特許第6195057号(P6195057)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6195057船舶用遠隔操作装置及び船舶推進装置の遠隔操作方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6195057
(24)【登録日】2017年8月25日
(45)【発行日】2017年9月13日
(54)【発明の名称】船舶用遠隔操作装置及び船舶推進装置の遠隔操作方法
(51)【国際特許分類】
   B63H 21/22 20060101AFI20170904BHJP
【FI】
   B63H21/22 Z
【請求項の数】17
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2013-80352(P2013-80352)
(22)【出願日】2013年4月8日
(65)【公開番号】特開2014-201247(P2014-201247A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2016年3月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087701
【弁理士】
【氏名又は名称】稲岡 耕作
(74)【代理人】
【識別番号】100101328
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 実夫
(74)【代理人】
【識別番号】100170324
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 昌秀
(74)【代理人】
【識別番号】100099874
【弁理士】
【氏名又は名称】黒瀬 靖久
(72)【発明者】
【氏名】馬場 貴秋
【審査官】 加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−257796(JP,A)
【文献】 特開2012−214226(JP,A)
【文献】 特開2006−291717(JP,A)
【文献】 特開2008−094256(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H 21/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶に搭載され、該船舶の船舶推進装置を遠隔操作する船舶用遠隔操作装置であって、
回転軸線の回りに回転自在に支持され、操作角度に応じて前記船舶推進装置における前後進切替機構のシフト位置の切り替えを行う操作部材と、
前記操作部材に操作荷重を付与する操作荷重付与機構と、
前記操作荷重を制御する制御部と、
を有し、
前記前後進切替機構は、前記船舶推進装置により駆動される駆動ギアと、該駆動ギアと噛み合って駆動される前進ギア及び後進ギアと、前記前進ギア及び前記後進ギアに選択的に噛み合うドッグクラッチとを備え、前記前進ギア及び前記後進ギアに対する前記ドッグクラッチの噛み合わせを切り替えることによって前記シフト位置を切り替えるように構成され、
前記シフト位置は、前記ドッグクラッチが前記前進ギアに噛み合った前進シフト位置と、前記ドッグクラッチが前記後進ギアに噛み合った後進シフト位置と、前記ドッグクラッチが前記前進ギア及び前記後進ギアのいずれにも噛み合わない中立シフト位置とを含み、
前記操作荷重付与機構は、前記操作荷重を調整するアクチュエータを含み、
前記制御部は、前記船舶の船速が所定値以上のときに前記シフト位置を前記前進シフト位置又は前記後進シフト位置から前記後進シフト位置又は前記前進シフト位置に切り替えるシフト切替操作の際に、前記シフト切替操作に要する前記操作部材の操作荷重が、前記シフト切替操作以外の操作に要する前記操作部材の操作荷重よりも大きくなるように、前記アクチュエータを制御する、
ことを特徴とする船舶用遠隔操作装置。
【請求項2】
船舶に搭載され、該船舶の船舶推進装置を遠隔操作する船舶用遠隔操作装置であって、
回転軸線の回りに回転自在に支持され、操作角度に応じて前記船舶推進装置における前後進切替機構のシフト位置の切り替えを行う操作部材と、
前記操作部材に操作荷重を付与する操作荷重付与機構と、
前記操作荷重を制御する制御部と、
を有し、
前記前後進切替機構は、前記船舶推進装置により駆動される駆動ギアと、該駆動ギアと噛み合って駆動される前進ギア及び後進ギアと、前記前進ギア及び前記後進ギアに選択的に噛み合うドッグクラッチとを備え、前記前進ギア及び前記後進ギアに対する前記ドッグクラッチの噛み合わせを切り替えることによって前記シフト位置を切り替えるように構成され、
前記シフト位置は、前記ドッグクラッチが前記前進ギアに噛み合った前進シフト位置と、前記ドッグクラッチが前記後進ギアに噛み合った後進シフト位置と、前記ドッグクラッチが前記前進ギア及び前記後進ギアのいずれにも噛み合わない中立シフト位置とを含み、
前記操作荷重付与機構は、前記操作荷重を調整するアクチュエータを含み、
前記制御部は、前記船舶の船速が所定値以上のときに前記シフト位置を前記前進シフト位置又は前記後進シフト位置から前記後進シフト位置又は前記前進シフト位置に切り替えるシフト切替操作の際に、前記操作部材の所定の操作範囲にわたって、前記操作部材に付与される操作荷重が、前記シフト切替操作以外の操作の際に前記操作部材に付与される操作荷重よりも大きくなるように、前記アクチュエータを制御する、
ことを特徴とする船舶用遠隔操作装置。
【請求項3】
前記船舶の船速が所定値以上のときに前記シフト切替操作を行う際、前記シフト位置が中立シフト位置に切り替わった時点で前記操作部材に付与される操作荷重が増大するように、前記制御部が前記アクチュエータを制御する、請求項に記載の船舶用遠隔操作装置。
【請求項4】
前記船舶の船速が所定値以上のときに前記シフト切替操作を行う際、前記シフト位置が中立シフト位置に切り替わった時点で前記操作部材に付与される操作荷重が増大し、前記シフト位置が前進シフト位置又は後進シフト位置に切り替わるまでの間は増大した前記操作部材に付与される操作荷重が維持されるように、前記制御部が前記アクチュエータを制御する、請求項に記載の船舶用遠隔操作装置。
【請求項5】
前記船舶の船速が所定値以上のときに前記シフト位置の切替操作を行う際、前記シフト位置が中立シフト位置に切り替わった時点から前記操作部材に付与される操作荷重が増大し、前記シフト位置が前進シフト位置又は後進シフト位置に切り替わった時点から前記前記操作部材に付与される操作荷重が減少するように、前記制御部が前記アクチュエータを制御する、請求項に記載の船舶用遠隔操作装置。
【請求項6】
前記操作部材は、前記回転軸線の回りに所定の角度範囲内で回転自在に支持された操作レバーと、該操作レバーの操作に伴って回転する回転部材とを含み、
前記アクチュエータは、前記回転部材に付与する押し付け荷重を制御する、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の船舶用遠隔操作装置。
【請求項7】
前記操作荷重付与機構は、更に、前記回転部材に接する接触部材と、該接触部材を前記回転部材に向かって押し付ける弾性部材とを含み、
前記アクチュエータは、前記接触部材に対する前記弾性部材の押し付け荷重を変更する、請求項に記載の船舶用遠隔操作装置。
【請求項8】
前記回転部材は、前記接触部材が脱出可能な態様で嵌り込む複数の凹部が形成されている、請求項に記載の船舶用遠隔操作装置。
【請求項9】
前記接触部材は、前記回転部材に対して転がり動くように配置された円柱状部材、円筒状部材又は球状部材であり、
前記弾性部材は、スプリングである、請求項又はに記載の船舶用遠隔操作装置。
【請求項10】
前記船舶推進装置は、エンジンを含み、
前記船速は、前記エンジンの回転数に基づいて決定される、請求項1ないしのいずれか1項に記載の船舶用遠隔操作装置。
【請求項11】
前記船速は、前記船舶に装備されたピトー管、GPS(グローバル・ポジショニング・システム)、ドルホイールの少なくとも1つを含む船舶速度検知装置によって決定される、請求項1ないしのいずれか1項に記載の船舶用遠隔操作装置。
