特許第6195280号(P6195280)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6195280
(24)【登録日】2017年8月25日
(45)【発行日】2017年9月13日
(54)【発明の名称】多層カプセルおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/48 20060101AFI20170904BHJP
【FI】
   A61K9/48
【請求項の数】11
【外国語出願】
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-248020(P2015-248020)
(22)【出願日】2015年12月18日
(62)【分割の表示】特願2014-515793(P2014-515793)の分割
【原出願日】2011年6月15日
(65)【公開番号】特開2016-128419(P2016-128419A)
(43)【公開日】2016年7月14日
【審査請求日】2016年1月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】513096370
【氏名又は名称】オリエント ファーマ シーオー.,エルティーディー.
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】後藤 育男
(72)【発明者】
【氏名】チアン,チン−チン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,イェン−フェイ
【審査官】 磯部 洋一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−237734(JP,A)
【文献】 特表平09−506606(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/102291(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0260844(US,A1)
【文献】 特開昭60−109520(JP,A)
【文献】 特開昭60−132562(JP,A)
【文献】 特表平06−505263(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/084850(WO,A1)
【文献】 特表平9−500097(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0305159(US,A1)
【文献】 J. Pharm. Pharmacol. 1980, Vol.32, p.389-393
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層カプセルを製造する方法であって、該方法は、
本体を含むカプセル、および少なくとも1つのカバー本体を提供する本体提供工程であって、本体が、内部空間および少なくとも1つの開口部を有する、本体提供工程;
第1均質材料、第2均質材料、およびバリア層を、本体の内部空間に加える付加工程であって、バリア層が、第1均質材料の前または後に加えられる、付加工程;および
本体の少なくとも1つの開口部上の少なくとも1つのカバー本体を取り付ける取付工程であって、第1および第2の均質材料が、バリア層によって分離される、取付工程、を含み、
前記付加工程において、第1均質材料の後にバリア層を加えることは、内壁の放出地点までバリア層をスプレーすることを含み、ここで、放出地点と均質材料の上部との間の距離は、2mm乃至3mmであることを特徴とする、方法。
【請求項2】
本体および少なくとも1つのカバー本体の軸を水平面に対して垂直にし、本体の少なくとも1つの開口部が水平且つ上の位置にあることを可能にする、カプセルの配向を調節する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つの開口部を晒すために、少なくとも1つのカバー本体を取り外す工程をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
付加工程は、半固体または液体の形態となるように、第1均質材料、第2均質材料、およびバリア層を加熱する加熱工程をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
