(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
減圧弁には、二次側流路の水圧を一次側流路の水圧よりも低くし、且つ一定の水圧に維持することが求められる。二次側流路の水圧を一定に維持するための機構として、ダイアフラムを内部に備えたものが知られている。
【0003】
例えば、下記特許文献1に記載されている減圧弁は、一次側流路から二次側流路に流入する水の流量を調整するための弁機構と、二次側流路内の水圧によって一部が変位するダイアフラムとを内部に備えている。弁機構は、弁体と弁座とを有しており、弁体と弁座との距離が変化することによって、通過する水の流量を変化させるものである。弁体はダイアフラムに接続されており、ダイアフラムの変位(変形)に伴って弁体が移動するように構成されている。
【0004】
このため、二次側流路内の水圧の変化によってダイアフラムの一部が変位すると、これに伴って弁機構の弁体が移動し、一次側流路から二次側流路に流入する水の流量が変化する。具体的には、二次側流路内の水圧が高くなると、ダイアフラムの変位に伴って弁体が弁座に近づくように移動し、二次側流路に流入する水の流量が減少する。一方、二次側流路内の水圧が低くなると、ダイアフラムの変位に伴って弁体が弁座から遠ざかるように移動し、二次側流路に流入する水の流量が増加する。
【0005】
このように、下記特許文献1に記載されている減圧弁は、電気的な駆動力や制御機構を一切用いることなく、ダイアフラムの機械的な動きのみによって二次側流路内の水圧を一定に維持することが可能な構成となっている。
【0006】
また、下記特許文献1に記載されている減圧弁は、ダイアフラムを外側から覆い保護する保護カバーを更に備えている。また、保護カバーとダイアフラムとの間には空間が形成されている。当該空間は、ダイアフラムが破損して二次側流路に連通する空間内の水が漏出した場合において、当該水が外部に流出しないよう、水を貯留するための空間等として機能するものである。
【0007】
このような空間は、外部に水を流出させないという機能に鑑みれば、外部空間から完全に遮断された密閉空間とすることが望ましいようにも思われる。しかし、密閉空間とした場合には、二次側流路内の水圧が変化した際におけるダイアフラムの動作に影響を及ぼしてしまうという問題が生じ得る。例えば、二次側流路内の水圧が上昇した場合にはダイアフラムの中央部が密閉空間の方に向かって変位する。ところが、これに伴って密閉空間の気圧は高くなるため、ダイアフラムの上記変位は(密閉空間としない場合に比べて)抑制されてしまう。その結果、二次側流路の水圧が高くなり過ぎてしまう。
【0008】
このような現象を防止するために、下記特許文献1に記載されている減圧弁は、保護カバーの一部に連通孔を形成することで、保護カバーの内部空間と外部空間とを連通させている。このような構成により、保護カバーの内部空間の気圧は常に略一定(大気圧)に保たれる。
【0009】
下記特許文献1に記載されている減圧弁では、更に、水膨潤ゴム製のシール部材を上記連通孔に挿入している。ダイアフラムが破損していない通常時においては、保護カバーの内部空間と外部空間とが連通した状態を維持している。一方、ダイアフラムが破損した場合には、シール部材は破損個所から流出した水に触れて膨潤(膨張)し、連通孔を密閉する。このため、連通孔から外部に水が流出し続けることが防止される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記特許文献1に記載されている減圧弁は、上記のように、ダイアフラムが破損して水が漏出した際には水膨潤ゴム製のシール部材が膨潤(膨張)し、これにより連通孔が密閉されるような構成となっている。しかし、水膨潤ゴム製のシール部材は、水に触れてから膨張するまでの間に長時間を要する。ダイアフラムが破損して水が漏出し始めても連通孔は直ちには密閉されず、密閉されるまでには十数時間を要してしまうため、それまでの間は連通孔から外部に水が流出し続けてしまう。
