(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
固形分換算で、消石灰を50重量%以上含有し、骨材20〜44重量%、小麦ファイバーを1〜20重量%およびエチレン−酢酸ビニル系またはアクリル系のポリマーを5〜15重量%を含有し、
前記ポリマーの平均粒子径が0.5μm以上であり、かつ酸化チタンを含有しないことを特徴とする漆喰塗料組成物。
【背景技術】
【0002】
近年、戸建住宅やマンションなどの集合住宅では、室内の壁面や天井面などの表面仕上げ層を形成する内装材として、施工性、経済性などの観点から、施工が簡単で工期が短く、費用も安くあがるビニルクロスやプリント合板などの新建材が多用されてきた。しかし、内装材として前記のようなビニルクロスやプリント合板などの新建材を使用した場合には、それらの製造時や施工時に使用される接着剤などに含まれるホルマリン、キシレン、トルエンなどの有機溶剤その他の化学物質などの有害ガスが室内に揮散する。ところが、近年の住宅は、アルミサッシなどにより屋外との空気の流通が遮断された気密性の高い構造となっており、また建物の内部においても、洋風の作りが多く各部屋が壁により仕切られて独立していて密閉性が高い。このため、例えば夏季などの30℃を超える密閉された室内においては、前記のような有機溶剤その他の化学物質などの各種の有害ガスが充満することによる室内空気汚染を引き起こす場合がある。特に、竣工後間もない新築住宅の場合には、前記室内空気汚染が発生する可能性が高い。このような新建材などの内装材からの有機溶剤その他の化学物質などの有毒ガスによる室内空気汚染は、住人の呼吸器や皮膚に悪影響を及ぼし、アレルギーやアトピー性皮膚炎、喘息、頭痛などの遠因となることが指摘され、シックハウス症候群、シックビル症候群などとして社会問題にもなっている。また、前記のような新建材は、一般的に吸放湿性に乏しいことから、外気温が低くなる冬季には、暖房などで室内の湿度が高くなると、密閉された室内の壁面や壁裏に結露が発生し、黒カビや細菌が発生する原因となる。また、これら新建材は、燃焼時に有害な塩素化合物などが発生して環境汚染の原因となるおそれもある。
【0003】
そこで、上記のようなビニルクロスやプリント合板などの新建材にかわり、日本古来の漆喰壁や、珪藻土を用いた壁材など、ホルマリンなどの有機溶剤その他の化学物質を使用しない無機質の内装材が再び注目されてきている。前記漆喰は、消石灰にすさ(寸莎)といわれる植物繊維や山土を混ぜたものに、ふのりや角又などを練り合わせたものであり、新建材のようなホルマリンその他の有害ガスなどの発生もなく、また吸放湿性や吸着性を有しており結露が防止されるだけでなく、他の建材から発生するホルマリンその他の有害ガスやたばこの煙などの吸着効果もあり、室内空気汚染の防止効果が期待できる。また、珪藻土は、その多孔質構造により吸放湿性や吸着性を有しており、この珪藻土を用いた壁材の場合にも、前記漆喰壁と同様にホルマリンその他の有害ガスなどの発生はなく、また結露が防止されると同時に有害ガスやたばこの煙などを吸着して室内空気汚染を防止する効果が期待できる。
【0004】
上記のように、漆喰壁や珪藻土を用いた壁材の場合には、有害ガスなどの発生がなく、また吸放湿性や吸着性を有することにより、結露防止や室内空気汚染防止効果が期待できる。しかし、漆喰壁の場合には、消石灰が空気中の二酸化炭素を吸収して硬化するもので、乾燥硬化時の収縮が大きく、ひび割れが発生しやすく、脆いという欠点があり、特に厚塗りした場合には収縮率が大きくなる傾向にある。このため、施工時には、一度に厚塗りすることができず、1mm以下程度の厚さに薄塗りし、乾燥硬化させてひび割れを出し尽くしたうえで、その上から上塗りする重ね塗りを繰り返して最終的な厚みに仕上げる必要があり、重ね塗りのたびに下塗り層を乾燥硬化させるための養生期間が必要となり、工期が長くなる。しかも、前記のように漆喰を1mm以下程度に薄く塗るには高度な左官の技術が必要であるが、現在ではそのような高度な技術を有する技術者の数も少ない。