特許第6194964号(P6194964)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6194964ポリテトラフルオロエチレン及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6194964
(24)【登録日】2017年8月25日
(45)【発行日】2017年9月13日
(54)【発明の名称】ポリテトラフルオロエチレン及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 14/26 20060101AFI20170904BHJP
【FI】
   C08F14/26
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-17339(P2016-17339)
(22)【出願日】2016年2月1日
(62)【分割の表示】特願2014-202908(P2014-202908)の分割
【原出願日】2010年3月30日
(65)【公開番号】特開2016-65259(P2016-65259A)
(43)【公開日】2016年4月28日
【審査請求日】2016年2月29日
(31)【優先権主張番号】特願2009-82329(P2009-82329)
(32)【優先日】2009年3月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野 真誠
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 洋之
(72)【発明者】
【氏名】澤内 千絵
(72)【発明者】
【氏名】加藤 丈人
【審査官】 三原 健治
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5907228(JP,B2)
【文献】 国際公開第2005/042593(WO,A1)
【文献】 特開2003−119204(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
C08K
C08L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)〜(III)で表される1種又は2種以上の含フッ素界面活性剤の存在下に、レドックス開始剤を添加して、少なくともテトラフルオロエチレンを乳化重合する工程を含む製造方法により得られ、
標準比重が2.160以下であり、
破断強度が29N以上であり、
応力緩和時間が500秒以上である
ことを特徴とするポリテトラフルオロエチレン粉末
一般式(I):
CF−(CF−O−(CF(CF)CFO)−CF(CF)COOX
(式中、mは0〜4の整数、nは0〜2の整数、Xは水素原子、NH又はアルカリ金属原子を表す。)
一般式(II):
CF−(CF−O−(CF(CF)CFO)−CHFCFCOOX
(式中、mは0〜4の整数、nは0〜2の整数、Xは水素原子、NH又はアルカリ金属原子を表す。)
一般式(III):
CF−(CF−O−(CF(CF)CFO)−CHCFCOOX
(式中、mは0〜4の整数、nは0〜2の整数、Xは水素原子、NH又はアルカリ金属原子を表す。)
【請求項2】
押出し圧力が9.8〜24.5MPaである請求項1記載のポリテトラフルオロエチレン粉末
【請求項3】
一般式(I)〜(III)において、mが0であり、nが0又は1である請求項1又は2記載のポリテトラフルオロエチレン粉末
【請求項4】
多孔体の成形用材料である請求項1、2又は3記載のポリテトラフルオロエチレン粉末
【請求項5】
下記一般式(I)〜(III)で表される1種又は2種以上の含フッ素界面活性剤の存在下に、レドックス開始剤を添加して、少なくともテトラフルオロエチレンを乳化重合する工程を含むことを特徴とするポリテトラフルオロエチレンの製造方法。
一般式(I):
CF−(CF−O−(CF(CF)CFO)−CF(CF)COOX
(式中、mは0〜4の整数、nは0〜2の整数、Xは水素原子、NH又はアルカリ金属原子を表す。)
一般式(II):
CF−(CF−O−(CF(CF)CFO)−CHFCFCOOX
(式中、mは0〜4の整数、nは0〜2の整数、Xは水素原子、NH又はアルカリ金属原子を表す。)
一般式(III):
CF−(CF−O−(CF(CF)CFO)−CHCFCOOX
(式中、mは0〜4の整数、nは0〜2の整数、Xは水素原子、NH又はアルカリ金属原子を表す。)
【請求項6】
非溶融二次加工性を有し、標準比重が2.160以下であり、平均一次粒子径が150nm以上であり、応力緩和時間が500秒以上であり、29.7N以上の破断強度を有し、一般式:
CFOCF(CF)CFOCF(CF)COOX
(式中、Xは水素原子、NH又はアルカリ金属原子を表す。)、及び、一般式:
CFCFOCFCFOCFCOOX
(式中、Xは水素原子、NH又はアルカリ金属原子を表す。)、
からなる群より選択される少なくとも1種の含フッ素界面活性剤を含む
ことを特徴とするポリテトラフルオロエチレン粉末。
【請求項7】
更に、レドックス開始剤を含む請求項記載のポリテトラフルオロエチレン粉末。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリテトラフルオロエチレン及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリテトラフルオロエチレンパウダーを成形し、未焼成状態で高度に延伸すると多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルムが得られる。この多孔質フィルムは、水蒸気などの気体を通すが、ポリテトラフルオロエチレンの強い撥水性のため水滴は通さない。このユニークな性質を利用して、衣類や分離膜などに応用されている。
【0003】
延伸に適したポリテトラフルオロエチレンの製造方法としては以下の方法が知られている。
【0004】
