(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
樹脂と顔料とを含有するトナー粒子が絶縁性液体中に分散してなる液体現像剤であって、前記絶縁性液体が、炭素数12以上18以下のオレフィンを10質量%以上含有してなる、液体現像剤。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の液体現像剤は、樹脂と顔料とを含有するトナー粒子が絶縁性液体中に分散した液体現像剤であり、絶縁性液体が、炭素数12〜18のオレフィンを特定量含有している点に特徴を有しており、低揮発性の絶縁性液体を用いた場合でも、分散安定性と定着性に優れる。
【0014】
このような効果を奏する理由は定かではないが、以下のように考えられる。
オレフィンは、二重結合を有しているために飽和炭化水素に比べて極性が高く、樹脂との親和性が高い。そのため、オレフィンを特定量含有することにより、定着時に高温に加熱した際、樹脂を可塑化又は膨潤しやすくすることで定着性が向上する。一方、オレフィンの炭素数を12〜18とすることで、液体が適度な粘度をもち、使用時に分散媒蒸気の発生が問題となることがなく、また固化することも避けられるとともに、分散液中においてオレフィンが樹脂中に浸透することが抑制され、保存安定性が向上するものと考えられる。
【0015】
[樹脂]
本発明の液体現像剤における樹脂はトナー粒子の結着樹脂となる樹脂であり、例えば、ポリスチレン、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体等のスチレン又はスチレン置換体を含む単重合体又は共重合体であるスチレン系樹脂、ポリエステル、エポキシ樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン、ポリウレタン、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0016】
上記樹脂の中では、液体現像剤の定着性を向上させる観点から、ポリエステル及びスチレン−アクリル酸エステル共重合体が好ましく、ポリエステルがより好ましい。ポリエステルの含有量は、樹脂中、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、実質的に100質量%がさらに好ましく、100質量%、即ち樹脂として、ポリエステルのみを用いることがさらに好ましい。
【0017】
本発明において、ポリエステルは、2価以上のアルコールを含むアルコール成分と2価以上のカルボン酸化合物を含むカルボン酸成分とを重縮合することにより得られるものが好ましい。
【0018】
2価のアルコールとしては、炭素数2〜20、好ましくは炭素数2〜15のジオールや、式(I):
【0020】
(式中、RO及びORはオキシアルキレン基であり、Rはエチレン及び/又はプロピレン基であり、x及びyはアルキレンオキサイドの付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、xとyの和の平均値は1〜16が好ましく、1〜8がより好ましく、1.5〜4がさらに好ましい)
で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。炭素数2〜20の2価のアルコールとして、具体的には、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA等が挙げられる。
【0021】
アルコール成分としては、液体現像剤の定着性を向上させる観点、及び液体現像剤中のトナー粒子の分散安定性を向上させ保存安定性を向上させる観点から、1,2-プロパンジオール及び式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物が好ましく、式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物がより好ましい。式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の含有量は、アルコール成分中、50モル%以上が好ましく、70モル%以上がより好ましく、90モル%以上がさらに好ましく、実質的に100モル%がさらに好ましく、100モル%がさらに好ましい。
【0022】
3価以上のアルコールとしては、炭素数3〜20、好ましくは炭素数3〜10の3価以上の多価アルコールが挙げられる。具体的には、ソルビトール、1,4-ソルビタン、ペンタエリスリトール、グリセロール、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0023】
2価のカルボン酸化合物としては、例えば、炭素数3〜30、好ましくは炭素数3〜20、より好ましくは炭素数3〜10のジカルボン酸、及びそれらの酸無水物、炭素数1〜3のアルキルエステル等の誘導体等が挙げられる。具体的には、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸や、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数2〜20のアルケニル基で置換されたコハク酸等の脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。
【0024】
3価以上のカルボン酸化合物としては、例えば、炭素数4〜30、好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数9〜10の3価以上の多価カルボン酸、及びそれらの酸無水物、炭素数1〜3のアルキルエステル等の誘導体等が挙げられる。具体的には、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸(ピロメリット酸)等が挙げられる。
【0025】
液体現像剤の定着性を向上させる観点から、カルボン酸成分としては、テレフタル酸、フマル酸、及び無水トリメリット酸が好ましく、テレフタル酸がより好ましい。
【0026】
なお、アルコール成分には1価のアルコールが、カルボン酸成分には1価のカルボン酸化合物が、ポリエステルの軟化点を調整する観点から、適宜含有されていてもよい。
【0027】
ポリエステルにおけるカルボン酸成分とアルコール成分との当量比(COOH基/OH基)は、ポリエステルの軟化点を調整する観点から、0.70〜1.10が好ましく、0.75〜1.00がより好ましい。
【0028】
ポリエステルは、例えば、アルコール成分とカルボン酸成分とを不活性ガス雰囲気中、必要に応じてエステル化触媒、エステル化助触媒、重合禁止剤等の存在下、180〜250℃程度の温度で重縮合させて製造することができる。