このため、漆喰壁は工費が高くつくという欠点がある。前記のような漆喰壁における欠点を解決するために、ビニロン、ガラス繊維、すさ(寸莎)などの繊維材料を配合することも行われているが、これらの繊維材料は漆喰と混ぜて長時間養生してなじませることが必要で、施工に時間と手間がかかる。また、例えば合成樹脂エマルジョンのような有機系材料を漆喰に添加することも行われている。しかし、このような有機系材料を多量に添加すると、漆喰が空気中の二酸化炭素を吸収して硬化する際の呼吸作用が添加した有機系材料により妨げられ、内部の漆喰の硬化が阻害されて表面層のみが先に硬化して表面被膜が形成される。このように表面被膜が形成されると、その後、内部の漆喰が硬化する際に、先に硬化した表面と内部との収縮差によりひび割れや剥がれが発生するという問題がある。また、添加した有機系材料により漆喰が本来有する吸放湿性、吸着性などの特徴が損なわれ、結露防止や室内空気汚染の抑制効果が低下しまうという問題もある。また、珪藻土を用いた壁材の場合には、硬度や耐水性に問題がある。更に、珪藻土の場合には、700〜800℃程度の温度で焼成したものが使用されるが、この焼成の際にセラミック化した粉体が肺に吸い込まれて珪肺を引き起こすという問題が指摘され、使用が制限されるようになってきている。
【0005】
そこで、本件出願人は、消石灰15〜40重量%、骨材30〜70重量%、合成樹脂バインダー(固形分)5〜10重量%及び小麦ファイバー3〜10重量%を含有することを特徴とする建築用塗料組成物を提案している(特許文献1)。しかしながら、建築内装材として使用した場合に、ホルムアルデヒド、揮発性有機化合物(VOC)などのシックハウス症候群の原因となる化学物質をより低減したり、湿度調整して室内の快適性をより向上できる塗料組成物について、さらに検討する余地が残されていた。
【0006】
また、消石灰の含有量が30〜80重量%(固形換算)し、アクリル−スチレン系共重合体、酢酸ビニルポリマー及びスチレン/ブタジエンゴムに属する群から選択される少なくとも1種の合成ポリマーを消石灰100重量部に対して10〜70重量部、酸化チタンを2〜30重量部含有する建築用の塗料組成物が知られている(特許文献2)。
しかしながら、酸化チタンを含有する場合には、塗膜表面に酸化チタンに由来した光沢が生じるため、漆喰の質感が出にくく、しかも塗装する場所によっては照明などの光が反射することで快適に過ごしにくい可能性があった。また、原因は不明ながら、酸化チタンを配合している市販品について、化学物質の発生を抑える効果の試験方法および結果を検討したところ、前記効果が十分に発揮されていない可能性があることがわかった。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の漆喰塗料組成物は、固形分換算で、消石灰を50重量%以上含有し、骨材20〜44重量%、小麦ファイバーを1〜20重量%およびエチレン−酢酸ビニル系またはアクリル系のポリマーを5〜15重量%を含有し、前記ポリマーの平均粒子径が0.5μm以上であり、かつ酸化チタンを含有しないことを特徴とする。
【0013】
本発明に用いる消石灰は、水酸化カルシウムともよばれ、空気中の二酸化炭素を吸収して硬化するものであり、硬化後は、室内空気中の湿気の吸収、放出により壁面結露を効果的に防止するとともに、断熱効果、吸音効果を有する。更に、弱アルカリ成分によりカビの発生を抑制する効果もある。また、ビニルクロスなどの新建材に較べて耐久性に優れる。普通の消石灰は、石灰石を焼化したものであるが、石灰石のほかに、貝殻を原料としたものもあり、いずれも左官用消石灰として市販されている。本発明では、石灰石及び貝殻のいずれを原料としたものでも使用することができる。なお、一般的には、貝類を原料とする消石灰のほうが普通の消石灰より乾燥硬化時の収縮率は小さいといわれている。また、本発明で用いる消石灰の粒度については特に限定はなく、左官用消石灰として市販されているものをそのまま使用することができる。
【0014】