【請求項12】
前記船舶推進装置と前記遠隔操作装置とは、有線又は無線で互いに接続されており、
前記船速は、前記船舶推進装置において検知され、
前記船舶推進装置からの検知信号が有線又は無線で前記遠隔操作装置に伝達される、請求項1ないし10のいずれか1項に記載の船舶用遠隔操作装置。
【請求項13】
前記船舶推進装置は、エンジンを含み、
前記操作部材は、前記操作角度に応じて前記シフト位置を切り替えると共に、前記エンジンのスロットル開度を変更するように構成されている、請求項1ないし12のいずれか1項に記載の船舶用遠隔操作装置。
【請求項14】
前記船舶の船速が所定値未満のときに前記シフト位置の切替操作を行う際、前記操作部材の位置にかかわらず前記操作部材の操作荷重が所定の低い値となるように、前記制御部が前記アクチュエータを制御する、請求項1ないし13のいずれか1項に記載の船舶用遠隔操作装置。
【請求項15】
船体と、
前記船体の船尾に取り付けられた船舶推進装置と、
請求項1ないし14のいずれか1項に記載の遠隔操作装置と
を備えた船舶。
【請求項16】
船舶に搭載された船舶推進装置を、シフト位置の切り替えを行う遠隔操作装置により遠隔操作する方法であって、
前記船舶の船速を検知するステップと、
検知された前記船速に基づいて、前記遠隔操作装置における操作部材の操作荷重を制御するステップと
を含み、
前記操作部材の操作荷重を制御するステップは、
前記船舶の船速が所定値以上のときにシフト位置の切替操作を行う際、少なくとも中立位置を含む所定のシフト位置切替操作範囲における前記操作部材の最大操作荷重が、前記所定のシフト位置切替操作範囲以外における前記操作部材の最大操作荷重よりも大きくなるように制御する、
ことを特徴とする、船舶推進装置の遠隔操作方法。
【請求項17】
前記操作部材の操作荷重を制御するステップは、
前記船舶の船速が所定値未満のときに前記シフト位置の切替操作を行う際、前記操作部材の位置にかかわらず前記操作部材の操作荷重が所定の低い値となるように制御する、請求項16に記載の船舶推進装置の遠隔操作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶に搭載され、船舶推進装置を遠隔操作する船舶用遠隔操作装置、及び船舶推進装置の遠隔操作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶の船体には、推進力を付与するための船外機等の船舶推進装置が取り付けられる。例えば船外機は、エンジンを備えている。そのエンジンでプロペラブレードを回転させて船体に推進力を発生させる。また船外機は、プロペラブレードの回転方向を変更させる前後進切替機構を備えている。その前後進切替機構におけるシフト位置を前進シフト位置と後進シフト位置との間で切り替えることにより、プロペラブレードの回転方向が切り替えられる。
【0003】
このような船舶推進装置を遠隔制御する電子制御式の遠隔操作装置が知られている。この種の電子制御式の遠隔操作装置では、操作レバーの操作角度が検知され、その検知された操作角度に応じて船舶推進装置が制御される。従って、操作レバー自体は、軽い操作荷重で操作可能である。
【0004】
しかし、例えば高速航行時等に船体が揺れた場合などにおいても、操作レバーを所定の操作位置に保持する必要がある。このため例えば特開2006−62481号公報(特許文献1)では、操作レバーの操作角度が増大するに従って操作レバーの支持軸に付与する摩擦力を増大させるようにした装置が提案されている。具体的には、この装置では、操作レバーの支持軸を断面楕円形(カム形状)に形成し、その支持軸に対して押圧機構により摩擦力を付与している。
【0005】
ところで、船舶が早い速度で航行している高速航行状態では、船外機のエンジンを保護する観点から、前後進切替機構のシフト位置を例えば前進シフト位置から後進シフト位置に切り替えるべきではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−62481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記提案に係る遠隔操作装置では、高速航行時におけるシフト切替操作を未然に阻止することができない。即ち、上記装置は、単一の操作レバーで、エンジン出力調整操作とシフト切替操作とを行うものであり、操作レバーの操作角度が増大するに従って操作荷重が増大する。このような操作レバーの操作角度が大きい領域は、エンジン出力調整操作を行う領域である。これに対して、シフト切替操作を行う領域は、操作レバーの操作角度が小さい領域である。
【0008】
この装置の場合、操作角度の小さいシフト切替操作領域では、操作レバーの操作荷重が小さくなっている。従ってこの装置では、高速航行時においてもシフト切替操作が簡単にできてしまう。高速航行時にシフト切替操作を行う場合、とりわけ前進から後進にシフト操作を行う場合、ドッグクラッチを採用している船外機では、シフト切替時の衝撃が大きくなり、この衝撃が動力伝達系やエンジンへ伝達されてしまうという問題がある。
【0009】
もっとも高速航行時にシフト切替操作を行った場合であってもエンジンを保護するために、実際のシフト切替操作を、エンジン回転数が所定値より低下した後に行うように制御する方法が知られている。
【0010】
この制御方法によれば、高速航行時のシフト切替操作に起因するエンジントラブルの発生が未然に防止される。しかし、操作レバーによるシフト切替操作に対して実際のシフト切替が遅れるため、操作フィーリング性は必ずしも良好なものではなかった。このようなことから高速航行時におけるシフト切替操作を未然に阻止でき、しかも操作フィーリング性の良好な遠隔操作装置の出現が望まれていた。
【0011】
本発明の目的は、高速航行時におけるシフト切替操作を未然に阻止することができ、しかも操作フィーリング性がより一層向上された船舶用遠隔操作装置及び遠隔操作方法を提供することにある。本発明の他の目的及び利点は、以下の好ましい実施形態から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る船舶用遠隔操作装置は、船舶に搭載され、該船舶の船舶推進装置を遠隔操作するものである。この船舶用遠隔操作装置は、操作部材と、操作荷重付与機構と、制御部と、アクチュエータとを有する。前記操作部材は、回転軸線の回りに回転自在に支持され、操作角度に応じて前記船舶推進装置における前後進切替機構のシフト位置の切り替えを行う。前記操作荷重付与機構は、前記操作部材に操作荷重を付与する。また、前記制御部は、前記操作荷重を制御する。前記操作荷重付与機構は、前記操作荷重を調整するアクチュエータを含む。そして、前記制御部は、前記船舶の船速に基づいて、前記アクチュエータを制御するように構成されている。
前記前後進切替機構は、前記船舶推進装置により駆動される駆動ギアと、該駆動ギアと噛み合って駆動される前進ギア及び後進ギアと、前記前進ギア及び前記後進ギアに選択的に噛み合うドッグクラッチとを備え、前記前進ギア及び前記後進ギアに対する前記ドッグクラッチの噛み合わせを切り替えることによって前記シフト位置を切り替えるように構成されている。
また、前記シフト位置は、前記ドッグクラッチが前記前進ギアに噛み合った前進シフト位置と、前記ドッグクラッチが前記後進ギアに噛み合った後進シフト位置と、前記ドッグクラッチが前記前進ギア及び前記後進ギアのいずれにも噛み合わない中立シフト位置とを含む。
この発明の第1の局面では、前記制御部は、前記船舶の船速が所定値以上のときに前記シフト位置を前記前進シフト位置又は前記後進シフト位置から前記後進シフト位置又は前記前進シフト位置に切り替えるシフト切替操作の際に、前記シフト切替操作に要する前記操作部材の操作荷重が、前記シフト切替操作以外の操作に要する前記操作部材の操作荷重よりも大きくなるように、前記アクチュエータを制御する。
