特許第6195310号(P6195310)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6195310
(24)【登録日】2017年8月25日
(45)【発行日】2017年9月13日
(54)【発明の名称】電池制御システムおよび電池パック
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/02 20160101AFI20170904BHJP
   H02J 7/10 20060101ALI20170904BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20170904BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20170904BHJP
【FI】
   H02J7/02 H
   H02J7/10 L
   H01M10/48 301
   H01M10/48 P
   H01M10/44 P
【請求項の数】9
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2014-501993(P2014-501993)
(86)(22)【出願日】2013年2月8日
(86)【国際出願番号】JP2013000709
(87)【国際公開番号】WO2013128809
(87)【国際公開日】20130906
【審査請求日】2016年1月14日
(31)【優先権主張番号】特願2012-44631(P2012-44631)
(32)【優先日】2012年2月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】310010081
【氏名又は名称】NECエナジーデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】吉田 忠大
【審査官】 田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−145273(JP,A)
【文献】 特開2007−325458(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00− 7/12
7/34− 7/36
H01M 10/42−10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に接続された複数の電池ユニットのうち、二つ以上の前記電池ユニットの温度を測定する温度測定手段と、
前記電池ユニットの電圧を測定する電圧測定手段と、
前記電池ユニットの通電を検出する通電検出手段と、
前記電池ユニットの充電および放電を制御する電池制御手段と、
を備え、
前記電池制御手段は、
前記電池ユニットの前記通電中に、前記温度測定手段が測定した前記温度に基づいて、前記温度が最低である温度最低ユニットと、前記温度が最高である温度最高ユニットとを特定し、
さらに前記温度最高ユニットと前記温度最低ユニットとの温度差が基準値を超えるとする第1温度条件を満たさないとき、前記電圧測定手段が測定した前記電圧に基づいて、少なくとも二つの前記電池ユニットの前記電圧の差を減じるためのバランス制御を行い、
前記温度差が前記第1温度条件を満たすとき、前記バランス制御を行わず、
前記第1温度条件における前記温度差の前記基準値を、前記電池ユニットの前記温度に基づいて変化させる電池制御システム。
【請求項2】
請求項に記載の電池制御システムにおいて、
前記温度差の前記基準値は、前記温度最低ユニットまたは前記温度最高ユニットの前記温度が低いほど小さい値である電池制御システム。
【請求項3】
直列に接続された複数の電池ユニットのうち、二つ以上の前記電池ユニットの温度を測定する温度測定手段と、
前記電池ユニットの電圧を測定する電圧測定手段と、
前記電池ユニットの通電を検出する通電検出手段と、
前記電池ユニットの充電および放電を制御する電池制御手段と、
を備え、
前記電池制御手段は、
前記電池ユニットの前記通電中に、前記温度測定手段が測定した前記温度に基づいて、前記温度が最低である温度最低ユニットと、前記温度が最高である温度最高ユニットとを特定し、
前記電圧測定手段が測定した前記電圧に基づいて、前記電池ユニットに前記充電を行っている場合に前記電圧が最大である第1ユニットをさらに特定し、
(1)前記温度最高ユニットと前記温度最低ユニットとの温度差が基準値を超えるとする第1温度条件を満たさないとき、または、(2)前記温度差が前記第1温度条件を満たし、且つ、前記温度最低ユニットが、前記第1ユニットと異なるとき、前記電圧測定手段が測定した前記電圧に基づいて、少なくとも二つの前記電池ユニットの前記電圧の差を減じるためのバランス制御を行い、
前記温度差が前記第1温度条件を満たし、且つ、前記温度最低ユニットが、前記第1ユニットと同一であるとき、前記バランス制御を行わない電池制御システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の電池制御システムにおいて、
前記電池ユニットの前記電圧を調整するバランス回路をさらに備え、
前記電池制御手段は、
前記バランス回路を制御することにより、前記バランス制御を行う電池制御システム。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか一項に記載の電池制御システムにおいて、
前記バランス制御において、
前記電圧測定手段が測定した前記電圧に基づいて、最も前記電圧の高い電圧最大ユニットと最も前記電圧の低い電圧最小ユニットとの前記電圧の差が第1基準電圧値以上であるとき、当該電圧の差が小さくなるように制御する電池制御システム。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか一項に記載の電池制御システムにおいて、
前記バランス制御において、
前記電圧測定手段が測定した前記電圧に基づいて、前記電池ユニットの平均の前記電圧との差が第2基準電圧値以上離れている前記電池ユニットがあるとき、当該電圧の差が小さくなるように制御する電池制御システム。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか一項に記載の電池制御システムにおいて、
前記温度測定手段は、
最も外側に配置された少なくとも一つの前記電池ユニットと、
少なくとも一つの前記電池ユニットよりも内側に位置する前記電池ユニットと、
の前記温度を測定する電池制御システム。
【請求項8】
直列に接続された複数の電池ユニットと、
二つ以上の前記電池ユニットの温度を測定する温度測定手段と、
前記電池ユニットの電圧を測定する電圧測定手段と、
前記電池ユニットの通電を検出する通電検出手段と、
前記電池ユニットの充電および放電を制御する電池制御手段と、
を備え、
前記電池制御手段は、
前記電池ユニットの前記通電中に、前記温度測定手段が測定した前記温度に基づいて、前記温度が最低である温度最低ユニットと、前記温度が最高である温度最高ユニットとを特定し、
前記温度最高ユニットと前記温度最低ユニットとの温度差が基準値を超えるとする第1温度条件を満たさないとき、前記電圧測定手段が測定した前記電圧に基づいて、少なくとも二つの前記電池ユニットの前記電圧の差を減じるためのバランス制御を行い、
前記温度差が前記第1温度条件を満たすとき、前記バランス制御を行わず、
前記第1温度条件における前記温度差の前記基準値を、前記電池ユニットの前記温度に基づいて変化させる電池パック。
【請求項9】
直列に接続された複数の電池ユニットと、
二つ以上の前記電池ユニットの温度を測定する温度測定手段と、
前記電池ユニットの電圧を測定する電圧測定手段と、
前記電池ユニットの通電を検出する通電検出手段と、
前記電池ユニットの充電および放電を制御する電池制御手段と、
を備え、
前記電池制御手段は、
前記電池ユニットの前記通電中に、前記温度測定手段が測定した前記温度に基づいて、前記温度が最低である温度最低ユニットと、前記温度が最高である温度最高ユニットとを特定し、
前記電圧測定手段が測定した前記電圧に基づいて、前記電池ユニットに前記充電を行っている場合に前記電圧が最大である第1ユニットをさらに特定し、
(1)前記温度最高ユニットと前記温度最低ユニットとの温度差が基準値を超えるとする第1温度条件を満たさないとき、または、(2)前記温度差が前記第1温度条件を満たし、且つ、前記温度最低ユニットが、前記第1ユニットと異なるとき、前記電圧測定手段が測定した前記電圧に基づいて、少なくとも二つの前記電池ユニットの前記電圧の差を減じるためのバランス制御を行い、
前記温度差が前記第1温度条件を満たし、且つ、前記温度最低ユニットが、前記第1ユニットと同一であるとき、前記バランス制御を行わない電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池制御システムおよび電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
電池パックから電力を安定的に得るために、様々な充放電方法や制御回路が提案されている。
【0003】
特許文献1(特開2009−232559号公報)には、以下のような電池パック充電バランス回路が記載されている。この電池パック充電バランス回路は、第1のバランス制御回路、第2のバランス制御回路および保護回路を備えている。第1のバランス制御回路および第2のバランス制御回路は、充放電回路の両充放電端子の間に直列接続されている。第1のバランス制御回路は、複数の電池ユニットに対応して、並列接続された制御ユニットを有している。第2のバランス制御回路は、並列接続された第1の分岐および第2の分岐を有している。これにより、予め設定されたアンバランス保護起動電圧に達した電池ユニットに対して、分流を行い、保護回路が早期に過充電保護機能を起動するのを防止することができるとされている。したがって、各々の電池ユニットへの充電をバランスさせることができるとされている。
【0004】
また、特許文献2(特開平09−322417号公報)には、以下のような放電方法が記載されている。複数の電池ユニットのそれぞれの温度を検出する。検出した温度のうち、最も低い温度を優先して放電終止電圧を演算する。最低温度が低下すると、放電終止電圧を低く補正するように演算する。各々の電池ユニットの電圧を放電終止電圧と比較し、いずれかの電池ユニットの電圧が放電終止電圧よりも低くなった場合、全ての電池ユニットの放電を停止させる。これにより、過放電を防止するとともに、早く残容量が無くなることを防止することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−232559号公報
【特許文献1】特開平09−322417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明者は、直列に接続した複数の電池ユニットを有する電池パックにおいて、以下のような課題が生じることを見出した。電池パック内の電池ユニットは、電池ユニットの配置により、温度差が生じることがある。この場合、各々の電池ユニット間の残容量が等しい場合でも、通電時に各々の電池ユニット間に電圧差が生じる。このとき、各々の電池ユニット間の電圧を均等にするための制御を行うと、等しかった残容量が逆にバラついてしまう可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、
直列に接続された複数の電池ユニットのうち、二つ以上の前記電池ユニットの温度を測定する温度測定手段と、
前記電池ユニットの電圧を測定する電圧測定手段と、
前記電池ユニットの通電を検出する通電検出手段と、
前記電池ユニットの充電および放電を制御する電池制御手段と、
を備え、
前記電池制御手段は、
前記電池ユニットの前記通電中に、前記温度測定手段が測定した前記温度に基づいて、前記温度が最低である温度最低ユニットと、前記温度が最高である温度最高ユニットとを特定し、
さらに前記温度最高ユニットと前記温度最低ユニットとの温度差が基準値を超えるとする第1温度条件を満たさないとき、前記電圧測定手段が測定した前記電圧に基づいて、少なくとも二つの前記電池ユニットの前記電圧の差を減じるためのバランス制御を行い、
