(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記予測部は、前記動作体の位置情報のうち、最新の位置情報を時刻でN回(Nは1以上の整数である。)微分したN次微分値を少なくとも用いて、前記動作体の前記所定時刻における位置を予測することを特徴とする請求項1に記載の位置予測装置。
前記予測部は、前記位置情報としての角度情報を時刻で2回微分した角加速度情報に基づき、前記動作体の前記所定時刻における位置を予測することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の位置予測装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載の回転検出装置において、磁気センサ素子により一定サンプリング周期で現在時刻の角度が出力され、記憶手段に記憶、蓄積される。そして、記憶手段に記憶、蓄積されている現在時刻の角度データに至る過去の角度データに、平均化フィルタ等の処理を行い、予測すべきサンプリング時刻における角度(予測角度)が求められる。
【0008】
磁気センサ素子により一定サンプリング周期で出力される、現在時刻の角度データには所定のノイズが含まれる。このようなノイズを含む角度データを用いて、上記特許文献1のように線形外挿処理により予測角度を求めると、予測角度の精度が低下してしまうという問題がある。
図9に示す予測モデルから明らかなように、現在時刻T
nの角度θ
nと過去の時刻T
n-1の角度θ
n-1とが、それぞれ所定のノイズ(
図9中、矢印はノイズ幅を表す。)を含み、それらの角度データを用いて次回サンプリング時刻T
n+1における予測角度θ
n+1を線形外挿予測する場合、予測角度θ
n+1に含まれるノイズは角度θ
n,θ
n-1よりも増幅されてしまう。
【0009】
また、上記角度データを用いた平均フィルタ処理等により予測角度を求めようとすると、それによる群遅延が生じてしまい、予測すべきサンプリング時刻を未来に設定する必要がある。予測すべきサンプリング時刻を未来に設定すると、ノイズの増幅を抑制することができず、予測角度の精度が低下してしまうという問題がある。
【0010】
予測角度の精度を高めるために、磁気センサ素子により出力される角度データについてフィルタ回路等による処理を行い、当該角度データに含まれるノイズを低減することが考えられる。フィルタ回路等による処理によって、角度データに含まれるノイズを低減することは可能である。しかし、フィルタ回路等による処理により、さらなる遅延が生じてしまうため、予測すべきサンプリング時刻をさらに未来に設定せざるを得ない。このように予測すべきサンプリング時刻をさらに未来に設定すると、フィルタ回路等により低減されたノイズが再び増幅して予測角度に含まれてしまうため、結果として予測角度の精度が低下してしまうという問題がある。
【0011】
上記課題に鑑み、本発明は、連続的に作動する動作体の所定時刻における位置を精確に予測することのできる位置予測装置及び当該位置予測装置を含む位置検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明は、連続的に作動する動作体の所定時刻における位置を予測する装置であって、前記動作体に設けられてなる磁界発生部の外部磁界を検出する検出部から出力される前記動作体の位置に関する信号に基づき、前記動作体の位置情報を算出する演算処理部と、前記演算処理部により算出された前記位置情報を時刻でN回(Nは1以上の整数である。)微分したN次微分値に基づき、前記動作体の前記所定時刻における位置を予測する予測部とを備え
、前記予測部は、前記N次微分値についてのフィルタ処理を行い、前記動作体の前記所定時刻における位置情報のN次微分値の予測値を算出し、前記N次微分値の予測値を時刻でN回積分することで、前記動作体の前記所定時刻における位置を予測することを特徴とする位置予測装置を提供する(発明1)。
【0013】