特許文献1には、過マンガン酸カリウム/シュウ酸を重合開始剤として使用し、ペルフルオロオクタン酸アンモニウム〔PFOA〕の存在下にテトラフルオロエチレンを重合することにより非溶融二次加工性ポリテトラフルオロエチレン樹脂を得ることが記載されている。
【0005】
特許文献2には、臭素酸カリウムと亜硫酸アンモニウムの組み合わせを重合開始剤として使用し、PFOAの存在下にテトラフルオロエチレンを重合することによりポリテトラフルオロエチレンを得ることが記載されている。
【0006】
特許文献3には、ジコハク酸パーオキシドを重合開始剤として使用し、CFCFOCFCFOCFCOONHの存在下にテトラフルオロエチレンを重合することによりポリテトラフルオロエチレンを得ることが記載されている。
【0007】
特許文献4には、フッ素原子が結合した炭素原子数が5〜6であり、主鎖を構成する炭素原子及び酸素原子の合計数が9〜12であるパーフルオロカルボン酸又はパーフルオロカルボン酸の塩とラジカル捕捉剤とを含有させた水性媒体中で乳化重合を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−143727号公報(特許第4452354号公報)
【特許文献2】特開2002−201217号公報(特許第3552685号公報)
【特許文献3】国際公開第2007/046345号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2009/001894号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、水溶性及び揮発性が高い含フッ素界面活性剤を使用して、多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルムの成形に適したポリテトラフルオロエチレンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明は、非溶融二次加工性を有し、標準比重が2.160以下であり、平均一次粒子径が150nm以上であり、応力緩和時間が500秒以上であり、LogPOWが3.4以下の含フッ素界面活性剤の存在下にテトラフルオロエチレンを乳化重合して得られ、29.7N以上の破断強度を有することを特徴とするポリテトラフルオロエチレンである。
【0011】
本発明のポリテトラフルオロエチレンは、破断強度が32.0〜49.0Nであることが好ましい。
【0012】
本発明は、LogPOWが3.4以下の含フッ素界面活性剤、水、及び、テトラフルオロエチレンを重合槽に投入する工程、重合槽にレドックス開始剤を投入してテトラフルオロエチレンの乳化重合を開始する工程、及び、ポリテトラフルオロエチレンを回収する工程、を含み、上記含フッ素界面活性剤の合計投入量が最終ポリテトラフルオロエチレン収量に対して1000〜6000ppmであることを特徴とするポリテトラフルオロエチレンの製造方法でもある。(以下、本発明の第1の製造方法ということがある。)
【0013】
上記含フッ素界面活性剤は、一般式:
CFOCF(CF)CFOCF(CF)COOX
(式中、Xは水素原子、NH又はアルカリ金属原子を表す。)、及び、一般式:
CFCFOCFCFOCFCOOX
(式中、Xは水素原子、NH又はアルカリ金属原子を表す。)、
からなる群より選択される少なくとも1種の含フッ素界面活性剤であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のポリテトラフルオロエチレンから得られる多孔体は破断強度が高い。本発明の製造方法は、上述の構成よりなるので、水溶性及び揮発性が高い含フッ素界面活性剤を使用して、多孔体の製造に特に好適なポリテトラフルオロエチレンを製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0016】
1.本発明のポリテトラフルオロエチレン
本発明のポリテトラフルオロエチレンは、非溶融二次加工性を有し、標準比重が2.160以下であり、平均一次粒子径が150nm以上であり、応力緩和時間が500秒以上であり、LogPOWが3.4以下の含フッ素界面活性剤の存在下にテトラフルオロエチレンを乳化重合して得られ、29.7N以上の破断強度を有することを特徴とする。
【0017】
LogPOWが大きい化合物は環境への負荷が懸念されており、これを考慮すると、LogPOWが3.5未満の化合物を使用することが好ましい。これまで乳化重合による含フッ素ポリマーの製造には、界面活性剤として主にパーフルオロオクタン酸アンモニウム〔PFOA〕が使用されており、PFOAはLogPOWが3.5であるので、LogPOWが3.4以下の含フッ素界面活性剤に切り替えることが好ましい。
【0018】
一方で、LogPOWが3.4以下の含フッ素界面活性剤は乳化能に劣る問題がある。高い破断強度のポリテトラフルオロエチレンを得るためには、重合時の水性分散液の安定性が重要であると信じられており、実際に乳化能に劣る含フッ素界面活性剤を使用すると充分な破断強度が得られない。
【0019】
そこで、国際公開第2009/001894号パンフレットには、LogPOWが小さい含フッ素界面活性剤を水性分散液の安定性を向上させるために多量に使用する方法が記載されている。しかし、この方法により得られたポリテトラフルオロエチレンでも破断強度は充分ではない。
【0020】
本発明者らが鋭意検討したところ、乳化能が充分に低い含フッ素界面活性剤を少量使用し、レドックス開始剤により重合を開始させると、むしろ高い破断強度を示すポリテトラフルオロエチレンが得られることが見出された。
【0021】
すなわち、本発明のポリテトラフルオロエチレンは、LogPOWが3.4以下の含フッ素界面活性剤の存在下に得られたものとしては予測できない程度の破断強度を示す新規なポリテトラフルオロエチレンである。
【0022】
本発明は、LogPOWが3.4以下の含フッ素界面活性剤の存在下にテトラフルオロエチレンを乳化重合して得られたポリテトラフルオロエチレンであるため、環境に優しく、また、含フッ素界面活性剤の洗浄が容易であるため、生産も容易である。