前記温度差が前記第1温度条件を満たすとき、前記バランス制御を行わず、
前記第1温度条件における前記温度差の前記基準値を、前記電池ユニットの前記温度に基づいて変化させる電池制御システムが提供される。
また、本発明によれば、
直列に接続された複数の電池ユニットのうち、二つ以上の前記電池ユニットの温度を測定する温度測定手段と、
前記電池ユニットの電圧を測定する電圧測定手段と、
前記電池ユニットの通電を検出する通電検出手段と、
前記電池ユニットの充電および放電を制御する電池制御手段と、
を備え、
前記電池制御手段は、
前記電池ユニットの前記通電中に、前記温度測定手段が測定した前記温度に基づいて、前記温度が最低である温度最低ユニットと、前記温度が最高である温度最高ユニットとを特定し、
前記電圧測定手段が測定した前記電圧に基づいて、前記電池ユニットに前記充電を行っている場合に前記電圧が最大である第1ユニットをさらに特定し、
(1)前記温度最高ユニットと前記温度最低ユニットとの温度差が基準値を超えるとする第1温度条件を満たさないとき、または、(2)前記温度差が前記第1温度条件を満たし、且つ、前記温度最低ユニットが、前記第1ユニットと異なるとき、前記電圧測定手段が測定した前記電圧に基づいて、少なくとも二つの前記電池ユニットの前記電圧の差を減じるためのバランス制御を行い、
前記温度差が前記第1温度条件を満たし、且つ、前記温度最低ユニットが、前記第1ユニットと同一であるとき、前記バランス制御を行わない電池制御システムが提供される。
【0008】
本発明によれば、
直列に接続された複数の電池ユニットと、
二つ以上の前記電池ユニットの温度を測定する温度測定手段と、
前記電池ユニットの電圧を測定する電圧測定手段と、
前記電池ユニットの通電を検出する通電検出手段と、
前記電池ユニットの充電および放電を制御する電池制御手段と、
を備え、
前記電池制御手段は、
前記電池ユニットの前記通電中に、前記温度測定手段が測定した前記温度に基づいて、前記温度が最低である温度最低ユニットと、前記温度が最高である温度最高ユニットとを特定し、
前記温度最高ユニットと前記温度最低ユニットとの温度差が基準値を超えるとする第1温度条件を満たさないとき、前記電圧測定手段が測定した前記電圧に基づいて、少なくとも二つの前記電池ユニットの前記電圧の差を減じるためのバランス制御を行い、
前記温度差が前記第1温度条件を満たすとき、前記バランス制御を行わず、
前記第1温度条件における前記温度差の前記基準値を、前記電池ユニットの前記温度に基づいて変化させる電池パックが提供される。
また、本発明によれば、
直列に接続された複数の電池ユニットと、
二つ以上の前記電池ユニットの温度を測定する温度測定手段と、
前記電池ユニットの電圧を測定する電圧測定手段と、
前記電池ユニットの通電を検出する通電検出手段と、
前記電池ユニットの充電および放電を制御する電池制御手段と、
を備え、
前記電池制御手段は、
前記電池ユニットの前記通電中に、前記温度測定手段が測定した前記温度に基づいて、前記温度が最低である温度最低ユニットと、前記温度が最高である温度最高ユニットとを特定し、
前記電圧測定手段が測定した前記電圧に基づいて、前記電池ユニットに前記充電を行っている場合に前記電圧が最大である第1ユニットをさらに特定し、
(1)前記温度最高ユニットと前記温度最低ユニットとの温度差が基準値を超えるとする第1温度条件を満たさないとき、または、(2)前記温度差が前記第1温度条件を満たし、且つ、前記温度最低ユニットが、前記第1ユニットと異なるとき、前記電圧測定手段が測定した前記電圧に基づいて、少なくとも二つの前記電池ユニットの前記電圧の差を減じるためのバランス制御を行い、
前記温度差が前記第1温度条件を満たし、且つ、前記温度最低ユニットが、前記第1ユニットと同一であるとき、前記バランス制御を行わない電池パックが提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電池制御手段は、温度最高ユニットと温度最低ユニットとの温度差が基準値以上であるとする第1温度条件を満たさないとき、電圧測定手段が測定した電圧に基づいて、少なくとも二つの電池ユニット間の電圧差を低減するためのバランス制御を行う。一方、温度差が第1温度条件を満たすとき、電池制御手段は、バランス制御を行わない。これにより、各々の電池ユニット間の電圧差が生じている原因が、各々の電池ユニット間の温度差である場合には、バランス制御を行わないようにすることができる。すなわち、各々の電池ユニットの残容量が等しいときに、不必要なバランス制御を行うことがない。したがって、各々の電池ユニット間の電圧差が生じている原因を適切に判別しながら、電池パックを安定的に充電または放電させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
上述した目的、およびその他の目的、特徴および利点は、以下に述べる好適な実施の形態、およびそれに付随する以下の図面によってさらに明らかになる。
【0011】
図1】第1の実施形態に係る電池パックの構成を示す回路図である。
図2】第1の実施形態に係る電池パックの電池セル近傍の等価回路図である。
図3】第1の実施形態に係る制御方法を示すフローチャートである。
図4】第1の実施形態に係る制御方法を示すフローチャートの変形例である。
図5】第1の実施形態に係る制御方法を説明するための図である。
図6】第1の実施形態に係る制御方法を説明するための図である。
図7】第1の実施形態の効果を説明するための比較例の図である。
図8】第2の実施形態に係る電池パックの構成を示す回路図である。
図9】第2の実施形態に係る電池パックの電池セル近傍の等価回路図である。
図10】第3の実施形態に係る制御方法を示すフローチャートである。
図11】第4の実施形態に係る電池パックの構成を示す回路図である。
図12】第4の実施形態に係る電池パックの電池セル近傍の等価回路図である。
図13】第4の実施形態に係る制御方法を説明するための図である。
図14】第4の実施形態の効果を説明するための比較例の図である。
図15】第5の実施形態に係る電池パックの構成を示す回路図である。
図16】第6の実施形態に係る電池パックの構成を示す回路図である。
図17】第6の実施形態に係る電池パックの構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0013】
ここでいう「電池パック10」とは、複数の電池ユニットを有している組電池のことをいう。また、「電池ユニット」とは、少なくとも一つ以上の電池セル100を有しているものをいう。さらに、「電池ユニット」に含まれる電池セル100は、正極および負極等を有する複数の単電池を有していてもよい。また、複数の「電池ユニット」は、それぞれ異なる数量の電池セル100を有していてもよい。以下では、「電池パック10」に含まれる「電池ユニット」は、並列に接続された二つの単電池を有する電池セル100である場合を説明する。
【0014】
(第1の実施形態)
図1および図2を用い、第1の実施形態に係る電池パック10について説明する。図1は、第1の実施形態に係る電池パック10および電子機器60の構成を示す回路図である。この電池パック10は、複数の電池セル100と、温度測定手段(温度測定部320および温度センサー)と、電圧測定手段および通電検出手段(電圧電流測定部340)と、電池制御手段(電池制御部400)とを備えている。なお、第1の実施形態では、電圧電流測定部340が電圧測定手段および通電検出手段を兼ねている。複数の電池セル100は、直列に接続している。温度測定部320は、二つ以上の電池セル100の温度を測定する。電池制御部400は、電池セル100の充電および放電を制御する。また、電池制御部400は、電池セル100の通電中に、温度測定部320が測定した温度に基づいて、温度が最低である温度最低セルと、温度が最高である温度最高セルを特定する。また、電池制御部400は、温度最高セルと温度最低セルとの温度差ΔTが基準値T以上であるとする第1温度条件を満たさないとき、電圧電流測定部340が測定した前記電圧に基づいて、少なくとも二つの電池セル100の電圧の差を減じるためのバランス制御を行う。一方、温度差ΔTが第1温度条件を満たすとき、電池制御部400は、バランス制御を行わない。以下、詳細を説明する。
【0015】
図1のように、電池パック10は、複数の電池セル100を備えている。ここでは、電池パック10は、たとえば、N個の電池セル100を備えている。また、上述のように電池セル100は、二つの単電池を有している。具体的には、電池セル100は、Liイオン二次電池である。第1の実施形態における電池パック10では、複数の電池セル100が、それぞれ外装体(不図示)に収納され、一列に積載された状態で電池パック10にパッケージされている。なお、電池セル100のパッケージ様態は、任意で良く、例えば複数の電池セル100をその厚さ方向に1列に積層した状態や、積層した電池セル100を複数列に隣合せに配置した状態であってもよい。このようなパッケージなどであっても第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0016】
ここで、説明を簡略化するために、第1の実施形態における各々の電池セル100は、満充電容量が等しいとする。このような電池パック10であっても、各々の電池セル100間において、温度差を起因として、各々の内部抵抗の差が生じる場合がある。この場合、電池パック10を通電する際に、当該内部抵抗の電圧降下の差によって、各々の電池セル100の間に電圧差が生じる可能性がある。第1の実施形態は、このような場合に特に有効である。なお、原理的には、各々の電池セル100の満充電容量が異なる場合においても、同様の効果を得ることができる。
【0017】
第1の実施形態における電池パック10は、電池セル100のほかに、制御回路20を有している。制御回路20は、電圧電流測定部340、温度測定部320、電池制御部400およびスイッチ500を備えている。
【0018】
また、制御回路20は、直列に接続された電池セル100に接続されている。制御回路20は、内部正極端子160、内部負極端子180、外部正極端子710および外部負極端子720を有している。内部正極端子160は、直列に接続された一方の電池セル100の正極端子120に接続している。また、内部負極端子180は、直列に接続された他方の電池セル100の負極端子140に接続している。
【0019】
内部正極端子160は、制御回路20内の配線(不図示)およびスイッチ500を介して、当該電池パック10を使用する外部機器に接続するための外部正極端子710に接続している。また、内部負極端子180も同様に、外部負極端子720に接続している。
【0020】
内部正極端子160と外部正極端子710との間には、充電または放電を停止するためのスイッチ500が設けられている。スイッチ500は、たとえば、電池セル100側の内部正極端子160と外部正極端子710との間に設けられている。この場合、スイッチ500は、たとえば、PチャネルのMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)である。スイッチ500内には、二つのPチャネルのMOSFETが設けられている。これにより、片方のMOSFETが充電を制御するために用いられる。一方、他方のMOSFETが放電を制御するために用いられる。また、スイッチ500における各々のMOSFETは、電圧電流測定部340に接続している。
【0021】
なお、スイッチ500がNチャネルのMOSFETである場合は、スイッチ500は、内部負極端子180と外部負極端子720との間に配置される。その他、スイッチ500は、たとえば、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor、IGBT)、リレーまたはブレーカーであってもよい。
【0022】
制御回路20には、温度測定部320が設けられている。温度測定部320は、二つ以上の電池セル100の温度を測定する。温度測定部320は、少なくとも二つ以上の温度センサー(321、322、323)を有している。温度センサーは、たとえば、熱電対である。