【0029】
エステル化触媒としては、酸化ジブチル錫、2-エチルヘキサン酸錫(II)等の錫化合物、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート等のチタン化合物等が挙げられ、エステル化助触媒としては、没食子酸等が挙げられる。また、エステル化触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、0.01〜1.5質量部が好ましく、0.1〜1.0質量部がより好ましい。エステル化助触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、0.001〜0.5質量部が好ましく、0.01〜0.1質量部がより好ましい。また、重合禁止剤としては、t-ブチルカテコール等が挙げられ、重合禁止剤の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、0.001〜0.5質量部が好ましく、0.01〜0.1質量部がより好ましい。
【0030】
ポリエステルの軟化点は、液体現像剤の定着性を向上させる観点から、160℃以下が好ましく、130℃以下がより好ましく、120℃以下がさらに好ましく、100℃以下がさらに好ましい。また、液体現像剤の分散安定性を向上させ保存安定性を向上させる観点から、70℃以上が好ましく、75℃以上がより好ましい。
【0031】
ポリエステルのガラス転移温度は、液体現像剤の定着性を向上させる観点から、80℃以下が好ましく、70℃以下がより好ましく、60℃以下がさらに好ましい。また、液体現像剤の分散安定性を向上させ保存安定性を向上させる観点から、40℃以上が好ましく、45℃以上がより好ましい。
【0032】
ポリエステルの酸価は、液体現像剤の粘度を低減する観点、及び液体現像剤中のトナー粒子の分散安定性を向上させ保存安定性を向上させる観点から、110mgKOH/g以下が好ましく、70mgKOH/g以下がより好ましく、50mgKOH/g以下がさらに好ましく、30mgKOH/g以下がさらに好ましい。また、同様の観点から、3mgKOH/g以上が好ましく、5mgKOH/g以上がより好ましく、8mgKOH/g以上がさらに好ましい。ポリエステルの酸価は、カルボン酸成分とアルコール成分の当量比を変化させる、樹脂製造時の反応時間を変化させる、3価以上のカルボン酸化合物の含有量を変化させる、等の方法で調整することができる。
【0033】
なお、本発明において、ポリエステルは、実質的にその特性を損なわない程度に変性されたポリエステルであってもよい。変性されたポリエステルとしては、例えば、特開平11−133668号公報、特開平10−239903号公報、特開平8−20636号公報等に記載の方法によりフェノール、ウレタン、エポキシ等によりグラフト化やブロック化したポリエステルをいう。
【0034】
[顔料]
顔料としては、トナー用着色剤として用いられている顔料のすべてを使用することができ、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントグリーンB、ローダミン−Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、イソインドリン、ジスアゾエロー等を用いることができる。本発明において、トナー粒子は、黒トナー、カラートナーのいずれであってもよい。
【0035】
顔料の含有量は、液体現像剤の定着性を向上させる観点から、樹脂100質量部に対して、100質量部以下が好ましく、70質量部以下がより好ましく、50質量部以下がさらに好ましく、25質量部以下がさらに好ましい。また、液体現像剤の画像濃度を向上させる観点から、樹脂100質量部に対して、5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましく、15質量部以上がさらに好ましい。
【0036】
本発明では、トナー材料として、さらに、離型剤、荷電制御剤、荷電制御樹脂、磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、クリーニング性向上剤等の添加剤を適宜使用してもよい。
【0037】
[トナー粒子の製造方法]
トナー粒子を得る方法としては、樹脂や顔料を含有するトナー原料を溶融混練し、得られた溶融混練物を粉砕して得る方法、水系樹脂分散液と水系顔料分散液を混合し樹脂粒子と顔料粒子を合一させる方法、及び水系樹脂分散液と顔料を高速攪拌する方法等が挙げられる。液体現像剤の現像性及び定着性を向上させる観点から、トナー原料を溶融混練した後に粉砕する方法が好ましい。
【0038】
トナー原料の溶融混練は、密閉式ニーダー、一軸もしくは二軸の混練機、連続式オープンロール型混練機等の公知の混練機を用いて行うことができるが、本発明の液体現像剤の製造方法においては、顔料の樹脂中での分散性を向上させる観点、及び粉砕後のトナー粒子の収率を向上させる観点から、オープンロール型混練機を用いて行うことが好ましい。
【0039】
樹脂、顔料を含有するトナー原料は、あらかじめヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、ボールミル等の混合機で混合した後、混練機に供給することが好ましい。これらの混合機の中では、顔料の樹脂中での分散性を向上させる観点から、ヘンシェルミキサーが好ましい。
【0040】
ヘンシェルミキサーでのトナー原料の混合は、攪拌の周速度、及び混合時間を調整することで行う。攪拌の周速度は、顔料の樹脂中での分散性を向上させる観点から、10〜30m/secが好ましい。また、攪拌時間は、顔料の樹脂中での分散性を向上させる観点から、1〜10分が好ましい。
【0041】
オープンロール型混練機とは、溶融混練部が密閉されておらず開放されているものをいい、溶融混練の際に発生する混練熱を容易に放熱することができる。本発明で使用するオープンロール型混練機は、ロールの軸方向に沿って設けられた複数の原料供給口と混練物排出口を備えており、生産効率の観点から、連続式オープンロール型混練機であることが好ましい。
【0042】
本発明で用いるオープンロール型混練機は、少なくとも温度の異なる2本の混練用ロールを有していることが好ましい。ロール温度は、例えば、ロール内部に通す熱媒体の温度により調整することができ、各ロールには、ロール内部を2以上に分割して温度の異なる熱媒体を通じてもよい。
【0043】
本発明において、混練機の混練物排出部の温度は、トナー原料の混合性を向上させる観点から、いずれのロールにおいても、樹脂の軟化点より10℃高い温度以下に設定することが好ましい。
