(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
台車に設けられた車輪へ制動力を作用させるブレーキシリンダを操作するブレーキ作動系に、前記台車上の車体に設けられた第1タンクから空気圧を供給することにより制動力を作用させるブレーキ装置であって、
前記台車に前記第1タンクから独立した第2タンクを設け、
非常ブレーキの操作に際して、前記第1タンクからの空気圧の供給に先だって前記第2タンクから前記ブレーキ作動系に非常用ブレーキ空気圧を供給する圧力制御装置を具備し、
前記第2タンクは、前記台車と車体との間の空気ばねに空気を供給する補助空気タンクであることを特徴とする車両用ブレーキ装置。
前記第2タンクからの非常用ブレーキ空気圧は、前記第1タンクからの空気圧と同等又は低圧に貯気されていることを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項に記載の車両用ブレーキ装置。
前記第2タンクは台車の両側左右にそれぞれ設けられた補助空気タンクからなり、これら補助空気タンクは差圧弁を介して連結されるとともに、該補助空気タンク内の圧力が接続管路を通じて前記圧力制御装置の切替弁に供給されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両用ブレーキ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1に示される技術は、ブレーキ作動系内に、空気源から供給される空気圧を所定の非常用空気圧となるように減圧調整する圧力調整弁を有する非常用の圧力発生部が付加的に設けられる構成であるので、ブレーキ作動系全体の構成が複雑化するという問題がある。
また、非常用の圧力発生部から複式逆止弁(切替弁)に至る管路が短く設定される構成であるとは言え、該圧力発生部は車体上のブレーキ作動系内に付加的に設けられる構成であるので、依然として長い経路を有しており、このため、該圧力発生部からの非常用空気圧が、複式逆止弁を経由して増圧シリンダに作用するまでに時間がかかり、非常時のブレーキ動作が遅くなるという問題が未だ解決されていない。
【0006】
この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、簡易な構成でかつ短い管路を通じて非常用空気圧を増圧シリンダ(ブレーキシリンダ)に至らせることができ、これによって、非常時のブレーキ空気圧を既定の圧力に速やかに上昇させることができる車両用ブレーキ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明は、台車に設けられた車輪へ制動力を作用させるブレーキシリンダを操作するブレーキ作動系に、前記台車上の車体に設けられた第1タンクから空気圧を供給することにより制動力を作用させるブレーキ装置であって、前記台車に前記第1タンクから独立した第2タンクを設け、非常ブレーキの操作に際して、前記第1タンクからの空気圧の供給に先だって前記第2タンクから前記ブレーキ作動系に非常用ブレーキ空気圧を供給する機構を具備することを特徴とする。
【0008】
上記のように構成された本発明では、車両の台車上に、非常ブレーキの操作時に通常の第1タンクからの空気圧供給に先だって非常用ブレーキ空気圧を供給する第2タンクを設けるようにしたので、該第2タンクとブレーキ作動系内のブレーキシリンダとの管路を短くすることができる。その結果、第2タンク内の非常用ブレーキ空気圧を、短い管路を通じてブレーキ作動系内のブレーキシリンダに直ぐに至らせることができ、これによって非常時のブレーキ空気圧を既定の圧力に速やかに上昇させることができる。
また、ブレーキ作動系内ではない車両の台車上に設けた第2タンク内の非常用ブレーキ空気圧を、ブレーキシリンダに直接供給することで、従来のブレーキシステムに付加的に具備されている空気源と圧力調整弁及びその制御装置の設置を省略することができ、これによって車両用ブレーキ装置の全体構成を簡素化することができる。
【0009】
また、本発明では、前記機構は、前記第1タンク、第2タンクのいずれか高い方の圧力を前記ブレーキ作動系に供給する切替弁と、非常ブレーキの操作を条件として、前記切替弁に対して前記第2タンクの非常用ブレーキ空気圧を供給する流路を開放する開閉弁と、を有することを特徴とする。
【0010】
上記のように構成された本発明では、ブレーキ作動系に非常用ブレーキ空気圧を供給する機構は、第1タンク、第2タンクのいずれか高い方の圧力を前記ブレーキ作動系に供給する切替弁と、非常ブレーキ操作時に該切替弁に対して第2タンクの非常用ブレーキ空気圧を供給する流路を開放する開閉弁と、を具備するようにしたので、地震が発生した際の非常ブレーキ操作時に開閉弁を開放して、該第2タンクの非常用ブレーキ空気圧を切替弁に至らせることができる。
