(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備え、前記トレッド部のショルダー領域にタイヤ幅方向に延在して前記サイドウォール部まで到達する複数本のラグ溝と、これらラグ溝に区画されたブロックとを備えた空気入りタイヤにおいて、
前記ブロックはタイヤ幅方向内側に位置するショルダーブロックと、該ショルダーブロックよりもタイヤ幅方向外側に位置して該ショルダーブロックよりも隆起したサイドブロックとを含み、前記複数本のラグ溝のうち少なくとも一部のラグ溝はそのラグ溝内に設けられた隆起部によって閉止された閉止ラグ溝であり、前記隆起部は前記閉止ラグ溝のタイヤ周方向両側に位置する前記サイドブロックと連続しており、前記隆起部は前記ラグ溝よりも溝幅および溝深さが小さくタイヤ幅方向に延在する第一の細溝を有し、該第一の細溝は少なくとも一方の端部が前記閉止ラグ溝またはサイドウォール部に向かって貫通していることを特徴とする空気入りタイヤ。
前記サイドブロックがタイヤ赤道上の外径位置からタイヤ径方向内側に向かってタイヤ断面高さSHの30%〜45%の範囲を含む位置に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
前記隆起部の前記閉止ラグ溝側のエッジがタイヤ赤道上の外径位置からタイヤ径方向内側に向かってタイヤ断面高さSHの35%〜45%の範囲内に配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
前記サイドブロックが前記ラグ溝よりも溝幅および溝深さが小さくタイヤ幅方向に延在する第二の細溝を有し、該第二の細溝は少なくともタイヤ幅方向内側の端部が開口していることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
前記ショルダーブロックが前記ラグ溝よりも溝幅および溝深さが小さくタイヤ幅方向に延在する第三の細溝を有し、該第三の細溝は少なくともタイヤ幅方向外側の端部が開口しており、前記第二の細溝と前記第三の細溝とが連続していることを特徴とする請求項5に記載の空気入りタイヤ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、未舗装路での走行性能とサイドウォール部の耐カット性とを高度に両立することを可能にした空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備え、前記トレッド部のショルダー領域にタイヤ幅方向に延在して前記サイドウォール部まで到達する複数本のラグ溝と、これらラグ溝に区画されたブロックとを備えた空気入りタイヤにおいて、前記ブロックはタイヤ幅方向内側に位置するショルダーブロックと、該ショルダーブロックよりもタイヤ幅方向外側に位置して該ショルダーブロックよりも隆起したサイドブロックとを含み、前記複数本のラグ溝のうち少なくとも一部のラグ溝はそのラグ溝内に設けられた隆起部によって閉止された閉止ラグ溝であり、前記隆起部は前記閉止ラグ溝のタイヤ周方向両側に位置する前記サイドブロックと連続しており、前記隆起部は前記ラグ溝よりも溝幅および溝深さが小さくタイヤ幅方向に延在する第一の細溝を有し、該第一細溝は少なくとも一方の端部が前記閉止ラグ溝またはサイドウォール部に向かって貫通していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、上述のように、ラグ溝およびブロックがショルダー領域を超えてサイドウォール部まで到達するように設けられているので岩場での走行性能(ロック性能)を高めることができる。特に、サイドブロックが隆起してタイヤ幅方向外側(サイドウォール部側)に充分な凹凸が形成されているのでサイドウォール部に岩等が接触した際にこの岩等に対する引っ掛かりが得られて優れたロック性能が発揮される。一方で、ラグ溝内に隆起部が設けられてこの隆起部がサイドブロックと連続しているので、岩等との接触によるサイドカットの発生を抑えることができ、耐カット性を高めることができる。このとき、隆起部に第一の細溝が形成されているので、隆起部を設けることで減少するエッジを補うことができ、優れたロック性能を発揮することができる。
【0008】