本発明の漆喰塗料組成物において、前記消石灰の含有量としては、50重量%以上であればよく、上限値については特に限定はない。
なお、消石灰の配合割合が多すぎる場合には乾燥硬化時の収縮によるひび割れや剥がれが発生しやすくなる傾向があり、また硬化後の表面仕上げ層が脆くなる傾向がある。また、消石灰の割合が少ない場合には、乾燥硬化後の仕上げ層の吸放湿性、吸着性などが低下する傾向がある。骨材の割合が多すぎる場合には、消石灰の割合が少なくなり、乾燥硬化後の仕上げ層の吸放湿性、吸着性などが低下する傾向がある。
前記消石灰の含有量としては、固形分換算で65重量%以下であることが好ましい。
【0015】
本発明に用いる骨材は、塗膜の乾燥硬化時の収縮率を減少させ、ひび割れ、剥がれの防止効果を発揮するとともに、コテ塗りの場合にはコテ止め作用により塗膜の厚みを確保する。骨材としては、例えば寒水石、珪砂、炭酸カルシウムなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。骨材の粒径については特に限定はないが、0.05〜1.0mmの範囲であることが好ましい。コテ塗り時にコテ止めして塗膜の厚さを確保するためには、骨材として0.1mm以上の粒径のものを用いることが好ましい。
【0016】
また、本発明では、前記骨材として、平均粒子径0.05〜5μmの超微粒子炭酸カルシウム又はコロイダル炭酸カルシウムを含有することで、酸化チタンを含有しなくとも漆喰塗料組成物からなる塗膜の白色度が向上し、実用的に十分な下地隠ぺい力を得る。
前記平均粒子径は、特に限定はないが、ふるい分け法、空気透過法、X線透過法、レーザー回折法などにより測定することができる。また、粉末1g当たりの比表面積値を用いて下記計算式から算出した粉末の平均粒径であってもよい。
平均粒子径=6/(比重×比表面積)×10000 〔μm〕
【0017】
本発明の漆喰塗料組成物において、前記骨材の含有量としては、固形分換算で20〜44重量%であり、25〜44重量%が好ましく、32〜37重量%がより好ましい。
なお、骨材の割合が少なすぎる場合には、消石灰の割合が多くなり乾燥硬化時の収縮によるひび割れや剥がれが発生しやすくなる傾向がある。
【0018】
また、骨材として前記超微粉状の炭酸カルシウム又はコロイダル炭酸カルシウムを用いる場合には、本発明の漆喰塗料組成物中の含有量としては、下地の隠ぺい力を向上させる目的として、5〜44重量%が好ましく、20〜30重量%がより好ましい。
なお、骨材として、超微粉状の炭酸カルシウムのみ、又はコロイダル炭酸カルシウムのみ、又は両者を混合して使用してもよい。
【0019】
また、本発明において酸化チタンを含有しないとは、実質的に酸化チタンを含有していないことをいい、具体的には含有量が0.1重量%未満、好ましくは0重量%であることをいう。
本発明者らは、漆喰塗料において酸化チタンの含有量を上げて配合したところ、仕上がりの塗膜の表面に酸化チタンによる光沢が生じることで、漆喰の質感が損なわれること、そして、室内の表面仕上げ材として使用した場合に、照明などの光が塗膜に反射して、室内にいる人がまぶしく感じる場合があった。また、酸化チタンを含有する市販の漆喰塗料に関して、公開されている試験データを検証したところ、原因は不明ながら、漆喰の含有量の割に、漆喰に期待される化学物質の吸収性が十分に発揮できていないと考えられた。
また、本発明者らが検討したところ、酸化チタンを含有する市販の漆喰塗料は、下地の隠ぺい力が高すぎるため、施工者が塗膜を薄くしてしまう傾向が強いことが原因の一つと考えられる。
これに対して、本発明の漆喰塗料組成物では、酸化チタンを含有していないことで、室内の表面仕上げ材として使用した場合に、上記の問題がなく、しかも、漆喰に特有の吸湿性、化学物質の吸収性に優れた壁材を提供することができる。
【0020】