【0044】
加熱ロールにおける混練の上流側と混練の下流側の設定温度は、上流側で混練物のロールへの張り付きを良好にして、下流側で強く混練する観点から、上流側の設定温度が下流側よりも高いことが好ましい。
【0045】
混練の上流側の設定温度が低い方のロール(冷却ロールともいう)において、混練の上流側の設定温度は、混練の下流側の設定温度と同じであっても異なっていてもよい。
【0046】
オープンロール型混練機のロールは、互いに周速度が異なっていることが好ましく、前記の加熱ロールと冷却ロールを備えたオープンロール型混練機においては、液体現像剤の定着性を向上させる観点から、加熱ロールが周速度の高い方のロール(高回転側ロール)、冷却ロールが周速度の低い方のロール(低回転側ロール)であることが好ましい。
【0047】
高回転側ロールの周速度は、2〜100m/minであることが好ましく、5〜75m/minがより好ましい。低回転側ロールの周速度は2〜100m/minが好ましく、4〜60m/minがより好ましく、4〜50m/minがさらに好ましい。また、2本のロールの周速度の比(低回転側ロール/高回転側ロール)は、1/10〜9/10が好ましく、3/10〜8/10がより好ましい。
【0048】
2本のロールの間隙(クリアランス)は、混練の上流側端部で好ましくは0.1〜3mm、より好ましくは0.1〜1mmである。
【0049】
また、各ロールの構造、大きさ、材料等について特に限定はない。ロール表面は、混練に用いられる溝を有しており、この形状は直線状、螺旋状、波型、凸凹型等が挙げられる。
【0050】
原料混合物の供給速度及び平均滞留時間は、用いるロールのサイズや原料の組成等により異なるので、これらの条件により最適な条件を選択すればよい。
【0051】
オープンロール型混練機による溶融混練により得られた溶融混練物を粉砕が可能な程度に冷却した後、粉砕工程、及び必要に応じて分級工程等の通常の方法を経て、本発明のトナー粒子を得ることができる。
【0052】
粉砕工程は、多段階に分けて行ってもよい。例えば、溶融混練物を、1〜5mm程度に粗粉砕した後、さらに微粉砕してもよい。また、粉砕工程時の生産性を向上させるために、溶融混練物を疎水性シリカ等の無機微粒子と混合した後、粉砕してもよい。
【0053】
粉砕工程に用いられる粉砕機は特に限定されないが、例えば、粗粉砕に好適に用いられる粉砕機としては、アトマイザー、ロートプレックス等が挙げられるが、ハンマーミル等を用いてもよい。また、微粉砕に好適に用いられる粉砕機としては、流動層式ジェットミル、気流式ジェットミル、機械式ミル等が挙げられる。
【0054】
前記粉砕物は必要に応じて分級機を用いて分級してもよい。分級工程に用いられる分級機としては、気流式分級機、慣性式分級機、篩式分級機等が挙げられる。分級工程の際、粉砕が不十分で除去された粉砕物は再度粉砕工程に供してもよく、必要に応じて粉砕工程と分級工程とを繰り返してもよい。
【0055】
前記粉砕工程及び必要に応じて行う分級工程で得られるトナー粒子の体積中位粒径(D
50)は、後述の湿式粉砕工程の生産性を向上させる観点から、3〜15μmが好ましく、4〜12μmがより好ましい。なお、本明細書において、体積中位粒径(D
50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。
【0056】
[液体現像剤の製造方法]
トナー粒子を分散剤の存在下で絶縁性液体中に分散させて液体現像剤が得られる。液体現像剤中のトナー粒子の粒子径を小さくする観点及び粘度を低減する観点から、トナー粒子を絶縁性液体中に分散させた後、トナー粒子を湿式粉砕して液体現像剤を得るのが好ましい。
【0057】
[絶縁性液体]
絶縁性液体の25℃における粘度は、液体現像剤の定着性を向上させる観点、及び液体現像剤中のトナー粒子の分散安定性を向上させ保存安定性を向上させる観点から、1mPa・s以上が好ましく、2mPa・s以上がより好ましく、3mPa・s以上がさらに好ましく、また、液体現像剤の定着性及び保存安定性を向上させる観点から、55mPa・s以下が好ましく、40mPa・s以下がより好ましく、30mPa・s以下がさらに好ましく、15mPa・s以下がさらに好ましく、4mPa・s以下がさらに好ましい。絶縁性液体を2種以上組み合わせて用いる場合には、組み合わせた絶縁性液体混合物の粘度が上記範囲内であればよい。なお、絶縁性液体の25℃における粘度は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
【0058】
絶縁性液体とは、電気が流れにくい液体のことを意味するが、本発明においては、誘電率3.5以下、体積抵抗率10
7Ωcm以上の液体が好ましい。
【0059】
本発明の液体現像剤における絶縁性液体は、炭素数12以上18以下のオレフィン(以下、単にオレフィンともいう)を含有するものである。
【0060】
オレフィンとは、分子中に炭素−炭素二重結合を1つ以上有する炭化水素化合物のことである。液体現像剤の保存安定性を向上させる観点から、1分子中の二重結合の個数は3個以下が好ましく、2個以下がより好ましく、1個がさらに好ましい。
【0061】
オレフィンの炭素数は、経済性の観点から、偶数が好ましく、液体現像剤の定着性を向上させる観点、液体現像剤中のトナー粒子の分散安定性を向上させて保存安定性を向上させる観点、及び分散媒蒸気の発生を抑制する観点から、12以上であり、14以上が好ましく、16以上がより好ましい。また、液体現像剤の粘度を低減する観点から、18以下であり、16以下が好ましく、14以下がより好ましい。また、好適な範囲としては、オレフィンの炭素数は、14〜18が好ましく、16〜18がより好ましく、16及び18がさらに好ましく、18がさらに好ましい。
【0062】
オレフィンの分子鎖の構造は、直鎖オレフィンであっても分岐オレフィンであってもよいが、液体現像剤の粘度を低減する観点から、直鎖オレフィンが好ましい。
【0063】
二重結合を1個有する炭素数12以上18以下の直鎖オレフィンの具体例としては、ドデセン(炭素数12)、トリデセン(炭素数13)、テトラデセン(炭素数14)、ペンタデセン(炭素数15)、ヘキサデセン(炭素数16)、ヘプタデセン(炭素数17)、オクタデセン(炭素数18)等が挙げられる。このうち、液体現像剤の定着性を向上させる観点、液体現像剤中のトナー粒子の分散安定性を向上させ保存安定性を向上させる観点、及び分散媒蒸気の発生を抑制する観点から、テトラデセン、ペンタデセン、ヘキサデセン、ヘプタデセン、オクタデセンが好ましく、経済性の観点から、ヘキサデセン及びオクタデセンがさらに好ましい。これらのうち1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0064】