この発明の第2の局面では、前記制御部は、前記船舶の船速が所定値以上のときに前記シフト位置を前記前進シフト位置又は前記後進シフト位置から前記後進シフト位置又は前記前進シフト位置に切り替えるシフト切替操作の際に、前記操作部材の所定の操作範囲にわたって、前記操作部材に付与される操作荷重が、前記シフト切替操作以外の操作の際に前記操作部材に付与される操作荷重よりも大きくなるように、前記アクチュエータを制御する。
【0013】
上記船舶用遠隔操作装置は、好ましくは、以下のように構成される。操作部材は、操作レバーと、その操作に伴って回転する回転部材とを含む。操作レバーは、回転軸線の回りに所定の角度範囲内で回転自在に支持される。そして、前記アクチュエータは、前記回転部材に付与する押し付け荷重を制御する。このアクチュエータの制御により、操作レバーの操作荷重を任意に変更できる。
【0014】
前記操作荷重付与機構は、好ましくは、以下のように構成される。操作荷重付与機構は、更に、前記回転部材の周面に接する接触部材と、この接触部材を回転部材に向かって押し付ける弾性部材とを含む。そして、アクチュエータは、接触部材に対する弾性部材の押し付け荷重を変更する。この構成によれば、接触部材が、弾性部材によって回転部材に押し付けられる。またアクチュエータが制御されると、接触部材に対する押し付け荷重が変更され、ひいては回転部材に対する接触部材の押し付け荷重が変更される。従って、アクチュエータの制御により、操作レバーの操作荷重の大きさ及び操作荷重を変更するタイミングを制御できる。
【0015】
前記回転部材は、好ましくは、以下のように構成される。回転部材は、接触部材が脱出可能な態様で嵌り込む複数の凹部(以下、「ノッチ」ともいう)を有する。これら凹部に接触部材が選択的に嵌り込むことによって操作レバーが位置決めされる。またこの位置決め状態から接触部材が凹部から脱出する際に大きな操作荷重が必要となる。従って、回転部材に対する接触部材の押し付け荷重を変更することによって、凹部に対応する位置における操作部材の操作荷重を変更できる。
【0016】
前記接触部材は、好ましくは、前記回転部材に対して転がり動くように配置された円柱状部材、円筒状部材又は球状部材で構成される。また、前記弾性部材は、好ましくは、スプリングで構成される。
【0017】
前記船舶推進装置は、エンジンを含み、前記船速は、エンジンの回転数に基づいて決定されるものとしても良い。あるいは、前記船速は、船舶速度検知装置によって決定されても良い。船舶速度検知装置は、例えば船舶に装備されたピトー管、GPS(グローバル・ポジショニング・システム)、又はドルホイールであっても良い。
【0018】
前記船舶推進装置と前記遠隔操作装置とは、有線又は無線で互いに接続され、前記船速が船舶推進装置において検知されるようにしても良い。この場合、船舶推進装置からの検知信号は、有線又は無線で遠隔操作装置に伝達される。また、遠隔操作装置からの制御信号も有線又は無線で船舶推進装置に伝達される。
【0019】
前記船舶推進装置がエンジンである場合、前記操作部材は、操作角度に応じてシフト位置切替操作及びエンジンのスロットル開度変更操作を行うものであっても良い。
【0023】
記制御部は、船舶の船速が所定値以上のときに上記シフト切替操作を行う際に、以下のようにアクチュエータを制御しても良い。即ち、前後進切替機構におけるシフト位置が中立シフト位置に切り替わった時点で、操作部材に付与される操作荷重が増大するようにアクチュエータを制御する。
【0024】
あるいは前記制御部は、船舶の船速が所定値以上のときに上記シフト切替操作を行う際に、以下のようにアクチュエータを制御しても良い。即ち、前後進切替機構におけるシフト位置が中立シフト位置に切り替わった時点で前記操作部材に付与される操作荷重を増大させる。そして、その増大した前記操作部材に付与される操作荷重を、シフト位置が前進(又は後進)シフト位置に切り替わるまで維持する。
【0025】
あるいは前記制御部は、船舶の船速が所定値以上のときに上記シフト切替操作を行う際に、以下のようにアクチュエータを制御しても良い。即ち、前後進切替機構におけるシフト位置が中立シフト位置に切り替わった時点で前記操作部材に付与される操作荷重を増大させる。そしてその増大した前記操作部材に付与される操作荷重を、シフト位置が前進(又は後進)シフト位置に切り替わった時点で減少させる。
【0026】
あるいは前記制御部は、船舶の船速が所定値未満のときに上記シフト位置の切替操作を行う際に、アクチュエータを以下のように制御しても良い。即ち、操作部材の操作位置にかかわらず操作部材の操作荷重が一定となるようにアクチュエータを制御する。
【0027】
本発明の他の側面によると、船体と、その船体の船尾に取り付けられた船舶推進装置と、前述したいずれかの遠隔操作装置とを備えた船舶が提供される。
【0028】
本発明の更に他の側面によると、船舶に搭載された船舶推進装置を、シフト位置の切り替えを行う遠隔操作装置により遠隔操作する方法が提供される。この方法は、船舶の船速を検知するステップと、検知された船速に基づいて遠隔操作装置における操作部材の操作荷重を制御するステップとを含む。
【0029】
上記方法において、前記操作部材の操作荷重を制御するステップは、船舶の船速が所定値以上のときにシフト位置の切替操作を行う際に、以下のように制御する。即ち、所定のシフト位置切替操作範囲における前記操作部材の最大操作荷重が、その所定シフト位置切替操作範囲以外における操作部材の最大操作荷重よりも大きくなるように制御する。
【0030】
また、前記操作部材の操作荷重を制御するステップは、船舶の船速が所定値未満のときに操作部材によりシフト切替操作を行う際に、前記操作部材の位置にかかわらず前記操作部材の操作荷重を所定の低い値(一定に制御するものであっても良い。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る船舶用遠隔装置においては、制御部が船舶の船速に基づいてアクチュエータを制御して操作部材の操作荷重を調整するものである。従って、例えば船舶の航行速度が所定値以上の高速航行時に、操作部材の操作荷重が所定のシフト切替操作範囲内で大きくなるようにアクチュエータを制御すると、高速航行時におけるシフト切替操作を未然に防止できる。一方、船舶の航行速度が所定値未満の低速航行時に、操作部材の操作荷重が所定のシフト切替操作範囲内で上述した高速航行時における操作荷重よりも小さい値となるようにアクチュエータを制御すると、軽くシフト切り替えを行うことができる。
【0032】
また、本発明は、船速に基づいて操作荷重を調整するようにアクチュエータを制御するものであり、操作部材によるシフト切替操作と実際のシフト切替とを応答遅れなく一致させることができる。
【0033】
従って、本発明によれば、高速航行時におけるシフト切替操作を未然に阻止できると共に、操作フィーリング性をより一層向上することができる。
【0034】
また、本発明に係る船舶推進装置の遠隔操作方法によっても、上述した効果と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1は、本発明の実施形態に係る船舶用遠隔操作装置を備えた船舶の概略構成を示す平面図である。
図2図2は、本発明の遠隔操作装置の制御システムの概要を示す説明図である。
図3図3は、船外機の側面図である。
図4図4は、操作レバーの操作の説明図である。
図5図5は、遠隔操作装置の縦断面図である。
図6図6は、操作レバーに沿って切断した遠隔操作装置の縦断面図である。
図7図7は、図6に枠で囲んだ部分Aの拡大断面図である。
図8図8は、遠隔操作装置の回転部材における凹部の形成位置を示す説明図である。
図9図9は、操作レバーの位置に対するディテント荷重の制御の一例を示したグラフである。
図10A図10Aは、船速が所定値未満である場合における、操作レバーの位置と操作荷重との関係を示すグラフである。
図10B図10Bは、船速が所定値以上である場合における、操作レバーの位置と操作荷重との関係を示すグラフである。
図11図11は、本発明に係る一実施形態における船舶推進装置の遠隔操作方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明を好ましい実施形態に基づいて図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る船舶の概略構成を示す。図2は、本発明の遠隔操作装置の制御システムの概要を示す。
