(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記一対の推進ローラは、同一回転速度で該卓球ボールに前記推進方向へ推進力を加える回転方向に回転する、いずれか一方のみが該卓球ボールに該推進方向へ推進力を加える回転方向に回転する、または該卓球ボールに該推進方向へ推進力を加える回転方向に回転速度差をもって回転する請求項4に記載のボール発射装置。
前記一対の推進ローラは、同じ回転方向に回転し、前記卓球ボールに前記推進方向へ推進力を加える回転方向に回転する一方の推進ローラが他方の推進ローラよりも高速で回転する請求項4に記載のボール発射装置。
前記飛球角調整筒は、使用範囲において前記推進軸線に対して該飛球角調整筒を最大に傾けた状態で前記卓球ボールを前記推進部から前記推進方向に推進させて出射させた場合に、該卓球ボールが前記第2貫通孔の内壁面で1回のみ反射するように前記第2貫通孔の直径サイズおよび長さが形成されている請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載のボール発射装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、図面を参照して本発明の一実施形態であるボール発射装置を説明するが、本発明は、これらの実施形態に限定されるわけではない。
【0019】
<第1実施形態>
<<構成>>
図1は、第1実施形態のボール発射装置1を一部断面で表した側面図であり、(a)と(b)とで一部動作の状態を異ならせて表しているが、特に指定して参照していない場合には、どちらを参照してもよい。
【0020】
第1実施形態のボール発射装置1は、一方から供給される卓球ボールB(以降「ボールB」と記載する)を進路に沿って移動させると共に他方に向けて推進させて発射する卓球練習用のボール発射装置である。
図1を参照すると、第1実施形態のボール発射装置1は、ボールBを発射する発射装置本体2と、発射装置本体2のボールBの発射動作をコントロールするコントロール部3とで構成されている。
【0021】
なお、各図においては、互いに直交する座標軸である第1座標軸X、両端にY1およびY2の符号を付した第2座標軸Y、および両端にZ1およびZ2の符号を付した第3座標軸Zを示している。以降の説明では、第1座標軸Xに平行な方向については左右方向、第2座標軸Yに平行な方向についてはY1側を前方、Y2側を後方とした前後方向、第3座標軸Zに平行な方向については、Z1側を上方、Z2側を下方とした上下方向として説明する。また、XY座標平面を水平面として説明する。また、ボール発射装置1の発射装置本体2は、ボールBの推進方向をY1方向と一致させて水平面(XY座標平面)上に設置されているものとして説明する。
【0022】
発射装置本体2は、水平面上に広がるベース4を備え、このベース4の上面にボールBを供給する供給部10、ボールBに推進力を加える推進部20、およびボールBの発射方向を定める飛球角調整筒40が直接若しくは他部材を介して備えられている。推進部20は回転支持部30によってベース4に備えられており、飛球角調整筒40は搖動支持部50によってベース4に備えられている。ボールBは、供給部10、推進部20、および飛球角調整筒40に形成された貫通孔を順に通り抜けて発射される。
【0023】
供給部10は、ボールBが通過可能な供給貫通孔11aが形成された供給筒11と、供給筒11の中央付近に回転自在に設置された供給ローラ12とを備えている。
【0024】
供給筒11は、支柱を介してベース4に固定されている。供給筒11に形成された供給貫通孔11aは、後方の入口から導入されたボールBが前方の出口まで重力でスムーズに導かれるように傾斜が設けられている。この供給貫通孔11aは、後述する推進部20の推進筒21に形成された第1貫通孔21aにスムーズに繋がるように、出口付近が水平方向を向く。また、供給筒11は、中央部において上方の位置に供給貫通孔21aに繋がる開口が形成されている。
【0025】