【0023】
しかも、29.7N以上の破断強度を有する。乳化能が低い含フッ素界面活性剤の使用は水性分散液の安定性を損なうものであり、従来の知見に基づけば得られるポリテトラフルオロエチレンの破断強度は低いはずであるが、上記破断強度は、驚くべきことに、特開2000−143727号公報(特許第4452354号公報)及び特開2002−201217号公報(特許第3552685号公報)記載のポリテトラフルオロエチレンと同等である。
【0024】
本発明のポリテトラフルオロエチレンは、破断強度が32.0〜49.0Nであることが好ましい。
【0025】
本発明のポリテトラフルオロエチレンは、LogPOWが3.4以下の含フッ素界面活性剤の存在下に得られたものであり、LogPOWが2.5以上または3.0以上の界面活性剤の存在下に得られたものであってよい。
【0026】
上記LogPOWは、1−オクタノールと水との分配係数であり、LogP[式中、Pは、含フッ素界面活性剤を含有するオクタノール/水(1:1)混合液が相分離した際のオクタノール中の含フッ素界面活性剤濃度/水中の含フッ素界面活性剤濃度比を表す]で表されるものである。
【0027】
LogPOWが3.4以下の含フッ素界面活性剤としては、含フッ素アニオン性界面活性剤が好ましく、米国特許出願公開第2007/0015864号明細書、米国特許出願公開第2007/0015865号明細書、米国特許出願公開第2007/0015866号明細書、米国特許出願公開第2007/0276103号明細書、米国特許出願公開第2007/0117914号明細書、米国特許出願公開第2007/142541号明細書、米国特許出願公開第2008/0015319号明細書、米国特許第3250808号明細書、米国特許第3271341号明細書、特開2003−119204号公報、国際公開第2005/042593号パンフレット、国際公開第2008/060461号パンフレット、国際公開第2007/046377号パンフレット、国際公開第2007/119526号パンフレット、国際公開第2007/046482号パンフレット、国際公開第2007/046345号パンフレットに記載されたもの等を使用できる。
【0028】
LogPOWが3.4以下の含フッ素界面活性剤としては、一般式:
CFOCF(CF)CFOCF(CF)COOX
(式中、Xは水素原子、NH又はアルカリ金属原子を表す。)、及び、一般式:
CFCFOCFCFOCFCOOX
(式中、Xは水素原子、NH又はアルカリ金属原子を表す。)
からなる群より選択される少なくとも1種の含フッ素界面活性剤であることが好ましい。
【0029】
LogPOWが3.4以下の含フッ素界面活性剤としては、CFOCF2CF2OCF2CF2COONH、一般式:
CFOCFCFCFOCHFCFCOOX
(式中、Xは水素原子、NH又はアルカリ金属原子を表す。)
等も挙げることができる。
【0030】
上記含フッ素界面活性剤が塩である場合、該塩を形成する対イオンとしては、アルカリ金属イオン又はNH4+等が挙げられ、アルカリ金属イオンとしては、例えば、Na、K等が挙げられる。
【0031】
LogPOWが3.4以下の含フッ素界面活性剤としては、CFOCF(CF)CFOCF(CF)COOH、CFOCF(CF)CFOCF(CF)COONH、CFCFOCFCFOCFCOOH、CFCFOCFCFOCFCOONH、CFOCFCFCFOCHFCFCOOH、CFOCFCFCFOCHFCFCOONH等が挙げられる。
【0032】
本発明のポリテトラフルオロエチレンは、LogPOWが3.4以下の含フッ素界面活性剤の存在下にテトラフルオロエチレンを重合して得られたものであるが、LogPOWが3.4以下の含フッ素界面活性剤は水溶性や揮発性が高いので、ポリテトラフルオロエチレンから含フッ素界面活性剤が全く検出されないこともあり得る。含フッ素界面活性剤が全く検出されない場合でも、米国環境保護庁が定めた「PFOA自主削減プログラム(PFOA 2010/2015スチュワードシップ・プログラム)」に従って製造されたポリテトラフルオロエチレンであれば、LogPOWが3.4以下の含フッ素界面活性剤の存在下にテトラフルオロエチレンを重合して得られたポリテトラフルオロエチレンであり得る。
【0033】
本発明のポリテトラフルオロエチレンは、LogPOWが3.4を超える含フッ素界面活性剤の不存在下に乳化重合して得られたものである。
【0034】
本発明のポリテトラフルオロエチレン〔TFE重合体〕は、TFE単独重合体であってもよいし、TFEと変性モノマーとの共重合体であって、非溶融加工性であるもの(以下、「変性PTFE」という。)であってもよい。変性PTFEは、TFEと公知の変性モノマーとを重合して得ることができる。
【0035】
上記変性モノマーとしては、例えば、ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕、クロロトリフルオロエチレン〔CTFE〕等の含フッ素オレフィン;炭素原子1〜5個、特に炭素原子1〜3個を有するアルキル基を持つフルオロ(アルキルビニルエーテル);フルオロジオキソール等の環式のフッ素化された単量体;パーフルオロアルキルエチレン;ω―ヒドロパーフルオロオレフィン等が挙げられる。変性モノマーの供給は、重合開始前に一括して添加してもよいし、連続的又は間欠的に添加してもよい。
【0036】
上記変性PTFEは、変性モノマー含有率が0.001〜2モル%の範囲であることが好ましく、0.001〜1モル%の範囲であることがより好ましい。
【0037】
上記ポリテトラフルオロエチレンは、コアシェル構造を有していてもよい。コアシェル構造を有するポリテトラフルオロエチレンとしては、例えば、粒子中に高分子量のポリテトラフルオロエチレンのコアと、より低分子量のポリテトラフルオロエチレンまたは変性のポリテトラフルオロエチレンのシェルとを含む変性ポリテトラフルオロエチレンが挙げられる。このような変性ポリテトラフルオロエチレンとしては、例えば、特表2005−527652号公報に記載されるポリテトラフルオロエチレンが挙げられる。
