(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6195263
(24)【登録日】2017年8月25日
(45)【発行日】2017年9月13日
(54)【発明の名称】畳のリースシステム
(51)【国際特許分類】
E04F 15/02 20060101AFI20170904BHJP
【FI】
E04F15/02 102Z
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-40689(P2017-40689)
(22)【出願日】2017年3月3日
【審査請求日】2017年3月13日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517076307
【氏名又は名称】株式会社菊屋
(74)【代理人】
【識別番号】100085291
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥巣 実
(74)【代理人】
【識別番号】100117798
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 慎一
(74)【代理人】
【識別番号】100166899
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥巣 慶太
(72)【発明者】
【氏名】城口 隆
【審査官】
前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】
特開平9−294886(JP,A)
【文献】
特開2014−152528(JP,A)
【文献】
特開2010−20737(JP,A)
【文献】
特開2001−207626(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 15/00−15/22
E04G 21/14−21/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部屋に敷き詰められた複数の畳の寸法を書き出す工程Aと、
予め用意した複数の畳床の寸法と前記複数の畳の寸法とを照合して、使用する畳床を選別する工程Bと、
前記部屋に入れ替える畳を、前記複数の畳床を用いて再生し、再生畳を製造する工程Cと、
前記複数の畳を前記部屋から取り外し、複数の前記再生畳を部屋に敷く工程Dと、を備え、
前記工程Cは、
使用する畳床よりも小さい寸法の再生畳の製造については、該畳床の丈及び/又は巾を該再生畳の寸法に切断したうえ、畳表を取り付けて該再生畳を製造し、
使用する畳床よりも大きい寸法の再生畳の製造については、該畳床の丈及び/又は巾を切断した後、該畳床の切断面に継ぎ足し部材を接着し、畳表を取り付けて該再生畳を製造する、畳のリース方法。
【請求項2】
複数の畳が敷き詰められた部屋の寸法を書き出す工程Aと、
前記部屋の寸法から入れ替える畳を割り付け、該畳の寸法と予め用意した複数の畳床の寸法とを照合して、使用する畳床を選別する工程Bと、
前記部屋に入れ替える畳を、前記複数の畳床を用いて再生し、再生畳を製造する工程Cと、
前記複数の畳を取り外し、複数の前記再生畳を部屋に敷く工程Dと、を備え、
前記工程Cは、
使用する畳床よりも小さい寸法の再生畳の製造については、該畳床の丈及び/又は巾を該再生畳の寸法に切断したうえ、畳表を取り付けて該再生畳を製造し、
使用する畳床よりも大きい寸法の再生畳の製造については、該畳床の丈及び/又は巾を切断した後、該畳床の切断面に継ぎ足し部材を接着し、畳表を取り付けて該再生畳を製造する、畳のリース方法。
【請求項3】
前記工程Cにおいて、
前記継ぎ足し部材は、畳床の巾を切断して製造される、
請求項1又は2に記載の畳のリース方法。
【請求項4】
前記工程Cにおいて、前記畳床を切断して前記継ぎ足し部材を接着する場合、
前記畳床の巾の切断は、再生後の畳の巾の寸法を基準に所定の寸法以上を切断して、前記継ぎ足し部材を接着し、
前記畳床の丈の切断は、再生後の畳の丈の寸法を基準に所定の寸法以上を切断して、前記継ぎ足し部材を接着する、
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の畳のリース方法。
【請求項5】