本発明では、隆起部を備えないラグ溝と閉止ラグ溝とがタイヤ周方向に交互に配置されていることが好ましい。このように閉止ラグ溝を1つおきに設けることでロック性能と耐カット性とをバランスよく両立することができる。
【0009】
本発明では、サイドブロックがタイヤ赤道上の外径位置からタイヤ径方向内側に向かってタイヤ断面高さSHの30%〜45%の範囲を含む位置に配置されていることが好ましい。このようにサイドブロックを配置することで、岩場等を走行する際に岩等と接触し易い領域に充分な凹凸を形成することができ、ロック性能を高めるには有利になる。
【0010】
本発明では、隆起部の閉止ラグ溝側のエッジがタイヤ赤道上の外径位置からタイヤ径方向内側に向かってタイヤ断面高さSHの35%〜45%の範囲内に配置されていることが好ましい。このように隆起部を設けることで、ロック性能を充分に維持しながら隆起部による耐カット性の向上を図ることができるので、これら性能をバランスよく両立するには有利になる。
【0011】
本発明では、サイドブロックがラグ溝よりも溝幅および溝深さが小さくタイヤ幅方向に延在する第二の細溝を有し、この第二の細溝は少なくともタイヤ幅方向内側の端部が開口していることが好ましい。このように第二の細溝を設けることで、サイドブロック内にエッジが増えるためロック性能を向上するには有利になる。
【0012】
本発明では、ショルダーブロックがラグ溝よりも溝幅および溝深さが小さくタイヤ幅方向に延在する第三の細溝を有し、この第三の細溝は少なくともタイヤ幅方向外側の端部が開口しており、第二の細溝と第三の細溝とが連続していることが好ましい。このように第三の細溝を設けることで、ショルダーブロック内にエッジが増えるためロック性能を向上するには有利になる。特に、第二の細溝と第三の細溝とが連続していることで、これら第二の細溝および第三の細溝が1つの溝として岩等に対して引っ掛かるので、優れたロック性能を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
図1に示すように、本発明の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部1と、このトレッド部1の両側に配置された一対のサイドウォール部2と、サイドウォール部2のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部3とを備えている。尚、
図1において、符号CLはタイヤ赤道を示し、符号Eは接地端を示す。
【0016】
左右一対のビード部3間にはカーカス層4が装架されている。このカーカス層4は、タイヤ径方向に延びる複数本の補強コードを含み、各ビード部3に配置されたビードコア5の廻りに車両内側から外側に折り返されている。また、ビードコア5の外周上にはビードフィラー6が配置され、このビードフィラー6がカーカス層4の本体部と折り返し部とにより包み込まれている。一方、トレッド部1におけるカーカス層4の外周側には複数層(
図1〜3では2層)のベルト層7が埋設されている。各ベルト層7は、タイヤ周方向に対して傾斜する複数本の補強コードを含み、かつ層間で補強コードが互いに交差するように配置されている。これらベルト層7において、補強コードのタイヤ周方向に対する傾斜角度は例えば10°〜40°の範囲に設定されている。更に、ベルト層7の外周側にはベルト補強層8が設けられている。ベルト補強層8は、タイヤ周方向に配向する有機繊維コードを含む。ベルト補強層8において、有機繊維コードはタイヤ周方向に対する角度が例えば0°〜5°に設定されている。
【0017】
本発明は、このような一般的な空気入りタイヤに適用されるが、その断面構造は上述の基本構造に限定されるものではない。
【0018】
図2に示すように、トレッド部1のセンター領域(図ではタイヤ赤道CL上)にはタイヤ周方向に延びる周方向溝10が設けられている。また、この周方向溝10の両側には、複数本の内側ラグ溝20と複数本の外側ラグ溝30とがそれぞれタイヤ周方向に間隔をおいて形成されている。そして、これら周方向溝10と内側ラグ溝20および外側ラグ溝30とによってセンターブロック40とショルダーブロック50とサイドブロック60が区画されている。
【0019】
周方向溝10は、タイヤ周方向に沿って溝幅が変動しており、複数の拡幅部11と複数の狭幅部12とが交互に配置された構造を有する。特に
