【文献】
QUANTE,H. et al,Synthesis of Soluble Perylenebisamidine Derivatives. Novel Long-Wavelength Absorbing and Fluorescent Dyes,Chemistry of Materials,1997年,Vol.9, No.2,p.495-500
【文献】
DEBIJE,M.G. et al,Promising fluorescent dye for solar energy conversion based on a perylene perinone,Applied Optics,2011年 1月 7日,Vol.50, No.2,p.163-169
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
<化合物>
本発明に係る化合物は、下記一般式(IA)又は(IB)で表される(以下、これら化合物をまとめて化合物(I)と略記することがある)。化合物(I)は、蛍光性の新規化合物であり、長波長の光に対して吸収係数が高いので、このような光を十分に吸収可能である。また、化合物(I)は、蛍光量子収率が高い。化合物(I)のうち、下記一般式(IA)で表される化合物はsyn体であり、下記一般式(IB)で表される化合物はanti体である。
【0017】
【化3】
(式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基又はアリールオキシ基であり、複数個のR
1及びR
2は互いに同一でも異なっていてもよく;R
3は水素原子又はアルキル基であり、複数個のR
3は互いに同一でも異なっていてもよい。)
【0018】
式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基又はアリールオキシ基である。
R
1及びR
2における前記アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよく、環状である場合、前記アルキル基は、単環状及び多環状のいずれでもよい。そして、前記アルキル基は、炭素数が1〜22であることが好ましく、1〜18であることがより好ましく、後述する溶媒への溶解性がより高い化合物(I)とするためには、炭素数が6〜18であることがさらに好ましい。
【0019】
直鎖状又は分岐鎖状の前記アルキル基は、炭素数が1〜22であることが好ましく、該アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルブチル基、n−ヘキシル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、2−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、2,2−ジメチルペンチル基、2,3−ジメチルペンチル基、2,4−ジメチルペンチル基、3,3−ジメチルペンチル基、3−エチルペンチル基、2,2,3−トリメチルブチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基が例示できる。
なかでも、直鎖状又は分岐鎖状の前記アルキル基は、炭素数が1〜18であることがより好ましく、化合物(I)の前記溶解性の観点からは、炭素数が6〜18であることがさらに好ましい。
【0020】
環状の前記アルキル基は、炭素数が3〜22であることが好ましく、該アルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、トリシクロデシル基が例示でき、さらに、これら環状のアルキル基の1個以上の水素原子が、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基で置換されたものが例示できる。ここで、水素原子を置換する直鎖状、分岐鎖状及び環状のアルキル基としては、R
1及びR
2におけるアルキル基として例示した上記のものが挙げられる。
なかでも、環状の前記アルキル基は、炭素数が3〜18であることがより好ましく、化合物(I)の前記溶解性の観点からは、炭素数が6〜18であることがさらに好ましい。
【0021】
複数個(8個)のR
1は互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、R
1はすべて同一でもよいし、すべて異なっていてもよく、一部のみ異なっていてもよい。
同様に、複数個(12個)のR
2は互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、R
2はすべて同一でもよいし、すべて異なっていてもよく、一部のみ異なっていてもよい。
【0022】
R
1及びR
2における前記アルコキシ基としては、R
1及びR
2における前記アルキル基が酸素原子に結合してなる1価の基が例示でき、炭素数が1〜22であることが好ましく、1〜18であることがより好ましく、化合物(I)の前記溶解性の観点からは、炭素数が6〜18であることがさらに好ましい。
【0023】
R
1及びR
2における前記アリール基は、単環状及び多環状のいずれでもよく、炭素数が6〜22であることが好ましく、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、キシリル基(ジメチルフェニル基)等が例示でき、これらアリール基の1個以上の水素原子が、さらにこれらアリール基や、R
1及びR
2における前記アルキル基で置換されたものも例示できる。これら置換基を有するアリール基は、置換基も含めて炭素数が6〜22であることが好ましい。