本発明で用いる小麦ファイバーは、塗膜の乾燥、硬化時のひび割れの発生を防止し、厚塗りを可能とするものである。また、小麦ファイバーは、消石灰、骨材、樹脂ポリマーなどの他の配合成分とのなじみがよく、従来から壁材などに用いられている繊維材料であるビニロン、ガラス繊維、すさなどのように、他の材料と混合した後、長時間養生してなじませるといった手間や時間も不要である。前記小麦ファイバーの繊維は機械的に粉砕したものである。この繊維は、水には溶解しないが、本発明の漆喰塗料組成物中の水は繊維分子のOH基と水素結合し、塗料成分は個々の繊維の毛細管内に保たれる。小麦ファイバーの繊維が長いほど親油性に富み、短いほど親水性に富む。これらの性質により、小麦ファイバーを処方に従い攪拌しながら混練物中に分散させると三次元構造のネットワークを形成し、厚塗り時や乾燥時の収縮によるひび割れを防ぐ効果として表れる。この小麦ファイバーは、好ましくは小麦の茎のみを微粉砕した不溶性食物繊維であり、食品素材として一般に市販されているものである。この小麦ファイバーの繊維厚、繊維長には特に限定はないが、平均繊維厚が10〜40μm、更には15〜30μmの範囲、平均繊維長が15〜500μm、更には20〜300μmのものを用いることが好ましい。小麦ファイバーの平均繊維厚が10μm未満、平均繊維長が15μm未満では、乾燥時のひび割れ防止効果が低下する。また、平均繊維厚が40μmを越え、平均繊維長が500μmを越えると、流動性が悪くなり、塗膜表面にざらつきが出る。小麦の茎のみを微粉砕した小麦ファイバーは、例えば三晶株式会社から商品名ビタセル(VITACEL)として販売されており、VITACEL WF600/30(平均繊維厚20μm、平均繊維長35μm)、WF600(平均繊維厚20μm、平均繊維長80μm)、WF200(平均繊維厚25μm、平均繊維長250μm)などを使用することができ、これらを混合して使用することもできる。
【0021】
本発明の漆喰塗料組成物において、前記小麦ファイバーの含有量としては、固形分換算で1〜20重量%であり、1〜10重量%が好ましく、3〜8重量%がより好ましい。
なお、小麦ファイバーは多いほど厚塗りが可能となるが、小麦ファイバーの割合が多すぎる場合には、塗膜の表面にざらつきが発生するなど表面性が悪くなる。また、小麦ファイバーの割合が少なすぎる場合には、乾燥硬化時のひび割れ防止効果が不足し、厚塗りした場合にひび割れの発生や剥がれを防止することができない。
【0022】
本発明で用いるエチレン−酢酸ビニル系またはアクリル系のポリマーは、下地材への塗膜の接着力を向上させると同時に軟らかな塗膜を形成するために使用される。中でも、本発明では、前記ポリマーの平均粒子径が0.5μm以上であることで、塗膜を形成した際に、塗膜表面にポリマー層が形成されず、消石灰に特有の消臭、吸湿などの作用を発揮することができる。
なお、前記ポリマーの平均粒子径が0.5μm未満であれば、塗膜を形成した際に、塗膜表面にポリマー層が形成されて塗膜の通気性が損なわれるために、消石灰が有する消臭、吸湿などの作用が発揮しにくくなる。
前記ポリマーの平均粒子径は、0.5μm〜15μmが好ましい。
平均粒子径は、市販品であればカタログ値で判別することができる。また、測定方法については、樹脂エマルションの平均粒子径の測定において一般的な方法、例えば、動的光散乱法又はレーザー回析散乱法など、により求めた値であればよい。
【0023】
前記エチレン−酢酸ビニル(EVA)系ポリマーとしては、エチレンと酢酸ビニルを主モノマーとした共重合エマルションおよびこれらのモノマーとアクリル酸エステル、塩化ビニル、バーサチック酸などの他のモノマーとの共重合エマルションおよび/またはこれらの共重合物の部分けん化物が挙げられる。
EVAを構成するエチレンおよび酢酸ビニルの組成については特に限定はない。また、エチレンと酢酸ビニル以外にエチレン、酢酸ビニルと共重合するその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、例えば、塩化ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、エチルメタアクリレート、プロピルメタアクリレート、ブチルメタアクリレート、2−エチルヘキシルメタアクリレートがあるが、これらの成分を一種類以上含有させることができる。
