(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記単独回動制御手段は、前記第1指示部の回転位置として設定された位置へ、より短時間で到達させることが可能な回転方向へ前記第1指示部を回転動作させることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のアナログ電子時計。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態のアナログ電子時計100の平面図である。
【0011】
本実施形態のアナログ電子時計100は、図示略のバンドにより腕に装着可能な腕時計型のものであり、ケーシング2の内部に設けられた表示盤3と、表示盤3の上面を覆う図示略の風防ガラスとの間に、複数の指針が回転可能に配置されている。また、ケーシング2の側面部分には、りゅうず381、及び、二つの押しボタンスイッチ382、383が設けられている。
【0012】
複数の指針のうち、時針51、分針52、及び、秒針53は、表示盤3の略中央に設けられた同一の回転軸の周りを回転する。以降、時針51、分針52、及び、秒針53による表示をセンター表示と記し、当該センター表示に係る目盛が設けられた表示盤3の領域、及び、時針51、分針52、並びに、秒針53により指し示される領域をセンター表示領域と記す。表示盤3には、12時方向、6時方向、及び、9時方向にそれぞれ円形の表示領域4、5、6が設けられている。表示領域4の内部には、第一短小針54及び第一長小針55が回転可能に配置され、また、表示領域5の内部には、第二短小針56及び第二長小針57が回転可能に配置され、表示領域6の内部には、機能針58(第1指示部、モード指針)が回転可能に配置されている。
以降、時針51、分針52、秒針53、第一短小針54、第一長小針55、第二短小針56、第二長小針57、及び、機能針58のうち2本以上の一部又は全部をまとめて、例えば、指針51〜58とも記す。また、指針51〜57により機能指針が構成される。
【0013】
表示盤3の下には、回転板である日車59(第2指示部)が設けられている。日車59には、その回転軸に対する一の回転円周上に1日から31日までの各日付を示す日付標識(標識)が順番に形成されており、表示盤3の3時方向に設けられた小窓7から日付標識のうちの何れかが露出されて日付の表示が行われる。本実施形態のアナログ電子時計100では、小窓7は、日付標識のうち何れか一日分が露出可能な大きさとなっている。
【0014】
表示盤3には、時針51、分針52、及び、秒針53の回転軸に対する一の回転円周上に1時から12時の各位置(方向)を示す時字が設けられ、他の回転円周上に、0秒から59秒の各秒を示す秒目盛が設けられ、これらの時字及び秒目盛が設けられた円周の更に外側であって表示盤3の周縁部に、世界時計に係る表示を行う際に選択可能な都市名が略称で記載されている。
【0015】
表示領域4、5には、同一の目盛が設けられている。この目盛としては、本実施形態のアナログ電子時計100では、内側の円周上に時字が設けられ、外側の円周上に各秒を示す秒目盛が設けられている。従って、センター表示領域及び表示領域4、5の何れであっても時刻の表示やストップウォッチ機能における秒値の表示を行わせることが出来る。
一方、表示領域6には、左側に機能種別を示す種別標識「STW」、「TM」、「WT」が設けられている。
【0016】
図2は、本実施形態のアナログ電子時計100の内部構成を示すブロック図である。
【0017】
このアナログ電子時計100は、CPU(Central Processing Unit)31(単独回動制御手段、連動回動制御手段、回動選択手段)と、ROM(Read Only Memory)32(記憶手段)と、RAM(Random Access Memory)33と、発振回路34と、分周回路35と、時刻計数回路36と、電源部37と、操作部38(操作手段)と、モータ駆動回路81と、輪列機構61〜69(歯車列)と、ステッピングモータ71〜73、75、77、78と、時針51と、分針52と、秒針53と、第一短小針54と、第一長小針55と、第二短小針56と、第二長小針57と、機能針58と、日車59などを備える。
【0018】
ステッピングモータ71〜73は、それぞれ輪列機構61〜63を介して時針51、分針52、秒針53を個別に回転動作させる。ステッピングモータ75は、輪列機構65を介して第一長小針55を回転動作させ、また、輪列機構65に連動する輪列機構64を介して第一短小針54を回転動作させる。ステッピングモータ77は、輪列機構67を介して第二長小針57を回転動作させ、また、輪列機構67に連動する輪列機構66を介して第二短小針56を回転動作させる。ステッピングモータ78は、輪列機構68を介して機能針58を回転動作させ、また、輪列機構68に連動する輪列機構69を介して日車59を回転動作させる。
