【実施例】
【0048】
以下では実施例及び比較例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0049】
(実施例1)
[触媒の製造]
<調製工程>
Co(NO
3)
2・6H
2O(第一の金属塩)と、Fe(NO
3)
3・9H
2O(第二の金属塩)と、を120mLの純水に溶解させて、溶液を作製した。純水に添加したCo(NO
3)
2・6H
2Oの質量は1.746gであった。純水に添加したFe(NO
3)
3・9H
2Oの質量は4.848gであった。純水におけるCoのモル数とFeのモル数の比を1:2に調整した。活性炭(多孔質の炭素質材料)を上記溶液に添加した後、溶液を一晩攪拌した。活性炭の質量は、焼成工程後に得られるべきフェライト系触媒の質量の約4倍(4.00g)に調整した。攪拌後の溶液を、ロータリーエバポレーターを用いて60〜70℃で加熱して溶液から水分を除去して、前駆体を得た。この前駆体を減圧下において70℃で一晩加熱することにより、前駆体を乾燥させた。
【0050】
<焼成工程>
焼成工程では、以下の手順で前駆体を焼成して、実施例1の触媒を得た。まず、前駆体をマッフル炉内に設置し、マッフル炉内に空気を流通させながら、マッフル炉内を3時間かけて常温から500℃まで昇温した。さらにマッフル炉内の温度を500℃に2時間維持した。焼成工程によって得られた触媒の質量は約1gであった。下記の表1では、実施例1の製造方法を「含浸法」と記す。
【0051】
<触媒の分析>
実施例1の触媒のX線回折パターンを測定した。実施例1のX線回折パターンを
図1に示す。X線回折パターンにより、実施例1の触媒がCoFe
2O
4(フェライト系触媒)であることが確認された。熱重量分析の結果、実施例1のフェライト系触媒における炭素の含有率が、1.2質量%であることが確認された。
【0052】
[1,3−ブタジエンの製造]
実施例1のフェライト系触媒200mgを反応器内に設置した。1−ブテン及びアルゴンの混合気体(原料ガス)を反応器内に供給し、1−ブテンをフェライト系触媒に接触させ、1−ブテンの脱水素反応を行った。脱水素反応の反応温度(フェライト系触媒の温度)は400℃に調整した。酸化的脱水素反応の反応時間は8分であった。反応器内に供給される1−ブテンの流量は5ml/分に調整した。反応器内に供給されるアルゴンの流量は25ml/分に調整した。
【0053】
脱水素反応の生成物(生成ガス)をガスクロマトグラフィーで分析した。生成ガスは1,3−ブタジエン(C
4H
6)を含むことが確認された。生成ガスは、cis−2−ブテン、trans−2−ブテン、一酸化炭素、二酸化炭素、水素及び水も含むことが確認された。未反応の1−ブテンもガスクロマトグラフィーによって検出された。生成ガスが含む各成分のモル分率を、各成分に由来するクロマトグラムのピーク面積の比から求めた。生成ガスが含む各炭素化合物のモル分率を下記の表2に示す。表2に記載の「cis−C4’」はcis−2−ブテンを意味する。表2に記載の「trans−C4’」はtrans−2−ブテンを意味する。1−ブテンの転化率1を表2に示す。転化率1は、下記式で定義される。
転化率1(%) = (1−(m1/m2)×100
m1は、脱水素反応の生成ガスに含まれる1−ブテンのモル数である。m2は、原料ガスにおける1−ブテンのモル数である。m1は、生成ガスについてのガスクロマトグラフィーに基づき求められる値である。m2は、原料ガスについてのガスクロマトグラフィーに基づき求められる値である。
【0054】
1−ブテンの転化率2を表1に示す。転化率2は、下記式で定義される。
転化率2(%) = 転化率1×(1−m3)
m3は、生成ガスにおけるcis−2−ブテンのモル分率と、生成ガスにおけるtrans−2−ブテンのモル分率と、の和である。
【0055】
1,3−ブタジンエンの選択率を表1に示す。選択率は、下記式で定義される。
選択率(%) = m4/(1−m3)
m4は、生成ガスにおける1,3−ブタジンエンのモル分率である。
【0056】
1,3−ブタジンエンの収率を表1に示す。収率は、下記式で定義される。