【0023】
温度測定部320の温度センサーは、たとえば、最も外側に配置された少なくとも一つの電池セル100と、少なくとも一つの電池セル100よりも内側に位置する電池セル100と、の温度を測定するように設けられている。電池パック10内の電池セル100のうち、最も外側に配置された電池セル100は、温まりにくい。一方、電池パック10内の内側に配置された電池セル100は、温まりやすい。このため、電池パック10からの発熱が支配的である場合において、たとえば、上記したように温度センサーが配置されていることにより、最も温度差の大きい二つの電池セル100の温度を測定することができる。なお、電池パック10外部から熱エネルギーが供給されるような場合は、適宜、温度センサーの配置を変えてもよい。具体的には、屋外配置の家庭用蓄電池において、太陽光が電池パック10に照射される場合などが挙げられる。この場合、太陽光が当たる電池セル100と太陽光の陰になる電池セル100とに、温度センサーを設けてもよい。
【0024】
ここでは、温度センサー321、温度センサー322および温度センサー323が、各々異なる電池セル100に接するように設けられている。そのうち、温度センサー321は、最も外側に配置された電池セル100(図中Cell1)に接して設けられている。また、温度センサー322は、電池パック10の中心付近の電池セル100(図中Cell3)に接して設けられている。また、温度センサー323は、温度センサー321と反対側の外側に配置された電池セル100(図中CellN)に接して設けられている。各々の温度センサーは、電池セル100を収容する外装体(不図示)に貼り付けられている。なお、温度センサーは、たとえば、外装体の中において、電池セル100に貼り付けられていてもよい。
【0025】
また、温度センサーは、電池パック10の外側付近に設けられていてもよい。これにより、温度測定部320は、外気温度を測定することができる。
【0026】
また、温度測定部320は、上記した温度センサーで生じる熱起電力等の信号を受けて温度を算出する。温度測定部320は、電池制御部400に接続している。これにより、電池制御部400は、温度測定部320が測定した温度の信号を受信する。なお、電池制御部400が、温度センサーの信号を受けて温度を算出してもよい。
【0027】
また、制御回路20には、電圧電流測定部340が設けられている。電圧電流測定部340は、電池制御部400を介して、電池セル100に接続されている。電圧電流測定部340は、複数の電池セル100のそれぞれの電圧を測定する。また、電圧電流測定部340は、直列に接続された複数の電池セル100の合計電圧を測定するために、内部正極端子160および内部負極端子180の両端の電圧を測定してもよい。
【0028】
また、内部負極端子180と外部負極端子720との間には、抵抗値が既知の抵抗360が設けられている。電圧電流測定部340は、抵抗360の両端に接続している。抵抗360にかかる電圧値を測定することにより、電圧電流測定部340は、上記抵抗値で割った値を電池セル100に流れる電流値として算出する。電池制御部400は、この電圧値の絶対値が所定の基準値より大きいとき、電池セル100が通電中である(充電または放電が行われている)と判断することができる。
【0029】
制御回路20には、電池制御部400が設けられている。電池制御部400は、配線(符号不図示)を介して、各々の電池セル100に接続している。
【0030】
電池制御部400は、温度測定部320および電圧電流測定部340に接続している。電池制御部400は、温度測定部320が測定した温度、および電圧電流測定部340が測定した電圧に基づいて、各々の電池セル100の充電および放電を制御する。電池制御部400は、上記した温度および電圧に基づいて、演算処理を行う演算部(不図示)を有している。たとえば、電池制御部400は、温度測定部320が測定した温度に基づいて、温度センサーが設けられた電池セル100のなかから、温度が最低である温度最低セルと、温度が最高である温度最高セルを特定する。
【0031】
また、電池制御部400は、電池制御部400からの信号を電子機器60に送信し、または電子機器60からの信号を受信するための通信部(不図示)を有している。電池制御部400は、電子機器60に信号を送受信するための通信端子730に接続している。
【0032】
また、電圧電流測定部340、電池制御部400およびスイッチ500は、安全性、充放電のサイクル寿命を向上させるため、保護回路として機能する。電圧電流測定部340、電池制御部400およびスイッチ500は、電池セル100に対して、過放電検出電圧値以下まで放電された場合、当該放電を強制終了させる。一方、過充電検出電圧値以上まで充電された場合、当該充電を強制終了させる。
【0033】
その他、電池制御部400は、温度差ΔTの基準値T等を記憶する記憶部(不図示)を有している。
【0034】
このように、第1の実施形態では、複数の電池セル100および制御回路20を含み、電池パック10としてパッケージされている。
【0035】
第1の実施形態では、電池パック10に充電を行う場合について説明する。このとき、電池パック10は、たとえば、充電機器90に接続されている。充電機器90は、電力供給源900を備えている。ここでいう電力供給源900は、電池パック10を充電するための電力源である。充電機器90の正極端子810および負極端子820は、電力供給源900に接続している。なお、電力供給源900が交流である場合は、充電機器90は、交流電流を直流電流に変換するコンバータ部(不図示)を備えていてもよい。
【0036】
充電機器90の電池パック10側には、正極端子810および負極端子820が設けられている。充電機器90の正極端子810および負極端子820は、それぞれ、電池パック10の外部正極端子710および外部負極端子720に接続している。これにより、充電機器90は、電池パック10に充電することができる。
【0037】
充電制御部940は、電力供給源900に接続している。これにより、充電制御部940は、電力供給源900の電圧および電流を制御している。
【0038】
また、充電制御部940は、通信端子830に接続していてもよい。充電機器90側の通信端子830は、たとえば、配線(不図示)を介して、電池パック10側の通信端子730に接続している。これにより、充電制御部940は、電池制御部400に接続して、各種信号を受信することができる。
【0039】
ここで、図2を用い、電池セル100近傍の等価回路について説明する。図2は、電池制御部400のうち、電池セル100の充電および放電を制御する部分の等価回路の一例を示している。図中の点線は、電池制御部400の内部を示している。なお、制御信号などを伝達する配線などは、省略している。
【0040】
図2のように、電池制御部400は、たとえば、以下のような構成を備えている。電池制御部400は、配線(符号不図示)を介して、各々の電池セル100に接続している。電池制御部400には、内部抵抗202および第1セルスイッチ204が、各々の電池セル100と並列に配置されている。
【0041】
電池制御部400は、電圧電流測定部340が測定した電圧に基づいて、各々の電池セル100間に電圧差が生じているとき、電圧差が生じた電池セル100の電圧を均等にするためのバランス制御を行う。
【0042】
ここで、電池制御部400は、「バランス制御」において、たとえば、以下のように制御することができる。電圧電流測定部340が測定した電圧に基づいて、最も電圧の高い電圧最大セルと最も電圧の低い電圧最小セルとの電圧の差(ΔV)が第1基準電圧値(V)以上であるとき、当該電圧の差が小さくなるように制御する。ここでは、電池制御部400は、たとえば、当該電圧最大セルの電圧上昇を抑制する制御を行う。第1の実施形態では、温度最高セルと温度最低セルとの温度差が基準値未満であり(第1温度条件を満たさない)、且つ、当該電圧の差が第1基準値以上であるとき、上記したバランス制御を行う。これにより、電圧最大セルと電圧最小セルとの電圧差が温度差に起因したものではないとして、全ての電池セル100の電圧を均等にすることができる。
【0043】
具体的には、電池制御部400は、たとえば、図2の等価回路を有しており、以下のような手順でバランス制御を行う。まず、電池制御部400は、電圧最大セルに該当する電池セル100に並列に配置された第1セルスイッチ204をONする。一方、他の電池セル100と並列に配置された第1セルスイッチ204は開放したままにする。電圧最大セルに並列に配置された第1セルスイッチ204をONすることで、当該電圧最大セルに流入していた充電電流は、第1セルスイッチ204に直列接続された内部抵抗202に分流される。これにより、電圧最大セルに流入する充電電流は、当該電圧最大セルのうち現在印加されている電圧、電圧最大セルの内部抵抗、および電池制御部400の内部抵抗202の値に応じて、減少する。したがって、電池制御部400は、電圧最大セルの電圧の増加を抑制することができる。
【0044】
一方、電圧最大セル以外の他の電池セル100は、継続して充電されている。これにより、電圧最大セルの電圧は、他の電池セル100の電圧に近づいていく。所定の期間経過後、電池制御部400は、第1セルスイッチ204をOFFする。このように、温度最高セルと温度最低セルとの温度差が基準値未満である(第1温度条件を満たさない)場合、当該バランス制御を行うことにより、電池制御部400は、電池セル100の電圧を均等にすることができる。
【0045】
なお、上述した「バランス制御」では、電圧最大セルに流れる充電電流を内部抵抗202に分流するとしたが、電圧最大セルを放電に転じさせて、当該電圧最大セルの容量を減少させることにより、電池セル100間の電圧差を低減させてもよい。この場合、電池セル100の電圧もしくは内部抵抗または充電電流の範囲に応じて、内部抵抗202の抵抗値を予め定めておく。これにより、バランス制御の際に電池セル100を放電に転じさせることができる。
【0046】
なお、図2で示されている等価回路は、内部抵抗202と第1セルスイッチ204のみの簡易な構造である。これにより、電池制御部400を電池パック10内の小さい領域に収容することができる。また、電池制御部400の当該回路を、低コストで形成することができる。
【0047】
第1の実施形態では、電池制御部400は、温度最高セルと温度最低セルとの温度差ΔTが基準値T以上であるとする第1温度条件を満たさないとき、上述のバランス制御を行う。一方、温度差ΔTが第1温度条件を満たすとき、電池制御部400は、バランス制御を行わない。なお、この制御方法については、詳細を後述する。
【0048】
次に、図3から図7を用いて、上記した電池パック10の制御方法について説明する。図3は、第1の実施形態に係る制御方法について説明するためのフローチャートである。図4は、第1の実施形態に係る制御方法について説明するためのフローチャートの変形例である。図5図7は、第1の実施形態に係る制御方法を説明するための図である。第1の実施形態に係る制御方法は、以下のステップを備えている。まず、電池制御部400は、電圧電流測定部340が測定した電流に基づいて、通電中かを判定する(S112)。通電中のとき(S112Yes)、電池制御部400は、温度測定部320が測定した温度に基づいて、温度が最低である温度最低セルと、温度が最高である温度最高セルを特定する(S120)。次いで、電池制御部400は、温度最高セルと温度最低セルとの温度差ΔTが基準値T以上であるとする第1温度条件を判定する(S130)。次いで、電池制御部400は、温度最高セルと温度最低セルとの温度差ΔTが基準値T以上であるとする第1温度条件を満たさないとき(S130No)、電圧電流測定部340が測定した電圧に基づいて、少なくとも二つの電池セル100の電圧の差を減じるためのバランス制御を行う。一方、温度差ΔTが第1温度条件を満たすとき(S130Yes)、電池制御部400は、バランス制御を行わない。以下、詳細を説明する。
【0049】
ここで、電池パック10に充電する場合について説明する。それぞれの電池セル100の満充電容量は等しいと仮定する。また、電池パック10の全ての電池セル100の残容量は無くなっている状態であるとする。初期段階における全ての電池セル100の電圧は、放電終止電圧Vに近い値となっている。