【0012】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ダイアフラムが破損した際における外部への水の流出を短時間のうちに停止させることのできる減圧弁、及び、そのような減圧弁を備えた電気温水器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明に係る減圧弁は、二次側流路の水圧を一次側流路の水圧よりも低くするための減圧弁であって、前記一次側流路に接続される第一空間と、前記二次側流路に接続される第二空間と、が内部に形成され、前記第一空間から前記第二空間へ流入する水の流量を調整するための弁機構と、前記第二空間内の水圧を受けることによって一部が変位し、前記弁機構の弁体を移動させるように構成されたダイアフラムと、前記ダイアフラムを外側から覆い保護する保護カバーと、を備え、前記保護カバーと前記ダイアフラムとによって区画された第三空間が、前記ダイアフラムを挟んで前記第二空間に隣接する位置に形成されており、前記保護カバーには、前記第三空間と外部空間とを連通させる連通孔が形成されており、前記連通孔には、通気性を有し、且つ、水を吸収すると膨張する部材により形成された膨張体が挿入されていることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る減圧弁は、一次側流路に接続される第一空間と、二次側流路に接続される第二空間と、が内部に形成されており、第一空間から第二空間へ流入する水の流量を調整するための弁機構を備えている。また、ダイアフラムを更に備えている。
【0015】
ダイアフラムは、第二空間内の水圧を受けることによって一部が変位するものであって、当該変位により弁機構の弁体を移動させるように構成されている。このため、第二空間内の水圧、すなわち二次側流路の水圧に応じて弁機構を通過する水の流量を変化させ、二次側流路の水圧を略一定に保つことが可能となっている。
【0016】
本発明に係る減圧弁は、ダイアフラムを外側から覆い保護する保護カバーを更に備えている。保護カバーとダイアフラムとは一部が離間しており、これらによって第三空間が区画されている。第三空間は、ダイアフラムを挟んで第二空間に隣接する位置に形成されている。このため、ダイアフラムが破損して第二空間から水が漏出した際には、当該水は第三空間に流入することとなる。換言すれば、第三空間は、ダイアフラムの破損個所から漏出した水を受け止めるための空間として機能するものである。
【0017】
保護カバーには、第三空間と外部空間とを連通させる連通孔が形成されている。例えば、減圧弁の温度が上昇して第三空間を満たす空気が膨張した場合には、当該空気は連通孔から外部空間に排出される。このように、第三空間の内部の気圧は常に略一定(大気圧)に保たれるため、第三空間の内部の気圧が変動してダイアフラムの動作に影響してしまうことがない。その結果、二次側流路内の水圧は常に略一定に保たれる。
【0018】
連通孔には、膨張体が挿入されている。膨張体は通気性を有する部材によって形成されているため、連通孔を通じて出入りする空気の流れを膨張体が妨げてしまうことはない。また、膨張体は水を吸収すると膨張する部材によって形成されている。このため、ダイアフラムが破損して第二空間から第三空間に水が漏出した場合には、膨張体は当該水に触れて膨張し、連通孔を密閉する。このため、連通孔から外部に水が流出し続けることが防止される。
【0019】
また、上記のように膨張体は通気性を有する部材によって形成されているため、水は膨張体の表面に触れるだけでなく、膨張体の内部全体にも直ちに浸透する。このため、ダイアフラムが破損して第二空間から第三空間に水が漏出した場合には、膨張体はその表面のみならず内部も含めた全体が水に触れて速い速度で膨張し、短時間のうちに連通孔を密閉する。このように、本発明に係る減圧弁では、ダイアフラムが破損した際における外部への水の流出を短時間のうちに停止させることができる。
【0020】
また、本発明に係る減圧弁では、前記連通孔における前記膨張体の位置ずれを規制するための、位置規制部が形成されていることも好ましい。
【0021】
この好ましい態様では、連通孔における膨張体の位置ずれを規制するための、位置規制部が形成されている。位置規制部によって膨張体の位置ずれが規制されるため、例えば、膨張体が連通孔内から外れた状態で膨張してしまうようなことがない。その結果、ダイアフラムが破損した際における外部への水の流出を確実に停止させることができる。