供給ローラ12は、外周部分に卓球ボールBが1個分嵌り込むことができる切欠部12aが形成された樹脂製の円板形状の部材である。この供給ローラ12は、平面部を左右方向に向けて、供給筒11の脇に設置されている。この供給ローラ12は、供給貫通孔11aの中央部に形成された開口から供給貫通孔11aの内部に、外周部分を入り込ませて設置されている。この供給ローラ12は、供給モータ13に接続されており、この供給モータ13の動力でボールBを前方に送る方向(供給ローラ回転方向R1)に回転可能である。なお、本実施形態の供給ローラ12は樹脂製であるが、金属製であってもよい。また、本実施形態の供給モータ13は、ステッピングモータが採用されており、外部に接続されたコントロール部3によって回転角度や回転速度等が制御可能である。ACサーボモータ等の制御可能な他のモータを供給モータ13に採用してもよい。
【0026】
推進部20は、ボールBが通過可能な第1貫通孔21aが形成された樹脂製の推進筒21と、推進筒21の中央付近に回転自在に設置された一対の推進ローラ22とを備えている。上述の通り、第1貫通孔21aは、供給部11の供給貫通孔11aにスムーズに繋がるように形成されている。このため、第1貫通孔21aには、供給部11から排出されたボールBが後方から導入される。推進部20は、第1貫通孔21aに導入されたボールBに一対の推進ローラ22の少なくともいずれかで推進力を加えて、第1貫通孔21aの前方の排出口21bから推進方向Y1に向けてボールBを排出する。なお、本実施形態の推進筒21は軽量化や低摩擦係数の観点から樹脂製を採用しているが、金属製であってもよい。また、排出口21bの中心を通り推進方向Y1に平行な軸線を推進軸線L1とする。
【0027】
図1および
図2を参照すると、推進筒21は、方形筒形で前後方向Yに一直線状に延びるように形成されており、その内壁面で囲まれた第1貫通孔21aの内接円がボールBよりわずかに大きく形成されている。推進筒21は、樹脂にて形成されている。また、推進筒21は、推進ローラ22よりも前方の部分がボールBを推進方向Y1に向けるためのガイドとして機能する長さに形成されている。また、推進筒21は、中央部において一方に(
図1および
図2においては上下方向に)対向する位置に第1貫通孔21aと繋がる一対の開口が形成されている。なお、本実施形態では推進筒21は方形筒形であるが、円筒形であっても勿論よい。なお、本実施形態の推進筒21は樹脂製であるが、金属製であってもよい。この際、軽量化や低摩擦係数といった観点を考慮することが好ましい。
【0028】
一対の推進ローラ22は、円柱形状または円筒形状でスポンジやゴムといったような弾性部材で形成されている。各推進ローラ22は、推進軸線L1に対して対称の位置で外周面を対向させて、第1貫通孔21aを通過するボールBを両側から挟み込む位置に配置されている。また、各推進ローラ22は、第1貫通孔21aの中央部に形成された開口から第1貫通孔21aの内部に、外周部分を入り込ませて配置されている。また、各推進ローラ22は、推進モータ23の出力軸に接続されている。これにより、推進ローラ22は、推進モータ23の動力でボールBを前方に送る方向(推進ローラ回転方向R2A、R2B)に回転可能である。
【0029】
各推進モータ23は、推進筒21の対向する外壁面にそれぞれモータブラケット24で固定されている。また、各推進モータ23は、その出力軸を推進軸線L1に対して直角方向に向けて、推進軸線L1に対して180°回転対称に備えられている。これは、後述するように推進部20を推進軸線L1に対して回転させた場合に、少しでもバランスが良くなるように回転対称に備えられたものであるが、特に回転対称に備えられていなくてもよい。なお、本実施形態の推進モータ23は、ブラシレスDCモータが採用されており、外部に接続されたコントロール部3によって回転方向や回転速度等が制御可能である。ACサーボモータ等の制御可能な他のモータを推進モータ23に採用してもよい。
【0030】
