(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来のインバータ装置の場合、モータ出力電圧の脈動をなくすよう変調率を補正するため、直流リンク電圧の最大値に対して86.6%(
図4参照)しか電圧を利用することができず、電圧利用率は低下し、モータ電流実効値は増加する。
【0010】
そこで、電圧利用率の拡大をするために、変調率を設定可能な最大変調率とすることを考える。この場合、電圧利用率は増加するが、モータ出力電圧が脈動するため、モータ電流の脈動やビートといった問題が発生する。
【0011】
平滑用の電解コンデンサを用いないインバータ装置の電圧利用率を向上するために、変調率を設定可能な最大変調率とすることで、モータへの印加電圧を直流電圧に応じて脈動させる。ただし、このモータの電圧脈動に応じて、モータ電流の脈動やビートが発生する。
【0012】
そこで、この発明の課題は、電圧利用率を低下させることなく、モータ電流の脈動やビートを抑制できるインバータ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、この発明のインバータ装置は、
三相交流電圧を全波整流して、上記三相交流電圧の周波数の6倍の周波数の脈動成分を含む直流電圧を出力するコンバータ部と、
上記コンバータ部からの上記脈動成分を含む直流電圧を交流電圧に変換してモータに出力するインバータ部と、
上記モータの回転子に埋め込まれた永久磁石のN極方向をd軸とし、上記d軸と位相が直交する方向をq軸とする回転座標において、上記直流電圧に含まれる脈動成分のd軸電圧Vdがq軸電圧Vqより進み位相になるように、上記インバータ部を制御する制御装置と
を備えたことを特徴とする。
【0014】
上記構成によれば、モータの回転子に埋め込まれた永久磁石のN極方向をd軸とし、d軸と位相が直交する方向をq軸とする回転座標において、コンバータ部からの直流電圧に含まれる脈動成分のd軸電圧Vdがq軸電圧Vqより進み位相になるように、制御装置によりインバータ部を制御することによって、電圧利用率を低下させることなく、モータへの出力電圧の脈動に応じて、モータへの出力電圧の位相を制御することが可能になり、モータ電流の脈動やビートを抑制できる。
【0015】
また、一実施形態のインバータ装置では、
上記制御装置(100)は、上記回転座標において、上記直流電圧に含まれる脈動成分のd軸電圧Vdがq軸電圧Vqよりも90度進み位相になるように、上記インバータ部(22)を制御する。
【0016】
上記実施形態によれば、回転座標において、コンバータ部からの直流電圧に含まれる脈動成分のd軸電圧Vdがq軸電圧Vqよりも90度進み位相になるように、制御装置によりインバータ部を制御することによって、モータ電流の脈動やビートを効果的に抑制できる。
【0017】
また、一実施形態のインバータ装置では、
上記制御装置は、
上記三相交流電圧の位相を検出する位相検出部と、
上記位相検出部により検出された上記三相交流電圧の位相に基づいて、上記直流電圧に含まれる脈動成分の位相を決定する脈動成分位相決定部と、
上記脈動成分位相決定部により決定された上記直流電圧に含まれる脈動成分の位相に基づいて、上記直流電圧に含まれる脈動成分のd軸電圧Vdがq軸電圧Vqよりも90度進み位相になるように、上記インバータ部から出力される出力電圧の位相を補正する出力電圧位相補正部と
を有する。
【0018】
上記実施形態によれば、位相検出部により検出された三相交流電圧の位相に基づいて、脈動成分位相決定部により直流電圧に含まれる脈動成分の位相を決定するので、簡単な構成で脈動成分の位相を検出できる。その決定された直流電圧に含まれる脈動成分の位相に基づいて、直流電圧に含まれる脈動成分のd軸電圧Vdがq軸電圧Vqよりも90度進み位相になるように、出力電圧位相補正部によりインバータ部から出力される出力電圧の位相を補正するので、モータ電流の脈動やビートを確実に抑制できる。
【0019】
また、一実施形態のインバータ装置では、
上記制御装置は、上記インバータ部(22)から出力される出力電圧の上記回転座標のdq軸上における電圧ベクトルの軌跡が円形になるように、上記インバータ部を制御する。
