特許第6195059号(P6195059)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6195059
(24)【登録日】2017年8月25日
(45)【発行日】2017年9月13日
(54)【発明の名称】排煙脱硝装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/86 20060101AFI20170904BHJP
   B01D 46/42 20060101ALI20170904BHJP
   B01D 46/48 20060101ALI20170904BHJP
   F23J 3/04 20060101ALI20170904BHJP
   F23J 3/06 20060101ALI20170904BHJP
【FI】
   B01D53/86 222
   B01D46/42 CZAB
   B01D46/48
   F23J3/04
   F23J3/06
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-177905(P2013-177905)
(22)【出願日】2013年8月29日
(65)【公開番号】特開2015-44174(P2015-44174A)
(43)【公開日】2015年3月12日
【審査請求日】2016年6月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】幸村 明憲
(72)【発明者】
【氏名】菊地 勝実
【審査官】 田中 則充
(56)【参考文献】
【文献】 特開平2−95415(JP,A)
【文献】 特開2013−104641(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/00−53/96
B01D 46/42
B01D 46/48
F23J 3/04
F23J 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化石燃料を燃焼器で燃焼させる際に該燃焼器から排出される排ガス中に含まれる窒素酸化物を除去する排煙脱硝装置であって、
窒素酸化物を除去する脱硝処理を行う脱硝触媒と、
前記脱硝触媒の排ガス流れ上流側に配置されて前記排ガスを流しつつ該排ガスに乗って運ばれる塊状灰を接触させて少なくとも1箇所に集めるべく形成された捕捉金網と、前記捕捉金網の前記塊状灰が集まる部位に位置して前記排ガスの流れを停滞させることで前記塊状灰の勢いを止めて自重落下させるガイド体を具備した塊状灰捕捉機構を備え、
前記塊状灰捕捉機構の前記ガイド体の下方には、該ガイド体で捕えられて自重落下する前記塊状灰を溜めると共に、溜めた前記塊状灰を前記燃焼器の稼働中に前記排ガス系統外に排出可能な排出機構が備えられている
ことを特徴とする排煙脱硝装置。
【請求項2】
前記排出機構は、前記塊状灰捕捉機構の前記ガイド体で捕えられて自重落下して溜まった前記塊状灰の排出口を有する灰溜め部と、前記塊状灰捕捉機構及び前記灰溜め部の間に位置して双方の流通を遮断開放する開閉弁を具備している請求項1に記載の排煙脱硝装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭などの化石燃料をボイラ(燃焼器)で燃焼させる際に排出される排ガス中に含まれる窒素酸化物(NOX)を除去するのに用いられる排煙脱硝装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記した排煙脱硝装置は、例えば、石炭焚きボイラからの垂直煙道に続いて配置され、石炭焚きボイラから排出される石炭の燃焼排ガスが、垂直煙道を経てこの排煙脱硝装置が有する脱硝触媒層を上方から下方に通過する過程において、脱硝触媒層の入口手前で注入されたNH3と排ガス中に含まれる窒素酸化物(NOX)との脱硝反応が進むことで窒素酸化物を除去するようになっている。
【0003】