【0022】
また、本発明に係る減圧弁では、前記第三空間の内部には、前記第二空間内の水圧に対抗する力を前記ダイアフラムに加える弾性体が配置されており、前記連通孔には、前記弾性体の伸縮量を調整するための調整ネジが挿入されており、前記膨張体は、前記調整ネジの周囲に挿入されていることも好ましい。
【0023】
この好ましい態様では、第三空間の内部には、第二空間内の水圧に対抗する力をダイアフラムに加える弾性体が配置されている。また、連通孔には、当該弾性体の伸縮量を調整するための調整ネジが挿入されている。調整ネジによって弾性体の伸縮量を調整することで、ダイアフラムに対して弾性体から加えられる力、すなわち、第二空間内の水圧に対抗する力の大きさを変化させ、二次側流路の水圧を調整することが可能となっている。膨張体は、連通孔の内部のうち調整ネジの周囲に挿入されている。
【0024】
二次側流路の水圧を調整ネジによって外側から調整可能な構成としながらも、調整ネジの周囲から水が流出してしまうことを防止することがでる。
【0025】
また、本発明に係る減圧弁では、前記膨張体は、前記調整ネジの周囲を覆うリング形状となるように形成されていることも好ましい。
【0026】
この好ましい態様では、膨張体は、調整ネジの周囲を覆うリング形状となるように形成されている。膨張体の形状がリング形状であるため、まず膨張体を調整ネジの周囲に装着した状態としてから、当該調整ネジを連通孔に挿入するだけで、膨張体を調整ネジの周囲に容易に且つ確実に挿入することができる。
【0027】
また、本発明に係る減圧弁では、前記連通孔を外側から覆う水滴防止カバーを更に備えており、前記水滴防止カバーは、前記膨張体に外部から水滴がかかってしまうことを防止するものであり、且つ、前記第三空間と外部空間との間における空気の流通を許容するものであることも好ましい。
【0028】
この好ましい態様では、連通孔を外側から覆う水滴防止カバーを更に備えている。水滴防止カバーは、膨張体に外部から水滴がかかってしまうことを防止するものである。このため、ダイアフラムが破損していないにもかかわらず、膨張体が膨張して連通孔を密閉してしまうようなことが防止される。
【0029】
また、水滴防止カバーは、第三空間と外部空間との間における空気の流通を許容するものである。このため、水滴防止カバーによって連通孔が塞がれてしまうことはなく、第三空間の内部の気圧が変動してしまうこともない。
【0030】
また、本発明に係る減圧弁では、前記膨張体は、水を吸収すると膨張する繊維により形成された不織布であることも好ましい。
【0031】
この好ましい態様では、膨張体は、水を吸収すると膨張する繊維により形成された不織布である。このため、ダイアフラムが破損して第二空間から第三空間に水が漏出した場合には、水は不織布である膨張体の内部全体に直ちに浸透する。その結果、膨張体は更に速い速度で膨張し、短時間のうちに連通孔を密閉する。このように、この好ましい態様では、ダイアフラムが破損した際における外部への水の流出を、更に短時間のうちに停止させることができる。
【0032】
また、本発明では、貯湯タンクを備えた先止め式の電気温水器であって、前記貯湯タンクに水を供給する流路に、上記いずれかの減圧弁を配置してなることも好ましい。
【0033】
この好ましい態様では、貯湯タンクを備えた先止め式の電気温水器であって、貯湯タンクに水を供給する流路に、上記いずれかの減圧弁を配置している。減圧弁によって貯湯タンク内の水圧が低減されるため、貯湯タンクの耐圧性能を低くすることができる。すなわち、貯湯タンクの構造を簡素化し、コストを低減することができる。
【0034】
また、減圧弁のダイアフラムが破損した場合には、減圧弁から外部への水の流出を短時間で停止することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、ダイアフラムが破損した際における外部への水の流出を短時間のうちに停止させることのできる減圧弁、及び、そのような減圧弁を備えた電気温水器を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0038】
