコセルでは、ABSに関するスケジューリングが必要である。
【0076】
一方、仮想セルのピコセルについては、当該ピコセル全体にわたって受信電力がほぼ均一になるので、ABS自体が不要であり、よってABSに関するスケジューリングも必要ない。そのため、ピコeNodeBによるスケジューリングの負担が軽減される。
【0077】
また、ABSを用いると、一般的に、マクロセルのスループットが低下する。しかし、上述したように、仮想セルであるピコセルを用いればABS自体が不要である。よって、仮想セルであるピコセルを用いることで、マクロセルのスループットの低下を防ぐことができる。
【0078】
(仮想セルのダウンリンク及びアップリンク)
TDD(Time Division Duplex)システムでは、eNodeBは、ダウンリンクのビームフォーミングの重み係数を利用して、アップリンクのビームフォーミングを実現し得る。例えば、eNodeBは、ダウンリンクのビームフォーミングの重み係数を利用して、各アンテナ素子の受信信号に重み係数を複素乗算することにより、アップリンクのビームフォーミングを実現し得る。この重み係数の複素乗算は、受信信号がアナログ信号である際に行われてもよく、又は、受信信号がデジタル信号に変換された後に行われてもよい。このように、TDDシステムでは、アップリンクのセルとダウンリンクのセルとを一致させることが可能である。
【0079】
一方、FDD(Frequency Division Duplexing)システムでは、ダウンリンクのビームフォーミングの重み係数を、アップリンクのビームフォーミングの重み係数に利用することができない。そのため、FDDシステムでは、ダウンリンクについては仮想セルでの通信を行い、アップリンクについては通常のセルでの通信を行うという手法が、採用され得る。
【0080】
以上のように、仮想セルは、TDDシステムにより好適であると言える。
【0081】
<<3.無線通信システムの概略的な構成>>
続いて、
図12を参照して、本開示の実施形態に係る無線通信システムの概略的な構成を説明する。
図12は、本実施形態に係る無線通信システム1の概略的な構成の一例を示す説明図である。
図1を参照すると、本実施形態に係る無線通信システム1は、eNodeB100及び1つ以上のUE200を含む。
【0082】
eNodeB100は、3次元方向へのビームを形成可能な指向性アンテナを備え、当該指向性アンテナでビームを形成する。そして、eNodeB100は、各ビームに対応する通信領域60を仮想的なセル(即ち、仮想セル)とみなして通信制御を行う。即ち、eNodeB100は、各通信領域60をセルとして取り扱う。
【0083】
また、eNodeB100は、各仮想セル60に位置するUE200と無線通信する。例えば、eNodeB100は、仮想セル60Aに対応するビームで、仮想セル60Aに位置するUE200Aに信号を送信する。また、eNodeB100は、仮想セル60Bに対応するビームで、仮想セル60Bに位置するUE200Bに信号を送信する。
【0084】
UE200は、eNodeB100と無線通信する。例えば、UE200は、eNodeB100により形成されるビームに対応する通信領域60で、当該ビームの信号を受信する。例えば、UE200は、通信領域60Aに位置する場合に、通信領域60Aに対応するビームで信号を受信する。また、UE200は、通信領域60Bに位置する場合に、通信領域60Bに対応するビームで信号を受信する。
【0085】
また、UE200は、上記通信領域60の各々を仮想的なセル(即ち、仮想セル)とみなして通信処理を行う。即ち、UE200は、各通信領域60をセルとして取り扱う。
【0086】
なお、eNodeB100は、仮想セル60に加えて、無指向性のビームにより通常のセルも形成してもよい。この場合に、当該通常セルは、各仮想セル60の一部又は全体と重複してもよく、又は各仮想セルと重複しなくてもよい。この場合に、UE200は、通常のセルに位置する場合にも、eNodeB100と無線通信してもよい。
【0087】
また、無線通信システム1が、マクロeNodeB及びピコeNodeBを含む場合には、eNodeB100は、マクロeNodeBであってもよく、又はピコeNodeBであってもよい。
【0088】
<<4.eNodeBの構成>>
図13を参照して、本実施形態に係るeNodeB100の構成の一例を説明する。
図13は、本実施形態に係るeNodeB100の構成の一例を示すブロック図である。
図13を参照すると、eNodeB100は、アンテナ部110、無線通信部120、ネットワーク通信部130、記憶部140及び制御部150を備える。
【0089】
(アンテナ部110)
アンテナ部110は、3次元方向へのビームを形成する。例えば、アンテナ部110は、異なる3次元方向への複数のビームを形成する。アンテナ部110は、このように形成するビームで、無線通信部120からの信号を送信する。アンテナ部110により形成されるビームの3次元方向は、アンテナ素子に対応する重み係数に応じて決まる。なお、アンテナ部110は、無指向性のビームも形成してもよい。
【0090】
また、例えば、アンテナ部110は、無線信号を受信し、受信された無線信号を無線通信部120へ出力する。
【0091】
アンテナ部110は、例えば、3次元方向へのビームを形成可能な指向性アンテナを含む。
【0092】
(無線通信部120)
無線通信部120は、UE200と無線通信する。例えば、無線通信部120は、アンテナ部110により形成されるビームに対応する通信領域(即ち、仮想セル)内にUE200が位置する場合に、UE200と無線通信する。
【0093】
例えば、無線通信部120は、デジタル信号をアナログ信号に変換し、変換後の信号のアナログ処理を行う。また、無線通信部120は、アンテナ部110からの無線信号のアナログ処理を行い、処理後のアナログ信号をデジタル信号に変換する。
【0094】
(ネットワーク通信部130)
ネットワーク通信部130は、他の装置と通信する。例えば、ネットワーク通信部130は、他のeNodeBと通信する。
【0095】
(記憶部140)
記憶部140は、eNodeB100の動作のためのプログラム及びデータを記憶する。
【0096】
(制御部150)
制御部150は、eNodeB100の様々な機能を提供する。
【0097】
とりわけ本実施形態では、3次元方向へのビームを形成可能な指向性アンテナにより異なる3次元方向への複数のビームが形成される。この場合に、制御部150は、上記指向性アンテナにより形成される個別のビームにそれぞれ対応する複数の通信領域の各々を仮想的なセル(即ち、仮想セル)とみなして通信制御を行う。即ち、制御部150は、個別のビームに対応する各通信領域をセルとして取り扱う。
【0098】
例えば、制御部150は、上記複数の通信領域の個別の通信領域(即ち、個別の仮想セル)ごとの制御信号が生成され、対応する個別の通信領域(即ち、個別の仮想セル)へ当該制御信号が送信されるように、通信制御を行う。より具体的には、例えば、制御部150は、個別の仮想セルごとの制御信号を生成し、アンテナ部110及び無線通信部120に、対応する個別の仮想セルへ上記制御信号を送信させる。即ち、仮想セルごとの制御信号は、当該仮想セルに向けたビームで送信される。
【0099】
図12を再び参照すると、制御部150は、仮想セル60Aの制御信号を生成し、アンテナ部110及び無線通信部120に、当該制御信号を仮想セル60Aへ送信させる。また、制御部150は、仮想セル60Bの制御信号を生成し、アンテナ部110及び無線通信部120に、当該制御信号を仮想セル60Bへ送信させる。即ち、仮想セル60Aの制御信号は、仮想セル60Aに向けたビームで送信され、仮想セル60Bの制御信号は、仮想セル60Bに向けたビームで送信される。
【0100】
例えば、上記制御信号は、無線リソースの割当てに関する制御情報を送信するための制御信号を含む。具体的には、例えば、上記制御信号は、ダウンリンク割当て(Downlink Assignment)及びアップリンク許可(Uplink Grant)の情報を送信するための制御信号を含む。より具体的には、例えば、上記制御信号は、物理ダウンリンク制御チャネル(PDCCH)で送信される制御信号を含む。
【0101】
これにより、無線リソースの割当てのための制御信号を仮想セルごとに別々に送信することができる。そのため、1つのeNodeBから送信可能な無線リソースの割当て用の制御信号の量を、MU−MIMOが用いられる場合よりも多くすることができる。即ち、ダウンリンク割当て及びアップリンク許可のような無線リソースの割当てのための情報の量をより多くすることができる。その結果、制御信号の送信量の制約が小さくなるので、より多くのユーザデータを送信し得る。即ち、無線通信システム1におけるスループットが向上し得る。このように、仮想セルが用いられれば、より多くのセル分割利得を得ることができる。
【0102】
また、例えば、上記制御信号は、セルの識別情報(例えば、セルID)を送信するための制御信号を含む。より具体的には、例えば、上記制御信号は、同期チャネル(Synchronization Channel:SCH)で送信される制御信号を含む。例えば、上記制御信号は、SCHで送信されるプライマリ同期信号(Primary Synchronization Signal:PSS)及びセカンダリ同期信号(Secondary Synchronization Signal:SSS)を含む。
【0103】
これにより、UE200は、セルサーチにおいて各仮想セルを1つのセルとして認識することができる。よって、UE200に、仮想セルを1つのセルとみなして通信させることが可能になる。
【0104】
また、例えば、上記制御信号は、共通リファレンス信号(CRS)を含む。即ち、CRSにも重み係数が複素乗算され、重み係数を複素乗算されたCRSが送信される。
【0105】
これにより、UE200は、CRSを利用して、受信信号を復調することが可能になる。即ち、UE200は、CRSの位相に基づいて他の受信信号を復調することができる。そのため、CSI−RS(Channel State Information Reference Signal)を利用して受信信号を復調する受信方式のみではなく、CRSを利用して受信信号を復調する受信方式も、採用することが可能になる。よって、無線通信システム1について、受信方式をより自由に選択することが可能になる。
【0106】
また、例えば、上記制御信号は、システム情報に対応する制御信号を含む。より具体的には、例えば、上記制御信号は、PBCHの制御信号、及び、PDSCHのうちのシステム情報を送信するための制御信号を含む。
【0107】
<<5.UEの構成>>
図14を参照して、本実施形態に係るUE200の構成の一例を説明する。
図14は、本実施形態に係るUE200の構成の一例を示すブロック図である。
図14を参照すると、UE200は、アンテナ部210、無線通信部220、記憶部230及び制御部240を備える。
【0108】