ここで、排ガス中には、粒径の大きな塊状灰(ポップコーン灰)が含まれている場合があり、この塊状灰は脱硝触媒で目詰まりを発生させ易く、そして、このような塊状灰が脱硝触媒で目詰まりを起こして、そこに燃焼灰の堆積が進行していった場合には、脱硝触媒の目詰まりによって排ガスの流動が妨げられて、ボイラプラントの運転に支障を来たす。
【0004】
従来において、このような脱硝触媒の目詰まりの原因となる大粒の塊状灰を除去する手段として、垂直煙道にその流路を横断するようにして金網を配置する策が講じられていたが、ばいじん粒子を含む排ガスへの金網の適用にあたっては、捕集した塊状灰を起点とする目詰まりの進行に伴って、当該部の排ガスの流速が徐々に増加することとなって、金網の摩耗による不具合が生じる可能性があった。
【0005】
近年において、摩耗による不具合の発生を回避しつつ大粒の塊状灰を捕集し得るようにした排煙脱硝装置としては、例えば、特許文献1に記載されたものがある。
この排煙脱硝装置は、排ガスダクト内における脱硝触媒層の入口に、細長い菱形形状の薄板を触媒層の開口幅よりも小さいスリット幅で多数配列させて成る傾斜薄板スリットを配置すると共に、排ガスダクト断面に対して傾斜する傾斜薄板スリットの下端にダスト捕集排出部を取り付けた構成を成しており、この排煙脱硝装置では、傾斜薄板スリットで塊状灰を捕集し、捕集した塊状灰を傾斜するスリットに沿って自重でダスト捕集排出部に移動させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012-115719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記した排煙脱硝装置において、塊状灰を捕集することはできるものの、捕集した塊状灰を傾斜薄板スリットの傾斜するスリットに沿って自重でダスト捕集排出部に移動させるようにしているので、傾斜薄板スリット上に捕集した塊状灰が残存する可能性があるうえ、ダスト捕集排出部に溜まった塊状灰を排出させる際には、石炭焚きボイラの運用を停止させなくてはならないという問題を有しており、この問題を解決することが従来の課題となっていた。
【0008】
本発明は、上記した従来の課題に着目してなされたもので、脱硝触媒の目詰まりの原因となる大粒の塊状灰を確実に捕集することができると共に、捕集した塊状灰を燃焼器の運用を停止させることなく排出することが可能な排煙脱硝装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1に係る発明は、石炭などの化石燃料をボイラなどの燃焼器で燃焼させる際に該燃焼器から排出される排ガス中に含まれる窒素酸化物を除去する排煙脱硝装置であって、窒素酸化物を除去する脱硝処理を行う脱硝触媒と、前記脱硝触媒の排ガス流れ上流側に配置されて前記排ガスを流しつつ該排ガスに乗って運ばれる塊状灰を接触させて少なくとも1箇所に集めるべく形成された捕捉金網と、前記捕捉金網の前記塊状灰が集まる部位に位置して前記排ガスの流れを停滞させることで前記塊状灰の勢いを止めて自重落下させるガイド体を具備した塊状灰捕捉機構を備え、前記塊状灰捕捉機構の前記ガイド体の下方には、該ガイド体で捕えられて自重落下する前記塊状灰を溜めると共に、溜めた前記塊状灰を前記燃焼器の稼働中に前記排ガス系統外に排出可能な排出機構が備えられている構成としたことを特徴としており、この排煙脱硝装置の構成を前述した従来の課題を解決するための手段としている。
【0010】
また、本発明の請求項2に係る排煙脱硝装置において、前記排出機構は、前記塊状灰捕捉機構の前記ガイド体で捕えられて自重落下して溜まった前記塊状灰の排出口を有する灰溜め部と、前記塊状灰捕捉機構及び前記灰溜め部の間に位置して双方の流通を遮断開放する開閉弁を具備している構成としている。
【0011】
本発明に係る排煙脱硝装置において、脱硝触媒としては、ハニカム状に形成されたものを使用することができるが、他の方式の触媒を使用することができるのは言うまでもない。
【0012】
本発明に係る排煙脱硝装置では、石炭などの化石燃料をボイラなどの燃焼器で燃焼させる際に生じる排ガスが、脱硝触媒を通過する過程において、この排煙脱硝装置の入口で注入されるNH3と排ガス中に含まれる窒素酸化物(NOX)との脱硝反応を進行させることで窒素酸化物を除去する。