【0037】
図1に示すように、船舶Vは、船体Hを有する。この船体Hには、その船尾Tに船舶推進装置1が取り付けられている。この実施形態において、船舶推進装置1は、船外機である。この船外機1は、船体Hに推進力を付与する。この船体HのコックピットCPには、図1に示すように、操舵部材20と、遠隔操作装置30と、表示部Dとが備えられている。
【0038】
前記操舵部材20は、ステアリングホイールWを有する。このステアリングホイールWの回転操作により船体Hの船尾Tに取り付けられた船外機1の向きが左右方向に変更され、これにより船体Hの進行方向が変更される。
【0039】
前記遠隔操作装置30は、船尾Tに設けられた船外機1等をコックピットCPから遠隔操作するものである。また前記表示部Dは、例えば船舶Vの船速、遠隔操作装置30の操作状態、船外機1の運転情報等の各種情報を表示するものである。
【0040】
図2に、本発明の実施形態に係る遠隔操作装置30の制御システムの概要を示す。このシステムは、船外機1及び遠隔操作装置30を含む。遠隔操作装置30は、操作部40と、操作荷重付与機構50と、制御部60とを備えている。操作部40は、操作レバーLを有する。操作荷重付与機構50は、操作レバーLに操作荷重を付与するものである。制御部60は、操作レバーLの操作荷重を制御するものであり、第一電子制御ユニットECU1を有する。制御部60は、通信ケーブルC1を介して船外機1に接続されている。またこの制御部60は、通信ケーブルC2を介して表示部Dに接続されている。図2において、符号70は、ハブを示し、符号80は、スイッチパネルを示す。
【0041】
このシステムにおいて、遠隔操作装置30の操作部40を操作することによって、例えば、船外機1のエンジンEの回転数が変更され、また船外機1の推進力発生方向が前後に切り替えられる。また船外機1のエンジンEの回転数等の運転状態情報は、通信ケーブルC1を介して、遠隔操作装置30の制御部60に入力される。制御部60は、入力された情報に基づいて、予め保存されたプログラムに従って操作荷重付与機構50を制御する。
【0042】
先ず、船外機1について説明する。船外機1は、図3に示すように、下部にロワーケーシング2を有する。このロワーケーシング2には、複数枚のプロペラブレードpbを有するプロペラユニットPUが取り付けられている。またこのロワーケーシング2内には、前後進切替機構3、プロペラシャフト4が設けられている。ロワーケーシング2上には、アッパーケーシング6が固定されている。アッパーケーシング6内には、ドライブシャフト5が上下方向に延びるように配置されている。またアッパーケーシング6上には、エンジンEが搭載されている。またこの船外機1は、エンジンE等を制御する第二電子制御ユニットECU2を装備している。この船外機1は、船舶Vの船尾Tに懸架装置8を介して取り付けられている。
【0043】
この船外機1において、エンジンEの回転力は、アッパーケーシング6内に配置されたドライブシャフト5を介して、ロワーケーシング2内の前後進切替機構3に伝えられる。この前後進切替機構3に伝達された駆動力は、プロペラシャフト4を介してプロペラブレードpbに伝達される。プロペラシャフト4の回転方向、即ちプロペラブレードpbの回転方向は、前後進切替機構3により切り替えられる。
【0044】
前後進切替機構3は、ドライブシャフト5の下端に固定されたベベルギアからなる駆動ギア3aを有する。また、前後進切替機構3は、前進ギア3bと後進ギア3cとを有する。これら前進ギア3b及び後進ギア3cは、プロペラシャフト4に取り付けられている。更に、この前後進切替機構3は、前進ギア3bと後進ギア3cとの間に配置されたドッグクラッチ3dを有する。
【0045】
このドッグクラッチ3dは、プロペラシャフト4に対してスプライン結合されている。即ち、ドッグクラッチ3dは、プロペラシャフト4に対してその軸線方向に移動できる。しかし、ドッグクラッチ3dは、プロペラシャフト4に対してその周方向には相対回転できない。
【0046】
ドライブシャフト5に対して平行に上下方向に延びるようにシフトロッド15が配置されている。このシフトロッド15は、その上部に配置された駆動装置16により回転駆動される。このシフトロッド15の回転駆動に伴ってドッグクラッチ3dが、プロペラシャフト4の軸線方向に沿って移動する。この移動によって、ドッグクラッチ3dは、前進ギア3bと噛み合う前進シフト位置と、後進ギア3cと噛み合う後進シフト位置と、いずれのギアとも噛み合わない中立シフト位置とに切り替えられる。
【0047】
ドッグクラッチ3dが前進シフト位置にあるとき、前進ギア3bの回転がドッグクラッチ3dを介してプロペラシャフト4に伝達される。このプロペラシャフト4の回転に伴ってプロペラブレードpbが船舶Vを前進させる方向に回転する。一方、ドッグクラッチ3dが後進シフト位置にあるときには、後進ギア3cの回転がドッグクラッチ3dを介してプロペラシャフト4に伝達される。後進ギア3cは、前進ギア3bとは逆方向に回転するため、プロペラシャフト4は逆方向に回転する。従って、プロペラブレードpbは、反対方向、即ち船舶Vを後進させる方向に回転する。また、ドッグクラッチ3dが中立シフト位置にあるとき、ドッグクラッチ3dは前進ギア3b及び後進ギア3cのいずれとも噛み合っていない。従って、ドライブシャフト5の回転駆動力はプロペラシャフト4には伝達されない。よってプロペラブレードpbも、いずれの方向にも回転しない。
【0048】
このドッグクラッチ3dが、前進ギア3b及び後進ギア3cのいずれとも噛み合っていない状態からシフトロッド15の回転駆動により前進ギア3b又は後進ギア3cのいずれかと噛み合うときに衝撃が発生する。このときの衝撃の大きさは、船舶が高速で航行しているときの方が低速で航行しているときよりも大きくなる。
【0049】
前後進切替機構3は、遠隔操作装置30によって遠隔操作される。即ち、遠隔操作装置30の操作部40が操作されると、その操作角度に応じた指令が遠隔操作装置30の第一電子制御ユニットECU1を介してエンジンEの第二電子制御ユニットECU2に入力される。すると、この第二電子制御ユニットECU2は、駆動装置16に指令を出す。これにより、シフトロッド15が回転駆動され、前後進切替機構3におけるシフト位置が切り替わる。このように操縦者は、遠隔操作装置30を軽く操作するだけで前後進切替機構3のシフト位置、ひいてはプロペラブレードpbの回転方向を切り替えることができる。
【0050】
前記遠隔操作装置30は、操作レバーLを備えている。この操作レバーLは、本発明における操作部材に対応する。この操作レバーLは、この実施形態では、1本のレバー部材からなり、エンジンEの回転数の調整とシフト切替操作とを単一のレバー部材で行うように構成されている。
【0051】
次に、操作レバーLによる操作について説明する。ここでは、エンジンEが作動している状態を想定している。図4に示すように、例えば操作レバーLがほぼ鉛直に直立した中立位置Nにあるとき、前後進切替機構3におけるシフト位置は中立(ニュートラル)シフト位置となる。即ち、ドッグクラッチ3dが前進ギア3b及び後進ギア3cのいずれとも噛み合わない状態にある。従って、プロペラブレードpbは回転しない。
【0052】
この状態から、操作レバーLが前進シフトイン位置Finまで前方(図4では反時計回り方向)に傾けられると、前後進切替機構3のシフト位置が前進シフト位置に切り替わる。即ち、ドッグクラッチ3dが前進ギア3bと噛み合った状態となる。従って、プロペラブレードpbが、船体Hを前進させる方向に回転する。
【0053】
その状態から操作レバーLが更に前方に傾けられると、エンジンEの回転数が操作レバーLの傾きに応じて上昇する。操作レバーLは最も前方のFfull位置まで回転操作可能となっている。
【0054】
