(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6195145
(24)【登録日】2017年8月25日
(45)【発行日】2017年9月13日
(54)【発明の名称】使用済み紙おむつの再資源化方法、土壌改良材の生産方法、及び、使用済み紙おむつの再資源化システム
(51)【国際特許分類】
B09B 5/00 20060101AFI20170904BHJP
B09B 3/00 20060101ALI20170904BHJP
A61L 2/18 20060101ALI20170904BHJP
A61L 11/00 20060101ALI20170904BHJP
A61F 13/49 20060101ALI20170904BHJP
A61F 13/15 20060101ALI20170904BHJP
C09K 17/32 20060101ALI20170904BHJP
D21C 5/02 20060101ALI20170904BHJP
【FI】
B09B5/00 ZZAB
B09B3/00 303F
B09B3/00 304P
A61L2/18
A61L11/00
A61F13/49
A61F13/15
C09K17/32
D21C5/02
【請求項の数】11
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-21710(P2013-21710)
(22)【出願日】2013年2月6日
(65)【公開番号】特開2014-151254(P2014-151254A)
(43)【公開日】2014年8月25日
【審査請求日】2015年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】598015084
【氏名又は名称】学校法人福岡大学
(73)【特許権者】
【識別番号】591095823
【氏名又は名称】株式会社九電工
(73)【特許権者】
【識別番号】390033400
【氏名又は名称】株式会社環境開発
(73)【特許権者】
【識別番号】506337024
【氏名又は名称】株式会社ラブフォレストプランニングインターナショナル
(73)【特許権者】
【識別番号】308030570
【氏名又は名称】株式会社エム・アイ・エス
(73)【特許権者】
【識別番号】598085674
【氏名又は名称】株式会社井上政商店
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】松藤 康司
(72)【発明者】
【氏名】小笹 慶二
(72)【発明者】
【氏名】西嶋 太郎
(72)【発明者】
【氏名】中園 輝幸
(72)【発明者】
【氏名】中村 康行
(72)【発明者】
【氏名】井上 政義
【審査官】
磯貝 香苗
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−73198(JP,A)
【文献】
特開2006−289154(JP,A)
【文献】
特開2009−133041(JP,A)
【文献】
特開2005−118649(JP,A)
【文献】
特開2006−082013(JP,A)
【文献】
特開2003−190928(JP,A)
【文献】
特開2003−089116(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 5/00
B09B 3/00
A61F 13/15
A61F 13/49
A61L 2/18
A61L 11/00
D21C 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
裁断された使用済み紙おむつとポリマー分解剤を含む洗浄水とをポリマー分解槽で攪拌する攪拌工程と、
前記ポリマー分解槽内の攪拌物を、前記ポリマー分解剤によって脱水した吸水性ポリマーとパルプ成分との混合物、紙おむつの包装材、及び、汚水、の3つに分離する分離工程と、
前記使用済み紙おむつを汚度に応じて分別する分別工程と、
前記分別工程において一定以上の高汚度に分別された使用済み紙おむつを、前記攪拌工程を経ずに焼却処分する焼却工程と、
を備え、
前記攪拌工程は、前記汚度のレベル別に行われることを特徴とする使用済み紙おむつの再資源化方法。
【請求項2】
前記攪拌工程においては、前記ポリマー分解剤を含む水として中水を用いる
請求項1に記載の使用済み紙おむつの再資源化方法。
【請求項3】
前記攪拌工程においては、前記ポリマー分解剤を含む水として浸出水を用いる