アンテナ部210は、無線信号を受信し、受信された無線信号を無線通信部220へ出力する。また、アンテナ部210は、無線通信部220により出力された送信信号を送信する。
【0109】
(無線通信部220)
無線通信部220は、eNodeB100と無線通信する。より具体的には、例えば、UE200が、eNodeB100により形成されるビームに対応する通信領域(即ち、仮想セル)内に位置する場合に、eNodeB100と無線通信する。
【0110】
例えば、無線通信部220は、デジタル信号をアナログ信号に変換し、変換後の信号のアナログ処理を行う。また、無線通信部220は、アンテナ部210からの無線信号のアナログ処理を行い、処理後のアナログ信号をデジタル信号に変換する。
【0111】
(記憶部230)
記憶部230は、UE200の動作のためのプログラム及びデータを記憶する。
【0112】
(制御部240)
制御部240は、UE200の様々な機能を提供する。
【0113】
とりわけ本実施形態では、eNodeB100により異なる3次元方向への複数のビームが形成される。この場合に、制御部240は、eNodeB100により形成される個別のビームにそれぞれ対応する複数の通信領域の各々を仮想的なセル(即ち、仮想セル)とみなして通信処理を行う。
【0114】
例えば、上記複数の通信領域の個別の通信領域(即ち、個別の仮想セル)ごとの制御信号が生成され、対応する個別の通信領域(即ち、個別の仮想セル)へ当該制御信号が送信される。そして、UE200が、1つの仮想セル内に位置する場合に、制御部240は、eNodeB100により送信される制御信号から、当該1つの仮想セルの制御情報を取得する。
【0115】
具体的には、例えば、制御部240は、eNodeB100によりPDCCHで送信される制御信号から、仮想セルの無線リソースの割当てに関する制御情報(例えば、ダウンリンク割当て及びアップリンク許可)を取得する。また、例えば、制御部240は、eNodeB100により同期チャネル(SCH)で送信されるPSS及びSSSから、仮想セルのセルIDを取得する。また、例えば、eNodeB100により送信されるCRSから、当該CRSの位相情報が取得される。そして、当該位相情報は、eNodeB100により送信される他の信号の復調のために利用される。
【0116】
<<6.処理の流れ>>
次に、
図15を参照して、本実施形態に係る通信制御処理を説明する。
図15は、本実施形態に係る通信制御処理の概略的な流れの一例を示すフローチャートである。
【0117】
ステップS401で、制御部150は、個別の仮想セルごとの制御信号が生成されるように通信制御を行う。より具体的には、例えば、制御部150は、個別の仮想セルごとの制御信号を生成する。
【0118】
ステップS402で、制御部150は、対応する個別の仮想セルへ上記制御信号が送信されるように通信制御を行う。より具体的には、例えば、制御部150は、アンテナ部110及び無線通信部120に、対応する個別の仮想セルへ上記制御信号を送信させる。即ち、eNodeB100は、仮想セルごとの送信信号(制御信号を含む)を、対応するビームで送信する。
【0119】
<<7.第1の変形例>>
続いて、
図16〜
図18を参照して、本実施形態の第1の変形例を説明する。
【0120】
<7.1.概要>
まず、
図16を参照して、本実施形態の第1の変形例の概要を説明する。
【0121】
図8を参照して説明したように、マクロセルのマクロeNodeBにより仮想セルが形成されるケースでは、マクロeNodeBと仮想セルとの距離が大きくなる可能性が高い。そして、マクロeNodeBからのビームが距離に応じて広がっていくので、マクロeNodeBと仮想セルとの距離が大きい場合には、仮想セルの半径は大きくなってしまう。そのため、仮想セルを所望の大きさで所望の数だけ配置することが難しくなり、その結果セル分割利得を十分に得られなくなる可能性もある。
【0122】
そこで、本実施形態の第1の変形例では、仮想セルは、ピコeNodeBによりピコセルとして形成される。即ち、eNodeB100は、ピコeNodeBである。この点について
図16を参照して具体的に説明する。
【0123】
図16は、仮想セルがピコeNodeBにより形成されるケースの一例を説明するための説明図である。
図16を参照すると、マクロeNodeB11と、ピコeNodeBであるeNodeB100とが、示されている。
図16に示されるように、ピコeNodeBであるeNodeB100は、仮想セル60をピコセルとして形成する。
【0124】
このように、ピコeNodeBが仮想セルを形成することは、以下のようにいくつかの利点をもたらす。
【0125】
例えば、マクロセルの中心から離れた領域(例えば、セルエッジ付近)にピコセルを形成することが望ましい場合には、マクロeNodeBが仮想セルでピコセルを形成すると、当該ピコセルの半径が大きくなってしまう。一方、上記領域の近くに位置するピコeNodeBが、仮想セルを形成すれば、当該ピコセルの半径は所望の大きさに調整され得る。その結果、上記領域において所望の大きさのピコセルを形成することが可能になる。
【0126】
また、ピコeNodeBが仮想セルを形成することにより、設置するピコeNodeBの数を抑えることができる。その結果、無線通信システム1に要するコストを抑えることができる。
【0127】
より具体的には、マクロeNodeBの周囲に例えば10程度のピコeNodeBを設置することは可能であるが、例えば300個程度のピコeNodeBを設置することは現実的に不可能である。したがって、マクロeNodeBの周囲に例えば10程度のピコeNodeBをし、当該ピコeNodeBに50個程度の仮想セルを形成させることにより、マクロeNodeBの周辺に、仮想セルである500個程度のピコセルを形成することができる。このように、少ないピコeNodeBを設置するだけでも、所望の数のピコセルを形成することが可能になる。
【0128】
また、上述したように、仮想セルであるピコセルが用いられる場合には、当該ピコセル全体にわたって受信電力がほぼ均一になるので、ABS自体が不要であり、よってABSに関するスケジューリングも必要ない。そのため、ピコeNodeBによるスケジューリングの負担が軽減される。また、仮想セルであるピコセルを用いればABS自体が不要であるので、仮想セルであるピコセルを用いることで、マクロセルのスループットの低下を防ぐことができる。
【0129】
<7.2.eNodeBの構成>
次に、本実施形態の第1の変形例に係るeNodeB100の構成の一例を説明する。
【0130】
(アンテナ部110)
アンテナ部110は、異なる3次元方向への複数のビームを形成する。第1の変形例では、とりわけ、当該複数の通信領域の各々(即ち、各仮想セル)は、マクロセルと一部又は全体で重複する。即ち、アンテナ部110は、各ビームに対応する通信領域(即ち、仮想セル)がマクロセルと一部又は全体で重複するように、各ビームを形成する。
【0131】
(制御部150)
第1の変形例では、とりわけ、仮想セルは、マクロセルと一部又は全体で重複する仮想的なピコセル(以下、「仮想ピコセル」と呼ぶ)である。制御部150は、上記指向性アンテナにより形成される個別のビームにそれぞれ対応する複数の通信領域の各々を仮想的なピコセル(即ち、仮想ピコセル)とみなして通信制御を行う。
【0132】
また、例えば、制御部150は、上記複数の通信領域の個々の通信領域(即ち、個々の仮想ピコセル)において、当該通信領域に対応するビームの受信電力が、マクロeNodeB11により送信される信号の受信電力よりも大きくなるように、上記複数のビームの送信電力を決定する。
【0133】
再び
図16を参照すると、例えば、仮想セル60Aにおいて、仮想セル60Aに向けたビーム50Aの受信電力が、マクロeNodeB11により送信される信号の受信電力よりも大きくなるように、当該ビームの送信電力が決定される。また、仮想セル60Bにおいて、仮想セル60Bに向けたビーム50Bの受信電力が、マクロeNodeB11により送信される信号の受信電力よりも大きくなるように、当該ビームの送信電力が決定される。以下、この点について
図17を参照して具体例を説明する。
【0134】
図17は、仮想ピコセルにおける受信電力の例を説明するための説明図である。
図17を参照すると、マクロセルの中心(即ち、マクロeNodeBの位置)からの距離と、当該距離における受信電力との関係が示されている。そして、マクロセルのダウンリンク送信信号の受信電力、及びピコセルのダウンリンク送信信号(ビーム)の受信電力が示されている。上述したように、マクロセルのダウンリンク送信信号の受信電力は、マクロセルの中心から離れるにつれて減衰している。一方、仮想ピコセルのビームの受信電力は、ピコセルの中でほぼ均一である。そして、
図17に示されるように、仮想ピコセルにおいて、仮想ピコセルのビームの受信電力が、マクロセルのダウンリンク送信信号の受信電力よりも大きくなるように、上記ビームの送信電力が決定される。
【0135】
また、例えば、制御部150は、マクロeNodeB11により送信される信号の受信電力であって、上記複数の通信領域の個々の通信領域(即ち、個々の仮想ピコセル)にける上記受信電力に関する情報を取得する。そして、制御部150は、取得する当該情報に基づいて、上記個々の通信領域に対応するビームの送信電力を決定する。
【0136】
再び
図16を参照すると、例えば、UE200は、仮想ピコセル60において、マクロeNodeBの送信信号を受信し、受信電力を測定する。そして、UE200は、測定結果をeNodeB100に通知する。例えば、UE200Aは、仮想ピコセル60Aにおいて、マクロeNodeB11の送信信号の受信電力を測定し、測定結果をeNodeB100に通知する。そして、eNodeB100の制御部150は、仮想ピコセル60Aにおける受信電力の測定結果に基づいて、ビーム50Aの送信電力を決定する。制御部150は、例えば、eNodeB100から仮想ピコセル60Aまでの距離に応じた電力の減衰を考慮して、通知された受信電力よりもビーム50Aの受信電力の方が大きくなるように、ビーム50の送信電力を決定する。
【0137】
なお、受信電力の測定結果は、マクロeNodeB11に通知され、マクロeNodeB11が、受信電力の測定結果をeNodeB100に通知してもよい。
【0138】
また、制御部150は、受信電力の測定結果の代わりに、仮想ピコセル60におけるマクロeNodeBの送信信号の受信電力の推定値に基づいて、ビーム50の送信電力を決定してもよい。例えば、上記推定値は、マクロeNodeB11から仮想ピコセル60までの距離と、マクロeNodeBの送信電力とに基づいて、算出され得る。このように、制御部150により取得される上記受信電力に関する情報は、受信電力の測定結果であってもよく、又は受信電力の推定値であってもよい。
【0139】
以上のように、ビーム50の電力を決定することにより、仮想ピコセル60におけるマクロeNodeBの送信信号による干渉の影響を小さくすることができる。その結果、UE200は、仮想ピコセル60においてeNodeB100と無線通信することが可能になる。