これらのなかでも、前記アリール基は、炭素数が6〜10であることが好ましい。
【0024】
R
1及びR
2における前記アリールオキシ基としては、R
1及びR
2における前記アリール基が酸素原子に結合してなる1価の基が例示でき、炭素数が6〜22であることが好ましく、6〜10であることがより好ましい。
【0025】
いずれか1個以上のR
1又はR
2がアルキル基、アルコキシ基、アリール基又はアリールオキシ基である場合、化合物(I)中でのこれら基の位置及び数は、特に限定されない。
【0026】
R
1及びR
2は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜22のアルキル基又はアルコキシ基、あるいは炭素数6〜22のアリール基又はアリールオキシ基であることが好ましく、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜18のアルキル基又はアルコキシ基、あるいは炭素数6〜10のアリール基又はアリールオキシ基であることがより好ましい。
【0027】
化合物(I)は、R
1又はR
2として、アルキル基であるものを分子中に1個以上有する場合、適切な溶媒を選択することで、上記のように溶媒への溶解性が向上する。溶媒への溶解性が高い化合物(I)を使用することで、化合物(I)の取り扱い性がより向上し、例えば、後述する太陽光発電装置であれば発電量がより多いものが、蛍光プローブであれば検出感度がより高いものが、それぞれ目的物としてより容易に得られる。ただし、R
1及びR
2として、アルキル基を全く有しない化合物(I)を使用した場合でも、十分有用な目的物が得られる。
【0028】
式中、R
3は水素原子又はアルキル基である。
R
3における前記アルキル基としては、R
1及びR
2における前記アルキル基と同様のものが例示でき、同一分子中のR
1及びR
2における前記アルキル基と同一でもよいし、異なっていてもよい。
【0029】
複数個(20個)のR
3は互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、R
3はすべて同一でもよいし、すべて異なっていてもよく、一部のみ異なっていてもよい。
【0030】
いずれか1個以上のR
3がアルキル基である場合、化合物(I)中での前記アルキル基の位置及び数は、特に限定されない。なかでも、R
3及び酸素原子が結合しているベンゼン環骨格において、4位の炭素原子に結合している(前記酸素原子に対してパラ位の)R
3がアルキル基であることが好ましい。そして、4個の前記ベンゼン環骨格のうち、4位の炭素原子に結合しているR
3がアルキル基であるものの数が2個以上であることが好ましく、3個以上であることがより好ましく、4個の前記ベンゼン環骨格すべてにおいて、4位の炭素原子に結合しているR
3がアルキル基であることが特に好ましい。
【0031】
なお、化合物(I)においては、R
3が結合している4個のベンゼン環骨格は、立体障害が比較的大きいため、隣接する酸素原子との間の結合を軸として回転し難い。例えば、2分子の化合物(I)について、同じ位置のベンゼン環骨格に着目し、このベンゼン環骨格が回転しない場合を考える。一方の化合物(I)は、前記ベンゼン環骨格の2位の炭素原子にR
3としてアルキル基が結合し、その他の炭素原子にはR
3としてすべて水素原子が結合している。これに対して他方の化合物(I)は、前記ベンゼン環骨格の6位の炭素原子にR
3としてアルキル基が結合し、その他の炭素原子にはR
3としてすべて水素原子が結合している。これら化合物(I)は、上記のアルキル基がたとえ同一であったとしても、立体異性体として区別され得る。同様に、前記ベンゼン環骨格の3位の炭素原子にR
3としてアルキル基が結合し、その他の炭素原子にはR
3としてすべて水素原子が結合している化合物(I)と、前記ベンゼン環骨格の5位の炭素原子にR
3としてアルキル基が結合し、その他の炭素原子にはR
3としてすべて水素原子が結合している化合物(I)とは、上記のアルキル基がたとえ同一であったとしても、立体異性体として区別され得る。
なお、ここに挙げたものは一例であり、立体異性体はこれらに限定されない。
【0032】
R
3は、水素原子又は炭素数1〜22のアルキル基であることが好ましく、水素原子又は炭素数6〜18のアルキル基であることがより好ましい。アルキル基の炭素数が6以上であれば、化合物(I)は溶媒への溶解性がより向上する。
【0033】
化合物(I)は、R
1及びR
2が結合している2個のトリフェニレン骨格を有することで、光の吸収ピーク波長が長波長となる。また、蛍光量子収率が大きくなる。
なお、本明細書において、「ピーク波長」とは、光スペクトルの主たるピークの波長を意味し、好ましくはスペクトル強度が最大のピークの波長である。
【0034】
化合物(I)は、後述する製造方法による製造がより容易である点から、2個のトリフェニレン骨格は、互いに同一であることが好ましい。
【0035】
化合物(I)は、光の吸収ピーク波長が、好ましくは650nm以上となり、光の吸収波長が十分に長波長のものである。
【0036】
化合物(I)の光の吸収ピーク波長及び発光のピーク波長は、量子化学計算によって求めることもできる。このとき、汎用の量子化学計算ソフトを用いることができ、このようなものとしては、Gaussian09(Gaussian社製)が例示でき、例えば、計算条件をB3LYP/6−31+g(d)として、光の吸収ピーク波長を求めることができる。ただし、計算条件は、これに限定されるものではない。
【0037】
化合物(I)で好ましいものとしては、1個以上のR
1が水素原子以外の基(アルキル基、アルコキシ基、アリール基又はアリールオキシ基)であるものが例示でき、2個以上のR