請求項1又は請求項2に記載の使用済み紙おむつの再資源化方法。
【請求項4】
前記洗浄水における前記ポリマー分解剤の濃度が所定値となるように調整する濃度調整工程を備える
請求項2又は請求項3に記載の使用済み紙おむつの再資源化方法。
【請求項5】
前記裁断された紙おむつは、前記攪拌工程の前処理として実行される裁断工程によって、使用済み紙おむつを裁断するとともに裁断された使用済み紙おむつからゲル化していない吸水性ポリマーを脱離させたものである
請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の使用済み紙おむつの再資源化方法。
【請求項6】
前記攪拌工程においては、前記ポリマー分解槽に滅菌・殺菌剤が添加されており、
当該滅菌・殺菌剤は、使用済み紙おむつの汚度が高いほど多く添加される
を備える請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の使用済み紙おむつの再資源化方法。
【請求項7】
前記攪拌工程においては、回転ブレードにて攪拌を行い、前記ポリマー分解剤によって脱水した吸水性ポリマーの粒径が1〜2mmになるまで攪拌する
を備える請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の使用済み紙おむつの再資源化方法。
【請求項8】
前記分離工程にて分離された前記汚水を非高度処理型浄化槽にて浄化する浄化工程を備える
を備える請求項1〜請求項7の何れか1項に記載の使用済み紙おむつの再資源化方法。
【請求項9】
請求項1〜請求項8の何れか1項に記載の使用済み紙おむつの再資源化方法により分離された、前記ポリマー分解剤によって脱水した吸水性ポリマーとパルプ成分との混合物、を含有させた土壌改良材の生産方法。
【請求項10】
汚度に応じて使用済み紙おむつを分別するリサイクルボックスと、
裁断された使用済み紙おむつとポリマー分解剤を含む洗浄水とをポリマー分解槽で攪拌し、前記ポリマー分解槽内の攪拌物を、前記ポリマー分解剤によって脱水した吸水性ポリマーとパルプ成分と汚水との第1混合物、及び、ビニールと不織布の第2混合物、に分離して排出する攪拌装置と、
一定以上の高汚度に分別された使用済み紙おむつを前記攪拌装置を経ずに焼却処分する焼却施設と、
前記第1混合物の脱水を行う第1脱水装置と、
前記第2混合物の脱水を行う第2脱水装置と、
前記第1混合物と前記第2混合物の少なくとも一方から出る汚水を浄化する非高度処理型浄化槽と、
を備え、
前記撹拌装置は、分別された紙おむつの汚度に応じて、少なくともポリマー分解剤の量、回転プレートの回転速度、稼働時間の何れかを調整することを特徴とする使用済み紙おむつの再資源化システム。
【請求項11】
本使用済み紙おむつの再資源化システムに係る施設は、中水又は浸出水の水処理施設に並設されており、前記水処理施設にて処理した中水又は浸出水を前記洗浄水として用いることを特徴とする請求項10に記載の使用済み紙おむつの再資源化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済み紙おむつの再資源化方法、土壌改良材の生産方法、及び、使用済み紙おむつの再資源化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
2010年における65歳以上の高齢者数は2980万人であり、総人口の約23%を占めている。また、医療技術の高度化や生活環境の変化等に伴い2040年には高齢者が総人口に占める割合が36%に達することが予想されている。
【0003】
そして、2010年時点で高齢者が使用する大人用の紙おむつの生産量は54億枚であるが、高齢者の増加に伴って数年以内には乳幼児用の紙おむつの使用料を上回ることが予想されている。一方で、紙おむつの主原料であるパルプ剤は、その大部分を輸入に依存している中で、使用済み紙おむつは焼却処理されている。
【0004】
このような状況の中で、紙おむつの脱・焼却処理と紙おむつの主成分であるパルプの再資源化を目的とした研究が進められ(例えば特許文献1参照)、その研究成果を基に、2005年に紙おむつの再資源化処理システムが建設され、稼働している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開特開2000−84533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、現時点における紙おむつの再資源化施設は、前記施設が唯一であり、普及していないのが現状である。その原因として様々な要因が考えられるが、パルプ回収施設運転費、資源化施設で回収されたパルプの需要、処理に伴い発生する汚水の処理、等の課題が考えられる。