前記工程Cにおいて、前記畳床を切断して前記継ぎ足し部材を接着する場合、
前記畳床の巾は、上前側に前記継ぎ足し部材を接着する、
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の畳のリース方法。
【請求項6】
前記工程Cにおいて、前記畳床に継ぎ足し部材を接着する場合、
前記畳床の裏面を上に向けた状態で前記継ぎ足し部材を接着する、
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の畳のリース方法。
【請求項7】
前記工程Cにおいて、
前記畳床の厚みよりも、接着する前記継ぎ足し部材の厚みが小さい場合、
紙を接着して厚みを合わせる、
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の畳のリース方法。
【請求項8】
前記工程A及び前記工程Bの後に、前記部屋に敷き詰める複数の再生畳の寸法を、畳床を用いて該再生畳を製造する順番に並べて一覧とする工程をさらに備え、
前記工程Cにおいて、
前記再生畳に使用する複数の畳床を、必要に応じて切断し、該再生畳を製造する順番と逆順になるように、若い番号の畳床が下から並ぶよう該畳床を積み上げる工程と、
上の畳床から順番に、必要に応じて継ぎ足し部材を接着し、該畳床を積み上げていき、若い番号の畳床を上から順に並べる工程と、を有する、
請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の畳のリース方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、畳のリースシステムに関し、特に再生した畳を用いたリースシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
旅館やホテル、飲食店などに敷かれている畳は、経年劣化などの理由により、通常定期的に交換して使用されている。新しい畳を購入して交換する場合、敷かれている複数の畳と同じ寸法の新しい畳を発注して、完成した新しい畳と古い畳とを交換している。そして、通常古い畳は廃棄処分されるが、廃棄処分には多大なコストがかかる。
【0003】
また、畳のリース契約なども存在するが、これはコピー機などのリースと同じように、畳をリースとして契約し、一定期間所定の費用を支払うことでイニシャルコストを抑え、かつ、そのリース費用に畳の修繕費用が含まれるといったものである。そして、一定期間終了後に、その畳を今までよりも低い費用で再リースする。この方法は、修繕費用が含まれた畳の分割購入と何ら変わりない。
【0004】
また、その他の畳のリース方法としては、部屋に敷かれている複数の畳と同一寸法及び同一数量の畳をあらかじめもう1セット用意しておき、古い畳とあらかじめ用意している予備の畳とを入れ替える方法がとられる場合もある。また、部屋から古い畳を取り外して、古い畳から畳表を取り外し新しい畳表に張り替えて、又は古い畳から畳表を取り外し畳表を裏返して張り替えて、その畳をまた部屋に敷き詰めるといった方法もある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
上記の方法がとられている理由は、一般的に畳は1畳などと称されあたかも寸法が決まっている印象が強いが、実際に使用されている畳は、畳1つ1つの寸法が異なることがほとんどであるためである。これは、畳を敷きつめる部屋の面積や形状に規定がなく、それぞれの部屋に対応するように畳が製造されていることによる。そのため、上記のように敷き詰める畳と同一寸法及び同一数量の畳をあらかじめもう1セット用意したり、古い畳の畳表のみを張り替えて再生したりする方法がとられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−364157