一方、操作レバーLが、上述のように前方に傾けられた状態から中立位置Nに向かって戻されると、エンジンEの回転数が低下する。操作レバーLが前進シフトアウト位置Foutまで戻されると、前後進切替機構3におけるシフト位置が前進シフト位置から中立シフト位置に切り替わる。即ち、ドッグクラッチ3dと前進ギア3bとの噛み合いが解除されて、ドッグクラッチ3dが前進ギア3b及び後進ギア3cのいずれとも噛み合わない状態になる。
【0055】
一方、操作レバーLが、ほぼ鉛直に直立した中立位置Nから後進シフトイン位置Rinまで後方(図4において時計回り方向)に傾けられると、前後進切替機構3におけるシフト位置が、中立シフト位置から後進シフト位置に切り替わる。即ち、ドッグクラッチ3dが後進ギア3cと噛み合う。従って、プロペラブレードpbが、船体Hを後進させる方向に回転する。
【0056】
その状態から操作レバーLが更に後方に傾けられると、エンジンEの回転数は、操作レバーLの傾きに応じて上昇する。操作レバーLは最も後方のRfull位置まで回転操作可能となっている。
【0057】
一方、操作レバーLが、上述のように後方に傾けられた状態から中立位置Nに向かって戻されると、エンジンEの回転数が低下する。操作レバーLが後進シフトアウト位置Routまで戻されると、前後進切替機構3におけるシフト位置が後進シフト位置から中立シフト位置に切り替わる。即ち、ドッグクラッチ3dと後進ギア3cとの噛み合いが解除されて、ドッグクラッチ3dが前進ギア3b及び後進ギア3cのいずれとも噛み合わない状態になる。
【0058】
図4に示すように、操作レバーLの操作方向によって、シフトが中立となる操作レバーLの中立範囲Tnが異なる。また図4から明らかなように、操作レバーLの操作方向に拘わらず、操作レバーLが前進シフトアウト位置Foutと後進シフトアウト位置Routとの間にあるときは、シフトは常に中立シフト位置である。即ち、ドッグクラッチ3dは前進ギア3b及び後進ギア3cのいずれとも噛み合わない状態である。この実施形態においては、このようにシフトが常に中立シフト位置となる範囲で、船速が大きい場合には、後述するように操作レバーの操作荷重が大きくなるように制御するものである。
【0059】
この実施形態においては、単一の操作レバーLの操作により、エンジンEの回転数の調整(即ち、エンジンEのスロットル開度の調整、ひいては船舶Vの速度調整)と前後進切替機構3によるシフト切替操作とが行われる。もっとも、本発明は、上述したような構成に限定されるものではない。本発明は、エンジンEの回転数の調整と前後進切替機構3によるシフト切替操作とを2つの操作部材(操作レバー)で別々に行うようにしたものをも含む。この場合、本発明は、シフト切替操作を行う操作部材(操作レバー)に適用される。また、この実施形態では、遠隔操作装置30は、通信ケーブルC1で船舶推進装置(船外機)1に接続(有線接続)されている。しかし、遠隔操作装置30は、例えばワイヤレスで船舶推進装置(船外機)1に接続(無線ネットワーク接続)されても良い。
【0060】
次に、遠隔操作装置30の構成について説明する。図5に示すように、この遠隔操作装置30は、単一の操作レバーLを有する。この操作レバーLは、その下端部の回転軸線Xを中心に所定の角度範囲内で回転可能である。この操作レバーLは、図6に示すように、回転軸線Xからその半径方向に延びたレバー本体部31aを有する。このレバー本体部31aの上部からグリップ部31bが水平方向に向かって一体的に延びている。このグリップ部31bの基端部には、船外機1の懸架装置8を制御するためのスイッチSWが取り付けられている。
【0061】
操作レバーLのレバー本体部31aの下端部には、回転軸線Xに沿って延びた回転部材32がボルトBで固定されている。この回転部材32は、ケーシング部材Cに対して、回転軸線Xの回りに回転自在な態様で取り付けられている。
【0062】
前記回転部材32は、回転軸線Xに沿って延びた軸部33と、その一端側(図6の右側)に一体的に形成された相対的に大きな半径を有する径大部34とを有する。従って、操作レバーLを回転軸線Xの回りに回転させると、回転部材32が回転する。この実施形態では、後述するように、この回転部材32に付与する押し付け荷重を制御している。もっとも、本発明においては、上記回転部材32に連動して回転する他の回転部材に対して押し付け荷重を付与し、この押し付け荷重を制御するようにしても良い。
【0063】
またこの遠隔操作装置30は、回転部材32の回転角度、ひいては操作レバーLの操作角度を検知するための回転センサRS(図4参照)が取り付けられている。この回転センサRSからの検知信号は、制御部60を構成する第一電子制御ユニットECU1に出力される。この検知信号に基づいて、第一電子制御ユニットECU1は、制御信号を生成し、この制御信号を船外機1のエンジン用の第二電子制御ユニットECU2に出力する。第二電子制御ユニットECU2は、その制御信号に基づいてエンジンEの回転数を制御する。またこの第二電子制御ユニットECU2は、前記制御信号に基づいて、前後進切替機構3のシフト切替も制御する。
【0064】
一方、船外機1の第二電子制御ユニットECU2は、図2に示すように、エンジンEの回転数等の情報を収集し、その情報を通信ケーブルC1を介して、遠隔操作装置30の第一電子制御ユニットECU1に送信する。すると、この第一電子制御ユニットECU1は、第二電子制御ユニットECU2からの情報に基づいて、操作荷重付与機構50を制御する。これにより操作部40の操作レバーLの操作荷重が制御される。この操作レバーLの具体的な操作荷重の制御については、後述する。
【0065】
図5に示すように、回転部材32の下方には、操作レバーLに操作荷重を付与するための操作荷重付与機構50が配置されている。この操作荷重付与機構50は、図7に拡大して示すように、ディテントローラ51、ローラ押え部材52、ディテントスプリング53、及びアクチュエータ54を有する。ディテントローラ51は、本発明における接触部材の一例である。また、ディテントスプリング53は、本発明における弾性部材の一例である。
【0066】
ディテントローラ51は、回転部材32の径大部34における外周面34aに接触するように配置されている。ディテントローラ51は、円柱状部材である。このディテントローラ51は、ローラ押え部材52の上部に形成された凹部52aに回転自在に嵌め込まれている。
【0067】
ローラ押え部材52は、その下端に半径が相対的に小さく形成された径小部52bを有する。この径小部52bにコイルスプリングからなるディテントスプリング53の上端部が嵌め合わされている。このディテントスプリング53の下部には、アクチュエータ54が配置されている。
【0068】
このアクチュエータ54は、本体部54aと、その上端の周囲に外方突出状に形成されたフランジ部54bとを有する。フランジ部54bが複数本のスクリューSによってケーシング部材Cに固定されている。また、アクチュエータ54は、本体部54aの上端面から上下移動自在な態様で上方に突出した可動部54cを有する。この可動部54cには、筒状のブッシュ部材55が嵌め合わされている。このブッシュ部材55がディテントスプリング53の下端に接触状態に配置されている。
【0069】
ディテントローラ51は、ローラ押え部材52を介してディテントスプリング53によって、回転部材32の径大部34における外周面34aに対して常時押え付けられた状態となっている。また、ディテントローラ51は、回転部材32の径大部34が回転軸線Xの回りに回転すると、径大部34の外周面34aに対して転がり動く。
【0070】
回転部材32の径大部34は、回転軸線Xの方向からみて真円形に形成されている。従って、操作レバーLの回転位置に拘わらず、ディテントローラ51による押圧力は一定である。この実施形態においては、更にアクチュエータ54が設けられている。
【0071】
アクチュエータ54の可動部54cは、アクチュエータ54が作動されていないときには、本体部54aから所定量だけ上方に突出した状態となっている。アクチュエータ54が作動されると、可動部54cはディテントローラ51に向かって更に突出する。アクチュエータ54が作動されて、可動部54cが更に突出すると、ディテントスプリング53はその分だけ圧縮される。従って、回転部材32における径大部34の外周面34aに対する、ディテントローラ51の押し付け荷重(以下、この押し付け荷重を「ディテント荷重」という)が増加する。
