【実施例】
【0013】
以下、図面を用いて実施例により本発明を具体的に説明する。なお、本実施例では、乗り物として電車に搭載されるシート装置を例示する。
【0014】
(1)シート装置の構成
本実施例に係るシート装置11は、
図1及び
図2に示すように、単一のシート1からなる単独シートS1と、複数(図中2つ)のシート1を連結してなる連結シートS2と、を横方向D1に並べてシート列をなし、そのシート列を縦方向D2に複数設けてなされている。これら単独シートS1及び連結シートS2のそれぞれは、電車の進行方向に応じて向きを変更可能とさている。なお、本実施例では、上記シート列は、縦方向D2に6列設けられているものとする。
【0015】
上記シート1は、
図3及び
図4に示すように、シート本体2と、このシート本体2をその後方及び側方を覆うように収容するシェル3と、を備えている。また、シート本体2は、座席となるクッション部4と、クッション部4の前端側に連なり足のせとなるオットマン部5と、クッション部4の後端側に連なり背もたれとなるバック部6と、を備えている。このクッション部4は、モータM1の駆動により傾動可能(すなわち、チルト可能)に設けられている。また、オットマン部5は、モータM2の駆動により傾動可能に設けられている。さらに、バック部6は、モータM3の駆動により傾動可能(すなわち、リクライニング可能)に設けられている。これら各モータM1〜M3の駆動は、シート1のアームレストの先端側に設けられるスイッチ操作部7(
図3参照)を操作することで、後述する制御装置の制御により実行される。
【0016】
上記各シート1には、シート1の動作を制御する共通の制御装置12(ECU(Electronic Control Unit)とも称される。)が備えられる(
図3参照)。この制御装置12は、
図5に示すように、CPU13(Central Processing Unit)と、図示しないメモリ(例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等)と、を備えている。また、制御装置12は、スイッチ操作部7のスイッチ14からの操作信号が入力される入力回路15と、モータM1〜M3を駆動するためのモータ駆動回路16と、を備えている。さらに、制御装置12は、端子ES1〜ES6、EF1、EF2、ER1、ER2を備えるコネクタ17と、各端子ES1〜ES6、EF1、EF2、ER1、ER2に接続される入出力回路18と、を備えている。
【0017】
上記コネクタ17には、電線e(
図6等参照)を束ねてなるワイヤーハーネスの一端側に設けられたコネクタ(図示省略)が接続可能とされている。これら各電線eは、後述するように制御装置12を備えるシート1の設置位置に応じて各端子ES1〜ES6、EF1、EF2、ER1、ER2のうちの所定の端子に接続されるように設けられている。
【0018】
上記各端子ES1〜ES6、EF1、EF2、ER1、ER2のうちの端子ES3は、右側に他の制御装置12が接続されていることを把握するための第1端子21として用いられる。また、端子ES4は、左側に他の制御装置12が接続されていることを把握するための第2端子22として用いられる。また、端子EF2は、前側に他の制御装置12が接続されていることを把握するための第3端子23として用いられる。さらに、端子ER2は、後側に他の制御装置12が接続されていることを把握するための第4端子24として用いられる。
【0019】
なお、上記端子ES1〜SE6は、横方向D1に隣り合う他の制御装置12に信号を送受信するためのものである。また、端子EF1、EF2、ER1、ER2は、縦方向D2に隣り合う他の制御装置12に信号を送受信するためのものである。
【0020】
上記制御装置12のそれぞれは、第1〜第4端子21〜24に対する電線eの接続状態(すなわち、通電状態)に基づいて、自身の制御装置12を備えるシート1の設置位置を把握可能とされている。具体的には、1座の単独シートS1では、1列目(先頭列)の制御装置12は、
図6(a)及び
図7に示すように、第4端子24に電線eが接続され且つ第1端子21、第2端子22及び第3端子23に電線eが接続されていないので、自身を備えるシート1が単独シートS1であり、その設置位置が1列目であることを把握する。
【0021】
また、2〜5列目の制御装置12は、
図6(b)及び
図7に示すように、第3端子23及び第4端子24に電線eが接続され且つ第1端子21及び第2端子22に電線eが接続されていないので、自身を備えるシート1が単独シートS1であり、その設置位置が2〜5列目であることを把握する。
【0022】
また、6列目(最終列)の制御装置12は、
図6(c)及び
図7に示すように、第3端子23に電線eが接続され且つ第1端子21、第2端子22及び第4端子24に電線eが接続されていないので、自身を備えるシート1が単独シートS1であり、その設置位置が6列目であることを把握する。
【0023】
さらに、1座の単独シートS1では、
図6及び
図7に示すように、1〜6列目の制御装置12のそれぞれにおいて、自身の端子ES5、ES6同士が接続されている。この端子ES5、ES6は、制御装置12を連結シートS2に設ける場合に、自身の左右側の他の制御装置12に対して信号を送受信するためのものである。
【0024】
一方、2座の連結シートS2では、
図8(a)及び
図10に示すように、1列目(先頭列)の左側の制御装置12は、第1端子21及び第4端子24に電線eが接続され且つ第2端子22及び第3端子23に電線eが接続されていないので、自身を備えるシート1の設置位置が1列目の左側であることを把握する。また、1列目の右側の制御装置12は、
図9(a)及び
図10に示すように、第2端子22及び第4端子24に電線eが接続され且つ第1端子21及び第3端子23に電線eが接続されていないので、自身を備えるシート1の設置位置が1列目の右側であることを把握する。
【0025】
また、2〜5列目の左側の制御装置12は、
図8(b)及び