【0013】
この間、排ガスに乗って運ばれる塊状灰は、脱硝触媒の上流側に位置している塊状灰捕捉機構の捕捉金網に接触して少なくとも1箇所に集められ、この少なくとも1箇所に集められた塊状灰は、排ガスの流れをせき止めているガイド体により勢いが止められて自重落下し、溜まった塊状灰は、排出機構により排ガスの系統外に排出されることとなる。
【0014】
この際、排ガスに乗って運ばれる塊状灰は、塊状灰捕捉機構の捕捉金網に接触することで少なくとも1箇所に集められるので、捕捉金網に正面から衝突する場合と比べて摩耗の度合いが少なくなる。また、少なくとも1箇所に集められた塊状灰は、排ガスの流れをせき止めているガイド体によりその勢いが止められて自重落下するので、塊状灰捕捉機構のガイド体に塊状灰が残存するといった事態が生じることが回避されることとなる。
【0015】
また、排出機構では、塊状灰の排出を燃焼器の稼働中に行うことができるので、プラントの運用上有利となる。そして、この排出機構として、ガイド体で捕えられて自重落下して溜まった塊状灰の排出口を有する灰溜め部と、塊状灰捕捉機構及び灰溜め部の間に位置して双方の流通を遮断開放する開閉弁を具備している構成を採用すると、構造の複雑化を回避しつつ、燃焼器を稼働させたままの塊状灰の排出を行い得ることとなる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る排煙脱硝装置では、脱硝触媒の目詰まりの原因となる大粒の塊状灰を確実に捕集することができると共に、捕集した塊状灰を燃焼器の運用を停止させることなく排出することが可能であるという非常に優れた効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施例による排煙脱硝装置を含む排ガス処理システムを示す概略構成説明図である。
図2図1における排煙脱硝装置の拡大断面説明図である。
図3図2に示した排煙脱硝装置における塊状灰捕捉機構の正面説明図(a)及び横断面説明図(b)である。
図4図2に示した排煙脱硝装置における塊状灰捕捉機構及び排出機構の拡大断面説明図である。
図5】本発明の他の実施例による排煙脱硝装置における塊状灰捕捉機構の横断面説明図(a)及びさらに他の実施例による排煙脱硝装置における塊状灰捕捉機構の横断面説明図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1図4は、本発明の一実施例による排煙脱硝装置を示している。
【0019】
図1に示すように、この排煙脱硝装置10は、石炭焚きボイラ(燃焼器)Bの節炭部Baに煙道1を介して接続しており、この煙道1には、排ガスにアンモニアを注入することでNOXを還元して窒素と水に変換する図示しないアンモニア注入ノズルが配置されている。一方、排煙脱硝装置10から煙突Pに至るまでの排ガス処理煙道2の下流側には、エアヒータ3、集塵装置4、誘引ファン5、熱交換器6、脱硫部7及び押込みファン8が順次配置されている。
【0020】
エアヒータ3は、石炭焚きボイラ用押込みファン9により導入される外部空気を排煙脱硝装置10から排出される排ガスの熱で暖めて石炭焚きボイラBに送り込み、熱交換器6は、誘引ファン5により導かれる集塵装置4通過後の排ガスと押込みファン8により導入される脱硫部7通過後の排ガスとの熱交換を行うものとなっている。
【0021】
この排煙脱硝装置10は、図2に示すように、通過する排ガスとの接触面積が大きくなるように形成した脱硝触媒12を具備しており、このような脱硝触媒12は、煙道1から導入される排ガスGが上から下に向けて流れるダクト11の内部において、排ガスGの流路を横断するようにして複数段(この実施例では3段)設置されている。
【0022】
また、この排煙脱硝装置10は、これらの脱硝触媒12の上流側において排ガスGの流れに対向して配置されて、この排ガスGに乗って運ばれる塊状灰を捕捉する塊状灰捕捉機構20と、この塊状灰捕捉機構20で捕捉された塊状灰を溜めて排ガス系統外に排出する排出機構30を備えている。