上記発明(発明1)によれば、連続的に作動する動作体の位置情報にノイズが含まれている場合であっても、当該位置情報のN次微分値に基づいて所定時刻における動作体の位置を予測することで、当該所定時刻における動作体の位置を精確に予測することができる。
【0015】
上記発明(発明
1)において、前記予測部は、前記動作体の位置情報のうち、最新の位置情報を時刻でN回(Nは1以上の整数である。)微分したN次微分値を少なくとも用いて、前記動作体の前記所定時刻における位置を予測するのが好ましい(発明
2)。
【0016】
上記発明(発明1
,2)において、前記動作体の位置情報が、角度情報であるのが好ましく(発明
3)、上記発明(発明1〜
3)において、前記予測部は、前記位置情報としての角度情報を時刻で1回微分した角速度情報に基づき、前記動作体の前記所定時刻における位置を予測してもよいし(発明
4)、前記位置情報としての角度情報を時刻で2回微分した角加速度情報に基づき、前記動作体の前記所定時刻における位置を予測してもよい(発明
5)。
【0017】
また、本発明は、上記発明(発明1〜
5)に係る位置予測装置と、前記動作体に設けられてなる前記磁界発生部に対向して配置され、前記動作体の位置を検出可能な前記検出部とを備えることを特徴とする位置検出装置を提供する(発明
6)。
【0018】
上記発明(発明
6)において、前記検出部は、磁気抵抗効果素子を含むことができ(発明
7)、かかる発明(発明
6,
7)において、前記動作体が、所定の回転軸を中心とし、前記検出部に対して相対的に回転する回転動作体であるのが好ましい(発明
8)。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、連続的に作動する動作体の所定時刻における位置を精確に予測することのできる位置予測装置及び当該位置予測装置を含む位置検出装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る回転角度検出装置の概略構成を示す斜視図であり、
図2は、本実施形態に係る回転角度検出装置の概略構成を示す側面図であり、
図3は、本実施形態における磁気検出装置の概略構成を示すブロック図であり、
図4は、本実施形態における検出部の回路構成を概略的に示す回路図であり、
図5は、本実施形態における磁気検出素子としてのMR素子の概略構成を示す斜視図である。
【0022】
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係る回転角度検出装置1は、磁石2と、磁石2に対向して配置される磁気検出装置3とを備える。磁石2は、回転軸Cを中心として連続的に回転する軸部11(例えばサーボモータ等のモータ軸等)の軸方向の一端部に固定されており、軸部11の回転に連動して、回転軸Cを中心として回転する。
【0023】
磁石2は、回転軸Cに直交する端面21と、回転軸Cを含む仮想平面を中心として対称に配置されたN極22及びS極23とを有し、回転軸Cに直交する方向(S極23からN極22に向かう方向であって、N極22とS極23との境界に直交する方向)に磁化されている。磁石2は、それが有する磁化に基づいて磁界を発生する。
【0024】
磁気検出装置3は、磁石2の端面21に対向するように配置されており、磁石2による磁界を検出する。本実施形態に係る回転角度検出装置1は、磁気検出装置3の出力に基づいて磁石2の回転角度、すなわち回転移動する軸部11の回転角度を検出することができる。
【0025】
図3に示すように、磁気検出装置3は、磁石2(
図1、
図2参照)の磁界を検出する検出部31と、検出部31から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D(アナログ−デジタル)変換部32、A/D変換部32によりデジタル変換されたデジタル信号を演算処理し、回転角度θを算出する演算処理部33、及び演算処理部33により算出された回転角度θを1回微分するとともに、当該微分値、すなわち角速度ωに基づいて次回サンプリング時刻T
n+1における回転角度θ
n+1を予測する予測部34を有する。本実施形態においては、少なくとも演算処理部33及び予測部34により、連続的に作動する動作体(例えば連続的に回転するサーボモータのモータ軸等)の位置(回転位置)を予測可能な位置予測装置が構成される。