【0038】
本発明のポリテトラフルオロエチレンは、標準比重〔SSG〕が2.160以下であり、2.157以下であることが好ましい。SSGが2.160以下のポリテトラフルオロエチレンは押出成形物の延伸倍率が3000%を超え、延伸成形に適する。上記SSGは、溶融成形加工性を有しないポリテトラフルオロエチレンの分子量の指標としてASTM D4895−89に規定されるSSGである。
【0039】
本発明のポリテトラフルオロエチレンは、平均一次粒子径が150nm以上であり、180nm以上であることが好ましい。ポリテトラフルオロエチレンの平均一次粒子径が大きいほど、その粉末を用いてペースト押出成形をする際に、ペースト押出圧力の上昇を抑えられ、造膜性にも優れる。上限は特に限定されないが500nmであってよい。
【0040】
本発明のポリテトラフルオロエチレンは、押出し圧力が9.8〜24.5MPaであることが好ましく、9.8〜20.0MPaであることがより好ましく、9.8〜19.0MPaであることが更に好ましい。
【0041】
本発明のポリテトラフルオロエチレンは、応力緩和時間が500秒以上であり、600秒以上であることが好ましく、700秒以上であることがより好ましい。
【0042】
本発明のポリテトラフルオロエチレンは、延伸性、フィブリル性および非溶融二次加工性を有する。
【0043】
本発明のポリテトラフルオロエチレンは、粒子状であっても、粉末状であってもよい。
【0044】
本発明のポリテトラフルオロエチレンは、多孔体の成形用材料として特に好適である。
【0045】
2.本発明の第1の製造方法
本発明の第1の製造方法は、LogPOWが3.4以下の含フッ素界面活性剤、水、及び、テトラフルオロエチレンを重合槽に投入する工程、重合槽にレドックス開始剤を投入してテトラフルオロエチレンの乳化重合を開始する工程、及び、ポリテトラフルオロエチレンを回収する工程、を含み、上記含フッ素界面活性剤の合計投入量が最終ポリテトラフルオロエチレン収量に対して1000〜6000ppmであることを特徴とする。
【0046】
本発明の第1の製造方法によって本発明のポリテトラフルオロエチレンを製造することができる。本発明の第1の製造方法は、LogPOWが3.4以下の含フッ素界面活性剤を使用し、しかもその使用量が極めて少ないこと、および、レドックス開始剤を使用することに特徴がある。
【0047】
本発明の第1の製造方法では、使用する含フッ素界面活性剤の乳化能が低く、その使用量も制限されているため、安定した乳化重合が困難であることが予測される。
しかしながら、重合条件を厳密に制御すれば、極めて不安定な重合場が高い破断強度を示すポリテトラフルオロエチレンを与えることが見出された。
乳化能が低い含フッ素界面活性剤を少量使用し、かつ、レドックス重合開始剤を使用することで、何故、高い破断強度を示すポリテトラフルオロエチレンが得られるのかは必ずしも明りょうではないが、両者の相乗効果ではないかと考えられる。
第1に、含フッ素界面活性剤の乳化能が充分に低いこと、加えて使用する含フッ素界面活性剤の量が少量であることで、特に重合反応の後半において新規な重合場の発生が抑制されているのであろう。第2に、レドックス開始剤を使用することによって、重合反応の前半においてのみ、重合の開始に必要な充分な量のラジカルが供給され、重合反応の後半ではラジカルはほとんど発生しない。
そうすると、重合反応の後半には、ほとんどラジカルが供給されない状態で、しかも限られた重合場において重合反応が進行するため、低分子量のポリテトラフルオロエチレンやオリゴマーの生成が抑制され、高い破断強度を示すポリテトラフルオロエチレンが得られるのではないかと推測される。
【0048】
本発明の第1の製造方法は、LogPOWが3.4以下の含フッ素界面活性剤、水、及び、テトラフルオロエチレンを重合槽に投入する工程、重合槽に重合開始剤を投入してテトラフルオロエチレンの乳化重合を開始する工程、及び、ポリテトラフルオロエチレンを回収する工程、を含む。
【0049】
LogPOWが3.4以下の含フッ素界面活性剤の好ましい例示は上述したとおりである。
【0050】
本発明の第1の製造方法では、含フッ素界面活性剤を最終ポリテトラフルオロエチレン収量に対して1000〜6000ppmとなるように投入する。含フッ素界面活性剤は重合開始前に全量を投入してもよいし、重合反応の進行中に追加添加してもよい。含フッ素界面活性剤の使用量の好ましい下限は2000ppm、好ましい上限は5000ppmである。
【0051】
本発明の第1の製造方法では、含フッ素界面活性剤の投入量の上限が重要である。含フッ素界面活性剤の投入量が多すぎると、ポリテトラフルオロエチレンの破断強度が低下する。
【0052】
3.本発明の第2の製造方法
本発明の第2のポリテトラフルオロエチレンの製造方法は、下記一般式(I)〜(III)で表される1種又は2種以上の含フッ素界面活性剤の存在下に、レドックス開始剤を添加して、少なくともテトラフルオロエチレンを乳化重合する工程を含むことを特徴とする。
【0053】
含フッ素界面活性剤は一般式(I)〜(III)で表されるフルオロエーテルカルボン酸であり、これらはパーフルオロオクタン酸アンモニウム〔PFOA〕と比較して水への溶解性が高く、また、揮発性が高いので、ポリテトラフルオロエチレンからの除去が容易である。
【0054】
上記含フッ素界面活性剤として、一般式(I):
CF−(CF−O−(CF(CF)CFO)−CF(CF)COOX (I)
(式中、mは0〜4の整数、nは0〜2の整数、Xは水素原子、NH又はアルカリ金属原子を表す。)、
一般式(II):
CF−(CF−O−(CF(CF)CFO)−CHFCFCOOX (II)、
(式中、mは0〜4の整数、nは0〜2の整数、Xは水素原子、NH又はアルカリ金属原子を表す。)
一般式(III):
CF−(CF−O−(CF(CF)CFO)−CHCFCOOX (III)
(式中、mは0〜4の整数、nは0〜2の整数、Xは水素原子、NH又はアルカリ金属原子を表す。)