回転支持部30は、円筒状の内回転体31と、直方体形状の外支持体32とを備えている。回転支持部30は、外支持体32の下面においてベース4に固定されている。また、内回転体31は、外支持体32の内側に回転可能に備えられている。外支持体32には推進部回転モータ(不図示)が設置されており、この推進部回転モータの出力軸は、内回転体31に接続されている。これにより、内回転体31は、推進部回転モータの動力によって外支持体32に対して回転可能である。内回転体31は、内面で囲まれた貫通孔に推進筒21を、その後端部を嵌まり込ませて固定している。つまり、回転支持部30は、推進軸線L1を中心として推進部20を回転可能に支持している。なお、本実施形態の推進部回転モータは、ステッピングモータが採用されており、外部に接続されたコントロール部3によって回転角度や回転速度等が制御可能である。ACサーボモータ等の制御可能な他のモータを推進部回転モータに採用してもよい。
【0031】
図1および
図3を参照すると、飛球角調整筒40は、円筒状の飛球角調整筒体41と、この飛球角調整筒体41を支持するための第1軸受42(
図3参照)とを備えている。
【0032】
飛球角調整筒体41は、樹脂にて形成されている。飛球角調整筒体41には、推進筒21の排出口21bの内接円直径D1よりも大きな断面直径D2の第2貫通孔41aが形成されている。そして、飛球角調整筒体41は、推進軸線L1と第2貫通孔41aの中心線L2とが一致または交差する状態で推進部20の推進方向Y1側に位置している。これにより、飛球角調整筒体41は、推進部20が推進力を加えて排出したボールBを、第2貫通孔41aを通過させて発射する。飛球角調整筒体41には、後方側で第2貫通孔41aの中心線L2に対して左右方向に直交する第1回転軸線L6上に第1支持孔41dが形成されている。この第1回転軸線L6は、推進軸線L1に対しても左右方向に直交する。なお、本実施形態の飛球角調整筒体41は樹脂製であるが、金属製であってもよい。この際、軽量化や低摩擦係数といった観点を考慮することが好ましい。また、飛球角調整筒体41は、直径サイズおよび長さが使用時を想定して定められることになるが、これについては後述する。
【0033】
第1軸受42は、円柱状の軸受と、この軸受の一端に接合された板状のフランジとで構成されている。そして、第1軸受42は、飛球角調整筒体41の後方側の外壁面の第1回転軸線L6上に、このフランジに形成された孔を使用してネジで固定されている。
【0034】
搖動支持部50は、前後方向に第1開口51aが形成された矩形枠状の第1支持体51と、前後方向に第1支持体51よりも一回り大きい第2開口52aが形成された矩形枠状の第2支持体52とを備えている。また、揺動支持部50は、第1支持体51を支持するための第2軸受55(
図3参照)を備えている。また、揺動支持部50は、第2支持体52の下面において支柱を介してベース4に固定されている。
【0035】
第1支持体51は、樹脂にて形成されている。また、第1支持体51は、左右方向の一方の内壁面の中央において、内側に突出する円柱状の第1支持突起51bが形成されている。また、第1支持体51は、左右方向の他方の内壁面の中央において、円形で貫通する第1通し孔51cが形成されている。この第1支持突起51bおよび第1通し孔51cは、推進軸線L1に対して左右方向に直交する第1回転軸線L6上に形成されている。また、第1支持体51は、下方の内壁面に、円形貫通孔である第2支持孔51dが形成されている。この第2支持孔51dは、推進軸線L1に対して上下方向に直交する第2回転軸線L7上に形成されている。なお、本実施形態の第1支持体51は樹脂製であるが、金属製であってもよい。この際、軽量化の観点を考慮することが好ましい。
【0036】
第2軸受55は、円柱状の軸受と、この軸受の一端に接合された板状のフランジとで構成されている。そして、第2軸受55は、第1支持体51の上方の外壁面の第2回転軸線L7上に、このフランジに形成された孔を使用してネジで固定されている。
【0037】
また、第1支持体51には、出力軸を第1通し孔51cから内側に通して第1回転モータ53が取り付けられている。なお、本実施形態の第1回転モータ53は、ステッピングモータが採用されており、外部に接続されたコントロール部3によって回転角度や回転速度等が制御可能である。ACサーボモータ等の制御可能な他のモータを第1回転モータ53に採用してもよい。
【0038】