1が水素原子以外の基であることが好ましく、4個以上のR
1が水素原子以外の基であることがより好ましく、このような化合物(I)としては、すべて(8個)のR
1が水素原子以外の基であるものが例示できるが、これに限定されない。
【0038】
化合物(I)は、十分に長波長の光を吸収可能で、発光のピーク波長も十分に長波長となる。さらに化合物(I)は、蛍光量子収率が高い。したがって、例えば、後述する太陽光発電装置における蛍光体として化合物(I)を用いることで、かかる太陽光発電装置は発電量に優れたものとなる。また、蛍光プローブとして化合物(I)用いることで、検出感度がより高いものとなる。なお、化合物(I)の用途はこれらに限定されず、蛍光体を用いるすべての分野で、化合物(I)を適用できる。
【0039】
化合物(I)は、例えば、下記一般式(Id)で表される化合物(以下、「化合物(Id)」と略記する)と、下記一般式(Ic)で表される化合物(以下、「化合物(Ic)」と略記する)とを反応させて、下記一般式(Ib)で表される化合物(以下、「化合物(Ib)」と略記する)を得る工程(以下、「化合物(Ib)製造工程」と略記する)、及び化合物(Ib)と、下記一般式(Ia)で表される化合物(以下、「化合物(Ia)」と略記する)とを反応させて、化合物(I)を得る工程(以下、「化合物(I)製造工程」と略記する)を有する製造方法により、製造できる。ただし、ここに挙げた製造方法は一例であり、化合物(I)の製造方法は、これに限定されない。
なお、下記反応式では、化合物(I)として、一般式(IA)及び(IB)で表される化合物がともに生成する例を示しているが、反応条件によっては、いずれか一方のみが生成することもある。
【0040】
【化4】
(式中、R
1、R
2及びR
3は、前記と同じであり;Xはハロゲン原子である。)
【0041】
化合物(Ib)製造工程においては、化合物(Ic)及び(Id)を反応させる。
化合物(Ic)において、R
3は、一般式(IA)及び(IB)におけるR
3と同じである。
化合物(Id)において、Xはハロゲン原子であり、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であることが好ましく、複数個(4個)のXは互いに同一でも異なっていてもよいが、すべて同一であることが好ましい。
【0042】
化合物(Ib)製造工程においては、溶媒を用いて反応を行うことが好ましい。溶媒は、原料となる化合物の溶解性や反応条件等を考慮し、反応を妨げないものから適宜任意に選択でき、具体的な溶媒としては、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド化合物等が例示できる。
また、化合物(Ib)製造工程においては、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等の塩基を用いて反応を行うことが好ましい。
化合物(Ib)製造工程において、化合物(Ic)の使用量は、化合物(Id)に対して4倍モル以上であることが好ましく、4〜8倍モルであることがより好ましい。また、塩基の使用量は、化合物(Ic)に対して1倍モル以上であることが好ましく、1〜6倍モルであることがより好ましい。
化合物(Ib)製造工程における前記反応の反応温度は、50〜180℃であることが好ましく、反応時間は6〜72時間であることが好ましい。
【0043】
化合物(Ib)製造工程において、反応終了後は、公知の手法によって、必要に応じて後処理を行い、化合物(Ib)を取り出せばよい。すなわち、適宜必要に応じて、ろ過、洗浄、抽出、pH調整、脱水、濃縮等の後処理操作をいずれか単独で、又は二種以上組み合わせて行い、濃縮、結晶化、再沈殿、カラムクロマトグラフィー等により、化合物(Ib)を取り出せばよい。また、取り出した化合物(Ib)は、さらに必要に応じて、結晶化、再沈殿、カラムクロマトグラフィー、抽出、溶媒による結晶の撹拌洗浄等の操作をいずれか単独で、又は二種以上組み合わせて一回以上行うことで、精製してもよい。
化合物(Ib)製造工程においては、反応終了後、必要に応じて後処理を行った後、化合物(Ib)を取り出すことなく、引き続き化合物(I)製造工程を行ってもよい。
【0044】
化合物(I)製造工程においては、化合物(Ia)及び(Ib)を反応させる。かかる反応は脱水縮合反応である。
化合物(Ia)において、R
1及びR
2は、一般式(IA)及び(IB)におけるR
1及びR
2と同じである。
化合物(I)製造工程においては、溶媒を用いて反応を行うことが好ましい。溶媒は、原料となる化合物の溶解性や反応条件等を考慮し、反応を妨げないものから適宜任意に選択でき、具体的な溶媒としては、トルエン、フェノール等の芳香族化合物が例示できる。
また、化合物(I)製造工程においては、ピリジン、ピラジン等の塩基を用いて反応を行うことが好ましい。
化合物(I)製造工程において、化合物(Ia)の使用量は、化合物(Ib)に対して2倍モル以上であることが好ましく、4〜5倍モルであることがより好ましい。また、塩基の使用量は、化合物(Ia)に対して1倍モル以上であることが好ましく、1〜4倍モルであることがより好ましい。
化合物(I)製造工程において、反応温度は50〜180℃であることが好ましく、反応時間は6〜72時間であることが好ましい。
反応は、例えば、共沸脱水等により、副生する水を除去しながら行ってもよい。このとき、反応中に適宜溶媒を追加してもよい。
【0045】