加熱工程は、25℃と85℃の間で行われることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
付加工程は、固体または固体ブロックの形態となるように、第1均質材料、第2均質材料、およびバリア層を冷却する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
バリア層の厚みは、本体の長さの5%乃至25%を占めることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
バリア層をスプレーすることは、ノズルのスプレー地点から内壁の放出地点まで画定された線と、ノズルのスプレー地点から内壁までの水平線との間の、10度乃至40度の角度で行われることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項9】
より高い融点を有する、第1均質材料、第2均質材料、またはバリア層が最初に加えられることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
第1均質材料は、バリア層の融点よりも高い融点を有し、およびバリア層は、第2均質材料の融点より高い融点を有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
バリア層は、第1均質材料および第2均質材料の融点よりも高い融点を有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
薬剤の製造では、カプセル化は、カプセルとして知られている、比較的安定したシェルに薬を封入するために使用される様々な技術を指す。カプセルの2つの主要なタイプは、ハードシェルカプセルおよびソフトシェルカプセルである。例えば、図1Aは、成分を保持するための管状本体および管状カバー本体(キャップ)によって形成された、一般的なハードシェルカプセルを示す。管状本体は、示されるように、管状カバー本体より小さいが、大きくてもよい。カプセルは、予め締められた状態、すなわち、カプセルカバー本体が、カプセル本体に取り付けられるが、例えば、そこに充填剤を加えるための任意の望ましい又は必要とされる時間で、そこから容易に取り除かれ得る状態で、一般に供給される。成分を加えるプロセスにおいて、予め締められたカプセルは、ホッパーに装填され;その後、予め定義された数のカプセルは、放出され、その後、成分を充填するために、カプセルの本体からカバー本体が分離される。充填後に、カバー本体は、カプセルの本体の上に戻される。脱臭、漏れ防止、酸化防止などの、異なる状況下での所望の目的によっては、カプセルは、様々な乾燥工程のプロセスを受け得る。
【0002】
問題がそれほどない、果粒剤、または粉末剤の付加を扱うことができる、いくつかのカプセルを加える装置(capsule adding devices)が市場に出ている。しかしながら、これらの装置には、半固体または液体の成分に処理するときに、所望の薬物効力を維持する問題がある。例えば、最初の充填剤が、次の半固体または液体の成分と混合しないように、半固体または液体の形態において、最初の充填剤の分離表面の安定したレベルを維持することが重要である。一旦混合されると、薬物効力は、薬物または薬物間の相互作用の拡散が原因で弱まる。
【0003】
さらに、半固体または液体の分離表面が、発泡する(foaming)か又は固定されないと、分離表面上の又はその近くの薬物は、残りの部分とは別々に溶解し;これは、平坦でない、傾いた、または発泡する表面からの層間のより大きな接触表面が原因である。薬物の溶解時間は予測不能となり、予期される効力を達成することができない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、多層カプセルおよび多層カプセルを製造する方法を提供する。本発明の多層カプセルは、均質材料の少なくとも2つの層および少なくとも1つのバリア層を含み、ここで、均質材料の各層は、同じ又は異なる生物薬剤の成分を含み、他の層と同じ又はそれとは異なる溶離の形態を有する。多層カプセルは、幾つかの実施形態において:
少なくとも1つの開口部および内部空間を含む、本体;
本体の少なくとも1つの開口部上に取り付ける又はそこから取り外すための、少なくとも1つのカバー本体;