図10に示すように、第1端子21、第3端子23及び第4端子24に電線eが接続され且つ第2端子22に電線eが接続されていないので、自身を備えるシート1の設置位置が2〜5列目の左側であることを把握する。また、2〜5列目の右側の制御装置12は、
図9(b)及び
図10に示すように、第2端子22、第3端子23及び第4端子24に電線eが接続され且つ第1端子21に電線eが接続されていないので、自身を備えるシート1の設置位置が2〜5列目の右側であることを把握する。
【0026】
さらに、6列目(最終列)の左側の制御装置12は、
図8(c)及び
図10に示すように、第1端子21及び第3端子23に電線eが接続され且つ第2端子22及び第4端子24に電線eが接続されていないので、自身を備えるシート1の設置位置が6列目の左側であることを把握する。また、6列目の右側の制御装置12は、
図9(c)及び
図10に示すように、第2端子22及び第3端子23に電線eが接続され且つ第1端子21及び第4端子24に電線eが接続されていないので、自身を備えるシート1の設置位置が6列目の右側であることを把握する。
【0027】
ここで、上記連結シートS2では、シート1の向きが電車の進行方向に応じて変更(反転)されたときには、各制御装置12は、連結シートS2の向きの変更信号の入力によりそれを認識するとともに、第1端子21と第2端子22の左右側の把握機能を入れ替えるものとする。
【0028】
なお、上記制御装置12による制御処理は、ハードウェア、ソフトウェアのいずれによって実現されてもよく、好適にはCPU、メモリ(ROM、RAM等)、入出力回路等を備えるマイクロコントローラ(マイクロコンピュータ)を中心に、入出力インターフェース等周辺回路を備えることにより構成することができる。
【0029】
(2)シート装置の作用
次に、上記構成のシート装置11の作用について説明する。各制御装置12は、第1〜第4端子21〜24の接続状態に基づいて自身を備えるシートの設置位置を把握する。そして、電車の進行方向に応じてシートの向きを変えるとき、あるいはシート1に備えられたアテンダントコールスイッチ(図示省略)を操作するとき等において、各制御装置12は、自身を備えるシート1の設置位置を把握することで、そのシート1の設置位置に応じて、縦方向D2や横方向D1に隣り合う他の制御装置12との間で必要な信号を送受信する。
【0030】
(4)実施例の効果
以上より、本実施例のシート装置11によると、シート1のそれぞれには、シート1の動作を制御する制御装置12が備えられ、制御装置12のそれぞれには、右側に他の制御装置12が接続されていることを把握するための第1端子21、左側に他の制御装置12が接続されていることを把握するための第2端子22、前側に他の制御装置12が接続されていることを把握するための第3端子23、及び後側に他の制御装置12が接続されていることを把握するための第4端子24が備えられる。そして、制御装置12のそれぞれは、第1〜第4端子21〜24の接続状態に基づいて、制御装置12を備えるシート1の設置位置を把握可能とされている。これにより、各制御装置12は、自身を備えるシート1の設置位置を把握することで、そのシート1の設置位置に応じて、横方向D1や縦方向D2に隣り合う他の制御装置12との間で必要な信号を送受信する。その結果、連結シートS2や単独シートS1等の様々な仕様違いのシートで共通の制御装置12を使用できる。このように、共通の制御装置12を設計することで、評価・品質保証の効率化及びコストダウンを図ることができる。
【0031】
さらに、本実施例では、単独シートS1に備えられる制御装置12では、制御装置12が備える端子ES5、ES6同士が接続されている。これにより、単独シートS1の制御装置12は、端子ES5、ES6同士の接続により自身の送信する信号を自身で受信する。よって、単独シートS1を備える仕様違いのシートで共通の制御装置12を使用できる。
【0032】
尚、本発明においては、上記実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。すなわち、上記実施例では、2つのシート1を連結してなる連結シートS2を例示したが、これに限定されず、例えば、3以上のシート1を連結してなる連結シートとしてもよい。
【0033】
また、上記実施例では、1つの連結シートS2と1つの単独シートS1とを横方向に並べてシート列としたが、これに限定されず、例えば、1又は2以上の連結シートS2と1又は2以上の単独シートS1とを横方向に並べてシート列としてもよい。さらに、2以上の連結シートS2同士を横方向に並べてシート列としたり、2以上の単独シートS1同士を横方向に並べてシート列としたりしてもよい。
【0034】
また、上記実施例では、端子ES3を第1端子21とし、端子ES4を第2端子として用いるようにしたが、これに限定されず、例えば、端子EF1、ER1等を第1端子21又は第2端子として用いるようにしてもよい。
【0035】
さらに、上記実施例では、単一のコネクタ17に第1〜第4端子21〜24を備えるようにしたが、これに限定されず、例えば、第1〜第4端子21〜24を分けて複数のコネクタに設けるようにしてもよい。
【0036】
前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態の例を挙げて説明したが、本発明の記述および図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲または精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料および実施例を参照したが、本発明をここにおける開示事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【0037】
本発明は上記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形または変更が可能である。