で表されるフルオロエーテルカルボン酸の1種又は2種以上を使用する。
【0055】
上記mは、0〜2の整数であることが好ましく、0であることがより好ましい。
【0056】
上記nは、0又は1であることが好ましい。
【0057】
上記Xは、1価の水素原子、NH(アンモニウム基)又はアルカリ金属原子を表す。アルカリ金属原子としては、Li、Na、K等が挙げられる。
【0058】
上記Xとしては、水溶性の面から、NH又はアルカリ金属原子であることが好ましく、加熱処理により容易に除去し得る点でNHがより好ましい。
【0059】
また、上記Xとしては、水素原子であることも好ましい。この場合、水中での界面活性が塩に比べ向上し、例えば同モル濃度での表面張力がカルボン酸の方が低くなり、その結果、重合に用いた場合、より安定で小さなポリマー粒子が得られる、得られたポリマーコロイドの安定性が高い、重合中の凝集物の発生が少なく、高濃度まで重合を行える等の利点がある。
【0060】
本発明のポリテトラフルオロエチレンの製造方法は、含フッ素界面活性剤として、上記フルオロエーテルカルボン酸を少なくとも1種用いれば、ポリテトラフルオロエチレンを効率よく製造することが可能である。また、本発明のポリテトラフルオロエチレンの製造方法において、含フッ素界面活性剤として、上記フルオロエーテルカルボン酸を2種以上併用してもよいし、揮発性を有するもの又はポリテトラフルオロエチレンからなる成形体等に残存してもよいものであれば、上記フルオロエーテルカルボン酸以外のその他の界面活性能を有する化合物を併用してもよい。上記その他の界面活性能を有する化合物としては、上述したものを用いることができる。
【0061】
上記フルオロエーテルカルボン酸は、合計添加量で、水性媒体に対して0.0001〜10質量%の量を添加することが好ましい。より好ましい下限は0.001質量%であり、より好ましい上限は2質量%、更に好ましい上限は1質量%である。少なすぎると、分散力が不充分となるおそれがあり、多すぎると、添加量に見合った効果が得られず、却って重合速度の低下や反応停止が起こるおそれがある。上記化合物の添加量は、目的とするポリテトラフルオロエチレンの分子量等によって適宜決定される。
【0062】
上記重合は、攪拌機を備えた耐圧の反応容器に水性媒体及び上記含フッ素界面活性剤を仕込み、脱酸素後、テトラフルオロエチレン〔TFE〕を仕込み、所定の温度にし、重合開始剤を添加して反応を開始する。反応の進行とともに圧力が低下するので、初期圧力を維持するように、追加のTFEを連続的又は間欠的に追加供給する。所定量のTFEを供給した時点で、供給を停止し、反応容器内のTFEをパージし、温度を室温に戻して反応を終了する。
【0063】
本発明の第2の製造方法により得られるポリテトラフルオロエチレンは、以下のように優れた特性を有する。
【0064】
本発明の製造方法によれば、ポリテトラフルオロエチレンのSSGを2.160以下とすることができる。SSGが2.160以下のポリテトラフルオロエチレンは押出成形物の延伸倍率が3000%を超え、延伸成形に適する。上記SSGは、溶融成形加工性を有しないポリテトラフルオロエチレンの分子量の指標としてASTM D4895−89に規定されるSSGである。
【0065】
本発明の第2の製造方法によれば、ポリテトラフルオロエチレンの平均一次粒子径を0.180μm以上とすることができる。ポリテトラフルオロエチレンの平均一次粒子径が大きいほど、その粉末を用いてペースト押出成形をする際に、ペースト押出圧力の上昇を抑えられ、造膜性にも優れる。
【0066】
本発明の第2の製造方法によれば、ポリテトラフルオロエチレンの押出し圧力を9.8〜24.5MPaとすることができ、より好ましくは9.8〜20.0MPaすることができ、更に好ましくは9.8〜19.0MPaとすることができる。
【0067】
本発明の第2の製造方法により得られたポリテトラフルオロエチレンは、多孔体の成形用材料として特に好適である。
【0068】
本発明の第2の製造方法により得られるポリテトラフルオロエチレンから多孔体を製造した場合、多孔体の破断強度を29N以上とすることができる。また、多孔体の応力緩和時間を500秒以上とすることができ、より好ましくは600秒以上とすることができる。
【0069】
但し、本発明の第2の製造方法において、LogPOWが3.4以下の含フッ素界面活性剤を使用し、LogPOWが3.4を超える含フッ素界面活性剤を使用しない場合、高い破断強度を得るためには、本発明の第1の製造方法に従って含フッ素界面活性剤の投入量を制御しなければならない。
【0070】
4.本発明の第1及び第2の製造方法に共通の事項
本発明の第1及び第2の製造方法は、それぞれ上述した特徴を有するが、その他の特徴は以下のとおりである。
【0071】
重合開始剤としてレドックス開始剤を使用することで、多孔体の製造に特に適したポリテトラフルオロエチレンが得られる。レドックス開始剤の添加量は、目的とするポリテトラフルオロエチレンの分子量、反応速度によって適宜決定されるが、最終ポリテトラフルオロエチレン収量に対して0.1〜200ppmであることが好ましく、0.5〜100ppmであることがより好ましい。
【0072】
上記レドックス開始剤としては、過硫酸塩又は有機過酸化物と、亜硫酸ナトリウム等の亜硫酸塩、亜硫酸水素ナトリウム等の重亜硫酸塩、臭素酸塩、ジイミン、シュウ酸等の還元剤とを組み合わせたものが挙げられる。
【0073】
上記レドックス開始剤としては、例えば、過マンガン酸カリウム/シュウ酸、過硫酸アンモニウム/重亜硫酸塩/硫酸鉄、三酢酸マンガン/シュウ酸、セリウム硝酸アンモニウム/シュウ酸、臭素酸塩/重亜硫酸塩等が挙げられ、過マンガン酸カリウム/シュウ酸が好ましい。レドックス開始剤を用いる場合は、酸化剤又は還元剤のいずれかをあらかじめ重合槽に仕込み、ついでもう一方を連続的又は断続的に加えて重合を開始させてもよい。例えば、過マンガン酸カリウム/シュウ酸を用いる場合、重合槽にシュウ酸を仕込み、そこへ過マンガン酸カリウムを連続的に添加することが好ましい。