化合物(I)製造工程においては、化合物(Ia)及び(Ib)として、それぞれ一種の化合物を使用した場合でも、一般式(IA)及び(IB)で表される2種の化合物(I)が生成し得る。また、化合物(Ia)及び(Ib)の少なくとも一方で、複数種の化合物を使用した場合、複数種の化合物(I)が生成し得る。このように、化合物(I)として複数種のものが生成し、そのうちの一部の種類を使用する場合には、上記の化合物(Ib)の場合と同様の方法で、目的物を分離すればよいし、反応条件を調節することで、目的物の生成率を向上させるようにしてもよい。
【0046】
化合物(I)製造工程において、反応終了後は、化合物(Ib)製造工程の場合と同様の方法で、化合物(I)を取り出せばよく、取り出した化合物(I)をさらに精製してもよい。
【0047】
上記の製造方法において、化合物(Ia)の市販品が入手できない場合には、公知の方法を組み合わせた以下に示す方法で、化合物(Ia)を製造すればよい。
すなわち、化合物(Ia)は、例えば、下記一般式(Iad)で表される化合物(以下、「化合物(Iad)」と略記する)と、下記一般式(Iac)で表される化合物(以下、「化合物(Iac)」と略記する)とを反応させて、下記一般式(Iab)で表される化合物(以下、「化合物(Iab)」と略記する)を得る工程(以下、「化合物(Iab)製造工程」と略記する)、化合物(Iab)を反応させて、下記一般式(Iaa)で表される化合物(以下、「化合物(Iaa)」と略記する)を得る工程(以下、「化合物(Iaa)製造工程」と略記する)、及び化合物(Iaa)を反応させて、化合物(Ia)を得る工程(以下、「化合物(Ia)製造工程」と略記する)を有する製造方法により、製造できる。ただし、ここに挙げた製造方法は一例であり、化合物(Ia)の製造方法は、これに限定されない。
【0048】
【化5】
(式中、R
1及びR
2は、前記と同じである。)
【0049】
化合物(Iab)製造工程においては、化合物(Iac)及び(Iad)を反応させる。
化合物(Iac)及び(Iad)において、R
1及びR
2は、一般式(IA)及び(IB)におけるR
1及びR
2と同じである。
【0050】
化合物(Iab)製造工程においては、溶媒を用いて反応を行うことが好ましい。溶媒は、原料となる化合物の溶解性や反応条件等を考慮し、反応を妨げないものから適宜任意に選択でき、具体的な溶媒としては、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素等が例示できる。
また、化合物(Iab)製造工程においては、塩化鉄(III)を用いて反応を行うことが好ましい。
化合物(Iab)製造工程において、化合物(Iad)の使用量は、化合物(Iac)に対して1倍モル以上であることが好ましく、1〜6倍モルであることがより好ましい。
また、塩化鉄(III)の使用量は、化合物(Iac)に対して2倍モル以上であることが好ましく、2〜12倍モルであることがより好ましい。
化合物(Iab)製造工程における前記反応の反応温度は、5〜40℃であることが好ましく、反応時間は0.5〜10時間であることが好ましい。
化合物(Iab)製造工程において、反応終了後は、化合物(Ib)製造工程の場合と同様の方法で、化合物(Iab)を取り出せばよく、取り出した化合物(Iab)をさらに精製してもよい。また、反応終了後、必要に応じて後処理を行った後、化合物(Iab)を取り出すことなく、引き続き次の製造工程を行ってもよい。
【0051】
化合物(Iaa)製造工程においては、化合物(Iab)から化合物(Iaa)を得る。そのためには、例えば、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素を反応溶媒として用い、臭素(Br
2)を用いて、好ましくは−10〜5℃、好ましくは0.5〜10時間の条件で反応を行う。
化合物(Iaa)製造工程において、臭素の使用量は、化合物(Iab)に対して2倍モル以上であることが好ましく、2〜8倍モルであることが好ましい。
化合物(Iaa)製造工程において、反応終了後は、化合物(Ib)製造工程の場合と同様の方法で、化合物(Iaa)を取り出せばよく、取り出した化合物(Iaa)をさらに精製してもよい。また、反応終了後、必要に応じて後処理を行った後、化合物(Iaa)を取り出すことなく、引き続き次の製造工程を行ってもよい。
【0052】
化合物(Ia)製造工程においては、化合物(Iaa)から化合物(Ia)を得る。そのためには、アミノ化反応を行えばよく、例えば、「J.Am.Chem.Soc.,2009,131,7287」等に記載されている方法が適用できる。すなわち、まず、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下、化合物(Iaa)に対して、トルエン等の芳香族炭化水素を反応溶媒として用い、ナトリウムtert−ブトキシド、カリウムtert−ブトキシド等の塩基(強塩基)と、ベンゾフェノンイミン(HN=C(C
6H
5)
2)と、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(Pd
2(dba)
3)等のパラジウム触媒と、(±)−2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル等の不斉配位子等を用いて反応を行い、2個の臭素原子(−Br)を式「−N=C(C
6H
5)
2」で表される基に変換する。塩基及びベンゾフェノンイミンの使用量は、それぞれ独立に化合物(Iaa)に対して2倍モル以上であることが好ましく、2〜4倍モルであることが好ましい。また、パラジウム触媒及び不斉配位子の使用量は、それぞれ独立に化合物(Iaa)に対して0.002〜0.2倍モルであることが好ましい。そして、好ましくは加熱還流条件下で、好ましくは2〜20時間の条件で反応を行う。