【0020】
上記実施形態によれば、制御装置によりインバータ部を制御して、インバータ部から出力される出力電圧の回転座標のdq軸上における電圧ベクトルの軌跡が円形になるようにすることで、モータ電流の脈動やビートを確実に抑制できる。
【0021】
また、一実施形態のインバータ装置では、
上記出力電圧位相補正部は、
上記三相交流電圧の周波数の6倍の周波数の上記脈動成分のd軸電圧Vdがq軸電圧Vqよりも90度進み位相になるように、上記インバータ部(22)から出力される出力電圧の位相を補正する第1出力電圧位相補正部と、
上記三相交流電圧の周波数の6N倍(N=2,3,…,m(mは正の整数))の周波数の上記脈動成分のd軸電圧Vdがq軸電圧Vqよりも90度進み位相になるように、上記インバータ部(22)から出力される出力電圧の位相を補正する第2〜第N出力電圧位相補正部と
を有する。
【0022】
上記実施形態によれば、三相交流電圧の周波数の6倍の周波数の脈動成分だけでなく、その6倍の周波数の脈動成分の整数倍の高調波成分についても、d軸と位相が直交する方向をq軸とする回転座標において、6倍の周波数の脈動成分の整数倍の高調波成分のd軸電圧Vdがq軸電圧Vqよりも90度進み位相になるように、インバータ部から出力される出力電圧の位相を制御することによって、それらの高調波成分についても同様にモータ電流の脈動やビートを抑制できる。
【0023】
また、一実施形態のインバータ装置では、
上記コンバータ部の一方の出力端と上記インバータ部の一方の入力端との間に接続されたリアクトルと、上記インバータ部の入力端間に接続されたコンデンサとを有するLCフィルタを備え、
上記LCフィルタの共振周波数が、上記コンバータ部に入力される上記三相交流電圧の商用周波数の6倍以上の周波数であり、かつ、上記インバータ部のキャリア周波数と同じ周波数を有する電流を減衰させる周波数になるように、上記LCフィルタの特性が設定されている。
【0024】
上記実施形態によれば、直流リンク部に平滑用の大型のコンデンサやリアクトルを使用する必要がなくなり、低コスト化や小型化を実現できる。
【発明の効果】
【0025】
以上より明らかなように、この発明によれば、電源周波数に起因する直流リンク電圧脈動時のモータ電流の脈動を低減できるインバータ装置を実現することができる。
【0026】
これにより、電圧を最大限利用することが可能となり、電圧利用率が向上し、モータ電流が減少する。
【0027】
また、電流脈動や電流のビートが抑制され、ピーク電流や電流実効値が低減できる。
【0028】
さらに、直流リンク部に平滑用の大型のコンデンサやリアクトルを使用する必要がなくなると共に、各構成部品の電流容量を低減することが可能となり、コストを削減できる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、この発明のインバータ装置を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0031】
〔第1実施形態〕
図1はこの発明の第1実施形態のインバータ装置の構成図を示している。
【0032】
この第1実施形態のインバータ装置は、
図1に示すように、三相ダイオードブリッジ回路を構成する6つのダイオードD11〜D16からなるコンバータ部21と、三相ブリッジ回路を構成する6つのスイッチング素子S11〜S16からなるインバータ部22と、インバータ部22を制御する制御装置100を備えている。また、上記インバータ装置は、ダイオードブリッジ21の正極側出力端とインバータ部22の正極側入力端との間に接続されたインダクタLdcと、インバータ部22の入力端間に接続されたコンデンサCdcとを備えている。上記インダクタLdcとコンデンサCdcでLCフィルタを構成している。上記ダイオードブリッジ21により三相交流電源10からの三相交流電圧を直流に整流し、整流された直流電圧をインバータ部22により所望の三相交流電圧に変換してモータ23に出力する。
【0033】