収率(%) = 転化率1×m4
【0057】
以下の昇温反応法(Temperature Programmed Reaction:TPR)に基づく測定によって、1−ブテンの酸化的脱水素が実施例1のフェライト系触媒の格子酸素によって引き起されるか否かを調べた。
【0058】
TPRに基づく測定では、実施例1のフェライト系触媒を流通型反応器内に設置した。そして、フェライト系触媒の温度を上昇させながら、1−ブテンを反応器内に供給し続け、各温度において反応器内から排出されるガスの組成を質量分析器で分析した。TPRに基づく測定の結果を
図9に示す。
図9の縦軸は、反応器内から排出されるガス中の各成分のモル濃度を示す対数軸である。
図10及び11の縦軸についても同様である。
【0059】
(実施例2及び3)
実施例2及び3では、実施例1のフェライト系触媒を用いて1−ブテンの脱水素反応を行った。実施例2及び3では、反応温度を表1に示す値に調整した。これらの事項以外は、実施例1と同様の方法で、実施例2及び3それぞれの1−ブテンの脱水素反応を行った。実施例1と同様の方法に基づく分析の結果、実施例2及び3においても、脱水素反応の生成ガスが、1,3−ブタジエンを含むことが確認された。実施例2及び3それぞれの生成ガスが含む各炭素化合物のモル分率及び転化率1を表2に示す。実施例2及び3それぞれの転化率2、並びに1,3−ブタジンエンの選択率及び収率を表1に示す。
【0060】
(
参考例4)
[触媒の製造]
<調製工程>
Co(NO
3)
2・6H
2O(第一の金属塩)と、Fe(NO
3)
3・9H
2O(第二の金属塩)と、クエン酸(有機酸)と、を30mLの純水に溶解させて、溶液を作製した。純水に添加したCo(NO
3)
2・6H
2Oの質量は1.746gであった。純水に添加したFe(NO
3)
3・9H
2Oの質量は4.848gであった。溶液におけるCoのモル数とFeのモル数の比を1:2に調整した。純水に添加したクエン酸の質量は3.458gであり、そのモル数は、第一金属塩及び第二金属塩の総モル数と等しかった。この溶液を一晩攪拌した。攪拌後の溶液を、ロータリーエバポレーターを用いて60〜70℃で加熱して溶液から水分を除去して、前駆体を得た。この前駆体を減圧下において70℃で一晩加熱することにより、
参考例4の前駆体を乾燥させた。
【0061】
<焼成工程>
焼成工程では、以下の手順で前駆体を焼成して、
参考例4の触媒を得た。まず、前駆体をマッフル炉内に設置し、マッフル炉内に空気を流通させながら、マッフル炉内を3時間かけて常温から500℃まで昇温した。さらにマッフル炉内の温度を500℃に2時間維持した。以上の
参考例4の製造方法において、活性炭は用いなかった。表1では、
参考例4の製造方法を「クエン酸法」と記す。
【0062】
<フェライト系触媒の分析>
参考例4の触媒のX線回折パターンを測定した。
参考例4のX線回折パターンを
図2に示す。X線回折パターンにより、
参考例4の触媒がCoFe
2O
4(フェライト系触媒)であることが確認された。
【0063】
[1,3−ブタジエンの製造]
参考例4のフェライト系触媒を用いて1−ブテンの脱水素反応を行った。触媒の組成を除いて実施例1と同様の方法で、
参考例4の1−ブテンの脱水素反応を行った。実施例1と同様の方法に基づく分析の結果、
参考例4においても、脱水素反応の生成ガスが、1,3−ブタジエンを含むことが確認された。
参考例4の生成ガスが含む各炭素化合物のモル分率及び転化率1を表2に示す。
参考例4の転化率2、並びに1,3−ブタジンエンの選択率及び収率を表1に示す。
【0064】
(実施例5)
実施例5の触媒の製造では、第一の金属塩として、Co(NO
3)
2・6H
2Oの代わりに、1.45gのCu(NO
3)
2・6H
2Oを用いた。この事項を除いて実施例1と同様の方法で、実施例5の触媒を作製した。表1では、実施例5の製造方法を「含浸法」と記す。
【0065】
実施例1と同様の方法で、実施例5の触媒のX線回折パターンを測定した。実施例5のX線回折パターンを
図3に示す。X線回折パターンにより、実施例5の触媒がCuFe
2O