そして、この切替弁にて、第1タンク、第2タンクのいずれか高い方の圧力を前記ブレーキ作動系に供給することにより、第1タンクから供給される空気圧が未だ低い場合に、第2タンクからの非常用ブレーキ空気圧を優先してブレーキ作動系のブレーキシリンダに至らせることができる。これにより該ブレーキシリンダに供給する空気圧を速やかに上昇させることができ、車輪に緊急停止のためのブレーキ力を有効に作用させることが可能となる。
【0011】
また、本発明では、前記第2タンクからの空気圧は、前記第1タンクからの空気圧と同等又は低圧に貯気されていることを特徴とする。
【0012】
上記のように構成された本発明では、非常用ブレーキ空気圧が供給される第2タンクからの空気圧は、ブレーキ作動系のメインタンクとなる第1タンクからの空気圧と同等又は低圧に貯気されているので、非常ブレーキ操作時に、ブレーキ作動系のブレーキシリンダに第2タンク内の非常用ブレーキ空気圧が優先的に供給されたとしても、異常な高圧とならず、これによって車輪がロックしてスリップするというトラブルも未然に防止することができる。
【0013】
また、本発明では、前記第2タンクは、前記台車と車体との間の空気ばねに空気を供給する補助空気タンクであることを特徴とする。
【0014】
上記のように構成された本発明では、第2タンクとして、台車と車体との間の空気ばねに空気を供給する補助空気タンクを利用することにより、従来のブレーキシステムに付加的に具備されている空気源と圧力調整弁及びその制御装置等の余計な設備を設ける必要がなく、該補助空気タンクからの非常用ブレーキ空気圧により、非常時のブレーキ圧を既定の圧力に速やかに上昇させることが可能となる。
【0015】
また、本発明では、前記第2タンクは台車の両側左右にそれぞれ設けられた補助空気タンクからなり、これら補助空気タンクは差圧弁を介して連結されるとともに、該補助空気タンク内の圧力が接続管路を通じて、前記ブレーキ作動系に非常用ブレーキ空気圧を供給する機構の切替弁に供給されることを特徴とする。
【0016】
上記のように構成された本発明では、第2タンクは台車の両側左右にそれぞれ設けられた一対の補助空気タンクからなり、これら補助空気タンクは差圧弁を介して連結されるとともに、該補助空気タンク内の圧力が接続管路を通じて切替弁に供給される構成とすることで、台車上に一定容量の補助空気タンクを確保することができ、これにより非常時のブレーキ空気圧を既定の圧力に速やかに上昇させることが可能となる。
【0017】
また、本発明では、研摩子を動作させる踏面清掃用シリンダに、踏面清掃エアーを供給することにより該研摩子を動作させる踏面清掃装置を具備し、該踏面清掃装置は、非常ブレーキの操作に際して、前記踏面清掃エアーの供給に先だって、該踏面清掃エアーと同等又は低圧の非常用清掃空気圧を前記踏面清掃用シリンダに供給することを特徴とする。
【0018】
上記のように構成された本発明では、車両の台車上に、非常ブレーキの操作時に通常の踏面清掃エアーの供給に先だって非常用清掃空気圧を供給するようにしたので、非常ブレーキの操作から極めて短時間で、踏面清掃用シリンダを動作させて研摩子による車輪踏面の清掃を行うことができ、これによりその後の非常ブレーキ動作を効果的に行うことができる。
【0019】
また、本発明では、踏面清掃のための前記非常用清掃空気圧は、前記第2タンクから供給されることを特徴とする。
【0020】
上記のように構成された本発明では、非常用清掃空気圧の供給源として、台車と車体との間の空気ばねに空気を供給する補助空気タンク(第2タンク)を利用することにより、従来の踏面清掃システムに特別な設備を設ける必要がなく、該補助空気タンクからの非常用清掃空気圧により、踏面清掃エアーの圧力を既定の圧力に速やかに上昇させることが可能となる。
また、非常用清掃空気圧の供給源として、台車と車体との間の空気ばねに空気を供給する補助空気タンク(第2タンク)を利用することにより、該第2タンクと踏面清掃システム系内の踏面清掃用シリンダとの管路を短くすることができる。その結果、第2タンク内の非常用清掃空気圧を、短い管路を通じて踏面清掃システム系内の踏面清掃用シリンダに直ぐに至らせることができ、これによって踏面清掃エアーの圧力を既定の圧力に速やかに上昇させることができる。
【0021】
また、本発明では、前記第2タンクは台車の両側左右にそれぞれ設けられた第1及び第2補助空気タンクからなり、これら補助空気タンクは差圧弁を介して連結され、前記第1補助空気タンクは、前記ブレーキシリンダに前記非常用ブレーキ空気圧を供給し、前記第2補助空気タンクは、前記踏面清掃用シリンダに前記非常用清掃空気圧を供給し、前記第1及び第2補助空気タンクは、それぞれに設置された第1及び第2開閉弁により前記非常用ブレーキ空気圧、前記非常用清掃空気圧を供給することを特徴とする。
【0022】