【0019】
ステッピングモータ71〜73、75、77、78は、モータ駆動回路81から出力される駆動電圧パルスにより駆動(ステップ駆動)されて、所定の角度(例えば、180度)ずつステップ回転する。輪列機構61〜69は、それぞれ、複数の歯車が噛み合わされて所定のギア比で回転する構成であり、輪列機構61〜63、65、67、68におけるそれぞれ最後の歯車は、ステッピングモータ71〜73、75、77、78のステップ回転に連動してそれぞれ所定角度の回転動作を時針51、分針52、秒針53、第一長小針55、第二長小針57、及び、機能針58に伝えることで、それぞれ所望の位置(回転位置)を指し示させる。ここでは、時針51、分針52、第一長小針55、第二長小針57、及び、機能針58は、一ステップ当たり1度(第1回転角度)回転移動(ステップ回転)し、秒針53は、一ステップ当たり6度回転移動する。これらの指針51〜58と日車59は、それぞれ、正転方向に64pps(pulse per second)で早送り移動が可能であり、また、逆転方向に32ppsで早送り移動が可能である。
【0020】
輪列機構64、66、69は、輪列機構65、67、68の歯車の回転にそれぞれ連動して回転する歯車を有し、第一短小針54、第二短小針56、及び、日車59に所定角度の回転動作を伝える。第一短小針54及び第二短小針56は、それぞれ、第一長小針55及び第二長小針57の回転角度に対し1/12の回転角度で回転する。即ち、第一長小針55及び第二長小針57が表示領域4、5の内部で各々の回転軸の周りを一周(360度回転)する間に、第一短小針54及び第二短小針56は、第一長小針55及び第二長小針57と同一の回転方向に30度回転する。輪列機構69は、機能針58が表示領域6の内部で回転軸の周りを12周すると、小窓7から露出される日車59上の日付標識の一日分の変化に対応する角度(所定の角度間隔、例えば、約11.61度)回転するように1:372でギア比が構成され、一ステップ当たり1/372度(第2回転角度)回転移動する。
【0021】
輪列機構61〜69をそれぞれ構成する複数の歯車の間には、それぞれ、遊び(バックラッシュ)が存在する。従って、各指針51〜58や日車59の回転方向を正転方向と逆転方向との間で切り替える場合、ステッピングモータ71〜73、75、77、78が所定回数(空回りステップ数)ステップ回転する間、輪列機構61〜69の途中の歯車間で空回りすることになり、各指針51〜58や日車59は、回転動作されない。
【0022】
本実施形態のアナログ電子時計100では、逆転方向へ指針を移動させる場合には、当該指針の空回りステップ数又はこれ以上のステップ数(振り戻しステップ数)余分にステッピングモータに逆転動作を行わせ、その後、正転方向への回転に係る空回りを解消するために、上記振り戻しステップ数ステッピングモータに正転動作を行わせる振り戻し動作を行う必要がある。この空回りステップ数は、機能針58と日車59とで異なり、日車59の空回りステップ数の方が大きくなっている。従って、機能針58が逆転移動される場合には、日車59の位置は、正転方向に回転される場合の位置と比較して最大で当該空回りステップ数の差だけずれる(正転方向に位置する)ことになる。この振り戻しステップ数は、予めROM32に記憶されて振り戻し動作の際に読み出される。
【0023】
CPU31は、各種演算処理を行い、アナログ電子時計100の動作全体を統括制御する。ROM32は、アナログ電子時計100の動作に係る制御プログラムや設定データを格納する。RAM33は、CPU31に作業用のメモリ空間を提供し、一時データや更新可能な設定データを記憶する揮発性メモリである。この更新可能な設定データには、3つの表示領域に各々表示させる内容の機能種別に係る表示設定が含まれる。また、RAM33には、指針51〜58及び日車59の現在の指針位置データと、これらの指針51〜58又は日車59の設定位置データとが記憶されている。ユーザにより設定更新が可能な設定データは、RAM33の他、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリを備えて読み書き可能とされても良い。また、上記の振り戻しステップ数は、工場での検査時に不揮発性メモリに書き込まれても良い。
【0024】
モータ駆動回路81は、CPU31から入力された制御信号に応じてステッピングモータ71〜73、75、77、78をそれぞれ駆動するための電圧駆動パルスを適切なタイミング及びパルス幅で出力する。