第1コンパートメントおよび第2コンパートメントを分離するために本体の内部空間に配置されたバリア層、を含み、該バリア層は、室温では固体であり、35℃より高い温度では半固体または液体である。
【0005】
幾つかの実施形態では、本明細書には、多層カプセルを製造する方法が提供され、該方法は、
本体を含むカプセル、および少なくとも1つのカバー本体を提供する工程であって、本体が、内部空間および少なくとも1つの開口部を有する工程;
第1均質材料、第2均質材料、およびバリア層を、本体の内部空間に加える付加工程であって、バリア層が、第1均質材料の前または後に加えられる工程;および
本体の少なくとも1つの開口部上の少なくとも1つのカバー本体を取り付ける工程であって、第1および第2の均質材料が、バリア層によって分離される工程、を含む。
【0006】
本発明の多層カプセルを製造する方法は、幾つかの実施形態において、第1コンパートメントおよび第2コンパートメントを分離するために、半固体または液体の形態のバリア層を、カプセルの本体に加える工程を含み、ここで、バリア層は、35℃より低い温度では固体である。バリア層は、幾つかの実施形態において、0から4の間の重量比で鉱油およびパラフィンワックスを含む。
【0007】
<引用による組み込み>
本明細書で言及されるすべての公報、特許、および特許出願は、個々の公報、特許、または特許出願が、それぞれ、引用によって組み込まれるように、明確に且つ個々に示されるのと同じ程度まで、引用によって本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明の新しい特徴は、特に、添付の特許請求の範囲内に明記される。本発明の特徴及び利点のより良い理解は、本発明の原理が利用される、具体例を明記する後述する詳細な説明を引用することによって、および以下の添付図面によって得られるであろう。
【0009】
図1A図1Aは、先行技術のカプセルおよび本発明のカプセルの例示的な概略図を示す。
図1B図1Bは、先行技術のカプセルおよび本発明のカプセルの例示的な概略図を示す。
図1C図1Cは、先行技術のカプセルおよび本発明のカプセルの例示的な概略図を示す。
図2図2は、本発明のカプセルの準備のための典型的なフローチャートを示す。
図3図3は、本発明の多層カプセルを製造するための例示的なダイヤグラムを示す。
図4図4は、単一の本発明の多層カプセルの準備のための単純化された例示的なダイヤグラムを示す。
図5A図5Aは、具体的な広がり角度を有する例示的な本発明のノズルを示す。
図5B図5Bは、具体的な広がり角度を有する例示的な本発明のノズルを示す。
図6A図6Aは、本発明の多層カプセルを製造するための、別の実施形態からの例示的なダイヤグラムを示す。
図6B図6Bは、本発明の多層カプセルを製造するための、別の実施形態からの例示的なダイヤグラムを示す。
図7A図7Aは、ダイヤグラムを製造する図6Aに基づいた典型的なフローチャートである。
図7B図7Bは、ダイヤグラムを製造する図6Bに基づいた典型的なフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
幾つかの実施形態では、本発明は、均質材料の少なくとも2つの層および少なくとも1つのバリア層を含む、多層カプセルが提供され、ここで、均質材料の各層は、同じ又は異なる生物薬剤の成分(例えば、医薬品有効成分(API)栄養補助成分など、)を含み、他の層と同じ又はそれとは異なる溶離の形態を有する。カプセル中の薬物の安定性および所望の薬物効力を達成するために、および薬物が、多層カプセルの準備の間に相互作用しないことを確かなものとするために、本発明のカプセルはさらに、安定した且つ生体にやさしい成分から成るバリア成分を含む。
【0011】
医薬品有効成分は、バンコマイシン、テイコプラニン、ラモプラニン、 ジフィミシン(difimicin)、カナマイシン、ネオマイシン、コリスチンなどの、抗生物質、ザレプロン、ゾルピデムなどの、催眠薬、または他の限定されない医薬品成分でもよい。栄養補助成分は、ビタミン、アミノ酸、植物抽出物、非植物成分(nonbotanicals)、または他の限定されない栄養補助食品でもよい。
【0012】
