(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本実施の形態に係る造形物受注管理制御装置14を含む造形管理システムの全体を示す概略図である。
【0021】
通信回線網10には、ネットワークI/F12を介して、造形物受注管理制御装置14が接続されている。
【0022】
通信回線網10は、例えば、LAN(ローカル・エリア・ネットワーク)又はインターネット回線であり、複数のLANが、WAN(ワイド・エリア・ネットワーク)によって相互に接続されていてもよい。また、通信回線網10を含む全ての通信回線網は、それぞれ有線接続である必要はない。すなわち、一部又は全部が無線によって情報を送受信する無線通信回線網であってもよい。
【0023】
造形物受注管理制御装置14は、本体16と、UI(ユーザーインターフェイス)18とを有している。UI18は、表示部としてのモニタ20と、入力操作部としてのキーボード22及びマウス24を備える。
【0024】
また、本体16には、造形を発注するために必要な発注情報の入力源として機能する、メディアリーダー26が接続されている。
【0025】
メディアリーダー26には、例えばSDメモリカード等の記録メディア30が挿入可能なスロット部が設けられ、挿入された記録メディアに記録された発注情報が読み取られ、本体16へ送出される。
【0026】
なお、発注情報は、通信回線網10に接続された発注PC28からネットワークI/F12を介して、受信するようにしてもよい。
【0027】
図2に示される如く、造形物受注管理制御装置14の本体16は、CPU16A、RAM16B、ROM16C、入出部16D(I/O16D)、及びこれらを接続するデータバスやコントロールバス等のバス16Eを備えている。
【0028】
I/O16Dには、前述したように、ネットワークI/F12、UI18(モニタ20、キーボード22及びマウス24)、メディアリーダー26が接続されている。
【0029】
また、I/O16Dには、大規模記録媒体としてのハードディスク34が接続されている。ハードディスク34は、受け付けた造形の発注に関する情報(本実施の形態では、受注管理情報という)や、受注管理情報に基づき、造形を複数の三次元造形装置36(1)、36(2)・・・36(n)に割り付けるための割り付け処理に必要な情報(後述する造形履歴情報)を一時的に格納する。三次元造形装置36(1)、36(2)・・・36(n)については、後述する。
【0030】
ROM16Cには、造形用受注管理制御のためのプログラムが記録されており、造形物受注管理制御装置14が起動すると、ROM16Cから当該プログラムが読み出され、CPU16Aによって実行される。なお、造形用画像管理制御プログラムは、ROM16Cの他、ハードディスク34や他の記録媒体に記録しておいてもよい。
【0031】
図1及び
図2に示される如く、通信回線網10には、複数の三次元造形装置36(1)、36(2)・・・36(n)接続されている。なお、以下において、三次元造形装置36(1)、36(2)・・・36(n)を総称する場合は、「三次元造形装置36」又は「3Dプリンタ36」という。)が接続されている。なお、三次元造形装置36は、造形物受注管理制御装置14に、専用の信号線を介して、直接接続してもよい。
【0032】
三次元造形装置36は、造形物の造形方式が同一であってもよいし、異なる複数種類の三次元造形装置36を混在させてもよい。
【0033】
造形方式としては、液層光重合方式、結合剤噴射方式、材料押出方式、材料噴射方式、シート積層方式、粉末床溶融結合方式、及び指向性エネルギー堆積方式等がある。
【0034】
図1では、三次元造形装置36の外観の一例を示しているが、三次元造形装置36は、造形方式、造形し得る造形物の大きさの範囲、及び適用する材料(フィラメント)の種類を含む要素によって、その外観及び大きさが様々である。
【0035】
また、
図1及び
図2では、3台の三次元造形装置36を図示しているが、1台であってもよい。また、2台又は4台以上の三次元造形装置36を接続し、造形する対象によって、選択可能としてもよい。
【0036】
なお、三次元造形装置36では、それぞれの造形方式の種類によって、造形するときの適応し得る材質(材料)が異なる。
【0037】
以下に、造形方式の種類とそれぞれの造形方式の適応材質の関係の一例を示す(造形方式・・・適用材質)。
(1)液層光重合方式・・・UV硬化樹脂
(2)結合剤噴射方式・・・石膏、セラミックス、砂、カルシウム、プラスティック
(3)材料押出方式・・・ABS(アクリニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂)、PLA(ポリ乳酸)、ナイロン12、PC(ポリカーボネイト)、PPSF(ポリフェニルスルホン)