【0024】
前記アクリル系ポリマーのアクリル系重合体を構成するモノマーの組成に特に制限はない。アクリル系重合体としては、(メタ)アクリル酸エステルと、これと共重合可能な他の単量体との共重合体が挙げられる。前記(メタ)アクリル酸エステルとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、アミルアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレートなどのアクリル酸エステル、メチルメタアクリレート、エチルメタアクリレート、プロピルメタアクリレート、ブチルメタアクリレート、アミルメタアクリレート、ヘキシルメタアクリレート、オクチルメタアクリレート、2−エチルヘキシルメタアクリレート、シクロヘキシルメタアクリレート、ドデシルメタアクリレート、オクタデシルメタアクリレート、フェニルメタアクリレート、ベンジルメタアクリレートなどのメタアクリル酸エステルなどが挙げられる。また、上記(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な他の単量体としては、その他のビニル系単量体、例えばスチレンを代表とする芳香族ビニル類、シアン化ビニル類、酢酸ビニルなどのエチレン性単量体などが挙げられる。更に、水酸基、アミド基、アミノ基を有するビニル系単量体、又はアクリル酸、メタクリル酸などのエチレン性不飽和カルボン酸なども使用することができる。上記の単量体は、1種又は2種以上を使用することができる。
アクリル系ポリマーは、建材用としてエマルジョンタイプのものが種々市販されている。使用できるアクリル系ポリマーの具体例としては、例えば旭化成株式会社の商品名「ポリトロンA1400」や日本エヌエスシー株式会社の商品名「ヨドゾールA−70」などが挙げられる。
【0025】
本発明の漆喰塗料組成物に用いる前記ポリマーの形態としては、エマルジョンタイプでもよいし、粉末タイプでもよい。エマルジョンタイプとは、粒子状のポリマーが溶媒中に分散された状態になっていることをいい、粉末タイプとは粒子状のポリマーが粉末状になっていることをいう。
【0026】
本発明の漆喰塗料組成物中において、前記ポリマーの含有量としては、固形分換算で5〜15重量%であり、7〜15重量%が好ましく、10〜13重量%がより好ましい。
なお、前記ポリマーの含有量が多すぎる場合には、消石灰(漆喰)が空気中の二酸化炭素を吸収して硬化する際の呼吸作用が妨げられ、内部の漆喰の硬化が阻害されて表面層のみが先に硬化して表面被膜が形成され、その後、内部の漆喰が硬化する際に、硬化した表面と内部との収縮差によりひび割れや剥がれが発生するという問題があり、また、漆喰が本来有する吸放湿性、吸着性などの特徴が損なわれ、結露防止や室内空気汚染の抑制効果が低下する。また、前記ポリマーの含有量が少なすぎる場合には、施工時の作業性、下地材への接着性、乾燥硬化後の仕上げ層の脱落防止効果、耐水性、強度などが不足する傾向がある。
【0027】
本発明の漆喰塗料組成物及び漆喰塗料には、上記各成分以外に、例えば、増粘剤、消泡剤、分散剤、着色剤などを添加することができる。
【0028】
増粘剤としては、塗布時のダレ防止するものであり、特に限定されるものではないが、セルロース誘導体と水溶性天然高分子とが挙げられる。
セルロース誘導体としては、例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロース硫酸エステル等の水溶性セルロース誘導体が挙げられる。また、水溶性天然高分子としては、例えばペクチン、カゼイン、ゼラチン、アルブミン等の蛋白質;アラビアガム、トララントガム、カラヤガム等の樹脂多糖類;タマリンドガム、グアーガム、タラガム、ローカストビーンガム等の種子多糖類;アルギン酸塩、アルギン酸プロピルグリコールエステル、カラギーナン、ファーセルラン、寒天等の海草多糖類;ハイメトキシペクチン、ローメトキシペクチン等の植物多糖類;生デンプン、デキストリンブリティッシュガム、酸化デンプン、エーテル化又はエステル化デンプン等のデンプン類;ウェラムガム、キサンタンガム、プルラン、グルカン等の微生物多糖類;キチン、キトサン等のアミノ酸多糖類;コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸等のムコ多糖類などが挙げられる。