図1A−1Cを参照すると、本発明のカプセル(1)は、少なくとも1つのカバー本体(3)および本体(2)を含み、ここで、本体(2)は、少なくとも1つの開口部(4)および内部空間(5)を有する。幾つかの実施形態では、カバー本体(3)は、本体(2)よりもわずかに大きな直径を有し、これによって、カバー本体(3)は、本体(2)の開口部上に取り付けられ、開口部(4)を閉じることが可能となる。幾つかの実施形態では、本体(2)は、第1コンパートメント(61)および第2コンパートメント(62)(図1C)を提供するために内部空間(5)を分離する、本体(2)の内壁と接触するバリア層(50)を含む。特定の実施形態では、バリア層の厚みは、本体の長さの約5%乃至25%を占める。バリア層は、胃腸環境下で、消化管において溶解、消化及び/又は解放可能である、生体にやさしい材料から作られる。幾つかの実施形態では、バリア層(50)は、鉱油、パラフィン(パラフィンワックス)、それらの組み合わせなどを含む。幾つかの実施形態では、鉱油とパラフィンワックスの重量比は、0から4の間であり、これは、バリア層が、パラフィンワックスと、またはバリア層が、室温または正常な保存条件の温度で固体のままであるような少なくとも20%のワックスと混合された、0〜80%の鉱油を含んでもよい。バリア層の融点は、鉱油とパラフィンワックスの比率によって決定される。
【0013】
図1Cを参照すると、第1コンパートメント(61)および第2コンパートメント(62)は、それぞれ、第1均質材料(51)および第2均質材料(52)を含み、ここで、バリア層(50)は、第1均質物質(51)および第2均質物質(52)を分離する。言いかえれば、本体の内部空間(5)は、3つの付加成分を含む。幾つかの実施形態では、第1均質材料(51)および第2均質材料(52)は、医薬品有効成分を含む。第1または第2の均質物質は、室温または正常な保存条件の温度で、液体、固体、または半固体であり得る。幾つかの実施形態では、液体は、均質な液体または懸濁液を含む。幾つかの実施形態では、固体は、固体ブロック、マイクロカプセル、果粒剤、または粉状の固体(例えば粉末剤)を含む。半固体は、液体と比較して比較的ゆっくり流れる粘性流体である。固体ブロックは、(例えば、35℃より高い)高温で、半固体または液体の形態であり得る、固体を指す。幾つかの実施形態では、第1または第2の均質材料は、室温または正常な保存温度で固体ブロック、および(例えば、35℃より高い)高温で半固体または液体の形態において、少なくとも1つの熱溶解性の賦形剤を含む。幾つかの実施形態では、第1均質材料(51)は、バリア層(50)の融点よりも高い融点を有し、バリア層(50)は、第2均質材料(52)の融点より高い融点を有する。
【0014】
典型的な熱溶解性の賦形剤は、限定されないが、ポリエチレングリコール(PEG)、親油性化合物、プロピレングリコール脂肪酸エステル、随意のpH感受性ポリマー(アルギン酸ナトリウムまたはカルボキシルメチルセルロースナトリウムなど)、ポリエチレングリコールエステルなどを含む。
【0015】
本明細書に記載される幾つかの実施形態では、本発明の多層カプセルを製造する方法を提供され、ここで、付加プロセスが、カプセル充填装置によって完了される。カプセル充填装置は、カプセル充填を完了するための断続的な及び/又は継続的な駆動装置であり得、ディスクリンク、チェーンリンク、または当該技術分野で既知の他の適切なリンクによって、カプセルホルダーに適用することができる。図2および図3−4の概略図を参照すると、工程(810)は、ホッパーに予め締められたカプセルを装填する工程を含む。工程(820)は、ホルダーまたはホルダーブロックにカプセルを装填し、カプセルの配向を調節する工程を含む。薬物の所望の効力またはバイオアベイラビリティの特性を保証すべく、隣接した充填材の間の最小の接触(分離)表面に基づいて、固定された形態(または形状)の下での第1均質材料(51)、バリア層(50)および第2均質材料(52)を加えるために、充填プロセスのためのカプセルの配向は、図4に示されるようなカプセル1の配向と同じであることが好ましい。本体(2)およびカバー本体(3)の軸は、水平面に対して垂直であり、一方で、本体の開口部(4)は、水平且つ上の(up)の位置にあり;このように、各充填剤の界面または表面は、運転条件下で、開口部(4)と平行であり、隣接した充填材は、最小の接触表面(または分離表面)を有するであろう。幾つかの実施形態では、カプセルの適切な配向は、センサー(例えば、レーザまたは可視光センサーなど)によってモニタリングすることができ、状況に応じて調節することができる。例えば、レーザーセンサーは、カプセルの前進または後進の配向を検知するために使用することができる。