【0025】
発振回路34は、所定の周波数信号を生成する回路であり、ここでは、例えば、水晶発振回路が用いられている。分周回路35は、この発振回路34から入力された信号を、アナログ電子時計100で用いられる各種周波数の信号に分周してCPU31及び時刻計数回路36に出力する。時刻計数回路36は、分周回路35から入力された信号を計数し、初期時刻に加算していくことで現在時刻を計数する。
【0026】
電源部37は、アナログ電子時計100の各部に電力を供給する。この電源部37としては、例えば、太陽光発電と二次電池との組み合わせであり、表示盤3に設けられた図示略のソーラーパネルを用いて発電された電力が各部に供給され、また、二次電池に蓄電される一方、発電が出来ない状況では、二次電池から電力が供給される。
【0027】
操作部38は、りゅうず381及び押しボタンスイッチ382、383を備え、ユーザによるこれらりゅうず381、押しボタンスイッチ382、383への入力操作を電気信号に変換してCPU31に出力する。押しボタンスイッチ382、383は、例えば、ストップウォッチ機能に係る時間計測の開始、終了やリセットといった操作に用いられる。また、りゅうず381は、本実施形態のアナログ電子時計100では、二段階の引き出し動作が可能となっており、当該引き出しの段階、回転動作の向きや回転角度、及び、これらと押しボタンスイッチ382、383の押下動作との組み合わせにより、例えば、世界時計表示に係る表示対象都市を切り替える動作が行われる。
【0028】
次に、本実施形態のアナログ電子時計100における指針動作及び当該指針の動作に基づく表示動作について説明する。
【0029】
このアナログ電子時計100では、各指針の位置が変更される場合には、先ず、RAM33に指針の移動先を示す設定位置データが書込まれる。この設定位置データが定期的に指針の現在位置データと比較されて、異なる位置が検出された場合に、当該移動させる指針に対応するステッピングモータを駆動させる駆動信号がモータ駆動回路81に出力される。また、各指針の早送り動作が行われる場合には、移動先の位置に基づいて早送りの方向とステップ数が定められ、その後、早送りに係る割込み処理が呼び出されて、移動対象の指針を予め設定された早送り速度、即ち、正転方向に64pps、逆転方向に32ppsで早送りさせる処理が行われる。
【0030】
本実施形態のアナログ電子時計100では、設定された一の都市(ホーム都市)における現在時刻表示機能と、選択された世界の都市における時刻を表示する世界時計表示機能と、ストップウォッチ機能と、の三種類の機能種別に係る表示がセンター表示領域、表示領域4、5の三表示領域に割り振られて何れかに表示されている。アナログ電子時計100には、各表示領域内での各指針位置の変更、修正に係る動作の他、これらの三種類の機能種別に係る表示の三表示領域への割り振りを、操作部38へのユーザによる入力操作に応じて入れ替える動作モードが設けられている。
【0031】
図3は、本実施形態のアナログ電子時計100において実行される機能表示位置変更処理のCPU31による制御手順を示すフローチャートである。
【0032】
本実施形態のアナログ電子時計100では、例えば、りゅうず381を一段階引き出すことでこの機能表示位置変更処理が開始される。機能表示位置変更処理が開始されると、先ず、CPU31は、日車59の動作中の場合には、この動作を中断し、それから、りゅうず381の回転操作が検出されたか否かを判別する(ステップS101)。回転操作が検出されたと判別された場合には(ステップS101で“YES”)、CPU31は、各表示領域に表示されている内容の機能種別を一つずつ移動させる処理を行う(ステップS102)。具体的には、
図1に示すようにセンター表示領域で現在時刻表示が行われ、表示領域4において世界時計表示がなされ、表示領域5においてストップウォッチ機能に係る表示がなされている場合に、CPU31は、センター表示領域において世界時計表示を行わせ、表示領域4においてストップウォッチ機能に係る表示を行わせ、表示領域5において現在時刻表示を行わせるように各指針51〜58を移動させるための制御信号をモータ駆動回路81に出力する。また、CPU31は、センター表示に移動した表示内容に係る機能種別に対応する種別標識の位置を、機能針58の移動位置に定める(ステップS103)。CPU31は、後述する機能針移動設定処理を呼び出す(ステップS104)。そして、CPU31は、機能針58の早送り移動を開始させた後、処理をステップS101に戻す。
【0033】