オレフィンには、二重結合の位置によって、二重結合の85%以上が炭素鎖の1位に存在するα−オレフィン又は炭素鎖の1位に存在する二重結合が3%未満である内部オレフィンがあるが、液体現像剤中のトナー粒子の分散安定性を向上させ保存安定性を向上させる観点及び定着性を向上させる観点から、内部オレフィンが好ましい。
【0065】
内部オレフィン中における二重結合の位置は、例えば、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC−MS)により確認することができる。具体的には、ガスクロマトグラフ分析計(GC)により炭素鎖長及び二重結合位置の異なる各成分を正確に分離することで、そのGCピーク面積から各々のオレフィンの割合を求めることができる。さらに、質量分析計(MS)により、オレフィンにおける二重結合位置を同定することができる。
【0066】
絶縁性液体中のオレフィンの含有量は、液体現像剤の定着性を向上させる観点、及び液体現像剤中のトナー粒子の分散安定性を向上させ保存安定性を向上させる観点から、10質量%以上であり、20質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましく、60質量%以上がさらに好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、実質的に100質量%がさらに好ましく、100質量%がさらに好ましい。
【0067】
オレフィン以外の絶縁性液体の具体例としては、例えば、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、ポリシロキサン、植物油等が挙げられる。これらの中で、液体現像剤の粘度を低減する観点、臭気、無害性及びコストの観点から、流動パラフィン、イソパラフィン等の脂肪族炭化水素が好ましく、また、環境調和性の観点から植物油が好ましい。
【0068】
脂肪族炭化水素の市販品としては、アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL、アイソパーK(以上、いずれもエクソンモービル社製)、シェルゾール71(シェルケミカルズジャパン社製)、IPソルベント1620、IPソルベント2080(以上、いずれも出光興産社製)、モレスコホワイトP-55、モレスコホワイトP-70、モレスコホワイトP-100、モレスコホワイトP-150、モレスコホワイトP-260(以上、いずれもMORESCO社製)、コスモホワイトP-60、コスモホワイトP-70(以上、いずれもコスモ石油ルブリカンツ社製)、ライトール(Sonneborn社製)等が挙げられる。これらのうちの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0069】
植物油の具体例としては、菜種油、紅花油、ひまわり油、ごま油、大豆油、パーム油、パーム核油、ココナッツ油等が挙げられる。これらの中でも、液体現像剤の粘度を低減する観点及び体積抵抗率を高く維持する観点から、菜種油及び紅花油が好ましい。
【0070】
オレフィン以外の絶縁性液体を使用する場合、オレフィンとオレフィン以外の絶縁性液体の質量比(オレフィン/オレフィン以外の絶縁性液体)は、液体現像剤の定着性を向上させる観点、及び液体現像剤中のトナー粒子の分散安定性を向上させ保存安定性を向上させる観点から、10/90〜90/10が好ましく、10/90〜70/30がより好ましく、15/85〜60/40がさらに好ましい。
【0071】
[分散剤]
分散剤は、トナー粒子を絶縁性液体中に安定に分散させるために用いるもので、本発明では、樹脂、特にポリエステルへの吸着性を向上させる観点から、吸着基として塩基性吸着基を有する塩基性分散剤が好ましい。
【0072】
塩基性分散剤は、同一分子中に塩基性吸着基と分散基をもつ構造を有するものが好ましく、塩基性吸着基を主鎖、分散基を側鎖にもつ構造を有するものがより好ましい。塩基性吸着基としては、アミノ基、アミド基、イミノ基、ピロリドン基、ピリジン基等が挙げられ、液体現像剤中のトナー粒子の分散安定性を向上させ保存安定性を向上させる観点から、アミノ基、アミド基及びイミノ基が好ましい。分散基としては、絶縁性液体と相溶する基が好ましく、具体的には炭化水素鎖又はヒドロキシ炭化水素鎖を持つものがより好ましい。このような塩基性分散剤の中でも、液体現像剤中のトナー粒子の分散安定性を向上させ保存安定性を向上させる観点から、ポリイミンとカルボン酸の縮合物が好ましい。
【0073】
ポリイミンとしては、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミン、ポリブチレンイミン等が挙げられるが、液体現像剤中のトナー粒子の分散安定性を向上させ保存安定性を向上させる観点から、ポリエチレンイミンが好ましい。
【0074】
カルボン酸としては、液体現像剤中のトナー粒子の分散安定性を向上させ保存安定性を向上させる観点から、炭素数10〜30のカルボン酸が好ましく、炭素数12〜24のカルボン酸がより好ましく、炭素数16〜22のカルボン酸がさらに好ましい。また、飽和又は不飽和の脂肪族カルボン酸が好ましく、直鎖の飽和又は不飽和の脂肪族カルボン酸がより好ましい。また、カルボン酸はヒドロキシ基等の置換基を有していてもよい。具体的なカルボン酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の直鎖飽和脂肪族カルボン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の直鎖不飽和脂肪族カルボン酸、メバロン酸、リシノール酸、12-ヒドロキシステアリン酸等のヒドロキシカルボン酸及びその縮合体等が挙げられる。この中でも、液体現像剤中のトナー粒子の分散安定性を向上させ保存安定性を向上させる観点から、ヒドロキシカルボン酸及びその縮合体が好ましく、その中でも、12-ヒドロキシステアリン酸及びその縮合体がより好ましい。
【0075】
ポリイミンとカルボン酸の縮合物の具体例としては、ソルスパース11200、ソルスパース13940(以上、いずれも日本ルーブリゾール社製)等が挙げられる。
【0076】
塩基性分散剤の添加量は、トナー粒子の凝集を抑制し、液体現像剤の粘度を低減する観点から、トナー粒子100質量部に対して、有効分として2質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましく、8質量部以上がさらに好ましい。また、液体現像剤の現像性及び定着性を向上させる観点から、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましく、12質量部以下がさらに好ましい。