【0026】
図4に示すように、検出部31は、第1の検出部31A及び第2の検出部31Bを含み、第1及び第2の検出部31A,31Bのそれぞれは、少なくとも1つの磁気検出素子を含む。検出部31は、所定のサンプリング周期(例えば、50〜100μsec程度)で、磁石2の磁界の方向が所定の方向に対するなす角度(回転角度)に関する検出信号(アナログ信号)を生成し、出力する。
【0027】
第1及び第2の検出部31A,31Bのそれぞれは、少なくとも1つの磁気検出素子として、直列に接続された一対の磁気検出素子を含んでいてもよい。この場合において、第1及び第2の検出部31A,31Bのそれぞれは、直列に接続された第1の一対の磁気検出素子と、直列に接続された第2の一対の磁気検出素子とを含むホイートストンブリッジ回路を有する。
【0028】
第1の検出部31Aが有するホイートストンブリッジ回路311は、電源ポートV1と、グランドポートG1と、2つの出力ポートE11,E12と、直列に接続された第1の一対の磁気検出素子R11,R12と、直列に接続された第2の一対の磁気検出素子R13,R14とを含む。磁気検出素子R11,R13の各一端は、電源ポートV1に接続されている。磁気検出素子R11の他端は、磁気検出素子R12の一端と出力ポートE11とに接続されている。磁気検出素子R13の他端は、磁気検出素子R14の一端と出力ポートE12とに接続されている。磁気検出素子R12,R14の各他端は、グランドポートG1に接続されている。電源ポートV1には、所定の大きさの電源電圧が印加され、グランドポートG1はグランドに接続される。
【0029】
第2の検出部31Bが有するホイートストンブリッジ回路312は、第1の検出部31Aのホイートストンブリッジ回路311と同様の構成を有し、電源ポートV2と、グランドポートG2と、2つの出力ポートE21,E22と、直列に接続された第1の一対の磁気検出素子R21,R22と、直列に接続された第2の一対の磁気検出素子R23,R24とを含む。磁気検出素子R21,R23の各一端は、電源ポートV2に接続されている。磁気検出素子R21の他端は、磁気検出素子R22の一端と出力ポートE21とに接続されている。磁気検出素子R23の他端は、磁気検出素子R24の一端と出力ポートE22とに接続されている。磁気検出素子R22,R24の各他端は、グランドポートG2に接続されている。電源ポートV2には、所定の大きさの電源電圧が印加され、グランドポートG2はグランドに接続される。
【0030】
本実施形態において、ホイートストンブリッジ回路311,312に含まれるすべての磁気検出素子R11〜R14,R21〜R24として、TMR素子、GMR素子等のMR素子を用いることができ、特にTMR素子を用いるのが好ましい。TMR素子、GMR素子は、磁化方向が固定された磁化固定層と、印加される磁界の方向に応じて磁化方向が変化する自由層と、磁化固定層及び自由層の間に配置される非磁性層とを有する。
【0031】
具体的には、
図5に示すように、MR素子は、複数の下部電極41と、複数のMR膜50と、複数の上部電極42とを有する。複数の下部電極41は、基板(図示せず)上に設けられている。各下部電極41は細長い形状を有する。下部電極41の長手方向に隣接する2つの下部電極41の間には、間隙が形成されている。下部電極41の上面における、長手方向の両端近傍にそれぞれMR膜50が設けられている。MR膜50は、下部電極41側から順に積層された自由層51、非磁性層52、磁化固定層53及び反強磁性層54を含む。自由層51は、下部電極41に電気的に接続されている。反強磁性層54は、反強磁性材料により構成され、磁化固定層53との間で交換結合を生じさせることで、磁化固定層53の磁化の方向を固定する役割を果たす。複数の上部電極42は、複数のMR膜50上に設けられている。各上部電極42は細長い形状を有し、下部電極41の長手方向に隣接する2つの下部電極41上に配置され、隣接する2つのMR膜50の反強磁性層54同士を電気的に接続する。なお、MR膜50は、上部電極42側から順に自由層51、非磁性層52、磁化固定層53及び反強磁性層54が積層されてなる構成を有していてもよい。