上記のように構成された本発明では、台車の両側左右に差圧弁を介して接続された第1及び第2補助空気タンクから第2タンクを構成し、前記第1補助空気タンクから、前記ブレーキシリンダに前記非常用ブレーキ空気圧を供給し、また、前記第2補助空気タンクから、前記踏面清掃用シリンダに前記非常用清掃空気圧を供給するようにした。すなわち、第2タンクを構成している第1及び第2補助空気タンクのそれぞれを空気源として、非常時の空気圧(非常用ブレーキ空気圧、非常用清掃空気圧)を供給することにより、各空気圧を設定圧力で速やかに供給することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、車両の台車上に、非常ブレーキの操作時に通常の第1タンクからの空気圧供給に先だって非常用ブレーキ空気圧を供給する第2タンクを設けるようにしたので、該第2タンクとブレーキ作動系内のブレーキシリンダとの管路を短くすることができる。その結果、第2タンク内の非常用ブレーキ空気圧を、短い管路を通じてブレーキ作動系内のブレーキシリンダに直ぐに至らせることができ、これによって非常時のブレーキ空気圧を既定の圧力に速やかに上昇させることができる。
また、ブレーキ作動系内ではない車両の台車上に設けた第2タンク内の非常用ブレーキ空気圧を、ブレーキシリンダに直接供給することで、従来のブレーキシステムに付加的に具備されている空気源と圧力調整弁及びその制御装置の設置を省略することができ、これによって車両用ブレーキ装置の全体構成を簡素化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について、
図1〜
図8を参照して説明する。
図1(A)は本発明に係る車両用ブレーキ装置100が適用された新幹線用の車両B、
図1(B)は車両用ブレーキ装置100を具体的に示す配管図であって、該車両用ブレーキ装置100が搭載される車両Bには、車輪Wへ制動力を作用させるブレーキシリンダAを操作するブレーキ作動系1が設けられている。
【0026】
このブレーキ作動系1は、車両Bの運転台(図示略)にあるブレーキ設定器2から常用ブレーキとして出力される8段階のノッチ、及び非常ブレーキとして出力される非常ブレーキ指令NAに基づき動作されるものであって、ブレーキシリンダA及びブレーキ制御装置10、電空変換弁11、中継弁13を主な構成要素とする。
【0027】
ブレーキ制御装置10は、ブレーキ設定器2から出力されたノッチ及び非常ブレーキ指令NAに基づき、ブレーキ動作を行うコントローラとなるものである。
そして、このブレーキ制御装置10は、ノッチに基づき回生ブレーキ13を動作させる通常ブレーキ制御信号S1及び電空変換弁11を動作させるブレーキ制御信号S2を出力し、また、非常ブレーキ指令NAに基づき非常時圧力制御装置30(後述する)の非常用ブレーキ追加電磁弁31を開弁させる非常ブレーキ制御信号S3を出力する。
【0028】
電空変換弁11は、コンプレッサ20で加圧された元空気タンク21(第1タンク)及び元空気タンク21に接続される供給空気タンク22(第1タンク)からのブレーキ制御エアー(その圧力をBC圧(ブレーキシリンダ圧)とする)が供給されるものであって、ノッチの大きさに基づき設定されるブレーキ制御信号S2に応じて、その開度が調整される。
非常用ブレーキ追加電磁弁31は、車両Bが運用されている通電時に閉状態を維持する常閉弁であって、ブレーキ制御装置10から非常ブレーキ制御信号S3が出力される以外に、非常時において車両Bへの通電が断たれた場合(例えば、地震により停電が発生した場合、脱線した場合、架線からパンタグラフがずれた場合)にも、開弁される。
【0029】
また、このブレーキ制御装置10は、非常ブレーキ指令NAに基づき非常ブレーキ制御信号S3を出力するが、この非常ブレーキ制御信号S3は、同時に非常時圧力制御装置30(後述する)の非常用ブレーキ追加電磁弁31にも送信され、該非常用ブレーキ追加電磁弁31を開弁させる動作を行わせる。
また、中継弁13は、電空変換弁11を経由した空気タンク21・22からのブレーキ制御エアーを、管路13Aを経由して非常時圧力制御装置30(後述する)の複式逆止弁32に供給するものである。
【0030】
次に、
図1(B)及び
図2、
図3を参照して、車両用ブレーキ装置100の非常時圧力制御装置30について説明する。
この非常時圧力制御装置30は、非常用ブレーキ追加電磁弁31と複式逆止弁32とから構成され、かつブレーキ作動系1の系外の台車B2上に設けられるものであって、車両Bを早急に停止させる必要がある非常時に、ブレーキ圧を即座に高める非常用ブレーキ空気圧を供給する。
【0031】
非常用ブレーキ追加電磁弁31は、車両Bの車体B1と台車B2との間の空気ばね(図示略)に空気を供給する各70リットルほどの補助空気タンク33・33´(第2タンク)(その圧力をAS圧(エアースプリング圧)とする)の1つに、管路33A・33B、50を介して接続されているものであって、ブレーキ制御装置10からの非常ブレーキ制御信号S3に基づき開弁される開閉弁である。なお、これら補助空気タンク33・33´は、台車B2の両側左右に設けられている。
【0032】
なお、補助空気タンク33・33´のエアースプリング圧(AS)は、元空気タンク21及び供給空気タンク22からのブレーキ制御エアーのブレーキシリンダ圧(BC圧)と同等又は低く貯気されているが、これについては