4(フェライト系触媒)であることが確認された。熱重量分析の結果、実施例5のフェライト系触媒における炭素の含有率が、0.9質量%であることが確認された。
【0066】
実施例5のフェライト系触媒を用いて1−ブテンの脱水素反応を行った。実施例5では、反応温度を表1に示す値に調整した。これらの事項を除いて実施例1と同様の方法で、実施例5の1−ブテンの酸化的脱水素反応を行った。実施例1と同様の方法に基づく分析の結果、実施例5においても、脱水素反応の生成ガスが、1,3−ブタジエンを含むことが確認された。実施例5の生成ガスが含む各炭素化合物のモル分率及び転化率1を表2に示す。実施例5の転化率2、並びに1,3−ブタジンエンの選択率及び収率を表1に示す。
【0067】
実施例5のフェライト系触媒を用いて、実施例1と同様の方法で、TPRに基づく測定を行った。実施例5のTPRに基づく測定の結果を
図10に示す。
図10に示すように、実施例5のフェライト系触媒を用いた1−ブテンの脱水素反応では、200℃近傍から高温の領域にわたって、1,3−ブタジエン及び水の生成量が増加することが確認された。また200℃近傍では、水素の生成量は略一定であった。このことは、200℃程度の低温において1−ブテンの酸化的脱水素が促進されることを示唆している。また、
図10に示すように、200℃近傍の低温では、二酸化炭素の生成量が少ないことが確認された。このことは、200℃近傍の低温では、1−ブテンの完全酸化が抑制されていることを示唆している。
【0068】
(実施例6〜9)
実施例6〜9では、実施例5のフェライト系触媒を用いて1−ブテンの脱水素反応を行った。実施例6〜9では、反応温度を表1に示す値に調整した。これらの事項以外は、実施例5と同様の方法で、実施例6〜9それぞれの1−ブテンの脱水素反応を行った。実施例1と同様の方法に基づく分析の結果、実施例6〜9においても、脱水素反応の生成ガスが、1,3−ブタジエンを含むことが確認された。実施例6〜9それぞれの生成ガスが含む各炭素化合物のモル分率及び転化率1を表2に示す。実施例6〜9それぞれの転化率2、並びに1,3−ブタジンエンの選択率及び収率を表1に示す。
【0069】
(実施例10)
実施例10の触媒の製造では、第一の金属塩として、Co(NO
3)
2・6H
2Oの代わりに、1.45gのCu(NO
3)
2・6H
2Oを用いた。また、実施例10では、第一の金属塩及び第二の金属塩のみならず、クエン酸を純水に添加して、溶液を作製した。純水に添加したクエン酸の質量3.458gであり、そのモル数は、第一金属塩及び第二金属塩の総モル数と等しかった。これらの事項を除いて、実施例1と同様の方法で、実施例10の触媒を作製した。表1では、実施例10の製造方法を「含浸・クエン酸法」と記す。
【0070】
実施例1と同様の方法で、実施例10の触媒のX線回折パターンを測定した。実施例5のX線回折パターンを
図4に示す。X線回折パターンにより、実施例10の触媒がCuFe
2O
4(フェライト系触媒)であることが確認された。熱重量分析の結果、実施例10のフェライト系触媒における炭素の含有率が、0.9質量%であることが確認された。
【0071】
実施例10のフェライト系触媒を用いて1−ブテンの脱水素反応を行った。実施例10では、反応温度を表1に示す値に調整した。これらの事項を除いて実施例1と同様の方法で、実施例10の1−ブテンの酸化的脱水素反応を行った。実施例1と同様の方法に基づく分析の結果、実施例10においても、脱水素反応の生成ガスが、1,3−ブタジエンを含むことが確認された。実施例10の生成ガスが含む各炭素化合物のモル分率及び転化率1を表2に示す。実施例10の転化率2、並びに1,3−ブタジンエンの選択率及び収率を表1に示す。
【0072】
(実施例11及び12)
実施例11及び12では、実施例10のフェライト系触媒を用いて1−ブテンの酸化的脱水素反応を行った。実施例11及び12では、反応温度を表1に示す値に調整した。これらの事項以外は、実施例1と同様の方法で、実施例11及び12それぞれの1−ブテンの脱水素反応を行った。実施例1と同様の方法に基づく分析の結果、実施例11及び12においても、脱水素反応の生成ガスが、1,3−ブタジエンを含むことが確認された。実施例11及び12それぞれの生成ガスが含む各炭素化合物のモル分率及び転化率1を表2に示す。実施例11及び12それぞれの転化率2、並びに1,3−ブタジンエンの選択率及び収率を表1に示す。
