(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
吸収体と、該吸収体の肌対向面側に配された表面シートと、該吸収体の非肌対向面側に配された裏面シートとを具備し、着用者の腹側に配される腹側部及び背側に配される背側部とそれらの間に位置する股下部とを有すると共に、該腹側部から該股下部を介して該背側部に延びる縦方向とこれに直交する横方向とを有する吸収性物品であって、
前記股下部においては、前記吸収体の非肌対向面には、該非肌対向面側から施されたエンボス加工による凹部が多数形成された凹部形成領域を有しているが、該非肌対向面とは反対側に位置する該吸収体の肌対向面側からはエンボス加工は施されておらず、該肌対向面は平坦であり、
前記腹側部及び前記背側部においては、前記吸収体の肌対向面には、該肌対向面側から施されたエンボス加工による凹部が多数形成された凹部形成領域を有しているが、該肌対向面とは反対側に位置する該吸収体の非肌対向面側からはエンボス加工は施されておらず、該非肌対向面は平坦である吸収性物品。
前記凹部形成領域の横方向長さに関し、前記股下部の前記吸収体の非肌対向面における該凹部形成領域の横方向長さは、前記腹側部及び前記背側部それぞれの該吸収体の肌対向面におけるそれに比して短い請求項1又は2記載の吸収性物品。
前記腹側部及び前記背側部における前記凹部の単位面積に占める割合は、前記股下部から離れるに従って漸次減少している請求項1〜6の何れか一項に記載の吸収性物品。
前記股下部の前記凹部は、平面視において縦方向に延びる連続若しくは不連続な線状、又は縦方向とのなす角度が45°未満の準縦方向に延びる連続又は不連続な線状であり、前記腹側部及び前記背側部の前記凹部は、平面視において横方向に延びる連続若しくは不連続な線状、又は横方向とのなす角度が45°未満の準横方向に延びる連続又は不連続な線状である請求項1〜8の何れか一項に記載の吸収性物品。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の吸収性物品について、その好ましい一実施形態である使い捨ておむつに基づき図面を参照しながら説明する。本実施形態のおむつ1は、
図1及び
図2に示すように、吸収体4と該吸収体4の肌対向面側に配された表面シート2とを具備している。本明細書において、肌対向面は、おむつ1及びその構成部材(例えば吸収体4)における、着用状態において着用者の肌側に向けられる面(相対的に着用者の肌に近い側)であり、非肌対向面は、おむつ1及びその構成部材における、着用状態において着用者の肌側とは反対側に向けられる面(相対的に着用者の肌から遠い側)である。
【0014】
更に説明すると、おむつ1は、いわゆる展開型の使い捨ておむつであり、
図1及び
図2に示すように、肌対向面を形成する液透過性の表面シート2、非肌対向面を形成する液不透過性若しくは液難透過性又は撥水性の裏面シート3、及び両シート2,3間に配置された液保持性の吸収体4を具備している。表面シート2及び裏面シート3は、それぞれ、吸収体4よりも大きな寸法を有し、吸収体4の周縁から外方に延出している。吸収体4(吸収性コア40をコアラップシート41で被覆してなるもの)は、おむつ1の縦方向Xと同方向に長い略矩形形状を有し、その長手方向を、展開且つ伸長状態におけるおむつ1の縦方向Xに一致させて、両シート2,3間の中央部に接着剤により接合されている。表面シート2及び裏面シート3としては、当該技術分野において従来公知のものを特に制限なく用いることができる。例えば、表面シート2としては各種の不織布や開孔フィルム等を用いることができ、裏面シート3としては樹脂フィルムや、樹脂フィルムと不織布等とのラミネート等を用いることができる。尚、吸収体4の非肌対向面側に、樹脂フィルム等が配され、更にその非肌対向面側に不織布等の外装シートが配された場合、その外装シートも裏面シート3に含める。
【0015】
おむつ1は、
図1に示すように、着用状態において着用者の腹側に配される腹側部A、背側に配される背側部C、及びそれらの間に位置して着用者股間部に配される股下部Bを有していると共に、縦方向Xとこれに直交する横方向Yとを有している。おむつ1の縦方向Xは、腹側部Aと背側部Cとの間に股下部Bを介して延びる方向である。おむつ1は、股下部Bの縦方向Xに沿う両側縁が内向きの円弧状に湾曲しており、
図1に示す如き平面視において、縦方向Xの中央部が内方に括れた砂時計状を有している。
【0016】
腹側部A、股下部B及び背側部Cの位置に関し、本発明では便宜的に、腹側部A、股下部B及び背側部Cはおむつ1(吸収性物品)を縦方向Xに三等分した場合の各領域に相当するものとする。実際におむつを装着した場合、股下部は、おむつを縦方向に三等分した場合の縦方向一端側の領域よりも、腹側寄り又は背側寄りに位置する場合もある。このため、後述する凹部形成領域が股下部に形成される場合において、「凹部形成領域は、おむつ1を縦方向Xに三等分した場合の腹側部Aと股下部Bとの境界線(該境界を通って横方向Yに延びる仮想直線)から腹側部Aに向けておむつ1の縦方向Xの全長の25%の位置まで延在する場合」があり、本発明は斯かる場合を含む。同様に本発明は、「凹部形成領域は、おむつ1を縦方向Xに三等分した場合の背側部Cと股下部Bとの境界線から背側部Cに向けておむつ1の縦方向Xの全長の10%の位置まで延在する場合」と、「凹部形成領域は、背側部Cと股下部Bとの境界線から股下部Bに向けておむつ1の縦方向Xの全長の10%の位置まで存在しない場合」とを含む。
【0017】
吸収体4は、液保持性の吸収性コア40と、該吸収性コア40の肌対向面及び非肌対向面を被覆する透水性のコアラップシート41とを含んで構成されている。吸収性コア40は、股下部Bの縦方向Xに沿う両側縁が内向きの円弧状に湾曲して括れ部を有しており、平面視において縦方向Xの中央部が内方に括れた砂時計状を有している(
図3(b)参照)。吸収性コア40は、その括れ部(横方向の長さが最も短い幅狭部)がおむつ1の股下部Bに位置するように、配置されることが好ましく、特に、吸収性コア40の括れ部がおむつ1の括れ部(
図1に示す如き展開且つ伸張状態において横方向の長さが最も短い幅狭部。股下部Bの縦方向Xの中央部。)と縦方向Xにおいて一致するか、又はおむつ1の括れ部から縦方向Xに±20mm以内に位置するように配置されることが、おむつ1の装着性の向上の観点から好ましい。
【0018】
コアラップシート41は、吸収性コア40の横方向Yの長さの2倍以上3倍以下の幅を有する1枚の連続したシートである。コアラップシート41は、吸収性コア40の肌対向面(表面シート2との対向面)の全域を被覆し、且つ吸収性コア40の縦方向Xに沿う両側縁から横方向Yの外方に延出し、その延出部が、吸収性コア40の下方に巻き下げられて、吸収性コア40の非肌対向面の全域を被覆している。吸収性コア40とコアラップシート41との間は、ホットメルト型接着剤等の公知の接合手段により接合されていても良い。吸収性コア40としては、例えば、木材パルプ、親水化剤により処理された合繊繊維等の親水性繊維からなる繊維集合体、又は該繊維集合体に粒子状の吸水性ポリマーを保持させたもの等を用いることができる。コアラップシート41としては、紙、親水化処理が施された繊維からなる親水性不織布等を用いることができる。
【0019】