次いで、得られた中間体に対して、テトラヒドロフラン等のエーテル化合物を反応溶媒として用い、塩酸等の酸を用いて酸処理を行い、2個の式「−N=C(C
6H
5)
2」で表される基をアミノ基(−NH
2)に変換する。酸の使用量は、前記中間体に対して2倍モル以上であることが好ましく、2〜4倍モルであることが好ましい。
化合物(Ia)製造工程において、反応終了後は、化合物(Ib)製造工程の場合と同様の方法で、前記中間体又は化合物(Ia)を取り出せばよく、取り出した前記中間体又は化合物(Ia)をさらに精製してもよい。また、反応終了後、必要に応じて後処理を行った後、前記中間体又は化合物(Ia)を取り出すことなく、引き続き次の製造工程を行ってもよい。
【0053】
上記の方法では、使用する化合物(Iab)の種類によっては、化合物(Iac)又は(Iad)として、所望のR
1又はR
2を有する市販品が入手できないことがある。そのような場合には、本来使用すべき化合物(Iac)又は(Iad)に代えて、R
1又はR
2が所望のもの以外の基であるか、あるいはR
1又はR
2がその他の基で置換されている、目的外の基を有する、異なる化合物を原料として使用し、前記目的外の基を所望のR
1又はR
2に変換する工程を有する製造方法により、化合物(Iab)を製造すればよい。
以下、所望のR
1を有する化合物(Iac)及び(Iad)が入手できない場合に、化合物(Iab)を製造する方法について説明する。
【0054】
すなわち、化合物(Iab)は、例えば、下記一般式(Iabd)で表される化合物(以下、「化合物(Iabd)」と略記する)と、下記一般式(Iabc)で表される化合物(以下、「化合物(Iabc)」と略記する)とを反応させて、下記一般式(Iabb)で表される化合物(以下、「化合物(Iabb)」と略記する)を得る工程(以下、「化合物(Iabb)製造工程」と略記する)、化合物(Iabb)を反応させて、下記一般式(Iaba)で表される化合物(以下、「化合物(Iaba)」と略記する)を得る工程(以下、「化合物(Iaba)製造工程」と略記する)、及び化合物(Iaba)を反応させて、化合物(Iab)を得る工程(以下、「化合物(Iab)製造工程(2)」と略記する)を有する製造方法により、製造できる。ここで、化合物(Iabd)は化合物(Iad)の一種であり、化合物(Iabc)は化合物(Iac)の一種である。ただし、ここに挙げた製造方法は一例であり、化合物(Iab)の製造方法は、これに限定されない。
【0055】
【化6】
(式中、R
1及びR
2は、前記と同じである。)
【0056】
化合物(Iabb)製造工程においては、化合物(Iabc)及び(Iabd)を反応させる。化合物(Iabb)製造工程は、化合物(Iac)及び(Iad)に代えて、化合物(Iabc)及び(Iabd)を使用すること以外は、化合物(Iab)製造工程と同様の方法で行うことができる。
【0057】
化合物(Iaba)製造工程においては、化合物(Iabb)から化合物(Iaba)を得る。そのためには、例えば、酢酸等の有機酸を反応溶媒として用い、臭化水素(HBr)を用いて、好ましくは加熱還流条件下で、好ましくは2〜20時間の条件で反応を行う。
化合物(Iaba)製造工程において、臭化水素の使用量は、化合物(Iabb)に対して大過剰量であることが好ましく、例えば、10〜100倍モルであることが好ましい。
化合物(Iaba)製造工程において、反応終了後は、化合物(Ib)製造工程の場合と同様の方法で、化合物(Iaba)を取り出せばよく、取り出した化合物(Iaba)をさらに精製してもよい。また、反応終了後、必要に応じて後処理を行った後、化合物(Iaba)を取り出すことなく、引き続き次の製造工程を行ってもよい。
【0058】
化合物(Iab)製造工程(2)においては、化合物(Iaba)から化合物(Iab)を得る。そのためには、例えば、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド化合物等を反応溶媒として用い、一般式「R
1−Br(式中、R
1は前記と同じである。)」で表される臭化物と、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等の塩基とを用いて、好ましくは50〜140℃、好ましくは1〜24時間の条件で反応を行う。
化合物(Iab)製造工程(2)において、前記臭化物の使用量は、化合物(Iaba)に対して4倍モル以上であることが好ましく、4〜8倍モルであることが好ましい。また、塩基の使用量は、前記臭化物に対して1倍モル以上であることが好ましく、1〜3倍モルであることがより好ましい。
化合物(Iab)製造工程(2)において、反応終了後は、化合物(Ib)製造工程の場合と同様の方法で、化合物(Iab)を取り出せばよく、取り出した化合物(Iab)をさらに精製してもよい。また、反応終了後、必要に応じて後処理を行った後、化合物(Iab)を取り出すことなく、引き続き次の製造工程を行ってもよい。
【0059】
なお、ここでは、化合物(Iabc)及び(Iabd)として、メチルエーテル化合物を使用した場合について説明したが、メチルエーテル以外の他のエーテル化合物を使用してもよい。
【0060】
また、ここでは、化合物(Iac)及び(Iad)として、所望のR
1を有する市販品が入手できない場合に、R
1が所望のもの以外の基である、異なる化合物を原料として使用し、前記基を所望のR
1に変換する工程を有する製造方法により、化合物(Iab)を製造する方法について説明したが、化合物(Iac)及び(Iad)として、所望のR
2を有する市販品が入手できない場合、並びに所望のR
1及びR