【0050】
ここで、この充電は、定電流定電圧充電法により行われる。ここでいう「定電流定電圧充電法」とは、電池パック10全体の電圧が特定の充電電圧に達するまでは一定の充電電流で充電を行い、特定の充電電圧に達した後は印加する電圧を当該充電電圧に固定する充電方法である。ここでは、たとえば、電池セル100の電圧が充電基準電圧値Vとなるように、上記した「充電電圧」をNVとする。また、「充電電流」をIC1とする。
【0051】
まず、図3において、充電を開始する(S110)。具体的には、電池パック10の外部正極端子710および外部負極端子720を、充電機器90の正極端子810および負極端子820にそれぞれ接続する。これにより、複数の電池セル100に充電を開始する。これと同時に、温度測定部320は、温度センサーが設けられた電池セル100の温度を測定し始める。また、電圧電流測定部340は、それぞれの電池セル100の電圧を測定し始める(S110)。
【0052】
次いで、電池制御部400は、電圧電流測定部340が測定した電流に基づいて、通電中かを判定する(S112)。具体的には、電池制御部400は、電圧電流測定部340が測定した電流に基づいて、電流が0より大きいかを判定する。ここでは、電池パック10に充電を行っているので、電流は0より大きい(S112Yes)。
【0053】
次いで、通電中であるとき(S112Yes)、電池制御部400は、温度測定部320が測定した温度に基づいて、温度が最低である温度最低セルと、温度が最高である温度最高セルを特定する(S120)。ここでは、たとえば、最も外側に配置された電池セル100(図1におけるCell1)が、熱が逃げやすいため、温度最低セルとなる。一方、電池パック10の中心付近の電池セル100(図1におけるCell3)が、熱が逃げにくいため、温度最高セルとなる。
【0054】
ここで、電池セル100が通電しているとき、電池セル100の内部抵抗などにより、ジュール熱が放出される。当該ジュール熱により、原則として、各々の電池セル100の温度は上昇していく。ただし、電池セル100の位置、外気温などの電子機器60の使用環境、電池セル100自身の比熱、電池パック10のパッケージ態様、外部への放熱、または充電機器90の電流などの要因により、各々の電池セル100の温度は均等に上昇していくとは限らない。
【0055】
図5(a)は、第1の実施形態における充電開始時刻からの時間と、温度最高セルと温度最低セルとの温度差ΔTとの関係を示している。電池セル100のなかでも、温度最高セルは、上記のように電池パック10の内部に設けられている。このため、充電の初期段階では、温度最高セルの温度上昇は、速い。一方、温度最低セルは、上述のように、最も外側に配置されている。このため、温度最低セルの温度上昇は遅い。
【0056】
したがって、図5(a)のように、時刻t未満の充電の初期段階のとき、温度最高セルと温度最低セルとの温度差ΔTは単調に増加していく。なお、初期段階において、温度の差が小さく、温度最高セルと温度最低セルを特定し難い場合は、随時、温度最高セルと温度最低セルを更新していけばよい。
【0057】
また、図5(b)は、第1の実施形態における充電開始時刻からの時間と、電池セル100のうち、電圧が最大である電池セル100の電圧Vおよび電圧が最低である電池セル100の電圧Vとの関係を示している。なお、電圧が最大である電池セル100(電圧最大セル)の電圧Vを太実線で、電圧が最低である電池セル100(電圧最低セル)の電圧Vを細実線で示している。また、第1の実施形態における充電開始時刻からの時間と、電圧最大セルと温度最低セルとの電圧差ΔVとの関係を示している。
【0058】
また、図5(c)は、第1の実施形態における充電開始時刻からの時間と電池セル100の残容量との関係、および第1の実施形態における充電開始時刻からの時間と電池セル100の電流との関係を示している。
【0059】
図5(c)において、時刻tまでの充電は、定電流充電である。また、全ての電池セル100は、直列に接続されている。したがって、全ての電池セル100の電流は、定電流値IC1で一定である。
【0060】
ここで、電池セル100は、内部抵抗を有している。このため、電池セル100が通電中のとき、電池セル100には、電池セル100の残容量に相当する電圧の他に、当該内部抵抗と電流値との積が重畳された合計の電圧が印加される。
【0061】
図6(a)は、電池セル100における温度と、電池セル100の内部抵抗との関係を示している。電池セル100における温度が低いほど、電池セル100の内部抵抗は大きくなる。特に、低温ほど顕著に内部抵抗が上昇する傾向にある。このため、温度最低セルの内部抵抗の方が、温度最高セルの内部抵抗よりも大きい。
【0062】
図5(b)のように、充電開始から、内部抵抗の差によって、電圧の差が生じていく。ここで、上述のように、全ての電池セル100の満充電容量などの特性は等しいとすると、内部抵抗が最も大きくなっている温度最低セルが、電圧が最大である電池セル100となっている。一方で、内部抵抗が最も小さい温度最高セルが、電圧が最低である電池セル100となっている。
【0063】
また、時刻t未満の充電の初期段階のとき、温度最低セルの電圧は、内部抵抗の差によって、電池セル100の平均の電圧Vよりも速く上昇する。その差分(V−V)は、内部抵抗の差に、IC1をかけたものに等しい。また、上記した温度差ΔTが大きくなっていく間では、温度最低セルの電圧Vと平均の電圧Vとの差は大きくなっていく。
【0064】
次いで、電池制御部400は、「温度差ΔTの基準値T」を設定する(S122)。ここでいう「温度差ΔTの基準値T」とは、後述するように、バランス制御を行うかを判定するための温度差ΔTの閾値である。言い換えれば、「温度差ΔTの基準値T」は、各々の電池セル100間の電圧差が生じている原因が、各々の電池セル100間の温度差であると判断するための閾値である。なお、「温度差ΔTの基準値T」は、予め定められたものであってもよい。その場合、当該ステップは省略することができる。
【0065】
ここで、図6(a)のように、電池セル100の内部抵抗は、低温ほど急峻に高くなる傾向にある。このため、温度最低セルの電圧上昇は、内部抵抗に比例する電圧成分だけ、他の電池セル100の電圧上昇よりも速くなる。したがって、電池セル100の温度が低いほど、電池セル100間の僅かな温度差で、各々の電池セル100間の電圧の差が急峻に大きくなる傾向にある。
【0066】
そこで、電池制御部400は、第1温度条件における「温度差ΔTの基準値T」を、電池セル100の温度に基づいて変化させる。「温度差ΔTの基準値T」は、たとえば、温度最低セルまたは温度最高セルの温度が低いほど急峻に小さい値とする。
【0067】
つまり、たとえば、電池制御部400は、電池セル100の温度Tに対する「温度差ΔTの基準値T」を図6(b)のように変化させればよい。なお、図6(b)は、電池セル100における温度と、「温度差ΔTの基準値T」との関係を示している。電池セル100の温度が低い場合、このように「温度差ΔTの基準値T」を低くしておくことにより、電池セル100間の僅かな温度差でも、各々の電池セル100間の電圧差が生じている原因が、各々の電池セル100間の温度差であると判断することができる。ここでは、たとえば、温度最低セルの温度に基づいて、図6(b)から「温度差ΔTの基準値T」を設定する。なお、温度差ΔTの基準値Tを予め定めておき、記憶部に保存しておいてもよい。
【0068】
なお、電池セル100の温度に対する「温度差ΔTの基準値T」は、テーブル形式、または関数として、電池制御部400の記憶部に記憶されている。
【0069】
また、電池制御部400は、当該テーブルや関数を、電池パック10が充電される環境などに応じて変化させてもよい。
【0070】
次いで、電池制御部400は、温度最高セルと温度最低セルとの温度差ΔTが基準値T以上であるとする第1温度条件を判定する(S130)。
【0071】
電池制御部400は、温度最高セルと温度最低セルとの温度差ΔTが基準値T以上であるとする第1温度条件を満たさないとき(S130No)、電圧電流測定部340が測定した電圧に基づいて、最も電圧の高い電圧最大セルと最も電圧の低い電圧最小セルとの電圧の差が第1基準電圧値以上であるかを判定する(S142)。
【0072】
温度差ΔTが第1温度条件を満たさず、且つ、電圧最大セルと電圧最小セルとの電圧差ΔVが第1基準電圧値V未満であるとき(S142No)、電池制御部400はそのまま充電を継続するかを判定する(S160)。このように、電圧差が小さい場合は、バランス制御を行わないようにすることができる。
【0073】
一方、温度差ΔTが第1温度条件を満たさず、且つ、最も電圧の高い電圧最大セルと最も電圧の低い電圧最小セルとの電圧差ΔVが第1基準電圧値V以上であるとき(S142Yes)、電圧電流測定部340が測定した電圧に基づいて、少なくとも二つの電池セル100の電圧の差を減じるためのバランス制御を行う(S150)。このとき、電圧最大セルと電圧最小セルとの温度差に起因した電圧差は小さいので、バランス制御を行うことで、電池セル100の容量を均等化することができる。
【0074】
ここで、図5(a)において、時刻t未満のとき、温度差ΔTは第1温度条件を満たさない(S130No)。
【0075】
また、図5(b)のように、電圧最大セルの電圧Vと電圧最小セルの電圧Vとの差は小さく、第1基準電圧値V以下である(S142No)。加えて、電池セル100が未だ満充電となっていないので、電池制御部400は、このまま充電を継続する(S160Yes)。
【0076】
時刻t未満では、このように、S120からS160を繰り返しながら、充電が行われる。なお、温度最低セルおよび温度最高セルが異なる電池セル100に変化する場合は、随時、新しい電池セル100に更新していけばよい。
【0077】
次に、図5(a)において、時刻tのとき、温度最高セルと温度最低セルとの温度差ΔTは、基準値Tとなっている。したがって、温度差ΔTは、第1温度条件を満たしている(S130Yes)。
【0078】
電池セル100が未だ満充電となっていないので、電池制御部400は、時刻tにおいて、そのまま充電を継続する(S160Yes)。
【0079】
なお、図5(b)では、時刻tのとき、電圧最大セルの電圧Vと電圧最小セルの電圧Vとの電圧差ΔVは、第1基準電圧値V以上となっている。しかし、温度最高セルと温度最低セルとの温度差ΔTは、基準値T以上であり、第1温度条件を満たしている(S130Yes)。したがって、電池制御部400は、時刻t以降も、S120からS160を繰り返しながら、充電を継続する。
【0080】
つまり、図5(c)のように、時刻t以降も、電流を電流値IC1で一定に保っている。
【0081】
時刻t以降、そのまま充電を継続した場合、図5(a)のように、温度差ΔTの上昇が緩やかになっていき、次いで温度差ΔTは最大値Tとなり、次いで温度差ΔTは減少していく。これは以下のような理由によるものである。
【0082】
第1の実施形態の電池パック10では、電池パック10内の内側に配置されている電池セル100ほど、通電により発生するジュール熱を電池パック10外に逃し難い。つまり、電池パック10内の内側に配置されている電池セル100ほど、温度最高セルになり易く、電池パック10内の外側に配置されている電池セル100ほど温度最低セルになり易い。
【0083】
一方、通電により発生するジュール熱は、内部抵抗がより高くなる温度最低セルほど大きくなる。従って、電池パック10の内側に配置される電池セル100と外側に配置される電池セル100の温度差は、定電流充電の初期において一旦は拡大するもの、充電の経過とともに、平衡化してゆく。つまり、温度最大セルと温度最低セルの温度差ΔTも、一旦は拡大するもの、最大値Tを示した後(時刻t以降)は減少していく。
【0084】
なお、電圧最大セルの電圧Vと電圧最小セルの電圧Vの電圧差ΔVも、定電流で充電している場合、主に電池セル100の内部抵抗差に応じて変化するので、温度差ΔTの変化に伴って増減する。
【0085】