図1は、本発明の一実施形態に係る減圧弁の構造を示した断面図である。
図1に示したように、減圧弁PVは、上流側から水を受け入れる流路として内部流路11が形成されている一次側接続口10と、下流側に水を供給する流路として内部流路13が形成されている二次側接続口12とを有している。一次側接続口10には、例えば水道管に繋がる上流側配管が接続され、当該上流側配管から高圧の水が内部流路11に供給される。二次側接続口12には下流側配管が接続され、減圧された水が内部流路13から当該下流側配管に供給される。
【0039】
減圧弁PVの内部には、内部流路11と連通する第一空間R1と、内部流路13に連通する第二空間R2とが形成されており、第一空間R1と第二空間R2との間に弁機構20が配置されている。内部流路11から第一空間R1に流入した水は、弁機構20を通過して第二空間R2に流入し、その後、内部流路13から下流側内管に供給される。
【0040】
尚、本実施形態においては、内部流路11と第一空間R1との間に逆流防止機構200が内蔵されており、第一空間R1から内部流路11に向かって水が逆流してしまうことが防止されている。このため、断水が行われて水道管内の水圧が低下した場合であっても、水道管に向かって水が逆流してしまうことはない。
【0041】
弁機構20は弁座21と弁体22とを有しており、両者の間を通過した水が第二空間R2に流入する。弁体22が減圧弁PVの内部を上下に移動し、弁座21と弁体22との距離が変化すると、それに伴って弁機構20を通過する水の流量が変化する。
図1においては、弁体22が最も上方に移動し、弁座21に当接している状態を示している。このため、
図1に示した状態においては、第一空間R1から第二空間R2への水の流入は完全に停止している。
【0042】
弁体22は水平に配置された円板であって、その中央には、鉛直方向に沿って配置されたシャフト23の下端が締結固定されている。シャフト23は、その中心軸に沿って弁体22と共に上下に移動することが可能となっている。
【0043】
第二空間R2は、上方に向かって伸びるように形成された接続流路14を介して、上方に形成された二次圧室15に連通している。二次圧室15の上方側は、水平面に沿って配置された円形のダイアフラムDpで覆われている。換言すれば、ダイアフラムDpの下面が二次圧室15を上方から区画している。ダイアフラムDpは、その外周側の全体が、減圧弁PVの本体部に対して水密に固定され、支持されている。
【0044】
ダイアフラムDpの下面には、二次圧室15内の水圧、すなわち第二空間R2内の水圧が上向きの力として掛かっており、ダイアフラムDpは当該水圧によって変形している。このため、ダイアフラムDpの中央部の位置は、第二空間R2内の水圧に応じて上下に移動する。
【0045】
図1に示したように、減圧弁PVの内部には、二次圧室15と第一空間R1とを接続する接続管26が配置されている。シャフト23は、接続管26の内部を上下に貫くように配置されている。シャフト23のうち上下方向に沿った中央部には、他の部分よりも直径が大きい拡径部24が形成されており、拡径部24が円筒形状の接続管26の内部に配置されている。拡径部24の外周にはOリング25が取り付けられており、Oリング25が拡径部24の内壁面に対して当接している。このような構成により、二次圧室15と第一空間R1が拡径部24によって水密に隔てられた状態のまま、シャフト23が上下に移動することが可能となっている。
【0046】
ダイアフラムDpの中央には、シャフト23の上端が締結固定されている。このため、第二空間R2内の水圧に応じてダイアフラムDpの中央部の位置が上下に移動すると、これに伴ってシャフト23及び弁体22も上下に移動するような構成となっている。従って、第二空間R2内の水圧が変化すると、弁機構20を通過する水の流量が変化する。
【0047】
具体的には、第二空間R2内の水圧が高くなると、ダイアフラムDpの中央部が上方に移動することに伴って弁体22が弁座21に近づくように移動し、第一空間R1から第二空間R2に流入する水の流量が減少する。その結果、第二空間R2内の水圧は減少する。一方、第二空間R2内の水圧が低くなると、ダイアフラムDpの中央部が下方に移動することに伴って弁体22が弁座21から遠ざかるように移動し、第一空間R1から第二空間R2に流入する水の流量が増加する。その結果、第二空間R2内の水圧は増加する。