【0077】
トナー粒子、絶縁性液体、及び分散剤の混合方法としては、攪拌混合装置により攪拌する方法等が好ましい。
【0078】
撹拌混合装置は、特に限定はされないが、トナー粒子分散液の生産性及び保存安定性を向上させる観点から、高速攪拌混合装置が好ましく、具体的には、デスパ(浅田鉄工社製)、T.K.ホモミクサー、T.K.ホモディスパー、T.K.ロボミックス(以上、いずれもプライミクス社製)、クレアミックス(エム・テクニック社製)、ケイディーミル(ケイディー・インターナショナル社製)等が好ましい。
【0079】
トナー粒子と絶縁性液体及び分散剤を高速攪拌混合装置により混合することによって、トナー粒子が予備分散され、トナー粒子分散液を得ることができ、次の湿式粉砕による液体現像剤の生産性が向上する。
【0080】
トナー粒子分散液の固形分濃度は、液体現像剤の現像性を向上させる観点から、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、35質量%以上がさらに好ましい。また、液体現像剤中のトナー粒子の分散安定性を向上させ保存安定性を向上させる観点から、50質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましく、40質量%以下がさらに好ましい。なお、トナー粒子分散液の固形分濃度は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
【0081】
[湿式粉砕]
湿式粉砕とは、絶縁性液体中に分散させたトナー粒子を、絶縁性液体に分散した状態で機械的に粉砕処理する方法である。
【0082】
湿式粉砕に使用する装置としては、例えば、アンカー翼等の一般に用いられている撹拌混合装置を用いることができる。撹拌混合装置の中では、デスパ(浅田鉄工社製)、T.K.ホモミクサー(プライミクス社製)等の高速攪拌混合装置、ロールミル、ビーズミル、ニーダー、エクストルーダ等の粉砕機及び混練機等が挙げられる。これらの装置は複数を組み合わせることもできる。
【0083】
これらの中では、液体現像剤中のトナー粒子の粒子径を小さくする観点、及びトナー粒子の絶縁性液体への分散性を向上させ保存安定性を向上させる観点、及びトナー粒子分散液の粘度を低減する観点から、ビーズミルの使用が好ましい。
【0084】
ビーズミルでは、用いるメディアの粒径や充填率、ローターの周速度、滞留時間等を制御することにより所望の粒径、粒径分布を持ったトナー粒子を得ることができる。
【0085】
液体現像剤の固形分濃度は、液体現像剤の現像性を向上させる観点から、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、35質量%以上がさらに好ましい。また、液体現像剤中のトナー粒子の分散安定性を向上させ保存安定性を向上させる観点から、50質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましく、40質量%以下がさらに好ましい。なお、液体現像剤の固形分濃度は、後述の実施例に記載の方法により測定される。トナー粒子分散液調製後、希釈、濃縮等の操作がなければ、トナー粒子分散液の固形分濃度が液体現像剤の固形分濃度となる。
【0086】
液体現像剤中のトナー粒子の体積中位粒径(D
50)は、液体現像剤中のトナー粒子の粒子径を小さくし、液体現像剤の画質を向上させる観点から、5μm以下が好ましく、3μm以下がより好ましく、2.5μm以下がさらに好ましい。また、液体現像剤の粘度を低減する観点から、0.5μm以上が好ましく、1.0μm以上がより好ましく、1.5μm以上がさらに好ましい。なお、液体現像剤中のトナー粒子の体積中位粒径(D
50)は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
【0087】
液体現像剤の25℃における粘度は、液体現像剤の現像性を向上させる観点から、150mPa・s以下が好ましく、100mPa・s以下がより好ましく、80mPa・s以下がさらに好ましく、60mPa・s以下がさらに好ましく、50mPa・s以下がさらに好ましく、30mPa・s以下がさらに好ましく、20mPa・s以下がさらに好ましく、19mPa・s以下がさらに好ましい。また、液体現像剤中でのトナー粒子の分散安定性を向上させ保存安定性を向上させる観点から、2mPa・s以上が好ましく、5mPa・s以上がより好ましく、10mPa・s以上がさらに好ましい。なお、液体現像剤の粘度は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
【0088】
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下の液体現像剤を開示する。
【0089】
<1> 樹脂と顔料とを含有するトナー粒子が絶縁性液体中に分散してなる液体現像剤であって、前記絶縁性液体が、炭素数12〜18のオレフィンを10質量%以上含有してなる、液体現像剤。
【0090】
<2> 樹脂がポリエステルを含有する、前記<1>記載の液体現像剤。
【0091】
<3> ポリエステルの含有量は、樹脂中、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、実質的に100質量%がさらに好ましく、100質量%、即ち樹脂がポリエステルのみからなることがさらに好ましい、前記<2>記載の液体現像剤。
【0092】
<4> ポリエステルは、2価以上のアルコールを含むアルコール成分と2価以上のカルボン酸化合物を含むカルボン酸成分とを重縮合することにより得られるものが好ましい、前記<2>又は<3>記載の液体現像剤。
【0093】
<5> アルコール成分が式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を含有する、前記<4>記載の液体現像剤。
【0094】
<6> 式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の含有量は、アルコール成分中、50モル%以上が好ましく、70モル%以上がより好ましく、90モル%以上がさらに好ましく、実質的に100モル%がさらに好ましく、100モル%がさらに好ましい、前記<5>記載の液体現像剤。
【0095】