また、上記制御装置100は、三相交流電圧の線間電圧のゼロクロスを検出するゼロクロス検出部101と、ゼロクロス信号に基づいてVdc脈動成分の位相θ
Vdcを表す信号を出力するVdc脈動成分位相検出部102と、Vdc脈動成分位相検出部102からのVdc脈動成分の位相θ
Vdcを表す信号に基づいて補償信号θ
hを出力する補償信号生成部103と、速度指令ω
*から実速度ωを減算する加減算器104と、加減算器104からの信号に基づいて電圧指令v
d*,v
q*を出力するモータ制御部105と、モータ制御部105からのv
d*,v
q*を極座標変換する極座標変換部106と、極座標変換部106からの電圧位相指令θ
**と補償信号生成部103からの補償信号θ
hを加算する加減算器107と、加減算器107からの補正電圧位相指令θ
*と極座標変換部106からの電圧振幅指令V
*に基づいて、相電圧指令信号Vu
*,Vv
*,Vw
*を出力するPWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)信号生成部108と、PWM信号生成部108からの相電圧指令信号Vu
*,Vv
*,Vw
*に基づいて、インバータ部22のスイッチング素子S11〜S16にPWM制御信号を出力するPWM変調部109とを有する。
【0034】
上記ゼロクロス検出部101は、三相交流電源10からの三相交流電圧の線間電圧に基づいて、交流波形のゼロクロスを表すゼロクロス信号を出力する。このゼロクロス検出部101は位相検出部の一例である。
【0035】
また、上記Vdc脈動成分位相検出部102は、
図2に示すように、ゼロクロス検出部101からのゼロクロス信号(矩形波)に基づいて、ゼロクロス信号に同期した三角波を出力するVdc脈動成分位相演算部102aと、Vdc脈動成分位相演算部102aからのVdc脈動成分を表す信号を6逓倍して、Vdc脈動成分の位相θ
Vdcを表す信号を出力する逓倍器102bとを有する。このVdc脈動成分位相検出部102は脈動成分位相決定部の一例である。
【0036】
また、上記補償信号生成部103は、
図3に示すように、Vdc脈動成分位相検出部102からのVdc脈動成分の位相θ
Vdcを表す信号と、位相補正量k
θ(固定値)を加算する加減算器103aと、加減算器103aで加算された信号を正弦波に変換する位相→正弦波変換部103bと、位相→正弦波変換部103bからの補償信号のゲインを補正して、補償信号θ
hを出力する乗算器103cとを有する。ここで、乗算器103cのゲイン補正量k
aは固定値である。この補償信号生成部103は出力電圧位相補正部の一例である。
【0037】
図3の下側には、Vdc脈動成分の位相θ
Vdcの波形と、Vdcの波形と、Vdc脈動の波形と、補償信号θ
hの波形を示している。
【0038】
なお、上記LCフィルタの共振周波数が、コンバータ部21に入力される三相交流電圧の商用周波数の6倍以上の周波数であり、かつ、インバータ部22のキャリア周波数と同じ周波数を有する電流を減衰させる周波数になるように、LCフィルタの特性が設定されている。すなわち、このLCフィルタは、商用周波数成分を平滑する作用を有しない。
【0039】
<ビート発生原理>
dq座標上でのモータの電圧方程式は、次の(1)式で表せることが知られている。
ここで、vd:d軸電圧
vq:q軸電圧
id:d軸電流
iq:q軸電流
Ld:d軸インダクタンス
Lq:q軸インダクタンス
Ra:モータ巻線抵抗
Λa:永久磁石による電気子鎖交磁束
ω
er:電気角速度
【0040】
定常項ω
erΛ
a(磁石磁束による誘起電圧)を無視し、(1)式を変形して周波数伝達関数として表すと、次の(2)式となる。
【0041】
直流リンク電圧の電圧脈動をそのまま使用する場合、(2)式のVd,Vqも脈動する。ここで、
図10にVdc脈動に対するVq脈動とVd脈動の関係を示しており、Vq脈動に対するVd脈動の位相差をθpとしている。
図10では、一例としてθp=90度(VdがVqより90度進み位相)の場合を示している。
【0042】
一方、(2)式の分母に含まれるG(jw)は、
ω
er = ω
のときに最小(=1/G(jw)が最大)となり、電流Id,Iqの脈動が最大となる(電流脈動やビートが発生)。