一方、回転操作が検出されていないと判別された場合には(ステップS101で“NO”)、CPU31は、引き出されているりゅうず381を押し戻す操作が検出されたか否かを判別する(ステップS105)。押し戻し操作が検出されていないと判別された場合には(ステップS105で“NO”)、CPU31の処理は、ステップS101に戻る。
【0034】
押し戻し操作が検出されたと判別された場合には(ステップS105で“YES”)、CPU31は、これまでの機能表示位置変更処理において設定されている機能表示位置を確定し、それから、機能針移動設定処理を呼び出して実行する(ステップS106)。そして、CPU31は、機能表示位置変更処理を終了する。
【0035】
図4は、機能表示位置変更処理で呼び出されて実行される機能針移動設定処理のCPU31による制御手順を示すフローチャートである。
【0036】
機能針移動設定処理が開始されると、CPU31は、先ず、機能表示位置変更処理における機能表示位置の設定の確定前であるか否かを判別する(ステップS121)。具体的には、CPU31は、ステップS105の処理で“YES”に分岐していないか否かを判別する。機能表示位置の設定が確定していないと判別された場合、即ち、ステップS105の判別処理で“YES”に分岐していないと判別された場合には(ステップS121で“YES”)、CPU31は、日車59の位置を考慮せずに、機能針58を最短で移動先設定位置へ到達させるための回転方向及び回転ステップ数を設定する(ステップS122)。それから、CPU31の処理は、ステップS124に移行する。
【0037】
一方、機能表示位置の設定が確定したと判別された場合、即ち、ステップS105の判別処理で“YES”に分岐したと判別された場合には(ステップS121で“NO”)、CPU31は、日車59の位置と機能針58の位置を何れも移動先設定位置へ到達させるために最短の回転方向及び回転ステップ数を設定する(ステップS123)。それから、CPU31の処理は、ステップS124に移行する。
【0038】
ステップS122又はステップS123の処理からステップS124の処理に移行すると、CPU31は、機能針58の早送り処理を起動する(ステップS124)。この早送り処理は、他の処理と並列且つ優先的に行われる処理である。その後、CPU31は、機能針移動設定処理を終了する。
【0039】
図5は、本実施形態のアナログ電子時計100において、
図1の表示状態から機能表示に係る設定が変更される場合の表示例を示すアナログ電子時計100の平面図である。
【0040】
図1に示す状態では、センター表示領域で行われている現在時刻の表示により、東京における現在時刻である3時37分52秒が示されている。また、表示領域4では、世界時計表示として、ニューヨークにおける現在時刻(東京と比較して、−14時間)である13時37分(50秒〜59秒)が表示されている。また、表示領域5では、ストップウォッチ機能におけるリセット状態を示す0分0秒が表示されている。
【0041】
このとき、日車59は、センター表示が行われている現在時刻表示に従って、東京における日付である12日を示す日付標識が小窓7から露出されるように位置している。一方、このときのニューヨークにおける日付は、前日の11日である。
【0042】
この場合に、ユーザによる操作部38への入力操作が行われ、りゅうず381が一段階引き出された後に、りゅうず381が所定角度回転されて(ステップS101で“YES”)、三表示領域の表示が1つずつ入れ換えられると(ステップS102)、
図5(a)に示すように、センター表示領域には、世界時計に係る表示として、ニューヨークにおける現在時刻である13時37分が表示されることになる。続いて、機能針58が種別標識「WT」の位置に回転動作される設定が行われ(ステップS103)、この設定に応じて機能針58の回転方向及び回転ステップ数が決定され、回転動作される(ステップS104)。
【0043】
種別標識「TM」の位置から種別標識「WT」の位置までの角度は、−30度(正転方向が正の値)である。一方で、機能針58だけではなく、東京の日付である12日の表示位置からニューヨークの日付である11日の表示位置へ日車59の位置を正確に世界時計表示にあわせるためには、機能針58を逆転方向に12周(4320度)回転させた後に、更に、機能針58を30度逆転方向に回転させる必要がある。
【0044】
機能針移動設定処理において、ステップS104の処理は、機能表示位置の変更確定前であるので(ステップS121で“YES”)、日車59の位置が考慮されずに機能針58の位置のみが変更設定される。即ち、機能針58は、逆転方向に30度回転される設定が行われる(ステップS122)。そして、早送り処理が呼び出されて(ステップS124)、日車59により12日の表示状態のまま、機能針58が種別標識「WT」を指し示すことになる。