第2支持体52は、下方の内壁面の中央において内側に突出する円柱状の第2支持突起52bが形成されている。また、第2支持体52は、上方の内壁面において、円形で貫通する第2通し孔52cが形成されている。この第2支持突起52bおよび第2通し孔52cは、推進軸線L1に対して上下方向に直交する第2回転軸線L7上に形成されている。
【0039】
また、第2支持体52には、出力軸を第2通し孔52cから内側に通して第2回転モータ54が取り付けられている。なお、本実施形態の第2回転モータ54は、ステッピングモータが採用されており、外部に接続されたコントロール部3によって回転角度や回転速度等が制御可能である。ACサーボモータ等の制御可能な他のモータを第2回転モータ54に採用してもよい。
【0040】
ここで、
図3および
図4を参照して飛球角調整筒40および搖動支持部50の関係について説明すると、第1支持体51の第1支持突起51bは、飛球角調整筒40の第1支持孔41dに嵌り込んでいる。また、第1支持体51に固定された第1回転モータ53の出力軸は、飛球角調整筒40の第1軸受42に接続されている。これにより、飛球角調整筒40は、第1回転モータ53の動力によって、第1支持体51に対して第1回転軸線L6を中心として上下搖動方向M1に搖動する。また、第2支持体52の第2支持突起52bは、第1支持体51の第2支持孔51dに嵌り込んでいる。また、第2支持体52に固定された第2回転モータ54の出力軸は、第1支持体51に固定された第2軸受55に接続されている。これにより、第1支持体51は、飛球角調整筒40と一体で第2回転モータ54の動力によって、第2支持体52に対して第2回転軸線L7を中心として左右搖動方向M2に搖動する。つまり、飛球角調整筒40は、搖動支持部50によって上下搖動方向M1および左右搖動方向M2に搖動可能で支持されている。
【0041】
なお、本実施形態では第1回転軸線L6が左右方向、第2回転軸線L7が上下方向に向いているが、この方向に限定されない。つまり、第1回転軸線L6と第2回転軸線L7と直角方向をなし、それぞれが推進軸線L1に直交していればよい。たとえば、第1回転軸線L6が上下方向、第2回転軸線L7が左右方向を向くように形成してもよい。また、それぞれが斜め方向を向くように形成してもよい。
【0042】
図5を参照すると、コントロール部3は、コンピュータ60と制御部70とを備えている。また、コンピュータ60は、格納部61と入力部62と、表示部63とを備えている。
【0043】
格納部61は、たとえばメモリであって、装置本体2を駆動させるためのパラメータである駆動設定値を格納する。駆動設定値は、搖動支持部50の第1回転モータ53および第2回転モータ54、推進部20のそれぞれの推進モータ23、回転支持部30の推進部回転モータ33、および供給部10の供給モータ13の回転方向および回転速度の設定値等である。
【0044】
入力部62は、キーボードおよびマウスといった入力装置からの外部入力を受け付ける。入力部62は、これら入力装置から外部入力される駆動設定値を受け付ける。
【0045】
表示部63は、たとえば液晶モニタであって、制御画面64として駆動設定値を設定するための案内を表示する。
図6を参照すると、制御画面64には、第1回転モータ53の設定案内64a、第2回転モータ54の設定案内64b、各推進モータ64の設定案内64c、64d、推進部回転モータ33の設定案内64e、供給モータ13の設定案内64fが表示されている。他に、駆動設定値を指定して決めるかランダムで決めてもらうかの案内64g、駆動設定値を時系列で変更させるための案内64h等が表示されている。
【0046】
ふたたび
図5を参照すると、制御部60は、たとえばモータドライバといった電子部品が搭載された電気基板であって、搖動支持部50の第1回転モータ53および第2回転モータ54、推進部20のそれぞれの推進モータ23、回転支持部30の推進部回転モータ33、および供給部10の供給モータ13とケーブル接続されている。また、制御部60は、コンピュータ60とケーブル接続されており、格納部61に格納された駆動設定値を読み込む。これにより、制御部60は、コンピュータ60から読み込んだ駆動設定値に従い、搖動支持部50の第1回転モータ53および第2回転モータ54、推進部20のそれぞれの推進モータ23、回転支持部30の推進部回転モータ33、および供給部10の供給モータ13の回転方向および回転速度等を制御する。