<7> カルボン酸成分は、テレフタル酸、フマル酸、及び無水トリメリット酸からなる群より選ばれた少なくとも1種を含有することが好ましく、テレフタル酸を含有することがより好ましい、前記<4>〜<6>いずれか記載の液体現像剤。
【0096】
<8> ポリエステルの軟化点は、160℃以下が好ましく、130℃以下がより好ましく、120℃以下がさらに好ましく、100℃以下がさらに好ましく、70℃以上が好ましく、75℃以上がより好ましい、前記<2>〜<7>いずれか記載の液体現像剤。
【0097】
<9> ポリエステルのガラス転移温度は、80℃以下が好ましく、70℃以下がより好ましく、60℃以下がさらに好ましく、40℃以上が好ましく、45℃以上がより好ましい、前記<2>〜<8>いずれか記載の液体現像剤。
【0098】
<10> ポリエステルの酸価は、110mgKOH/g以下が好ましく、70mgKOH/g以下がより好ましく、50mgKOH/g以下がさらに好ましく、30mgKOH/g以下がさらに好ましく、3mgKOH/g以上が好ましく、5mgKOH/g以上がより好ましく、8mgKOH/g以上がさらに好ましい、前記<2>〜<9>いずれか記載の液体現像剤。
【0099】
<11> 顔料の含有量は、樹脂100質量部に対して、100質量部以下が好ましく、70質量部以下がより好ましく、50質量部以下がさらに好ましく、25質量部以下がよりさらに好ましく、5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましく、15質量部以上がさらに好ましい、前記<1>〜<10>いずれか記載の液体現像剤。
【0100】
<12> トナー粒子を分散剤の存在下で絶縁性液体中に分散させた後、トナー粒子を湿式粉砕して得られる、前記<1>〜<11>いずれか記載の液体現像剤。
【0101】
<13> 絶縁性液体の25℃における粘度は、1mPa・s以上が好ましく、2mPa・s以上がより好ましく、3mPa・s以上がさらに好ましく、55mPa・s以下が好ましく、40mPa・s以下がより好ましく、30mPa・s以下がさらに好ましく、15mPa・s以下がさらに好ましく、4mPa・s以下がさらに好ましい、前記<1>〜<12>いずれか記載の液体現像剤。
【0102】
<14> オレフィン1分子中の二重結合の個数は3個以下が好ましく、2個以下がより好ましく、1個がさらに好ましい、前記<1>〜<13>いずれか記載の液体現像剤。
【0103】
<15> オレフィンの炭素数は、14以上が好ましく、16以上がより好ましい、前記<1>〜<14>いずれか記載の液体現像剤。
【0104】
<16> オレフィンの炭素数は、16以下が好ましく、14以下がより好ましい、前記<1>〜<14>いずれか記載の液体現像剤。
【0105】
<17> オレフィンの炭素数は、14〜18が好ましく、16〜18がより好ましく、16及び18がさらに好ましく、18がさらに好ましい、前記<1>〜<14>いずれか記載の液体現像剤。
【0106】
<18> オレフィンは、直鎖オレフィンが好ましい、前記<1>〜<17>いずれか記載の液体現像剤。
【0107】
<19> オレフィンが二重結合を1個有する炭素数12以上18以下の直鎖オレフィンである、前記<1>〜<18>いずれか記載の液体現像剤。
【0108】
<20> 二重結合を1個有する炭素数12以上18以下の直鎖オレフィンは、テトラデセン、ペンタデセン、ヘキサデセン、ヘプタデセン及びオクタデセンからなる群より選ばれた少なくとも1種が好ましく、ヘキサデセン及び/又はオクタデセンがさらに好ましい、前記<19>記載の液体現像剤。
【0109】
<21> オレフィンは、内部オレフィンが好ましい、前記<1>〜<20>いずれか記載の液体現像剤。
【0110】
<22> 絶縁性液体中のオレフィンの含有量は、20質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましく、60質量%以上がさらに好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、実質的に100質量%がさらに好ましく、100質量%がさらに好ましい、前記<1>〜<21>いずれか記載の液体現像剤。
【0111】
<23> 絶縁性液体がオレフィン以外の絶縁性液体を含有する、前記<1>〜<22>いずれか記載の液体現像剤。
【0112】
<24> オレフィン以外の絶縁性液体は、脂肪族炭化水素が好ましい、前記<23>記載の液体現像剤。
【0113】
<25> オレフィン以外の絶縁性液体は、植物油が好ましい、前記<23>記載の液体現像剤。
【0114】
<26> 植物油は、菜種油及び/又は紅花油が好ましい、前記<25>記載の液体現像剤。
【0115】
<27> オレフィンとオレフィン以外の絶縁性液体の質量比(オレフィン/オレフィン以外の絶縁性液体)は、10/90〜90/10が好ましく、10/90〜70/30がより好ましく、15/85〜60/40がさらに好ましい、前記<23>〜<26>いずれか記載の液体現像剤。
【0116】
<28> 分散剤は、塩基性分散剤が好ましい、前記<12>〜<27>いずれか記載の液体現像剤。
【0117】
<29> 塩基性分散剤は、同一分子中に塩基性吸着基と分散基をもつ構造を有するものが好ましく、塩基性吸着基を主鎖、分散基を側鎖にもつ構造を有するものがより好ましい、前記<28>記載の液体現像剤。
【0118】
<30> 塩基性吸着基としては、アミノ基、アミド基及びイミノ基からなる群より選ばれた少なくとも1種が好ましい、前記<29>記載の液体現像剤。
【0119】
<31> 分散基は、炭化水素鎖又はヒドロキシ炭化水素鎖を持つものがより好ましい、前記<29>又は<30>記載の液体現像剤。
【0120】
<32> 塩基性分散剤は、ポリイミンとカルボン酸の縮合物が好ましい、前記<28>〜<31>いずれか記載の液体現像剤。
【0121】
<33> 塩基性分散剤の添加量は、トナー粒子100質量部に対して、2質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましく、8質量部以上がさらに好ましく、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましく、12質量部以下がさらに好ましい、前記<28>〜<32>いずれか記載の液体現像剤。
【0122】
<34> トナー粒子分散液の固形分濃度は、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、35質量%以上がさらに好ましく、50質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましく、40質量%以下がさらに好ましい、前記<12>〜<33>いずれか記載の液体現像剤。