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記した新規の畳を購入して入れ替える方法や、予備の畳をあらかじめもう1セット用意する方法では、敷き詰める畳を2セット購入せざるを得ず、コストがかかるという課題がある。一方、畳表を張り替える方法では、2セットの畳を購入する方法よりもコストは抑えられるが、畳を取り外した部屋は畳表を張り替えているあいだ使用できないという課題がある。旅館やホテル、飲食店などの場合であれば、そのあいだは部屋が使用できず機会損失が生じる。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みなされたもので、従来よりもコストを抑え、かつ、畳表を張り替える間の機会損失を生じさせないようにした畳のリース方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る一の態様の畳のリース方法は、部屋に敷き詰められた複数の畳の寸法を書き出す工程Aと、予め用意した複数の畳床の寸法と前記複数の畳の寸法とを照合して、使用する畳床を選別する工程Bと、前記部屋に入れ替える畳を、前記複数の畳床を用いて再生し、再生畳を製造する工程Cと、前記複数の畳を前記部屋から取り外し、複数の前記再生畳を部屋に敷く工程Dと、を備え、前記工程Cは、使用する畳床よりも小さい寸法の再生畳の製造については、該畳床の丈及び/又は巾を該再生畳の寸法に切断したうえ、畳表を取り付けて該再生畳を製造し、使用する畳床よりも大きい寸法の再生畳の製造については、該畳床の丈及び/又は巾を切断した後、該畳床の切断面に継ぎ足し部材を接着し、畳表を取り付けて該再生畳を製造する。
【0010】
従来であれば複数の畳と同寸の畳を別途製造して入れ替えるか、又は複数の畳の畳表を張り替えていたところ、この構成によれば、寸法の異なる畳床を用いて畳を再生して、複数の畳と入れ替えることができる。これにより、別途同寸の畳を製造するよりもコストを抑えることができ、かつ、畳表を張り替える間の時間的ロスを抑えることができる。
【0011】
ここで、継ぎ足し部材の接着には、接着剤を用いた接着、テープを用いた接着、糸を用いた縫着などが含まれ、畳床と継ぎ足し部材の切断面どうしを接して固定する方法であればよい。また、継ぎ足し部材は、畳床を切断して製造した同素材のものが望ましいが、その他木質や紙質のボード、発泡樹脂などから製造されるものを用いることもできる。また、畳の丈とは一般的な畳の長辺をいい、畳の巾とは短辺をいう(
図4参照)。
【0012】
また、この畳のリース方法は、複数の畳が敷き詰められた部屋の寸法を書き出す工程Aと、前記部屋の寸法から入れ替える畳を割り付け、該畳の寸法と予め用意した複数の畳床の寸法とを照合して、使用する畳床を選別する工程Bと、前記部屋に入れ替える畳を、前記複数の畳床を用いて再生し、再生畳を製造する工程Cと、前記複数の畳を取り外し、複数の前記再生畳を部屋に敷く工程Dと、を備え、前記工程Cは、使用する畳床よりも小さい寸法の再生畳の製造については、該畳床の丈及び/又は巾を該再生畳の寸法に切断したうえ、畳表を取り付けて該再生畳を製造し、使用する畳床よりも大きい寸法の再生畳の製造については、該畳床の丈及び/又は巾を切断した後、該畳床の切断面に継ぎ足し部材を接着し、畳表を取り付けて該再生畳を製造する構成としてもよい。
【0013】
この畳のリース方法と、上記のものとの違いは、上記のものが部屋に敷き詰められた複数の畳の寸法を基準に、新たに敷き詰める再生畳の寸法を決めるのに対して、この畳のリース方法では、部屋の寸法を基準に再生畳の割り付けを行い、新たに敷き詰める再生畳の寸法や枚数を決める点である。なお、2回目以降に再生畳を入れ替える場合、割り付けは必須でなく、前回入れ替えた再生畳の寸法を利用すればよい。
【0014】
また、この畳のリース方法は、前記工程Cにおいて、前記継ぎ足し部材は、別の畳床の巾を切断して製造されることが好ましい。ここで、畳床の巾を切断するとは、丈と平行に巾を切断することをいう(
図4の一点鎖線参照)。継ぎ足し部材の製造に際し、丈を切断して製造すると継ぎ足し部材がばらけてしまうところ、巾を切断して製造することで、継ぎ足し部材がばらけづらく形状が安定する。また以下、丈を切断するとは、巾と平行に丈を切断することをいう。
【0015】
また、この畳のリース方法は、前記工程Cにおいて、前記畳床を切断して前記継ぎ足し部材を接着する場合、前記畳床の巾の切断は、再生後の畳の巾の寸法を基準に所定の寸法以上を切断して、前記継ぎ足し部材を接着し、前記畳床の丈の切断は、再生後の畳の丈の寸法を基準に所定の寸法以上を切断して、前記継ぎ足し部材を接着する。この構成によれば、巾と丈を再生後の畳の寸法を基準に所定の寸法以上切断するため、所定の寸法以上の幅の継ぎ足し部材を接着することとなる。これは、所定寸法未満の幅の継ぎ足し部材は、形状安定性や強度が乏しく、再生した畳の美観や強度に問題が生じうるためである。ここで、畳床の巾及び丈の切断において所定の寸法以上とは例えば1.5寸以上であり、この寸法以上であれば、丈と平行に1ライン以上の糸が縫着されているため、継ぎ足し部材がばらけづらく、形状安定性や強度を保つことができる。