【0140】
<7.3.処理の流れ>>
次に、
図18を参照して、本実施形態に係る通信制御処理を説明する。
図18は、本実施形態の第1の変形例に係る通信制御処理の概略的な流れの一例を示すフローチャートである。
【0141】
ステップS501で、制御部150は、仮想セルにおけるマクロセルのダウンリンク送信信号の受信電力に関する情報(例えば、受信電力の測定結果)を取得する。
【0142】
ステップS503で、制御部150は、マクロセルのダウンリンク送信信号の受信電力に関する上記情報と、eNodeB100から仮想ピコセルまでの距離とに基づいて、仮想ピコセルに対応するビームの送信電力を決定する。
【0143】
ステップS505で、アンテナ部110は、決定された送信電力で、仮想ピコセルに対応するビームを放射する。例えば、当該送信電力は、無線通信部120に含まれる増幅器により調整される。
【0144】
<<8.第2の変形例>>
続いて、
図19〜
図21を参照して、本実施形態の第2の変形例を説明する。
【0145】
<8.1.概要>
まず、
図19を参照して、本実施形態の第2の変形例の概要を説明する。
【0146】
(技術的課題)
従来のMU−MIMOでは、UEは、以下のように、ビームフォーミングの重み係数のうちの、UEにとって好ましい重み係数を特定する。
【0147】
まず、各UEは、ダウンリンクのRS(Reference Signal)を受信することにより、ダウンリンクのチャネル情報(例えば、チャネル行列)を取得する。そして、各UEは、上記チャネル情報に基づいて、ビームフォーミングの各重み係数候補がeNodeBにより用いられる場合にUEの受信電力がどのようになるかを仮想的に算出する。即ち、各UEは、全ての重み係数候補についての受信電力を仮想的に算出する。その後、UEは、ビームフォーミングの重み係数候補のうちの、大きな受信電力をもたらす重み係数の候補を選択する。そして、UEは、選択した重み係数の候補を好ましい重み係数として特定する。
【0148】
また、通常のセルが形成されている場合に、UEは、以下のように、近傍にあるセルのうちの、通信に好ましいセルを特定する。
【0149】
各UEは、セル毎に個別に設定されているRSを実際に受信し、受信電力を測定する。当該RSは、セル固有のリファレンス信号(Cell-specific Reference Signal)と呼ばれる。当該RSは、基本的には、CRS(Common Reference Signal)と同じである。そして、各UEは、大きな受信電力に対応するセルを選択する。そして、UEは、選択したセルを、通信に好ましいセルとして特定する。
【0150】
ここで、UE200にとって好ましい仮想セルを特定する(換言すると、UE200にとって好ましいビームフォーミングの重み係数を特定する)場合に、以上のような、好ましい重み係数を特定する手法、又は好ましいセルを特定する手法が採用されることも考えられる。しかし、これらの手法を採用すると、新たな懸念が生じ得る。
【0151】
例えば、好ましい重み係数を特定する手法が採用される場合には、UE200において仮想的な計算が発生する。そして、例えば、指向性アンテナが100本程度のアンテナ素子を含む場合には、重み係数の候補の数が膨大であり、計算量がかなり大きくなる。よって、UE200の負担が大きくなる。
【0152】
一方、好ましいセルを特定する手法が採用される場合には、UEは仮想セルの信号の受信電力を実際に測定する。一般的にこの手法では、受信電力の測定に時間がかかるが、仮想セルのケースでは、さらに大きな懸念が存在する。この点を以下に詳細に説明する。
【0153】
通常のセルの場合には、
図6を参照して説明したように、セルの中心から離れるにつれて、当該セルのダウンリンク送信信号の受信電力は徐々に減衰していく。そのため、UEがセルの中心から離れるにつれて、当該セルの信号の受信電力が減衰し、当該セルに隣接するセルの信号の受信電力が大きくなる。そのためUEはスムーズにハンドオーバを行うことができる。
【0154】
しかし、仮想セルの場合には、
図7を参照して説明したように、仮想セル内では、当該仮想セルのダウンリンク送信信号の受信電力はほとんど変わらず、仮想セルのセルエッジにおいて、送信信号の受信電力が急激に小さくなる。そして、セルエッジよりも仮想セルの中心から離れると、当該仮想セルの信号の受信電力は極端に小さくなる。
【0155】
そのため、UEが現在位置する仮想セルに隣接する仮想セルの信号を、当該UEが実際に受信し、受信電力を測定することは、非常に困難である。また、セルエッジで受信電力が急激に小さくなるので、UEは、受信電力が急激に小さくなった後に、新たなセルを特定することになる。よって、ハンドオーバが遅れてしまう。
【0156】
(解決手段)
そこで、本実施形態の第2の変形例では、eNodeB100は、無指向のビームで一部のCRSを送信し、指向性ビームで残りのCRSを送信する。即ち、上記一部のCRSは、重み係数を乗算されずに送信され、上記残りのCRSは、重み係数を乗算された上で送信される。ここでは、上記一部のCRSを、無指向性CRSと呼び、上記残りのCRSを、指向性CRSと呼ぶ。また、eNodeB100は、UEが現在位置する仮想セルに隣接する複数の仮想セル(以下、「隣接仮想セル」と呼ぶ)の各々についてのビームの重み係数Vを、当該UEに送信する。
【0157】
そして、UE200は、無指向性CRSを受信することによりチャネル情報(例えば、チャネル行列H)を取得する。そして、UE200は、複数の隣接仮想セルの各々についてのビームの重み係数Vを受信する。その後、UE200は、上記チャネル情報と、複数の隣接仮想セルの各々についてのビームの重み係数Vとに基づいて、ハンドオーバに適した仮想セルを特定する。
【0158】
<8.2.eNodeBの構成>
次に、本実施形態の第2の変形例に係るeNodeB100の構成の一例を説明する。
【0159】
(制御部150)
−無指向性CRSの送信
3次元方向へのビームを形成可能な指向性アンテナにより異なる3次元方向への複数のビームが形成される場合に、上記指向性アンテナにより形成される個別のビームにそれぞれ対応する複数の通信領域が存在する。とりわけ本実施形態の第2の変形例では、上記複数の通信領域の個別の通信領域(即ち、仮想セル)ごとのCRSが、上記複数のビームのうちの対応するビームで送信される。例えば、仮想セルごとのCRS(即ち、上記指向性CRS)が、指向性アンテナの指向性ビームで送信される。また、上記複数の通信領域に共通のCRSが、上記指向性アンテナにより形成される無指向性のビームで送信される。例えば、仮想セルに共通のCRS(即ち、無指向性CRS)が、指向性アンテナの無指向性ビームで送信される。
【0160】
制御部150は、制御部150は、仮想セルごとのCRSが、上記複数のビームのうちの対応するビームで送信されるように、通信制御を行う。また、制御部150は、仮想セルに共通のCRSが、無指向性ビームで送信されるように、通信制御を行う。より具体的には、例えば、制御部150は、個別の仮想セルごとのCRSを生成し、アンテナ部110及び無線通信部120に、対応する個別の仮想セルへ上記CRSを送信させる。また、制御部150は、仮想セルに共通のCRSを生成し、アンテナ部110及び無線通信部120に、無指向性ビームで当該CRSを送信させる。以下、指向性CRS及び無指向性CRSの具体例を、
図19を参照して説明する。
【0161】
図19は、指向性CRS及び無指向性CRSの例を説明するための説明図である。
図19を参照すると、周波数方向に12サブキャリアの幅を有し、時間方向において1サブフレームの幅を有する無線リソース(即ち、2つのリソースブロック)が、示されている。そして、CRSのうちの一部のCRSが無指向性CRSであり、CRSのうちの残りのCRSが指向性CRSである。例えばこのように、無指向性CRS及び指向性CRSが送信され得る。
【0162】
このような無指向性CRSの送信により、UE200は、eNodeB100とUE200との間のチャネルを示すチャネル情報を得ることができる。即ち、指向性CRSは重み係数が乗算されているので、指向性CRSから従来のようなチャネル情報を得ることは困難であるが、無指向性CRSはいずれの重み係数も乗算されていないので、無指向性CRSから従来のようなチャネル情報を得ることができる。
【0163】
−隣接仮想セルの重み係数の送信
また、例えば、制御部150は、上記複数の通信領域のいずれかの通信領域(即ち、仮想セル)に位置するUE200に、当該UE200が位置する通信領域に隣接する通信領域(即ち、隣接仮想セル)に対応するビームの重み係数を提供する。より具体的には、例えば、制御部150は、UE200が位置する仮想セルに隣接する仮想セルを特定する。そして、制御部150は、当該隣接仮想セルに対応するビームの重み係数を取得する。その後、制御部150は、無線通信部120に、当該重み係数をUE200へ送信させる。一例として、制御部150は、仮想セルの隣接関係を示す情報と、各仮想セルに対応するビームの重み係数を示す情報とを含むシステム情報を生成し、無線通信部120に、当該システム情報を送信させる。なお、1つの仮想セルの隣接仮想セルの数は、2又は3程度であってもよい。
【0164】
このような重み係数及びチャネル情報により、後述するように、UE200は、隣接仮想セルの信号の受信電力を実際に測定することができなくても、隣接仮想セルの信号の受信電力を仮想的に算出することができる。
【0165】
<8.3.UEの構成>
次に、本実施形態の第2の変形例に係るeNodeB100の構成の一例を説明する。
【0166】
(制御部240)
制御部240は、上記複数の通信領域のうちのUE200が位置する通信領域(即ち、仮想セル)に隣接する通信領域(即ち、隣接仮想セル)に対応するビームの重み係数を、eNodeB100から取得する。
【0167】
例えば、制御部240は、システム情報から、仮想セルの隣接関係を示す情報を取得する。そして、制御部240は、UE200が位置する仮想セルの隣接セルを特定する。そして、制御部240は、システム情報から、特定した仮想セルに対応するビームの重み係数を取得する。
【0168】
また、制御部240は、eNodeB100により無指向性ビームで送信されるCRSであって、複数の通信領域(即ち、複数の仮想セル)に共通の上記CRSの受信結果から、eNodeB100とUE200との間のチャネルを示すチャネル情報を取得する。そして、制御部240は、取得された上記重み係数と上記チャネル情報とに基づいて、ハンドオーバに適した通信領域(即ち、隣接仮想セル)を特定する。
【0169】
より具体的には、例えば、制御部240は、無指向性CRSの受信結果から、eNodeB100とUE200との間のチャネルを示すチャネル行列Hを取得する。そして、制御部250は、当該チャネル行列Hと、隣接仮想セルに対応するビームの重み係数Vとを乗算する。このように、制御部240は、隣接仮想セルに対応するビームをUE200が受信した場合の受信電力を、仮想的に算出する。そして、制御部240は、仮想的に算出された受信電力から、ハンドオーバに適した隣接仮想セルを特定する。そして、制御部240は、無線通信部220を介して、特定された隣接仮想セルをeNodeB100に通知する。