【0123】
<35> 液体現像剤の固形分濃度は、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、35質量%以上がさらに好ましく、50質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましく、40質量%以下がさらに好ましい、前記<1>〜<34>いずれか記載の液体現像剤。
【0124】
<36> 液体現像剤中のトナー粒子の体積中位粒径(D
50)は、5μm以下が好ましく、3μm以下がより好ましく、2.5μm以下がさらに好ましく、0.5μm以上が好ましく、1.0μm以上がより好ましく、1.5μm以上がさらに好ましい、前記<1>〜<35>いずれか記載の液体現像剤。
【0125】
<37> 液体現像剤の25℃における粘度は、150mPa・s以下が好ましく、100mPa・s以下がより好ましく、80mPa・s以下がさらに好ましく、60mPa・s以下がさらに好ましく、50mPa・s以下がさらに好ましく、30mPa・s以下がさらに好ましく、20mPa・s以下がさらに好ましく、19mPa・s以下がさらに好ましく、2mPa・s以上が好ましく、5mPa・s以上がより好ましく、10mPa・s以上がさらに好ましい、前記<1>〜<36>いずれか記載の液体現像剤。
【0126】
<38> 樹脂及び顔料を含有するトナー粒子が絶縁性液体中に分散してなる液体現像剤の製造方法であって、
工程1:樹脂及び顔料を溶融混練し、粉砕してトナー粒子を得る工程、
工程2:工程1で得られたトナー粒子を分散剤の存在下で絶縁性液体中に分散させ、トナー粒子分散液を得る工程、及び
工程3:工程2で得られたトナー粒子分散液を湿式粉砕し、液体現像剤を得る工程
を含み、
前記絶縁性液体が炭素数12以上18以下のオレフィンを10質量%以上含有する、液体現像剤の製造方法。
【実施例】
【0127】
〔樹脂の軟化点〕
フローテスター「CFT-500D」(島津製作所社製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/minで加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出す。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
【0128】
〔樹脂のガラス転移温度〕
示差走査熱量計「DSC210」(セイコー電子工業社製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで0℃まで冷却する。次に試料を昇温速度10℃/minで昇温し、吸熱ピークを測定する。吸熱の最高ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度とする。
【0129】
〔樹脂の酸価〕
JIS K0070の方法により測定する。但し、測定溶媒のみJIS K0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更する。
【0130】
〔絶縁性液体及び液体現像剤の25℃における粘度〕
6mL容のガラス製サンプル管「スクリューNo.2」(マルエム社製)に測定液を4〜5mL入れ、回転振動式粘度計「ビスコメイトVM-10A-L」(セコニック社製)を用いて、25℃にて粘度を測定する。
【0131】
〔絶縁性液体と混合する前のトナー粒子の体積中位粒径〕
測定機:コールターマルチサイザーII(ベックマンコールター社製)
アパチャー径:100μm
解析ソフト:コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン 1.19(ベックマンコールター社製)
電解液:アイソトンII(ベックマンコールター社製)
分散液:エマルゲン109P(花王社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB:13.6)を5質量%の濃度となるよう前記電解液に溶解させる。
分散条件:前記分散液5mlに測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、前記電解液25mlを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を調製する。
測定条件:前記電解液100mlに、3万個の粒子の粒径を20秒間で測定できる濃度となるように、前記試料分散液を加え、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D
50)を求める。
【0132】
〔トナー粒子分散液及び液体現像剤中の固形分濃度〕
トナー粒子分散液又は液体現像剤10質量部をヘキサン90質量部で希釈し、遠心分離装置「H-201F」(コクサン社製)を用いて、回転数25000r/minにて、20分間回転させる。静置後、上澄み液をデカンテーションにて除去した後、90質量部のヘキサンで希釈し、同様の条件で再び遠心分離を行う。上澄み液をデカンテーションにて除去した後、下層を真空乾燥機にて0.5kPa、40℃にて8時間乾燥させ、以下の式より固形分濃度を計算する。
【0133】
【数1】
【0134】
〔液体現像剤中のトナー粒子の体積中位粒径(D
50)〕
レーザー回折/散乱式粒径測定装置「マスターサイザー2000」(マルバーン社製)を用いて、測定用セルにアイソパーG(エクソンモービル社製、イソパラフィン)を加え、散乱強度が5〜15%になる濃度で、粒子屈折率1.58(虚数部0.1)、分散媒屈折率1.42の条件にて、体積中位粒径(D
50)を測定する。
【0135】
樹脂製造例1
表1に示す原料モノマーと、エステル化触媒及びエステル化助触媒を、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに入れ、230℃に昇温して反応率が90%に達するまで反応させ、さらに8.3kPaにて反応を行い、軟化点が80℃に達した時点で反応を終了し、表1に示す物性を有する樹脂Aを得た。なお、反応率とは、生成反応水量(mol)/理論生成水量(mol)×100の値をいう。
【0136】
樹脂製造例2
表1に示す原料モノマーと、エステル化触媒及びエステル化助触媒を、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに入れ、180℃まで昇温した後、210℃まで5時間かけて昇温を行い、反応率が90%に達するまで反応させた。さらに8.3kPaにて反応を行い、軟化点が86℃に達した時点で反応を終了し、表1に示す物性を有する樹脂Bを得た。
【0137】