【0048】
このように、減圧弁PVは、電気的な駆動力や制御機構を一切用いることなく、ダイアフラムDpの機械的な動きのみによって、第二空間R2内の水圧を一定に維持することが可能となっている。
【0049】
ダイアフラムDpの更に上方には、保護カバー40が取り付けられている。保護カバー40は、ダイアフラムDpを外側から覆って保護するためのものである。保護カバー40は全体が略円筒形状に形成されており、その内径が上方側に行く程狭くなるように形成された傾斜部41と、傾斜部41の上方側の部分であって、その内径が高さによらず一定となるように形成された円筒部42とを有している。保護カバー40がこのような形状であるため、保護カバー40とダイアフラムDpとの間には、これらによって区画された第三空間R3が形成されている。第三空間R3は、ダイアフラムDpを挟んで、二次圧室15(第二空間R2に連通する空間)に隣接する位置に形成されているということもできる。保護カバー40の下端は、ダイアフラムDpの外周部全体に対して水密に取り付けられている。
【0050】
保護カバー40のうち円筒部42の内部には、略円柱形状の調整ネジ30が配置されている。円筒部42の内面側には雌ネジが形成され、調整ネジ30の外側面には雄ネジが形成されており、両者が螺合した状態となっている。
【0051】
第三空間R3のうち、調整ネジ30の下面とダイアフラムDpの上面との間には、バネSpが配置されている。バネSpによって、ダイアフラムDpの上面は下方に向けて付勢されている。従って、ダイアフラムDpの中央部には、バネSpによる下向きの力と、二次圧室15の圧力による上向きの力とが加わっている。
【0052】
調整ネジ30の上面には溝Grが形成されている。溝Grにドライバー等の先端を挿入して調整ネジ30を水平面に沿って回転させることにより、調整ネジ30の位置を上下に変化させ、バネSp伸縮量を調整することが可能となっている。すなわち、バネSpによってダイアフラムDpに加えられている力の大きさを変化させることが可能となっている。
【0053】
例えば、調整ネジ30を上方に移動させると、バネSpによってダイアフラムDpに加えられている力の大きさは弱くなる。ダイアフラムDpの中央部は上方に移動し、これに伴って弁体22も上方に移動する。弁座21と弁体22との距離は近くなり、弁機構20を通過して第二空間R2に流入する水の量が低減されるため、第二空間R2内の水圧は低くなる。
【0054】
逆に、調整ネジ30を下方に移動させると、バネSpによってダイアフラムDpに加えられている力の大きさは強くなる。ダイアフラムDpの中央部は下方に移動し、これに伴って弁体22も下方に移動する。弁座21と弁体22との距離は遠くなり、弁機構20を通過して第二空間R2に流入する水の量が増加するため、第二空間R2内の水圧は高くなる。
【0055】
このように、調整ネジ30を回転させてその位置を変化させることにより、第二空間R2内の水圧(減圧弁PVによって減圧された後の水圧)を調整することが可能となっている。
【0056】
ところで、ダイアフラムDpが劣化する等によって破損した場合には、当該破損個所を通じて二次圧室15から水が漏出し、第三空間の内部に流入する。このような水が減圧弁PVの外部に流出してしまうことを防止するという観点からは、第三空間R3を密閉空間とした方が望ましいようにも思われる。
【0057】
しかし、第三空間R3を密閉空間とした場合には、温度によって第三空間R3の内部の気圧が変動し、ダイアフラムDpの動作に影響を及ぼしてしまうという問題が生じ得る。例えば、減圧弁PV本体の温度が上昇した場合には、第三空間R3内の気圧が高くなる。このような状態は、バネSpによる力が大きくなった状態と等しい。このため、第二空間R2内の水圧は高くなってしまう。逆に、減圧弁PV本体の温度が低下した場合には、第二空間R2内の水圧は低くなってしまう。このように、第二空間R2内の水圧が温度によって変動してしまう。
【0058】