【0170】
UE200は、隣接仮想セルの信号の受信電力を実際に測定することは困難であるが、このような手法によれば、仮想的に受信電力を算出できる。よって、ハンドオーバに好ましい隣接仮想セルを良好に特定することが可能になる。また、このような手法は、受信電力の実際の測定を伴わないので、より高速に実行され得る。
【0171】
また、ターゲットが隣接仮想セルに限られるので、処理量の増加が抑えられる。このような点でも、上述した手法は、より高速に実行され得る。
【0172】
<8.3.処理の流れ>>
次に、
図20及び
図21を参照して、本実施形態の第2の変形例に係る通信制御処理を説明する。
【0173】
−UE200の処理
図20は、本実施形態の第2の変形例に係るUE200の通信制御処理の概略的な流れの一例を示すフローチャートである。
【0174】
ステップS601で、制御部240は、UE200が位置する仮想セルの隣接仮想セルに対応するビームの重み係数を、eNodeB100から取得する。
【0175】
ステップS603で、制御部240は、eNodeB100により無指向性ビームで送信される無指向性CRSの受信結果から、eNodeB100とUE200との間のチャネルを示すチャネル情報を取得する。
【0176】
ステップS605で、制御部240は、取得された上記重み係数と上記チャネル情報とに基づいて、ハンドオーバに適した隣接仮想セルを特定する。
【0177】
ステップS607で、制御部240は、無線通信部220を介して、特定された隣接仮想セルをeNodeB100に通知する。
【0178】
−eNodeB100の処理
図21は、本実施形態の第2の変形例に係るeNodeB100の通信制御処理の概略的な流れの一例を示すフローチャートである。
【0179】
ステップS621で、制御部150は、UE200によりハンドオーバに適した隣接仮想セルを通知されたかを判定する。当該隣接仮想セルが通知されていれば、処理はステップS623へ進む。そうでなければ処理はステップS625へ進む。
【0180】
ステップS623で、制御部150は、UE200により通知された隣接仮想セルをハンドオーバ先の候補として、記憶部140に記憶する。
【0181】
ステップS625で、制御部150は、UE200のハンドオーバを行うかを判定する。UE200のハンドオーバが行われる場合には、処理はステップS627へ進む。そうでなければ、処理はステップS621へ戻る。
【0182】
ステップS627で、制御部150は、ハンドオーバ先の候補である隣接仮想セルへのUE200のハンドオーバを実行する。そして、処理はステップS621へ戻る。
【0183】
以上、本実施形態の第2の変形例を説明した。上述した例では、eNodeB100は、指向性CRSと無指向性CRSの両方を送信するが、第2の変形例はこれに限られない。
【0184】
例えば、eNodeB100は、指向性CRSを送信しなくてもよい。即ち、eNodeB100は、全てのCRSを無指向性ビームにより送信してもよい。即ち、仮想セルごとの制御信号は、CRSを含まず、複数の仮想セルに共通のCRSが、指向性アンテナにより形成される無指向性のビームで送信されてもよい。
【0185】
これにより、UE200は、指向性CRSと無指向性CRSとを区別する必要はなく、CRSの受信結果からチャネル情報を取得することができる。
【0186】
<<9.第3の変形例>>
続いて、
図22〜
図27を参照して、本実施形態の第3の変形例を説明する。
【0187】
<9.1.概要>
まず、本実施形態の第3の変形例の概要を説明する。
【0188】
上述したように、通常のピコeNodeBにより形成される通常のピコセルは、基本的には、移動させることはできない。通常のピコセルを移動させるためには、ピコeNodeB自体を移動させる必要がある。また、通常のピコセルを追加する場合には、新たにピコeNodeBを設置する必要がある。
【0189】
マクロセルにおいて、UEは移動するので、トラフィックの変化は常に起こり得る。実際には、トラフィックの多い領域にピコセルが形成されることが望ましい場合であっても、即座に且つ容易にピコセルを形成することはできなかった。
【0190】
一方、仮想セルであるピコセルはビームにより形成されるので、ビームを形成するための重み係数を変えることにより、仮想セルであるピコセルを容易に移動させることができる。さらに、仮想セルであるピコセルは、新たなビームを形成することにより、容易に追加することができる。また、仮想セルであるピコセルは、容易に削除することもできる。
【0191】
そこで、本実施形態の第3の変形例では、eNodeB100は、指向性アンテナによるビームの形成を制御することにより、仮想セルの追加、削除又は変更を行う。
【0192】
これにより、仮想セルであるピコセルを柔軟に追加し、削除し、又は変更することができるので、無線通信システム1のより柔軟な配置及び運用を可能にする。また、トラフィックの多い領域に即座に仮想セルを形成できるので、無線通信システム1のスループットを向上することが可能になる。
【0193】
<9.2.eNodeBの構成>
次に、本実施形態の第3の変形例に係るeNodeB100の構成の一例を説明する。
【0194】
(制御部150)
本実施形態の第3の変形例では、制御部150は、3次元方向へのビームを形成可能な指向性アンテナのビームの形成を制御する。より具体的には、例えば、制御部150は、指向性アンテナの各アンテナ素子に対応する送信信号に複素乗算する重み係数を決定することにより、上記指向性アンテナのビームの形成を制御する。
【0195】
そして、本実施形態の第3の変形例では、とりわけ、制御部150は、上記指向性アンテナのビームの形成を制御することにより、仮想セル(即ち、仮想セルとみなされる通信領域)の追加、削除又は変更を行う。
【0196】
−仮想セルの追加
例えば、制御部150は、仮想セルの追加を行う。より具体的には、例えば、制御部150は、複数の仮想セル候補のうちのいずれかの仮想セル候補を選択し、選択した仮想セル候補を新たな仮想セルとして追加する。以下、この点について
図22を参照して具体例を説明する。
【0197】
図22は、仮想セル候補の例を説明するための説明図である。
図22を参照すると、4つの仮想セル候補61が示されている。このように、仮想セル候補61は、互いに重なり合っていてもよい。ただし、選択される仮想セル候補(即ち、仮想セルになる仮想セル候補)は重ならないことが望ましい。干渉が生じるからである。
【0198】
一例として、制御部150は、各UE400について、アップリンクのチャネル行列H
ULを取得し、当該行列の転置行列H
ULTをダウンリンクのチャネル行列H
DLとして取得する。そして、制御部150は、各UE400について、ダウンリンクのチャネル行列H
DLと、各仮想セル候補に対応する重み行列Vとを乗算する。このように、各UEについてのパフォーマンスを算出する。そして、制御部150は、各UEについてのパフォーマンスの算出結果に基づいて、望ましい仮想セル候補(換言すると、望ましい重み係数)を選択する。これにより、UE200の移動、トラフィックの増減等に応じて、仮想セルを適宜追加することができる。
【0199】
−仮想セルの変更
例えば、制御部150は、仮想セルの変更を行う。より具体的には、例えば、制御部150は、仮想セルの位置、仮想セルの半径の大きさ、仮想セルに対応するビームの送信電力(結果として、仮想セルの送信電力又は受信電力)を変更する。
【0200】
なお、仮想セルの変更は、既存の仮想セルの削除と新たな仮想セルの追加との組合せにより行われてもよい。
【0201】
−仮想セルに対応するビームの段階的な変化
また、例えば、制御部150は、上記指向性アンテナにより形成されるビームが段階的に変化するように、上記指向性アンテナのビームの形成を制御することにより、仮想セルの追加、削除又は変更を段階的に行う。
【0202】
より具体的には、例えば、制御部150は、上記指向性アンテナにより形成されるビームに対応する通信領域(即ち、仮想セル)の大きさが段階的に変化するように、上記指向性アンテナのビームの形成を制御する。即ち、制御部150は、上記指向性アンテナにより形成されるビームの幅が段階的に変化するように、上記指向性アンテナのビームの形成を制御する。以下、この点について
図23を参照して具体例を説明する。
【0203】
図23は、仮想セルの大きさの段階的な変更の例を説明するための説明図である。
図23を参照すると、時間T
1〜T
4におけるビーム50及び仮想セル60が示されている。例えば、仮想セル60を追加する際、又は既存の仮想セル60をより大きくする場合には、eNodeB100は、このように仮想セル60を段階的に大きくする。このような仮想セル60の大きさの段階的な変化のために、制御部150は、仮想セル60に対応するビームの幅を段階的に大きくする。即ち、制御部150は、指向性アンテナについての重み係数を段階的に変化させる。
【0204】
なお、
図23の例とは逆に、例えば、仮想セル60を削除する際、又は既存の仮想セル60をより小さくする場合には、eNodeB100は、仮想セル60を段階的に小さくする。このような仮想セル60の大きさの段階的な変化のために、制御部150は、仮想セル60に対応するビームの幅を段階的に小さくする。即ち、制御部150は、指向性アンテナについての重み係数を段階的に変化させる。
【0205】
また、例えば、制御部150は、上記指向性アンテナにより形成されるビームの送信電力が段階的に変化するように、上記指向性アンテナのビームの形成を制御する。以下、この点について
図24を参照して具体例を説明する。
【0206】
図24は、ビームの送信電力の段階的な変化の例を説明するための説明図である。
図24を参照すると、時間T
1〜T
4におけるビーム50及び仮想セル60が示されている。例えば、仮想セル60を追加する際、又は既存の仮想セル60の送信電力をより大きくする場合には、eNodeB100は、このように仮想セル60に対応するビームの送信電力を段階的に大きくする。即ち、制御部150は、ビームの送信電力の大きさを段階的に変化させる。
【0207】
なお、
図24の例とは逆に、仮想セル60を削除する際、又は既存の仮想セル60の送信電力をより小さくする場合には、eNodeB100は、仮想セル60に対応するビームの送信電力を段階的に小さくする。即ち、制御部150は、ビームの送信電力の大きさを段階的に変化させる。
【0208】
さらに、制御部150は、上記指向性アンテナにより形成されるビームに対応する通信領域(即ち、仮想セル)の大きさが段階的に変化し、上記指向性アンテナにより形成されるビームの送信電力が段階的に変化するように、ビームの形成を制御してもよい。以下、この点について
図25を参照して具体例を説明する。