図2の例では、拡幅部11と狭幅部12との交互配置によって、周方向溝10はタイヤ周方向に沿ってジグザグ状に延長しているように見え、タイヤ周方向に対して一方向に傾斜する部分(拡幅部11に相当)は相対的に溝幅が大きくなり、他方向に傾斜する部分(狭幅部12に相当)は相対的に溝幅が小さくなっている。
【0020】
内側ラグ溝20はタイヤ周方向に対して一方向に傾斜しながら延在している。内側ラグ溝20の一端(タイヤ幅方向内側の端部)は周方向溝10の拡幅部11に連通し、他端(タイヤ幅方向外側の端部)は後述の外側ラグ溝30に連通している。
図2の例では内側ラグ溝20はタイヤ周方向にたいして一方向に傾斜しているが、その中途部で屈曲して傾斜角度が変化している。図示の例では、内側ラグ溝20は周方向溝10の両側に形成されるので、1つの拡幅部11には一対の内側ラグ溝20が連通している。
【0021】
外側ラグ溝30はタイヤ周方向に対して他方向(内側ラグ溝20と逆方向)に傾斜しながら延在している。外側ラグ溝30の一端(タイヤ幅方向内側の端部)は内側ラグ溝20に連通し、他端(タイヤ幅方向外側の端部)はタイヤ幅方向外側に向かってショルダー領域を超えてサイドウォール部2まで到達している。
図2の例では外側ラグ溝30は内側ラグ溝20と交差して、その一端は後述のセンターブロック40内で終端している。また、
図2の例では外側ラグ溝30はタイヤ周方向に対して他方向に傾斜しているが、その中途部で屈曲して傾斜角度が変化している。更に、
図1の例では外側ラグ溝30は他端近傍の溝底中央にて溝底から突き出して外側ラグ溝30に沿って延在する突出部31を備えている。尚、外側ラグ溝30は、溝内に後述の隆起部32を備えた閉止ラグ溝30Aと、隆起部32を備えずサイドウォール部に向かって開口している開口ラグ溝30Bとを含む。
図1の例では開口ラグ溝30Bは閉止ラグ溝30Aにおける隆起部32に対応する位置で屈曲している。
【0022】
センターブロック40は周方向溝10と内側ラグ溝20と外側ラグ溝30とによって区画されて、周方向溝10に隣接する位置に配置されている。前述のように外側ラグ溝30の一端がセンターブロック40内で終端しているため、
図2の例ではセンターブロック40には略三角形状の切り欠きが形成されているように見える。各センターブロック40には一端が周方向溝10に連通し、センターブロック40内で湾曲したのち外側ラグ溝30の一端(切り欠き)を横切って内側ラグ溝20の延長方向に沿って延在し、他端が外側ラグ溝30に連通するサイプ41が形成されている。周方向溝10と内側ラグ溝20とに接する鋭角部や、内側ラグ溝20と外側ラグ溝30とに接する鋭角部には面取り42が施されている。
【0023】
ショルダーブロック50は、
図2,3に示すように、外側ラグ溝30と内側ラグ溝20とによって区画されて、タイヤ周方向に隣り合う外側ラグ溝30間に配置されている。各ショルダーブロック50には一端が外側ラグ溝30に連通し、ショルダーブロック50内で湾曲したのち外側ラグ溝30の延長方向に沿って延在し、他端がショルダーブロック50内で終端するサイプ51と、このサイプ51の終端部から外側ラグ溝30の延長方向に沿って延在するショルダー細溝52とが形成されている。尚、これらサイプ51およびショルダー細溝52は連続せずに離間している。外側ラグ溝30と内側ラグ溝20とに接する角部には面取り53が施されている。
【0024】
サイドブロック60は、
図2,3に示すように、タイヤ周方向に隣り合う外側ラグ溝30間に区画されて、ショルダーブロック50のタイヤ幅方向外側に配置されている。サイドブロック60はショルダーブロック50と連続して一連のブロックを形成しているが、
図4に示すようにショルダーブロック50よりも隆起している。言い換えれば、外側ラグ溝30に区画されたブロックにおいて隆起している部分がサイドブロック60であり、その他の部分がショルダーブロック50である。尚、
図2,3においてサイドブロック60の側壁部分に描かれた破線は、ショルダーブロック50とサイドブロック60との境界におけるショルダーブロック50の踏面の高さ位置を示すものである。即ち、図示の例のサイドブロック60では、破線の内側の部分がショルダーブロック50よりも隆起しており、破線の外側の部分がショルダーブロック50と面一であるか(ショルダーブロック50とサイドブロック60とが連結する部分に相当)、ショルダーブロック50よりも窪んでいる(サイドブロック60に隣接する外側ラグ溝40の溝壁に相当)。