図4を参照して後述する。
【0033】
複式逆止弁32は、非常用ブレーキ追加電磁弁31を経由した管路50と、前述したブレーキ制御装置10内の中継弁13を経由した管路13Aとが入力ポートに接続されるものであって、これら管路13A、50を経由した高い方の圧力を、台車B2下部の車輪Wへ制動力を作用させる増圧シリンダ40(ブレーキシリンダA)に供給する切替弁である。この増圧シリンダ40は、複式逆止弁32により選択された空気圧を油圧に変換するためのものであって、該増圧シリンダ40で発生した油圧により
図2に示されるディスクブレーキDを動作して車輪Wを制動する。
なお、補助空気タンク33・33´である空気ばねへは、コンプレッサ20で加圧された圧縮空気の一部が供給される。
【0034】
ここで、補助空気タンク33・33´がある台車B2について、
図2及び
図3を参照して説明する。
図2は本実施形態に係る台車B2の平面図、
図3は比較のために掲載した既存の台車に係る平面図である。
【0035】
図2に示すように、本実施形態に係る補助空気タンク33・33´は、車両Bの車体B1と台車B2との間に設置されている空気ばねを利用しており、該補助空気タンク33・33´は、管路33A・33B、50を通じて非常用ブレーキ追加電磁弁31及び複式逆止弁32に接続されることが示されている。
また、これら補助空気タンク33・33´間の管路33Aの途中には差圧弁34が設置されており、該差圧弁34によって2つの補助空気タンク33・33´内の圧力は均等に保たれている。
そして、補助空気タンク33・33´内の空気は、非常時に非常用ブレーキ追加電磁弁31が開状態となった場合に、複式逆止弁32を経由して台車B2の左右両側に設けられた増圧シリンダ40に供給され、該増圧シリンダ40からの油圧配管41を通じて車輪WのディスクブレーキDを動作させる。
なお、補助空気タンク33は供給空気タンク21とほぼ同じ容量を有しており、一方の補助空気タンク33から増圧シリンダ40に空気を供給したとしても、差圧弁34が動作するほど他方の補助空気タンク22との圧力差が生じず、空気ばねの特性に影響が及ぼさないように設定されている。
【0036】
また、
図2を参照して分かるように、本実施形態に係る補助空気タンク33・33´、複式逆止弁32、増圧シリンダ40は、同じ台車B2上に管路33A・33B、50・51を介して連結されていることから、それぞれが至近距離にあり、これによって非常用ブレーキ追加電磁弁31の開弁時に、補助空気タンク33・33´内の空気圧が、複式逆止弁32及び増圧シリンダ40に速やかに供給される。
なお、ブレーキ制御装置1からの制御信号S3による非常用ブレーキ追加電磁弁31の開弁は、
図2に符号Cで示すカプラを通じて行うようにする。
【0037】
以上説明したような第1実施形態に係る台車B2に対して、
図3に比較例として示される既存台車では、非常用ブレーキ追加電磁弁31と複式逆止弁32とから構成される非常時圧力制御装置30が設けられていないことから、台車B2から離れた位置にある車体B1上の元空気タンク21及び供給空気タンク22からブレーキ制御エアーが供給されることになり、増圧シリンダ40による車輪Wの制動に時間を要する。
【0038】
一方、第1実施形態に係る車両用ブレーキ装置100では、
図4に示されるように、車両Bの速度に応じた非常ブレーキ時の設定BC圧(ブレーキシリンダ圧)が定められている。
この設定BC圧は、ブレーキ制御装置10の制御信号(図示略)にて定められるものであって、速度及び乗客数に応じて台車に加わる荷重(空車時〜満車時の範囲で示される)をAS圧から計算している。このとき、AS圧は、設定BC圧に対して常に同等又は低圧に貯気されている。
【0039】
次に、第1実施形態に係る非常時圧力制御装置30が設けられていない既存の車両用ブレーキ装置(
図4に示す既存台車に対応)と、第1実施形態に係る非常時圧力制御装置30が設けられた車両用ブレーキ装置100(
図3に示す本実施形態に係る台車に対応)とそれぞれ用いた場合の増圧シリンダ40(ブレーキシリンダ)の圧力変化について、
図5〜
図8を参照して説明する。
【0040】
まず、
図5を参照して、非常時圧力制御装置30が設けられていない既存の車両用ブレーキ装置を用いた場合の増圧シリンダの圧力変化について説明する。
この車両用ブレーキ装置では、台車B2から離れた位置にある元空気タンク21及び供給空気タンク22からBC圧のブレーキ制御エアーが供給されることから、増圧シリンダ40に作用するブレーキシリンダ圧力(符号Pで示す)が有効に作用する設定圧力(整定圧P´の63.2%)になるまでに一定の時間を要する。
すなわち、ブレーキ指令が出力された後、増圧シリンダ40のブレーキシリンダ圧力Pが上昇を始めるまでにt0の「むだ時間」が発生し、t0の後に整定圧P´の63.2%になるまでt1の時間(ブレーキ時定数)を要し、ブレーキが有効に作用するまでに合計で『t0+t1』の時間が必要となる。
このときの空走距離を
図6に示す。空走距離とはブレーキの初速度に空走時間を掛けたものであり、