【0209】
図25は、仮想セルの大きさ及びビームの送信電力の段階的な変化の例を説明するための説明図である。
図25を参照すると、時間T
1〜T
4におけるビーム50及び仮想セル60が示されている。例えば、仮想セル60を追加する際には、eNodeB100は、このように仮想セル60を段階的に大きくし(即ち、仮想セルに対応するビームの幅を段階的に大きくし)、ビームの送信電力を段階的に大きくしてもよい。
【0210】
なお、
図25の例とは逆に、例えば、仮想セル60を削除する際には、eNodeB100は、仮想セル60を段階的に小さくし(即ち、仮想セルに対応するビームの幅を段階的に小さくし)、ビームの送信電力を段階的に小さくしてもよい。
【0211】
以上のようなビームの段階的な変化により、仮想セルの追加、削除及び変更による既存の通信への影響を小さくすることができる。
【0212】
例えば、仮想セルの追加の場合に、急に仮想セルが出現し、当該仮想セルの中又は近傍にUE200が位置する場合に、このUE200の既存の通信に仮想セルの信号が干渉し得る。一方、送信電力を徐々に増加させ、又は仮想セルの大きさを徐々に拡大すれば、UE200は、当該仮想セルがハンドオーバのターゲットになった時点で、ハンドオーバできる。よって、UE200の既存の通信への影響は小さい。
【0213】
また、例えば、仮想セルの削除の場合に、急に仮想セルが消滅し、当該仮想セルの中又は近傍にUE200が位置していた場合に、このUE200のLOF(Link of Failure)が引き起こされ得る。一方、送信電力を徐々に減少させ、又は仮想セルの大きさを徐々に縮小すれば、UE200は、仮想セルが消滅する前に、別の仮想セル(又は通常のセル)へのハンドオーバを行うことができる。よって、UE200の既存の通信への影響は小さい。
【0214】
また、例えば、仮想セルの変更の場合にも、仮想セルの追加又は削除と同様に、UE200の既存の通信への影響は小さい。
【0215】
なお、上述したように、仮想セルの変更は、既存の仮想セルの削除と新たな仮想セルの追加との組合せにより行われ得る。この場合には、例えば、既存の仮想セルの削除及び新たな仮想セルの追加の手順を行う中で、既存の仮想セルから新たな仮想セルへのUE200のハンドオーバが行われるように、ビームの電力又は幅が調整され得る。
【0216】
<9.3.処理の流れ>>
次に、
図26及び
図27を参照して、本実施形態の第3の変形例に係る通信制御処理を説明する。ここでは、通信制御処理の例として、仮想セルの追加時の通信制御処理の一例と、仮想セルの削除時に通信制御処理の一例とを説明する。
【0217】
−仮想セルの追加
図26は、本実施形態の第3の変形例に係る仮想セル追加時の通信制御処理の概略的な流れの一例を示すフローチャートである。
【0218】
ステップS701で、制御部150は、アンテナ部110及び無線通信部120に、初期のビーム幅及び初期の送信電力でビームを形成させる。
【0219】
ステップS703で、制御部150は、ビーム幅が所望のビーム幅に達したかを判定する。ビーム幅が所望のビーム幅に達していれば、処理はステップS707へ進む。そうでなければ、処理はステップS705へ進む。
【0220】
ステップS705で、制御部150は、ビーム幅を拡大する。即ち、制御部150は、指向性アンテナについての重み係数を変更する。
【0221】
ステップS707で、制御部150は、送信電力が所望の送信電力に達したかを判定する。送信電力が所望の送信電力に達していれば、処理はステップS711へ進む。そうでなければ、処理はステップS709へ進む。
【0222】
ステップS709で、制御部150は、送信電力を増加させる。
【0223】
ステップS711で、制御部150は、ビーム幅及び送信電力が所望のビーム幅及び所望の送信電力に達したかを判定する。ビーム幅及び送信電力が所望のビーム幅及び所望の送信電力に達していれば、処理は終了する。そうでなければ、処理はステップS701へ戻る。
【0224】
−仮想セルの削除
図27は、本実施形態の第3の変形例に係る仮想セル削除時の通信制御処理の概略的な流れの一例を示すフローチャートである。
【0225】
ステップS721で、制御部150は、ビーム幅が最小のビーム幅に達したかを判定する。ビーム幅が最小のビーム幅に達していれば、処理はステップS725へ進む。そうでなければ、処理はステップS723へ進む。
【0226】
ステップS723で、制御部150は、ビーム幅を縮小する。即ち、制御部150は、指向性アンテナについての重み係数を変更する。
【0227】
ステップS725で、制御部150は、送信電力が0になったかを判定する。送信電力が0になっていれば、処理は終了する。そうでなければ、処理はステップS729へ進む。
【0228】
ステップS727で、制御部150は、送信電力を減少させる。
【0229】
ステップS729で、制御部150は、送信電力が0になったかを判定する。送信電力が0になっていれば、処理は終了する。そうでなければ、処理はステップS721へ戻る。
【0230】
<<10.応用例>>
本開示に係る技術は、様々な製品へ応用可能である。例えば、eNodeB100は、無線通信を制御する本体(基地局装置ともいう)とアンテナとを含むeNodeB800として実現されてもよい。あるいは、eNodeB100は、無線通信を制御する本体と、本体とは別の場所に配置される1つ以上のRRH(Remote Radio Head)と、アンテナとを含むeNodeB830として実現されてもよい。
【0231】
また、例えば、UE200は、スマートフォン、タブレットPC(Personal Computer)、ノートPC、携帯型ゲーム端末、携帯型/ドングル型のモバイルルータ若しくはデジタルカメラなどのモバイル端末、又はカーナビゲーション装置などの車載端末として実現されてもよい。また、UE200は、M2M(Machine To Machine)通信を行う端末(MTC(Machine Type Communication)端末ともいう)として実現されてもよい。さらに、UE200は、これら端末に搭載される無線通信モジュール(例えば、1つのダイで構成される集積回路モジュール)であってもよい。
【0232】
<10.1.eNodeBに関する応用例>
(第1の応用例)
図28は、本開示に係る技術が適用され得るeNodeBの概略的な構成の第1の例を示すブロック図である。eNodeB800は、1つ以上のアンテナ810、及び基地局装置820を有する。各アンテナ810及び基地局装置820は、RFケーブルを介して互いに接続され得る。
【0233】
アンテナ810の各々は、単一の又は複数のアンテナ素子(例えば、MIMOアンテナを構成する複数のアンテナ素子)を有し、基地局装置820による無線信号の送受信のために使用される。とりわけ本開示の実施形態では、少なくとも1つのアンテナ810は、3次元方向へのビームを形成可能な指向性アンテナである。eNodeB800は、
図28に示したように複数のアンテナ810を有し、複数のアンテナ810は、例えばeNodeB800が使用する複数の周波数帯域にそれぞれ対応してもよい。なお、
図28にはeNodeB800が複数のアンテナ810を有する例を示したが、eNodeB800は単一のアンテナ810を有してもよい。
【0234】
基地局装置820は、コントローラ821、メモリ822、ネットワークインタフェース823及び無線通信インタフェース825を備える。
【0235】
コントローラ821は、例えばCPU又はDSPであってよく、基地局装置820の上位レイヤの様々な機能を動作させる。例えば、コントローラ821は、無線通信インタフェース825により処理された信号内のデータからデータパケットを生成し、生成したパケットをネットワークインタフェース823を介して転送する。コントローラ821は、複数のベースバンドプロセッサからのデータをバンドリングすることによりバンドルドパケットを生成し、生成したバンドルドパケットを転送してもよい。また、コントローラ821は、無線リソース管理(Radio Resource Control)、無線ベアラ制御(Radio Bearer Control)、移動性管理(Mobility Management)、流入制御(Admission Control)又はスケジューリング(Scheduling)などの制御を実行する論理的な機能を有してもよい。また、当該制御は、周辺のeNodeB又はコアネットワークノードと連携して実行されてもよい。メモリ822は、RAM及びROMを含み、コントローラ821により実行されるプログラム、及び様々な制御データ(例えば、端末リスト、送信電力データ及びスケジューリングデータなど)を記憶する。
【0236】
ネットワークインタフェース823は、基地局装置820をコアネットワーク824に接続するための通信インタフェースである。コントローラ821は、ネットワークインタフェース823を介して、コアネットワークノード又は他のeNodeBと通信してもよい。その場合に、eNodeB800と、コアネットワークノード又は他のeNodeBとは、論理的なインタフェース(例えば、S1インタフェース又はX2インタフェース)により互いに接続されてもよい。ネットワークインタフェース823は、有線通信インタフェースであってもよく、又は無線バックホールのための無線通信インタフェースであってもよい。ネットワークインタフェース823が無線通信インタフェースである場合、ネットワークインタフェース823は、無線通信インタフェース825により使用される周波数帯域よりもより高い周波数帯域を無線通信に使用してもよい。
【0237】
無線通信インタフェース825は、LTE(Long Term Evolution)又はLTE−Advancedなどのいずれかのセルラー通信方式をサポートし、アンテナ810を介して、eNodeB800のセル内に位置する端末に無線接続を提供する。無線通信インタフェース825は、典型的には、ベースバンド(BB)プロセッサ826及びRF回路827などを含み得る。BBプロセッサ826は、例えば、符号化/復号、変調/復調及び多重化/逆多重化などを行なってよく、各レイヤ(例えば、L1、MAC(Medium Access Control)、RLC(Radio Link Control)及びPDCP(Packet Data Convergence Protocol))の様々な信号処理を実行する。BBプロセッサ826は、コントローラ821の代わりに、上述した論理的な機能の一部又は全部を有してもよい。BBプロセッサ826は、通信制御プログラムを記憶するメモリ、当該プログラムを実行するプロセッサ及び関連する回路を含むモジュールであってもよく、BBプロセッサ826の機能は、上記プログラムのアップデートにより変更可能であってもよい。また、上記モジュールは、基地局装置820のスロットに挿入されるカード若しくはブレードであってもよく、又は上記カード若しくは上記ブレードに搭載されるチップであってもよい。一方、RF回路827は、ミキサ、フィルタ及びアンプなどを含んでもよく、アンテナ810を介して無線信号を送受信する。