【0025】
タイヤ周方向に隣り合うサイドブロック60間において、複数本の外側ラグ溝30のうちの一部(閉止ラグ溝30A)には隆起部32が設けられている。隆起部32は隆起部32が設けられた外側ラグ溝30(閉止ラグ溝30A)のタイヤ周方向両側に位置するサイドブロック60と連続しており、外側ラグ溝30(閉止ラグ溝30A)を閉止している。一方で、隆起部32は外側ラグ溝30よりも溝幅および溝深さが小さく外側ラグ溝30の延長線上においてタイヤ幅方向に延在する第一の細溝33を有している。この第一の細溝33は少なくとも一方の端部が外側ラグ溝30(閉止ラグ溝30A)またはサイドウォール部2に向かって貫通している。尚、図示の例の第一の細溝33は、一方の端部が外側ラグ溝30(閉止ラグ溝30A)に向かって貫通し、延長方向の中途で屈曲し、他方の端部がサイドウォール部2に向かって貫通している。
【0026】
尚、本発明では、ショルダー領域に存在する外側ラグ溝30、ショルダーブロック40、サイドブロック50等を特定の構造にすることで、岩場等を走行中に岩等と接触するサイドウォール部2に岩等に対する引っ掛かりを付与してロック性能を高める一方で、サイドカット等を抑制して耐カット性を高めるものであるので、センター領域の構造は上述の構造に限定されるものではない。
【0027】
このように構成されたタイヤでは、まず外側ラグ溝30がショルダー領域を超えてサイドウォール部2まで到達するように設けられて、この外側ラグ溝30によってブロック(ショルダーブロック50およびサイドブロック60)が区画されているので、ショルダー領域からサイドウォール部2まで到達する部位に充分な凹凸が形成されて優れたロック性能を得ることができる。特に、サイドブロック60がショルダーブロック50よりも隆起してよりタイヤ幅方向外側(サイドウォール部2側)に充分な凹凸が形成されているので、サイドウォール部2に岩等が接触した際にこの岩等に対する引っ掛かりが得られて優れたロック性能が発揮される。一方で、外側ラグ溝30内に隆起部32が設けられてこの隆起部32がサイドブロック60と連続しているので、岩等との接触によるサイドカットの発生を抑えることができ、耐カット性を高めることができる。しかも、隆起部32に第一の細溝33が形成されているので、隆起部32を設けることで減少するエッジを補うことができ、優れたロック性能を発揮することができる。
【0028】
このとき、サイドブロック60が隆起していないと充分な凹凸が形成されずロック性能を高めることができない。隆起部32が形成されないと、外側ラグ溝30が岩等との接触によるサイドカット等の損傷を受けやすくなり、耐カット性が低下する。第一の細溝33を設けないと、サイドブロック60と隆起部32とが連なっているためエッジが原書付して岩等に対する充分な引っ掛かりが得られなくなり、充分なロック性能を得ることができない。
【0029】
隆起部32はすべての外側ラグ溝30に設けることもできるが、図示のように隆起部32を備える閉止ラグ溝30Aと隆起部32を備えない開口ラグ溝30Bとがタイヤ周方向に交互に配置されていることが好ましい。このように閉止ラグ溝30Aを1つおきに設けると、接地している領域内に閉止ラグ溝30Aと開口ラグ溝30Bとが常に含まれるようになり、ロック性能と耐カット性とをバランスよく両立することができる。
【0030】
サイドブロック60には、図示のように、外側ラグ溝30よりも溝幅および溝深さが小さくタイヤ幅方向に延在する第二の細溝(サイド細溝61)を設けることもできる。この第二の細溝(サイド細溝61)は少なくともタイヤ幅方向内側の端部が開口しているとよい。図示の例では、タイヤ幅方向内側の端部がショルダーブロック50側に向かって開口し、延長方向の中腹で屈曲し、タイヤ幅方向外側の端部がサイドウォール部2側に向かって開口している。言い換えれば、サイドブロック60と隆起部32とは上記のように連続しているので、2つのサイドブロック60とその間に位置する隆起部32とからなる一連のブロックに外側ラグ溝30よりも溝幅および溝深さが小さい3本の細溝(第一の細溝33が1本と第二の細溝(サイド細溝61)が2本)が設けられていることになる。このように第二の細溝(サイド細溝61)を設けることで、サイドブロック60内にエッジが増えるためロック性能を向上するには有利になる。