増粘剤の添加量としては、例えば、固形分換算で0.1〜0.5重量%程度である。
【0029】
消泡剤としては、シリコン系、アルコール系、ポリエーテル系などの合成物質、石油精製由来の鉱物油系又は植物由来の天然物質鉱油系など、公知のものが挙げられる。
消泡剤の添加量としては、例えば、固形分換算で0.1〜1重量%程度である。
【0030】
分散剤としては、例えば、ポリカルボン酸塩、メラミンホルマリン縮合物スルホン酸塩、リグニンスルホン酸塩、β−ナフタレンスルホン酸アルデヒド縮合物、ポリアルキルアリルスルホン酸塩、アルキルナフタリンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、前記化合物の塩の種類はナトリウム、カリウム、カルシウムなどである。
分散剤の使用量は、例えば、固形分換算で0.1〜1重量%程度である。
【0031】
着色剤としては、顔料、酸化チタン、酸化亜鉛、沈降性硫酸バリウムなどが挙げられる。
着色剤の使用量は、固形分換算で5重量%程度である。
【0032】
本発明の漆喰塗料組成物には、その他、防腐剤、通常の塗り壁材や塗料組成物に含まれる各種添加剤成分を添加することもできる。更に、塗膜厚みのバラツキによるひび割れの発生を防止するためのレベリング剤を配合することもできる。
【0033】
本発明に係る漆喰塗料組成物は、消石灰、骨材、小麦ファイバーおよびエチレン−酢酸ビニル系またはアクリル系のポリマーアクリル系樹脂バインダーを混合して製造される。
各成分の混合の順番については、特に限定はない。
【0034】
前記のような構成を有する本発明の漆喰塗料組成物は、水系媒体と混練させることで、漆喰塗料を調製する。
本発明の漆喰塗料組成物と混練させる水系媒体の配合量は、塗装する場所に応じて、漆喰塗料を適当な流動性が得られるように調整していればよく、特に制限されるものではないが、例えば、漆喰塗料組成物100重量部に対し、混練する水系媒体の量を90〜120重量部に調整することで、刷毛やローラーなどで好適に塗布することができる流動性を奏する。また、混錬する水系媒体の量を50〜80重量部に調整することで、前記漆喰塗料組成物をコテで塗布するのに好適な流動性を奏する。
【0035】
前記水系媒体としては、水、水性の液状混和材料(例えば、混和剤水溶液やエマルジョン状の前記ポリマー)などが使用できる。なお、防腐剤などはこの水系媒体に添加してもよい。
【0036】
また、前記漆喰塗料組成物と、水系媒体とを別に包装して漆喰塗料キットとしてもよい。
前記漆喰塗料キットでは、漆喰塗料組成物および水系媒体はそれぞれ、品質に影響が出ないように別々に包装されていればよい。また、包装材の材質、包装条件などについても、漆喰塗料組成物および水系媒体の品質に影響が出なければよく、特に限定はない。
なお、前記漆喰塗料キットを構成する前記漆喰塗料組成物と前記水系媒体との量は、両者を混錬した際に好適な流動性が得られるように調整されていればよい。
【0037】
前記漆喰塗料組成物と水系媒体との混錬物を漆喰塗料として、各種建築物の内壁面や天井面などの下地材の上に塗布し、乾燥硬化させることで、表面仕上げ層を形成する。
下地材としては特に限定されるものではなく、コンクリート、石膏ボード、合板、スレートなどの他、住宅などのリフォームに際してビニルクロス、壁紙、プリント合板など、既存の内装材などの上から本発明の漆喰塗料組成物又は漆喰塗料の混練物を塗布して新たな表面仕上げ層を形成するようにしてもよい。
なお、下地材への塗布に際して、下地材が吸水性のある場合や表面が痛んでいる場合などには、塗布面に予めシーラーを塗布しておくとより好ましい。シーラーとしては、樹脂モルタルなどの施工時に用いられる公知のアクリル系シーラーなどを使用することができる。