【0073】
(
参考例13)
参考例13の触媒の製造では、第一の金属塩として、Co(NO
3)
2・6H
2Oの代わりに、1.45gのCu(NO
3)
2・6H
2Oを用いた。この事項を除いて
参考例4と同様の方法で、
参考例13の触媒を作製した。表1では、
参考例13の製造方法を「クエン酸法」と記す。
【0074】
実施例1と同様の方法で、
参考例13の触媒のX線回折パターンを測定した。
参考例13のX線回折パターンを
図5に示す。X線回折パターンにより、
参考例13の触媒がCuFe
2O
4(フェライト系触媒)であることが確認された。
【0075】
参考例13のフェライト系触媒を用いて1−ブテンの脱水素反応を行った。
参考例13では、反応温度を表1に示す値に調整した。これらの事項を除いて実施例1と同様の方法で、
参考例13の1−ブテンの脱水素反応を行った。実施例1と同様の方法に基づく分析の結果、
参考例13においても、脱水素反応の生成ガスが、1,3−ブタジエンを含むことが確認された。
参考例13の生成ガスが含む各炭素化合物のモル分率及び転化率1を表2に示す。
参考例13の転化率2、並びに1,3−ブタジンエンの選択率及び収率を表1に示す。
【0076】
(
参考例14及び15)
参考例14及び15では、
参考例13のフェライト系触媒を用いて1−ブテンの酸化的脱水素反応を行った。
参考例14及び15では、反応温度を表1に示す値に調整した。これらの事項以外は、実施例1と同様の方法で、
参考例14及び15それぞれの1−ブテンの脱水素反応を行った。実施例1と同様の方法に基づく分析の結果、
参考例14及び15においても、脱水素反応の生成ガスが、1,3−ブタジエンを含むことが確認された。
参考例14及び15それぞれの生成ガスが含む各炭素化合物のモル分率及び転化率1を表2に示す。
参考例14及び15それぞれの転化率2、並びに1,3−ブタジンエンの選択率及び収率を表1に示す。
【0077】
(比較例1)
比較例1の触媒の製造では、Co(NO
3)
2・6H
2Oの代わりに、1.722gのMn(NO
3)
2・6H
2Oを用いた。この事項を除いて実施例1と同様の方法で、比較例1の触媒を作製した。表1では、比較例1の製造方法を「含浸法」と記す。
【0078】
実施例1と同様の方法で、比較例1の触媒のX線回折パターンを測定した。比較例1のX線回折パターンを
図6に示す。X線回折パターンにより、比較例1の触媒がMnFe
2O
4(フェライト系触媒)であることが確認された。熱重量分析の結果、比較例1のフェライト系触媒における炭素の含有率が、1.0質量%であることが確認された。
【0079】
比較例1のフェライト系触媒を用いて1−ブテンの脱水素反応を行った。比較例1では、反応温度を表1に示す値に調整した。これらの事項を除いて実施例1と同様の方法で、比較例1の1−ブテンの脱水素反応を行った。実施例1と同様の方法に基づく分析の結果、比較例1においても、脱水素反応の生成ガスが、1,3−ブタジエンを含むことが確認された。比較例1の生成ガスが含む各炭素化合物のモル分率及び転化率1を表2に示す。比較例1の転化率2、並びに1,3−ブタジンエンの選択率及び収率を表1に示す。
【0080】
(比較例2)
比較例2の触媒の製造では、Co(NO
3)
2・6H
2Oの代わりに、1.782gのZn(NO
3)
2・6H
2Oを用いた。この事項を除いて実施例1と同様の方法で、比較例2の触媒を作製した。表1では、比較例2の製造方法を「含浸法」と記す。
【0081】
実施例1と同様の方法で、比較例2の触媒のX線回折パターンを測定した。比較例2のX線回折パターンを
図7に示す。X線回折パターンにより、比較例2の触媒がZnFe
2O
4(フェライト系触媒)であることが確認された。
【0082】