そこで、本実施形態においては、円筒部42の上端を外部空間に向けて開口させており、第三空間R3が密閉空間とはならないような構成となっている。換言すれば、外部空間に向けて開口している円筒部42は、第三空間R3と外部空間とを連通させるための連通孔ということができる。尚、円筒部42の内部(連通孔の内部)には、上記のように調整ネジ30が配置されている。しかし、調整ネジ30と円筒部42の内側面との間には隙間が形成されているため、調整ネジ30によって第三空間R3が密閉されてしまうことはない。
【0059】
図2を参照しながら、調整ネジ30の具体的な構成について説明する。
図2は、調整ネジ30の具体的な構成を示した斜視図である。
図2に示したように、調整ネジ30は略円筒形状に形成されているが、その側面の一部が中心軸と平行な方向に沿って切断されることにより、カット面31が形成されている。円筒部42の内側面とカット面31との間には大きな隙間が形成されるため、第三空間R3と外部空間との間における空気の流通が、調整ネジ30によって妨げられてしまうことはない。
【0060】
調整ネジ30の下部には、円筒形状の小径部32が形成されている。小径部32の直径は、調整ネジ30のうち他の部分の直径よりも一回り小さくなっている。また、小径部32の中心軸は、調整ネジ30のうち他の部分の中心軸と同一である。
【0061】
小径部32には、リング状に形成された膨張体Epが、その外側面全体を覆うように装着されている。膨張体Epは吸水性のポリマーからなる繊維によって形成された不織布を、
図2に示すように断面が矩形のリング状に形成してなるものである。このため、膨張体Epは通気性を有している。
【0062】
図3を参照しながら、膨張体Epの機能について説明する。
図3(A)では、
図1に示した減圧弁PVのうち、調整ネジ30の近傍の部分を拡大して示している。
図3(A)に示したように、調整ネジ30の外側面と円筒部42の内側面との隙間には、膨張体Epが挿入された状態となっている。しかし、上記のように膨張体Epは通気性を有しているため、第三空間R3と外部空間との間における空気の流通を、膨張体Epが妨げてしまうことはない。
図3(A)には、第二空間R2内の水圧が高くなった場合における空気の流れを矢印で示している。このとき、ダイアフラムDpの中央部が上方に移動することに伴って第三空間R3の容積は減少するが、第三空間R3内の空気は膨張体Epの内部を通過し、円筒部42の内側面とカット面31との間を通過して、保護カバー40の外部空間に流出する。このため、第三空間R3内の気圧が上昇してしまうことはない。
【0063】
ダイアフラムDpが劣化する等によって破損した場合には、当該破損個所を通じて二次圧室15から水が漏出し、第三空間R3の内部に流入する。その結果、第三空間R3は水で満たされた状態となり、水は膨張体Epの内部を通過して外部に流出し始める。このとき、膨張体Epを形成している繊維は、その全体が水に触れた状態となる。
図3(B)は、このような状態における調整ネジ30の近傍の部分を拡大して示している。
【0064】
膨張体Epを形成している繊維は吸水性のポリマーであるため、水に触れると膨張(膨潤)する。リング状の膨張体Epはその全体が膨張し、
図3(B)に示したように、調整ネジ30と円筒部42との隙間全体を密閉した状態となる。
【0065】
本実施形態においては、膨張体Epが通気性を有しているため、水は膨張体Epの表面に触れるだけでなく、膨張体Epの内部全体にも直ちに浸透する。このため、膨張体Epはその表面のみならず内部も含めた全体が水に触れて速い速度で膨張し、短時間のうちに隙間を密閉する。このように、本実施形態に係る減圧弁PVでは、ダイアフラムDpが破損した際における外部への水の流出を短時間のうちに停止させることが可能となっている。
【0066】
また、本実施形態に係る減圧弁PVでは、膨張体Epが小径部32の外側面と円筒部42の内側面とによって挟まれた状態となっており、これにより円筒部42における膨張体Epの位置ずれが規制されている。このため、例えば、膨張体Epが円筒部42内から外れた状態で膨張してしまうようなことがない。その結果、ダイアフラムDpが破損した際における外部への水の流出を確実に停止させることができる。
【0067】