【0238】
無線通信インタフェース825は、
図28に示したように複数のBBプロセッサ826を含み、複数のBBプロセッサ826は、例えばeNodeB800が使用する複数の周波数帯域にそれぞれ対応してもよい。また、無線通信インタフェース825は、
図28に示したように複数のRF回路827を含み、複数のRF回路827は、例えば複数のアンテナ素子にそれぞれ対応してもよい。なお、
図28には無線通信インタフェース825が複数のBBプロセッサ826及び複数のRF回路827を含む例を示したが、無線通信インタフェース825は単一のBBプロセッサ826又は単一のRF回路827を含んでもよい。
【0239】
(第2の応用例)
図29は、本開示に係る技術が適用され得るeNodeBの概略的な構成の第2の例を示すブロック図である。eNodeB830は、1つ以上のアンテナ840、基地局装置850、及びRRH860を有する。各アンテナ840及びRRH860は、RFケーブルを介して互いに接続され得る。また、基地局装置850及びRRH860は、光ファイバケーブルなどの高速回線で互いに接続され得る。
【0240】
アンテナ840の各々は、単一の又は複数のアンテナ素子(例えば、MIMOアンテナを構成する複数のアンテナ素子)を有し、RRH860による無線信号の送受信のために使用される。とりわけ本開示の実施形態では、少なくとも1つのアンテナ840は、3次元方向へのビームを形成可能な指向性アンテナである。eNodeB830は、
図29に示したように複数のアンテナ840を有し、複数のアンテナ840は、例えばeNodeB830が使用する複数の周波数帯域にそれぞれ対応してもよい。なお、
図29にはeNodeB830が複数のアンテナ840を有する例を示したが、eNodeB830は単一のアンテナ840を有してもよい。
【0241】
基地局装置850は、コントローラ851、メモリ852、ネットワークインタフェース853、無線通信インタフェース855及び接続インタフェース857を備える。コントローラ851、メモリ852及びネットワークインタフェース853は、
図28を参照して説明したコントローラ821、メモリ822及びネットワークインタフェース823と同様のものである。
【0242】
無線通信インタフェース855は、LTE又はLTE−Advancedなどのいずれかのセルラー通信方式をサポートし、RRH860及びアンテナ840を介して、RRH860に対応するセクタ内に位置する端末に無線接続を提供する。無線通信インタフェース855は、典型的には、BBプロセッサ856などを含み得る。BBプロセッサ856は、接続インタフェース857を介してRRH860のRF回路864と接続されることを除き、
図28を参照して説明したBBプロセッサ826と同様のものである。無線通信インタフェース855は、
図29に示したように複数のBBプロセッサ856を含み、複数のBBプロセッサ856は、例えばeNodeB830が使用する複数の周波数帯域にそれぞれ対応してもよい。なお、
図29には無線通信インタフェース855が複数のBBプロセッサ856を含む例を示したが、無線通信インタフェース855は単一のBBプロセッサ856を含んでもよい。
【0243】
接続インタフェース857は、基地局装置850(無線通信インタフェース855)をRRH860と接続するためのインタフェースである。接続インタフェース857は、基地局装置850(無線通信インタフェース855)とRRH860とを接続する上記高速回線での通信のための通信モジュールであってもよい。
【0244】
また、RRH860は、接続インタフェース861及び無線通信インタフェース863を備える。
【0245】
接続インタフェース861は、RRH860(無線通信インタフェース863)を基地局装置850と接続するためのインタフェースである。接続インタフェース861は、上記高速回線での通信のための通信モジュールであってもよい。
【0246】
無線通信インタフェース863は、アンテナ840を介して無線信号を送受信する。無線通信インタフェース863は、典型的には、RF回路864などを含み得る。RF回路864は、ミキサ、フィルタ及びアンプなどを含んでもよく、アンテナ840を介して無線信号を送受信する。無線通信インタフェース863は、
図29に示したように複数のRF回路864を含み、複数のRF回路864は、例えば複数のアンテナ素子にそれぞれ対応してもよい。なお、
図29には無線通信インタフェース863が複数のRF回路864を含む例を示したが、無線通信インタフェース863は単一のRF回路864を含んでもよい。
【0247】
図28及び
図29に示したeNodeB800及びeNodeB830において、
図13を参照して説明した制御部150は、無線通信インタフェース825並びに無線通信インタフェース855及び/又は無線通信インタフェース863において実装されてもよい。また、これら機能の少なくとも一部は、コントローラ821及びコントローラ851において実装されてもよい。
【0248】
<10.2.UEに関する応用例>
(第1の応用例)
図30は、本開示に係る技術が適用され得るスマートフォン900の概略的な構成の一例を示すブロック図である。スマートフォン900は、プロセッサ901、メモリ902、ストレージ903、外部接続インタフェース904、カメラ906、センサ907、マイクロフォン908、入力デバイス909、表示デバイス910、スピーカ911、無線通信インタフェース912、1つ以上のアンテナスイッチ915、1つ以上のアンテナ916、バス917、バッテリー918及び補助コントローラ919を備える。
【0249】
プロセッサ901は、例えばCPU又はSoC(System on Chip)であってよく、スマートフォン900のアプリケーションレイヤ及びその他のレイヤの機能を制御する。メモリ902は、RAM及びROMを含み、プロセッサ901により実行されるプログラム及びデータを記憶する。ストレージ903は、半導体メモリ又はハードディスクなどの記憶媒体を含み得る。外部接続インタフェース904は、メモリーカード又はUSB(Universal Serial Bus)デバイスなどの外付けデバイスをスマートフォン900へ接続するためのインタフェースである。
【0250】
カメラ906は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などの撮像素子を有し、撮像画像を生成する。センサ907は、例えば、測位センサ、ジャイロセンサ、地磁気センサ及び加速度センサなどのセンサ群を含み得る。マイクロフォン908は、スマートフォン900へ入力される音声を音声信号へ変換する。入力デバイス909は、例えば、表示デバイス910の画面上へのタッチを検出するタッチセンサ、キーパッド、キーボード、ボタン又はスイッチなどを含み、ユーザからの操作又は情報入力を受け付ける。表示デバイス910は、液晶ディスプレイ(LCD)又は有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイなどの画面を有し、スマートフォン900の出力画像を表示する。スピーカ911は、スマートフォン900から出力される音声信号を音声に変換する。
【0251】
無線通信インタフェース912は、LTE又はLTE−Advancedなどのいずれかのセルラー通信方式をサポートし、無線通信を実行する。無線通信インタフェース912は、典型的には、BBプロセッサ913及びRF回路914などを含み得る。BBプロセッサ913は、例えば、符号化/復号、変調/復調及び多重化/逆多重化などを行なってよく、無線通信のための様々な信号処理を実行する。一方、RF回路914は、ミキサ、フィルタ及びアンプなどを含んでもよく、アンテナ916を介して無線信号を送受信する。無線通信インタフェース912は、BBプロセッサ913及びRF回路914を集積したワンチップのモジュールであってもよい。無線通信インタフェース912は、
図30に示したように複数のBBプロセッサ913及び複数のRF回路914を含んでもよい。なお、
図30には無線通信インタフェース912が複数のBBプロセッサ913及び複数のRF回路914を含む例を示したが、無線通信インタフェース912は単一のBBプロセッサ913又は単一のRF回路914を含んでもよい。
【0252】
さらに、無線通信インタフェース912は、セルラー通信方式に加えて、近距離無線通信方式、近接無線通信方式又は無線LAN(Local Area Network)方式などの他の種類の無線通信方式をサポートしてもよく、その場合に、無線通信方式ごとのBBプロセッサ913及びRF回路914を含んでもよい。
【0253】
アンテナスイッチ915の各々は、無線通信インタフェース912に含まれる複数の回路(例えば、異なる無線通信方式のための回路)の間でアンテナ916の接続先を切り替える。
【0254】
アンテナ916の各々は、単一の又は複数のアンテナ素子(例えば、MIMOアンテナを構成する複数のアンテナ素子)を有し、無線通信インタフェース912による無線信号の送受信のために使用される。スマートフォン900は、
図30に示したように複数のアンテナ916を有してもよい。なお、
図30にはスマートフォン900が複数のアンテナ916を有する例を示したが、スマートフォン900は単一のアンテナ916を有してもよい。
【0255】
さらに、スマートフォン900は、無線通信方式ごとにアンテナ916を備えてもよい。その場合に、アンテナスイッチ915は、スマートフォン900の構成から省略されてもよい。
【0256】
バス917は、プロセッサ901、メモリ902、ストレージ903、外部接続インタフェース904、カメラ906、センサ907、マイクロフォン908、入力デバイス909、表示デバイス910、スピーカ911、無線通信インタフェース912及び補助コントローラ919を互いに接続する。バッテリー918は、図中に破線で部分的に示した給電ラインを介して、
図30に示したスマートフォン900の各ブロックへ電力を供給する。補助コントローラ919は、例えば、スリープモードにおいて、スマートフォン900の必要最低限の機能を動作させる。
【0257】
図30に示したスマートフォン900において、
図14を参照して説明した制御部240は、無線通信インタフェース912において実装されてもよい。また、これら機能の少なくとも一部は、プロセッサ901又は補助コントローラ919において実装されてもよい。
【0258】
(第2の応用例)
図31は、本開示に係る技術が適用され得るカーナビゲーション装置920の概略的な構成の一例を示すブロック図である。カーナビゲーション装置920は、プロセッサ921、メモリ922、GPS(Global Positioning System)モジュール924、センサ925、データインタフェース926、コンテンツプレーヤ927、記憶媒体インタフェース928、入力デバイス929、表示デバイス930、スピーカ931、無線通信インタフェース933、1つ以上のアンテナスイッチ936、1つ以上のアンテナ937及びバッテリー938を備える。