図6にはそれぞれの初速度における空走距離が示されている。
【0041】
次に、
図7及び
図8を参照して、非常時圧力制御装置30が設けられた第1実施形態に係る車両用ブレーキ装置100を用いた場合の増圧シリンダ40の圧力変化について説明する。
上述した既存の車両用ブレーキ装置に対して、第1実施形態に係る車両用ブレーキ装置100では、非常ブレーキ指令NAに基づきブレーキ制御装置10から非常ブレーキ制御信号S3が出力されると、非常時圧力制御装置30の非常用ブレーキ追加電磁弁31が開弁される。
これにより、元空気タンク21及び供給空気タンク22からはBC圧(ブレーキシリンダ圧)のブレーキ制御エアーが供給され、かつ補助空気タンク33・33´からはAS圧(エアースプリング圧)が複式逆止弁32にそれぞれ供給されることになる。
【0042】
ここで、複式逆止弁32はいずれか高い圧力のエアーを増圧シリンダ40に供給することになるが、補助空気タンク33・33´及び複式逆止弁32は、同じ台車B2上に管路33A・33B、50を介して連結されており、それぞれが至近距離にあることから、BC圧のブレーキ制御エアーが到達する前に、至近距離にあるAS圧が、複式逆止弁32を通じて増圧シリンダ40に速やかに供給されることになる。
すなわち、
図7に示されるように、第1実施形態に係る車両用ブレーキ装置100では、既存の車両用ブレーキ装置のように、t0の「むだ時間」を発生させることなく、補助空気タンク33・33´からのAS圧が先行して増圧シリンダ40に供給される。
【0043】
そして、このAS圧により、増圧シリンダ40が有効に作用する設定圧力(整定圧P´の63.2%)になるまでの時間がt2(ブレーキ時定数)で済み、その結果、既存の車両用ブレーキ装置のt1よりも大幅にt2を短縮することができる(このときのAS圧を
図7中に符号PAで示す)。
その後、元空気タンク21及び供給空気タンク22からのブレーキ制御エアーのBC圧が徐々に上昇し(符号Pで示す)、元々の設定圧はBC圧の方がAS圧と同等又はAS圧より高いことから、複式逆止弁32がBC圧側の管路13Aに切り替わり、その結果、BC圧のブレーキ制御エアーが増圧シリンダ40に供給されることになる。
【0044】
従って、第1実施形態に係る非常時圧力制御装置30を搭載した車両用ブレーキ装置100では、AS圧と、ブレーキシリンダ圧を合成した
図8を参照して分かるように、時定数をt1からt2に短縮することができ、これにより
図6に示される空走距離も短縮することができ、地震が発生した際の非常時の緊急停車を速やかに行うことができる。
なお、このような動作は、ブレーキ制御装置10から非常ブレーキ制御信号S3が出力されることに代えて、架線からの電力供給が断たれることにより、非常時圧力制御装置30の非常用ブレーキ追加電磁弁31が開弁された場合も全く同じである。
【0045】
以上詳細に説明したように第1実施形態に係る車両用ブレーキ装置100によれば、ブレーキ作動系1内ではない車両Bの台車B2上に、非常ブレーキの操作時に通常の空気タンク21・22からのBC圧の空気圧供給に先だって、AS圧の非常用ブレーキ空気圧を供給する補助空気タンク33・33´を設けるようにしたので、該補助空気タンク33・33´とブレーキシリンダAである増圧シリンダ40との間の管路33A、33B、50、51の長さを短くすることができる。
その結果、補助空気タンク33・33´内の非常用ブレーキ空気圧を、短い管路を通じて増圧シリンダ40に直ぐに至らせることができ、これによって非常時のブレーキシリンダ圧を既定の圧力に速やかに上昇させることができる。
また、車両Bの台車B2上に設けた補助空気タンク33・33´内の非常用ブレーキ空気圧(AS圧)を、非常時のブレーキ操作を条件として開放する非常時圧力制御装置30の非常用ブレーキ追加電磁弁31に直接供給することで、従来のブレーキシステムに付加的に具備されている空気源と圧力調整弁及びその制御装置の設置を省略することができ、これによって車両用ブレーキ装置100の全体構成を簡素化することができる。
【0046】
また、第1実施形態に係る車両用ブレーキ装置100によれば、非常時圧力制御装置30は、空気タンク21・22のBC圧、補助空気タンク33・33´のAS圧いずれか高い方の圧力を前記ブレーキ作動系1に供給する複式逆止弁32と、非常ブレーキ操作時に該複式逆止弁32に対して補助空気タンク33・33´の空気圧を供給する管路を開放する非常用ブレーキ追加電磁弁31と、を具備するようにしたので、地震が発生した際の非常ブレーキ操作時に非常用ブレーキ追加電磁弁31を開放して、至近距離に位置する補助空気タンク33・33´の空気圧を複式逆止弁32に至らせることができる。
そして、この複式逆止弁32にて、空気タンク21・22、補助空気タンク33・33´のいずれか高い方の圧力をブレーキ作動系1の増圧シリンダ40に供給するようにしたので、空気タンク21・22から供給される空気圧が未だ低い場合に、補助空気タンク33・33´からの非常用ブレーキ空気圧を優先して該増圧シリンダ40に至らせるようにした。これにより該増圧シリンダ40に供給する圧力を速やかに上昇させることができ、車輪Wにブレーキ力を有効に作用させることが可能となる。