腹側部A及び背側部Cそれぞれのウエスト部(縦方向Xの端部)における表面シート2と裏面シート3との間には、糸状の弾性部材31が横方向Yに沿って伸長状態で固定されており、これにより、おむつ1の着用時における該ウエスト部には、弾性部材31の収縮によりウエストギャザーが形成される。また、着用者の脚周りに配される左右のレッグ部における表面シート2と裏面シート3との間には、糸状の弾性部材32が縦方向Xに沿って伸長状態で固定されており、これにより、おむつ1の着用時におけるレッグ部には、弾性部材32の収縮により一対のレッグギャザーが形成される。また、おむつ1の表面シート2側における縦方向Xに沿う左右両側には、それぞれサイドシート34が配されている。サイドシート34の内側縁部には、糸状の弾性部材33が縦方向Xに沿って伸長状態で固定されており、これにより、おむつ1の着用時には弾性部材33の収縮により少なくとも股下部Bに立体ギャザーが形成される。表面シート2、裏面シート3、吸収体4、各弾性部材31,32,33及びサイドシート34は、ホットメルト型接着剤等の公知の接合手段により互いに接合されている。
【0020】
図1に示すように、おむつ1の背側部Cの縦方向Xに沿う両側縁部には、一対のファスニングテープ35,35が設けられている。ファスニングテープ35には、機械的面ファスナーのオス部材からなる図示しない止着部が取り付けられている。また、おむつ1の腹側部Aの非肌対向面(裏面シート3の非肌対向面)には、機械的面ファスナーのメス部材からなる被止着領域36が形成されている。被止着領域36は、裏面シート3の非肌対向面に、機械的面ファスナーのメス部材を公知の接合手段(例えば、接着剤やヒートシール等)で接合固定して形成されており、ファスニングテープ35の前記止着部を着脱自在に止着可能になされている。
【0021】
本実施形態のおむつ1の主たる特徴の1つとして、吸収体4(吸収性コア40及びコアラップシート41)の肌対向面4a(表面シート2との対向面)及び非肌対向面4b(裏面シート3との対向面)に、エンボス加工による凹部45が多数形成された凹部形成領域を有している点が挙げられる。この凹部形成領域は、多数の凹部45が一定のパターン(平面視形状及び配置)で設けられている領域である。凹部形成領域を構成する「多数の凹部」には、後述するように、単位面積あたりの凹部の個数が一定個形成されている、即ち、凹部占有率が後述する特定範囲にあることが好ましい。凹部45は、前述した、吸収性物品における理想的な液吸収・液拡散「特に股下部においては表面シートに液が残らず、且つ吸収体の上層部(相対的に着用者の肌に近い側)では液拡散面積が小さく、吸収体の下層部(相対的に着用者の肌から遠い側)では縦方向に液が広がる」を実現し、表面シート2に尿等の体液が残ること(いわゆる表面液残り)を効果的に防止するために形成されたものである。凹部45は、吸収性コア40及びこれを被覆するコアラップシート41に対してエンボス加工を施すことにより形成されており、コアラップシート41及び吸収性コア40がエンボス加工により一体的に凹陥してなる。凹部45は、吸収体4にのみ形成されており、吸収体4の両面側に配置された表面シート2及び裏面シート3には形成されていないことが、表面シート2については柔らかさによる良好な肌触りの観点、裏面シート3については、裏面シート3に力が加わった際の強度保持の観点から好ましい。
【0022】
図3に示すように、股下部Bにおいては、吸収体4の非肌対向面4bには、該非肌対向面4b側から施されたエンボス加工による凹部45が多数形成された凹部形成領域が形成されているが、該非肌対向面4bとは反対側に位置する吸収体4の肌対向面4a側からはエンボス加工は施されておらず、該肌対向面4aは平坦である。また、腹側部A及び背側部Cおいては、吸収体4の肌対向面4aには、該肌対向面4a側から施されたエンボス加工による凹部45が多数形成された凹部形成領域が形成されているが、該肌対向面4aとは反対側に位置する吸収体4の非肌対向面4b側からはエンボス加工は施されておらず、該非肌対向面4bは平坦である。つまり、吸収体4は、股下部Bおいては、肌対向面側(表面シート2側)から順に、凹部45が形成されていない凹部非形成層4Pと凹部45が形成されている凹部形成層4Qとを有し、腹側部A及び背側部Cにおいては、肌対向面側(表面シート2側)から順に、凹部形成層4Qと凹部非形成層4Pとを有している。尚、
図3では、説明容易の観点から、コアラップシート41における、吸収性コア40の肌対向面及び非肌対向面の何れの面も被覆していない部分〔吸収性コア40の括れ部(凹欠部)に対応する部分〕の図示を省略している。
【0023】
本明細書において、吸収体4の肌対向面4a及び非肌対向面4bに関して使用する「平坦」は、凹凸が全くない完全な平坦のみならず、微小な凹凸は存在するが実質的に平坦である場合を含む。「実質的に平坦な面」の一例として、当該面とは反対側に位置する面側からエンボス加工が施されたことに起因して、当該面に微小な凹凸が形成された場合が挙げられる。凹部45を形成するエンボス加工は、エンボス加工対象物である吸収体4を、相対向する2つの加圧部材間で加圧することにより実施され、その際、一方の加圧部材における、吸収体4の凹部45の形成面と対向する部分には、凹部45に対応するエンボス凸部が多数形成されたエンボス領域が位置し、他方の加圧部材における、該エンボス領域に対向する部分は、凹凸の無い平坦面である。吸収体4における、この加圧部材の平坦面で押圧された部分は、エンボス加工は施されておらず、該加圧部材の平坦面に対応して本来は平坦となるが、該部分とは反対側からのエンボス凸部による押圧の影響を受け、微小な凹凸が形成される場合がある。本発明においては、そのような場合であっても、その微小な凹凸が形成された面は「平坦」である。吸収体4におけるエンボス加工が施された面(被エンボス加工面)とは反対側に位置する面に凹凸が存在する場合において、その凹凸を構成する凹部の深さが、該被エンボス加工面に形成された凹部(凹部45)の深さの40%以下である場合、その凹凸は「微小な凹凸」であり、また、その凹凸が形成された面は「平坦」である。
【0024】
本実施形態においては、各凹部45は、
図3(b)に示すように、平面視円形状であり、股下部Bにおける吸収体4の非肌対向面4b並びに腹側部A及び背側部Cにおける吸収体4の肌対向面4aそれぞれの全域に、離散的なパターンで多数形成されている。各凹部45の深さD1(
図3(a)参照)及び直径R1(
図3(b)参照)は互いに同じであり、また、隣接する凹部45,45の間隔P1(
図3(b)参照)は均一になされている。凹部45を形成するためのエンボス加工は、この種の吸収性物品において構成部材を圧縮させるのに利用される公知のエンボス加工を利用することができ、例えば、熱エンボス加工、超音波エンボス加工等が挙げられる。凹部45においてはコアラップシート41と吸収性コア40とが一体化している。凹部45において一体化しているコアラップシート41と吸収性コア40とは、互いに融着されていないことが好ましい。具体的には、凹部45においてコアラップシート41が吸収性コア40から破れずに手で剥がせる程度に、コアラップシート41と吸収性コア40とが一体化していることが好ましい。
【0025】
図4には、おむつ1における液吸収・液拡散の様子(着用者から排泄された体液の挙動)が示されている。