【0043】
ここで、ωは、Vd,Vqの脈動の周波数のことを指しているので、例えば入力された交流電圧が3相50Hzの場合、Vd,Vqの主要な脈動周波数は、
50×6 = 300Hz
となり、モータ23の極対数が3の場合、モータ回転数が100rpsで300Hzとなるため、このとき、ビートが最も大きく発生する。
【0044】
VdとVqを次の(3)式のように位相一定で定義する。
【0045】
そして、
ω = ω
dc = 2π×300 [rad/s]
とおくと、(3)式は次の(4)式のようにω
erに関する関数となる。
【0046】
関数Gは、回転数(ω
er)と直流リンク電圧の脈動周波数(ω
dc)が等しくなると最も小さくなる。よって、高調波電流は、
ω
er = ω
dc
となる回転数の時に最も流れる。
【0047】
<ビート抑制原理>
次に、電気子電流Iaの脈動成分を最小化することを考える。
【0048】
電気子電流IaとIdおよびIqは、
Ia
2 =Id
2+Iq
2
の関係であるので、Id、Iqそれぞれの脈動成分を最小化すれば、Iaも最小となる。
ここで、Id、Iqの周波数応答関数の分子に注目し、Vdc脈動周波数ω
dcとインバータ指令周波数ω
erとが、
ω
dc = ω
er
の関係とすると、上記(1)式を利用して、
が得られ、この(5)式の分子のみに着目し、ω
dcをω
erに置き換えると、
が得られる。
【0049】
ここで、Idのみに着目し、さらにIdの式の右辺第2項のjVd+Vqについてベクトル図を用いて以下に説明する。
【0050】
VdとVqとの位相差θp=0、すなわちVdとVqが同位相であれば、ベクトル図は
図11Aのようになり、このベクトルの振幅は両ベクトルの和となる。
【0051】
もし、ここで、θpをプラス方向に上げると、ベクトル図は
図11Bに示すように変化し、合成ベクトルの大きさは徐々に小さくなっていく。最終的にθp=90度にすると、Vd=Vqのときに各ベクトルの和が打ち消され、その結果、Idの脈動が最小となる。
【0052】
一方、θpをマイナス方向に下げると、ベクトル図は
図11Cに示すように変化し、合成ベクトルは大きくなっていき、θp=−90度で最大となる。
【0053】
以上のことと、
図12に示すθpに対するId,Iqの関係(Vd=Vqの場合)から、VdのVqに対する位相進み角を0度から180度(VdがVqより進み位相)としたとき、ビート電流の抑制効果が発揮される。
【0054】
この(6)式の右辺第2項においてVd,Vqの成分が90度ずれているため、Id,Iqも成分を持つことが分かる。逆に、VdとVqは振幅の大きさは同じなので、VqよりVdが90度速く振幅しているなら、
Vd=jVq
となるから、上記(6)式は、
となり、この(7)式の右辺第2項がなくなり、
となる。
【0055】
上記(8)式において、
Ra <<ω
er×Ld
ならId,Iqはほぼ0となる。
【0056】
<補償位相の決め方>
図5はゼロクロス検出信号と直流リンク電圧と直流リンク電圧の脈動成分と補償信号の波形を示している。
図5に示すように、300Hzの脈動成分において、VdがVqより90度進み位相であればよいので、
図6に示すベクトル図のように反時計回りの円軌跡を描くように位相を補償させればよい。
【0057】
すなわち、ゼロクロス検出信号の開始位置を基準に取ると、−sinで振動すればよいことが分かる。
【0058】
<補償ゲインの決め方>
dq軸上における電圧ベクトルの軌跡が完全な円状になればよいので、そのような位相振幅を求める。
【0059】
円の公式より、電圧ベクトルvは、
で表される。ここで、rは出力電圧の平均値V
dc_ave、vは出力電圧の(最大値V
dc_max−平均値V
dc_ave)であるが、変調率が1付近であれば、
となるので、位相θは、
で計算できる。ゲイン=θなので、この(11)式からゲインを求めることができる。
【0060】