【0047】
また、第1実施形態に係る車両用ブレーキ装置100によれば、非常用ブレーキ空気圧が供給される補助空気タンク33・33´からのAS圧が、ブレーキ作動系1のメインタンクとなる空気タンク21・22からのBC圧と同等又は低圧に貯気されているので、非常ブレーキ操作時に、ブレーキ作動系1に補助空気タンク33・33´内の非常用ブレーキ空気圧が優先的に供給されたとしても、異常な高圧とならず、これによって車輪Wがロックしてスリップするというトラブルも未然に防止することができる。
【0048】
また、第1実施形態に係る車両用ブレーキ装置100によれば、補助空気タンク33・33´として、台車B2と車体B1との間の空気ばねを利用することにより、従来のブレーキシステムに付加的に具備されている空気源と圧力調整弁及びその制御装置等の余計な設備を設ける必要がなく、該補助空気タンク33・33´からの非常用ブレーキ空気圧により、非常時のブレーキシリンダ圧を既定の圧力に速やかに上昇させることが可能となる。
【0049】
また、第1実施形態に係る車両用ブレーキ装置100によれば、補助空気タンク33・33´として台車B2枠の両側左右にそれぞれ設けられた空気ばねを利用し、これら補助空気タンク33・33´が差圧弁34を介して連結されるとともに、該補助空気タンク33・33´内のAS圧が接続管路33A・33B及び50を通じて複式逆止弁32に供給される構成とすることで、台車B2枠上に一定容量の補助空気タンクを確保することができ、これにより非常時のブレーキ空気圧を既定の圧力に速やかに上昇させることが可能となる。
【0050】
また、第1実施形態では、「異常発生時」において、非常時圧力制御装置30の非常用ブレーキ追加電磁弁31を開弁する条件を、運転士の操作により非常ブレーキ指令NAに基づきブレーキ制御装置10から制御信号S3が出力された場合、又は車両Bへの電力供給が断たれた場合としている。しかし、これらに加えて、元空気だめの圧力低下等、車両に何らかの異常が発生した場合、地震によるP波を検出した場合も、「異常発生時」として、非常時圧力制御装置30の非常用ブレーキ追加電磁弁31を開弁しても良い。
【0051】
また、第1実施形態では、「異常発生時」において、非常ブレーキ指令NAに基づき、非常時圧力制御装置30の非常用ブレーキ追加電磁弁31を開弁したが、非常用ブレーキ追加電磁弁31は、非常ブレーキ指令NAの出力から1〜2秒後に閉じるものとする。これにより、BC圧の滑走制御を阻害しない。
【0052】
また、第1実施形態では、新幹線車両を想定しているが、空気ばねを搭載したボルスタレス台車であれば、在来線車両にも適用可能である。
【0053】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態に係る車両用ブレーキ装置101について、
図9〜
図15を参照して説明する。第2実施形態号に係る車両用ブレーキ装置101は、第1実施形態に係る車両用ブレーキ装置100と構成を共通とする部分について、同一符号を付して重複した説明を省略する。
【0054】
図9及び
図10は第2実施形態に係る配管図であって、これらの図に符号60で示すものは踏面清掃装置であり、
図11は比較のために掲載した既存の車両の配管図である。
図9及び
図10に示される踏面清掃装置60は、レール(図示略)に対する車輪Wの踏面に接触又は離間自在に設けられて接触時に該車輪Wの踏面を掃除する樹脂製の研摩子61と、該研摩子61を動作させる踏面清掃用シリンダ62と、踏面清掃用シリンダ62を作動させる踏面清掃エアーを供給するための清掃エアー制御装置63と、を具備する。
【0055】
清掃エアー制御装置63は、踏面清掃電磁弁64、清掃用追加電磁弁65、複式逆止弁66とから構成されるものであって、車両Bを早急に停止させる必要がある非常時において、踏面清掃装置シリンダ圧力(TC圧)の供給に先だって、該踏面清掃装置62に補助圧力となる非常用清掃空気圧(AS圧)を速やかに供給する。
具体的には、踏面清掃電磁弁64は、ブレーキ制御エアー(BC)にも一部利用される車両間の共通配管90からのエアーを、踏面清掃装置シリンダ圧力(TC圧)として取り込むためのものである。
【0056】
清掃用追加電磁弁65は、車両Bの車体B1と台車B2との間の空気ばね(図示略)に空気を供給する補助空気タンク33・33´(第2タンク)の中で、非常用ブレーキ追加電磁弁31が接続されていない側(本例では補助空気タンク33´)に接続されているものであって、ブレーキ制御装置10からの非常ブレーキ制御信号S3に基づき開弁される開閉弁である。
また、この清掃用追加電磁弁65は、車両Bが運用されている通電時に閉状態を維持する常閉弁であって、ブレーキ制御装置10から非常ブレーキ制御信号S3が出力される以外に、非常用ブレーキ追加電磁弁31と同様、非常時において車両Bへの通電が断たれた場合(例えば、地震により停電が発生した場合、脱線した場合、架線からパンタグラフがずれた場合)にも開弁される。