【0047】
<<動作説明>>
以下に図面を参照して発射装置本体2の動作説明をする。発射装置本体2は、制御画面64の案内に従い設定された駆動設定値に従って、コントロール部3が発射装置本体2の各モータの動きを制御することで動作する。
【0048】
まず、供給筒11の後方の開口上方に多数のボールBを入れたボールケース(不図示)が設置され、供給筒11には、このボールケースから次々とボールBが導入される。この導入されたボールBは、
図1(a)に示すように、供給ローラ12で一端停止する。
【0049】
この状態で供給ローラ12を供給ローラ回転方向R1に回転させると、
図1(b)に示すように切欠部12aに入り込んだ1つのボールBは、供給ローラ12よりも前方に移動させられて推進筒21の第1貫通孔21aに導かれ、推進ローラ22に接触して停止する。供給ローラ10を数回転させると、供給貫通孔11aおよび第1貫通孔21aは、供給ローラ12と推進ローラ22との間がボールBで満たされる。
【0050】
次に、一対の推進ローラ22を回転させる。この回転のさせ方は、各推進ローラを同一回転速度でボールBに推進方向Y1へ推進力を加える回転方向に回転させる、いずれか一方のみをボールBに推進方向Y1へ推進力を加える回転方向に回転させる、ボールBに推進方向Y1へ推進力を加える回転方向に回転速度差をもって回転させる、または同じ回転方向に回転させてボールBに推進方向Y1へ推進力を加える回転方向に回転させる側をより高速で回転させる、といったように所望のボールBのスピンの状態や推進力の大きさによって変える。これについては後述する。なお、ボールBは、推進ローラ22が
図1に示すような推進ローラ回転方向R2A、R2Bに回転していても、推進ローラ22に強く押し付けられない限り、推進方向Y1へ向かう推進力が加わらない。
【0051】
次に、供給貫通孔11aおよび第1貫通孔21aの供給ローラ12と推進ローラ22との間にボールBが満たされた状態において、さらに供給ローラ12を回転させると、切欠部12aの端部の押出部12bがボールBをさらに押し出す。これにより、回転している一対の推進ローラ22は、後方からボールBが押し付けられることでボールBを巻き込んで挟み込み、ボールBを推進方向Y1への推進力を加えて排出する。この際、推進ローラ22より前方における第1貫通孔21aの壁面が、ボールBを推進方向Y1に推進させるガイドとして機能する。このように、ボール発射装置1は、供給ローラ12の回転でボールBの発射タイミングや発射間隔を定める。
【0052】
各推進ローラ22A、22Bの回転のさせ方によって、ボールBのスピンの状態や推進力の大きさは、変化する。ここで
図7(a)〜(d)を参照し、一対の推進ローラ22により推進力が加えられたボールBの状態について説明する。なお、以下では
図7(a)を基準として、推進ローラA22Aの回転のさせ方を変えずに、推進ローラB22Bの回転のさせ方を変えた場合の推進部20から排出されるボールBの状態について説明する。
【0053】
図7(a)のように推進ローラA22Aおよび推進ローラB22Bを同一回転速度で、ボールBに推進方向Y1へ推進力を加える回転方向R2A、R2Bに回転させた場合には、ボールBは、スピンしない状態、いわゆるナックルボールの状態で推進方向Y1に推進する。また、
図7(b)のように推進ローラB22Bの回転速度を落とした場合には、つまり、回転速度差をもたせた場合には、ボールBは、軽くスピンがかかった状態Sbで推進方向Y1に推進する。このときのボールBの推進速度は、推進ローラB22Bの回転速度を落とした分遅くなる。また、
図7(c)のように推進ローラB22Bを停止させた場合には、ボールBは、さらにスピンがかかった状態Scで推進方向Y1に推進する。このときのボールBの推進速度は、推進ローラB22Bを停止させた落とした分さらに遅くなる。また、
図7(d)のように推進ローラA22Aと同じ方向で推進ローラAの回転速度より遅く推進ローラB22Bを回転させた場合には、ボールBは、さらにスピンがかかった状態Sdで推進方向Y1に推進する。このときのボールBの推進速度は、推進ローラB22BがボールBに推進力を加える方向とは逆に回転する分さらに遅くなる。なお、ボールBの推進速度は、推進ローラ22の回転スピードを変更することで調整できることは勿論である。