【0032】
TMR素子においては、非磁性層52はトンネルバリア層である。GMR素子においては、非磁性層52は非磁性導電層である。TMR素子、GMR素子において、自由層51の磁化の方向が磁化固定層53の磁化の方向に対してなす角度に応じて抵抗値が変化し、この角度が0°(互いの磁化方向が平行)のときに抵抗値が最小となり、180°(互いの磁化方向が反平行)のときに抵抗値が最大となる。
【0033】
図4において、磁気検出素子R11〜R14,R21〜R24の磁化固定層の磁化の方向を塗りつぶした矢印で表し、自由層の磁化の方向を白抜きの矢印で表す。第1の検出部31Aにおいて、磁気検出素子R11,R14の磁化固定層の磁化の方向は第1の方向D1に平行な方向であり、磁気検出素子R12,R13の磁化固定層の磁化の方向は、磁気検出素子R11,R14の磁化固定層の磁化の方向と反平行方向である。第1の検出部31Aにおいて、磁石2の磁界の第1の方向D1の成分の強度に応じて、出力ポートE11,E12の電位差が変化し、磁石2の磁界の第1の方向D1の強度を表す信号が出力される。
【0034】
第2の検出部31Bにおいて、磁気検出素子R21,R24の磁化固定層の磁化の方向は第2の方向D2(第1の方向D1に直交する方向)であり、磁気検出素子R22,R23の磁化固定層の磁化の方向は、磁気検出素子R21,R24の磁化固定層の磁化の方向と反平行方向である。第2の検出部31Bにおいて、磁石2の磁界の第2の方向D2の成分の強度に応じて、出力ポートE21,E22の電位差が変化し、磁石2の磁界の第2の方向D2の強度を表す信号が出力される。
【0035】
差分検出器35は、出力ポートE11,E12の電位差に対応する信号を第1の信号S1としてA/D変換部32に出力する。差分検出器36は、出力ポートE21,E22の電位差に対応する信号を第2の信号S2としてA/D変換部32に出力する。
【0036】
図4に示すように、第1の検出部31Aにおける磁気検出素子R11〜R14の磁化固定層の磁化方向と、第2の検出部31Bにおける磁気検出素子R21〜R24の磁化固定層の磁化方向とは、互いに直交する。この場合、第1の信号S1の波形は、回転角度θに依存したコサイン(Cosine)波形になり、第2の信号S2の波形は、回転角度θに依存したサイン(Sine)波形になる。本実施形態において、第2の信号S2の位相は、第1の信号S1の位相に対して信号周期の1/4、すなわちπ/2(90°)異なっている。
【0037】
A/D変換部32は、検出部31から所定のサンプリング周期で出力される、第1及び第2の信号(回転角度θに関するアナログ信号)S1,S2をデジタル信号に変換し、当該デジタル信号が演算処理部33に入力される。
【0038】
演算処理部33は、A/D変換部32によりアナログ信号から変換されたデジタル信号についての演算処理を行い、磁石2の回転角度θを算出する。この演算処理部33は、例えば、マイクロコンピュータ等により構成される。演算処理部33により算出された磁石2の回転角度θは、演算処理部33に含まれる記憶部(図示せず)に記憶される。
【0039】
磁石2の回転角度θは、例えば下記式で示すアークタンジェント計算によって算出され得る。
θ=atan(S1/S2)
【0040】
なお、360°の範囲内で、上記式における回転角度θの解には、180°異なる2つの値がある。しかし、第1の信号S1及び第2の信号S2の正負の組み合わせにより、回転角度θの真の値が、上記式における2つの解のいずれかであるかを判別することができる。すなわち、第1の信号S1が正の値のときは、回転角度θは0°よりも大きく180°よりも小さい。第1の信号S1が負の値のときは、回転角度θは180°よりも大きく360°よりも小さい。第2の信号S2が正の値のときは、回転角度θは0°以上90°未満及び270°より大きく360°以下の範囲内である。第2の信号S2が負の値のときは、回転角度θは90°よりも大きく270°よりも小さい。演算処理部33は、上記式と、第1の信号S1及び第2の信号S2の正負の組み合わせの判定とにより、360°の範囲内で回転角度θを算出する。