【0045】
その後、りゅうず381の押し戻し動作がなされて(ステップS105で“YES”)、機能表示位置の変更が確定すると、再度、機能針移動設定処理が呼び出される(ステップS106)。このタイミングで実行される機能針移動設定処理では、機能表示位置の変更が既に確定されているので(ステップS121で“NO”)、機能針58の位置と共に、日車59がセンター表示領域で行われている世界時計表示における日付を正確に示すように回転方向と回転ステップ数が設定される。即ち、機能針58は、12日の日付と種別標識「WT」を表示している状態から、11日の日付と種別標識「WT」を表示している段階へ移行させるために、逆転方向に4320度回転動作が行われる設定がなされる(ステップS123)。そして、早送り処理が起動され(ステップS124)、
図5(b)に示すように、日付表示が11日に変更される。
【0046】
図6は、アナログ電子時計100において行われる振り戻し量設定処理のCPU31による制御手順を示すフローチャートである。
【0047】
この振り戻し量設定処理は、機能針移動設定処理のステップS124において呼び出された早送り処理により、機能針58の早送り動作が終了した場合に続けて呼び出される処理である。
【0048】
振り戻し量設定処理が開始されると、CPU31は、早送り処理において機能針58が回転移動した方向が逆転方向であったか否かを判別する(ステップS141)。逆転方向ではなかったと判別された場合には(ステップS141で“NO”)、CPU31は、そのまま振り戻し量設定処理を終了する。
【0049】
一方、機能針58の回転移動した方向が逆転方向であったと判別された場合には(ステップS141で“YES”)、CPU31は、機能表示位置変更処理における機能表示位置の設定の確定前であるか否かを判別する(ステップS142)。機能表示位置の設定の確定前であると判別された場合には(ステップS142で“YES”)、CPU31は、予めROM32に記憶されている機能針58の振り戻しに係る振り戻しステップ数を振り戻し量として設定する(ステップS143)。それから、CPU31の処理は、ステップS145に移行する。機能表示位置の設定の確定後であると判別された場合には(ステップS142で“NO”)、CPU31は、予めROM32に記憶されている日車59の振り戻しに係る振り戻しステップ数を振り戻し量として設定する(ステップS144)。それから、CPU31の処理は、ステップS145に移行する。
【0050】
ステップS143、S144の処理の何れかからステップS145の処理に移行すると、CPU31は、振り戻し処理を起動する(ステップS145)。この振り戻し処理は、早送り処理と同様に、他の処理と並列に起動され、優先的に実行される処理である。CPU31は、この振り戻し処理を実行することで、機能針58のみ、又は、機能針58及び日車59の両方について、正転方向への回転に対し空回りを生じさせる遊びが存在しない状態とさせる。そして、CPU31は、振り戻し量設定処理を終了する。
【0051】
以上のように、本実施形態のアナログ電子時計100は、ステッピングモータ78と、ステッピングモータ78のステップ駆動により1度ずつ回転する機能針58と、機能針58と連動して1/372度ずつ回転する日車59とを備える。CPU31は、機能針58を単独で設定位置に回転移動させる場合と、機能針58及び日車59を何れも設定位置に回転移動させる場合とがあり、機能針58が操作される機能表示位置変更処理が開始されると、機能針58が単独で動作され、機能表示位置変更処理において機能表示位置が確定されて機能針58の指し示す位置が最終的に定まった後に、機能針58及び日車59を何れも設定位置に回転移動させる。従って、機能針58と日車59とが一のステップモータ78により連動して回転動作される場合であっても、機能針58を動作させるときには日車59の回転位置を考慮しないので、ユーザを不要に長時間待たせずに、速やかに機能針58の位置を設定された位置に合わせて表示させることが出来る。一方で、このような操作時には、日車59により表示されている日付情報をユーザが必要とすることは、通常想定されないので、ユーザの使い勝手の低下を抑えることが出来る。
【0052】
また、このようにギア比の大きい指針を連動させる場合、バックラッシュのステップ数が大きく異なる場合があるので、このバックラッシュに係る正転方向への空回りステップ数に係る振り戻しステップ数をROM32に記憶させ、振り戻し動作により適切な位置に機能針58及び日車59を回転移動させることが出来る。特に機能針58のみの回転動作を行わせる場合、日車59の空回りを考慮しないことで、不要に機能針58の振り戻し動作のステップ数を増加させず、短時間で機能針58を設定位置にあわせることが出来る。一方で、日車59の動作時には、当該日車59の振り戻しステップ数により振り戻し動作を行わせることが出来る。