カプセルが反転している(すなわち、本体(3)が上部にある)と、カプセルは、配向を調製するディスクなどの、配向を調整した手段を介して通った後に、配向を進めるために回転される。カプセルは、適切な配向の位置にあると、配向を調節するディスクを介して通った後に、そのままとどまる。工程(830)は:開口部(4)を晒すために、本体(2)からカバー本体(3)を分離する。その後、工程(840)では、不十分な(poor)分離したカプセルおよび欠陥のある本体が排除される。正常運転の下で、カプセルにおける本体(2)およびカバー本体(3)は、状況に応じて分離される。しかしながら、カプセルが適切に分離しないと、分離していないカプセルは、シンブル(thimble)装置、またはシンブル様の装置によって取り出され、工程(840)における回収ボックスに送られる。さらに、幾つかの実施形態では、欠陥のあるカプセル(例えばカバー本体のない又は故障したカバー本体を有する、または本体のない又は故障した本体を有する、カプセル)が検出されると、機械は、欠陥のあるカプセルが除去手段(欠陥のあるカプセルの手動での除去など)によって除去されるまで運転を中止する。欠陥のあるカプセルは、例えば、2つのレーザーセンサーによって検出され得、1つは本体を検出するための、もう1つはカバー本体を検出するためのレーザーセンサーである。
両方の本体が検出されるときにだけ、装置は、次の工程(すなわち工程(850))に移る。
【0016】
工程(850):カプセルの本体(2)へ、第1均質材料(51)を加える。カプセルの追加は、連続的又は並列的でもよい。第1均質材料(51)は、幾つかの実施形態において、高温で半固体又は液体である固体ブロックを含む。特定の実施形態において、固体ブロックは、35℃より高い温度で半固体又は液体である。固体ブロックは、温度が35℃未満又は室温の場合に固体であり、そのため、次に加える物質(例えば、バリア層)とは混合しない。第1均質材料(51)は、追加手段によってカプセルの本体(2)へ加えることを可能にする溶離特性を有する、均質的に半固体又は液体となるように、加熱される。幾つかの実施形態において、追加手段はノズルを介する。例えば、第1均質材料(51)の融点がA℃であり、物質が固体ブロックになる場合、その後、工程(850)は更に、追加手段を介する容易な追加のために半固体又は液体の形態にある第1均質材料(51)を作るため、温度をA℃より上に上昇する工程を含む。第1均質材料(51)が加熱される場合、工程(855)は、例えば、冷却手段によりA℃未満の温度にまで、第1の均質な材料を冷却する工程を含む。冷却手段は、限定されないが、冷却の硬化速度を上げるため、カプセル本体(2)に、カプセルホルダー又はホルダーブロックに、又は第1均質材料(51)の液体又は半固体の形態に、空気(室温の又は冷たい空気)を吹付ける工程を含む。特定の実施形態において、冷却手段は、外部冷却デバイスを適用する工程を含む;例えば、カプセル本体(2)及び第1均質材料(51)が冷却するようにカプセルホルダーを冷却する、冷却の使用を含む。一方、付加工程及び貯蔵工程の間に、又は室温にて同じ形態を有するように(例えば、付加工程の間の、及び貯蔵条件での粉末形態)、第1均質材料(51)を、加熱無しで直接加えることができる場合、工程(855)を進める必要はない。第1均質材料(51)の追加は、工程(850)及び(855)の後に完了する。
【0017】
工程(860)は、第1均質材料(51)を加える第1コンパートメント(61)及びまだ追加されていない第2コンパートメント(62)を形成するため、カプセルの本体(2)へバリア層(50)を追加する工程を含む。特定の実施形態において、バリア層(51)を調製するために使用される生体にやさしい物質の量は、本体の長さの約5%乃至約25%を占めるが、この範囲に限定されないバリア層の厚みによって決定される。幾つかの実施形態において、バリア層の厚みは、本体の長さの約5%乃至約20%、約5%乃至約15%、又は約5%乃至約10%を占める。更に、幾つかの実施形態において、本明細書で使用されるバリア層は、容易に充填するため半固体又は液体の形態である。上述のように、バリア層は、幾つかの実施形態において、鉱油、パラフィン(又はパラフィンワックス)、それらの組み合わせなどを含む。特定の実施形態において、鉱油とパラフィンワックスの重量比は0乃至4の間である。バリア層が100%のパラフィンワックスを含む場合、バリア層は約60乃至65℃の融点を有する。そのようなバリア層(100%のパラフィンワックス)の形態は、60乃至65℃にまで加熱された時、半固体又は液体の形態に変わる。バリア層の融点は、鉱油が加えられるときに減少し、そのため、半固体又は液体のバリア層(51)を生成するのに必要な温度は、60乃至65℃未満であり得る。それ故、工程(860)で使用される温度は、組成物(例えば、鉱油とパラフィンワックスの定量)に関連するバリア層の融点によってさらに決定される。
