(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6195112
(24)【登録日】2017年8月25日
(45)【発行日】2017年9月13日
(54)【発明の名称】複合材料製部品、とりわけ大規模な風車プロペラに対する機械的補強材
(51)【国際特許分類】
F03D 1/06 20060101AFI20170904BHJP
【FI】
F03D1/06 A
【請求項の数】7
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-557164(P2013-557164)
(86)(22)【出願日】2012年3月9日
(65)【公表番号】特表2014-510866(P2014-510866A)
(43)【公表日】2014年5月1日
(86)【国際出願番号】FR2012050497
(87)【国際公開番号】WO2012123667
(87)【国際公開日】20120920
【審査請求日】2015年2月25日
(31)【優先権主張番号】1152013
(32)【優先日】2011年3月11日
(33)【優先権主張国】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506427783
【氏名又は名称】エプシロン コンポジット
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】ルル,ステファン
(72)【発明者】
【氏名】フェラー,デニス
(72)【発明者】
【氏名】ポルトレス, ジョセ
【審査官】
新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】
特表2008−528875(JP,A)
【文献】
特開2007−092716(JP,A)
【文献】
特開2002−357176(JP,A)
【文献】
特開2011−38520(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0277053(US,A1)
【文献】
国際公開第2010/065928(WO,A1)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合材料製素子(10)、とりわけ風車プロペラ用の繊維および樹脂ベースの補強材(26)であって、積層された、断面が一定の変形可能な少なくとも2つの引き抜き材部品(30)から構成されることを特徴とする、補強材(26)であって、
前記少なくとも2つの引き抜き材部品(30)は、前記補強材(26)を配置する領域の横断面が湾曲していることを特徴とし、
前記少なくとも2つの引き抜き材部品(30)は、それぞれ、幅に対して厚みが薄く、長さが長い薄片であり、それぞれ異なる寸法である、補強材であって、
前記少なくとも2つの引き抜き材部品(30)はそれぞれ、前記少なくとも2つの引き抜き材部品(30)を受ける前記素子(10)のプロファイルを有し、前記補強材は、前記少なくとも2つの引き抜き材部品(30)で構成され、前記素子のプロファイルに適応されることを特徴とする、補強材。
【請求項2】
積層された前記少なくとも2つの引き抜き材部品(30)は、互いに結合していることを特徴とする、請求項1に記載の複合材料製素子用補強材。
【請求項3】
前記少なくとも2つの引き抜き材部品(30)はそれぞれ、単一方向を向いた繊維を含むことを特徴とする、請求項1又は2のうちいずれか一項に記載の複合材料製素子用補強材。
【請求項4】
風車プロペラの縦通材を構成することを特徴とする、請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の複合材料製素子用補強材。
【請求項5】
前記繊維は、炭素繊維であることを特徴とする、請求項1〜4のうちいずれか一項に記載の複合材料製素子用補強材。
【請求項6】
端部は、湾曲したプロファイルを有することを特徴とする、請求項1〜5のうちいずれか一項に記載の複合材料製素子用補強材。
【請求項7】
前記補強材(26)は、屈曲に耐えるために長手方向軸に沿って配置されること、および風車プロペラの下面と上面とで強度が異なることを特徴とする、請求項1〜6のうちいずれか一項に記載の補強材(26)を備える風車プロペラ(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合材料製部品、とりわけ大規模な風車プロペラに対する機械的補強材に関する。
【0002】
陸上領域用に地面に固定されるか、または沖合領域用に海上基地に固定されるマストで構成された風力発電機が知られ、このマストまたは柱塔は、発電機を支え、発電機の軸は、風で駆動されるように適応したプロファイルを有するプロペラを保持している。
【0003】