【表1】
【0138】
樹脂製造例3
キシレン1567gを窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した5L容の四つ口フラスコに入れ、130℃に昇温した。表2に示す原料モノマー及び重合開始剤の混合液を130℃で攪拌しながら1.5時間かけて滴下し、さらに1.5時間同温度を保持して付加重合反応を行った。160℃に昇温し、1時間反応を行った後、200℃に昇温し、1時間保持してキシレンを除去した。さらに8.3kPaにて残りのキシレンを除去し、表2に示す物性を有する樹脂Cを得た。
【0139】
【表2】
【0140】
内部オレフィンの製造例
攪拌装置付きフラスコに1-オクタデカノール「カルコール8098」(花王社製)7000g(25.9モル)、固体酸触媒としてγ―アルミナ(STREM Chemicals,Inc社製)1050g(原料アルコールに対して15質量%)を仕込み、攪拌下、285℃にて系内に窒素(7000ml/min)を流通させながら13時間、反応を行った。反応終了後のアルコール転化率は100%、C18内部オレフィン純度は98.5%であった。得られた粗内部オレフィンを蒸留用フラスコに移し、148-158℃/0.5mmHgで蒸留することでオレフィン純度100%の炭素数18の内部オレフィンAを得た。
【0141】
得られた内部オレフィンAの二重結合分布は、C1位 0.7質量%、C2位 16.9質量%、C3位 15.9質量%、C4位 16.0質量%、C5位 14.7質量%、C6位 11.2質量%、C7位 10.1質量%、C8位とC9位の合計が14.5質量%であった。オレフィンの二重結合の分布は以下の方法により測定した。
【0142】
〔内部オレフィンの二重結合分布の測定方法〕
内部オレフィンに対しジメチルジスルフィドを反応させることでジチオ化誘導体とした後、炭素鎖長及び二重結合位置の異なる各成分をガスクロマトグラフィー(GC)で分離する。それぞれのピーク面積より内部オレフィンの存在割合を求める。二重結合位置は質量分析計(MS)により同定する。
【0143】
GC-MS測定に使用する装置及び分析条件は次の通りである。
GC装置:6890(アジレントテクノロジー社製)
カラム:BPX-35 25m×0.22mm×0.25μm(SGE社製)
キャリアーガス:He(カラム流量1.0mL/min)
インジェクションモード:スプリット(100:1)
インジェクター温度:300℃
カラムオーブン温度:60℃から2℃/minで昇温し、300℃で5min保持
MS装置:5975(アジレントテクノロジー社製)
イオン源温度:230℃
アナライザー温度:150℃(四重極)
トランスファーライン温度:300℃
イオン化モード:EI
スキャン範囲:m/z 25〜500
【0144】
実施例及び比較例で用いた絶縁性液体を表3に示す。
【0145】
【表3】
【0146】
実施例1〜12及び比較例1〜5
樹脂A 85質量部及び顔料「ECB-301」(大日精化社製、フタロシアニンブルー15:3)15質量部を、予め20L容のヘンシェルミキサーを使用し、回転数1500r/min(周速度21.6m/sec)で3分間攪拌混合後、以下に示す条件で溶融混練した。
【0147】
〔溶融混練条件〕
連続式二本オープンロール型混練機「ニーデックス」(日本コークス工業社製、ロール外径:14cm、有効ロール長:55cm)を使用した。連続式二本オープンロール型混練機の運転条件は、高回転側ロール(フロントロール)回転数75r/min(周速度32.4m/min)、低回転側ロール(バックロール)回転数35r/min(周速度15.0m/min)、原料投入側端部のロール間隙0.1mmであった。ロール内の加熱媒体温度及び冷却媒体温度は、高回転側ロールの原料投入側が90℃及び混練物排出側が85℃であり、低回転側ロールの原料投入側が35℃及び混練物排出側が35℃であった。また、原料混合物の上記混練機への供給速度は10kg/h、上記混練機中の平均滞留時間は約3分間であった。
【0148】
上記で得られた混練物を冷却ロールで冷却した後、ハンマーミルを用いて1mm程度に粗粉砕した。得られた粗粉砕物を気流式ジェットミル「IDS」(日本ニューマチック社製)により微粉砕及び分級し、体積中位粒径(D
50)が10μmのトナー粒子を得た。
【0149】
得られたトナー粒子35質量部と表4に示す絶縁性液体56.25質量部、及び塩基性分散剤「ソルスパース13940」(日本ルーブリゾール社製、有効分40%)8.75質量部を1L容のポリエチレン製容器に入れ、「T.K.ロボミックス」(プライミクス社製)を用いて、氷冷下、回転数7000r/minにて30分間攪拌を行い、固形分濃度39質量%のトナー粒子分散液を得た。
【0150】
次に、得られたトナー粒子分散液を、直径0.8mmのジルコニアビーズを用いて、体積充填率60体積%にて、6筒式サンドミル「TSG-6」(アイメックス社製)で回転数1300r/min(周速度4.8m/sec)にて表4に示す体積中位粒径(D
50)になるまで湿式粉砕した。ビーズをろ過により除去し、表4に示す物性を有する液体現像剤を得た。
【0151】
試験例1〔保存安定性〕
液体現像剤10gを20mLのガラス製サンプル管「スクリューNo.5」(マルエム社製)に入れ、40℃の恒温槽にて24時間保存した。保存前後の粘度を測定し、保存後の粘度/保存前の粘度の値から保存安定性を評価した。結果を表4に示す。数値が1に近いほど保存安定性に優れることを示す。
【0152】
試験例2〔定着性〕
6cm四方に裁断した「PODグロスコート紙」(王子製紙社製)に液体現像剤を滴下し、スピンコーター「MS-A150」(ミカサ社製)を用いて回転させ、薄膜を作製した。紙上に載った液体現像剤が0.05g±0.003gになるように滴下量や回転数、回転時間を調整した。
【0153】
作製した薄膜を、150℃の恒温槽中で1分間保持し、非接触定着させた。得られた定着画像にメンディングテープ「Scotchメンディングテープ810」(3M社製、幅18mm)を貼り付け、500gの荷重がかかるようにローラーでテープに圧力をかけた後、テープを剥離した。テープ剥離前と剥離後の画像濃度を、色彩計「Spectroeye」(X-Rite社製)にて測定した。画像印字部は各3点測定し、その平均値を画像濃度として算出した。剥離後の画像濃度/剥離前の画像濃度×100の値から定着率(%)を算出し、定着性を評価した。結果を表4に示す。数値が大きいほど定着性に優れることを示す。
【0154】
【表4】
【0155】
表4から明らかなように、比較例1〜5と対比して、実施例1〜12の液体現像剤は、定着性に優れ、保存安定性にも優れることが分かる。