比較例2のフェライト系触媒を用いて1−ブテンの脱水素反応を行った。比較例2では、反応温度を表1に示す値に調整した。これらの事項を除いて実施例1と同様の方法で、比較例2の1−ブテンの脱水素反応を行った。実施例1と同様の方法に基づく分析の結果、比較例2においても、脱水素反応の生成ガスが、1,3−ブタジエンを含むことが確認された。比較例2の生成ガスが含む各炭素化合物のモル分率及び転化率1を表2に示す。比較例2の転化率2、並びに1,3−ブタジンエンの選択率及び収率を表1に示す。
【0083】
比較例2のフェライト系触媒を用いて、実施例1と同様の方法で、TPRに基づく測定を行った。比較例2のTPRに基づく測定の結果を
図11に示す。
図11に示すように、比較例2のフェライト系触媒を用いた1−ブテンの脱水素反応では、400℃近傍から高温の領域にわたって、1,3−ブタジエンの生成量が増加すると略同時に、水素の生成量も増加することが確認された。このことは、1−ブテンの酸化的脱水素のみならず、単純脱水素が行っていることを示唆している。
【0084】
(比較例3)
Zn(NO
3)
2・6H
2Oと、Fe(NO
3)
3・9H
2Oと、を100mLの純水に溶解させて、溶液(前駆体の溶液)を作製した。純水に添加したZn(NO
3)
2・6H
2Oの質量は1.49gであった。純水に添加したFe(NO
3)
3・9H
2Oの質量は4.04gであった。純水におけるZnのモル数とFeのモル数の比を1:2に調整した。NH
3の水溶液を上記前駆体の溶液に徐々に滴下して、前駆体の溶液のpHを7に調整することにより、溶液中の前駆体を共沈させた。この溶液の遠心分離により、固体状の前駆体を回収した。この前駆体を純水で洗浄した。洗浄に用いた後の純水のpHが7になるまで、洗浄を繰り返した。洗浄された前駆体を100℃で一晩加熱して、乾燥した前駆体を得た。この前駆体を粉砕した。
【0085】
以下の手順で前駆体を焼成して、比較例3の触媒を得た。まず、粉砕された前駆体をマッフル炉内に設置し、マッフル炉内に空気を流通させながら、マッフル炉内を3時間かけて常温から500℃まで昇温した。さらにマッフル炉内の温度を500℃に2時間維持した。表1では、比較例3の製造方法を「共沈法」と記す。
【0086】
実施例1と同様の方法で、比較例3の触媒のX線回折パターンを測定した。比較例3のX線回折パターンを
図8に示す。X線回折パターンにより、比較例3の触媒がZnFe
2O
4(フェライト系触媒)であることが確認された。
【0087】
比較例3のフェライト系触媒を用いて1−ブテンの脱水素反応を行った。比較例3では、反応温度を表1に示す値に調整した。これらの事項を除いて実施例1と同様の方法で、比較例3の1−ブテンの脱水素反応を行った。実施例1と同様の方法に基づく分析の結果、比較例3においても、脱水素反応の生成ガスが、1,3−ブタジエンを含むことが確認された。比較例3の生成ガスが含む各炭素化合物のモル分率及び転化率1を表2に示す。比較例3の転化率2、並びに1,3−ブタジンエンの選択率及び収率を表1に示す。
【0088】
(比較例4)
Zn(NO
3)
2・6H
2Oの代わりにCo(NO
3)
2・6H
2Oを用いたこと以外は、比較例3と同様の方法で、比較例4の触媒の製造を試みた。しかし、フェライト系触媒(CoFe
2O
4)は得られなかった。
【0089】
(比較例5)
Zn(NO
3)
2・6H
2Oの代わりにCu(NO
3)
2・6H
2Oを用いたこと以外は、比較例3と同様の方法で、比較例5の触媒の製造を試みた。しかし、フェライト系触媒(CuFe
2O
4)は得られなかった。
【0090】
【表1】
【0091】
【表2】
【0092】
上記表1に記載の「Co」は、CoFe
2O
4を意味する。表1に記載の「Cu」は、CuFe
2O
4を意味する。表1に記載の「Mn」は、MnFe
2O
4を意味する。表1に記載の「Zn」は、ZnFe
2O
4を意味する。
【0093】
表1に示すように、全実施例の1,3−ブタジエンの選択率は、全比較例の1,3−ブタジエンの選択率よりも高いことが確認された。
【0094】
比較例2及び3は、活性炭を用いた含浸法によって得られたZnFe
2O
4の活性は、活性炭を用いない共沈法によって得られたZnFe
2O
4の活性に劣ることを示している。