【0018】
更に、以前に述べられたように、バリア層(50)の目的は、第1均質材料(51)及び第2均質材料(52)を分離することである;バリア層は、第1均質材料(51)を加えた後に加えられている。バリア層が、固体ブロック形態にある第1均質材料(51)の上部に加えられるよう、半固体又は液体の形態にあるため(加熱された後)、バリア層の融点B℃は、第1均質材料(51)の再融解を回避するため、A℃(第1均質材料の融点)未満である必要がある。要するに、バリア層(50)の融点は、第1均質材料(51)未満である必要がある。バリア層の組成物は、従って、第1均質材料未満の融点を有するように調節される。しかしながら、融点B℃は、バリアとして作用する能力を失い、故に他の層と混合してしまう、室温又は正常な貯蔵条件の温度のバリア層の融解を回避するため、室温又は正常な貯蔵温度より高い必要がある。
【0019】
幾つかの実施形態において、第1均質材料(51)の粗表面をもたらしてしまう、付加工程中のノズルからの直接の吐き出し、スプレー、又は解放により、バリア層の追加プロセスから第1均質材料(51)の表面に圧力を加えないために、本発明の方法又はデバイスは、本発明のノズルを含み、該ノズルは、カプセルの内部空間(7)の上に要素(例えば、バリア層)を吐き出し、スプレーし、又は解放して、それ故、第1均質材料(51)の表面への圧力を減少する。図5A及び5Bを参照すると、バリア層(50)は、均質材料の表面からの距離dを有する壁(7)の解放点Rの上にスプレーされる。特定の実施形態において、Rは、約2mm乃至約3mmである。幾つかの実施形態において、スプレー角度シータは、約0乃至60度である。特定の実施形態において、スプレー角度シータは、約10乃至45度である。特定の実施形態において、スプレー角度シータは、約10乃至40度である(図5B)。スプレー角度シータは、線L(ノズルのスプレー地点Sから内部空間の解放点Rまで)と、ノズルのスプレー地点Sから内部空間(7)までの水平線の間の程度として定義される。当業者は、本発明のノズルの長さ及び/又はサイズと、本発明のノズルの先端又は解放点の設計が、標的とされた本発明のカプセルの仕様に従って変わり得ることを容易に認識するであろう。図5に示される設計は、限定しない例である。
【0020】
幾つかの実施形態において、本発明のノズルからの直接的な吐き出し、スプレー、又は解放により、バリア層の追加プロセスから第1均質材料(51)の表面に圧力を加える工程が問題でない場合、均質材料の表面へ直接スプレーする従来のノズルが、使用される。
【0021】
工程(865):冷却手段を介する、B℃未満の温度へのバリア層(50)の冷却。この工程の目的は、次に加える物質(即ち、第2均質材料(52))との混合を回避するために、バリア層(50)の固体形態を確保することである。温度がB℃未満の場合、バリア層(50)は固体になり、次に加えるものと混合する機会があまりない。冷却手段は、工程(855)におけるものと同じである。第2の要素(即ち、バリア層(50))の追加は、工程(860)及び(865)の後に完了する。
【0022】
工程850:カプセルの本体(2)への第2の均質な材料(52)の追加。特定の実施形態において、第2均質材料(52)は、固体ブロック、マイクロカプセル、果粒剤、又は粉末剤などの粉状の固体物などの、固体形態に加えられる(条件1)。特定の実施形態において、第2均質材料(52)は、液体又は半固体の形態に加えられる(条件2)。特定の実施形態において、追加プロセスの間、液体又は半固体の形態にある均質材料(52)は、室温又は正常な貯蔵温度で液体又は半固体の形態のままである(条件2a)。特定の実施形態において、追加プロセスの間、液体又は半固体形態にある均質材料(52)は、室温又は正常な貯蔵温度で固体ブロックになり(条件2b);要するに、第2均質材料(52)は、高温(例えば、35℃より高い)で半固体又は液体の形態にある。
【0023】