【0074】
本発明のポリテトラフルオロエチレンの製造方法において、上記重合は、重合中に生じる凝固物の量を減少させるために水性媒体に対して25〜200ppmのジカルボン酸の存在下に行うことが好ましく、30〜200ppmのジカルボン酸の存在下に行うことがより好ましい。上記ジカルボン酸が水性媒体に対して25ppm未満であると、充分な効果が得られないおそれがあり、200ppmを超えると、連鎖移動反応が起こり、得られるポリマーが低分子量のものとなるおそれがある。上記ジカルボン酸は、150ppm以下であることが好ましい。上記ジカルボン酸は、重合反応の開始前に添加してもよいし、重合途中に添加してもよい。
【0075】
上記ジカルボン酸としては、例えば、一般式:HOOCRCOOH(式中、Rは炭素数1〜5のアルキレン基を表す。)で表されるものが好ましく、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸がより好ましく、コハク酸が更に好ましい。
【0076】
上記重合は、0.05〜5.0MPaの圧力下で行うことができる。好ましい圧力の範囲は1.5〜3.0MPaである。
【0077】
上記水性媒体は、重合を行わせる媒体であって、水を含む液体を意味する。上記水性媒体は、水のみであるか、又は、水を含むものであれば特に限定されず、水と、例えば、アルコール、エーテル、ケトン等のフッ素非含有有機溶媒、及び/又は、沸点が40℃以下であるフッ素含有有機溶媒とを含むものであってもよい。
【0078】
上記重合は、10〜100℃の温度で行うことができる。好ましい温度の範囲は50〜90℃である。
【0079】
上記重合において、更に、目的に応じて、公知の安定剤、連鎖移動剤等を添加してもよい。
【0080】
上記安定剤としては、実質的に反応に不活性であって、上記反応条件で液状となる炭素数が12以上の飽和炭化水素を挙げられ、なかでも、パラフィンワックスが好ましい。また、飽和炭化水素以外の分散安定剤として、フッ素系オイル、フッ素系溶剤、シリコーンオイル等が挙げられる。上記安定剤は、水性媒体100質量部に対して2〜10質量部で使用することができる。
【0081】
上記連鎖移動剤としては、公知のものが使用でき、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン等の飽和炭化水素、クロロメタン、ジクロロメタン、ジフルオロエタン等のハロゲン化炭化水素類、メタノール、エタノール等のアルコール類、水素等が挙げられるが、常温常圧で気体状態のものが好ましい。上記連鎖移動剤の使用量は、通常、供給されるTFE全量に対して、1〜1000ppmであり、好ましくは1〜500ppmである。
【0082】
更に、重合中に、ヒドロキノン、カテコール等のラジカル捕捉剤を添加したり、亜硫酸アンモニウム等のパーオキサイドの分解剤を添加したりすることによって、系内のラジカル濃度を調整することもできる。
【0083】
また、反応中のpHを調整するための緩衝剤として、炭酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等を添加してもよい。
【0084】
本発明のポリテトラフルオロエチレンの製造方法は、また、重合槽に変性モノマーを添加する工程を含むものであってもよい。変性モノマーの供給は、重合開始前に一括して添加してもよいし、連続的又は間欠的に添加してもよい。
【0085】
本発明のポリテトラフルオロエチレンの製造方法は、また、上記含フッ素界面活性剤の存在下に水性媒体中においてTFEを重合して水性乳濁液(シードディスパージョン)を得る工程、及び、上記水性乳濁液(シードディスパージョン)の存在下にTFEを重合(シード重合)する工程を含むものであってもよい。
【0086】
上記ポリテトラフルオロエチレンの重合が終了した時点で、固形分濃度が20〜70質量%の水性分散体を得ることができる。上記水性分散体は、上記含フッ素界面活性剤、及び、ポリテトラフルオロエチレンを含有する。ポリテトラフルオロエチレンの平均一次粒子径は50〜500nmである。
【0087】
本発明の製造方法は、ポリテトラフルオロエチレン水性分散体を回収する工程、
ポリテトラフルオロエチレン水性分散体中のポリテトラフルオロエチレンを凝集させる工程、
凝集したポリテトラフルオロエチレンを回収する工程、
回収したポリテトラフルオロエチレンを100〜250℃で乾燥させる工程、及び、
乾燥して得られたポリテトラフルオロエチレンを押出助剤と混合し、押出圧力9.8〜24.5MPaで押出して、ビードに成形する工程、
得られたビードを200〜230℃で加熱して押出助剤を除去し、ビード形状のポリテトラフルオロエチレンを得る工程、
のうち、少なくとも1つの工程を含むことも好ましい。
【0088】
延伸ビードから得られる多孔体の破断強度はビードに成形するための押出圧力が高いほど大きくなる。本発明のPTFEは、20MPa以下の押出圧力で成形しても、得られる延伸ビードは29.7N以上の破断強度を示す。
【0089】
上記水性分散体に含まれるポリテトラフルオロエチレンを凝集させることによりファインパウダーを製造できる。上記ポリテトラフルオロエチレンの水性分散体は、凝集、洗浄、乾燥を経てファインパウダーとして各種用途に使用することができる。上記ポリテトラフルオロエチレンの水性分散体に対して凝集を行う場合、通常、ポリマーラテックス等の重合により得た水性分散体を、水を用いて10〜20質量%のポリマー濃度になるように希釈し、場合によっては、pHを中性又はアルカリ性に調整した後、撹拌機付きの容器中で反応中の撹拌よりも激しく撹拌して行う。上記凝集は、メタノール、アセトン等の水溶性有機化合物、硝酸カリウム、炭酸アンモニウム等の無機塩や、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸等を凝析剤として添加しながら撹拌を行ってもよい。上記凝集は、また、インラインミキサー等を使用して連続的に行ってもよい。
【0090】