さらに、図5(a)において、時刻tから時刻tにおいて、温度差ΔTは減少している。これに伴って、図5(b)のように、電圧最大セルの電圧Vおよび電圧最小セルの電圧Vとの電圧差ΔVも減少している。この間、温度差ΔTは基準値T以上であり第1温度条件を満たしている(S130Yes)。このため、そのまま充電を継続する。一方で、温度差ΔTが第1温度条件を満たさなくなった場合(S130No)、電圧電流測定部340の測定する電圧に基づいて、S142を判定すればよい。そして、電圧最大セルの電圧Vおよび電圧最小セルの電圧Vとの電圧差ΔVが第1基準電圧値V以上となっているときは、上記したバランス制御を行う(S150)。
【0086】
図5(b)において、時刻tのとき、電池パック10の合計電圧がNVに至ったとする。このとき、充電方法が、定電流充電から、定電圧充電に切り替わる。時刻t以降、電圧最小セルの電圧Vは、一定の電圧Vに収束していく。また、電圧が最大である電池セル100(温度最低セル)の電圧Vは、時刻tのとき、最大値Vとなってから、時刻t以降、一定の電圧Vに収束していく。なお、最大値Vは、過充電検出電圧値未満であるとする。
【0087】
また、図5(c)において、時刻t以降、充電方法が定電流充電から定電圧充電に切り替わり、電流はIC1から徐々に減少していく。時刻tのとき、電流は、所定の充電終止電流値Iになる。
【0088】
また、図5(c)において、時刻tまで、全ての電池セル100の残容量は、均等に増加していく。時刻tのとき、同時に、全ての電池セル100の残容量は、満充電容量Cとなっている。
【0089】
このとき、電池制御部400は、電池セル100が満充電となったとして、充電を終了させる(S170)。具体的には、電池制御部400は、電圧電流測定部340を介して、スイッチ500に対して、充電を停止させるための信号を送信する。
【0090】
このように、温度差ΔTが基準値T以上であるとき、バランス制御を行わずに、満充電まで充電を行う。
【0091】
以上のようにして、第1の実施形態に係る電池パック10を制御する。
【0092】
(効果)
次に、図7を比較例として用い、第1の実施形態の効果について説明する。図7は、第1の実施形態の効果について説明するための比較例の図である。
【0093】
図7は、第1の実施形態とは異なり、電池制御部400は、電池セル100の温度に基づいて制御を行わない比較例の場合を示している。比較例のフローチャートとしては、図3において、S120からS130が無い場合である。すなわち、比較例では、電池制御部400は、電圧に基づく制御のみを行う。なお、比較例においても、充電開始の状態は、第1の実施形態と同様とする。
【0094】
図7(a)は、比較例における充電開始時刻からの時間と、温度最高セルと温度最低セルとの温度差ΔTとの関係を示している。図7(b)は、比較例における充電開始時刻からの時間と、電池セル100のうち、電圧が最大である電池セル100の電圧Vおよび平均の電圧Vとの関係を示している。また、比較例における充電開始時刻からの時間と、電圧最大セルの電圧Vと電圧最小セルの電圧Vとの電圧差ΔVとの関係を示している。また、図7(c)は、比較例における充電開始時刻からの時間と、電圧が最大である電池セル100の残容量Cおよび電圧最小セルの残容量Cとの関係を示している。さらに、図7(c)は、第1の実施形態における充電開始時刻からの時間と電池セル100の電流との関係を示している。なお、図7の横軸の間隔は、図5の横軸の間隔と同一であるとする。
【0095】
図7(c)のように、時刻tまでの充電は、定電流充電である。全ての電池セル100の電流は、定電流値IC1で一定である。
【0096】
図7(a)のように、比較例においても、温度最高セルと温度最低セルとの温度差ΔTは、時刻t未満の充電の初期段階のとき、単調に増加していく。時刻tのとき、温度最高セルと温度最低セルとの温度差ΔTは、基準値Tとなっている。ここで、第1の実施形態と同様にして、電池セル100の内部抵抗の差が生じる主因は温度差であるとする。このとき、電圧最大セルは温度最低セルであり、一方、電圧最小セルは温度最高セルである。
【0097】
図7(b)のように、充電開始から上記した温度差ΔTが大きくなっていく間では、経時的な内部抵抗の変化によって、電圧最大セルの電圧Vと電圧最小セルの電圧Vとの電圧差ΔVは大きくなっていく。時刻tのとき、電圧最大セルと電圧最小セルとの電圧差ΔVは、第1基準電圧値Vとなっている。
【0098】
ここで、比較例では、たとえば、電池制御部400は、電圧最大セルと電圧最小セルとの電圧差ΔVを小さくするために、たとえば、以下のようにしてバランス制御を行う。
【0099】
まず、電池制御部400は、電圧最大セルと並列に配置された第1セルスイッチ204をONする。これにより、充電電流が電圧最大セルと並列に配置された内部抵抗202に分流される。すなわち、電池制御部400は、電圧最大セルの電圧Vの増加を抑制する。一方、電池制御部400は、他の電池セル100と並列に配置された第1セルスイッチ204を開放したままにする。このため、他の電池セル100の電圧は、継続して単調に増加する。
【0100】
図7(b)において、時刻t以降、電圧最大セルの電圧Vの増加は抑制される。一方、電圧最小セルの電圧Vは、継続して単調に増加する。
【0101】
図7(c)において、時刻t以降、充電電流が電圧最大セルと並列に配置された内部抵抗202に分流されている。このため、電圧が最大である電池セル100の残容量Cの増加は抑制される。一方、電圧最小セルの残容量Cは、継続して単調に増加する。
【0102】
電池制御部400は、所定の期間経過した時刻tのとき、バランス制御を停止する。
【0103】
図7(b)において、時刻tのとき、電圧最大セルの電圧Vは、電圧最小セルの電圧Vに近づいている。時刻t以降、バランス制御の停止と同時に、電圧は上昇していく。
【0104】
図7(c)において、時刻tから時刻tまでの、電圧最大セルの残容量Cの増加量は、電圧最小セルの残容量Cの増加量よりも小さい。時刻tまでは、全ての電池セル100の残容量は等しいが、バランス制御によって、制御対象となった電池セル100の残容量は他の電池セル100の残容量に比べてずれてしまっている。
【0105】
なお、時刻t以降のバランス制御によって、電圧最高セルへ流入する充電電流は減少することに伴って、電圧最高セルでの発熱が低減される。このため、図7(a)で示されているように、時刻tから時刻tまでの間、温度差ΔTの上昇は一度抑制される。時刻t以降、バランス制御の停止に伴って、再度温度差ΔTは緩やかに上昇し、次いで、時刻tのとき、最大値TM2となる。次いで、時刻t以降、温度差ΔTは減少していく。
【0106】
電池制御部400は、さらに充電を継続する。時刻tのとき、電池パック10の合計電圧がNVに至ったとする。このとき、充電が、定電流充電から、定電圧充電に切り替わる。
【0107】
図7(b)において、時刻t以降、電圧が最大である電池セル100の電圧Vは、徐々にVに近づいていく。また、図7(c)において、時刻t以降、電流は、IC1から徐々に減少していく。
【0108】
ここで、時刻tにおいて、第1の実施形態では、全ての電池セル100が満充電となっている。一方、比較例においては、まだ全ての電池セル100が満充電となっていない。比較例では、全ての電池セル100を満充電とするには、さらに時間を必要とする。
【0109】
このように、比較例では、各々の電池セル100の残容量が等しい場合であっても、バランス制御を行う。バランス制御の対象となった電圧最高セルの残容量は、他の電池セル100の容量よりもずれてしまう。すなわち、電池セル100の残容量がバラついてしまう可能性がある。
【0110】
また、比較例では、少なくとも制御対象となった電池セル100を満充電とするために、バランス制御を行わなかった場合よりも時間が必要となる可能性がある。
【0111】
以上のように、比較例では、バランス制御が不必要な場合においても、電池制御部400がバランス制御を行ってしまう可能性がある。特に、電池パック10が低温環境下にある場合、小さい温度差で大きな内部抵抗の差が生じてしまう。このような場合、電池制御部400は、不必要なバランス制御を行ってしまう可能性が高い。
【0112】
一方、第1の実施形態によれば、電池制御部400は、温度最高セルと温度最低セルとの温度差ΔTが基準値T以上であるとする第1温度条件を満たさないとき、電圧電流測定部340が測定した電圧に基づいて、全ての電池セル100の電圧を均等にするためのバランス制御を行う。一方、温度差ΔTが第1温度条件を満たすとき、電池制御部400は、バランス制御を行わない。
【0113】
これにより、各々の電池セル100間の電圧差が生じている原因が、各々の電池セル100間の温度差である場合には、バランス制御を行わないようにすることができる。すなわち、各々の電池セル100の残容量が等しいときに、不必要なバランス制御を行うことがない。
【0114】
したがって、第1の実施形態によれば、各々の電池セル100間の電圧差が生じている原因を適切に判別しながら、電池パック10を安定的に充電することができる。
【0115】
また、上述のように、特に電池パック10が低温環境下にある場合に、内部抵抗の差によって、電圧差が生じやすい。このような場合に、第1の実施形態は、特に有効である。
【0116】
(変形例)
第1の実施形態は、以下のように変形することも可能である。以下のような変形例においても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0117】
第1の実施形態では、電圧が最大となる電池セル100が温度最低セルである場合を説明した。しかし、電圧が最大となる電池セル100は、温度最低セルでなくてもよい。この場合においても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、この場合において、この電圧が最大となる電池セル100は、S142における判定の対象となる。
【0118】
また、第1の実施形態では、S142において、第1基準電圧値以上であるかを判定する場合を説明した。しかし、図4のように、S142の代わりに、電池制御部400は、「バランス制御」において、電圧電流測定部340が測定した電圧に基づいて、電池セル100の平均の電圧との差が第2基準電圧値以上離れている電池セル100があるかを判定してもよい(S144)。電池セル100の平均の電圧との差が第2基準電圧値以上離れている電池セル100があるとき(S144Yes)、電池制御部400は、当該電池セル100に対して、電圧の差(平均の電圧との差)が小さくなるように制御してもよい(S150)。
【0119】
つまり、図4の場合、バランス制御の判断条件を、温度最高セルと温度最低セルとの温度差が基準値未満であり(第1温度条件を満たさない)、且つ、当該電圧の差が第2基準値以上離れているとき、上記したバランス制御を行うと変更できる。第1の実施形態と同様に、これによっても、当該電池セル100の電圧差が温度差に起因したものではないとして、全ての電池セル100の電圧を均等にすることができる。なお、ここでいう「平均の電圧との差が第2基準電圧値以上離れている」とは、特定の電池セル100の電圧が平均の電圧よりも第2基準電圧値以上高い場合、および平均の電圧よりも第2基準電圧値以上低い場合を含んでいる。
【0120】
また、第1の実施形態に係る電池パック10では、図3のS130とS142で説明したように、バランス制御で電圧を均等にするための条件を、「(温度最高セルと温度最低セルとの温度差が基準値未満であり、且つ、電圧最大セルと電圧最小セルとの電圧差が第1基準電圧値以上)」であるとした。この条件は、「(温度最高セルと温度最低セルとの温度差が基準値未満であり、且つ、電圧最大セルと電圧最小セルとの電圧差ΔVが第1基準電圧値以上)であるか、または、(温度最高セルと温度最低セルとの温度差が基準値以上であり、且つ、当該温度最高セルと当該温度最低セルとの電圧差ΔVが第3基準電圧値以上)」であると変形してもよい。なお、「電圧差ΔV」とは、温度最高セルの電圧から温度最低セルの電圧を引いた値のことである。
【0121】
つまり、内部抵抗がより小さい温度最高セルの電圧の方が高い場合(「電圧差ΔV」が正である場合)、当該電圧差は電池セル100の温度差に起因したものでない可能性が高いので、当該電圧差を均等化するとともに容量差を均等化することができる。