【0259】
プロセッサ921は、例えばCPU又はSoCであってよく、カーナビゲーション装置920のナビゲーション機能及びその他の機能を制御する。メモリ922は、RAM及びROMを含み、プロセッサ921により実行されるプログラム及びデータを記憶する。
【0260】
GPSモジュール924は、GPS衛星から受信されるGPS信号を用いて、カーナビゲーション装置920の位置(例えば、緯度、経度及び高度)を測定する。センサ925は、例えば、ジャイロセンサ、地磁気センサ及び気圧センサなどのセンサ群を含み得る。データインタフェース926は、例えば、図示しない端子を介して車載ネットワーク941に接続され、車速データなどの車両側で生成されるデータを取得する。
【0261】
コンテンツプレーヤ927は、記憶媒体インタフェース928に挿入される記憶媒体(例えば、CD又はDVD)に記憶されているコンテンツを再生する。入力デバイス929は、例えば、表示デバイス930の画面上へのタッチを検出するタッチセンサ、ボタン又はスイッチなどを含み、ユーザからの操作又は情報入力を受け付ける。表示デバイス930は、LCD又はOLEDディスプレイなどの画面を有し、ナビゲーション機能又は再生されるコンテンツの画像を表示する。スピーカ931は、ナビゲーション機能又は再生されるコンテンツの音声を出力する。
【0262】
無線通信インタフェース933は、LTE又はLTE−Advancedなどのいずれかのセルラー通信方式をサポートし、無線通信を実行する。無線通信インタフェース933は、典型的には、BBプロセッサ934及びRF回路935などを含み得る。BBプロセッサ934は、例えば、符号化/復号、変調/復調及び多重化/逆多重化などを行なってよく、無線通信のための様々な信号処理を実行する。一方、RF回路935は、ミキサ、フィルタ及びアンプなどを含んでもよく、アンテナ937を介して無線信号を送受信する。無線通信インタフェース933は、BBプロセッサ934及びRF回路935を集積したワンチップのモジュールであってもよい。無線通信インタフェース933は、
図31に示したように複数のBBプロセッサ934及び複数のRF回路935を含んでもよい。なお、
図31には無線通信インタフェース933が複数のBBプロセッサ934及び複数のRF回路935を含む例を示したが、無線通信インタフェース933は単一のBBプロセッサ934又は単一のRF回路935を含んでもよい。
【0263】
さらに、無線通信インタフェース933は、セルラー通信方式に加えて、近距離無線通信方式、近接無線通信方式又は無線LAN方式などの他の種類の無線通信方式をサポートしてもよく、その場合に、無線通信方式ごとのBBプロセッサ934及びRF回路935を含んでもよい。
【0264】
アンテナスイッチ936の各々は、無線通信インタフェース933に含まれる複数の回路(例えば、異なる無線通信方式のための回路)の間でアンテナ937の接続先を切り替える。
【0265】
アンテナ937の各々は、単一の又は複数のアンテナ素子(例えば、MIMOアンテナを構成する複数のアンテナ素子)を有し、無線通信インタフェース933による無線信号の送受信のために使用される。カーナビゲーション装置920は、
図31に示したように複数のアンテナ937を有してもよい。なお、
図31にはカーナビゲーション装置920が複数のアンテナ937を有する例を示したが、カーナビゲーション装置920は単一のアンテナ937を有してもよい。
【0266】
さらに、カーナビゲーション装置920は、無線通信方式ごとにアンテナ937を備えてもよい。その場合に、アンテナスイッチ936は、カーナビゲーション装置920の構成から省略されてもよい。
【0267】
バッテリー938は、図中に破線で部分的に示した給電ラインを介して、
図31に示したカーナビゲーション装置920の各ブロックへ電力を供給する。また、バッテリー938は、車両側から給電される電力を蓄積する。
【0268】
図31に示したカーナビゲーション装置920において、
図14を参照して説明した制御部240は、無線通信インタフェース933において実装されてもよい。また、これら機能の少なくとも一部は、プロセッサ921において実装されてもよい。
【0269】
また、本開示に係る技術は、上述したカーナビゲーション装置920の1つ以上のブロックと、車載ネットワーク941と、車両側モジュール942とを含む車載システム(又は車両)940として実現されてもよい。車両側モジュール942は、車速、エンジン回転数又は故障情報などの車両側データを生成し、生成したデータを車載ネットワーク941へ出力する。
【0270】
<<11.まとめ>>
ここまで、
図1〜
図27を用いて、本開示の実施形態に係る通信装置及び各処理を説明した。本開示に係る実施形態によれば、3次元方向へのビームを形成可能な指向性アンテナにより異なる3次元方向への複数のビームが形成される場合に、上記指向性アンテナにより形成される個別のビームにそれぞれ対応する複数の通信領域の各々を仮想的なセル(即ち、仮想セル)とみなして通信制御が行われる。より具体的には、例えば、上記複数の通信領域の個別の通信領域(即ち、仮想セル)ごとの制御信号が生成され、対応する個別の通信領域へ当該制御信号が送信されるように、通信制御が行われる。
【0271】
この手法によれば、送信可能な制御信号の量をより多くすることが可能になる。
【0272】
また、上記手法によれば、MU−MIMOのように、UEのペアリングが行われなくてもよい。なぜならば、仮想セルに係る手法では、異なるセルに位置するユーザ(即ち、UE)の通信が空間的に多重される(即ち、異なるセルに位置するUEが同時に同一の周波数を使用する)にすぎないので、ペアリングのような処理は不要である。そのため、MU−MIMOと比べて、ペアリングの負担が軽減される。
【0273】
また、仮想セルが用いられると、セルエッジにおけるセル間の干渉が起こりにくくなる。
【0274】
また、例えば、上記仮想的なセル(即ち、仮想セル)は、マクロセルと一部又は全体で重複する仮想的なピコセル(即ち、仮想ピコセル)である。
【0275】
仮想セルのピコセルについては、当該ピコセル全体にわたって受信電力がほぼ均一になるので、ABS自体が不要であり、よってABSに関するスケジューリングも必要ない。そのため、ピコeNodeBによるスケジューリングの負担が軽減される。
【0276】
また、ABSを用いると、一般的に、マクロセルのスループットが低下する。しかし、上述したように、仮想セルであるピコセルを用いればABS自体が不要である。よって、仮想セルであるピコセルを用いることで、マクロセルのスループットの低下を防ぐことができる。
【0277】
また、例えば、上記制御信号は、無線リソースの割当てに関する制御情報を送信するための制御信号を含む。具体的には、例えば、上記制御信号は、物理ダウンリンク制御チャネル(PDCCH)で送信される制御信号を含む。
【0278】
これにより、無線リソースの割当てのための制御信号を仮想セルごとに別々に送信することができる。そのため、1つのeNodeBから送信可能な無線リソースの割当て用の制御信号の量を、MU−MIMOが用いられる場合よりも多くすることができる。即ち、ダウンリンク割当て及びアップリンク許可のような無線リソースの割当てのための情報の量をより多くすることができる。その結果、制御信号の送信量の制約が小さくなるので、より多くのユーザデータを送信し得る。即ち、無線通信システム1におけるスループットが向上し得る。このように、仮想セルが用いられれば、より多くのセル分割利得を得ることができる。
【0279】
また、例えば、上記制御信号は、セルの識別情報を送信するための制御信号を含む。具体的には、例えば、上記制御信号は、同期チャネルで送信される制御信号を含む。
【0280】
これにより、UEは、セルサーチにおいて各仮想セルを1つのセルとして認識することができる。よって、UEに、仮想セルを1つのセルとみなして通信させることが可能になる。
【0281】
また、例えば、上記制御信号は、共通リファレンス信号(CRS)を含む。
【0282】
これにより、UE200は、CRSを利用して、受信信号を復調することが可能になる。即ち、UE200は、CRSの位相に基づいて他の受信信号を復調することができる。そのため、CSI−RSを利用して受信信号を復調する受信方式のみではなく、CRSを利用して受信信号を復調する受信方式も、採用することが可能になる。よって、無線通信システム1について、受信方式をより自由に選択することが可能になる。
【0283】
また、本開示に係る実施形態の第1の変形例によれば、上記指向性アンテナは、マクロセルと一部又は全体で重複するピコセル用の基地局の指向性アンテナである。また、上記複数の通信領域の各々は、上記マクロセルと一部又は全体で重複する。また、上記仮想的なセルは、上記マクロセルと一部又は全体で重複する仮想的なスモールセルである。
【0284】
このように、ピコeNodeBが仮想セルを形成することは、以下のようにいくつかの利点をもたらす。
【0285】
例えば、マクロセルの中心から離れた領域(例えば、セルエッジ付近)にピコセルを形成することが望ましい場合には、マクロeNodeBが仮想セルでピコセルを形成すると、当該ピコセルの半径が大きくなってしまう。一方、上記領域の近くに位置するピコeNodeBが、仮想セルを形成すれば、当該ピコセルの半径は所望の大きさに調整され得る。その結果、上記領域において所望の大きさのピコセルを形成することが可能になる。
【0286】
また、ピコeNodeBが仮想セルを形成することにより、設置するピコeNodeBの数を抑えることができる。その結果、無線通信システム1に要するコストを抑えることができる。より具体的には、マクロeNodeBの周囲に例えば10程度のピコeNodeBを設置することは可能であるが、例えば300個程度のピコeNodeBを設置することは現実的に不可能である。したがって、マクロeNodeBの周囲に例えば10程度のピコeNodeBをし、当該ピコeNodeBに50個程度の仮想セルを形成させることにより、マクロeNodeBの周辺に、仮想セルである500個程度のピコセルを形成することができる。このように、少ないピコeNodeBを設置するだけでも、所望の数のピコセルを形成することが可能になる。
【0287】
また、上述したように、仮想セルであるピコセルが用いられる場合には、当該ピコセル全体にわたって受信電力がほぼ均一になるので、ABS自体が不要であり、よってABSに関するスケジューリングも必要ない。そのため、ピコeNodeBによるスケジューリングの負担が軽減される。また、仮想セルであるピコセルを用いればABS自体が不要であるので、仮想セルであるピコセルを用いることで、マクロセルのスループットの低下を防ぐことができる。
【0288】