上記凝集前や凝集中に、着色のための顔料や機械的性質を改良するための各種充填剤を添加することにより、顔料や充填剤が均一に混合した顔料入り又は充填剤入りのポリテトラフルオロエチレンファインパウダーを得ることができる。
【0091】
上記ポリテトラフルオロエチレンを凝集して得られた湿潤粉末の乾燥は、通常、上記湿潤粉末をあまり流動させない状態、好ましくは静置の状態を保ちながら、真空、高周波、熱風等の手段を用いて行う。粉末同士の、特に高温での摩擦は、一般にファインパウダー型のポリテトラフルオロエチレンに好ましくない影響を与える。これは、この種のポリテトラフルオロエチレンからなる粒子が小さな剪断力によっても簡単にフィブリル化して、元の安定な粒子構造の状態を失う性質を持っているからである。上記乾燥は、10〜250℃、好ましくは100〜220℃、より好ましくは100〜200℃の乾燥温度で行うことができる。
【0092】
多孔体は、パウダー状のポリテトラフルオロエチレンをペースト押出し圧延後、未焼成又は半焼成し、少なくとも1方向に延伸して(好ましくは、圧延方向にロール延伸し次いでテンターにより幅方向に延伸して)、製造することができる。延伸条件としては、5〜1000%/秒の速度、500%以上の延伸倍率が好ましく採用される。延伸することによりポリテトラフルオロエチレンは容易にフィブリル化し、結節と繊維からなるポリテトラフルオロエチレン多孔体(膜)となる。ポリテトラフルオロエチレン多孔体(膜)の空孔率は、特に制限されないが、一般的に50〜99%の範囲が好ましく、70〜98%の範囲がより好ましい。
【0093】
上記多孔体(膜)は、メンブレン、ファイバー、ロッド、チューブ等の各種形態で使用することができ、薬液フィルター、エアフィルター等の各種フィルターとして好適に使用でき、更に、繊維製品や医療分野で使用する製品の素材としても有用である。
【実施例】
【0094】
実施例において、各物性の測定は以下の方法により行った。
【0095】
(1)ポリマー固形分濃度
ポリテトラフルオロエチレン水性分散体1gを、送風乾燥機中で150℃、30分の条件で乾燥し、水性分散体の質量(1g)に対する加熱残分の質量の割合を百分率で表した数値をポリマー固形分濃度とする。
【0096】
(2)平均一次粒子径
ポリテトラフルオロエチレン水性分散体を水で固形分濃度が0.15質量%になるまで希釈し、得られた希釈ラテックスの単位長さに対する550nmの投射光の透過率と、透過型電子顕微鏡写真により定方向径を測定して決定した数基準長さ平均粒子径とを測定して、検量線を作成する。この検量線を用いて、各試料の550nmの投射光の実測透過率から数平均粒子径を決定する。
【0097】
(3)標準比重〔SSG〕
ASTM D−4895−89に準拠して試料を作製し、得られた試料の比重を水置換法によって測定する。
【0098】
(4)押出圧力の測定
微粉末100gに、微粉末及び潤滑剤を合わせた質量に基づき18.0質量%となるように潤滑剤(商品名:IP1620(登録商標)、出光石油化学社製)を添加し、室温にてガラスビン中で3分間混合する。次いで、ガラスビンを、押出前少なくとも1時間、室温(25℃)に放置し、潤滑化樹脂を得る。潤滑化樹脂をオリフィス(直径2.4mm、ランド長5mm、導入角30°)を通して、室温で100:1の減速比でペースト押出し、均一なビード(beading;押出成形体)を得る。押出スピード、すなわち、ラムスピードは、20インチ/分(51cm/分)とする。押出圧力は、ペースト押出しにおいて押出負荷が平衡状態になった時の負荷を測定し、ペースト押出に用いたシリンダーの断面積で除した値とする。
【0099】
(5)延伸試験
上記のペースト押出しにより得られたビードを230℃で30分加熱することにより、潤滑剤をビードから除去する。次に、ビード(押出成形体)を適当な長さに切断し、クランプ間隔が1.5インチ(38mm)または2.0インチ(51mm)のいずれかの間隔となるよう、各末端をクランプに固定し、空気循環炉中で300℃に加熱する。次いでクランプを所望のストレッチ(総ストレッチ)に相当する分離距離となるまで所望の速度(ストレッチ速度)で離し、ストレッチ試験を実施する。このストレッチ方法は、押出スピード(84cm/分でなく51cm/分)が異なることを除いて、本質的に米国特許第4,576,869号明細書に開示された方法に従う。『ストレッチ』とは、延伸による長さの増加であり、通常元の長さと関連して表される。上記作製方法において、上記ストレッチ速度は、100%/秒であり、上記総ストレッチは2400%である。
【0100】
(6)破断強度
上記延伸試験で得られた延伸ビード(ビードをストレッチすることによって作製されたもの)について、25℃で300mm/分の速度で引っ張り試験を行い、破断した時点の強度を破断強度として測定する。
【0101】
(7)応力緩和時間
上記延伸試験において、クランプ間隔を1.5インチ(3.8cm)、ストレッチ速度を1000%/秒、総ストレッチを2400%とし、応力緩和時間測定用ビードを作製する。このビードの両方の末端を固定具につなげ、ぴんと張られた全長8インチ(20cm)のビードサンプルとする。オーブンを390℃に保ち、オーブン側部にある(覆われた)スリットを通して固定具をオーブン中に挿入する。オーブンに挿入した時点からビードサンプルが破断するまでに要する時間を応力緩和時間として測定する。
【0102】
実施例で使用した各含フッ素界面活性剤のLogPOWは以下のとおりである。
CF−O−CF(CF)CFO−CF(CF)COONH:3.4
CFOCF2CF2OCF2CF2COONH:3.0
CFCF2OCF2CF2OCF2COONH:3.1
【0103】
実施例1
6Lの重合槽に、超純水3600g、パラフィンワックス180g及び界面活性剤(CF−O−CF(CF)CFO−CF(CF)COONH)5.4g、コハク酸0.108g、シュウ酸0.0252gを仕込み、窒素パージによる脱気を行い、70℃まで昇温した。重合槽内の温度が安定したのち、テトラフルオロエチレンガスを導入し、2.7MPaの圧力とした。