(4)材料噴射方式・・・UUV硬化樹脂、脂、ワックス、ハンダ
(5)シート積層方式・・・紙、樹脂シート、アルミシート
(6)粉末床溶融結合方式・・・エンジニアリングプラスティック、ナイロン、金属
(7)指向性エネルギー堆積方式・・・金属
三次元造形装置36のそれぞれの仕様(上記(1)から(7)の造形方式と適応材質を含む)は、図示しない造形装置仕様データベースに格納されている。なお、形装置仕様データベースは、ハードディスク34の一部の記憶領域が適用可能である。
【0038】
ところで、造形物受注管理制御装置14では、三次元造形物を受注して造形する場合、例えば、受注する造形情報(形状や大きさ、及び材質、付加機能等)によって造形にかかる時間が異なる。
【0039】
また、造形物受注管理制御装置14では、三次元造形物を受注して造形する場合、複数の造形物を単一の三次元造形装置36で同時に造形(ギャンギング処理)することで、造形時間を短縮することがなされる。
【0040】
参考として、
図4は、同時に造形する造形物の数(体)と造形時間との関係を示す特性図である。なお、
図4では、造形物は同一形状とする。
【0041】
図4の点線Aで示す特性図は、単体造形したときの造形時間であり、当然であるが、1体の造形物の造形時間の倍数となる。
【0042】
一方、
図4の実線Bで示す特性図は、同時造形(ギャンギング処理)したときの造形時間であり、同時造形する数が増えるほど造形時間が二次曲線的に短縮されることがわかる。
【0043】
この場合、三次元造形物の受注に対して、所謂ギャンギング処理のための三次元造形物の組み合わせの種類は、1種類ではないことが多く(例えば、
図4の実線の特性が複数存在することが多く)、何れの組み合わせが最適かを判断することが困難な場合がある。
【0044】
そこで、本実施の形態の造形物受注管理制御装置14では、三次元造形装置36で造形する際、複数の受注(以下、ジョブという場合がある)があったとき、造形履歴情報と照合することで、造形効率情報を提供するようにした。造形効率情報は、例えば、最短造形時間となるようなジョブの組み合わせ情報であり、当該ジョブの組み合わせによって、最適なスケジュールを作成するようにした。
【0045】
また、造形履歴情報との照合とは、受注するジョブが、過去に、単体で造形したことがあるか、あるいは複数の造形物と組み合わせてギャンギング処理をしたことがあるか、を判断することが主体となる。
【0046】
図3は、本実施の形態に係り、造形物受注管理制御装置14の本体16(
図2参照)で実行される、受注した複数の造形を、複数の三次元造形装置36に割り当てるためのスケジュール管理制御を実行するための処理を詳細に示す機能ブロック図である。なお、
図3は、造形物受注管理制御装置14のハード構成を限定するものではない。
【0047】
図3に示す受付部50は、メディアリーダー26及び発注PC28を含む各所からの造形発注を受け付ける。造形発注は、受付手段の一例である、受付部50を主体とした場合は、受注となる。
【0048】
受付部50では、各所からの発注を一括して受け付けると共に、各所からの発注(受注情報)を受注管理情報作成部52へ送出する。
【0049】
受注管理情報作成部52では、受注情報に基づき、ジョブとして管理するための情報を作成する。受注管理情報は、ジョブID、入稿時刻、設計情報、及び特記事項を含む。
【0050】
ジョブIDは、受注情報を識別するための情報である。
【0051】
入稿時刻は、受注を受け付けたときの時刻であり、ギャンギング処理を実行する時間的範囲を決定するための目安に用いられる。すなわち、予め定めた時間範囲内で受け付けたジョブの中に、ギャンギング処理が可能なジョブがあれば、組み合わせを実行する。
【0052】
設計情報は、材質、形状、造形方式を含む造形のための詳細情報である。この設計情報により、ジョブがギャンギングのために組み合わせ可能か否かが判断可能となる。
【0053】
特記事項は、納期に関する情報(緊急依頼、造形時期指定)等、発注側からの個別の要望や指定に関する情報の総称である。例えば、緊急依頼の場合は、他のジョブとの組み合わせよりも優先して、単独で造形処理を実行する等、最短造形時間で造形処理を実行する。
【0054】
受注管理情報作成部52は、一時格納部54に接続されており、作成した受注管理情報を一時格納部54へ送出する。一時格納部54では、当該受注管理情報を一時的に格納する。
【0055】
また、受注管理情報作成部52は履歴情報読出部56に接続されている。履歴情報読出部56は、受注管理情報作成部52で受注管理情報が作成されたことを示す作成情報を受けると、記憶手段の一例である、造形履歴情報データベース58から造形履歴情報を読み出す。