【0041】
予測部34は、演算処理部33により算出され、記憶部に記憶された磁石2の回転角度θを1回微分した1次微分値に基づいて、次回サンプリング時刻T
n+1における磁石2の回転角度θ
n+1を予測する。具体的には、予測部34は、記憶部に記憶された磁石2の回転角度θを1回微分した角速度ωを算出し、当該角速度ωについて、例えば移動平均フィルタ処理等のフィルタ処理を行うことで、次回サンプリング時刻T
n+1における角速度ω
n+1の予測値を算出する。そして、当該角速度ω
n+1の予測値を積分して、次回サンプリング時刻T
n+1における磁石2の回転角度θ
n+1の予測値を算出する。
【0042】
上記構成を有する回転角度検出装置1において、軸部11の回転に伴い磁石2が回転すると、磁石2の磁界が変化する。その磁界の変化に応じ、検出部31の磁気検出素子R11〜R14,R21〜R24の抵抗値が変化し、第1の検出部31A及び第2の検出部31Bのそれぞれの出力ポートE11,E12,E21,E22の電位差に応じ、所定のサンプリング周期で第1の方向D1及び第2の方向D2における磁石2の磁界強度を表す信号S1,S2が差分検出器35,36から出力される。そして、差分検出器35,36から出力された第1の信号S1及び第2の信号S2が出力され、A/D変換部32によりデジタル信号に変換される。その後、演算処理部33により、磁石2の回転角度θ(現在時刻nにおける回転角度θ
n)が算出される。
【0043】
本実施形態に係る回転角度検出装置1において、検出部31からの出力をアナログ信号として読み出す処理(すなわち、第1及び第2の検出部31A,31Bの出力ポートE11,E12,E21,E22の電位差に対応して差分検出器35,36から第1及び第2の信号S1,S2を出力する処理)、A/D変換部32にて当該第1及び第2の信号S1,S2をデジタル信号に変換する処理等により遅延が生じる。この遅延を取り戻すために、予測部34による回転角度の予測が重要となる。
【0044】
ここで、演算処理部33により算出される磁石の回転角度θには、所定のノイズが含まれる。このノイズを含む回転角度θに基づいて次回サンプリング時刻T
n+1における回転角度θ
n+1を予測すると、回転角度θ
n+1の予測値に含まれるノイズが増幅してしまい、正確な予測が困難となる。
【0045】
この点、上記サンプリング周期のうちの極めて短時間(例えば、現在サンプリング時刻T
nから遡って3サンプリング周期以下程度)においては、磁石2の回転運動を、等速回転運動であると仮定することができる。すなわち、次回サンプリング時刻T
n+1における角速度ω
n+1は、現在サンプリング時刻T
nにおける角速度ω
nと実質的に同一であるとの仮定が成立する。そのため、本実施形態において、予測部34は、極めて短時間において算出された回転角度θ(例えば、現在サンプリング時刻T
nから遡って3サンプリング周期以下程度に算出された回転角度θ
n〜θ
n-3)を1回微分した1次微分値である角速度ω
n〜ω
n-3を算出し、当該角速度ω
n〜ω
n-3に基づいて次回サンプリング時刻T
n+1の角速度ω
n+1を予測する。そして、予測部34は、当該角速度ω
n+1の予測値から回転角度θ
n+1を算出する。これにより、後述する実施例からも明らかなように、回転角度θに含まれるノイズが増幅されることなく、次回サンプリング時刻T
n+1における回転角度θ
n+1の正確な予測が可能となる。
【0046】
予測部34は、例えば、現在サンプリング時刻T
nから遡って3サンプリング周期以下の回転角度θ
n〜θ
n-3をそれぞれ1回微分した角速度ω
n〜ω
n-3を用いた移動平均フィルタ処理により、次回サンプリング時刻T
n+1の角速度ω
n+1を予測し、当該角速度ω
n+1の予測値から、次回サンプリング時刻T
n+1の回転角度θ
n+1を算出する。このようにして算出された回転角度θ
n+1は、軸部11を含む動作体(例えばモータ軸を含むサーボモータ等)の駆動回路等(図示せず)に入力され、当該動作体の動作制御が行われる。