【0053】
また、日付の変更中であっても、機能表示位置の変更操作があった場合には、日付の変更動作を中断して機能表示位置の変更に係る機能針58の動作を優先させるので、ユーザを無駄に待たせないで快適に操作可能とすることが出来る。
【0054】
また、日車59の回転位置を考慮しないで機能針58のみを設定位置に移動させる場合には、日車59を移動させる場合の回転方向を考慮せず、機能針58が最短で設定位置に到達可能な向きに機能針58を回転させるので、機能表示位置の変更の際の機能針58の動作に余計な時間を取られずに、ユーザはスムーズに操作を行うことが出来る。
【0055】
また、機能針58のステップ回転の角度は、日車59のステップ回転の角度の整数倍であるので、日車59の位置によらずに機能針58の位置を調整するのが容易となっている。
【0056】
また、操作部38を備え、ユーザが操作部38のりゅうず381を一段階引き出すことで機能表示位置の変更に係る動作モードに移行し、引き出されたりゅうず381を押し戻すことで機能表示位置の変更に係る設定を確定することが出来るので、容易に表示位置を変更することが出来る。
【0057】
また、このように、他の指針51〜57で表示される機能種別を表示するための機能針58と日車59の組合せとすることで、使用頻度が低く、ユーザに表示情報が同時に必要とされる可能性の低い2つの指示部について1つのステッピングモータ78により効率良く動作させることが出来る。即ち、他の独立性の高い指針の動作に対して1つのステッピングモータを割り当てることが出来る。
【0058】
[変形例]
図7は、機能表示位置変更処理のCPU31による制御手順の変形例を示すフローチャートである。
【0059】
この変形例の機能表示位置変更処理では、上記実施の形態における機能表示位置変更処理に対し、ステップS161〜S168の処理が追加されている点を除いて同一であり、同一の制御内容については同一の符号を付して詳しい説明を省略する。
【0060】
この変形例の機能表示位置変更処理におけるステップS105の判別処理で、りゅうずの押し戻し動作が検出されていないと判別された場合には(ステップS105で“NO”)、続いて、CPU31は、最終操作から終了基準時間が経過したか否かを判別する(ステップS161)。終了基準時間が経過したと判別された場合には(ステップS161で“YES”)、CPU31は、機能表示位置の設定を確定させ、処理をステップS106に移行させる。
【0061】
終了基準時間が経過していないと判別された場合には(ステップS161で“NO”)、CPU31は、機能表示位置変更処理が開始された後、世界時計表示と現在時刻表示との間での表示状態の変更がなされているか否かを判別する(ステップS162)。世界時計表示と現在時刻表示との間での表示状態の変更が行われていないと判別された場合には(ステップS162で“NO”)、CPU31の処理は、ステップS101に戻る。
【0062】
世界時計表示と現在時刻表示との間で表示状態の変更が行われていると判別された場合には(ステップS162で“YES”)、CPU31は、表示状態の変更(切替)の前後で表示すべき日付が異なるか否かを判別する(ステップS163)。切替前後で日付が異ならないと判別された場合には(ステップS163で“NO”)、CPU31の処理は、ステップS101に戻る。
【0063】
切替前後で日付が異なると判別された場合には(ステップS163で“YES”)、更に、CPU31は、切替後の日付が切替前の日付よりも小さいか否かを判別する(ステップS164)。ここで、日付の大小は、日車59における日付標識の配列方向で定められるものであり、各月の末日の日付は、翌月の1日の日付よりも小さいと判断される。切替後の日付が切り替え前の日付より小さいと判別された場合には(ステップS164で“YES”)、直近のりゅうず381の操作(最終操作)が検出されてから終了基準時間が経過するまでの間に切替前の日付が切替後の日付と等しくなるか否かを判別する(ステップS165)。等しくなると判別された場合には(ステップS165で“YES”)、CPU31の処理は、ステップS101に移行する。等しくならないと判別された場合には(ステップS165で“NO”)、CPU31の処理は、ステップS166に移行する。
【0064】
ステップS164の判別処理で、切替後の日付が切り替え前の日付より小さくない(大きい)と判別された場合には(ステップS164で“NO”)、CPU31の処理は、そのままステップS166に移行する。
【0065】