2を有する市販品が入手できない場合にも、同様の手法で、化合物(Iab)を製造できる。
【0061】
上記の製造方法における化合物(Iac)としては、公知の方法に従って、以下の製造方法で得られたものを用いることもできる。
すなわち、鈴木・宮浦カップリングを利用する場合であれば、化合物(Iac)は、例えば、下記一般式(Iaca)で表される化合物(以下、「化合物(Iaca)」と略記する)と、下記一般式(Iacb)で表される化合物(以下、「化合物(Iacb)」と略記する)とを反応させて、化合物(Iac)を得る工程(以下、「化合物(Iac)製造工程」と略記する)を有する製造方法により、製造できる。ただし、ここに挙げた製造方法は一例であり、化合物(Iac)の製造方法は、これに限定されない。
【0062】
【化7】
(式中、R
1及びR
2は、前記と同じである。)
【0063】
化合物(Iac)製造工程においては、化合物(Iaca)及び(Iacb)を反応させる。
化合物(Iaca)及び(Iacb)において、R
1及びR
2は、一般式(IA)及び(IB)におけるR
1及びR
2と同じである。
【0064】
化合物(Iac)製造工程においては、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下、トルエン等の芳香族炭化水素と水との混合溶媒を反応溶媒として用い、反応を行うことが好ましい。
また、化合物(Iab)製造工程においては、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等の塩基と、PdCl
2(PPh
3)
2等のパラジウム触媒と、を用いて反応を行うことが好ましい。
化合物(Iac)製造工程において、化合物(Iacb)の使用量は、化合物(Iaca)に対して1倍モル以上であることが好ましく、1〜3倍モルであることがより好ましい。また、塩基の使用量は、化合物(Iaca)に対して1〜6倍モルであることが好ましい。また、パラジウム触媒の使用量は、化合物(Iaca)に対して0.005〜0.05倍モルであることが好ましい。
化合物(Iac)製造工程においては、好ましくは加熱還流条件下で、好ましくは2〜20時間の条件で反応を行う。
化合物(Iac)製造工程において、反応終了後は、化合物(Ib)製造工程の場合と同様の方法で、化合物(Iac)を取り出せばよく、取り出した化合物(Iac)をさらに精製してもよい。また、反応終了後、必要に応じて後処理を行った後、化合物(Iac)を取り出すことなく、引き続き次の製造工程を行ってもよい。
【0065】
上記の製造方法における化合物(Id)としては、公知の方法に従って、例えば以下に示すような、化合物(Id)を得る工程(以下、「化合物(Id)製造工程」と略記する)で得られたものを用いることもできる。
すなわち、化合物(Id)は、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物と、クロロ硫酸等のクロロ化剤と、ヨウ素(I
2)と、を混合して反応させることで得られる。
クロロ化剤の使用量は、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物に対して大過剰量であることが好ましく、例えば、10〜50倍モルであることが好ましい。また、ヨウ素の使用量は、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物に対して0.02〜0.8倍モルであることが好ましい。
前記反応の反応温度は、40〜100℃であることが好ましく、反応時間は0.2〜10時間であることが好ましい。
反応終了後は、化合物(Ib)製造工程の場合と同様の方法で、化合物(Id)を取り出せばよく、取り出した化合物(Id)をさらに精製してもよい。また、反応終了後、必要に応じて後処理を行った後、化合物(Id)を取り出すことなく、引き続き次の製造工程を行ってもよい。
【0066】
上記の製造方法においては、必要に応じて化合物(Id)において、そのカルボン酸無水物部位(−C(=O)−O−C(=O)−)を他の構造に変換した(保護した)後、この化合物と化合物(Ic)とを反応させ、次いで、得られた化合物において、上記の変換部位を元のカルボン酸無水物部位に戻す(脱保護する)方法によって、化合物(Ib)を得てもよい。
このように化合物(Ib)を得る方法としては、化合物(Id)を反応させて、下記一般式(Ibb)で表される化合物(以下、「化合物(Ibb)」と略記する)を得る工程(以下、「化合物(Ibb)製造工程」と略記する)、化合物(Ibb)と、化合物(Ic)とを反応させて、下記一般式(Iba)で表される化合物(以下、「化合物(Iba)」と略記する)を得る工程(以下、「化合物(Iba)製造工程」と略記する)、及び化合物(Iba)を反応させて、化合物(Ib)を得る工程(以下、「化合物(Ib)製造工程(2)」と略記する)を有する方法が例示できるが、これに限定されない。
【0067】
【化8】
(式中、R
3及びXは、前記と同じであり;R
9はアルキル基である。)
【0068】
化合物(Ibb)製造工程においては、化合物(Id)から化合物(Ibb)を得る。
化合物(Ibb)において、Xは、一般式(Id)におけるXと同じである。
【0069】
化合物(Ibb)製造工程においては、例えば、プロピオン酸等の有機酸を反応溶媒として用い、一般式「R
9−NH
2(式中、R
9はアルキル基である。)」で表されるアミン化合物を用いて、好ましくは100〜180℃、好ましくは6〜72時間の条件で反応を行う。
R
9におけるアルキル基としては、R
1及びR