【0038】
本発明の漆喰塗料組成物及び漆喰塗料の塗布方法には特に限定はなく、コテ塗り、ロール塗り、刷毛塗り、更には吹き付けなどの各種方法を採用することができる。塗膜の厚さは特に限定はなく、一度に30mm程度の厚塗りも可能である。
本発明の漆喰塗料組成物及び漆喰塗料の場合には、小麦ファイバーを配合してなることから、前記のように30mm程度の厚みに塗布した場合にも、乾燥硬化時の収縮によるひび割れが発生することもなく、1回の塗装作業で所望の厚みの表面仕上げ層を形成することができる。従って、例えば、ゴム手袋をはめた手や、その他の任意の器具、道具などを用いて仕上げ層の表面に所望の凹凸模様を形成して意匠性に優れた芸術的壁面を製作することも可能である。なお、塗布方法や塗布面により前記組成物又は塗料の水分量を適宜調整することが好ましい。
【0039】
上記のように、建築物の下地材表面に本発明の漆喰塗料組成物又は漆喰塗料の混練物を塗布し、乾燥、硬化させることで、所望の厚み、表面形状の表面仕上げ層が形成される。乾燥硬化のための養生時間は、塗膜の厚さや気温や湿度などにもよるが、通常は5〜24時間程度である。
【実施例】
【0040】
(実施例1:漆喰塗料組成物の調製)
消石灰、炭酸カルシウム(平均粒子径15μm)、EVA系粉末樹脂(平均粒子径15μm)、小麦ファイバー(平均長さ20μm)、消泡剤、増粘剤、分散剤を表1に示す配合量となるように混合してプレミックス型の漆喰塗料組成物(本発明品1)を作製した。
【0041】
【表1】
【0042】
(比較例1)
EVA系エマルジョン(平均粒子径約0.15μm、固形分11%)を使用した以外は、実施例1と同様にして、漆喰塗料組成物を作製した。
【0043】
(試験例1:塗布試験)
実施例1および比較例1で得られた漆喰塗料組成物100重量部に対して、それぞれ水100重量部を添加して混錬した漆喰塗料を作製し、これらの漆喰塗料を石膏ボードにウールローラーを用いて塗布した。
実施例1から得られた漆喰塗料の表面は、光沢がなく、漆喰の質感が十分に出ていたが、比較例1から得られた漆喰塗料の表面は、ポリマーに由来する光沢があり、漆喰の質感が出ていなかった。
【0044】
(試験例2:調湿試験)
室内環境を再現するため木製建材を用いて小型の箱を作製した。
前記箱は、具体的には、木製の天板および底板(横50cm×縦50cm)の四隅を板材(長さ50cm)で繋ぎ、板材の間の四面のうちの一面を板製の側板、その両隣の面に障子紙で塞いで作製した(箱のサイズ:横50cm×縦50cm×長さ50cm)。
次いで、実施例1で得られた漆喰塗料組成物100重量部に対して、水100重量部を添加して混錬した漆喰塗料を、前記箱内部の板製の側板の表面に塗布したもの、および漆喰塗料のかわりに市販のビニールクロスを貼付したものの合計2個の箱を用意した。
次いで、箱内部の底面上に水250mLを入れた500mL容のガラスビーカーを置き、湿度計をおいて、前記箱の空いている側面をガラス板で塞ぎ、前記箱内の湿度の変化を継時的に測定した。
その結果、漆喰塗料を塗布した箱内の湿度は64%になったのに対して、ビニルクロスを貼付した箱内の湿度は82%となり、漆喰塗料を塗布した場合、吸湿作用が顕著に発揮されることがわかる。
【0045】
(実施例2)
平均粒子径が0.5μmのEVA系粉末樹脂を用いた以外は、実施例1と同様にして漆喰塗料組成物を作製した。
【0046】
(実施例3)
平均粒子径が15μmのEVA系粉末樹脂を用いた以外は、実施例1と同様にして漆喰塗料組成物を作製した。
【0047】
(比較例2)
EVA系粉末樹脂を用いない以外は、実施例1と同様にして漆喰塗料組成物を作製した。
【0048】
(試験例3:ポリマーの平均粒子径と、漆喰塗料の呼吸性との関連)
実施例2、3および比較例2で得られた漆喰塗料組成物を10cm×10cmのアクリル板に塗布し、塗布直後および2時間経過後において、ホルムアルデヒド、トルエン、キシレンの検出量を、(一社)繊維評価技術協議会 消臭加工繊維製品認定基準を準用した消臭性試験に供して測定した。その結果を表2に示す。なお、表中、数値が大きい方が有毒ガスの低減効果に優れていることを意味する。