また、膨張体Epは、調整ネジ30のうち小径部32の周囲を覆うリング形状となるように形成されている。膨張体Epの形状がリング形状であるため、まず膨張体Epを小径部32の周囲に装着した状態としてから、調整ネジ30を円筒部42の内部に挿入するだけで、膨張体Epを調整ネジ30の周囲に容易に且つ確実に挿入することが可能となっている。
【0068】
図3(A)等に示したように、減圧弁PVは、円筒部42の上端部を外側から覆う水滴防止カバー50を備えている。水滴防止カバー50は、膨張体Epに外部から水滴がかかってしまうことを防止するものである。このため、ダイアフラムDpが破損していないにもかかわらず、膨張体Epが膨張して、第三空間R3が密閉空間となってしまうようなことが防止される。
【0069】
また、
図3(A)に示したように、水滴防止カバー50と円筒部42の上端部との間には大きな隙間が空いている。換言すれば、水滴防止カバー50は、第三空間R3と外部空間との間における空気の流通を許容するように構成されている。このため、水滴防止カバー50によって第三空間R3が密閉空間となってしまうようなことはなく、第三空間R3の内部の気圧が変動してしまうこともない。
【0070】
続いて、
図4を参照しながら、減圧弁PVを電気温水器の内部に配置した場合の例を説明する。
図4は、減圧弁PVを内部に備えた電気温水器100の構成を示す図である。電気温水器100は、所謂「先止め式」の電気温水器であって、給水配管101と、貯湯タンク120と、出湯配管102と、を備えている。
【0071】
給水配管101は、図示しない水道管から水の供給を受ける配管である。水道管から供給された水は、給水配管101を通って貯湯タンク120に下方から流入し、貯湯タンク120に貯えられる。
図4に示したように、減圧弁PVは給水配管101の途中に配置されている。このため、給水配管101のうち減圧弁PVよりも下流側(貯湯タンク120側)における水圧は、水道管内の高い水圧よりも低くなっている。その結果、貯湯タンク120の内部の水圧(第二空間R2に等しい)も低くなっている。
【0072】
貯湯タンク120の内部にはヒーター121が配置されており、貯湯タンク120に貯えられている水がヒーター121によって加熱される。ヒーター121による加熱量は図示しない制御装置によって制御されており、貯湯タンク120に貯えられている水(湯)の温度は所定温度に保たれている。
【0073】
出湯配管102は、貯湯タンク120に貯えられている湯を外部に供給するための配管である。出湯配管102の下流側には図示しない第一蛇口が取り付けられており、第一蛇口が開かれると、出湯配管102を流れた湯が第一蛇口から排出される。
【0074】
また、給水配管101のうち減圧弁PVよりも下流側の部分には、出水配管110が分岐接続されている。出水配管110の下流側には図示しない第二蛇口が取り付けられており、第二蛇口が開かれると、出水配管110を流れた水が第二蛇口から排出される。
【0075】
給水配管101のうち、減圧弁PVよりも下流側の部分には、排水配管111が分岐接続されている。排水配管111は、メンテナンス時等において貯湯タンク120に貯えられている湯を排出するための配管である。通常時においては、排水配管111は図示しない遮断弁によって閉止されている。
【0076】
出湯配管102の途中には、膨張水排出配管130が分岐接続されている。また、膨張水排出配管130には逃がし弁EVが配置されている。逃がし弁EVは、通常時には閉止されているが、貯湯タンク120内の水圧が所定圧よりも上昇してしまった場合には開放されるように構成されている。このような逃がし弁EVが配置されているため、例えば水の膨張によって貯湯タンク120内の水圧が上昇してしまった場合であっても、貯湯タンク120が破損してしまうことはない。
【0077】
以上のように、電気温水器100は、貯湯タンク120に水を供給する給水配管101に減圧弁PVを配置している。減圧弁PVによって貯湯タンク120内の水圧が低減されるため、貯湯タンク120の耐圧性能を低くすることが可能となっている。すなわち、貯湯タンク120の構造を簡素化し、コストを低減することが可能となっている。
【0078】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。