【0007】
本発明は、上述した課題に鑑みて成されたものであり、現状の使用済み紙おむつの資源化システムにおける問題点を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様の1つは、裁断された使用済み紙おむつとポリマー分解剤を含む洗浄水とをポリマー分解槽で攪拌する第1工程と、前記ポリマー分解槽内の攪拌物を、前記ポリマー分解剤によって脱水した吸水性ポリマーとパルプ成分との混合物、紙おむつの包装材、及び、汚水、の3つに分離する第2工程と、含んで構成されることを特徴とする使用済み紙おむつの再資源化方法である。
【0009】
また、本発明の態様の他の1つは、裁断された使用済み紙おむつとポリマー分解剤を含む水とをポリマー分解槽で攪拌し、前記ポリマー分解槽内の攪拌物を、前記ポリマー分解剤によって脱水した吸水性ポリマーとパルプ成分と汚水との第1混合物、及び、ビニールと不織布の第2混合物、に分離して排出する攪拌装置と、前記第1混合物の脱水を行う第1脱水装置と、前記第2混合物の脱水を行う第2脱水装置と、前記第1混合物と前記第2混合物の少なくとも一方から出る汚水を浄化する非高度処理型浄化装置と、備えることを特徴とする使用済み紙おむつの再資源化システムである。
【0010】
上述した使用済み紙おむつの再資源化方法は、他の方法の一環として実施されたりする等の各種の態様を含む。また、上述した使用済み紙おむつの再資源化システムは、全体として1つの装置(紙おむつの再資源化装置)として実現されたりする等の各種の態様を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、現状の使用済み紙おむつの資源化システムにおける問題点の少なくとも一部を解決するができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1の実施形態に係る使用済み紙おむつの再資源化方法を説明するフローチャートである。
【
図2】第1の実施形態に係る使用済み紙おむつの再資源化システムの一例を示した図である。
【
図4】第2の実施形態に係る使用済み紙おむつの再資源化方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、下記の順序に従って本発明を説明する。
(1)第1の実施形態:
(2)第2の実施形態:
(3)第3の実施形態:
(4)まとめ:
【0014】
(1)第1の実施形態:
図1は、第1の実施形態に係る使用済み紙おむつの再資源化方法の流れを説明するフローチャートであり、
図2は、第1の実施形態に係る使用済み紙おむつの再資源化システムSの一例を示した図である。
【0015】
図1に示す再資源化方法は、回収工程S10、裁断工程S20、攪拌工程S30、及び、分離工程S40を含んで構成される。
【0016】
回収工程S10においては、使用済み紙おむつTを回収して、搬入トラック等の搬送手段で、使用済み紙おむつTの再資源化に係る装置(
図2に示す、裁断機10、ポリマー分解槽20、第1脱水装置30、第2脱水装置40、浄化槽50、等)が設置されている施設に搬入する。
【0017】
裁断工程S20においては、裁断機10を用いて、使用済み紙おむつTを、例えば10cm四方程度の小片に裁断する。これにより、使用済み紙おむつTは、高分子吸水ポリマーを包容する外装材や内部表面材等が裁断され、内部に収容されている高分子吸水ポリマーが露出又は溢れ出る。
【0018】
図3は、紙おむつDの内部を示す図である。同図は、紙おむつD使用者に当接する部位付近を短手方向に破断して示した断面図である。なお、同図に示す紙おむつDの構成は一例である。
【0019】
同図において、紙おむつDは、外装材D1、内部表面材D2、吸収紙D3、綿状パルプD4、及び、高分子吸水ポリマーD5、を備えている。
【0020】
外装材D1や内部表面材D2は、例えば、ポリエチレンや不織布等といった非生分解性材料である。高分子吸水ポリマーD5は、公知の各種の物及び今後開発される各種の吸水性ポリマーを用いることができる。本実施形態では、外装材D1と内部表面材D2は非水溶性であり、以下ではまとめて包装材と呼ぶこともある。