風車は、無害で無限に再生可能な電力を産生する手段である。
【0004】
しかしながら、環境保護政策に有利であるものの、このような電力産生手段には、限られた生産性に関連する本質的な欠点が備わっている。
【0005】
実際、寸法は、プロペラおよびプロペラの機械耐性により受ける機械的制約によって制限され、これによって風速に関連する動作範囲は、これらのパラメータから導き出されるため、比較的制限されたものになる。
【0006】
したがって、プロペラの寸法を縮小して許容される速度を相当大きくするか、プロペラの寸法を大きくして動作範囲を縮小するかのいずれかになることが確認されている。後者の場合、風速が弱すぎると、慣性があるためにプロペラは駆動されず、風速が強すぎると、プロペラが許容できる機械耐性限度を上回る応力が起こる。
【0007】
よって、本研究は、本質的に関連しているこれらの全パラメータを増大させることのできる手段であって、プロペラの機械耐性を増大させることですべてを克服する手段に関するものである。
【0008】
問題は、複合材料製のプロペラの壁厚を単純に大きくして抵抗を増大させると、プロペラも重くなって慣性が増大してしまうという点であり、これによってコストが増大する上に、寿命が尽きた際には再利用すべき材料がさらに多くなるため、納得のいくものではない。
【0009】
同じように、これによって発電機を支えているマストまたは柱塔を強化する必要性が生じる。
【0010】
さらに、プロペラに求められる機械的な強化は、特に屈曲耐性の局面にあるため、プロペラの壁厚を大きくしても不完全な仕上がりになるだけである。
【0011】
材料を選択する際は、炭素繊維またはその他のアラミド系繊維を選択する。というのも、このような繊維には固有の強い機械耐性があるためだが、これは、求める結果に到達するのに十分なものではない。
【0012】
そのため、半プロペラの製造時に縦通材を直接組み込む方法を用いることを考案した。
【0013】
このような縦通材は、組み入れた一体部品から作製されるか、またはプリプレグを用いて作製され、これらは製造過程で取り付けられる。
【0014】
炭素繊維およびプリプレグを用いて得られる圧縮応力の範囲は、それぞれ600から800MPaおよび900から1100MPaである。
【0015】
引抜成形した形材によって、約1600MPaという遙かに大きな抵抗を達成できることがわかっている。
【0016】
一方で、引抜成形した形材は、製造後の寸法が一定であり、断面も一定である。
【0017】
本発明の目的は、とりわけ風車プロペラにおいて補強材として作用するこのような引抜成形した形材を利用することである。
【0018】
このような形材は、特に産業に適した方法で生産でき、製造の質が確実である故に均質な性能に制御され、均質な性能が制御可能で再生可能であるという利点を有する。
【0019】
次に、本発明の範囲を一般化できるとともにあらゆる可能性を示すことのできる2つの実施形態に沿って、本発明による補強材を詳細に説明する。
【0020】
次に、本発明を、以下の図面を参照して詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】本発明による補強材を有する風車プロペラの図であり、上面および裏面における設置場所の概略図、ならびに横断面の拡大詳細図である。
【
図3】本発明による補強材の斜視図であり、風車プロペラの製造時に組み込まれる準備のできた状態の図である。
【
図4】端部の応力を軽減できる機械加工を施す前と後の図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、
図1、
図2または
図3を区別せずに参照して本発明を説明していく。
【0023】
図1には、一般にプロペラを3枚有する風車のロータのプロペラ10を、風車自体は図示せずに概略的に示した。
【0024】
この種のプロペラは、半分の下プロペラ12と半分の上プロペラ14の2つを成形した後、この2つをほぼ中央の接合面に沿って組み立てることで作製される。
【0025】
風車プロペラのプロファイルは、飛行機の翼のような羽根タイプのもので、前縁16、後縁18、下面20および上面22を有する。
【0026】
プロペラ10は、プロペラの足部24を備え、この足部は、一般にボルト締めによってフランジを介して前記ロータに固定されるようになっている。
【0027】
各々の半プロペラの胴部は、繊維マットまたは樹脂マトリクスに含浸した組織で被覆する公知の方法で製造される。疲労の激しい部分は、材料の厚みを大きくする。
【0028】
実際、複雑な形状およびこの寸法によって、耐性が強く軽量性に優れているという利点を持つ蜂の巣タイプの巣房状の材料を利用することが困難になっている。
【0029】