【0072】
アクチュエータ54としては、ソレノイドにより可動部54cを作動させるソレノイド式のものが好適に用いられる。このソレノイド式の場合には、アクチュエータ54が故障した場合であっても、可動部54cが元の位置に戻るためディテント荷重を小さい状態に維持できる。もっとも、本発明においては、アクチュエータ54は、例えばモータを用いたものであっても良い。
【0073】
なお、この実施形態においては、回転部材32の周面に接する接触部材として、円柱状のディテントローラ51が用いられている。しかし、本発明においては、接触部材として、他に例えば円筒状部材や球状部材を用いても良く、あるいはまた回転部材32の周面を転がるように動かない部材を用いても良い。
【0074】
この実施形態では、図8に示すように、回転部材32の径大部34の外周面34aに複数の凹部からなるノッチNn、Fn及びRnが形成されている。具体的には、この実施形態では、ニュートラルノッチNn、フォワードノッチFn及びリバースノッチRnの3つのノッチが形成されている。これらノッチNn、Fn及びRnには、回転部材32の回転に伴って、接触部材としてのディテントローラ51が脱出可能な態様で選択的に嵌り込む。ディテントローラ51がいずれかのノッチNn、Fn及びRnに嵌り込んだときに、操作レバーLにノッチ感が付与されると共に、操作レバーLが、ノッチNn、Fn及びRnに対応した所定の位置で一時的に保持される。
【0075】
各ノッチNn、Fn及びRnは、ディテントローラ51が脱出可能な態様で嵌り込むような寸法及び形状に設定されている。この実施形態では、これらノッチNn、Fn及びRnは、いずれも断面が弧状に形成されているが、例えば断面がV字状等に形成されたものであっても良い。
【0076】
この実施形態においては、具体的には、ニュートラルノッチNnは、操作レバーLが中立位置Nにあるときに、ディテントローラ51が嵌り込む位置に形成されている。また、フォワードノッチFnは、操作レバーLが前進シフトイン位置Finより前進側に少し越えた位置にあるときに、ディテントローラ51が嵌り込む位置に形成されている。更に、リバースノッチRnは、操作レバーLが後進シフトイン位置Rinより後進側に少し越えた位置にあるときに、ディテントローラ51が嵌り込む位置に形成されている。
【0077】
ディテントローラ51は回転部材32の径大部34の外周面34aを転がり動くように構成されている。従って、ディテント荷重が変化しても、ノッチに対応する位置以外では操作レバーLの操作荷重はほぼ一定の小さい値である。しかし、ディテント荷重が増減すると、それに応じてノッチNn、Fn又はRnが形成された位置においてノッチNn、Fn又はRnに嵌まり込んだディテントローラ51をそのノッチから脱出させるために要する操作レバーLの操作荷重が増減する。
【0078】
次に、操作レバーLの操作荷重の制御について説明する。図9において、縦軸はディテント荷重の大きさを示し、横軸は操作レバーLの位置を示す。
【0079】
この実施形態では、アクチュエータ54を制御することによってディテント荷重を図9に示すように制御している。この制御により、図10A及び図10Bに示すように、ノッチNn、Fn又はRnに嵌まり込んだディテントローラ51をそのノッチから脱出させるために要する操作レバーLの操作荷重が変更される。以下、操作レバーLの操作荷重の制御について、具体的に説明する。
【0080】
なお、図9において、横軸は操作レバーLの位置を示し、縦軸はディテント荷重を示す。横軸において、中立位置Nより右側は、操作レバーLの後進側への傾きの方向(図4における時計回り方向)を示す。中立位置Nより左側は、操作レバーLの前進側への傾きの方向(図4における反時計回り方向)を示す。また太い実線は、船舶Vの船速が予め定められた値以上の場合におけるディテント荷重の制御を示す。一方、太い破線は、船舶Vの船速が予め定められた値より小さい場合におけるディテント荷重の制御を示す。
【0081】
また、図9において線の重複をさけるために、船舶Vの船速が予め定められた値より小さい場合におけるディテント荷重が、船舶Vの船速が予め定められた値以上の場合におけるディテント荷重の最低値よりも小さく示されている。しかし、これらの値は同じ値としても良い。更に、図9に示す実施形態では、速度大の場合と速度小の場合の2通りのパターンを例示している。しかし、本発明においては、更に複数の異なる船速に応じてディテント荷重を変更するようにしても良い。この場合、船速が大きくなるほどディテント荷重を大きく設定することが好ましい。
【0082】
操作レバーLの操作荷重の制御は、以下のようにして行われる。まず船外機1に搭載された第二電子制御ユニットECU2が、エンジンEの回転数を検知する。そしてこの第二電子制御ユニットECU2は、検知したエンジン回転数の情報を通信ケーブルC1を介して遠隔操作装置30の第一電子制御ユニットECU1に送信する。この情報を受け取った第一電子制御ユニットECU1は、エンジンEの回転数が予め定めたエンジン回転数より低いか否かを判断する。一方、回転センサRSが、操作レバーLの操作角度を検知する。この検知信号は、第一電子制御ユニットECU1に入力される。そして、第一電子制御ユニットECU1は、予め保存されたプログラムに従って、船速および操作レバーLの位置(操作角度)に応じてアクチュエータ54を制御する。
【0083】
まず、船舶Vが予め定められた船速よりも遅い速度で航行している場合を想定する。
【0084】
この場合、第一電子制御ユニットECU1は、エンジンEの回転数が予め定めたエンジン回転数より低いと判断する。するとこの第一電子制御ユニットECU1は、操作レバーLの位置(操作角度)に拘わらず、アクチュエータ54をオフの状態に維持する。これにより、図9に破線で示すように、ディテント荷重は操作レバーLの位置(操作角度)に拘わらず、一定の低い値に維持される。
【0085】
図10Aに船速が所定値未満の場合の操作レバーLの位置と操作荷重の関係を示す。ディテントローラ51がフォワードノッチFn、ニュートラルノッチNn又はリバースノッチRnに嵌り込む位置に対応して、操作レバーLの操作荷重が増大している。各ノッチ位置で必要となる操作荷重は、ディテントスプリング53の強さや各ノッチFn、Nn及びRnの形状、深さ等により設定される。なお、ディテントローラ51がフォワードノッチFn及びリバースノッチRnに嵌り込む位置おける操作レバーLの操作荷重がレバー操作方向に応じて異なるように、ノッチの形状が非対称形状に設定されている。
【0086】
次に、船舶Vが、予め定められた船速以上の速い速度で航行している場合を想定する。
【0087】
この場合も上述の場合と同様に、第一電子制御ユニットECU1が、エンジン回転数が予め定めた値以上か否かを判断する。そしてエンジン回転数が予め定めたエンジン回転数以上であると判断された場合、第一電子制御ユニットECU1は、図9の実線で示すように操作レバーLの位置(操作角度)に応じてアクチュエータ54を制御する。
【0088】
図9に示すように、操作レバーLがFfull位置とFin位置との間(ディテントローラ51がフォワードノッチFnに嵌り込む位置を含む)に位置する場合及びRin位置とRfull位置との間(ディテントローラ51がリバースノッチRnに嵌り込む位置を含む)に位置する場合には、ディテント荷重が低い値を維持するように制御される。一方、操作レバーLの位置がFout位置とRout位置との間(ディテントローラ51がニュートラルノッチNnに嵌り込む位置を含む)に位置する場合には、アクチュエータ54を駆動することによりディテント荷重が高い値となるように制御される。
【0089】