【0021】
高分子吸水ポリマーD5は、吸水前は乾燥した、例えば顆粒状であるが、吸水後はふやけてゲル化する。そして、使用済み紙おむつTは、その使用レベルに応じて吸水度合いが異なっており、全ての高分子吸水ポリマーD5がゲル化したもの、高分子吸水ポリマーD5の一部がゲル化したもの、高分子吸水ポリマーD5が全くゲル化していないものがある。
【0022】
すなわち、使用済み紙おむつTは、汚物(大便や小便等)による汚損後に廃棄されるものもあるが、定期交換等、汚損前に廃棄されるものもあるため、前者は高分子吸水ポリマーD5の少なくとも一部がゲル化するが、後者は高分子吸水ポリマーD5がゲル化していない。このため、使用済み紙おむつTを裁断すると、ゲル化前の高分子吸水ポリマーD5が溢れ出したり流出したりする。
【0023】
そこで、本実施形態においては、裁断後の使用済み紙おむつTに、例えば網状のメッシュ材の上を転動させることにより振動を与えて、ゲル化前の高分子吸水ポリマーD5を使用済み紙おむつTからふるい落として脱離させる。このように、攪拌工程S30の前処理として裁断工程S20を行うことにより、攪拌工程S30で攪拌機に投入される高分子吸水ポリマーD5の量を減少できる。
【0024】
その結果、攪拌機の負荷が軽減され、使用水量や後述する高分子吸水ポリマーD5を脱水反応用の分離助剤の量も少なくて済み、オペレーションメンテナンス費を低減できる。また、ポリマー脱水反応に要する時間が減少するため、攪拌機の電気代も節約できる。また、使用する洗浄水の量も削減することが出来る。
【0025】
[攪拌工程]
攪拌工程S30においては、攪拌装置としてのポリマー分解槽20(
図2ではパルパー)に、洗浄水やポリマー分解剤としての分離助剤、滅菌・殺菌剤とともに、裁断された使用済み紙おむつTを投入して攪拌する。これにより、使用済み紙おむつTが滅菌・殺菌され、汚物が洗い落とされる。
【0026】
また、ゲル化していた高分子吸水ポリマーD5が脱水されて粒径が2mm以下の砂粒状になる。このように脱水されて砂粒状になった高分子吸水ポリマーD5は水中で沈降しやすく、後述の分離工程S40において、ポリマー分解槽20の下部に設けられた排出口からパルプ等と共に排出されやすくなる。
【0027】
分離助剤としては、水溶して多価金属イオンのCa,Na,Mg等を発生する物質を使用可能であり、特に低コストなCaCl
2が好ましい。以下では、分離助剤としてCaCl
2を用いる場合を例に取り、説明を行う。
【0028】
攪拌工程S30において用いる洗浄水は、Caイオンを所定量含有するようにセンサー等を用いてCaイオンの濃度を調整する(濃度調整工程)。洗浄水は、Caイオンの含有量を予め調整してから注水してもよいし、ポリマー分解槽20に注水しつつCaイオンの含有量を調整してもよいし、注水後にCaイオンの含有量を調整してもよい。Caイオン濃度は0.1〜0.5%であればよく、特に0.3〜0.5%とすることが好ましい。
【0029】
攪拌工程S30において用いる洗浄水には、使用済み紙おむつTを洗浄可能な各種の水を使用することができるが、本実施形態では、再生水(中水)や浸出水等の高硬度水を用いるものとする。再生水や浸出水は少なくともCaイオンを含んでおり、特に浸出水はCaイオンを多く含んでいるためである。
【0030】
再生水は、下水や雨水などをろ過・滅菌(再生処理)した水であり、小便等に由来するCaイオンが溶存している。浸出水は、廃棄物処分場や埋立地において浸透した雨水等に処分された汚泥や廃棄物が分解して浸出する汚水であり、焼却ゴミのダイオキシンを除去するために添加されたCaに由来するCaイオンが溶存している。
【0031】
このため、再生水や浸出水を洗浄水として用いると、攪拌工程S30で新たに添加する分離助剤の量が少なくて済む。また、現在はCaを含んだまま再生水や浸出水を自然界に放流しているが、高分子吸水ポリマーD5の脱水にCaを消費する本実施形態では、再生水や浸出水を良質化して排水することができる。
【0032】
攪拌工程S30における攪拌は、高分子吸水ポリマーD5が分離助剤によって十分に脱水するまで行われる。また、高分子吸水ポリマーD5と分離助剤とが十分に反応すれば停止される。すなわち、高分子吸水ポリマーD5が砂粒状に細粒化し、細粒化した高分子吸水ポリマー15が攪拌用の回転ブレードで破砕される前の状態で停止する。これにより、脱水後の高分子吸水ポリマーD5は、粒径が1〜2mm程度に調整される。
【0033】
[分離工程]