上記構成のインバータ装置によれば、モータ23の回転子に埋め込まれた永久磁石のN極方向をd軸とし、そのd軸と位相が直交する方向をq軸とする回転座標において、コンバータ部21からの直流電圧に含まれる脈動成分のd軸電圧Vdがq軸電圧Vqよりも90度進み位相になるように、制御装置100によりインバータ部22を制御することによって、電圧利用率を低下させることなく、モータ23への出力電圧の脈動に応じて、モータ23への出力電圧の位相を制御することが可能になり、モータ電流の脈動やビートを抑制できる。
【0061】
また、上記ゼロクロス検出部101(位相検出部)により検出された三相交流電圧の位相に基づいて、Vdc脈動成分位相検出部102(脈動成分位相決定部)により直流電圧に含まれる脈動成分の位相を決定するので、簡単な構成で脈動成分の位相を検出することができる。その決定された直流電圧に含まれる脈動成分の位相に基づいて、直流電圧に含まれる脈動成分のd軸電圧Vdがq軸電圧Vqよりも90度進み位相になるように、補償信号生成部103(出力電圧位相補正部)によりインバータ部から出力される出力電圧の位相を補正するので、モータ電流の脈動やビートを確実に抑制することができる。
【0062】
また、上記制御装置100によりインバータ部22を制御して、インバータ部22から出力される出力電圧の回転座標のdq軸上における電圧ベクトルの軌跡が円形になるようにすることで、モータ電流の脈動やビートを確実に抑制できる。
【0063】
また、上記インダクタLdcとコンデンサCdcで構成されたLCフィルタの共振周波数が、コンバータ部21に入力される三相交流電圧の商用周波数の6倍以上の周波数であり、かつ、インバータ部22のキャリア周波数と同じ周波数を有する電流を減衰させる周波数になるように、LCフィルタの特性を設定することによって、直流リンク部に平滑用の大型のコンデンサやリアクトルを使用する必要がなくなり、低コスト化や小型化を実現することができる。
【0064】
〔第2実施形態〕
上記第1実施形態では、電源周波数の6倍の脈動成分に対して補償するインバータ装置について説明したが、実際には直流リンク電圧には電源周波数の6倍(3相の場合)以外にも、その倍数の高調波が含まれている。
【0065】
そこで、この発明の第2実施形態では、それら高調波による電力脈動の影響も同様の方法で抑制できるインバータ装置について説明する。
【0066】
例として、3相交流電圧を整流した直流リンク電圧で考えると、
図8のように電源周波数の6倍の他に、その2,3,…,N倍(Nは正の整数)の高調波も含まれている。
【0067】
それら高調波についても、電源周波数6倍の脈動と同様に電流脈動を発生させ、一方で同じ原理で補償信号を注入することで電流脈動を抑えることができる。
【0068】
図9は第2実施形態のインバータ装置の補償信号生成部210の構成図を示している。なお、この第2実施形態のインバータ装置は、補償信号生成部210を除いて第1実施形態のインバータ装置と同一の構成をしており、
図1を援用する。
【0069】
上記補償信号生成部210は、
図9に示すように、Vdc脈動成分位相検出部102(
図1に示す)からのVdc脈動成分の位相θ
Vdcを表す信号と、位相補正量k
θ1を加算する加減算器201-1と、加減算器201-1で加算された信号を正弦波に変換する位相→正弦波変換部202-1と、位相→正弦波変換部202-1からの補償信号のゲインを補正して、補償信号θ
h1を出力する乗算器203-1とを有する。
【0070】
この加減算器201-1と位相→正弦波変換部202-1と乗算器203-1で第1出力電圧位相補正部を構成している。
【0071】
また、上記補償信号生成部210は、Vdc脈動成分位相検出部102からのVdc脈動成分の位相θ
Vdcを表す信号を2,3,…,N逓倍する逓倍器200-2,200-3,…,200-Nと、逓倍器200-2,200-3,…,200-Nからの信号と位相補正量k
θ2,k
θ3,…,k
θNを夫々加算する加減算器201-2,201-3,…,201-Nと、加減算器201-2,201-3,…,201-Nで加算された信号を正弦波に夫々変換する位相→正弦波変換部202-2,202-3,…,202-Nと、位相→正弦波変換部202-2,202-3,…,202-Nからの補償信号のゲインを補正して、補償信号θ
h2,θ