【0016】
また、この畳のリース方法は、前記工程Cにおいて、前記畳床を切断して前記継ぎ足し部材を接着する場合、前記畳床の巾は上前側に前記継ぎ足し部材を接着することが好ましい。この構成によれば、畳の構造上、上前が常に直線で構成されるため、継ぎ足し部材が直線形状でいびつな形状とならないため、接着等の作業がスムーズであり、また強度の上でも好ましい。ここで、畳床の巾に継ぎ足し部材を接着するとは、巾寸法を伸ばすように丈面に継ぎ足し部材を接着することをいう。また以下、畳床の丈に継ぎ足し部材を接着するとは、丈寸法を伸ばすように巾面に継ぎ足し部材を接着することをいう。
【0017】
また、この畳のリース方法は、前記工程Cにおいて、前記畳床を切断して継ぎ足し部材を接着する場合、前記畳床の裏面を上に向けた状態で前記継ぎ足し部材を接着することが好ましい。この構成によれば、表面に高さのずれが生じにくく、完成した畳が美観に優れる。
【0018】
また、この畳のリース方法は、前記工程Cにおいて、前記畳床の厚みよりも、接着する前記継ぎ足し部材の厚みが小さい場合、紙を接着して厚みを合わせることとしてもよい。この構成によれば、厚みを合わせることで、再生した畳の表面の高さが合い美観に優れる。
【0019】
また、この畳のリース方法は、前記工程A及び前記工程Bの後に、前記部屋に敷き詰める複数の再生畳の寸法を、畳床を用いて該再生畳を製造する順番に並べて一覧とする工程をさらに備え、前記工程Cにおいて、前記再生畳に使用する複数の畳床を、必要に応じて切断し、該再生畳を製造する順番と逆順になるように、若い番号の畳床が下から並ぶよう該畳床を積み上げる工程と、上の畳床から順番に、必要に応じて継ぎ足し部材を接着し、該畳床を積み上げていき、若い番号の畳床を上から順に並べる工程と、を有することが好ましい。この構成によれば、製造がスムーズになり、製造ミスも抑制でき、管理上も好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の畳のリース方法によれば、従来の新規の畳を購入するよりもコストを抑え、かつ、畳表を張り替える間の機会損失が抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる畳のリース方法に用いる一覧表である。
【
図2】本発明の一実施形態にかかる畳のリース方法の畳の種別を示す表である。
【
図3】本発明の一実施形態にかかる畳のリース方法の畳床を示す断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態にかかる畳のリース方法の畳床を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る一実施形態を説明するが、本発明は下記実施形態に限定されるものではない。特に、本実施形態の畳リース方法は、紙ベースの表や手書き入力による方法を説明するが、コンピュータを用いて畳や畳床の寸法等の管理や数値の入力、寸法の照合等にソフトウェアを利用してもよく、これらを併用してもよい。本実施形態の畳のリース方法においては、あらかじめ在庫している複数の畳床の寸法を在庫表やデータベースに入力して保管しておく。
【0023】
また、本実施形態において、畳床の巾を切断するとは、丈と平行に巾を切断することをいう(
図4の一点鎖線参照)。また、畳床の丈を切断するとは、巾と平行に丈を切断することをいう。また、畳床の巾に継ぎ足し部材を接着するとは、巾寸法を伸ばすように丈面に継ぎ足し部材を接着することをいう。また、畳床の丈に継ぎ足し部材を接着するとは、丈寸法を伸ばすように巾面に継ぎ足し部材を接着することをいう。
【0024】
<寸法書き出し工程>
まず、畳を入れ替える部屋の寸法を測定し、または既に測定済みの部屋であれば、その部屋の寸法から、そこに敷き詰める畳を割り付け、各畳の寸法とその枚数のデータを用意する。そして、各畳の寸法、すなわち、長辺である丈と短辺である巾の寸法を各畳ごとに一覧表に記入する。以下、入れ替える畳を再生畳と称する。