図4中のドットを付した部分は、着用者から排泄された体液を示す。おむつ1の着用中において、着用者の排泄部から尿等の体液が排泄されると、その体液は主におむつ1の股下部Bの表面シート2に最初に接触する。吸収体4は、股下部Bにおいては、表面シート2側から順に、凹部非形成層4P及び凹部形成層4Qの積層構造を有しており、凹部非形成層4Pの肌対向面4a(表面シート2との対向面)は、エンボス加工が施されておらず平坦であるため、表面シート2と凹部非形成層4Pとは密着している。また、凹部非形成層4Pは、凹部45が形成されておらず、吸収性コア40を構成する吸収性材材料が密に充填しているため、これに隣接する表面シート2内に存する体液を引き込む力が比較的強い。従って、着用者の排泄部から股下部Bの表面シート2上に排泄された体液は、表面シート2に密着する凹部非形成層4Pによって該凹部非形成層4P内に速やかに引き込まれ、該凹部非形成層4P内を面方向に拡散しつつ、裏面シート3側に向かって速やかに透過移行する(
図4(a)参照)。
【0026】
一方、腹側部A及び背側部Cにおいては、表面シート2側から順に、凹部形成層4Q及び凹部非形成層4Pの積層構造を有しているところ、この凹部形成層4Qの各凹部45内の空間が体液拡散の障害となるため、該凹部形成層4Qにおいては、体液は面方向にほとんど拡散移行しない(
図4(a)参照)。従って、腹側部A及び背側部Cにおいては、おむつ1の肌対向面及びその近傍(表面シート2及び吸収体4の表面シート2寄りの部分)での体液の拡散移行が抑制される。
【0027】
股下部Bにおいて吸収体4の凹部非形成層4P内を裏面シート3側に向かって透過移行した体液(
図4(a)参照)は、股下部Bの凹部非形成層4Pに連なる、腹側部A及び背側部Cの凹部非形成層4Pへ拡散移行する(
図4(b)参照)。
【0028】
このように、吸収体4は、股下部Bの表面シート2に排泄された体液を素早く引き込むことができ、また、吸収体4の肌対向面側(表面シート2側)では、体液の拡散は股下部B内に留まるため液拡散面積が小さく、非肌対向面側(裏面シート3側)では、体液が股下部Bから縦方向Xに拡散して腹側部A及び背側部Cに達するため液拡散面積が大きい。従って、このような液吸収・液拡散特性を有する吸収体4を備えたおむつ1は、表面液残りが少なく、着用中に肌が体液で濡れることによる不快感が低減されている。
【0029】
前述した作用効果(液吸収・液拡散特性)をより確実に奏させるようにする観点から、吸収体4の各部の寸法等は次のように設定することが好ましい。
凹部45の深さD1(
図3(a)参照)は、吸収体4の厚みD2に対して、好ましくは10%以上、更に好ましくは15%以上、そして、好ましくは70%以下、更に好ましくは50%以下、より具体的には、好ましくは18%以上40%以下、更に好ましくは20%以上30%以下である。凹部45の深さD1は、凹部形成層4Qの厚さに等しい。
平面視円形状の凹部45の直径R1(
図3(b)参照)は、好ましくは0.5mm以上、更に好ましくは1mm以上、そして、好ましくは10mm以下、更に好ましくは5mm以下、より具体的には、好ましくは1.5mm以上3mm以下である。
隣接する凹部45,45の間隔P1(
図3(b)参照)は、好ましくは1mm以上、更に好ましくは1.5mm以上、そして、好ましくは15mm以下、更に好ましくは10mm以下、より具体的には、好ましくは2mm以上5mm以下である。
【0030】
凹部45の単位面積に占める割合(凹部占有率)は、好ましくは3%以上、更に好ましくは7%以上、そして、好ましくは30%以下、更に好ましくは25%以下、より具体的には、好ましくは10%以上20%以下である。凹部占有率は、任意の1cm四方の領域に存する凹部45の面積(凹部45内の空間部の平面視における面積)の総和を求め、該領域の面積(単位面積1cm
2)に対する該総和の割合として算出される。
【0031】
以下、本発明に係る吸収体の他の実施形態について
図5〜
図15を参照して説明する。後述する他の実施形態については、前記実施形態と異なる構成部分を主として説明し、同様の構成部分は同一の符号を付して説明を省略する。特に説明しない構成部分は、前記実施形態の説明が適宜適用される。
【0032】
図5に示す吸収体4Aにおいては、吸収体4Aの周縁部に、肌対向面4a又は非肌対向面4b(
図5では図示せず)に凹部45が形成されていない、凹部非形成領域45Nが存在する。
図5中、斜線を付した領域が凹部非形成領域45Nである。吸収体4Aは、凹部45が多数形成されている凹部形成領域45Eをその中央部に有し、凹部非形成領域45Nは、少なくとも腹側部A及び背側部Cにおいて該領域45Eを包囲している。凹部形成領域45Eは、多数の凹部45が一定のパターン(平面視形状及び配置)で設けられている領域であり、吸収体4Aにおいては、
図5中点線で囲まれた領域(一定のパターンの多数の凹部45のうち最外方に位置する複数の凹部45で画成された領域)である。吸収体4Aにおける凹部形成領域45Eは平面視略矩形形状を有し、股下部Bの吸収体4Aの縦方向Xの中央部(吸収体4Aの横方向Yの長さ(幅)が最小の部分)においては該中央部の略全幅に亘って存在しており、従って、該中央部には凹部非形成領域45Nは実質的に存在していない。吸収体4Aの周縁部に凹部非形成領域45Nが存在していると、凹部非形成領域45Nが過度な液拡散を防ぎ体液のモレを防ぐ効果が奏される。斯かる効果をより確実に奏させるようにする観点から、凹部非形成領域45Nの幅L1,L2(吸収体4Aの周縁と凹部形成領域45Eとの離間距離。幅L1は横方向Yの離間距離、幅L2は縦方向Xの離間距離。)それぞれは、吸収体4Aの幅(横方向Yの長さ)L3に対して、好ましくは5%以上、更に好ましくは10%以上、そして、好ましくは25%以下、更に好ましくは20%以下、より具体的には、好ましくは12%以上18%以下である。
【0033】
図6に示す吸収体4Bにおいては、凹部形成領域45Eの横方向Yの長さ(幅)に関し、股下部Bの吸収体4Aの非肌対向面4b(
図6では図示せず)における該凹部形成領域45Eの幅(該幅が一定ではない場合は最長幅)W1Bは、腹側部A及び背側部Cそれぞれの吸収体4Aの肌対向面4aにおけるそれ(腹側部Aでは幅W1A、背側部Cでは幅W1C)に比して短い(W1B<W1A,W1C)。吸収体4Bにおける凹部形成領域45Eは、縦方向Xの中央部が内方に括れた砂時計状を有している。吸収体4Bにおいては、幅W1Aと幅WICとは互いに同じである。斯かる構成により、吸収体4Bの周縁部に凹部非形成領域45Nが存在し、該凹部非形成領域45Nが過度な液拡散を防ぎ、それによって、股下部Bでの側方への液漏れがより効果的に防止される。
【0034】
斯かる効果をより確実に奏させるようにする観点から、股下部Bの凹部形成領域45Eの幅W1Bと腹側部A及び背側部Cの凹部形成領域45Eの幅W1A,W1Cとの差(W1A−W1B、W1C−W1B)は、股下部Bの吸収体4Bの幅(横方向Yの長さ)W2Bに対して、好ましくは5%以上、更に好ましくは10%以上、そして、好ましくは30%以下、更に好ましくは25%以下、より具体的には、好ましくは15%以上20%以下である。
また、股下部Bの凹部形成領域45Eの幅W1Bは、該領域45Eが位置する股下部Bの吸収体4Bの幅W2Bに対して、好ましくは40%以上、更に好ましくは50%以上、そして、好ましくは90%以下、更に好ましくは80%以下、より具体的には、好ましくは60%以上70%以下である。「腹側部Aの凹部形成領域45Eの幅W1Aの、該領域45Eが位置する腹側部Aの吸収体4Bの幅W2Aに対する割合」及び「背側部Cの凹部形成領域45Eの幅W1Cの、該領域45Eが位置する背側部Cの吸収体4Bの幅W2Cに対する割合」も、それぞれ、幅W1Bの幅W2Bに対する斯かる割合と同じに設定することができる。