例えば、条件2bの下で第2均質材料(52)を追加する場合、第2均質材料(52)の融点がC℃であると、工程(870)は更に、C℃より上に温度を挙げるための工程を含む。更に、第2均質材料(52)が、硬化された(凝固された)バリア層(50)の表面に加えられるため、第2均質材料(52)の融点C℃は、バリア層(50)の再融解を回避するため、B℃(バリア層(50)の融点)未満である必要がある。要するに、第2均質材料(52)の融点は、バリア層(50)未満である必要がある。結果として、工程(850)、(860)及び(870)に基づき、A℃>B℃>C℃であり;要するに、より高い融点を有する物質を最初に加える必要がある。例えば、ザレプロンを含む3層カプセルは、本発明の方法に従って調製された。3層カプセルは、ザレプロンを含む均質材料(即ち、第1均質材料及び第2均質材料)の2つの層、及びザレプロンを含まないバリアの1つの層から成る。バリア層は、パラフィンワックスから作られた。第1及び第2均質材料の両方は、室温で固体ブロックである。第1均質材料を追加するための温度は、75乃至80℃であり、そこでは、物質は流体であり、カプセルへ容易に加えられた。バリア層は、約60乃至65℃で追加する温度を必要とする、100%のパラフィンワックスから成った。第2均質材料の追加温度は、55乃至60℃であった。要約すると、第1均質材料(51)、バリア層(50)及び第2の均質な層(52)の融点に達するために、工程(850)、(860)及び(870)は、均質材料、バリア層及び第2の均質な層を熱するため、更に加熱工程を含み、温度範囲は室温(例えば、25℃)と80℃の間にある。
【0024】
3層カプセルを製造する別の例は、以下のとおりである。第1均質層(アルギン酸ナトリウム及びポリエチレングリコールグリセリドを含む)を包含するバンコマイシンは、高温で液体の形態にあるカプセルの本体へと最初に加えられた。その後、バリア層(パラフィンワックスを含む)は、冷却(70℃乃至室温まで)された後、第1均質材料の上に加えられた。その後、バンコマイシン、PEG1500、及びポリエチレングリコールグリセリドを含む第2均質材料は、室温にまで冷却された後、バリア層の上に加えられた。
【0025】
工程(870)の後、工程(875)は、第2均質材料(52)を冷却するために選択され得る。幾つかの実施形態において、第2均質材料は、室温又は貯蔵に適した温度にまで冷却される。第2均質材料(52)(即ち、第3の要素)の追加は、工程(870)及び(875)の後に完了する。工程(880)は、多層のカプセルを製造する典型的な本発明のプロセスを完了するため、本体(2)の開口部(4)の上にカバー本体(3)を取り付ける工程を含む。工程(890)は、多層カプセル、及び不完全な充填材を有するカプセルを解放する工程を含む。不完全な充填材を有するカプセルは、例えば、重量計測装置によりその重量を測定される。カプセルの体重がスペック内にない場合、カプセルは自動的に排除される;このプロセスは、後の2つタイプのカプセルが排除される場合に、完全に充填されたカプセル、不完全に充填されたカプセル、及び空のカプセルを識別する。
【0026】
幾つかの実施形態において、本発明は、第1均質材料(51)及び第2均質材料(52)を分離するため、生体にやさしい安全なバリア層(50)を提供する。特定の実施形態において、第1均質材料(51)は、1つ以上の医薬品活性成分(API)を含む。特定の実施形態において、第2均質材料(52)は、1つ以上の医薬品活性成分を含む。特定の実施形態において、第1及び第2均質材料は、1つ以上の医薬品活性成分を含む。バリア層(50)は、層(即ち、均質の物質)間の溶離(融解)の特性変化、及び/又は第1均質材料と第2均質材料の両方がAPI(同じ又は異なるAPI)を含む場合の、第1均質材料と第2均質材料の間のAPIの相互作用を防ぐ。例えば、バリア層なしで、APIは、濃度差により層の間に浸透し、それにより、所望の薬物効果を変更することがある。加えて、第1均質材料(51)と第2均質材料(52)の互いによって引き起こされる任意の他の効果は、バリア層(50)によって回避することができる。
【0027】
他の典型的な多層カプセル、及びその調製方法は、バリア層(50)が最初に加えられ、内部空間を2つに分離する、図6A及び6Bにおいて示される。図4に示される、典型的なカプセル及びその調製方法とは異なり、第1及び第2の均質の物質が、同じ開口部(4)を介して導入される場合、本明細書の本体(2)は、開口部(4)及び(4’)を有する。そのため、開口部(4)の上に取り付けられるカバー本体(3)、及び開口部(4’)の上に取り付けられるカバー本体(3’)が、使用される。故に、第1均質材料(51)は、開口部(4)を介して導入され、第2均質材料(52)は、開口部(4’)を介して導入される。従って、2つの配向を調節する工程が、必要とされる。