なお、補助空気タンク33・33´のエアースプリング圧(AS)は、踏面清掃装置60シリンダ圧力(TC圧)と同等又は低く設定されている。
【0057】
複式逆止弁66は、清掃用追加電磁弁65を経由した管路70と、前述した踏面清掃電磁弁64を経由した管路71とが入力ポートに接続されるものであって、これら管路70、71を経由した高い方の圧力を、管路72を通じて研摩子61を動作させる踏面清掃用シリンダ62に供給する切替弁である。
そして、管路72を通じて、この踏面清掃用シリンダ62に供給した圧力により研摩子61を動作させ、これにより車輪Wの踏面を清掃する。
【0058】
なお、第2実施形態に係る車両用ブレーキ装置101では、補助空気タンク33・33´に接続されている非常時圧力制御装置30の非常用ブレーキ追加電磁弁31、踏面清掃装置60の清掃用追加電磁弁65が、非常ブレーキ指令NAに基づき出力される非常ブレーキ制御信号S3(S3A、S3B)により開弁されるようになっている。
【0059】
上記車両用ブレーキ装置101の動作について、
図12を参照して詳細に説明する。第2実施形態に係る車両用ブレーキ装置101では、運転士の操作等により非常ブレーキ指令NAが出力された場合、ブレーキ制御装置10からは制御信号S3(S3A、S3B)が出力される。
そして、非常ブレーキ指令NAに基づきブレーキ制御装置10から非常ブレーキ制御信号S3Aが出力されると、踏面清掃装置60の清掃用追加電磁弁65、及び踏面清掃電磁弁64が同時に開弁される。
【0060】
このときの実際の動作のタイミングを、
図12に矢印E1で示す。車両B間の共通配管90からは、踏面清掃装置シリンダ圧力(TC圧)の踏面清掃エアーが供給され(「TCin」〜「TCout」で示す間に供給される)、かつ補助空気タンク33・33´からはAS圧(エアースプリング圧)が複式逆止弁66にそれぞれ供給されることになる(「AS2in」で示す以降に供給される)。
ここで、複式逆止弁66はいずれか高い圧力のエアーを踏面清掃用シリンダ62に供給することになるが、補助空気タンク33・33´及び複式逆止弁66は、同じ台車B2上に管路70を介して連結されており、それぞれが至近距離にあることから、踏面清掃装置シリンダ圧力(TC圧)の踏面清掃エアーが到達する前に、至近距離にあるAS圧が、管路70及び複式逆止弁66を通じて踏面清掃用シリンダ62に速やかに供給されることになる。
すなわち、第2実施形態に係る車両用ブレーキ装置101では、既存の車両用ブレーキ装置のように、「むだ時間」を発生させることなく、補助空気タンク33・33´からのAS圧が先行して踏面清掃用シリンダ62に供給され、速やかに踏面清掃用シリンダ62を作動させて車輪Wの踏面の清掃を行うことができる。
【0061】
また、本実施形態2では、車輪Wの踏面の清掃と同時に、緊急停止のための車輪Wのブレーキが動作する。このときの実際の動作のタイミングを、
図12に矢印E2で示す。非常ブレーキ指令NAに基づき、ブレーキ制御装置10から非常ブレーキ制御信号S3Aとともに、非常ブレーキ制御信号S3Bが出力されると、非常時圧力制御装置30の非常用ブレーキ追加電磁弁31が開弁される。
これにより、元空気タンク21及び供給空気タンク22からはBC圧(ブレーキシリンダ圧)のブレーキ制御エアーが供給され(「BCin」〜「BCout」で示す間に供給される)、かつ補助空気タンク33・33´からはAS圧(エアースプリング圧)が複式逆止弁32にそれぞれ供給されることになる(「AS1in」で示す以降に供給される)。
【0062】
ここで、複式逆止弁32はいずれか高い圧力のエアー(BC圧又はAS圧のいずれか)を増圧シリンダ40に供給することになるが、補助空気タンク33・33´及び複式逆止弁32は、同じ台車B2上に管路33A・33B、50を介して連結されており、それぞれが至近距離にあることから、BC圧のブレーキ制御エアーが到達する前に、至近距離にあるAS圧が、複式逆止弁32を通じて増圧シリンダ40に速やかに供給されることになる。
すなわち、
図7に示されるように、第1実施形態に係る車両用ブレーキ装置100では、既存の車両用ブレーキ装置のように、t0の「むだ時間」を発生させることなく、補助空気タンク33・33´からのAS圧が先行して増圧シリンダ40に供給され、速やかに車両Bの緊急停止を行うことができる。
【0063】
これら補助空気タンク33・33´からのAS圧(エアースプリング圧)を利用した踏面清掃用シリンダ62の空走時間(=むだ時間)、増圧シリンダ40の空走時間(=むだ時間)の測定結果について、
図13及び
図14を参照して説明する。
図13は『供給AS圧/設定TC』(設定TCは一定値)との関係を示すグラフであり、
図14は『供給AS圧/設定BC』(設定BCは一定値)との関係を示すグラフである。
そして、これら
図13及び