【0031】
このように第二の細溝(サイド細溝61)を有する場合、ショルダーブロック50に第二の細溝(サイド細溝61)と連続するように第三の細溝(ショルダー細溝52)を設けることが好ましい。第三の細溝(ショルダー細溝52)は、外側ラグ溝30よりも溝幅および溝深さが小さくタイヤ幅方向に延在し、少なくともタイヤ幅方向外側の端部が開口しているとよい。このように第三の細溝(ショルダー細溝52)を設けることで、ショルダーブロック50内にもエッジが増えるためロック性能を向上するには有利になる。特に、第二の細溝(サイド細溝61)と第三の細溝(ショルダー細溝52)とが連続していることで、これら第二の細溝(サイド細溝61)と第三の細溝(ショルダー細溝52)とが1つの溝として岩等に対して引っ掛かるので、優れたロック性能を得ることができる。尚、サイドブロック60がショルダーブロック50よりも隆起しているため、第二の細溝(サイド細溝61)と第三の細溝(ショルダー細溝52)とは完全に連結している必要はなく、図示のように第二細溝(サイド細溝61)のショルダーブロック21側の延長線上に第三の細溝(ショルダー細溝52)が配置されていれば、これら第二の細溝(サイド細溝61)と第三の細溝(ショルダー細溝52)とが連続していると見做すことができる。
【0032】
隆起部32のサイドウォール部2側には図示のように切り欠き部34を設けてもよい。このように切り欠き部34を設ける場合、第一の細溝33のタイヤ幅方向外側端部はこの切り欠き部34に対して連通していることが好ましい。更に、第二の細溝(サイド細溝61)についても、図示のように隆起部32に設けた切欠き部34に連通させることが好ましい。言い換えると、サイドブロック50と隆起部32とからなる一連のブロックに形成された3本の細溝(第一の細溝33が1本と第二の細溝(ショルダー細溝52)が2本)のうち2本(1本の第一の細溝33、2本の第二の細溝(ショルダー細溝52)のうちのいずれか一方)が前述の切り欠き部に連通していることが好ましい。このような切り欠き部を設けることで、岩場等を走行する際に路面への引っ掛かりが増すため、ロック性能を向上することができる。
【0033】
ショルダーブロック50とサイドブロック60との境界には、図示の例のように、外側ラグ溝30とショルダーブロック50およびサイドブロック60とを横切ってタイヤ周方向に延在する一連の段差部70を設けることもできる。このように段差部70を設けることで、ショルダー領域からサイドウォール部2まで到達する部位に形成される凹凸を複雑にしてエッジを増やすことができるため、ロック性能を高めるには有利になる。
【0034】
本発明では、サイドブロック60はタイヤ赤道CL上の外径位置からタイヤ径方向内側に向かってタイヤ断面高さSHの30%〜45%の範囲を含む位置に配置されていることが好ましい。言い換えると、タイヤ赤道CL上の外径位置からサイドブロック60のショルダーブロック50側のエッジまでの距離Aがタイヤ断面高さSHの30%よりも小さく、タイヤ赤道CL上の外径位置からサイドブロック60のサイドウォール部2側のエッジまでの距離Bがタイヤ断面高さSHの45%よりも大きいことが好ましい。このようにサイドブロック60を配置することで、岩場等を走行する際に岩等と接触し易い領域に充分な凹凸を形成することができ、ロック性能を高めるには有利になる。
【0035】
本発明では、隆起部32の閉止ラグ溝30A側のエッジがタイヤ赤道CL上の外径位置からタイヤ径方向内側に向かってタイヤ断面高さSHの35%〜45%の範囲内に配置されていることが好ましい。言い換えると、タイヤ赤道CL上の外径位置から隆起部32の閉止ラグ溝30A側のエッジまでの距離Cがタイヤ断面高さSHの35%〜45%の範囲内であるとよい。このように隆起部32を設けることで、ロック性能を充分に維持しながら隆起部32による耐カット性の向上を図ることができるので、これら性能をバランスよく両立するには有利になる。
【実施例】
【0036】
タイヤサイズがLT265/70R17であり、
図1に例示する基本構造を有し、