図1に、本実施形態にかかる畳のリース方法に用いる一覧表を示す。なお、
図1において再生畳の丈を再生丈、巾を再生巾と称する。
【0025】
次に、在庫している畳床から各再生畳の寸法に近い畳床を選別して、一覧表に各再生畳に使用する畳床の寸法(丈と巾)を記入する。なお、記入する畳床の寸法は、切断が不要な畳床はそのままの寸法を記入し、切断が必要な畳床は切断後の寸法を記入する。
【0026】
ここで、再生畳の寸法に比べて畳床の寸法に不足があるものについては、継ぎ足し部材の接着が必要になるため、継ぎ足し部材の寸法(丈と巾)を併せて記入する。
図1の一覧表においては、継ぎ足し部材の寸法を、部材丈、部材巾としている。
【0027】
また、複数の継ぎ足し部材が、巾が同じで丈が変わる場合は記入する巾の寸法を1つずらして記入し、また、丈が同じで巾が変わる場合は記入する丈の寸法を1つずらして記入する。これは、これら寸法に継ぎ足し部材の識別記号的意味合いを持たせており、使用する継ぎ足し部材の混同を防ぐためである。なお、この数値のずれはあくまで一覧表上での便宜上のもので、実際に製造する継ぎ足し部材の寸法は、ずれのない数値とする。例えば、一覧表で部材丈61と記入していても、製造する継ぎ足し部材の部材丈は60で製造する。
【0028】
なお、再生畳の寸法と畳床の寸法が同じものや、再生畳の寸法が畳床の寸法よりも小さいものについては、継ぎ足し部材の寸法は記入しない。継ぎ足し部材が不要だからである。本実施形態においては、一例として5枚の再生畳を敷き替え、これら全て切断及び接着が必要な例であるが、これに限られない。
【0029】
なお、
図2は、再生する畳の種別をまとめた表である。表中のA再生は、畳床の切断が不要のもので、畳床をそのまま用いて再生する。B再生は、切断は必要で、接着は不要のものであり、切断した畳床を用いて再生する。C再生、D再生は、切断及び継ぎ足し部材の接着が必要なもので、C再生は丈又は巾のいずれか一方に継ぎ足し部材を接着し、D再生は丈及び巾の両方に継ぎ足し部材を接着して再生するものである。
【0030】
<畳床の切断と並び替え工程>
一覧表への各寸法の記入が終了した後、使用する畳床を用意する。そして、一覧表の上から順番に畳床を積み上げていく。すなわち、一覧表の一番上の畳床が一番下に、一覧表の一番下の畳床が一番上になる。
【0031】
畳床を積み上げる過程において、切断が必要な畳床については、丈及び/又は巾を切断してから積み上げる。なお、畳床を切断する時は、巾は上前を、丈は上前を上にして右側を切り落とすようにする。また、継ぎ足し部材の接着が必要な畳床を切断する際は、再生後の畳の寸法を基準として丈及び/又は巾を1.5寸以上切断することとする。これにより、継ぎ足し部材の幅が最低でも1.5寸以上となる。継ぎ足し部材の幅が小さすぎると形状が安定しないためである。
【0032】
なお、畳床の切断は、例えば専用の切断装置により行う(図示なし)。まず、畳床の裏面を上にして、上前が切断部側にくるように載置台に載せる。そして、畳床の右端を切断部側に押し当てつつ、目盛りを基準に切断する寸法に合わせる。このとき、切断寸法は畳床の裏面を基準にする(
図3参照)。次に、固定ボタンを押すと、上から固定部が降下して畳床が固定される。その後、切断ボタンを押すと、切り刃が移動して畳床が切断される。
【0033】
さらに、継ぎ足し部材の接着が必要な畳床については、畳床の側面に、必要な継ぎ足し部材の接着寸法をマジック等により直接書き込んでおく。次の継ぎ足し部材の接着の工程をスムーズに行うためと、使用する継ぎ足し部材の混同を防止するためである。
【0034】
<継ぎ足し部材の製造工程>
一方、一覧表より継ぎ足し部材の寸法とその数量をまとめる。そして、継ぎ足し部材を製造するための別の畳床を用意して、これを切断し、必要な寸法の継ぎ足し部材を必要数量製造する。なお、継ぎ足し部材を切断する際は、
図4に示すように、畳床の丈と平行に巾を切断して製造する。丈を切断すると、継ぎ足し部材がばらけ、形状が安定しないためであり、巾を切断することにより継ぎ足し部材の形状が安定し、畳床に接着した際の仕上がりがよく、強度にも不安がない。
【0035】
また、継ぎ足し部材の側面には、継ぎ足し部材の寸法をマジック等により直接書き込んでおく。これにより、継ぎ足し部材を畳床に接着する時に、畳床の側面に書き込まれた寸法と照合することで、使用する継ぎ足し部材の混同を防止する。