分離工程S40においては、攪拌終了後のポリマー分解槽20の内容物(以下、攪拌物と記載する。)を、第1混合物と第2混合物とに分離する。第1混合物は、ポリマー分解剤によって脱水した吸水性ポリマーとパルプ成分と汚水との混合物である。第2混合物は、非水溶性の包装材(小片化した外装材D1と内部表面材D2の混合物)である。
【0034】
第1混合物は、ポリマー分解槽20の下部に設けられた排出口から排出される。排出口にはフィルタが設けられており、フィルタには、上述した脱水後の高分子吸水ポリマーD5が通過可能な程度の孔が複数形成されている。このため、排出口からは、第1混合物が排出され、第2混合物は排出されない。
【0035】
排出された第1混合物は、第1脱水装置30へ送られて脱水することにより、第3混合物としての固形分、及び、汚水に分離される。このように分離された第3混合物は、上質パルプ、低質パルプ、及び、脱水された高分子吸水ポリマーD5が含まれる。
【0036】
第3混合物は、大小便に含まれていた窒素やリンも含んでいるため、土壌改良材として緑農地に還元すると好適である。
【0037】
一方、第2混合物は、掻上げと越流の少なくとも一方の方式によりポリマー分解槽20から排出される。これにより、ビニールと不織布の第2混合物が、攪拌物から分離される。第2混合物は、第2脱水装置40へ送られて脱水することにより、第4混合物としての固形物と液分とに分離される。第4混合物は廃プラスチックであり、油化してRPF(固形燃料)としたり、サーマルリサイクルの原料としたりできる。なお、紙おむつTの外装材D1や内部表面材D2といった包装材を、生分解性材料で作成することも可能である。この場合、第4混合物も土壌改良材として用いることができる。
【0038】
第1脱水装置30や第2脱水装置40で分離された液分は、浄化槽50に送られる。浄化槽は、いわゆる家庭用の浄化槽であり、非高度処理型浄化槽とする。浄化には、微生物の働きで汚水の浄化に非高度処理型浄化槽を用いることで、再資源化に係るコストを低減することが出来る。浄化槽に貯まる汚泥は、第1固形分と同様、土壌改良材として緑農地に還元すると好適である。
【0039】
非高度処理型浄化槽は、高度処理型浄化槽に比べてコンパクトであり、高度処理型浄化槽よりも使用済み紙おむつの処理量が少なくても採算が取れる。このため、例えば、コミュニティ単位や介護施設等の施設単位で浄化槽50を設置可能であり、使用済み紙おむつTの再資源化を非常に簡単に行えるようになる。
【0040】
以上説明した第1の実施形態に係る使用済み紙おむつの再資源化方法(再資源化システム)によれば、従来の再資源化方法(再資源化システム)に比べて、使用する洗浄水の量を大幅に少なく、高分子吸水ポリマーの分離助剤の量も少なくて済む。また、初期コストが低く、工程数が少なく、実施しやすい。従って、焼却処分の代替手段として再資源化を採用しやすくなり、焼却に流れていた使用済み紙おむつが再資源化に回るようになり、焼却施設の傷みを防止するとともに焼却処理によって発生する温室効果ガス(GHGs)も削減でき、地球温暖化防止及び森林の保護にも寄与できる。
【0041】
(2)第2の実施形態:
次に、第2の実施形態に係る使用済み紙おむつの再資源化方法について説明する。本実施形態に係る使用済み紙おむつの再資源化方法は、使用済み紙おむつTの汚度に応じた分別を行い、当該分別結果に応じて以降の工程を最適化する点で上述した第1の実施形態と異なる。
【0042】
図4は、第2の実施形態に係る使用済み紙おむつの再資源化方法の一例を説明するフローチャートである。なお、同図において省略してある第1攪拌工程や第2攪拌工程より後の工程は、それぞれ第1の実施形態に係る使用済み紙おむつの再資源化方法の攪拌工程より後の工程と同様である。
【0043】
回収・分別工程S110においては、使用済み紙おむつの回収の前後又は同時に、使用済み紙おむつTの汚度に応じた分別を行う。例えば、
図4に示すように、使用済み紙おむつTを、高汚度の使用済み紙おむつT1、中汚度の使用済み紙おむつT2、低汚度の使用済み紙おむつT3、の3種類に分別する。
【0044】
一例を挙げると、使用済み紙おむつT1は大便(及び小便)が付着したもの、使用済み紙おむつT2は高分子吸水ポリマーD5が小便(水分)を吸収したもの、使用済み紙おむつT3は大便が付着しておらず、高分子吸水ポリマーD5が小便(水分)を吸収していないもの、等とする。
【0045】