【0104】
内容物を攪拌しながら、過マンガン酸カリウム3.5mgを溶解した超純水を一定速度で連続的に添加し、重合槽内の圧力が2.7MPaに一定になるよう、TFEを連続的に供給した。TFE消費量が900gの時点で、上記過マンガン酸カリウム3.5mgを溶解した超純水全量を添加した。TFE消費量が1500gの時点で、攪拌及びTFE供給を停止して、重合槽内のTFEをパージして、ついで気相を窒素で置換して、ポリテトラフルオロエチレン水性分散体(固形分29.5質量%)を得た。含フッ素界面活性剤の使用量は最終ポリテトラフルオロエチレン収量に対して3600ppmであった。
【0105】
得られたポリテトラフルオロエチレン水性分散体を固形分濃度15質量%まで希釈し、攪拌機付き容器内で硝酸の存在下において激しく攪拌しポリテトラフルオロエチレンを凝固させた。凝固したポリテトラフルオロエチレンを分離し、210℃において18時間乾燥し、ポリテトラフルオロエチレンの微粉末を得た。得られた微粉末の各種物性を測定した。結果を表1に示す。
【0106】
実施例2
6Lの重合槽に、超純水3600g、パラフィンワックス180g及び界面活性剤(CF−O−CF(CF)CFO−CF(CF)COONH)2.2g、コハク酸0.108g、シュウ酸0.0252gを仕込み、窒素パージによる脱気を行い、70℃まで昇温した。重合槽内の温度が安定したのち、テトラフルオロエチレンガスを導入し、2.7MPaの圧力とした。
【0107】
内容物を攪拌しながら、過マンガン酸カリウム3.5mgを溶解した超純水を一定速度で連続的に添加し、重合槽内の圧力が2.7MPaに一定になるよう、TFEを連続的に供給した。TFE消費量が184gの時点で、界面活性剤(CF−O−CF(CF)CFO−CF(CF)COONH)3.2gを添加、TFE消費量が900gの時点で、上記過マンガン酸カリウム3.5mgを溶解した超純水全量を添加した。TFE消費量が1637gの時点で、攪拌及びTFE供給を停止して、重合槽内のTFEをパージして、ついで気相を窒素で置換して、ポリテトラフルオロエチレン水性分散体(固形分30.9質量%)を得た。含フッ素界面活性剤の使用量は最終ポリテトラフルオロエチレン収量に対して3290ppmであった。
【0108】
得られたポリテトラフルオロエチレン水性分散体を固形分濃度15%まで希釈し、攪拌機付き容器内で硝酸の存在下において激しく攪拌しポリテトラフルオロエチレンを凝固させた。凝固したポリテトラフルオロエチレンを分離し、210℃において18時間乾燥し、ポリテトラフルオロエチレンの微粉末を得た。得られた微粉末の各種物性を測定した。結果を表1に示す。
【0109】
実施例3
6Lの重合槽に、超純水3600g、パラフィンワックス180g及び界面活性剤 CFOCF2CF2OCF2CF2COONH 5.4g、コハク酸0.108g、シュウ酸0.0252gを仕込み、窒素パージによる脱気を行い、70℃まで昇温した。重合槽内の温度が安定したのち、テトラフルオロエチレンガスを導入し、2.7MPaの圧力とした。
【0110】
内容物を攪拌しながら、過マンガン酸カリウム3.5mgを溶解した超純水を一定速度で連続的に添加し、重合槽内の圧力が2.7MPaに一定になるよう、TFEを連続的に供給した。TFE消費量が184gの時点で、界面活性剤CFOCF2CF2OCF2CF2COONH 3.8gを添加、TFE消費量が900gの時点で、上記過マンガン酸カリウム3.5mgを溶解した超純水全量を添加した。TFE消費量が1543gの時点で、攪拌及びTFE供給を停止して、重合槽内のTFEをパージして、ついで気相を窒素で置換して、ポリテトラフルオロエチレン水性分散体(固形分30.3質量%)を得た。含フッ素界面活性剤の使用量は最終ポリテトラフルオロエチレン収量に対して6000ppmであった。
【0111】
得られたポリテトラフルオロエチレン水性分散体を固形分濃度15%まで希釈し、攪拌機付き容器内で硝酸の存在下において激しく攪拌しポリテトラフルオロエチレンを凝固させた。凝固したポリテトラフルオロエチレンを分離し、210℃において18時間乾燥し、ポリテトラフルオロエチレンの微粉末を得た。得られた微粉末の各種物性を測定した。結果を表1に示す。
【0112】
実施例4
6Lの重合槽に、超純水3600g、パラフィンワックス180g及び界面活性剤 CFCF2OCF2CF2OCF2COONH 5.4g、コハク酸0.108g、シュウ酸0.0252gを仕込み、窒素パージによる脱気を行い、70℃まで昇温した。重合槽内の温度が安定したのち、テトラフルオロエチレンガスを導入し、2.7MPaの圧力とした。
【0113】
内容物を攪拌しながら、過マンガン酸カリウム3.5mgを溶解した超純水を一定速度で連続的に添加し、重合槽内の圧力が2.7MPaに一定になるよう、TFEを連続的に供給した。TFE消費量が184gの時点で、界面活性剤CFOCF2CF2OCF2CF2COONH 3.8gを添加、TFE消費量が900gの時点で、上記過マンガン酸カリウム3.5mgを溶解した超純水全量を添加した。TFE消費量が1543gの時点で、攪拌及びTFE供給を停止して、重合槽内のTFEをパージして、ついで気相を窒素で置換して、ポリテトラフルオロエチレン水性分散体(固形分30.6質量%)を得た。含フッ素界面活性剤の使用量は最終ポリテトラフルオロエチレン収量に対して6000ppmであった。
【0114】
得られたポリテトラフルオロエチレン水性分散体を固形分濃度15%まで希釈し、攪拌機付き容器内で硝酸の存在下において激しく攪拌しポリテトラフルオロエチレンを凝固させた。凝固したポリテトラフルオロエチレンを分離し、210℃において18時間乾燥し、ポリテトラフルオロエチレンの微粉末を得た。得られた微粉末の各種物性を測定した。結果を表1に示す。
【0115】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明の製造方法は、特に高分子量のポリテトラフルオロエチレンを製造する方法として好適に利用することができる。