ステップS166の処理に移行すると、CPU31は、最終操作、又は、前回のステップS166の処理で“YES”に分岐したタイミングから待機基準時間(所定の待機時間、所定の時間間隔)が経過したか否かを判別する(ステップS166)。この待機基準時間は、終了基準時間より短い時間であり、例えば、終了基準時間を所定回、例えば6回に分割した時間である。待機基準時間が経過していないと判別された場合には(ステップS166で“NO”)、CPU31の処理は、ステップS101に戻る。
【0066】
待機基準時間が経過したと判別された場合には(ステップS166で“YES”)、CPU31は、機能針58を、切替後の日付への回転移動方向に360ステップ早送り移動させる設定を行う(ステップS167)。そして、CPU31は、早送り処理を起動した後(ステップS168)、処理をステップS101に戻す。
【0067】
以上のように、このアナログ電子時計100の変形例の機能表示位置変更処理では、日車59の日付標識が一日分移動される間に機能針58が表示領域6で12周するように構成されており、機能針58の動作時には、日車59の表示に殆ど影響を与えない。
【0068】
また、機能針58の毎周回につき、機能針58を設定位置に移動させることが出来るので、例えば、現在時刻表示と世界時計表示との切り替えにより日付表示が変化する場合であって、機能表示位置変更操作の途中で暫くユーザからの入力操作が無いような場合には、その間に機能針58を一周ずつ移動させることが出来る。このように操作のない間に少しずつ移動させることで、操作に影響を与えず、一方で、機能表示位置変更操作の確定後の移動量を効率良く減らすことが出来る。
【0069】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。
例えば、上記実施の形態では、機能針58と日車59との組み合わせについて説明したが、ことなるステップ回転角度で連動して回転する複数の回転板を含む指針の組み合わせについて、本発明を適用することが出来る。例えば、日車の代わりに曜日表示に用いられる回転板や指針が用いられても良く、また、機能針58は、機能種別を表示させる代わりに、その他のモード、例えば、アラーム動作、夏時間設定の可否(オン/オフ)や、押しボタンスイッチ382、383の操作音の出力有無などに用いられても良い。或いは、機能表示自体、例えば、物理量を計測するセンサの出力に係る表示を行わせるものであっても良い。
【0070】
また、上記実施の形態では、機能針58が所定数周回すると、日車59上の日付標識が一日分変化する構成としたが、機能針58と日車59の表示が何れも正確に表示可能な比率で回転する限り、任意にステップ回転角度の比を設定することが出来る。
【0071】
また、上記実施の形態では、機能針58と日車59とで空回りステップ数が異なる場合について説明したが、指針同士で空回りステップ数が同一である場合には、振り戻し量についての制御は、通常通りに行わせることが出来る。
【0072】
また、上記実施の形態では、機能針58を単独で動作させる場合に、より短時間で機能針58が移動先に到達する方向に回転させることとしたが、回転方向に制限を付けても良い。
【0073】
また、上記実施の形態では、3つの機能種別を3つの表示領域内で入れ換える場合について説明したが、4つ以上の機能種別の中から選択された機能に切り替える場合であっても良い。また、各表示領域で表示させる機能種別を全て変更する必要はなく、例えば、センター表示に係る表示内容のみを切り替える場合であっても良い。
【0074】
また、上記実施の形態では、ユーザ操作に基づいて機能表示位置を切り替える動作モードにおける変更確定前後についての動作について説明したが、ユーザ操作に基づかない表示、例えば、毎日予め設定された時間に自動的に実施される標準電波の受信処理に係る表示を機能針58に行わせるような動作状態の場合に、受信中の受信強度表示に係る表示と、受信終了後の成功又は失敗に係る表示とで日車59の位置を考慮しなかったりしたりするように切り替えることが出来る。
【0075】
また、上記変形例では、機能表示位置の切替操作中に待機基準時間入力操作がない場合に、間欠的に少しずつ日車59を正しい位置に近づけてゆき、所定の終了時間入力操作が無い場合には、切替操作を自動終了する例に挙げて説明したが、何れか一方でも良い。また、例えば、間欠的動作で日車59が正しい位置に到達した時点で切替操作も終了することとしても良い。
【0076】
また、上記実施の形態では、機能表示位置を維持したまま日車59を移動させていく場合について説明したが、機能表示ではなく、センサ計測値の表示の場合などには、一回目の日車59の動作では、センサ計測値の表示をリセット状態に変更させても良い。