【0035】
図7に示す吸収体4Cにおいては、股下部Bの凹部45の深さD1Bは、腹側部A及び背側部Cのそれ(腹側部Aでは深さD1A、背側部Cでは深さD1C)に比して浅い(D1B<D1A,D1C)。各部A〜Cにおける凹部45の深さは、当該部における凹部形成層4Qの厚さに等しい。吸収体4Cにおいては、腹側部Aの多数の凹部45の深さD1Aは互いに同じであり、また股下部Bの多数の凹部45の深さD1Bは互いに同じであり、また背側部Cの多数の凹部45の深さD1Cは互いに同じである。また、深さD1Aと深さDICとは互いに同じである。斯かる構成により、股下部Bにおいては、吸収体4Cの肌対向面4a側(表面シート2)に存する体液をそこから比較的遠い位置(より裏面シート3に近い側)まで引き込むことができるので、その後の体液の面方向(縦方向X)の拡散が着用者の肌から比較的遠い位置でなされることになり、表面液残りの防止、着用中に肌が体液で濡れることによる不快感の低減がより一層確実に奏される。
【0036】
斯かる効果をより確実に奏させるようにする観点から、股下部Bの凹部45の深さD1Bと腹側部A及び背側部Cの凹部45の深さD1A,D1Cとの差(D1A−D1B、D1C−D1B)は、吸収体4Cの厚みD2に対して、好ましくは5%以上、更に好ましくは10%以上、そして、好ましくは60%以下、更に好ましくは40%以下、より具体的には、好ましくは15%以上40%以下、更に好ましくは20%以上30%以下である。深さD1A、D1B,D1C自体は、それぞれ、前記実施形態における深さD1と同範囲に設定することができる。
【0037】
図8に示す吸収体4Dにおいては、股下部Bの非肌対向面4bにおける凹部45の単位面積に占める割合(前記凹部占有率)は、腹側部A及び背側部Cの肌対向面4aにおけるそれに比して低い。凹部占有率の調整は、凹部45の間隔、大きさ(直径)等を適宜調整することにより実施することができる。吸収体4Dにおいては、股下部Bの凹部45の間隔を腹側部A及び背側部Cの凹部45のそれよりも大きくし、また、股下部Bの凹部45の大きさ(直径)を腹側部A及び背側部Cの凹部45のそれよりも小さくすることで、股下部Bの凹部占有率を腹側部A及び背側部Cのそれよりも低くしている。斯かる構成によって、股下部Bの凹部非形成層4Pから腹側部A及び背側部Cそれぞれの凹部非形成層4Pへの体液の拡散移行がより速やかに行われると同時に、股下部Bにおける吸収体4Dの横方向Yの外縁(周縁)付近での過度な拡散を防ぎ、モレを防ぐ効果を奏する。斯かる効果をより確実に奏させるようにする観点から、股下部Bの非肌対向面4bにおける凹部占有率(45Pb)と腹側部A及び背側部Cの肌対向面4aにおける凹部占有率(45Pa、45Pc)との差(45Pa−45Pb、45Pc−45Pb)は、好ましくは3%以上、更に好ましくは5%以上、そして、好ましくは30%以下、更に好ましくは25%以下、より具体的には、好ましくは8%以上20%以下、更に好ましくは10%以上15%以下である。腹側部A、股下部B及び背側部Cそれぞれの凹部占有率自体は、前記実施形態と同範囲に設定することができる。
【0038】
図9に示す吸収体4Eにおいては、腹側部A及び背側部Cの凹部45の深さD1A,D1Cは、股下部Bから離れるに従って漸次浅くなっている。斯かる構成により、吸収体4E内に存する液が該吸収体4Eの縦方向Xの外縁に近づくにつれ拡散しにくくなり、それによって、吸収体4Eの縦方向端部からの液漏れが効果的に防止される。一方、股下部Bの凹部45の深さD1Bは一定となっている。また、腹側部A及び背側部Cそれぞれの多数の凹部45のうち、縦方向Xの最外方に位置する凹部45Xの深さが股下部Bの凹部の深さD1Bと同等である、即ち、吸収体4Eにおける凹部45Xが位置する部分(凹部非形成層45P)の密度と股下部Bにおける凹部45が位置する部分(凹部非形成層45P)の密度とが同等であると、吸収体4Eにおいて股下部Bよりも腹側部A、背側部Cに体液が拡散しやすいという効果が奏される。ここでいう「同等」は、一方の深さ(密度)が他方のそれの10%以内である状態を意味する。
【0039】
図10に示す吸収体4Fにおいては、腹側部A及び背側部Cにおける凹部45の単位面積に占める割合(前記凹部占有率)は、股下部Bから離れるに従って漸次減少している。吸収体4Fにおいては、腹側部A及び背側部Cそれぞれにおける凹部45の間隔を、股下部Bから離れるに従って漸次増加させことで、斯かる構成を実現している。斯かる構成により、吸収体4F内に存する液が該吸収体4Fの縦方向Xの外縁に近づくにつれ拡散しにくくなり、それによって、吸収体4Fの縦方向端部からの液漏れが効果的に防止される。
【0040】
図11〜
図15に示す吸収体4G〜4Kにおいては、吸収体4の肌対向面4a又は非肌対向面4bにエンボス加工により形成された凹部は、平面視線状の線状凹部46(46a〜46g)を含んでいる。線状凹部46は連続線からなり、また、直線、湾曲線、屈曲線の何れでも良い。線状凹部46は、前記実施形態における平面視円形状の凹部45と異なり、平面視で方向性のある形状を有している。線状凹部46は、吸収体4に引き込まれた体液の導液路として機能し、体液を該線状凹部46の延びる方向(長さ方向)に誘導することができる。線状凹部46の幅(線状凹部の長さ方向と直交する方向の長さ)は、好ましくは0.5mm以上、更に好ましくは1mm以上、そして、好ましくは5mm以下、更に好ましくは4mm以下、より具体的には、好ましくは1.4mm以上3mm以下、更に好ましくは1.8mm以上2.5mm以下である。
【0041】
図11に示す吸収体4Gにおいては、股下部Bの非肌対向面4b(
図11では図示せず)並びに腹側部A及び背側部Cの肌対向面4aに、縦方向Xに延びる平面視直線状の線状凹部46aが形成されている。斯かる構成により、股下部Bから腹側部A及び背側部Cへの体液の拡散移行が一層促進され、表面液残りの防止、着用中に肌が体液で濡れることによる不快感の低減がより一層確実に奏される。
【0042】
図12に示す吸収体4Hは、腹側部A及び背側部Cの縦方向Xの外方側の端部4X,4Xの肌対向面に、平面視において横方向Yに延びる直線状の線状凹部46bが形成されている点以外は、
図11に示す吸収体4Gと同じである。このように、吸収体4Hの縦方向Xの両端部4X,4Xに、横方向Yに延びる線状凹部46bが形成されていると、該線状凹部46bによって体液の縦方向Xへの拡散が妨げられるため、吸収体4Hの縦方向端部4Xからの液漏れがより効果的に防止される。
【0043】
図13に示す吸収体4I、
図14に示す吸収体4J及び