【0047】
上述したように、本実施形態に係る回転角度検出装置1によれば、磁石2の回転に伴い算出される、所定のノイズを含む回転角度θを1回微分した角速度ωに基づいて次回サンプリング時刻T
n+1の角速度ω
n+1及びそれから算出される回転角度θ
n+1を予測するため、次回サンプリング時刻T
n+1における回転角度θ
n+1を精確に予測することができる。
【0048】
また、本実施形態に係る回転角度検出装置1によれば、回転角度θに含まれるノイズを除去することなくそのまま1回微分した角速度ωに基づいて次回サンプリング時刻T
n+1の回転角度θ
n+1を予測することで、回転角度θのフィルタリング処理によるさらなる遅延が生じることがない。そのため、当該遅延による次回サンプリング時刻T
n+1の回転角度θ
n+1に含まれるノイズが増幅するのを抑制することができ、次回サンプリング時刻T
n+1の回転角度θ
n+1を精確に予測することができる。
【0049】
さらに、本実施形態に係る回転角度検出装置1によれば、次回サンプリング時刻T
n+1における回転角度θ
n+1を精確に予測するために、現在サンプリング時刻T
nの回転角度θ
nと、当該現在サンプリング時刻T
nから遡って、例えば3サンプリング時刻(T
n-1,T
n-2,T
n-3)に演算処理部33にて算出された回転角度θ
n〜θ
n-3とを用いればよいため、当該回転角度θ
n+1の予測のために必要な情報量(サンプル数)を少なくすることができるという効果も奏し得る。
【0050】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0051】
上記実施形態において、予測部34は、回転角度θを1回微分した角速度ωに基づいて、次回サンプリング時刻T
n+1における角速度ω
n+1の予測値を算出し、当該角速度ω
n+1の予測値から回転角度θ
n+1の予測値を算出しているが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。例えば、予測部34は、回転角度θを2回微分した角加速度αに基づいて、次回サンプリング時刻T
n+1における角加速度α
n+1の予測値を算出し、当該角加速度α
n+1の予測値から回転角度θ
n+1の予測値を算出してもよい。すなわち、予測部34は、回転角度θをN回(Nは1以上の整数である。)微分したN次微分値に基づいて、次回サンプリング時刻T
n+1における回転角度θ
n+1の予測値を算出してもよい。
【0052】
上記実施形態において、磁界発生部として軸部11に固定された磁石2を用いているが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、少なくとも1組のN極及びS極が交互にリング状に配置された磁石を磁界発生部として用い、当該磁石の外周部に磁気検出装置を対向配置させてなるものであってもよいし、直線状スケールを磁界発生部として用いてもよい。
【0053】
上記実施形態において、磁石2が固定された軸部11が回転軸Cを中心に回転することにより磁石2が磁気検出装置3に対して相対的に回転移動するが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。例えば、磁石2(軸部11)と磁気検出装置3とが、互いに反対方向に回転するものであってもよいし、磁石2(軸部11)が回転せずに磁気検出装置3が回転するものであってもよい。
【実施例】
【0054】
以下、実施例等を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の実施例等に何ら限定されるものではない。
【0055】
〔実施例1〕
図3及び
図4に示す構成を有する磁気検出装置3における、予測部34による次回サンプリング時刻T
n+1の回転角度θ
n+1の予測について、MATLABを用いてシミュレーションを行い、回転角度θ
n+1の予測値に含まれるノイズを求めた。かかるシミュレーションにおいて、磁石2が90000deg/secで等速回転運動し、検出部31によるサンプリング周期が50μsecであり、演算処理部33により算出される回転角度θに含まれるノイズが±0.01°であるとした。また、4サンプルの当該回転角度θ