【0028】
例えば、図7A−7Bの工作図を参照すると、工程(910)は、予め閉じられたカプセルをホッパーに入れる工程を含む。工程(920)は、本体(2)から少なくとも1つのカバー本体を分離する工程を含み、不十分な分離によりカプセルを除去する。工程(930)は、バリア層(50)の追加を含む。バリア層は、内部空間に接続する内部空間に直接形成され、又は一時的に予め設置したステントの上部で内部空間に加えることにより形成さ得る(工作図6Aで示されない)。主要な追加の順序は、より高い融点を有する物質が最初に加えられる、以前に述べられたものと同じものである。この例において、バリア層(50)が最初に加えられるため、第1及び第2均質材料は、それらが半固体又は液体の形態で加えられる場合、バリア層より低い融点を有する必要がある。そのため、バリア層(50)の組成物(及び故に融点)は、第1及び第2均質材料の融点に基づいて、工程(930)において予め決定される。バリア層は、室温又は正常な貯蔵温度より高い融点を有する必要があり、そのため、バリア層は、層の分離によるその機能の損失、及び他の層との混合をもたらしてしまう、室温又は貯蔵温度で溶解しない。
【0029】
工程935:バリア層(50)の冷却。一時的に予め設置したステントが工程(930)で使用される場合、ステントは、次の工程を始める前に工程(935)で除去される。工程940:カプセルの配向の制御。これは、本体の開口部(4)を水平位置及び上の位置にすることを可能にするよう、本体(2)の軸を水平面に対して垂直にするための、第1の配向調整である(また、図6Aを参照)。工程(950)は、第1均質材料(51)の追加を含む;工程(955)は、第1均質材料(51)の冷却を含む。工程(960)は、本体(2)の開口部(4)の上に第1のカバー本体(3)を取り付ける工程を含み、カプセルの配向を180度回転させる(図7A乃至7Bを継続する)。工程(965)は、第2のカバー本体(3’)を取り外す工程を含む。工程(960)に関して、配向調整は、工程(965)でカバー本体(3’)を取り外した後に、開口部(4’)(開口部(4)に対向する開口部)を水平位置及び上の位置にすることを必要とする。工程(970)は、第2均質材料(52)の追加を含む;工程(975)は、第2均質材料(52)の冷却を含む。工程(980)は、本体(2)の開口部(4’)の上に第2のキャップ(3’)を取り付ける工程を含む;工程(990)は、完全に充填されたカプセルを解放する工程、及び空の又は不完全に充填されたカプセルを排除する工程を含む。
【0030】
故に、本実施例はまた、第1及び第2均質材料の代替的な追加の順序を提供する。例えば、第1又は第2均質材料が、付加工程中に、及び室温又は正常な貯蔵条件の温度で、マイクロカプセル、果粒剤、粉状の固体物、半固体、又は液体である場合、手順は、本発明の多層のカプセルの調製に適用され得、そこでは、例えば、第1均質材料(51)は、半固体又は液体の形態で加えられ、第2均質材料(52)は、マイクロカプセル、果粒剤、又は粉状の固体物であり;或いは、第1及び第2均質材料の両方は、液体の形態で加えられ;或いは、両方の物質は、半固体形態で加えられる。それは、手順が、マイクロカプセル、果粒剤、粉状の固体物、半固体、又は液体の層の表面上に、半固体又は液体の形態にあるバリア層を加える工程を必要としないためである(実施は容易ではない)。
【0031】
本発明の好ましい実施形態が、本明細書に示され、記載されている一方で、このような実施形態が、ほんの一例として提供されることは、当業者にとって明白であろう。ここで、本発明から逸脱することなく、多数の変更、変化、及び置換がなされることが、当業者によって理解される。本明細書に記載される本発明の実施形態の様々な代替案が、本発明を実行する際に利用され得ることを理解されたい。以下の特許請求の範囲が本発明の範囲を定義するものであり、これらの特許請求の範囲及びそれらの同等物の範囲内の方法及び構造が、それによって包含されることが意図される。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B