図15に示す吸収体4Kにおいては、何れも、股下部Bの凹部(吸収体4の肌対向面4a又は非肌対向面4bにエンボス加工により形成された凹部)は、縦方向Xの液拡散性を向上させる平面視形状及び配置の凹部を含み、腹側部A及び背側部Cの凹部は、横方向Yの液拡散性を向上させる平面視形状及び配置の凹部を含んでいる。より具体的には、吸収体4I、4J及び4Kにおいて、股下部Bの凹部は、平面視において縦方向Xに延びる連続若しくは不連続な線状(吸収体4I及び4K)、又は縦方向Xとのなす角度が45°未満の準縦方向に延びる連続又は不連続な線状(吸収体4J)であり、腹側部A及び背側部Cの凹部は、平面視において横方向Yに延びる連続若しくは不連続な線状(吸収体4I)、又は横方向Yとのなす角度が45°未満の準横方向に延びる連続又は不連続な線状(吸収体4J及び4K)である。ここで、凹部が不連続な線状の場合は、凹部が間欠的に線状に形成され、間欠した部位(線状方向に隣接する2個の凹部の間隔)は、凹部が形成されていない平坦部でも良く、あるいは該間欠した部位と線状方向において隣接する凹部(深陥部)の深さの10%以下の深さを有する、凹部(浅陥部)でも良い。斯かる構成により、股下部Bから腹側部A及び背側部Cへの体液の拡散移行が一層促進され、また、腹側部A及び背側部Cにおいては、横方向Yへの体液の拡散移行が一層促進されるので、体液の縦方向Xへの拡散が妨げられるため、吸収体4I、4J及び4Kそれぞれの縦方向端部からの液漏れがより効果的に防止され、着用中に肌が体液で濡れることによる不快感の低減がより一層確実に奏される。
【0044】
図13に示す吸収体4Iにおいては、股下部Bの非肌対向面4bの凹部は、平面視において縦方向Xに延びる直線状の線状凹部46aのみを含み、腹側部A及び背側部Cの凹部は、平面視において横方向Yに延びる直線状の線状凹部46bのみを含んでいる。
【0045】
図14に示す吸収体4Jは、線状凹部46a,46bに代えて、縦方向X及び横方向Yの両方向に交差する方向(以下、交差方向ともいう)に延びる線状凹部46c〜46fが形成されている点以外は、
図13に示す吸収体4Iと同じである。吸収体4Jにおいては、股下部Bの非肌対向面4bの凹部は、平面視において交差方向(前記準縦方向)に延び且つ互いに交差する2種類の直線状の線状凹部46c,46dのみを含み、腹側部A及び背側部Cの凹部は、平面視において交差方向(前記準横方向)に延び且つ互いに交差する2種類の直線状の線状凹部46e,46fのみを含んでいる。股下部Bの線状凹部46c,46dは、縦方向Xと平行な仮想直線(図示せず)とのなす角度が±45°未満であり、実質的に縦方向Xに沿って延びている。一方、腹側部A及び背側部Cの線状凹部46e,46fは、横方向Yと平行な仮想直線(図示せず)とのなす角度が±45°未満であり、実質的に横方向Yに沿って延びている。
【0046】
図15に示す吸収体4Kは、腹側部A及び背側部Cの肌対向面4aの凹部が、平面視において縦方向Xの内方に向かって凸のV字状の線状凹部46gを含んでいる点以外は、
図13に示す吸収体4Iと同じである。腹側部A及び背側部Cそれぞれにおける複数(4つ)のV字状の線状凹部46gは、何れもそれらのV字の頂部が横方向Yの中央に位置している。
【0047】
以下、本発明の吸収性物品の製造方法について、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。後述する吸収性物品の製造方法については、前述した吸収性物品(使い捨ておむつ1)と異なる構成部分を主として説明し、同様の構成部分は同一の符号を付して説明を省略する。特に説明しない構成部分は、おむつ1についての説明が適宜適用される。本発明の製造方法は、吸収体の製造工程、特に吸収体にエンボス加工を施して前記凹部を形成するエンボス工程以外は、基本的に従来のこの種の吸収性物品の製造方法と同じである。
【0048】
図16には第1実施形態の吸収性物品の製造方法の要部が示されている。第1実施形態の吸収性物品の製造方法は、
図16に示すように、相対向する一対のエンボスロール10,11間に、横方向Yを供給方向MDとして凹部が形成されていない吸収体前駆体4I’(吸収性コア40をコアラップシート41で被覆してなるもの)を供給し、一対のエンボスロール10,11により吸収体前駆体4I’の肌対向面4a及び非肌対向面4bに線状凹部46を形成するエンボス工程を有している。即ち、
図16に示す第1実施形態の製造方法では、吸収体前駆体4I’のエンボスロール10,11間の一回の通過で、吸収体前駆体4I’の両面4a,4bに線状凹部46を形成して吸収体4Iを得る。
【0049】
エンボスロール10,11は、
図16(a)及び
図16(b)に示すように、それぞれ、円筒形状をなし、ロール軸方向中央部12と該ロール軸方向中央部12を挟んでその両側に位置するロール軸方向一端部13及び他端部14とを有し、且つ凹部(線状凹部)に対応するエンボス凸部が形成されたエンボス加工部20をロール周面に有している。エンボスロール10,11のロール軸方向は、供給される吸収体前駆体4I’の縦方向Xと平行である。
【0050】
一方のエンボスロール10のロール周面のエンボス加工部20は、ロール軸方向中央部12が凹凸の無い平坦部19であり且つロール軸方向一端部13及び他端部14にエンボス凸部18bが形成されている。エンボス凸部18bは、平面視においてエンボスロール10のロール軸方向と直交する方向に延びる直線状をなしている。ここで、「平面視」とは、エンボス凸部を、エンボスロールの周面の法線方向(エンボスロールのロール軸方向と直交する方向)の外方から見た場合を意味する。エンボスロール10は、斯かる構成のエンボス加工部20をロール周方向に2つ有している。エンボスロール10の2つのエンボス加工部20,20は、ロール周方向に所定間隔を置いて配され、エンボスロール10のロール軸を介して相対向している。エンボスロール10のロール周面におけるロール周方向に隣接するエンボス加工部20,20の間は、
図16(a)に示すように複数の吸収体前駆体4I’を一定間隔を置いてエンボスロール10,11間に供給する際の該間隔に対応する、非エンボス加工部21であり、平坦部19と同様に平坦である。
【0051】
また、他方のエンボスロール11のロール周面のエンボス加工部20は、ロール軸方向一端部13及び他端部14が平坦部19であり且つロール軸方向中央部12にエンボス凸部18aが形成されている。エンボス凸部18aは平面視においてエンボスロール11のロール軸方向に延びる直線状をなしている。エンボスロール11は、斯かる構成のエンボス加工部20を2つ有している(
図16(b)では片方のエンボス加工部20のみ図示)。エンボスロール11の2つのエンボス加工部20,20は、ロール周方向に所定間隔を置いて配され、エンボスロール11のロール軸を介して相対向している。エンボスロール11のロール周面におけるロール周方向に隣接するエンボス加工部20,20の間は非エンボス加工部21であり、平坦部19と同様に平坦である。
【0052】
そして、第1実施形態の吸収性物品の製造方法においては、一方のエンボスロール10又は11のエンボス加工部20と他方のエンボスロール11又は10のエンボス加工部20とで、両ロール10,11間を通過する吸収体前駆体4I’を同時に加圧できるように、両ロール10,11の回転が制御されている。これにより、
図16(c)及び
図16(d)に示すように、両ロール10,11間を通過する吸収体前駆体4I’に対し、該吸収体前駆体4I’の腹側部A及び背側部Cに対応する部分(供給方向MDと直交する縦方向Xの両端部)の一面(肌対向面4a)には、エンボスロール10のエンボス凸部18bにより線状凹部46bが形成され、また該吸収体前駆体4I’の股下部Bに対応する部分(縦方向Xの中央部)の他面(非肌対向面4b)には、エンボスロール11のエンボス凸部18aにより線状凹部46aが形成される。吸収体前駆体4I’における、両ロール10,11の非エンボス加工部21(平坦部19)で加圧される部分は、凹部は形成されずに平坦となる。こうして吸収体4Iが得られる。以上、第1実施形態の吸収性物品の製造方法について、線状凹部46を例にとり説明したが、他の凹部であっても同様に製造することができる。