【0122】
このとき更に、電池制御部400は、温度センサーが設けられた電池セル100が何れの電池セル100であるかを特定する情報を記憶し、当該情報に基づいて電池セル100の電圧を対比し、上記条件を判定するともできる。従って、バランス制御で電圧を均等にする条件を上述したように変形しても、電池セル100の電圧差が温度差に起因したものではないとして、全ての電池セル100の電圧を均等にすることができる。
【0123】
また、上述した第1の実施形態に係る電池パック10では、電圧電流測定部340が、抵抗360にかかる電圧値に基づいて電池セル100の通電を検出した。しかし、通電の検出方法は、これに限られず、例えば、電池制御部400が電圧電流測定部340を介してスイッチ500に送信する充電や放電を停止させるための信号を用いて通電を検出するとしても良い。この場合、電池制御部400が通電検出手段を兼ね、電池制御部400が充電または放電用のMOSFETをオンする信号を送信している場合が通電中であると判断することができる。
【0124】
また、電池制御部400が通電検出手段を兼ねる場合、電池制御部400は、通信端子730を介して充電機器90から受信する信号を併用してもよい。この場合、電池制御部400は、「充電機器90から充電動作中を示す状態信号を通信端子730を介して受信している場合」であって、且つ「電池制御部400が充電または放電用のMOSFETをオンする信号を送信している場合」であるとき、通電中であると判断することができる。
【0125】
(第2の実施形態)
図8および図9を用い、第2の実施形態について説明する。図8は、第2の実施形態に係る電池パック10の構成を示す回路図である。図9は、第2の実施形態に係る電池パック10の電池セル100近傍の等価回路図である。第2の実施形態は、以下の点を除いて、第1の実施形態と同様である。第2の実施形態の電池パック10は、電池セル100の電圧を調整するバランス回路200をさらに備えている。また、電池制御部400は、バランス回路200を制御することにより、バランス制御を行う。以下、詳細を説明する。
【0126】
第2の実施形態では、第1の実施形態における電池制御部400のうち、各々の電池セル100の電圧を調整する手段であるバランス回路200が独立して設けられている。
【0127】
図8のように、バランス回路200は、配線(符号不図示)を介して、各々の電池セル100間に接続している。これにより、バランス回路200は、電池セル100の電圧を調整することができる。
【0128】
また、電圧電流測定部340は、バランス回路200に接続している。電圧電流測定部340は、バランス回路200を介して、各々の電池セル100の電圧を測定する。
【0129】
電池制御部400は、電圧電流測定部340を介して、バランス回路200に接続している。電池制御部400は、電圧電流測定部340を介して、バランス回路200を制御する。
【0130】
第1の実施形態と同様に、電池制御部400は、電圧電流測定部340および温度測定部320に接続している。電池制御部400は、電圧電流測定部340が測定した電圧、電流および温度測定部320が測定した温度に基づいて、バランス回路を制御する。
【0131】
ここで、図9を用い、第2の実施形態の電池セル100近傍の等価回路について説明する。図9は、バランス回路200の等価回路を示している。図中の点線は、バランス回路200の内部を示している。
【0132】
図9のように、バランス回路200は、配線(符号不図示)を介して、各々の電池セル100に接続している。バランス回路200には、内部抵抗202および第1セルスイッチ204が、各々の電池セル100と並列に配置されている。
【0133】
電池制御部400は、電圧電流測定部340が測定した電圧に基づいて、各々の電池セル100間に電圧差が生じているとき、当該バランス回路200を作動させることにより、バランス制御を行う。バランス回路200によるバランス制御の具体的な動作は、第1の実施形態の電池制御部400の動作と同様である。
【0134】
第2の実施形態の制御方法は、電池制御部400が行っていたバランス制御を、電池制御部400がバランス回路200を制御することにより行う点を除いて、第1の実施形態と同様である。
【0135】
第2の実施形態によれば、電池制御部400とは別の系統として、バランス回路200を備えている。このような構成においても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0136】
(第3の実施形態)
図10は、第3の実施形態に係る制御方法を示すフローチャートである。第3の実施形態は、以下の点を除いて、第1の実施形態と同様である。電池制御部400は、電圧電流測定部340が測定した電圧に基づいて、電池セル100に充電を行っている場合に電圧が最大である第1セルをさらに特定する。また、電池制御部400は、温度差ΔTが第1温度条件を満たし、且つ、温度最低セルが、第1セルと同一であるとき、バランス制御を行わない。一方、温度差ΔTが第1温度条件を満たし、且つ、温度最低セルが、第1セルと異なるとき、バランス制御を行う。以下、詳細を説明する。なお、「第1セル」とは、「電池セル」を「電池ユニット」と置き換えることができると同様に、「第1ユニット」と置き換えることができる。
【0137】
第3の実施形態は、第1の実施形態の電池パック10と同様の構成とすることができる。以下では、第1の場合として、全ての電池セル100の満充電容量が等しい電池パック10である場合とする。一方、第2の場合として、満充電容量が異なる電池セル100を組み合わせた電池パック10である場合とする。このような二つの場合について、第2の実施形態の制御方法について説明する。
【0138】
第1の実施形態と同様に、定電流定電圧充電法により、充電を開始する(S110)。次いで、電池制御部400は、電圧電流測定部340が測定した電流に基づいて、電流が0より大きいかを判定する(S112)。上述のように、ここでいう電圧電流測定部340が測定した「電流が0より大きいとき」とは、電池パック10が通電しているときのことをいう。ここでは、電池パック10に充電を行っているので、電流は0より大きい(S112Yes)。
【0139】
次いで、電池制御部400は、温度最低セルと温度最高セルを特定する(S120)。次いで、電池制御部400は、たとえば、温度最低セルの温度に基づいて、温度差ΔTの基準値Tを設定する(S122)。
【0140】
次いで、電池制御部400は、電池セル100に充電を行っているときに、電圧が最大である電池セル100である「第1セル」を特定する(S124)。
【0141】
ここで、第1の場合、図6を用いて説明したように、各々の電池セル100間の温度差によって、内部抵抗の差が生じる。このため、温度最低セルの内部抵抗が最も大きくなっている。したがって、温度最低セルが、電圧が最大である電池セル100となっている可能性がある。よって、第1の場合では、温度最低セルが「第1セル」であるとする。
【0142】
一方、第2の場合、満充電容量の異なる電池セル100を組み合わせているため、このステップにおける第1セルは、温度最低セルであるとは限らない。この場合、温度に関わらず、満充電容量が最も小さい電池セル100が、電圧が最大である電池セル100となっている可能性がある。よって、第2の場合では、満充電容量が最も小さい電池セル100が「第1セル」であるとする。
【0143】
次いで、温度最高セルと温度最低セルとの温度差ΔTが基準値T以上であるとする第1温度条件を判定する(S130)。
【0144】
ここで、温度最高セルと温度最低セルとの温度差ΔTが基準値T以上である状態であるとする。すなわち、温度差ΔTが第1温度条件を満たしている状態である。
【0145】
このように、温度差ΔTが第1温度条件を満たすとき(S130Yes)、温度最低セルは、第1セルと等しいかと判定する(S132)。
【0146】
ここで、第1の場合では、上述のように、温度最低セルが第1セルであるため(S132Yes)、電池制御部400は、バランス制御を行わず、そのまま充電を継続する(160Yes)。このように、第1の場合、各々の電池セル100間の電圧差が生じていたとしても、その原因が各々の電池セル100間の温度差であると判断し、バランス制御を行わないようにすることができる。
【0147】
一方、第2の場合では、上述のように、満充電容量が最も小さい電池セル100が第1セルであるため、温度最低セルは第1セルと異なる(S132No)。したがって、電池制御部400は、電圧電流測定部340が測定した電圧に基づいて、電池セル100の平均の電圧との差が第2基準電圧値以上離れている電池セル100があるかを判定する(S144)。
【0148】
このとき、満充電容量が最も小さい電池セル100の電圧と平均の電圧との差が第2基準電圧値以上離れている場合(S144Yes)、電池制御部400はバランス制御を行う(S150)。このように、第2の場合、各々の電池セル100間の電圧差が生じている原因が温度差ではないと判断することができる。この場合、満充電容量が最も小さい電池セル100を制御対象として、バランス制御を行うことができる。
【0149】
以下、S120からS160までを繰り返し、充電を行っていく。
【0150】
第3の実施形態によれば、電池制御部400は、温度差ΔTが第1温度条件を満たし、且つ、温度最低セルが、電圧が最大である第1セルと同一であるとき、バランス制御を行わない。一方、温度差ΔTが第1温度条件を満たし、且つ、温度最低セルが、第1セルと異なるとき、バランス制御を行う。このように、各々の電池セル100間の電圧差が生じている原因が温度差であるのか否かに応じて、バランス制御を適用するか否かを選択することができる。
【0151】
(第4の実施形態)
図11図14を用い、第4の実施形態について説明する。第4の実施形態は、以下の点を除いて、第1の実施形態と同様である。第4の実施形態では、放電に対して第1の実施形態を適用する。また、電池制御部400は、バランス制御の対象となる電池セル100をバイパスする回路を有している。以下、詳細を説明する。
【0152】
第4の実施形態では、電池パック10の放電を行う場合について説明する。図11は、第4の実施形態に係る電池パック10の構成を示す回路図である。図11のように、電池パック10は、たとえば、電子機器60に接続されている。図中では、電子機器60は模式的に表されている。そのうち、負荷600は、負荷制御部640の制御によって、電池パック10からの放電による電力を消費する。負荷600は、配線(不図示)を介して、正極端子810および負極端子820に接続している。電子機器60の正極端子810および負極端子820は、たとえば、配線(符号不図示)を介して、電池パック10の外部正極端子710および外部負極端子720に接続している。これにより、電子機器60は、電池パック10の放電による電力を受けることができる。
【0153】
次に、図12を用い、第4の実施形態の電池制御部400について説明する。図12は、第4の実施形態に係る電池パック10の電池セル100近傍の等価回路図である。図12のように、第4の実施形態において、電池制御部400は、たとえば、以下のような構成を備えている。
【0154】
図12のように、第4の実施形態において、「バランス制御」は、たとえば、「バイパス型」である。電池制御部400は、配線(符号不図示)を介して、各々の電池セル100に接続している。各々の電池セル100は、第2セルスイッチ206を介して、互いに接続している。電池制御部400には、第3セルスイッチ208が、各々の電池セル100および第2セルスイッチ206と並列に配置されている。これらの第2セルスイッチ206および第3セルスイッチ208は、各々が個別にONすることはあるが、同時にONをすることが無いように制御されている。これにより、電池制御部400は、電池セル100が正負極間で短絡することを防止している。
【0155】
また、電池制御部400は、通常の電池パック10を放電させるときなどは、第2セルスイッチ206をONして、第3セルスイッチ208をOFFする。
【0156】