【0023】
塊状灰捕捉機構20は、図3にも示すように、煙道1の斜め部分を覆うようにして配置される捕捉金網21を具備している。この捕捉金網21は、排ガスGを流しつつ塊状灰Dを接触させて複数箇所(この実施例では5箇所)に集めるべくつづら折り状に形成されており、折れ線が縦になるようにして煙道1に嵌め込まれている。
【0024】
この場合、捕捉金網21の排ガスGの流れに対して下流側に位置する谷折れの部位、すなわち、捕捉金網21の塊状灰Dが集まる部位には、図3の拡大円内にも示すように、排ガスGの流れをせき止める断面V字形状を成すガイド体22がそれぞれ設置してあり、捕捉金網21で捕捉されて各ガイド体22の近傍に集められた塊状灰Dは、排ガスGの流れが停滞することで勢いが止められて自重落下するようになっている。
【0025】
一方、排出機構30は、図4にも示すように、塊状灰捕捉機構20の複数のガイド体22の各下方に位置する筒体31と、この筒体31の下方に位置してガイド体22で捕えられて自重落下して溜まった塊状灰Dの排出口32aを有する灰溜め部32と、塊状灰捕捉機構20側の筒体31及び灰溜め部32の間に位置して双方の流通を遮断開放する開閉弁33を具備している。
【0026】
この排出機構30では、灰溜め部32に塊状灰Dが溜まった時点において、開閉弁33により筒体31及び灰溜め部32の間の流通を遮断したうえで、排出口32aに図示しない吸引装置を接続して塊状灰Dを排出するようにしている、すなわち、石炭焚きボイラBを稼働させたまま塊状灰Dを排ガスGの系統外に排出することができるようになっている。
【0027】
この実施例に係る排煙脱硝装置10では、石炭を石炭焚きボイラBで燃焼させる際に生じる排ガスGが脱硝触媒12を通過する過程において、この排煙脱硝装置10の入口で注入されるNH3と排ガス中に含まれる窒素酸化物(NOX)との脱硝反応を進行させることで窒素酸化物を除去する。
【0028】
この間、排ガスGに乗って運ばれる塊状灰Dは、脱硝触媒12の上流側に位置している塊状灰捕捉機構20の捕捉金網21に接触して複数箇所に集められ、この複数箇所に集められた塊状灰Dは、排ガスGの流れをせき止めている各ガイド体22により勢いが止められて自重落下する。
【0029】
この際、排ガスGに乗って運ばれる塊状灰Dは、塊状灰捕捉機構20の捕捉金網21に接触することで複数箇所に集められるので、捕捉金網21に正面から衝突する場合と比べて摩耗の度合いが少なくなる。
【0030】
また、複数箇所に集められた塊状灰Dは、排ガスGの流れをせき止めているガイド体22によりその勢いが止められて自重落下するので、塊状灰捕捉機構20のガイド体22に塊状灰Dが残存するといった事態が生じることが回避されることとなる。
【0031】
そして、排出機構30の灰溜め部32に塊状灰Dが溜まった時点において、排出機構30の開閉弁33を操作して筒体31及び灰溜め部32の間の流通を遮断したうえで、排出口32aに図示しない吸引装置を接続すれば、溜まった塊状灰Dが排ガスGの系統外に排出されることとなる。
【0032】
このように、排出機構30では、構造の複雑化を回避しつつ、塊状灰Dの排出を石炭焚きボイラBの稼働中に行うことができるので、プラントの運用上有利となる。
【0033】
本発明に係る排煙脱硝装置の構成は、上記した実施例に限定されるものではなく、例えば、図5(a)に示すように、湾曲部分が連続するように捕捉金網21Aを形成すると共に湾曲部分の各中央にガイド体22Aを配置するようにした塊状灰捕捉機構20Aを採用したり、図5(b)に示すように、V字形状を成すように捕捉金網21Bを形成すると共に中央の折曲部分にガイド体22Bを配置するようにした塊状灰捕捉機構20Bを採用したりしてもよい。
【符号の説明】
【0034】
10 排煙脱硝装置
12 脱硝触媒
20 塊状灰捕捉機構
21 捕捉金網
22 ガイド体
30 排出機構
32 灰溜め部
32a 排出口
33 開閉弁
B 石炭焚きボイラ(燃焼器)
D 塊状灰
G 排ガス
図1
図2
図3
図4
図5