【0056】
造形履歴情報データベース58は、ハードディスク34の一部の記憶領域が適用可能である。
【0057】
造形履歴情報データベース58は、三次元造形装置36を一括管理する造形装置管理部60から造形実行情報を取得可能となっている。
【0058】
このため、造形履歴情報データベース58では、受付部50で新たな発注を受け付けるまで(以下、「過去」という)の造形履歴情報がデータベース化されて記憶されている。なお、過去と定める範囲の始期は、例えば、三次元造形装置36の入れ替え、又は増減があったときを含む三次元造形装置36の設置環境の変化によって変動する場合がある。
【0059】
図5に示される如く、造形履歴情報データベース58には、設計情報を識別情報として造形した材料及び形状が記憶されると共に、造形時の状況として、複数造形の依頼の有無があったか否かの情報に基づく情報が記憶されている。
【0060】
すなわち、過去に複数造形の依頼が有った場合は、配置数及び造形時間に関する情報が記憶される。一方、過去に複数造形の依頼が無かった場合は、単独造形時の造形時間に関する情報が記憶される。
【0061】
図3に示される如く、履歴情報読出部56では、造形履歴情報データベース58から読み出した造形履歴情報を、策定手段としての照合部62へ送出する。
【0062】
照合部62は、前記一時格納部54に接続されており、当該一時格納部54から受注管理情報を取得する。なお、一時格納部54には、予め定めた時間範囲内で受注した受注管理情報が格納される。
【0063】
また、本実施の形態では、基本的に1ジョブが1個の造形物の受注としているが、1ジョブが同一形状の複数の造形物の受注であってもよい。従って、一時格納部54に、1ジョブが格納される場合もギャンギング処理を実行する場合がある。
【0064】
照合部62では、受注管理情報の内、設計情報をキーワードとして、造形履歴情報に該当する履歴情報が存在するか否かを照合する。
【0065】
照合部62での照合結果としては、例えば、大きく分けて以下の種類がある。
【0066】
(照合結果1) 複数個、かつ同一形状の造形物として、単一の造形装置で同時に造形した。
【0067】
(照合結果2) 複数個、かつ異なる形状の造形物として、単一の造形装置で同時に造形した。
【0069】
(照合結果4) 造形の履歴が存在しない。
【0070】
それぞれの照合結果には、造形に要した時間が記憶されており、照合部62では、受け付けたジョブが、過去の履歴情報に基づく照合結果の何れに該当するかを照合し、当該照合結果を、照合部62と共に策定手段として機能するスケジュール作成部64へ送出する。
【0071】
スケジュール作成部64では、受け付けたジョブに対して造形のためのスケジュールを作成する。
【0072】
例えば、過去にギャンギング処理によって造形を行った履歴が有った場合は、当該造形履歴情報に基づき、受け付けたジョブをギャンギング処理により造形するスケジュールを作成する。例えば、スケジュールは、最短造形時間を目的として、ギャンギング処理するジョブを組み合わせる。
【0073】
一方、過去にギャンギング処理によって造形を行った履歴が無かった場合は、受け付けたジョブを単独で造形する、あるいは、同一の材料で造形する複数のジョブを集約して、新規のギャンギング処理により造形するスケジュールを作成する。
【0074】
また、前記照合結果4の場合、新規受け付けとしてジョブを履歴情報と絡めずに造形のスケジュールを作成してもよいが、例えば、類似する造形履歴が存在した場合、当該類似する複数の履歴情報を選択してそれぞれの処理時間を予測し、最短造形時間となる履歴情報に基づいて、造形のスケジュールを作成するようにしてもよい。
【0075】
ここで言う、類似する造形履歴とは、形状は異なるが、使用する材料の体積が同等の複数の造形、材料は異なるが同一の設計情報による造形、材質及び材料、設計情報が同一であるが、同時に造形する数量が異なる造形等、造形処理の一部が一致又は類似する履歴情報を言う。なお、類似するか否かを判定するための特別の演算式を設定し、予め類似度を示す数値(しきい値)で判定するようにしてもよい。
【0076】
スケジュール作成部64は、造形装置管理部60から、現在の空き状況情報(すなわち、適用可能な三次元造形装置36に関する情報)を取得するようになっており、現在の三次元造形装置36の稼働状況を加味した上で、受け付けたジョブのスケジュールを作成する。
【0077】
スケジュール作成部64は、ジョブ割り当て部66に接続されている。ジョブ割り当て部66では、造形装置管理部60に対して、作成されたスケジュールに基づいて、ジョブを三次元造形装置36に割り当てる指示を行う。
【0078】