また、例えば、上記複数の通信領域の個々の通信領域(即ち、個々の仮想ピコセル)において、当該通信領域に対応するビームの受信電力が、マクロeNodeB11により送信される信号の受信電力よりも大きくなるように、上記複数のビームの送信電力が決定される。より具体的には、例えば、マクロeNodeB11により送信される信号の受信電力であって、上記複数の通信領域の個々の通信領域(即ち、個々の仮想ピコセル)にける上記受信電力に関する情報が取得される。そして、取得される当該情報に基づいて、上記個々の通信領域に対応するビームの送信電力が決定される。
【0289】
このようにビームの電力を決定することにより、仮想ピコセルにおけるマクロeNodeBの送信信号による干渉の影響を小さくすることができる。その結果、UEは、仮想ピコセルにおいてeNodeBと無線通信することが可能になる。
【0290】
また、本開示に係る実施形態の第2の変形例によれば、上記複数の通信領域の個別の通信領域(即ち、仮想セル)ごとのCRSが、上記複数のビームのうちの対応するビームで送信される。また、また、上記複数の通信領域に共通のCRSが、上記指向性アンテナにより形成される無指向性のビームで送信される。
【0291】
これにより、UEは、eNodeBとUEとの間のチャネルを示すチャネル情報を得ることができる。即ち、指向性CRSは重み係数が乗算されているので、指向性CRSから従来のようなチャネル情報を得ることは困難であるが、無指向性CRSはいずれの重み係数も乗算されていないので、無指向性CRSから従来のようなチャネル情報を得ることができる。
【0292】
また、例えば、上記複数の通信領域のいずれかの通信領域に位置する端末装置に、当該端末装置が位置する通信領域に隣接する通信領域に対応するビームの重み係数が提供される。
【0293】
これにより、UEは、隣接仮想セルの信号の受信電力を実際に測定することができなくても、隣接仮想セルの信号の受信電力を仮想的に算出することができる。よって、ハンドオーバに好ましい隣接仮想セルを良好に特定することが可能になる。また、このような手法は、受信電力の実際の測定を伴わないので、より高速に実行され得る。また、ターゲットが隣接仮想セルに限られるので、処理量の増加が抑えられる。このような点でも、上述した手法は、より高速に実行され得る。
【0294】
また、例えば、上記制御信号は、共通リファレンス信号を含まず、上記複数の通信領域に共通のリファレンス信号が、上記指向性アンテナにより形成される無指向性のビームで送信されてもよい。
【0295】
これにより、UE200は、指向性CRSと無指向性CRSとを区別する必要はなく、CRSの受信結果からチャネル情報を取得することができる。
【0296】
また、本開示に係る実施形態の第3の変形例によれば、上記指向性アンテナのビームの形成を制御することにより、上記仮想的なセルとみなされる通信領域の追加、削除又は変更が行われる。
【0297】
これにより、仮想セルを柔軟に追加し、削除し、又は変更することができるので、無線通信システムのより柔軟な配置及び運用を可能にする。また、トラフィックの多い領域に即座に仮想セルを形成できるので、無線通信システムのスループットを向上することが可能になる。
【0298】
また、例えば、上記指向性アンテナにより形成されるビームが段階的に変化するように、上記指向性アンテナのビームの形成を制御することにより、上記通信領域の追加、削除又は変更が段階的に行われる。具体的には、例えば、上記指向性アンテナにより形成されるビームの送信電力が段階的に変化するように、上記指向性アンテナのビームの形成が制御される。また、例えば、上記指向性アンテナにより形成されるビームに対応する通信領域の大きさが段階的に変化するように、上記指向性アンテナのビームの形成が制御される。
【0299】
これにより、仮想セルの追加、削除及び変更による既存の通信への影響を小さくすることができる。
【0300】
例えば、仮想セルの追加の場合に、急に仮想セルが出現し、当該仮想セルの中又は近傍にUEが位置する場合に、このUEの既存の通信に仮想セルの信号が干渉し得る。一方、送信電力を徐々に増加させ、又は仮想セルの大きさを徐々に拡大すれば、UEは、当該仮想セルがハンドオーバのターゲットになった時点で、ハンドオーバできる。よって、UE200の既存の通信への影響は小さい。
【0301】
また、例えば、仮想セルの削除の場合に、急に仮想セルが消滅し、当該仮想セルの中又は近傍にUEが位置していた場合に、このUEのLOFが引き起こされ得る。一方、送信電力を徐々に減少させ、又は仮想セルの大きさを徐々に縮小すれば、UE200は、仮想セルが消滅する前に、別の仮想セル(又は通常のセル)へのハンドオーバを行うことができる。よって、UE200の既存の通信への影響は小さい。
【0302】
また、例えば、仮想セルの変更の場合にも、仮想セルの追加又は削除と同様に、UE200の既存の通信への影響は小さい。
【0303】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態を説明したが、本開示は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0304】
例えば、無線通信システムがLTEの一連の通信規格に準拠する例を説明したが、本開示は係る例に限定されない。例えば、無線通信システムは、別の通信規格に準拠したシステムであってもよい。この場合に、無線通信システムに含まれる基地局は、eNodeBの代わりに、NodeB又はBTS(Base Transceiver Station)などの他の種類の基地局として実現されてもよい。また、無線通信システムに含まれる端末装置は、UEの代わりに、MS(Mobile Station)などの他の種類の端末装置として実現されてもよい。
【0305】
例えば、本明細書の通信制御処理における処理ステップは、必ずしもフローチャートに記載された順序に沿って時系列に実行されなくてよい。例えば、通信制御処理における処理ステップは、フローチャートとして記載した順序と異なる順序で実行されても、並列的に実行されてもよい。
【0306】
また、通信制御装置(例えば、eNodeB)及び端末装置(例えば、UE)に内蔵されるCPU、ROM及びRAM等のハードウェアに、上記通信制御装置の各構成と同等の機能を発揮させるためのコンピュータプログラムも作成可能である。また、当該コンピュータプログラムを記憶させた記憶媒体も提供される。
【0307】
なお、以下のような構成も本開示の技術的範囲に属する。
(1)
3次元方向へのビームを形成可能な指向性アンテナにより異なる3次元方向への複数のビームが形成される場合に、前記指向性アンテナにより形成される個別のビームにそれぞれ対応する複数の通信領域の各々を仮想的なセルとみなして通信制御を行う制御部
を備える通信制御装置。
(2)
前記制御部は、前記複数の通信領域の個別の通信領域ごとの制御信号が生成され、対応する個別の通信領域へ当該制御信号が送信されるように、通信制御を行う、前記(1)に記載の通信制御装置。
(3)
前記制御信号は、無線リソースの割当てに関する制御情報を送信するための制御信号を含む、前記(2)に記載の通信制御装置。
(4)
前記制御信号は、物理ダウンリンク制御チャネルで送信される制御信号を含む、前記(3)に記載の通信制御装置。
(5)
前記制御信号は、セルの識別情報を送信するための制御信号を含む、前記(2)〜(4)のいずれか1項に記載の通信制御装置。
(6)
前記制御信号は、同期チャネルで送信される制御信号を含む、前記(5)に記載の通信制御装置。
(7)
前記制御信号は、共通リファレンス信号を含む、前記(2)〜(6)のいずれか1項に記載の通信制御装置。
(8)
前記指向性アンテナは、マクロセルと一部又は全体で重複するスモールセル用の基地局の指向性アンテナであり、
前記複数の通信領域の各々は、前記マクロセルと一部又は全体で重複し、
前記仮想的なセルは、前記マクロセルと一部又は全体で重複する仮想的なスモールセルである、
前記(1)〜(7)のいずれか1項に記載の通信制御装置。
(9)
前記制御部は、前記複数の通信領域の個々の通信領域において、当該通信領域に対応するビームの受信電力が、前記マクロセルの基地局により送信される信号の受信電力よりも大きくなるように、前記複数のビームの送信電力を決定する、前記(8)に記載の通信制御装置。
(10)
前記制御部は、前記マクロセルの前記基地局により送信される信号の受信電力であって、前記複数の通信領域の個々の通信領域にける前記受信電力に関する情報を取得し、当該情報に基づいて、前記個々の通信領域に対応するビームの送信電力を決定する、前記(9)に記載の通信制御装置。
(11)
前記複数の通信領域の個別の通信領域ごとの共通リファレンス信号が、前記複数のビームのうちの対応するビームで送信され、
前記複数の通信領域に共通の共通リファレンス信号が、前記指向性アンテナにより形成される無指向性のビームで送信される、
前記(7)に記載の通信制御装置。
(12)
前記制御部は、前記複数の通信領域のいずれかの通信領域に位置する端末装置に、当該端末装置が位置する通信領域に隣接する通信領域に対応するビームの重み係数を提供する、前記(11)に記載の通信制御装置。
(13)
前記制御信号は、共通リファレンス信号を含まず、
前記複数の通信領域に共通のリファレンス信号が、前記指向性アンテナにより形成される無指向性のビームで送信される、
前記(2)〜(6)のいずれか1項に記載の通信制御装置。
(14)
前記制御部は、前記指向性アンテナのビームの形成を制御することにより、前記仮想的なセルとみなされる通信領域の追加、削除又は変更を行う、前記(1)〜(13)のいずれか1項に記載の通信制御装置。
(15)
前記制御部は、前記指向性アンテナにより形成されるビームが段階的に変化するように、前記指向性アンテナのビームの形成を制御することにより、前記通信領域の追加、削除又は変更を段階的に行う、前記(14)に記載の通信制御装置。
(16)
前記制御部は、前記指向性アンテナにより形成されるビームの送信電力が段階的に変化するように、前記指向性アンテナのビームの形成を制御する、前記(15)に記載の通信制御装置。
(17)
前記制御部は、前記指向性アンテナにより形成されるビームに対応する通信領域の大きさが段階的に変化するように、前記指向性アンテナのビームの形成を制御する、前記(15)又は(16)に記載の通信制御装置。
(18)
前記仮想的なセルは、マクロセルと一部又は全体で重複する仮想的なスモールセルである、前記(1)〜(17)のいずれか1項に記載の通信制御
(19)
3次元方向へのビームを形成可能な指向性アンテナにより異なる3次元方向への複数のビームが形成される場合に、前記指向性アンテナにより形成される個別のビームにそれぞれ対応する複数の通信領域の各々を仮想的なセルとみなして通信制御を行うこと
を含む通信制御方法。
(20)
3次元方向へのビームを形成可能な指向性アンテナにより異なる3次元方向への複数のビームが形成される場合に、前記指向性アンテナにより形成される個別のビームにそれぞれ対応する複数の通信領域の各々を仮想的なセルとみなして通信制御を行う基地局と、無線通信する無線通信部と、
前記複数の通信領域の各々を仮想的なセルとみなして通信処理を行う制御部と、
を備える端末装置。