図2のトレッドパターンを基調とし、ラグ溝内に形成される隆起部の有無、隆起部、サイドブロック、ショルダーブロックに形成される細溝の有無、細溝の溝深さ、サイド細溝とショルダー細溝との関係(連続しているか不連続であるか)、タイヤ赤道上の外径位置からサイドブロックのタイヤ径方向外側端部までの距離Aとタイヤ断面高さSHとの比A/SH、タイヤ赤道上の外径位置からサイドブロックのタイヤ径方向内側端部までの距離Bとタイヤ断面高さSHとの比B/SH、タイヤ赤道上の外径位置から隆起部のタイヤ径方向外側端部までの距離Cとタイヤ断面高さSHとの比A/SHをそれぞれ表1のように設定した従来例1、比較例1〜2、実施例1〜8の11種類の空気入りタイヤを作成した。
【0037】
細溝を備えた例では、図示のように、隆起部に形成される細溝は外側ラグ溝とサイドウォール部に対して開口し、サイドブロックに形成される細溝はショルダーブロックとサイドウォール部に対して開口し、ショルダーブロックに形成される細溝は一端がサイドブロックに対して開口して他端がブロック内で終端している。
【0038】
表1の「細溝の有無」について、隆起部における細溝の有無を示す欄(表1の「隆起部」の欄)、サイドブロックにおける細溝(サイド細溝)の有無を示す欄(表1の「サイドブック」の欄)、ショルダーブロックにおける細溝(ショルダー細溝)の有無を示す欄(表1の「ショルダーブロック」の欄)をそれぞれ設けている。尚、比較例1は隆起部が存在しない例であるので、表1の「細溝の有無」の「隆起部」の欄は「―」にて示した。
【0039】
表1の「細溝の深さ」について、細溝が外側ラグ溝よりも深い場合を「深」にて示し、細溝が外側ラグ溝よりも浅い場合を「浅」にて示した。尚、複数の細溝が設けられた場合、表1の「細溝の深さ」の欄が「深」である例では形成されたすべての細溝が外側ラグ溝よりも深く、「浅」である例では形成されたすべての細溝が外側ラグ溝よりも浅くなっている。
【0040】
これら11種類の空気入りタイヤについて、下記の評価方法により、ロック性能および耐カット性を評価し、その結果を表1に併せて示した。
【0041】
ロック性能
各試験タイヤをリムサイズ17×8.0のホイールに組み付けて、空気圧を450kPaとしてピックアップトラック(試験車両)に装着し、岩場からなる試験路面においてテストドライバーによるトラクション性能の官能評価を行った。評価結果は、従来例1の値を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほどロック性能が優れることを意味する。
【0042】
耐カット性
各試験タイヤをリムサイズ17×8.0のホイールに組み付けて、空気圧を450kPaとしてピックアップトラック(試験車両)に装着し、岩場からなる試験路面を走行した後、サイド部に形成されたカットの総長さを測定した。評価結果は、従来例1の測定値の逆数を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほどサイドカットの総長さが小さく、耐カット性に優れることを意味する。
【0043】
【表1】
【0044】
表1から明らかなように、実施例1〜8はいずれも、従来例1と比較して、ロック性能および耐カット性を向上し、これら性能をバランスよく両立した。一方、比較例1は、外側ラグ溝内に隆起部を有さないため耐カット性が悪化した。比較例2は、隆起部を有し、その隆起部に細溝が形成されているものの、この細溝の溝深さがラグ溝よりも大きいため耐カット性が悪化した。
【解決手段】トレッド部1のショルダー領域にタイヤ幅方向に延在してサイドウォール部2まで到達する複数本のラグ溝30と、これらラグ溝30に区画されたショルダーブロック50およびサイドブロック60とを備えた空気入りタイヤにおいて、ショルダーブロック50よりもタイヤ幅方向外側に位置するサイドブロック60がショルダーブロック50よりも隆起するようにし、複数本のラグ溝30のうち少なくとも一部をそのラグ溝30内に設けられた隆起部32によって閉止された閉止ラグ溝30Aにし、隆起部32を閉止ラグ溝30Aのタイヤ周方向両側に位置するサイドブロック60と連続させて、隆起部32にラグ溝よりも溝幅および溝深さが小さくタイヤ幅方向に延在する第一の細溝33を設け、第一の細溝33を少なくとも一方の端部が閉止ラグ溝30Aまたはサイドウォール部2に向かって貫通させる。