【0053】
図17には第2実施形態の吸収性物品の製造方法の要部が示されている。第2実施形態の吸収性物品の製造方法は、吸収体前駆体4I’を供給方向MDが吸収体前駆体4I’(吸収体4I)の縦方向Xである点で、
図16に示す第1実施形態の製造方法と異なる。即ち、第2実施形態の吸収性物品の製造方法は、
図17に示すように、相対向する一対のエンボスロール10A,11A間に、縦方向Xを供給方向MDとして凹部が形成されていない吸収体前駆体4I’を供給し、一対のエンボスロール10A,11Aにより吸収体前駆体4I’の肌対向面4a及び非肌対向面4bに線状凹部46を形成するエンボス工程を有している。即ち、
図17に示す第2実施形態の製造方法では、吸収体前駆体4I’のエンボスロール10A,11A間の一回の通過で、吸収体前駆体4I’の両面4a,4bに線状凹部46を形成して吸収体4Iを得る。
【0054】
一対のエンボスロール10A,11Aは、
図17(b)に示すように、それぞれロール周面に、凹部(線状凹部)に対応するエンボス凸部が形成されたエンボス加工部20と、該エンボス凸部が形成されていない平坦部19とをロール周方向に有している。即ち、エンボスロール10Aは、ロール軸方向中央部12のロール周面に、線状凹部46b(
図17(c)及び
図17(d)参照)に対応するエンボス凸部18bが形成されたエンボス加工部20と、エンボス凸部18bが形成されていない平坦部19からなる非エンボス加工部21とをロール周方向に有している。また、エンボスロール11Aは、ロール軸方向中央部12のロール周面に、線状凹部46aに対応するエンボス凸部18aが形成されたエンボス加工部20と、エンボス凸部18aが形成されていない平坦部19からなる非エンボス加工部21とをロール周方向に有している。両ロール10A,10Bは、それぞれ、エンボス加工部20をロール周方向に2つ有している。また、両ロール10A,10Bそれぞれのロール軸方向一端部13及び他端部14のロール周面の全域は、エンボス凸部が形成されておらず平坦部である。両ロール10A,10Bのロール軸方向一端部13どうし間及び他端部14どうし間には、吸収体前駆体4I’は供給されない。
【0055】
そして、第2実施形態の吸収性物品の製造方法においては、
図17(b)に示すように、一方のエンボスロール10A又は10Bのエンボス加工部20と他方のエンボスロール11A又は10Aの非エンボス加工部21(平坦部19)とで、両ロール10A,11A間を通過する吸収体前駆体4I’を同時に加圧できるように、両ロール10A,11Aの回転が制御されている。これにより、
図17(c)及び
図17(d)に示すように、両ロール10A,11Aそれぞれのロール軸方向中央部12,12間を通過する吸収体前駆体4I’に対し、該吸収体前駆体4I’の腹側部A及び背側部Cに対応する部分(供給方向MDの両端部)の一面(肌対向面4a)に、エンボスロール10Aのエンボス凸部18bにより線状凹部46bが形成され、また該吸収体前駆体4I’の股下部Bに対応する部分(供給方向MDの中央部)の他面(非肌対向面4b)には、エンボスロール11Aのエンボス凸部18aにより線状凹部46aが形成され、吸収体4Iが得られる。第2実施形態においては、吸収体前駆体4I’の両ロール10A,11Aへの供給方向MDが該吸収体前駆体4I’の縦方向Xであることから、先ず、吸収体前駆体4I’の腹側部A及び背側部Cに対応する部分のうちの、供給方向MDの前側に位置する部分にエンボス凸部18bにより線状凹部46bが形成され、次に、吸収体前駆体4I’の股下部Bに対応する部分にエンボス凸部18aにより線状凹部46aが形成され、最後に、吸収体前駆体4I’の腹側部A及び背側部Cに対応する部分のうちの、供給方向MDの後側に位置する部分に別のエンボス凸部18bにより線状凹部46bが形成される。以上、第2実施形態の吸収性物品の製造方法について、線状凹部46を例にとり説明したが、他の凹部であっても同様に製造することができる。
【0056】
以上、本発明について説明したが、本発明は、前述した実施形態に制限されず適宜変更可能である。例えば、平面視線状ではない凹部45(離散的なパターンの凹部45)の平面視形状は円形状に制限されず、菱形状、楕円形状、四角形状等、種々の形状とすることができる。また、前記実施形態では、多数の凹部45は全て同じ形状であったが、形状の異なる複数種の凹部が混在していても構わない。また、前記実施形態では、コアラップシートは1枚であったが、吸収性コアの肌対向面を被覆する1枚と非肌対向面を被覆する他の1枚との計2枚であっても良い。また、本発明の吸収性物品は、展開型の使い捨ておむつに制限されず、人体から排出される液の吸収に用いられる物品を広く包含し、パンツ型の使い捨ておむつ、生理用ナプキン、生理用ショーツ等も包含される。前述した一の実施形態のみが有する部分は、すべて適宜相互に利用できる。前述した本発明の実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0057】
<1>
吸収体と、該吸収体の肌対向面側に配された表面シートと、該吸収体の非肌対向面側に配された裏面シートとを具備し、着用者の腹側に配される腹側部及び背側に配される背側部とそれらの間に位置する股下部とを有すると共に、該腹側部から該股下部を介して該背側部に延びる縦方向とこれに直交する横方向とを有する吸収性物品であって、
前記股下部においては、前記吸収体の非肌対向面には、該非肌対向面側から施されたエンボス加工による凹部が多数形成された凹部形成領域を有しているが、該非肌対向面とは反対側に位置する該吸収体の肌対向面側からはエンボス加工は施されておらず、該肌対向面は平坦であり、
前記腹側部及び前記背側部においては、前記吸収体の肌対向面には、該肌対向面側から施されたエンボス加工による凹部が多数形成された凹部形成領域を有しているが、該肌対向面とは反対側に位置する該吸収体の非肌対向面側からはエンボス加工は施されておらず、該非肌対向面は平坦である吸収性物品。
【0058】
<2>
前記吸収体の周縁部に、前記凹部が形成されていない凹部非形成領域が存在する前記<2>記載の吸収性物品。
<3>
前記凹部非形成領域の幅(前記吸収体の周縁と前記凹部形成領域との離間距離)は、前記吸収体の幅(横方向の長さ)に対して、好ましくは5%以上、更に好ましくは10%以上、そして、好ましくは25%以下、更に好ましくは20%以下、より具体的には、好ましくは12%以上18%以下である前記<2>記載の吸収性物品。
【0059】
<4>
前記凹部形成領域の横方向長さに関し、前記股下部の前記吸収体の非肌対向面における該凹部形成領域の横方向長さは、前記腹側部及び前記背側部それぞれの該吸収体の肌対向面におけるそれに比して短い前記<1>〜<3>の何れか一項に記載の吸収性物品。
<5>
前記股下部の前記凹部の深さは、前記腹側部及び前記背側部のそれに比して浅い前記<1>〜<4>の何れか一項に記載の吸収性物品。
<6>
前記股下部における前記凹部の単位面積に占める割合は、前記腹側部及び前記背側部におけるそれに比して低い前記<1>〜<5>の何れか一項に記載の吸収性物品。
<7>
前記腹側部及び前記背側部の前記凹部の深さは、前記股下部から離れるに従って漸次浅くなっている前記<1>〜<6>の何れか一項に記載の吸収性物品。
<8>