図10Bに船速が所定値以上の場合の操作レバーLの位置と操作荷重の関係を示す。図10Bでは、図10Aに示す場合と比べてディテントローラ51がニュートラルノッチNnに嵌り込む位置における操作荷重が増大している。これは、図9に示すように、操作レバーLの位置がディテントローラ51がニュートラルノッチNnに嵌り込む位置の前後では、ディテント荷重が高い値となるように制御されており、ディテントローラ51がニュートラルノッチNnから脱出するために要する荷重が増大しているからである。なお、ディテントローラ51がフォワードノッチFn及びリバースノッチRnに嵌り込む位置では、ディテント荷重は、図10Aに示す場合と同様の値である。これらの位置では、アクチュエータ54がオフの状態であり、ディテント荷重が所定の低い値になっているからである。
【0090】
なお、図9に示すように、ディテント荷重が高い値と低い値との間の遷移状態におけるディテント荷重の制御はヒステリシスにしても良い。即ち、操作レバーが前進シフト位置又は後進シフト位置から中立シフト位置へ向けて操作される場合には、ディテント荷重が低い値に維持されるように制御される。一方、操作レバーLが中立シフト位置から前進シフト位置又は後進シフト位置に向けて操作される場合には、ディテント荷重が高い値に維持されるように制御される。この場合でも、ディテントローラ51がフォワードノッチFn及びリバースノッチRnに嵌り込む位置におけるディテント荷重は低い値となるように制御されることが好ましい。
【0091】
このようにアクチュエータ54が制御されることにより、シフト位置を前進シフト位置から後進シフト位置に切り替える際に、操作レバーLの操作荷重が中立位置Nで大幅に増大する(図10B参照)。従って、操縦者による高速航行時におけるシフト切替操作が未然に防止される。このように高速航行時におけるシフト切替操作を未然に防止する観点から、操作レバーLの最大操作荷重は、操縦者が容易にシフト切替操作を行うことができない程度の大きさに設定されることが望ましい。なお、上記制御は、シフト位置を前進シフト位置から後進シフト位置に切り替える際にのみ実行するように行っても良いし、シフト位置を後進シフト位置から前進シフト位置に切り替える際にも行っても良い。
【0092】
以上、船舶Vが、予め定められた船速以上の速い速度を維持していることを前提として説明した。しかし、アクチュエータ54が作動してディテント荷重が増大しているときに、船速が低下することもある。このような場合には、ディテント荷重の制御は、図9に実線で示した状態から、破線で示した状態に移行する。即ち、船速が所定値未満になるとアクチュエータ54はオフ状態となってディテント荷重を減少させるように制御される。従って、操作レバーLの操作荷重は、図10Aに示すような状態となる。
【0093】
なお、上記実施形態では、第二電子制御ユニットECU2がエンジン回転数の情報(速度情報)を第一電子制御ユニットECU1に送信し、この第一電子制御ユニットECU1がエンジン回転数の高低を判断している。しかし、この第二電子制御ユニットECU2にてエンジン回転数の高低を判断し、第一電子制御ユニットECU1から第二電子制御ユニットECU2へ前後進切替機構3の駆動装置16に動作制御情報を送信するようにしても良い。この場合、第二電子制御ユニットECU2では、受信した動作制御情報に基づいて前後進切替機構3の駆動装置16を駆動制御する。
【0094】
また上記実施形態において、船舶Vの船速は、エンジンEの回転数に基づいて決定されている。もっとも、本発明においては、船速を船舶速度検知装置によって実際に測定し、その実測値を用いてアクチュエータ54を制御しても良い。船舶速度検知装置として、例えば、船体Hに装備されたピトー管、GPS(グローバル・ポジショニング・システム)、ドルホイール等を例示できる。これらのうちいずれか1つの装置を用いて船速を決定しても良いし、これらの幾つかを組み合わせて船速を決定しても良い。あるいは、エンジンEの回転数によって推定した船速を、上述したいずれかの速度検知装置によって補正し、その補正値を船速としても良い。
【0095】
また上記実施形態においては、船速に基づいてアクチュエータ54を制御して操作レバーLの操作荷重を変更することによって、高速航行時におけるシフト切替操作を未然に防止している。しかし、本発明は、実際のシフト切替操作をエンジンEの回転数が予め定められた値まで低下した時点で行う制御と組み合わせても良い。
【0096】
上記実施形態において説明した制御は一例である。要するに、本発明は、制御部60が、船舶Vの船速に基づいてアクチュエータ54を制御するものであれば、他の各種制御を許容するものである。
【0097】
図11は、本発明に係る一実施形態における船舶推進装置の遠隔操作方法のフローチャートを示す。ステップS1で、船速を検知する。次に、ステップS2で、検知した船速が予め定められた所定値以上か否かを判断する。検知した船速が、所定値未満であれば(S2でNO)、ステップS3で、ディテント荷重を低く制御する。例えば、アクチュエータ54をオフの状態に維持する。そしてルーチンはステップ1に戻る。
【0098】
一方、ステップS2で、検知した船速が所定値以上であれば(S2でYES)、ステップS4に進む。ステップS4では、操作レバーLの位置が検知される。そしてステップS5で、『操作レバーLが前進シフトアウト位置Foutと後進シフトアウト位置Routとの間の範囲にある』か否かが判断される。操作レバーLが前記範囲内にあると判断されると(ステップS5でYES)、ステップS6でディテント荷重F(t)を高く制御し、ステップS1に戻る。
【0099】
一方、ステップS5で、操作レバーLが前記範囲内にないと判断されると(ステップS5でNO)、ステップS7に進む。ステップS7では、『ディテント荷重F(t-1)が高く制御されていた、かつ操作レバーLが前進シフトアウト位置Foutと前進シフトイン位置Finとの間の範囲にある』か否かが判断される。ステップS7で上記条件が満たされると(ステップS7でYES)、ステップS6でディテント荷重F(t)を高く制御し、ステップS1に戻る。
【0100】
一方、ステップS7で、上記条件が満たされないと(ステップS7でNO)、ステップS8で『ディテント荷重F(t-1)が高く制御されていた、かつ操作レバーLが後進シフトアウト位置Routと後進シフトイン位置Rinとの間の範囲にある』か否かが判断される。ステップS8で上記条件が満たされると(ステップS7でYES)、ステップS6でディテント荷重F(t)を高く制御し、ステップS1に戻る。ステップS8で上記条件が満たされないと(ステップS7でNO)、ステップS3でディテント荷重F(t)を低く制御し、ステップS1に戻る。
【0101】
操作レバーLの操作荷重は、上述したように、アクチュエータ54を制御することで行うことができる。このアクチュエータ54の制御のタイミングは、必要に応じて適宜設定される。アクチュエータ54は、単にオン・オフ制御しても良いが、例えばアクチュエータ54の可動部54cの突出量を連続的に又は不連続的(段階的)に調整するように制御しても良い。
【0102】
また上記実施形態においては、接触部材としてのディテントローラ51を、操作レバーLに連結された回転部材32の径大部34の外周面34aに接触するように配置している。またノッチFn、Nn及びRnを上記外周面34aに形成している。しかし、接触部材としてのディテントローラ51を回転部材32における回転軸線X方向の端面に接触するように配置しても良い。この場合、ノッチFn、Nn及びRnは、回転部材32における回転軸線方向の端面に形成される。
【0103】
また上記実施形態においては、接触部材としてディテントローラ51を用い、このディテントローラ51が、回転部材32に形成されたノッチに嵌り込むことにより、操作レバーLの操作荷重を制御するものとした。しかし、本発明においては、接触部材を非回転式のものとして回転部材32との間の摩擦力をアクチュエータ54で制御するものとしても良い。
【0104】
ここに用いられた用語及び表現は、説明のために用いられたものであって限定的に解釈するために用いられたものではなく、ここに示され且つ述べられた特徴事項の如何なる均等物をも排除するものではない。本発明は、請求項に記載された範囲内における各種変形をも許容するものであると認識されなければならない。
【0105】