【0054】
ふたたび
図1を参照すると、ボールBのスピンをかける方向を変更する場合、言い換えると発射するボールBをドライブ、カット、カーブ、シュートといった、さまざまな球種に変更する場合は、推進部回転モータ33を動かし、推進部20を回転させる。これによりボール発射装置1が発射するボールBは、推進ローラ22が上下方向に並び、上方の推進ローラの方が高速回転すればドライブボールに、下方の推進ローラの方が高速回転すればカットボールとなる。また、推進ローラ22が左右方向に並び、各推進ローラが速度差をもって回転すれば、カーブボールやシュートボールとなる。このように、ボール発射装置1は、推進部20の一対の推進ローラ22の対向方向、回転方向、および回転速度で発射されるボールBの球種や速度を定める。
【0055】
次に、飛球角調整筒40の第2貫通孔41aには、推進部20が排出したボールBが後方から導入される。
図1(a)に示すように飛球角調整筒40を搖動させず、推進軸線L1と第2貫通孔中心線L2とが一致している場合には、ボールBは、第2貫通孔41aの内壁面41bに触れずに飛球角調整筒40から発射される。つまり、ボール発射装置1は、飛球角調整筒を傾けない場合には、ボールBを水平方向に発射する。
【0056】
一方で、
図1(b)に示すように推進軸線L1と第2貫通孔中心線L2とが搖動角度θ1をなすように飛球角調整筒40を搖動させた場合には、ボールBは、第2貫通孔41aの内壁面41bで反射して飛球角調整筒40から発射される。本実施形態の飛球角調整筒体41は、使用範囲において飛球角調整筒40を最大に傾けた状態においてボールBが第2貫通孔41aの内壁面41bで1回のみ反射するように、第2貫通孔41aの直径サイズおよび長さで形成されている。したがって、ボールBは、第2貫通孔41aの内壁面41bで1回反射して推進軸線L1に対し発射角度θ2をなす発射方向軸線L3に沿って飛球角調整筒40から発射される。なお、内壁面41bで反射する際に、ボールBのスピンの影響等で多少変わることもあるが、通常入射角と出射角が等しくなることから、発射角度θ2は、搖動角度θ1の約2倍である。つまり、ボール発射装置1は、飛球角調整筒40を傾けた場合には、傾けた角度の約2倍の角度をなす方向にボールBを発射する。
【0057】
第2貫通孔41aの直径サイズおよび長さについて補足すると、直径サイズが大きくなると内壁面41bで反射したボールBが内径先端41c等に接触しにくくなるため、内壁面41bで最大1回反射する装置を構成しやすい。一方で、飛球角調整筒40を大きく傾けないとボールBが内壁面41bに当らず、ボールBの発射方向L3を僅かに傾けることが困難になる。また、長さが短くなると、内壁面41bで反射したボールBが内径先端41c等に接触しにくくなるため、内壁面41bで最大1回反射する装置を構成しやすい。一方で、飛球角調整筒40を大きく傾けないとボールBが内壁面41bに当らず、ボールBの発射方向を僅かに傾けることが困難になる。したがって、飛球角調整筒40は、使われる状況を考慮して第2貫通孔41aの直径サイズおよび長さが決められている。
【0058】
ところで、ボール発射装置1は、ボールBの発射方向を定める飛球角調整筒40が推進部20や回転支持部30と分離して搖動する。飛球角調整筒40は、搖動中心から最も大きく動く部分までの距離が短く、軽量となっており、素早く搖動位置に傾く。このようなこともあり、ボール発射装置1は、ボールBが発射される直前に素早く飛球角調整筒40を傾けてボールの発射方向L3を定める。また、ボール発射装置1は、飛球角調整筒40が推進軸線L1に対し、上下左右方向に自在に搖動し、さまざまな方向にボールBを発射する。たとえば、サーブに対するレシーブの練習に使われる場合には、ボール発射装置1は、飛球角調整筒40を下方に傾けてボールBを発射する。
【0059】
<<効果>>