一方、電池制御部400は、対象となる電池セル100をバイパスさせることにより、バランス制御を行う。このバランス制御において、電池セル100をバイパスさせるときは、当該電池セル100に接続している第2セルスイッチ206をOFFして、当該電池セル100と並列に配置されている第3セルスイッチ208をONする。これにより、制御対象となっている電池セル100をバイパスさせることができる。なお、ここでいう「電池セル100に接続している第2セルスイッチ206」とは、当該電池セル100の負極側に接続した第2セルスイッチ206のことである。
【0157】
たとえば、電池制御部400は、バランス制御において、電圧電流測定部340が測定した電圧に基づいて、電圧最大セルと電圧最小セルとの電圧差ΔVが第1基準電圧値V以上であるとき、当該電圧差が小さくなるように制御する。ここでは、電池制御部400は、たとえば、電圧最小セルをバイパスさせる。これにより、電池セル100の電圧を均等にすることができる。
【0158】
次に、図3および図13を用い、第4の実施形態の電池パック10の制御方法について説明する。
【0159】
図13は、第4の実施形態に係る制御方法を説明するための図である。図13(a)は、第4の実施形態における放電開始時刻からの時間と、温度最高セルと温度最低セルとの温度差ΔTとの関係を示している。図13(b)は、第4の実施形態における放電開始時刻からの時間と、電池セル100のうち、電圧が最小である電池セル100の電圧Vおよび電圧が最大である電池セル100の電圧Vとの関係を示している。また、第4の実施形態における充電開始時刻からの時間と、電圧最大セルと温度最低セルとの電圧差ΔV(絶対値)との関係を示している。第1の実施形態と比較して、a、bの符号の付け方が異なることに注意が必要である。また、図13(c)は、第4の実施形態における放電開始時刻からの時間と、電池セル100のうち、電圧が最小である電池セル100の残容量Cおよび電圧が最大である電池セル100の残容量Cとの関係を示している。さらに図13(c)は、第4の実施形態における充電開始時刻からの時間と電池セル100の電流との関係を示している。
【0160】
ここで、それぞれの電池セル100の満充電容量は、Cで等しいと仮定する。また、それぞれの電池セル100は、当該満充電容量まで充電されている状態であるとする。また、初期段階における各々の電池セル100の放電における電圧は、たとえば、Vである。
【0161】
図3のように、まず、放電を開始する。具体的には、電子機器60の正極端子810および負極端子820を、電池パック10の外部正極端子710および外部負極端子720にそれぞれ接続する。これにより、電池パック10からの放電を開始する。これと同時に、温度測定部320は、温度センサーが設けられた電池セル100の温度を測定し始める。また、電圧電流測定部340は、直列に接続された複数の電池セル100の電圧を測定し始める(以上、S110)。これにより、この電池パック10の放電による電力は、電子機器60の負荷600によって消費される。
【0162】
次いで、電池制御部400は、電圧電流測定部340が測定した電流に基づいて、電流が0より大きいかを判定する(S112)。上述のように、ここでいう電圧電流測定部340が測定した「電流が0より大きいとき」とは、電池パック10が通電しているときのことをいう。ここでは、電池パック10に放電を行っているので、電流は0より大きい(S112Yes)。
【0163】
次いで、電池制御部400は、温度測定部320が測定した温度に基づいて、温度が最低である温度最低セルと、温度が最高である温度最高セルを特定する(S120)。
【0164】
図13(a)のように、温度最高セルと温度最低セルとの温度差ΔTは、時刻t未満の放電の初期段階のとき、単調に増加していく。なお、初期段階において、温度の差が小さく、温度最高セルと温度最低セルを特定し難い場合は、随時、温度最高セルと温度最低セルを更新していけばよい。
【0165】
図13(c)において、電子機器によって、電池パック10は、定電流で放電しているとする。このため、時刻tまでの放電は、定電流放電である。また、全ての電池セル100は、直列に接続されている。したがって、全ての電池セル100の電流は、定電流値Iで一定である。なお、ここでは説明の簡略化のために定電流を仮定しただけであり、電流が変化している場合であっても、第4の実施形態の効果を得ることができる。
【0166】
図13(b)のように、充電開始から、内部抵抗の差によって、電圧の差が生じていく。ここで、上述のように、全ての電池セル100の満充電容量などの特性は等しい。このため、各々の電池セル100は、内部抵抗だけが異なっている状態である。したがって、内部抵抗が最も大きくなっている温度最低セルが、たとえば、電圧が最小である電池セル100(電圧最小セル)となっている。一方、温度最高セルが、たとえば、電圧が最大である電池セル100(電圧最大セル)となっている。
【0167】
次いで、電池制御部400は、第1の実施形態と同様にして、「温度差ΔTの基準値T」を設定する(S122)。ここでは、たとえば、温度最低セルの温度に基づいて、「温度差ΔTの基準値T」を設定する。なお、「温度差ΔTの基準値T」は、予め定められたものであってもよい。その場合、当該ステップは省略することができる。
【0168】
次いで、電池制御部400は、温度最高セルと温度最低セルとの温度差ΔTが基準値T以上であるとする第1温度条件を判定する(S130)。
【0169】
次いで、電池制御部400は、温度最高セルと温度最低セルとの温度差ΔTが基準値T以上であるとする第1温度条件を満たさないとき(S130No)、電池制御部400は、電圧電流測定部340が測定した電圧に基づいて、最も電圧の高い電圧最大セルと最も電圧の低い電圧最小セルとの電圧の差ΔVが第1基準電圧値V以上であるかを判定する(S142)。
【0170】
温度差ΔTが第1温度条件を満たさず、且つ、電圧最大セルと電圧最小セルとの電圧差ΔVが第1基準電圧値V1未満であるとき(S142No)、電池制御部400は、そのまま放電を継続するかを判定する(S160)。このように、電圧差が小さい場合は、バランス制御を行わないようにすることができる。
【0171】
一方、温度差ΔTが第1温度条件を満たさず、且つ、最も電圧の高い電圧最大セルと最も電圧の低い電圧最小セルとの電圧差ΔVが第1基準電圧値V以上であるとき(S142Yes)、電圧電流測定部340が測定した電圧に基づいて、全ての電池セル100の電圧を均等にするためのバランス制御を行う(S150)。これにより、電圧最大ユニットと電圧最小ユニットとの電圧差が温度差に起因したものではないとして、全ての電池セル100の電圧を均等にすることができる。
【0172】
ここで、図13(a)において、時刻t未満のとき、温度差ΔTは第1温度条件を満たさない状態である(S130No)。また、図13(b)のように、電圧最小セルの電圧Vと電圧最大セルの電圧Vとの差は小さい。すなわち、電圧最大セルの電圧Vと電圧最小セルの電圧Vとの差は、第1基準電圧値V以下である(S142No)。電池制御部400は、このまま充電を継続する(S160Yes)。
【0173】
このように、S120からS160を繰り返しながら、放電を行っていく。上述のように、温度最低セルおよび温度最高セルが異なる電池セル100に変化する場合は、随時、新しい電池セル100に更新していけばよい。
【0174】
次に、図13(a)において、時刻tのとき、温度最高セルと温度最低セルとの温度差ΔTは、基準値Tとなっている。したがって、温度差ΔTは、第1温度条件を満たしている(S130Yes)。
【0175】
次いで、電池制御部400は、時刻tにおいて、そのまま放電を継続する(S160Yes)。
【0176】
このとき、図13(b)のように、時刻tのとき、電圧最大セルの電圧Vと電圧最小セルの電圧Vとの差は、第1基準電圧値Vとなっている。しかし、電池制御部400は、当該電圧差が上記した温度差ΔTが原因であるとして、そのまま放電を継続する。
【0177】
そのまま充電を継続した場合、図13(a)のように、時刻t以降、温度差ΔTの上昇が緩やかになっていき、次いで温度差ΔTは最大値TM3となり、次いで温度差ΔTは減少していく。これは以下のような理由によるものである。電池セル100の配置によって、温度最低セルのジュール熱が温度最高セルのジュール熱よりも大きい。第4の実施形態でも、たとえば、温度最高セルは電池パック10の内側に配置されている電池セル100であり、一方で温度最低セルは電池パック10の外側に配置されている電池セル100である。このため、電池パック10が通電されているとき、温度最低セルの内部抵抗は、温度最高セルの内部抵抗よりも高い。すなわち、温度最低セルの内部抵抗による発熱量は、温度最高セルよりも大きくなっていく。したがって、温度最低セルの温度上昇は、温度最高セルよりも速くなっていく。このようにして、時刻t以降、温度差ΔTの上昇は緩やかになっていき、次いで温度差ΔTは減少していく。
【0178】
また、図13(b)のように、たとえば、時刻tのとき、電圧最大セルの電圧Vおよび電圧最小セルの電圧Vとの電圧差ΔVは、第1基準電圧値V以上となっている。時刻t以降も、内部抵抗の差が大きくなることにより、時刻tから時刻tの間のとき、電圧最大セルの電圧Vおよび電圧最小セルの電圧Vとの電圧差ΔVは大きくなっていき、次いで電圧差ΔVの上昇は緩やかに減少していく。
【0179】
このように、時刻t以降も、S120からS160を繰り返しながら、放電を行っていく。温度差ΔTが基準値T以上であり第1温度条件を満たす場合、バランス制御を行わずに継続して放電を行っていく。一方、温度差ΔTが第1温度条件を満たさなくなった場合(S130No)、電圧電流測定部340の測定する電圧に基づいて、S142を判定すればよい。電圧最大セルの電圧Vおよび電圧最小セルの電圧Vとの電圧差ΔVは、第1基準電圧値V以上となっているときは、上記したバランス制御を行う(S150)。
【0180】
図13(c)において、時刻tまで、全ての電池セル100の残容量は、均等に減少していく。時刻tのとき、同時に、全ての電池セル100の残容量は、CD1となっている。このように、第4の実施形態では、電池セル100の電力を均等に消費することができる。
【0181】
以上のようにして、第4の実施形態に係る電池パック10を制御する。
【0182】
次に、図14を比較例として用い、第4の実施形態の効果について説明する。図14は、第4の実施形態の効果について説明するための比較例の図である。
【0183】
図14は、第4の実施形態とは異なり、電池制御部400は、電池セル100の温度に基づいて制御を行わない比較例の場合を示している。比較例のフローチャートとしては、図3において、S120からS130が無い場合である。すなわち、比較例では、電池制御部400は、電圧に基づく制御のみを行う。なお、比較例においても、放電開始の状態は、第4の実施形態と同様とする。
【0184】
図14(a)は、比較例における放電開始時刻からの時間と、温度最高セルと温度最低セルとの温度差ΔTとの関係を示している。図14(b)は、比較例における放電開始時刻からの時間と、電池セル100のうち、電圧が最小である電池セル100の電圧Vおよび電圧が最大である電池セル100の電圧Vとの関係を示している。また、第4の実施形態における充電開始時刻からの時間と、電圧最大セルと温度最低セルとの電圧差ΔV(絶対値)との関係を示している。第1の実施形態と比較して、a、bの符号の付け方が異なることに注意が必要である。また、図14(c)は、比較例における放電開始時刻からの時間と、電圧が最小である電池セル100の残容量Cおよび電圧が最大である電池セル100の残容量Cとの関係を示している。さらに、図14(c)は、第4の実施形態における放電開始時刻からの時間と電池セル100の電流との関係を示している。なお、図14の横軸の間隔は、図13の横軸の間隔と同一であるとする。
【0185】
図14(c)のように、放電は、定電流で行われている。全ての電池セル100の電流は、定電流値ID1で一定である。
【0186】
図14(a)のように、比較例においても、温度最高セルと温度最低セルとの温度差ΔTは、放電開始と同時に、単調に増加していく。時刻tのとき、温度最高セルと温度最低セルとの温度差ΔTは、基準値Tとなっている。
【0187】