2における前記アルキル基と同様のものが例示でき、炭素数が3〜10であることが好ましく、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましく、直鎖状であることがより好ましい。
化合物(Ibb)製造工程において、前記アミン化合物の使用量は、化合物(Id)に対して2倍モル以上であることが好ましく、2〜6倍モルであることが好ましい。
化合物(Ibb)製造工程において、反応終了後は、化合物(Ib)製造工程の場合と同様の方法で、化合物(Ibb)を取り出せばよく、取り出した化合物(Ibb)をさらに精製してもよい。また、反応終了後、必要に応じて後処理を行った後、化合物(Ibb)を取り出すことなく、引き続き次の製造工程を行ってもよい。
【0070】
化合物(Iba)製造工程においては、化合物(Ibb)及び(Ic)を反応させる。
化合物(Iba)製造工程は、化合物(Id)に代えて、化合物(Ibb)を使用すること以外は、化合物(Ib)製造工程と同様の方法で行うことができる。
【0071】
化合物(Ib)製造工程(2)においては、化合物(Iba)から化合物(Ib)を得る。そのためには、例えば、エタノール、2−プロパノール等のアルコールを反応溶媒として用い、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基と、水等を用いて、好ましくは加熱還流条件下で、好ましくは24〜120時間の条件で反応を行う。
化合物(Ib)製造工程(2)において、塩基の使用量は、化合物(Iba)に対して大過剰量であることが好ましく、例えば、10〜150倍モルであることが好ましい。
化合物(Ib)製造工程(2)において、反応終了後は、化合物(Ib)製造工程の場合と同様の方法で、化合物(Ib)を取り出せばよく、取り出した化合物(Ib)をさらに精製してもよい。また、反応終了後、必要に応じて後処理を行った後、化合物(Ib)を取り出すことなく、引き続き次の製造工程を行ってもよい。
【0072】
化合物(I)、化合物(Ib)等の各工程の生成物は、例えば、核磁気共鳴(NMR)分光法、質量分析法(MS)、赤外分光法(IR)、紫外・可視分光法(UV−VIS吸収スペクトル)等、公知の手法で構造を確認できる。
【0073】
<太陽電池モジュール>
本発明に係る太陽電池モジュールは、前記化合物(I)を用いたことを特徴とし、化合物(I)に太陽光を吸収させ、生じた化合物(I)からの放射光を集光して、これを太陽電池素子に導入する構成のものが例示できる。
このような太陽電池モジュールで好ましいものとしては、光入射面及び該光入射面よりも面積が小さい光射出面を有する導光体、並びに前記光射出面からの射出光を受光して、電力を発生する太陽電池素子を備え、前記導光体は、さらに化合物(I)を含み、前記光入射面からの入射光が化合物(I)に吸収されて生じた化合物(I)からの放射光を、前記射出光とすることを特徴とするものが例示できる。
本発明に係る太陽電池モジュールは、化合物(I)を用いたことで、発電量に優れる。
以下、本発明に係る太陽電池モジュールについて、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の図面においては、各構成要素を認識可能な大きさとするために、各構成要素の縮尺を適宜変更している。
【0074】
図1は、本発明に係る太陽電池モジュールの一実施形態の概略構成を模式的に示す図であり、
図2は、かかる太陽電池モジュールの断面図である。
【0075】
図1に示す太陽電池モジュール1は、太陽Sに対向して設置された矩形板状の集光板2と、集光板2の端面に設けられた太陽電池素子3と、集光板2の背面側に設けられた反射板(反射体)4と、枠体5とを備えて構成されたものである。
集光板2は、太陽電池素子3に射出光を導入する導光体である。そして、太陽電池素子3は、集光板2の第1端面2cから射出された射出光を受光する。枠体5は、集光板2と太陽電池素子3とを一体に保持する。
【0076】
集光板2は、
図1〜2に示すように光入射面となる主面2aと、主面2aと反対の側の背面2bと、光射出面となる前記第1端面2cと、その他の端面とを備えている。本実施形態では、第1端面2c以外の端面には反射層6が設けられている。
集光板2において、第1端面2cは、主面2aよりも面積が小さく、このようにすることで、太陽電池素子3への集光効率が高まり、太陽電池モジュール1の発電量がより増大する。
【0077】
集光板2は、
図2に示すように、透明基材7中に、蛍光体8が分散されたものである。
透明基材7は、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等のアクリル樹脂や、ポリカーボネート等の透明性が高い有機材料;ガラス等の透明性が高い無機材料等からなる。
【0078】
透明基材7としては、外光を有効に取り込めるように、360〜800nmの波長領域の光に対して好ましくは90%以上、より好ましくは93%以上の透過率を有するものが例示できる。そして、広い波長領域の光の透過率が高い点から、好ましい透明基材7としては、PMMA等のアクリル樹脂からなる基板、シリコン樹脂基板、石英基板等が例示できる。
【0079】
本実施形態においては、蛍光体8として、前記化合物(I)を用いる。
蛍光体8は、透明基材7中にほぼ均一に分散している。
化合物(I)は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0080】
蛍光体8としては、化合物(I)以外に、公知のその他の蛍光体を併用してもよい。
化合物(I)以外の蛍光体としては、紫外光又は可視光を吸収して、可視光又は赤外光を発光し、放射する光機能材料が例示できる。なお、可視光とは、380〜750nmの波長領域の光であり、紫外光とは、380nm未満の波長領域の光であり、赤外光とは、750nmよりも大きい波長領域の光である。