このボール発射装置1は、推進部20の推進方向Y1側に飛球角調整筒40が備えらえている。この飛球角調整筒40には、推進部20の排出口21bの内接円直径D1よりも大きな断面直径D2の第2貫通孔41aが形成されている。このため、このボール発射装置1は、排出口21bから推進方向Y1に向けて排出されたボールBを飛球角調整筒40の第2貫通孔41bを通過させて発射する。この際、このボール発射装置1は、推進軸線L1上の点を中心に搖動可能に搖動支持部50に支持されている飛球角調整筒41を搖動させることでボールBの発射方向を変更することができる。また、このボール発射装置1は、飛球角調整筒40が推進部20と分離して搖動可能に支持されているため、推進部20の重さの影響を受けずに飛球角調整筒40を素早く搖動させることができる。したがって、このボール発射装置1は、ボールBの発射方向L3を素早く変更することができる。
【0060】
また、このボール発射装置1は、飛球角調整筒40を第1支持体51に対して第1回転軸線L6を中心として回転させることができる。また、このボール発射装置1は、第1支持体51を第2支持体52に対して第2回転軸線L7を中心として回転させることができる。つまりは、このボール発射装置1は、飛球角調整筒40を第2支持体52に対して任意の方向に搖動させることができる。したがって、このボール発射装置1は、任意の方向にボールBを発射することができる。
【0061】
また、このボール発射装置1は、第1支持体51を第1回転モータ53の動力によって回転させることができ、第2支持体52を第2回転モータ54の動力によって回転させることができる。つまりは、飛球角調整筒40を回転モータ53、54の動力で任意の方向に搖動させることができる。したがって、このボール発射装置1は、第1および第2回転モータ53、54の動力によって任意の方向にボールBを発射することができる。
【0062】
また、このボール発射装置1は、格納部61が駆動設定値を格納し、入力部62が駆動設定値を設定するための外部入力を受け付け、表示部63が駆動設定値を設定するための案内を表示する。また、制御部70が格納部61に格納された駆動設定値に従い、第1回転モータ53および第2回転モータ54の回転方向および回転速度を制御、換言すると飛球角調整筒40の向きおよび移動速度を制御する。したがって、このボール発射装置1は、表示部63に表示される案内に従い行われる外部入力で、ボールBの発射方向を制御することができる。
【0063】
また、このボール発射装置1は、ボールBを両側から挟み込む回転可能な一対の推進ローラ22を備えている。したがって、一対の推進ローラ22のいずれかまたは両方を回転させると、ボールには推進軸線L1に直角方向側の外周面に推進方向と平行またはほぼ平行な力が加わる。したがって、このボール発射装置1は、推進ローラ22の回転方向を調整してボールに推進方向Y1へ向かう推進力を加えることができる。
【0064】
また、このボール発射装置1は、一対の推進ローラ22が同一回転速度でボールBに推進方向Y1へ推進力を加える回転方向に回転した場合には、スピンがかかっていない(無回転の)ボールBを発射することができる。また、一対の推進ローラ22のいずれか一方のみがボールBに推進方向Y1へ推進力を加える回転方向に回転した場合またはボールBに推進方向Y1へ推進力を加える回転方向に回転速度差をもって回転した場合には、スピンがかかっているボールBを発射することができる。したがって、このボール発射装置1は、各推進ローラ22の回転速度を変更してボールBの発射速度やボールBのスピンのかかり具合を調整することができる。
【0065】
また、このボール発射装置1は、同じ回転方向に回転する一対の推進ローラ22を備えている。したがって、このボール発射装置1は、ボールBに効率的にスピンをかけることができる。
【0066】
このボール発射装置1は、推進軸線L1を中心として回転可能に推進部20を支持する回転支持部30を備える。したがって、このボール発射装置1は、推進部20の推進ローラ22を対向させる方向を変更させてボールBの球種を変更することができる。
【0067】
このボール発射装置1は、ボールBの第2貫通孔41aの内壁面41bにおいて1回のみ反射する分が飛球角調整筒41の傾きに加味されてボールBの発射方向L3を定める。つまりは、このボール発射装置1は、飛球角調整筒41の傾き(L2)をボールBの発射方向L3に対して少なくできる。したがって、このボール発射装置1は、飛球角調整筒41の移動時間が短くなるため、ボールの発射方向L3を素早く変更することができる。