図14(b)のように、放電開始から、経時的な内部抵抗の変化によって、電圧最小セルの電圧Vと電圧最大セルの電圧Vとの差は大きくなっていく。時刻tのとき、電圧最大セルの電圧Vと電圧最小セルの電圧Vとの差は、第1基準電圧値Vとなっている。
【0188】
ここで、比較例では、たとえば、電池制御部400は、電圧最大セルの電圧Vと電圧最小セルの電圧Vとの差を小さくするために、たとえば、以下のようにしてバランス制御を行う。
【0189】
図12において、たとえば、まず、電池制御部400は、電圧が最小である電池セル100に接続している第2セルスイッチ206をOFFして、当該電池セル100と並列に配置されている第3セルスイッチ208をONする。これにより、電圧が最小である電池セル100をバイパスさせることができる。なお、この間、他の電池セル100の放電は継続される。
【0190】
図14(b)において、時刻t以降、電圧が最小である電池セル100の電圧Vは、バイパスされることにより、内部抵抗によって降下していた電圧成分だけ上昇する。一方、電圧最大セルの電圧Vは、放電によって降下し続ける。
【0191】
図14(c)において、時刻t以降、電圧最小セルの残容量Cは、バイパスされていたことにより、一定を保っている。一方、電圧最大セルの残容量Cは、放電により線形に減少していく。
【0192】
電池制御部400は、所定の期間経過した時刻tのとき、バランス制御を停止する。すなわち、電池制御部400は、電圧が最小である電池セル100の放電を再開させる。
【0193】
図14(b)において、時刻tのとき、電圧最小セルの電圧Vは、電圧最大セルの電圧Vに近づいている。時刻t以降、放電再開と同時に、電圧は降下していく。
【0194】
図14(c)において、時刻tのとき、電圧最小セルの残容量Cは、電圧最大セルの残容量Cよりも大きい。バランス制御によって、制御対象となった電池セル100の残容量が、他の電池セル100の残容量と異なっている。
【0195】
電池制御部400は、さらに放電を継続し、時刻tにおいて、放電を終了させたとする。時刻tのとき、電圧が最小である電池セル100の残容量Cは、電圧最大セルの残容量Cよりも大きい状態を維持している。
【0196】
このように、比較例では、各々の電池セル100の残容量が等しい場合であっても、バランス制御を行う。このため、電池セル100の残容量がバラついてしまう可能性がある。
【0197】
以上のように、比較例では、不必要な場合においても、電池制御部400がバランス制御を行ってしまう可能性がある。特に、電池パック10が低温環境下にある場合、小さい温度差で大きな内部抵抗の差が生じてしまう。このような場合、電池制御部400は、不必要なバランス制御を行ってしまう可能性が高い。
【0198】
一方、第4の実施形態によれば、放電においても第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。すなわち、各々の電池セル100間の電圧差が生じている原因が、各々の電池セル100間の温度差である場合には、バランス制御を行わないようにすることができる。
【0199】
したがって、第4の実施形態によれば、各々の電池セル100間の電圧差が生じている原因を適切に判別しながら、電池パック10を安定的に放電させることができる。
【0200】
(第5の実施形態)
図15を用い、第5の実施形態について説明する。図15は、第5の実施形態に係る電池パック10の構成を示す回路図である。第5の実施形態は、以下の点を除いて、第2または第4の実施形態と同様である。第5の実施形態の電池パック10は、電池セル100の電圧を調整するバランス回路200をさらに備えている。また、電池制御部400は、バランス回路200を制御することにより、バランス制御を行う。以下、詳細を説明する。
【0201】
図15のように、第5の実施形態では、第2の実施形態と同様にして、電池制御部400のうち、各々の電池セル100の電圧を調整する手段であるバランス回路200が独立して設けられている。
【0202】
第5の実施形態によれば、電池制御部400とは別の系統として、バランス回路200を備えている。このような構成においても、第4の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0203】
(第6の実施形態)
図16および図17は、第6の実施形態に係る電池パック10および制御回路20の構成を示す回路図である。第6の実施形態は、制御回路20が電池パック10の外側に設けられている点を除いて、第1の実施形態と同様である。以下、詳細を説明する。
【0204】
図16のように、制御回路20は、電池パック10の外側に設けられている。制御回路20は、たとえば、電池パック10から独立した充電機器60等に設けられている。
【0205】
または、図17のように、制御回路20は、電池パック10を放電して使用する際に用いる電子機器60内に設けられていてもよい。
【0206】
電池パック10には、第1の実施形態と同様に、複数の電池セル100が直列に接続されている。電池パック10には、電池パック10の充放電を行うための正極端子160および負極端子180が設けられている。その他、それぞれの電池セル100の間において、電池セル端子130が設けられている。
【0207】
制御回路20は、バランス回路200、温度測定部320、電圧電流測定部340および電池制御部400を備えている。制御回路20の電池パック10側には、バランス回路200が設けられている。また、制御回路20の電池パック10側には、制御回路20の正極端子740および負極端子750が設けられている。制御回路20の正極端子740および負極端子750は、配線(符号不図示)を介して、それぞれ、電池パック10の正極端子160および負極端子180に接続している。これにより、充電機器90側から電池パック10に、充電の電力が供給される。または、電池パック10からの放電による電力が電子機器60に供給される。
【0208】
温度測定部300の温度センサー321、温度センサー322および温度センサー323は、電池パック10の外装体(不図示)に設けられた開口(不図示)から挿入され、各々の電池セル100に取り付けられている。
【0209】
また、制御回路20の電池パック10側には、バランス回路200の測定端子760が設けられている。バランス回路200の測定端子760は、配線(符号不図示)を介して、電池パック10の電池セル端子130に接続している。これにより、制御回路20が電池パック10の外側に設けられていても、バランス回路200を作動させるときに、それぞれの電池セル100を制御することができる。
【0210】
第6の実施形態によれば、制御回路20が電池パック10の外側に設けられている。バランス回路200は、配線を介して、それぞれの電池セル100に接続されている。これにより、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0211】
以上の実施形態において、電池制御部400は、電圧電流測定部340を介して、スイッチ500に対して信号を送信する場合を説明したが、電池制御部400は、直接、スイッチ500に信号を送信する形態であってもよい。
【0212】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。以上の実施形態において、たとえば、上記実施形態では電池セル100がラミネート型電池である場合を説明したが、電池セル100が円筒型や角型などの他の形態の電池である場合も、同様に本発明の効果を得ることができる。
以下、参考形態の例を付記する。
1.
直列に接続された複数の電池ユニットのうち、二つ以上の前記電池ユニットの温度を測定する温度測定手段と、
前記電池ユニットの電圧を測定する電圧測定手段と、
前記電池ユニットの通電を検出する通電検出手段と、
前記電池ユニットの充電および放電を制御する電池制御手段と、
を備え、
前記電池制御手段は、
前記電池ユニットの前記通電中に、前記温度測定手段が測定した前記温度に基づいて、前記温度が最低である温度最低ユニットと、前記温度が最高である温度最高ユニットとを特定し、
さらに前記温度最高ユニットと前記温度最低ユニットとの温度差が基準値以上であるとする第1温度条件を満たさないとき、前記電圧測定手段が測定した前記電圧に基づいて、少なくとも二つの前記電池ユニットの前記電圧の差を減じるためのバランス制御を行い、
前記温度差が前記第1温度条件を満たすとき、前記バランス制御を行わない電池制御システム。
2.
1.に記載の電池制御システムにおいて、
前記電池ユニットの前記電圧を調整するバランス回路をさらに備え、
前記電池制御手段は、
前記バランス回路を制御することにより、前記バランス制御を行う電池制御システム。
3.
1.または2.に記載の電池制御システムにおいて、
前記電池制御手段は、
前記第1温度条件における前記温度差の前記基準値を、前記電池ユニットの前記温度に基づいて変化させる電池制御システム。
4.
3.に記載の電池制御システムにおいて、
前記温度差の前記基準値は、前記温度最低ユニットまたは前記温度最高ユニットの前記温度が低いほど小さい値である電池制御システム。
5.
1.〜4.のいずれか一つに記載の電池制御システムにおいて、
前記電池制御手段は、
前記電圧測定手段が測定した前記電圧に基づいて、前記電池ユニットに前記充電を行っている場合に前記電圧が最大である第1ユニットをさらに特定し、
前記温度差が前記第1温度条件を満たし、且つ、前記温度最低ユニットが、前記第1ユニットと同一であるとき、前記バランス制御を行わず、
前記温度差が前記第1温度条件を満たし、且つ、前記温度最低ユニットが、前記第1ユニットと異なるとき、前記バランス制御を行う電池制御システム。
6.
1.〜5.のいずれか一つに記載の電池制御システムにおいて、
前記バランス制御において、
前記電圧測定手段が測定した前記電圧に基づいて、最も前記電圧の高い電圧最大ユニットと最も前記電圧の低い電圧最小ユニットとの前記電圧の差が第1基準電圧値以上であるとき、当該電圧の差が小さくなるように制御する電池制御システム。
7.
1.〜5.のいずれか一つに記載の電池制御システムにおいて、
前記バランス制御において、
前記電圧測定手段が測定した前記電圧に基づいて、前記電池ユニットの平均の前記電圧との差が第2基準電圧値以上離れている前記電池ユニットがあるとき、当該電圧の差が小さくなるように制御する電池制御システム。
8.
1.〜7.のいずれか一つに記載の電池制御システムにおいて、
前記温度測定手段は、
最も外側に配置された少なくとも一つの前記電池ユニットと、
少なくとも一つの前記電池ユニットよりも内側に位置する前記電池ユニットと、
の前記温度を測定する電池制御システム。
9.
直列に接続された複数の電池ユニットと、
二つ以上の前記電池ユニットの温度を測定する温度測定手段と、
前記電池ユニットの電圧を測定する電圧測定手段と、
前記電池ユニットの通電を検出する通電検出手段と、
前記電池ユニットの充電および放電を制御する電池制御手段と、
を備え、
前記電池制御手段は、
前記電池ユニットの前記通電中に、前記温度測定手段が測定した前記温度に基づいて、前記温度が最低である温度最低ユニットと、前記温度が最高である温度最高ユニットとを特定し、
前記温度最高ユニットと前記温度最低ユニットとの温度差が基準値以上であるとする第1温度条件を満たさないとき、前記電圧測定手段が測定した前記電圧に基づいて、少なくとも二つの前記電池ユニットの前記電圧の差を減じるためのバランス制御を行い、
前記温度差が前記第1温度条件を満たすとき、前記バランス制御を行わない電池パック。
【0213】
この出願は、2012年2月29日に出願された日本出願特願2012−44631号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
図1
図2
図3
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図10
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図15
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