造形装置管理部60では、三次元造形装置36を制御して、スケジュールに従い、造形処理を実行する。
【0079】
以下に本実施の形態の作用を
図6及び
図7のフローチャートに従い説明する。
【0080】
図6は、造形物受注管理制御装置14で実行されるジョブ割り当て制御の流れを示すフローチャートである。
【0081】
ステップ100では、ネットワークI/F12、メディアリーダー26、又は発注PC28から、造形物の発注(ジョブ)を受け付けたか否かが判断され、肯定判定されると、ステップ102へ移行して、受注管理情報を作成し、ステップ104へ移行する。受注管理情報は、ジョブ名(ID)、入稿時刻、設計情報、及び特記事項を含む。
【0082】
ステップ104では、ステップ102で作成された受注管理情報を一時的に格納し、ステップ106へ移行する。また、ステップ100で否定判定された場合は、このルーチンは終了する。
【0083】
ステップ106では、受付情報に基づき受注管理情報作成部52で受注管理情報が作成されたことを確認(作成情報を受信)したか否かが判断され、肯定判定されると、ステップ108へ移行して、造形履歴情報データベース58から履歴情報を読み出し、ステップ110へ移行する。
【0084】
ステップ110では、一時格納部54に格納されたジョブの受注管理情報と、造形履歴情報とを照合する。すなわち、受け付けたジョブが、
図5に示す造形履歴情報の何れかに該当するか否かを照合する。
【0085】
次のステップ112では、該当する履歴情報が存在するか否かを判断する。このステップ112で肯定判定された場合は、ステップ114へ移行して、該当する履歴情報を選択し、ステップ118へ移行する。
【0086】
また、ステップ112で否定判定、すなわち、該当する履歴情報が存在しない場合は、ステップ116へ移行して、予め定めた条件の下で類似と判定し得る履歴情報を選択し、ステップ118へ移行する。
【0087】
次のステップ118では、ステップ114又はステップ116の選択結果(一例として、前述した照合結果1〜照合結果4参照)に基づき、三次元造形装置36による造形のためのスケジュールを作成し、ステップ120へ移行する。
【0088】
ステップ120では、作成されたスケジュールに基づいて、三次元造形装置36にジョブを割り当て、次いで、ステップ122へ移行して、各三次元造形装置36に対して、ジョブ割り当てに基づく造形を指示し、このルーチンは終了する。
【0089】
図7は、三次元造形装置36における、造形実行のための制御ルーチンである。
【0090】
ステップ150では、造形指示があったか否かが判断され、否定判定された場合は、このルーチンは終了する。また、ステップ150で肯定判定されると、ステップ152へ移行して、
図6のステップ120で実行された割り当て情報を取得し、ステップ154へ移行する。
【0091】
ステップ154では、各三次元造形装置36にジョブを割り当て、次いでステップ156へ移行して各三次元造形装置36による造形の開始を指示し、ステップ158へ移行する。各三次元造形装置36は、それぞれ独立した駆動制御系に基づいて造形物の造形処理を実行する。
【0092】
ステップ158では、全ての三次元造形装置36での造形処理が終了したか否かが判断され、肯定判定されると、ステップ160へ移行して、三次元造形装置36毎に造形情報を取得し、ステップ162へ移行する。
【0093】
ステップ162では、ステップ160で取得した造形情報を、造形履歴情報データベース58へ格納し、このルーチンは終了する。
【0094】
本実施の形態では、ジョブを受け付けた時点で、造形履歴情報を造形履歴情報データベース58から読み出し、例えば、過去に同一条件でギャンギング処理により造形を行った履歴があった場合に、造形にかかる時間が把握されるため、造形履歴情報を用いない場合に比べて、最適な組み合わせによるギャンギング処理をスケジューリングすることが可能となる。
【0095】
なお、本実施の形態では、基本的に1台の三次元造形装置36を対象として、造形履歴情報データベース58に格納された造形履歴情報に基づいて、ギャンギング処理のスケジューリングを行ったが、複数の三次元造形装置36を適用可能の環境下において、複数のジョブの受注があったとき、ジョブを何れの三次元造形装置36に割り当てるかを事前に判断し、全てのジョブの造形終了時刻が最短となるスケジュールを組むようにしてもよい。
【解決手段】ジョブを受け付けた時点で、造形履歴情報を造形履歴情報データベース58から読み出し、例えば、過去に同一条件でギャンギング処理により造形を行った履歴があった場合に、造形にかかる時間が把握されるため、造形履歴情報を用いない場合に比べて、最適な組み合わせによるギャンギング処理をスケジューリングすることが可能となる。