【0068】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態のボール発射装置100を説明する。なお、第2実施形態のボール発射装置100は、飛球角調整筒140および搖動支持部150以外は第1実施形態のボール発射装置1と同様である。このため、以下においては、異なる飛球角調整筒140および搖動支持部150について説明し、他の部分については説明を省略する。
【0069】
図8を参照すると、飛球角調整筒140は、円筒状の飛球角調整筒体141と、飛球角調整筒体141の中央部に固定された入力ピン143とを備えている。飛球角調整筒体141は、第1実施形態の飛球角調整筒体41と同様であるため、説明を省略する。入力ピン143は、下端部に貫通孔が形成された板状の部材である。
【0070】
搖動支持部150は、飛球角調整筒140の後方を支持する第1搖動支持部150Aと、飛球角調整筒140の中央部を下方で支持する第2搖動支持部150Bとを備えている。第1搖動支持部150Aは、飛球角調整筒140を搖動させる際の回転軸を形成している。第2搖動支持部150Bは、飛球角調整筒140を搖動させるための動力源を形成している。
【0071】
第1搖動支持部150Aは、飛球角調整筒140の後方端部を半径方向外側から囲う円筒形状の第1支持体151と、第1支持体151を半径方向外側から囲う円筒形状の第2支持体152とを備えている。第2支持体152は、支柱(不図示)を介してベース4(
図1参照)に固定されている。
【0072】
第1支持体151は、推進軸線L1に上下方向で直交する第1回転軸線L6上で飛球角調整筒140の後方端部を上下方向から回転可能に支持している。つまり、飛球角調整筒140は、第1支持体151に対して第1回転軸線L6を中心として左右搖動方向M2に搖動可能である。
【0073】
第2支持体152は、推進軸線L1に左右方向で直交する第2回転軸線L7に上で第1支持体151を左右方向から回転可能に支持している。つまり、第1支持体151は、第2支持体152に対して第2回転軸線L7を中心として上下搖動方向M1に搖動可能である。したがって、飛球角調整筒140は、第1搖動支持部150Aによって上下搖動方向M1および左右搖動方向M2に搖動可能で支持されている。
【0074】
第2搖動支持部150Bは、下面がベース4(
図1参照)に固定されている第1直動機構153と第1直動機構153の上面に固定されている第2直動機構154とを備えている。
【0075】
第1直動機構153は、下方に位置する板状のスライドベース153aと上方に位置してスライドベース153aに対して左右直動方向M4に駆動する板状のスライド体153bとで構成されている。スライド体153bは、電動で駆動する。
【0076】
第2直動機構154は、いわゆる直動シリンダーであり、外側に位置するシリンダーケース154aと内側に位置してシリンダーケース154aに対して上下直動方向M3に駆動する軸上のシリンダー軸154bとで構成されている。シリンダー軸154bは、電動で駆動する。また、シリンダー軸154bの上端はフック上になっていて、飛球角調整筒140の入力ピン143の下端の貫通孔にひっかかっている。
【0077】
したがって、第1直動機構153のスライド体153bを左右直動方向M4に駆動させると、それに伴い飛球角調整筒140が左右搖動方向M2に搖動する。また、第2直動機構154のシリンダー軸154bを上下直動方向M3に駆動させると、それに伴い飛球角調整筒140が上下搖動方向M1に搖動する。なお、本実施形態の第1直動機構153および第2直動機構154は電動で駆動するものであったが、空圧で駆動するものであってもよい。
【0078】
このボール発射装置100は、飛球角調整筒140を第1直動機構153および第2直動機構154の動力で上下左右任意の方向に搖動させることができる。したがって、ボール発射装置100は、直線的な動力によって任意の方向に向けてボールBを発射することができる。