【0036】
<継ぎ足し部材の接着工程>
上記の工程により、畳床と継ぎ足し部材の用意が整ったので、続き畳床に継ぎ足し部材を接着する。畳床の並べ替え工程により、現在一覧表の一番下の番号の畳床が、一番上に積まれた状態である。
【0037】
上の畳床から順番に、畳床の丈及び/又は巾に継ぎ足し部材を接着していく。巾に接着する場合、すなわち巾寸法をのばすように継ぎ足し部材を接着する場合、上前側の丈の切断面に継ぎ足し部材を接着する。これは畳の構造上、上前が常に直線で構成されるため、継ぎ足し部材が直線形状でいびつな形状とならず、接着等の作業がスムーズになり、好ましいためである。
【0038】
また、丈に接着する場合、すなわち丈寸法をのばすように継ぎ足し部材を接着する場合、上前を上にして右側の巾の切断面に継ぎ足し部材を接着する。これは後の工程において右側がしっかりと固定できるためである。なお、本実施形態の畳床は、一例として上段にインシュレーションボード、中段にウレタンフォーム、下段にインシュレーションボードが積層されてなる畳床を用いている(
図3参照)。また、畳床の構造はこれに限られず、例えば上段にインシュレーションボード、下段にウレタンフォームが積層されたものや、その他の構造の畳でもよい。
【0039】
また、接着は、一例としてホットメルト接着剤を用い、畳床の切断面において主にインシュレーションボード部分にホットメルト接着剤をつけて、継ぎ足し部材の切断面を接着する。そして、接着した状態で、畳床を継ぎ足し部材側にしばらく押しあてた後、畳床を順番に積み上げる。これにより、一覧表と同じように、上から順番に畳床が積まれた状態となる。
【0040】
<畳の製造>
続き、これらの畳床を用いて再生畳を完成させる。これらの畳床から再生畳を製造する工程は、通常の畳の製造と同様である。具体的には、畳床をかまち裁断し、表張り、かまち縫い、平刺し、角おり、返し縫いの工程などを経て、再生畳が完成する。
【0041】
<畳の入れ替え>
以上の工程により製造した再生畳を、畳を入れ替える部屋に持って行く。そして、あらかじめ敷かれてある畳を取り外し、再生畳を敷き詰める。これにより、畳の入れ替えが完了する。
【0042】
この工程により、従来の新規の畳を購入する場合よりもコストを抑えることができ、また、畳表を張り替える場合よりも大幅に時間を短縮でき、機会損失を抑えることができる。
【0043】
以上のとおり、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。例えば、上記した実施形態では、紙ベースの表や手書き入力による例であるが、コンピュータを用いて畳や畳床の寸法等の管理や数値の入力、寸法の照合等にソフトウェアを利用してもよい。
【0044】
また、上記の実施形態では、部屋の寸法から敷き詰める予定の再生畳を割り付けて、使用する畳床を選定しているが、これにかえて、部屋にあらかじめ敷き詰められている各畳の寸法を基準に使用する再生畳を決定し、使用する畳床を選定する構成としてもよい。これは、例えば部屋の構造等の理由により、入れ替える畳の寸法が決まっている場合や、既に1回再生畳の入れ替えがなされており、2回目以降の入れ替える際などに用いることができる。なお、その他の工程は上記の実施形態と同様でよい。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
【要約】
【課題】 コストを抑え、短時間で交換可能な畳のリース方法を提供する。
【解決手段】 部屋に敷き詰められた複数の畳の寸法を書き出す工程Aと、予め用意した複数の畳床の寸法と前記複数の畳の寸法とを照合して、使用する畳床を選別する工程Bと、前記部屋に入れ替える畳を、前記複数の畳床を用いて再生し、再生畳を製造する工程Cと、前記複数の畳を前記部屋から取り外し、複数の前記再生畳を部屋に敷く工程Dと、を備え、前記工程Cは、使用する畳床よりも小さい寸法の再生畳の製造については、該畳床の丈及び/又は巾を該再生畳の寸法に切断したうえ、畳表を取り付けて該再生畳を製造し、使用する畳床よりも大きい寸法の再生畳の製造については、該畳床の丈及び/又は巾を切断した後、該畳床の切断面に継ぎ足し部材を接着し、畳表を取り付けて該再生畳を製造する、畳のリース方法。
【選択図】
図1