本発明は、多くの異なった形態で具現化され得るものであるが、この開示は本発明の原理の実施形態の例を提供するものと見なされるべきである。それら実施形態は、本発明をここに記載しかつ/又は図示した好ましい実施形態に限定することを意図するものではないという了解のもとで、ここに記載されている。
この明細書および添付図面の記載から導き出される特徴を以下に例示する。
A1.船舶に搭載され、該船舶の船舶推進装置を遠隔操作する船舶用遠隔操作装置であって、
回転軸線の回りに回転自在に支持され、操作角度に応じて前記船舶推進装置における前後進切替機構のシフト位置の切り替えを行う操作部材と、
前記操作部材に操作荷重を付与する操作荷重付与機構と、
前記操作荷重を制御する制御部と、
を有し、
前記操作荷重付与機構は、前記操作荷重を調整するアクチュエータを含み、
前記制御部は、前記船舶の船速に基づいて前記アクチュエータを制御することを特徴とする船舶用遠隔操作装置。
A2.前記操作部材は、前記回転軸線の回りに所定の角度範囲内で回転自在に支持された操作レバーと、該操作レバーの操作に伴って回転する回転部材とを含み、
前記アクチュエータは、前記回転部材に付与する押し付け荷重を制御する、項A1に記載の船舶用遠隔操作装置。
A3.前記操作荷重付与機構は、更に、前記回転部材に接する接触部材と、該接触部材を前記回転部材に向かって押し付ける弾性部材とを含み、
前記アクチュエータは、前記接触部材に対する前記弾性部材の押し付け荷重を変更する、項A2に記載の船舶用遠隔操作装置。
A4.前記回転部材は、前記接触部材が脱出可能な態様で嵌り込む複数の凹部が形成されている、項A3に記載の船舶用遠隔操作装置。
A5.前記接触部材は、前記回転部材に対して転がり動くように配置された円柱状部材、円筒状部材又は球状部材であり、
前記弾性部材は、スプリングである、項A3又はA4に記載の船舶用遠隔操作装置。
A6.前記船舶推進装置は、エンジンを含み、
前記船速は、前記エンジンの回転数に基づいて決定される、項A1ないしA5のいずれか1項に記載の船舶用遠隔操作装置。
A7.前記船速は、前記船舶に装備されたピトー管、GPS(グローバル・ポジショニング・システム)、パドルホイールの少なくとも1つを含む船舶速度検知装置によって決定される、項A1ないしA5のいずれか1項に記載の船舶用遠隔操作装置。
A8.前記船舶推進装置と前記遠隔操作装置とは、有線又は無線で互いに接続されており、
前記船速は、前記船舶推進装置において検知され、
前記船舶推進装置からの検知信号が有線又は無線で前記遠隔操作装置に伝達される、項A1ないしA6のいずれか1項に記載の船舶用遠隔操作装置。
A9.前記船舶推進装置は、エンジンを含み、
前記操作部材は、前記操作角度に応じて前記シフト位置を切り替えると共に、前記エンジンのスロットル開度を変更するように構成されている、項A1ないしA8のいずれか1項に記載の船舶用遠隔操作装置。
A10.前記前後進切替機構は、前記船舶推進装置により駆動される駆動ギアと、該駆動ギアと噛み合って駆動される前進ギア及び後進ギアと、前記前進ギア及び前記後進ギアに選択的に噛み合うドッグクラッチとを備え、前記前進ギア及び前記後進ギアに対する前記ドッグクラッチの噛み合わせを切り替えることによって前記シフト位置を切り替えるように構成され、
前記シフト位置は、前記ドッグクラッチが前記前進ギアに噛み合った前進シフト位置と、前記ドッグクラッチが前記後進ギアに噛み合った後進シフト位置と、前記ドッグクラッチが前記前進ギア及び前記後進ギアのいずれにも噛み合わない中立シフト位置とを含む、項A1ないしA9のいずれか1項に記載の船舶用遠隔操作装置。
A11.前記船舶の船速が所定値以上のときに前記シフト位置を前記前進シフト位置又は前記後進シフト位置から前記後進シフト位置又は前記前進シフト位置に切り替えるシフト切替操作の際に、前記シフト切替操作に要する前記操作部材の操作荷重が、前記シフト切替操作以外の操作に要する前記操作部材の操作荷重よりも大きくなるように、前記制御部が前記アクチュエータを制御する、項A10に記載の船舶用遠隔操作装置。
A12.前記船舶の船速が所定値以上のときに前記シフト位置を前記前進シフト位置又は前記後進シフト位置から前記後進シフト位置又は前記前進シフト位置に切り替えるシフト切替操作の際に、前記操作部材の所定の操作範囲にわたって、前記回転部材に付与する押し付け荷重が、前記シフト切替操作以外の操作の際に前記回転部材に付与する押し付け荷重よりも大きくなるように、前記制御部が前記アクチュエータを制御する、項A10に記載の船舶用遠隔操作装置。
A13.前記船舶の船速が所定値以上のときに前記シフト切替操作を行う際、前記シフト位置が中立シフト位置に切り替わった時点で前記操作部材に付与される荷重が増大するように、前記制御部が前記アクチュエータを制御する、項A12に記載の船舶用遠隔操作装置。
A14.前記船舶の船速が所定値以上のときに前記シフト切替操作を行う際、前記シフト位置が中立シフト位置に切り替わった時点で前記回転部材に付与する押し付け荷重が増大し、前記シフト位置が前進シフト位置又は後進シフト位置に切り替わるまでの間は増大した前記回転部材に付与する押し付け荷重が維持されるように、前記制御部が前記アクチュエータを制御する、項A12に記載の船舶用遠隔操作装置。
A15.前記船舶の船速が所定値以上のときに前記シフト位置の切替操作を行う際、前記シフト位置が中立シフト位置に切り替わった時点から前記回転部材に付与する押し付け荷重が増大し、前記シフト位置が前進シフト位置又は後進シフト位置に切り替わった時点から前記回転部材に付与する押し付け荷重が減少するように、前記制御部が前記アクチュエータを制御する、項A12に記載の船舶用遠隔操作装置。
A16.前記船舶の船速が所定値未満のときに前記シフト位置の切替操作を行う際、前記操作部材の位置にかかわらず前記回転部材に付与する押し付け荷重が所定の低い値となるように、前記制御部が前記アクチュエータを制御する、項A1ないしA15のいずれか1項に記載の船舶用遠隔操作装置。
A17.船体と、
前記船体の船尾に取り付けられた船舶推進装置と、
項A1ないしA16のいずれか1項に記載の遠隔操作装置と
を備えた船舶。
A18.船舶に搭載された船舶推進装置を、シフト位置の切り替えを行う遠隔操作装置により遠隔操作する方法であって、
前記船舶の船速を検知するステップと、
検知された前記船速に基づいて、前記遠隔操作装置における操作部材の操作荷重を制御するステップと
を含むことを特徴とする、船舶推進装置の遠隔操作方法。
A19.前記操作部材の操作荷重を制御するステップは、
前記船舶の船速が所定値以上のときにシフト位置の切替操作を行う際、少なくとも中立位置を含む所定のシフト位置切替操作範囲における前記操作部材の最大操作荷重が、前記所定のシフト位置切替操作範囲以外における前記操作部材の最大操作荷重よりも大きくなるように制御する、項A18に記載の船舶推進装置の遠隔操作方法。
A20.前記操作部材の操作荷重を制御するステップは、
前記船舶の船速が所定値未満のときに前記シフト位置の切替操作を行う際、前記操作部材の位置にかかわらず前記操作部材に付与する押し付け荷重が所定の低い値となるように制御する、項A18又はA19に記載の船舶推進装置の遠隔操作方法。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明は、ボート等の船舶における船体の船尾に取り付けられた船外機等の船舶推進装置を例えばその船舶のコックピット等で遠隔操作するための船舶用遠隔操作装置として好適に用いられる。
【符号の説明】
【0107】
1 船舶推進装置(船外機)
3 前後進切替機構
3a 駆動ギア
3b 前進ギア
3c 後進ギア
3d ドッグクラッチ
30 遠隔操作装置
32 回転部材
50 操作荷重付与機構
51 接触部材(ディテントローラ)
53 弾性部材(ディテントスプリング)
54 アクチュエータ
60 制御部
E エンジン
H 船体
L 操作部材(操作レバー)
T 船尾
V 船舶
X 回転軸線
Fn 凹部(フォワードノッチ)
Nn
凹部(ニュートラルノッチ)
Rn
凹部(リバースノッチ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11