また、分別を行うに当たって、例えば、分別数に応じた数の収容部を有するリサイクルボックスを使用済み紙おむつの出る施設に設置し、使用済み紙おむつを施設の従業員に予め分別して貰えばスムーズに分別可能になる。
【0046】
そして、汚度のレベル別にその後の工程を行い、その処理内容についても汚度のレベル別に適宜に調整する。
【0047】
例えば、高汚度の使用済み紙おむつT1については、洗浄等(裁断工程S20、攪拌工程S30、分離工程S40等)を行わずにそのまま焼却処分し(焼却工程)、中汚度の使用済み紙おむつT2については、上述した第1の実施形態と同様の裁断工程S20、攪拌工程S30、分離工程S40等を順次に行う。
【0048】
一方、低汚度の使用済み紙おむつT3については、第1の実施形態と同様の裁断工程S20を行う。このとき、使用済み紙おむつT3の高分子吸水ポリマーD5は水分を吸収していないため、ほとんど全ての高分子吸水ポリマーD5をふるい落として脱離すことができる。
【0049】
そして、その次に使用済み紙おむつT3について行う攪拌工程S130においては、ポリマー分解槽20に入れる洗浄水や分離助剤、その他の薬剤等の量を、使用済み紙おむつT2の場合に比べて少なくする。これにより、紙おむつの再資源化に使用する洗浄水、分離助剤、その他の薬剤の量を低減し、環境負荷を低減し、再資源化コストを抑制することができる。
【0050】
また、ポリマー分解槽20を攪拌する回転ブレードの回転速度や稼働時間も使用済み紙おむつの汚度に応じて調整してもよい。例えば、高分子吸水ポリマーD5が多い使用済み紙おむつT2の攪拌工程S30に比べて、高分子吸水ポリマーD5が少ない使用済み紙おむつT3の攪拌工程S130では、回転ブレードの回転速度や稼働時間を短縮する。これにより、消費電力の抑制により再資源化コストを抑制し、装置のメンテナンス費等も抑制できる。
【0051】
以上説明したように、本実施形態によれば、上述した第1の実施形態に比べて、より再資源化コストを抑制可能であり、焼却処分の代替手段として再資源化を採用しやすくなる。
【0052】
(3)第3の実施形態:
次に、第3の実施形態に係る使用済み紙おむつの再資源化システムについて説明する。本実施形態に係る使用済み紙おむつの再資源化システムは、その施設が、中水又は浸出水の水処理施設に並設されている点で、第1の実施形態や第2の実施形態と異なる。
【0053】
本実施形態に係る使用済み紙おむつの再資源化システムによれば、中水や浸出水の供給を受けやすいことはもちろん、配管が短くて済む。中水や浸出水はCaを含むことから配管が詰まりやすいため、配管が短いとメンテナンスが容易である。
【0054】
また、特に埋立地は、焼却材ゴミや重金属含むので埋め立て完了後も浸出水の水処理施設が20〜30年稼働しており、埋立地は沈下するためすぐには建物が造れないことから近隣に住宅地等も無く、立地条件が良好である。
【0055】
(4)まとめ:
以上説明したように、上述した各実施形態に係る使用済み紙おむつの再資源化方法や使用済み紙おむつの再資源化システムによれば、裁断された使用済み紙おむつTとポリマー分解剤を含む洗浄水とをポリマー分解槽で攪拌し、ポリマー分解槽20内の攪拌物を、ポリマー分解剤によって脱水した高分子吸水ポリマーD5とパルプ成分との混合物(第3混合物)、紙おむつの包装材(第4混合物)、及び、汚水、の3つに分離する。これにより、現状の使用済み紙おむつの資源化システムにおける問題点の少なくとも一部を解決することができる。
【0056】
なお、本発明は上述した実施形態に限られず、上述した実施形態の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、公知技術並びに上述した実施形態の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、等も含まれる。また,本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されず,特許請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。
【符号の説明】
【0057】
10…裁断機、20…ポリマー分解槽、30…第1脱水装置、40…第2脱水装置、50…浄化槽、D1…外装材、D2…内部表面材、D3…吸収紙、D4…綿状パルプ、D5…高分子吸水ポリマー、S…使用済み紙おむつの再資源化システム、S10…回収工程、S20…裁断工程、S30…攪拌工程、S40…分離工程、S110…回収・分別工程、S130…攪拌工程