n〜θ
n-3をそれぞれ1回微分した角速度ω
n〜ω
n-3を用いた移動平均フィルタ処理を行うことを通じて、予測部34にて回転角度θ
n+1を予測するものとした。シミュレーション結果を
図6に示す。
【0056】
上記シミュレーションの結果、回転角度θを1回微分した角速度ωを用いて次回サンプリング時刻T
n+1における回転角度θ
n+1を予測すると、当該回転角度の予測値に含まれるノイズを±0.009°に抑えることができることが確認された。
【0057】
〔比較例1〕
演算処理部33により算出された1サンプルの回転角度θ
nを1回微分したω
n用いて線形外挿処理を行うことでω
n+1を求め、当該ω
n+1を積分することにより回転角度θ
n+1の予測をすることとした以外は、実施例1と同様にして回転角度θ
n+1の予測値に含まれるノイズを求めた。シミュレーション結果を
図7に示す。
【0058】
上記シミュレーションの結果、回転角度θ
nを用いて次回サンプリング時刻T
n+1における回転角度θ
n+1を予測すると、当該回転角度の予測値に含まれるノイズが±0.03°に増幅することが確認された。
【0059】
〔比較例2〕
A/D変換部32にて変換されたデジタル信号について、FIRフィルタ処理を行うことで、回転角度θ
nに含まれるノイズを±0.0027°まで低減させるとともに、FIRフィルタ処理による群遅延の増加に伴う予測すべきサンプリング時刻を5サンプリング周期分将来に設定した以外は、比較例1と同様にして予測すべきサンプリング時刻T
n+5における回転角度θ
n+5の予測値に含まれるノイズを求めた。シミュレーション結果を
図8に示す。
【0060】
上記シミュレーションの結果、回転角度θ
nを用いて予測すべきサンプリング時刻T
n+5における回転角度θ
n+5を予測すると、当該回転角度の予測値に含まれるノイズが±0.0324°に増大することが確認された。
【0061】
実施例1、比較例1及び比較例2の結果から明らかなように、回転角度θを1回微分した角速度ωを用いた予測により、回転角度θにノイズが含まれていたとしても、そのノイズを増幅させることなく、次回サンプリング時刻T
n+1の回転角度θ
n+1を予測することができた。また、比較例2の結果から、検出部31からの出力をアナログ信号として読み取り、当該アナログ信号がA/D変換部32にて変換されたデジタル信号にフィルタ処理を行い、回転角度θに含まれるノイズを低減させたとしても、当該フィルタ処理による群遅延の増大に起因して、予測時刻をさらに未来に設定せざるを得なくなるため、結果として、回転角度の予測値に含まれるノイズが増大してしまうことが確認された。
【0062】
〔実施例2〕
磁石2が−1800000deg/sec
2で等加速回転運動しているものとし、演算処理部33により算出された回転角度θを2回微分した角加速度αを用いるとともに、8サンプル(角加速度α
n〜α
n-7)を用いて移動平均フィルタ処理を行うことで予測部34にて回転角度θ
n+1を予測した以外は、実施例1と同様にして回転角度θ
n+1の予測値に含まれるノイズを求めた。
【0063】
上記シミュレーションの結果、角加速度αを用いて次回サンプリング時刻T
n+1における回転角度θ
n+1を予測すると、当該回転角度の予測値に含まれるノイズが±0.029°であった。比較のために、演算処理部33により算出された回転角度θを用いた移動平均フィルタ処理を行うことで予測部34による回転角度の予測を同様にシミュレートした結果、当該回転角度の予測値に含まれるノイズが±0.047°であった。この結果から、角加速度αを用いた予測であっても、当該回転角度θ
n+1の予測値に含まれるノイズを増大させることなく、精確な予測が可能であることが確認された。
【0064】
実施例2の結果から、アプリケーションに応じ予測モデルが複雑になる場合であっても、最高次数の係数にフィルタリングすることで、ノイズを増大させることなく、精確な予測が可能であると推認することができる。