h3,…,θ
hNを夫々出力する乗算器203-2,203-3,…,203-Nとを有する。
【0072】
ここで、乗算器203-1,203-2,203-3,…,203-Nのゲイン補正量k
1,k
2,k
3,…,k
Nは固定値である。
【0073】
この逓倍器200-2,200-3,…,200-Nと加減算器201-2,201-3,…,201-Nと位相→正弦波変換部202-2,202-3,…,202-Nおよび乗算器203-2,203-3,…,203-Nで第2〜第N出力電圧位相補正部を構成している。
【0074】
さらに、上記補償信号生成部210は、乗算器203-1,203-2,203-3,…,203-Nからの補償信号θ
h1,θ
h2,θ
h3,…,θ
hNを加算して、補償信号θ
hを出力する加減算器204を有する。
【0075】
上記構成のインバータ装置によれば、三相交流電圧の周波数の6倍の周波数の脈動成分だけでなく、その6倍の周波数の脈動成分の整数倍の高調波成分についても、d軸と位相が直交する方向をq軸とする回転座標において、6倍の周波数の脈動成分の整数倍の高調波成分のd軸電圧Vdがq軸電圧Vqよりも90度進み位相になるように、インバータ部22から出力される出力電圧の位相を制御することによって、それらの高調波成分についても同様にモータ電流の脈動やビートを抑制できる。
【0076】
上記第2実施形態のインバータ装置は、第1実施形態とインバータ装置と同様の効果を有する。
【0077】
〔第3実施形態〕
上記第1,第2実施形態では、LCフィルタの共振周波数が、コンバータ部21に入力される三相交流電圧の商用周波数の6倍以上の周波数であり、かつ、インバータ部22のキャリア周波数と同じ周波数を有する電流を減衰させる周波数になるように、LCフィルタの特性を設定したが、LCフィルタはこれに限らない。
【0078】
この発明の第3実施形態のインバータ装置では、共振周波数が、コンバータ部21に入力される三相交流電圧の商用周波数の6倍未満の周波数のLCフィルタを用いている。
【0079】
上記第3実施形態のインバータ装置は、第1実施形態とインバータ装置と同様の効果を有する。
【0080】
この発明の具体的な実施の形態について説明したが、この発明は上記第1〜第3実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。例えば、上記第1〜第3実施形態で記載した内容を適宜組み合わせたものを、この発明の一実施形態としてもよい。
【符号の説明】
【0081】
10…三相交流電源
21…コンバータ部
22…インバータ部
23…モータ
100…制御装置
101…ゼロクロス検出部(位相検出部)
102…Vdc脈動成分位相検出部(脈動成分位相決定部)
102a…Vdc脈動成分位相演算部
102b…逓倍器
103…補償信号生成部(出力電圧位相補正部)
103a…加減算器
103b…位相→正弦波変換部
103c…乗算器
104…加減算器
105…モータ制御部
106…極座標変換部
107…加減算器
108…PWM信号生成部
109…PWM変調部
200-2,200-3,…,200-N…逓倍器(第1出力電圧位相補正部)
201-1,201-2,201-3,…,201-N…加減算器
202-1,202-2,202-3,…,202-N…位相→正弦波変換部
203-1,203-2,203-3,…,203-N…乗算器
204…加減算器
210…補償信号生成部
Cdc…コンデンサ
D11〜D16…ダイオード
Ldc…インダクタ
S11〜S16…スイッチング素子
【解決手段】インバータ装置は、三相交流電圧を全波整流して、三相交流電圧の周波数の6倍の周波数の脈動成分を含む直流電圧を出力するコンバータ部(21)と、コンバータ部(21)からの脈動成分を含む直流電圧を交流電圧に変換してモータ(23)に出力するインバータ部(22)と、モータ(23)の回転子に埋め込まれた永久磁石のN極方向をd軸とし、d軸と位相が直交する方向をq軸とする回転座標において、直流電圧に含まれる脈動成分のd軸電圧Vdがq軸電圧Vqより進み位相になるように、インバータ部(22)を制御する制御装置(100)とを備える。