前記腹側部及び前記背側部における前記凹部の単位面積に占める割合は、前記股下部から離れるに従って漸次減少している前記<1>〜<7>の何れか一項に記載の吸収性物品。
【0060】
<9>
前記凹部は平面視線状の凹部を含む前記<1>〜<8>の何れか一項に記載の吸収性物品。
<10>
前記平面視線状の凹部は、連続線からなり且つ直線、湾曲線又は屈曲線であり、該凹部の幅(該凹部の長さ方向と直交する方向の長さ)は、好ましくは0.5mm以上、更に好ましくは1mm以上、そして、好ましくは5mm以下、更に好ましくは4mm以下、より具体的には、好ましくは1.4mm以上3mm以下、更に好ましくは1.8mm以上2.5mm以下である前記<9>記載の吸収性物品。
【0061】
<11>
前記股下部の前記凹部は、平面視において縦方向に延びる連続若しくは不連続な線状、又は縦方向とのなす角度が45°未満の準縦方向に延びる連続又は不連続な線状であり、前記腹側部及び前記背側部の前記凹部は、平面視において横方向に延びる連続若しくは不連続な線状、又は横方向とのなす角度が45°未満の準横方向に延びる連続又は不連続な線状である前記<1>〜<10>の何れか一項に記載の吸収性物品。
<12>
前記腹側部及び前記背側部の前記凹部は、平面視において縦方向内方に向かって凸のV字状の凹部を含む前記<11>記載の吸収性物品。
<13>
前記腹側部及び前記背側部の縦方向外方側の端部の肌対向面に、平面視において横方向に延びる直線状の前記凹部が形成されている前記<11>又は<12>記載の吸収性物品。
【0062】
<14>
前記凹部は平面視円形状であり、前記股下部における前記吸収体の非肌対向面並びに前記腹側部及び前記背側部における該吸収体の肌対向面それぞれの全域に、離散的なパターンで多数形成されている前記<1>〜<13>の何れか一項に記載の吸収性物品。
<15>
多数の前記凹部の深さ及び直径は互いに同じであり、また、隣接する該凹部どうしの間隔は均一になされている前記<1>〜<14>の何れか一項に記載の吸収性物品。
<16>
前記凹部を形成するためのエンボス加工は、熱エンボス加工又は超音波エンボス加工であり、
前記吸収体は、液保持性の吸収性コアと、該吸収性コアの肌対向面及び非肌対向面を被覆する透水性のコアラップシートとを含んで構成されており、前記凹部においては該コアラップシートと該吸収性コアとが一体化している前記<1>〜<15>の何れか一項に記載の吸収性物品。
<17>
前記凹部の深さは、前記吸収体の厚みに対して、好ましくは10%以上、更に好ましくは15%以上、そして、好ましくは70%以下、更に好ましくは50%以下、より具体的には、好ましくは18%以上40%以下、更に好ましくは20%以上30%以下であり、
平面視円形状の前記凹部の直径は、好ましくは0.5mm以上、更に好ましくは1mm以上、そして、好ましくは10mm以下、更に好ましくは5mm以下、より具体的には、好ましくは1.5mm以上3mm以下であり、
隣接する前記凹部どうしの間隔は、好ましくは1mm以上、更に好ましくは1.5mm以上、そして、好ましくは15mm以下、更に好ましくは10mm以下、より具体的には、好ましくは2mm以上5mm以下である前記<1>〜<16>の何れか一項に記載の吸収性物品。
<18>
前記凹部の単位面積に占める割合(凹部占有率)は、好ましくは3%以上、更に好ましくは7%以上、そして、好ましくは30%以下、更に好ましくは25%以下、より具体的には、好ましくは10%以上20%以下である前記<1>〜<17>の何れか一項に記載の吸収性物品。
【0063】
<19>
前記吸収性物品は使い捨ておむつである前記<1>〜<18>の何れか一項に記載の吸収性物品。
<20>
前記使い捨ておむつは、レッグギャザー及び立体ギャザーを有する前記<19>記載の吸収性物品。
<21>
前記使い捨ておむつは、前記股下部の縦方向に沿う両側縁が内向きの円弧状に湾曲しており、平面視において、縦方向の中央部が内方に括れた砂時計状を有している前記<19>又は<20>記載の吸収性物品。
<22>
前記吸収体は、液保持性の吸収性コアと、該吸収性コアの肌対向面及び非肌対向面を被覆する透水性のコアラップシートとを含んで構成され、該吸収性コアは、前記股下部の縦方向に沿う両側縁が内向きの円弧状に湾曲して括れ部を有しており、平面視において縦方向の中央部が内方に括れた砂時計状を有している前記<19>〜<21>の何れか一項に記載の吸収性物品。
<23>
前記吸収性コアは、木材パルプ、親水化剤により処理された合繊繊維等の親水性繊維からなる繊維集合体、又は、該繊維集合体に粒子状の吸水性ポリマーを保持させたものであり、前記コアラップシートは、紙、又は、親水化処理が施された繊維からなる親水性不織布である前記<22>記載の吸収性物品。
【0064】
<24>
前記<1>〜<23>の何れか一項に記載の吸収性物品の製造方法であって、
相対向する一対のエンボスロール間に、横方向を供給方向として前記凹部が形成されていない吸収体前駆体を供給し、一対の該エンボスロールにより該吸収体前駆体の肌対向面及び非肌対向面に前記凹部を形成するエンボス工程を有し、
一対の前記エンボスロールは、それぞれ、ロール軸方向中央部と該ロール軸方向中央部を挟んでその両側に位置するロール軸方向一端部及び他端部とを有し、且つ前記凹部に対応するエンボス凸部が形成されたエンボス加工部をロール周面に有し、
一対の前記エンボスロールの一方の前記エンボス加工部は、前記ロール軸方向中央部が平坦であり且つ前記ロール軸方向一端部及び他端部に前記エンボス凸部が形成されており、
一対の前記エンボスロールの他方の前記エンボス加工部は、前記ロール軸方向一端部及び他端部が平坦であり且つ前記ロール軸方向中央部に前記エンボス凸部が形成されており、
一対の前記エンボスロールの一方の前記エンボス加工部と他方の前記エンボス加工部とで、両ロール間を通過する前記吸収体前駆体を同時に加圧可能になされている吸収性物品の製造方法。
【0065】
<25>
前記<1>〜<23>の何れか一項に記載の吸収性物品の製造方法であって、
相対向する一対のエンボスロール間に、縦方向を供給方向として前記凹部が形成されていない吸収体前駆体を供給し、一対の該エンボスロールにより該吸収体前駆体の肌対向面及び非肌対向面に前記凹部を形成するエンボス工程を有し、
一対の前記エンボスロールは、それぞれロール周面に、前記凹部に対応するエンボス凸部が形成されたエンボス加工部と、該エンボス凸部が形成されていない平坦部とをロール周方向に有し、
一対の前記エンボスロールの一方の前記エンボス加工部と他方の前記平坦部とで、両ロール間を通過する前記吸収体前駆体を同時に加圧可能になされている吸収性物品の製造方法。
【実施例】
【0066】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は斯かる実施例に限定されるものではない。
【0067】
〔実施例1〕
常法に従い、
図1及び
図2に示すおむつ1と同様の基本構成を有する展開型使い捨ておむつを作製した。表面シートとして、坪量41g/m
2のエアスルー不織布を用い、吸収性コアとして、坪量200g/m
2のパルプ繊維の集合体に粒子状の吸水性ポリマーを保持させたもの(吸水性ポリマーの坪量186g/m
2)を用い、コアラップシートとして、坪量13.5g/m
2の親水性且つ透液性の紙を用いた。尚、裏面シートは使用しなかった。
【0068】