本発明は、例えば製造時に、後験的に、縦通材の役割を果たす少なくとも1つの補強材26を、プロペラの各側に、つまり各半プロペラの中央に、
図2に示したようにほぼ長手軸に沿って追加することを提供する。
【0030】
このような補強材は、プロペラによって受ける応力に適応したプロファイルを備えている必要があるため、厚みが可変的である必要がある。
【0031】
このほか、高性能の複合材料製部品を製造する技術が存在し、この部品は一般に、1600MPaを超える圧縮耐性に発展させることができる炭素繊維で作製されることがわかっている。その技術とは、引抜成形である。
【0032】
この技術によって、断面が一定で、プロファイルが単純で、とりわけ断面が円形、正方形、矩形である部品を作製することができる。
【0033】
製品の質、再生可能性および性能は、卓越している。
【0034】
したがって、引抜成形した断面が矩形の形材28を連続的に作製することが可能である。例を挙げると、このような形材は、幅が厚みよりも遙かに大きく、厚み1から2mmに対して幅は500mmである。
【0035】
この形材は、必要な長さに機械的に切断して、部品30、この場合は薄片形状の部品30を構成することによって作り出される。
【0036】
そのため、本発明による補強材26を事前に製造するか、プロペラの製造場所で、その場で補強材26を製造するかという2つの選択肢がある。
【0037】
この2つのどちらの場合でも、作製工程の一連の流れは同じである。実際、このようにして作製した少なくとも2つの薄片形状部品30を積み重ね、積層接着材タイプの構造を得るように接着によって一体化して、補強材26を形成することが望ましい。
【0038】
有利には、薄片の長さは可変的であり、これによって、機械耐性を増大させる必要のある領域に応じて補強材の厚みを調整することができ、求める段階性を得ることができる。
【0039】
引き続き非限定的に挙げた例において、厚みは、最も強化された部分では、数十枚の薄片を積層して40から50mmの厚みを生み出すことができる。
【0040】
このようにして、特に風車プロペラの屈曲耐性およびこの耐性を分散させるプロファイルを制御する。
【0041】
さらに、応力は、下面と上面とでは異なるため、これに対応する補強材も異なる。
【0042】
最終的なプロペラの重量は、本発明による抵抗係数の高いこの補強材を組み入れることで軽減され、これによって性能が向上するとともに、動作範囲がさらに広くなる。
【0043】
本発明による補強材は、大きな応力がなくとも、単一で変形可能な薄片で構成されることにも注意されたい。これによって、プロペラの曲線状のプロファイルに沿うようにそれぞれの薄片を形作ることが可能になる。そのため、薄片を形作って薄片同士をとりわけ接着により結合すると、仕上がる補強材は、硬直性が高く、プロペラに沿って変形可能な形態になる。
【0044】
厚みが極めて薄い形材は、ボビンに巻いて配送されることができ、これによってプロペラの産業的な製造が大幅に容易になることが確認されている。実際、引抜成形された形材は、ボビンに巻かれ、極めて長い状態で配送され、数十枚の薄片を積層してアセンブリを作製するためには、これを切断するだけでよい。
【0045】
図4は、薄片を積層することによるこのような部品の作製の改良例を示す。端部は、厚みをずらして積層し、階段のステップを形成している状態である。外力が集中する事態に対抗するため、また、剥離のリスクを抑制するため、
図4の右に示すように曲線状に加工して階段をなくす処理をすることができる。
【0046】
当然ながら、変形例では、本発明の範囲を逸脱しない限り、引抜成形によって得られる形材の断面は、三角形であってもよく、この三角形のロッドを横に並置してよい。
【0047】
そのため、このようなロッドは、例えば、引抜成形された断面が矩形の薄片の2つの表皮面の間に直接挿入されるかサンドイッチ状に設置されて、適応した補強材を形成する。
【0048】
薄片の断面は矩形だが、前記補強材を配置する領域内のプロペラの形状を考慮するために、横断面を湾曲させてもよい。
【0049】
さらに、引抜成形が可能になるほか、繊維は、とりわけ長手方向の剛性を増大させるために単一方向を向いた繊維、ならびにねじれおよび/または屈曲が合わさった応力を負担できるように向けた繊維を用いて適切に配置される。
【0050】
使用する繊維の性質は、どちらかといえば高性能の技術による炭素製のものだが、本発明による補強材は、ガラス繊維を用いても用途が見出される。
【0051】
同じく、採用した例では、同一幅の薄片を想定しているが、例えば長さおよび幅が徐々に短くなり、かつ/または厚みが可変的な薄片を積層することを想定することも可能である。
【0052】
同じように、必要な幅が、押出成形可能な幅を上回っていれば、それぞれが薄片の積層であるアセンブリを複数横に並置してもよい。