その他、上記実施の形態で示した構成、数値や制御処理の順番など具体的な細部は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0077】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
【0078】
[付記]
<請求項1>
ステップ駆動されるステッピングモータと、
前記ステップ駆動に応じて、所定の第1回転角度ずつステップ回転される第1指示部と、
前記第1指示部の回転に連動して、前記第1回転角度より小さい第2回転角度ずつステップ回転される第2指示部と、
前記第1指示部の回転位置に係る設定に応じて前記ステッピングモータをステップ駆動させる単独回動制御手段と、
当該第1指示部の回転位置と前記第2指示部の回転位置とが何れも設定された位置となるように前記ステッピングモータをステップ駆動させる連動回動制御手段と、
前記第1指示部の回転位置を変更させる動作モード、又は、当該第1指示部の回転位置を一時的に変更させる動作状態にある場合には、前記単独回動制御手段を動作させ、前記第1指示部の最終的な回転位置に係る設定が確定された場合には、前記連動回動制御手段を動作させる回動選択手段と
を備えることを特徴とするアナログ電子時計。
<請求項2>
前記第1指示部及び前記第2指示部をそれぞれ回転させる歯車列の所定方向への回転に係る遊びの大きさのデータを記憶する記憶手段を備え、
前記単独回動制御手段は、前記第1指示部を前記所定方向とは反対方向に移動させる場合に、当該第1指示部の前記遊びの大きさ以上の所定ステップ数、前記第1指示部を当該反対方向及び前記所定方向に順に回転動作させ、
前記連動回動制御手段は、前記第2指示部を前記所定方向とは反対方向に移動させる場合に、当該第2指示部の前記遊びの大きさ以上の所定ステップ数、前記第1指示部及び前記第2指示部を当該反対方向及び前記所定方向に順に回転動作させることを特徴とする請求項1記載のアナログ電子時計。
<請求項3>
前記回動選択手段は、前記第2指示部の回転動作中に前記第1指示部の回転位置を変更させる動作モード、又は、前記第1指示部の回転位置を一時的に変更させる動作状態に移行した場合には、前記連動回動制御手段による前記第2指示部の回転動作を中断させて、前記単独回動制御手段の動作に切り替えることを特徴とする請求項1又は2記載のアナログ電子時計。
<請求項4>
前記単独回動制御手段は、前記第1指示部の回転位置として設定された位置へ、より短時間で到達させることが可能な回転方向へ前記第1指示部を回転動作させることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のアナログ電子時計。
<請求項5>
前記第1回転角度は、前記第2回転角度の整数倍に設定されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載のアナログ電子時計。
<請求項6>
前記第2指示部は、所定の角度間隔で設けられた複数の標識のうちの一つが回転位置に応じて選択的に示される構成であり、
前記第1回転角度及び前記第2回転角度は、前記第2指示部が前記所定の角度間隔回転する間に、前記第1指示部が所定回360度回転するように定められている
ことを特徴とする請求項5記載のアナログ電子時計。
<請求項7>
ユーザの入力操作を受け付ける操作手段を備え、
前記第1指示部の回転位置を変更させる動作モードには、当該第1指示部の回転位置に係る設定を変更するための前記操作手段への入力操作を待ち受けている状態を含み、
前記回動選択手段は、前記第1指示部の回転位置に係る設定がなされてから所定の待機時間以上、前記操作手段への入力操作が検出されない場合には、所定の時間間隔で前記第2指示部が示すべき前記標識に係る回転位置の方向へ前記第1指示部を360度早送り回転動作させていくことを特徴とする請求項6記載のアナログ電子時計。
<請求項8>
ユーザの入力操作を受け付ける操作手段を備え、
前記第1指示部の回転位置を変更させる動作モードには、当該第1指示部の回転位置に係る設定を変更するための前記操作手段への入力操作を待ち受けている状態を含む
ことを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載のアナログ電子時計。
<請求項9>
複数の機能に係る表示を行うための機能指針を備え、
前記第1指示部は、当該機能指針の一部又は全部により表示されている内容の機能種別を示すモード指針であり、前記第2指示部は、一の面に所定の角度間隔で設けられた各日付を表す複数の標識を有する回転板である
ことを特徴とする請求項1〜8の何れか一項に記載のアナログ電子時計。