図18には、実施例1で用いた吸収体(吸収性コアの外面をコアラップシートで被覆してなる吸収体)4Lの肌対向面4a側(表面シート側)が示されている。吸収体4Lは、平面視において角が丸みを帯びた矩形形状を有し、股下部Bの非肌対向面(図示せず)並びに腹側部A及び背側部Cの肌対向面4aそれぞれには、当該面側から施されたエンボス加工による平面視円形状の凹部45が離散的なパターンで多数形成された凹部形成領域が形成されている。吸収体4Lにおいて、股下部Bの非肌対向面には、凹部45が縦方向Xに所定間隔を置いて複数配されてなる凹部縦列45LX(平面視において縦方向Xに延びる不連続な線状の凹部)が、横方向Yに所定間隔を置いて複数列形成されており、また、腹側部A及び背側部Cの肌対向面4aには、凹部45が横方向Yに所定間隔を置いて複数配されてなる凹部横列45LY(平面視において横方向Yに延びる不連続な線状の凹部)が、縦方向Xに所定間隔を置いて複数列形成されている。平面視円形状の凹部45は、平面視で方向性のない形状であり、特定方向の液拡散性を向上させる平面視形状ではないが、股下部Bの凹部45は、凹部縦列45LXを形成することによって、縦方向Xの液拡散性を向上させる配置の凹部となっており、腹側部A及び背側部Cの凹部45は、それぞれ、凹部横列45LYを形成することによって、横方向Yの液拡散性を向上させる配置の凹部となっている。各凹部45の深さ1.5±0.3mm、凹部45の直径1.2mmであり、隣接する凹部45,45の間隔4mmであった。吸収体4Lの股下部Bの肌対向面4a並びに腹側部A及び背側部Cの非肌対向面は、それぞれ、平坦である。
【0069】
〔比較例1〕
腹側部及び背側部において、吸収体の肌対向面に凹部を形成しない代わりに、吸収体の非肌対向面側からエンボス加工を施して凹部を形成した以外は、実施例1と同様にして展開型使い捨ておむつを作製した。比較例1のおむつにおける吸収体は、腹側部、股下部及び背側部それぞれの凹部のパターン自体は、実施例1(
図18参照)と同じであるが、非肌対向面のみに凹部が形成されている点で、実施例1と異なる。
【0070】
〔比較例2〕
股下部において、吸収体の非肌対向面に凹部を形成しない代わりに、吸収体の肌対向面側からエンボス加工を施して凹部を形成した以外は、実施例1と同様にして展開型使い捨ておむつを作製した。比較例2のおむつにおける吸収体は、腹側部、股下部及び背側部それぞれの凹部のパターン自体は、実施例1(
図18参照)と同じであるが、肌対向面のみに凹部が形成されている点で、実施例1と異なる。
【0071】
〔比較例3〕
股下部において、吸収体にエンボス加工を施さず、吸収体の肌対向面及び非肌対向面に凹部を形成しなかった以外は、実施例1と同様にして展開型使い捨ておむつを作製した。
【0072】
〔評価〕
各実施例及び比較例のおむつについて、液拡散面積及び表面液残り量をそれぞれ下記方法により評価した。それらの結果を下記表1に示す。
【0073】
<液拡散面積の測定方法>
測定対象のおむつの肌対向面(表面シート側)を上側にして、該おむつを無加圧の状態で水平面上に固定し、該おむつにおける吸収体(吸収性コアをコアラップシートで被覆してなる吸収体)の中心部における表面シート上に、
図19(a)及び
図19(b)に示すアクリル製の透明カップ90を載置した。カップ90は、中空の円筒状をなし、その軸方向の一端は開口部91、他端は底部92であり、カップ90が測定対象のおむつ上に載置される際には、底部92側の軸方向端面が該おむつと接触する。カップ90は、重量100g、高さ3cmで、開口部91の外径Raが38mm、内径Rbが36mmであり、底部92には、該底部92を厚み方向に貫通する直径3mmの平面視円形形状の開孔93が5個穿設されている。5個の開孔93は何れも、平面視円形形状の底部92の中心を通って互いに直交する2本の仮想直線(十字線)上に位置し、且つそのうちの1個が該中心に、他の4個が該中心から6mm離れて位置している。
図19(c)に示す如き滴下ロート95を用いて、おむつ上に載置したカップ90の開口部91に、赤色に着色した生理食塩水30mlを、カップ90から該生理食塩水があふれないように滴下して、該生理食塩水を該吸収体に吸収させた後、5分間放置し、更に該生理食塩水30mlを同様の方法で該吸収体に吸収させた。2回目の生理食塩水の注入から5分経過後に使い捨ておむつから吸収体を取り出し、該吸収体のコアラップシートを剥ぎ、吸収性コアの肌対向面及び非肌対向面それぞれの生理食塩水による着色領域の面積をOHPに転写し、該OHPを画像認識装置(EPSON、ES−9000N)で読み取り、画像解析ソフト(MediaGbernetics、Imagw−Pro plus,ver7.01.658)を用いた画像処理により測定し、その測定値を液拡散面積とした。液拡散面積が小さいほど、面方向の液拡散が抑制されていると判断され、高評価となる。
【0074】
<表面液残り量の測定方法>
測定対象のおむつにおける表面シートの重量(W0)重量を、汎用電子天秤(株式会社エーアンド・デイ、GX−4000)を用いて予め測定しておく。測定対象のおむつの肌対向面(表面シート側)を上側にして、該おむつを無加圧の状態で前記汎用電子天秤の水平な測定台上に載せ、該おむつにおける吸収体(吸収性コアをコアラップシートで被覆してなる吸収体)の中心部における表面シート上に、
図19に示すアクリル製の透明カップ90を載置し、前記<液拡散面積の測定方法>と同様に滴下ロート95を用いて同様の方法で、赤色に着色した生理食塩水30mlを2回に亘って滴下して該吸収体に吸収させた。2回目の生理食塩水の注入から30秒経過時に、おむつから表面シートを取り出し、取り出した表面シートの重量(W1)を測定後、該表面シートを再びおむつに組み込んだ(1回目の再配置)。更に、表面シートの1回目の再配置から30秒経過時に、おむつから再び表面シートを取り出し、取り出した表面シートの重量(W2)を測定後、再びおむつに組み込んだ(2回目の再配置)。更に、表面シートの2回目の再配置から60秒経過時に、おむつから再び表面シートを取り出し、取り出した表面シートの重量(W3)を測定した。そして、前記W1と前記W0との差(W1−W0)を、生理食塩水の注入開始から30秒後の表面液残り量とし、前記W2と前記W0との差(W2−W0)を、生理食塩水の注入開始から60秒後の表面液残り量とし、前記W3と前記WOとの差(W3−W0)を、生理食塩水の注入開始から120秒後の表面液残り量とした。各表面液残り量が少ないほど高評価となる。
【0075】
【表1】
【0076】
表1から明らかなように、実施例1は、肌対向面の液拡散面積が小さく、且つ各比較例に比して表面液残り量が少なかった。吸収体の非肌対向面のみにエンボス加工による凹部を形成した比較例1、及び吸収体の肌対向面のみにエンボス加工による凹部を形成した比較例2は、何れも実施例1に比して、肌対向面の液拡散面積が大きく、着用中に肌が体液で濡れやすいものであることがわかる。比較例3は、肌対向面の液拡散面積は実施例1よりも小さかったものの、表面液残り量が多い結果となった。以上のことから、表面液残りが少なく、着用中に肌が体液で濡れることによる不快感が低減された吸収性物品を得るためには、実施例1のように、股下部の吸収体においては、非肌対向面に該非肌対向面側からのエンボス加工による凹部を多数形成すると共に肌対向面は平坦とし、また、腹側部及び背側部の吸収体においては、それぞれ、肌対向面に該肌対向面側からのエンボス加工による凹部を多数形成すると共に非肌対向面は平坦とするのが有効であることがわかる。