図14では、空気補助タンク33、33´からAS圧を先行して供給した「空車(四角プロットで示す)」、「積車(菱形プロットで示す)」、「満車(着色丸プロットで示す)」の場合の範囲E3、E5が示されるとともに、AS圧の供給がない『白丸プロット:○』場合及び現車相当『黒丸プロット:●』の範囲E4、E6が示されている。
なお、
図13及び
図14において、(1)は補助空気タンク33と補助空気タンク33’のAS圧がともに設定値で等しい場合、(2)は補助空気タンク33のAS圧が設定値よりも60kPa低く、なおかつ補助空気タンク33’のAS圧が設定値よりも60kPa高い場合、(3)は補助空気タンク33のAS圧が設定値よりも60kPa高く、なおかつ補助空気タンク33’のAS圧が設定値よりも60kPa低い場合、をそれぞれ示している。
【0064】
これら
図13及び
図14の測定結果を参照して分かるように、圧力比がいずれの値であっても、空気補助タンク33、33´からAS圧を、TC圧又はBC圧に先行して供給した場合(範囲E3、E5)の方が、AS圧の供給がない場合(範囲E4、E6)と比較して、踏面清掃用シリンダ62の空走時間(=むだ時間)、増圧シリンダ40の空走時間(=むだ時間)が共に減少することが確認されている。
具体的には、
図13の場合では圧力比(供給AS圧/設定TC圧)が0.66以上で空走時間は0.8秒から0.3秒まで減少すること、
図14の場合では圧力比(供給AS圧/設定BC圧)が0.66以上で空走時間は0.95秒から0.2秒まで減少することが確認されている。また、
図13及び
図14の圧力比が0.66未満の場合においても、少なくとも設定TC圧の50%、設定BC圧の40%の圧力が先行して供給されており、一定の効果を発揮している。
【0065】
以上詳細に説明したように本実施形態2に示される車両用ブレーキ装置101では、研摩子61を動作させる踏面清掃用シリンダ62に、踏面清掃エアー(TC圧)を供給することにより該研摩子61を動作させる踏面清掃装置60を具備し、該踏面清掃装置60は、非常ブレーキの操作に際して、踏面清掃エアー(TC圧)の供給に先だって、該踏面清掃エアー(TC圧)より同等又は低圧の非常用清掃空気圧(AS圧)を踏面清掃用シリンダ62に供給するようにした。
すなわち、車両Bの台車B2上に、非常ブレーキの操作時に通常の踏面清掃エアー(TC圧)の供給に先だって非常用清掃空気圧(AS圧)を供給するようにしたので、非常ブレーキの操作から極めて短時間で、踏面清掃用シリンダ62を動作させて研摩子61による車輪踏面の清掃を行うことができ、これによりその後の非常ブレーキ動作を効果的に行うことができる。
【0066】
また、本実施形態2に示される車両用ブレーキ装置101では、非常用清掃空気圧(AS圧)の供給源として、台車B2と車体B1との間の空気ばねに空気を供給する補助空気タンク33、33´(第2タンク)を利用することにより、従来の踏面清掃システムに特別な設備を設ける必要がなく、該補助空気タンク33、33´からの非常用清掃空気圧(AS圧)により、踏面清掃エアー(TC圧)の圧力を既定の圧力に速やかに上昇させることが可能となる。
また、非常用清掃空気圧(AS圧)の供給源として、車体B1と台車B2との間の空気ばねに空気を供給する補助空気タンク33、33´(第2タンク)を利用することにより、該第2タンクと踏面清掃装置60内の踏面清掃用シリンダ62との管路を短くすることができる。その結果、第2タンク内の非常用清掃空気圧(AS圧)を、短い管路を通じて踏面清掃用シリンダ62に直ぐに至らせることができ、これによって踏面清掃エアー(TC圧)の圧力を既定の圧力に速やかに上昇させることができる。
【0067】
また、本実施形態2に示される車両用ブレーキ装置101では、車両用ブレーキ装置では、台車B2の両側左右に差圧弁を介して接続された第1及び第2補助空気タンク33、33´から第2タンクを構成し、第1補助空気タンク33から、ブレーキシリンダ62に非常用ブレーキ空気圧(AS圧)を供給し、また、第2補助空気タンク33´から、踏面清掃用シリンダ62に非常用清掃空気圧(AS圧)を供給するようにした。すなわち、第2タンクを構成している第1及び第2補助空気タンク33、33´のそれぞれを空気源として、非常時の空気圧(非常用ブレーキ空気圧、非常用清掃空気圧(AS圧))を供給することにより、各空気圧を設定圧力で速やかに供給することができる。
【0068】
なお、第2実施形態では、「異常発生時」において、非常用ブレーキ追加電磁弁31及び清掃用追加電磁弁65の開弁条件を、運転士の操作等により非常ブレーキ指令NAに基づきブレーキ制御装置10から制御信号S3(S3A、S3B)が出力された場合、又は車両Bへの電力供給が断たれた場合としている。しかし、これらに加えて、元空気だめの圧力低下等、車両に何らかの異常が発生した場合、地震によるP波を検出した場合も、「異常発生時」として、非常用ブレーキ追加電磁弁31及び清掃用追加電磁弁65を開弁しても良い。
【0069】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。