【0049】
【表2】
【0050】
表2に示すように、実施例2、3ではホルムアルデヒドの発生を大きく低減しただけでなく、トルエン、キシレンなどの揮発性有機化合物についても比較例1と比べて顕著に発生を低減できていることがわかる。
【0051】
以上のことから、漆喰塗料組成物に含まれるポリマーの平均粒子径を0.5μm以上、中でも0.5〜15μmに調整することで、漆喰塗料の表面にポリマー層の形成が目視できないようになり、漆喰の質感が出た内装が可能であり、かつ、ホルムアルデヒドや有毒ガスの発生を低減できることがわかる。
【0052】
なお、実施例1において、骨材の含有量を20〜44重量%、小麦ファイバーの含有量を1〜20重量%、EVA系エマルジョン由来のポリマーまたはアクリル系ポリマーの含有量を5〜15重量%の範囲になるよう、それぞれ調整した場合でも実施例1の結果と同様に漆喰塗料の表面にポリマー層の形成が目視できないようになり、実施例2、3の結果と同様に、ホルムアルデヒドや有毒ガスの発生を低減する効果が見られた。
【0053】
(実施例3)
炭酸カルシウム(平均粒子径15μm)のかわりに、超微粉状のコロイダル炭酸カルシウム(平均粒子径0.15μm)を用いた以外は、実施例1と同様にして漆喰塗料組成物を作製した。
得られた漆喰塗料組成物は、ウールローラーを用いて、試験例1で用いた石膏ボード、試験例2で用いた木製板および試験例3で用いたアクリル板の表面に塗布することが可能であった。
また、その塗膜の厚みを、200μm(2度塗り)とすることができた。
実施例3から得られた漆喰塗料の表面は、光沢がなく、漆喰の質感が十分に出ていた。
【0054】
(比較例2)
炭酸カルシウム(平均粒子径15μm)のうち、5重量%分を酸化チタンと置き換えた以外は、実施例1と同様にして、漆喰塗料組成物を作製した。
得られた漆喰塗料組成物は、ウールローラーを用いて、試験例1で用いた石膏ボード、試験例2で用いた木製板および試験例3で用いたアクリル板の表面に塗布することが可能であった。
また、前記漆喰塗料組成物の下地に対する隠蔽力が十分あったため、その塗膜の厚みは、80μm(1度塗り)程度であった。
【0055】
実施例3の結果より、超微粉状の炭酸カルシウムを用いたところ、酸化チタンを用いた場合と同様に、白色の美しい塗膜が形成された。また、実施例3では、酸化チタンを含有していないために、光沢がなく、漆喰の質感が十分にでた塗膜になっていた。
一方、酸化チタンを配合した比較例2の漆喰塗料では、塗膜表面に室内の光を反射できる光沢が生じていた。
また、実施例3で得られた漆喰塗料組成物の塗膜の厚みは200μm、比較例2では80μmであったことから、ホルムアルデヒドや有毒ガスの発生を低減できる漆喰に特有の能力については実施例3の漆喰塗料組成物の塗膜の方が比較例2のものに比べて2倍以上あることがわかる。
比較例2で得られた漆喰塗料組成物は、前記のように下地の隠蔽力が強いため、1度塗りで塗装を終えてしまう傾向があるのに対して、実施例3で得られた漆喰塗料組成物は、酸化チタンを使用していないことで、下地の隠蔽力が緩やかで、塗り重ねることで結果として、厚みのある塗膜を形成することができる。
【課題】各種建築物の内壁面や天井面などの表面仕上げ層を形成するための建築用塗料として、吸放湿性、吸着性を有する漆喰(消石灰)を50重量%以上含有することで、ホルムアルデヒド、揮発性有機化合物(VOC)などの有害ガスなどの発生による室内空気汚染などのおそれが顕著に低減され、また、漆喰による吸湿効果により室内の快適性をさらに向上さることができる漆喰塗料組成物及び漆喰塗料並びにそれを用いた建築物内装の施工方法を提供すること。
【解決手段】固形分換算で、消石灰を50重量%以上含有し、骨材20〜44重量%、小麦ファイバーを1〜20重量%およびエチレン−酢酸ビニル系またはアクリル系のポリマーを5〜15重量%を含有し、前記ポリマーの平均粒子径が0.5μm以上であり、かつ酸化チタンを含有しないことを特徴とする漆喰塗料組成物。