【0081】
化合物(I)以外の蛍光体は、無機蛍光体及び有機蛍光体のいずれでもよい。
前記有機蛍光体としては、クマリン系色素、ペリレン系色素、フタロシアニン系色素、スチルベン系色素、シアニン系色素、ポリフェニレン系色素,キサンテン系色素,ピリジン系色素、オキサジン系色素、クリセン系色素、チオフラビン系色素、ピレン系色素、アントラセン系色素、アクリドン系色素、アクリジン系色素、フルオレン系色素、ターフェニル系色素、エテン系色素、ブタジエン系色素、ヘキサトリエン系色素、オキサゾール系色素、ジフェニルメタン系色素、トリフェニルメタン系色素、チアゾール系色素、チアジン系色素、ナフタルイミド系色素、アントラキノン系色素等が例示できる。
前記有機蛍光体として、より具体的には、3−(2’−ベンゾチアゾリル)−7−ジエチルアミノクマリン(クマリン6)、3−(2’−ベンゾイミダゾリル)−7−N,N−ジエチルアミノクマリン(クマリン7)、3−(2’−N−メチルベンゾイミダゾリル)−7−N,N−ジエチルアミノクマリン(クマリン30)、2,3,5,6−1H,4H−テトラヒドロ−8−トリフルオロメチルキノリジン(9,9a,1−gh)クマリン(クマリン153)等のクマリン系色素;クマリン色素系染料であるベーシックイエロー51;ソルベントイエロー11、ソルベントイエロー116等のナフタルイミド系色素;ローダミンB、ローダミン6G、ローダミン3B、ローダミン101、ローダミン110、スルホローダミン、ベーシックバイオレット11、ベーシックレッド2等のローダミン系色素;1−エチル−2−〔4−(p−ジメチルアミノフェニル)−1,3−ブタジエニル〕ピリジニウム−パークロレート(ピリジン1)等のピリジン系色素;シアニン系色素:オキサジン系色素等が例示できる。
さらに、これら以外でも、直接染料、酸性染料、塩基性染料及び分散染料等の各種染料で、蛍光性を有するものも使用可能である。
【0082】
前記無機蛍光体としては、GdBO
3:Eu、Gd
2O
3:Eu、Gd
2O
2S:Eu、Gd
3Al
5O
12:Eu、Gd
3Ga
5O
12:Eu、GdVO
4:Eu、Gd
3Ga
5O
12:Ce,Cr、Y
2O
3:Eu、Y
2O
2S:Eu、La
2O
3:Eu、La
2O
2S:Eu、InBO
3:Eu、(Y,In)BO
3:Eu等の赤色発光の蛍光体;Gd
2O
3:Tb、Gd
2O
2S:Tb、Gd
2O
2S:Pr、Gd
3Al
5O
12:Tb、Gd
3Ga
5O
12:Tb、Y
2O
3:Tb、Y
2O
2S:Tb、Y
2O
2S:Tb,Dy、La
2O
2S:Tb、ZnS:Cu、ZnS:Cu,Au、Zn
2SiO
4:Mn、InBO
3:Tb、MgGa
2O
4:Mn等の緑色発光の蛍光体;YAlO
3:Ce、Y
2SiO
5:Ce、Gd
2SiO
5:Ce、YTaO
4:Nb、BaFCl:Eu、ZnS:Ag、CaWO
4、CdWO
4、ZnWO
4、MgWO
4、Sr
5(PO
4)
3Cl:Eu、YPO
4:Cl等の青色発光の蛍光体が例示できる。
【0083】
化合物(I)以外の蛍光体は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0084】
蛍光体8を二種以上併用する場合、これら蛍光体8の間でフェルスター機構によるエネルギー移動を生じさせ、最も発光スペクトルのピーク波長の大きい蛍光体8から放射された光を、太陽電池素子3への射出光とするように構成してもよい。この場合、併用する複数種の蛍光体8のうちの一種以上として、化合物(I)を用いることができ、いずれを化合物(I)とするかは、任意に選択できる。
【0085】
フェルスター機構は、光の発生及び吸収のプロセスを経ずに、近接した2つの蛍光体の間で励起エネルギーが電子の共鳴により直接移動するものである。フェルスター機構による蛍光体間のエネルギー移動は、光の発生及び吸収のプロセスを介さずに行われるため、最適条件では、エネルギー移動効率はほぼ100%にすることが可能であり、エネルギーのロスが小さい。よって、太陽電池モジュールの発電効率の向上に寄与する。エネルギーのロスを抑制して効率よく発電を行うためには、例えば、併用する蛍光体8の透明基材7中での密度を高くすればよい。
【0086】
また、フェルスター機構によるエネルギー移動は、蛍光体のような発光材料だけでなく、外光によって励起されるが、光を発生せずに失活する非発光体においても生じる。したがって、蛍光体8以外に、このような非発光体を光機能性材料として、透明基材7中に分散させてもよい。
【0087】
透明基材7中の蛍光体8の総量に占める化合物(I)の比率は、太陽電池素子3への集光効率が高まり、太陽電池モジュール1の発電量がより増大することから、5質量%以上であることが好ましく、化合物(I)と併用するその他の蛍光体の数や光の吸収ピーク波長等に応じて、適宜調節することが好ましい。
【0088】
透明基材7中に蛍光体8が分散されてなる集光板2は、例えば、透明基材7を構成する原料モノマーと、蛍光体8と、を含有する樹脂組成物を調製し、蛍光体8を分散させた状態で、該樹脂組成物を硬化させることで得られる。樹脂組成物の硬化方法は、原料モノマーの種類に応じて選択すればよい。
集光板2において、蛍光体8の含有量は、透明基材7に対して好ましくは0.001〜0.04質量%である。下限値以上であることで、集光板2における太陽光の吸収量が向上し、太陽電池モジュール1の発電量がより増大する。また、上限値以下であることで、太陽電池素子3への集光効率が向上し、太陽電池モジュール1の発電量がより増大する。
【0089】
集光板2の主面2aと背面2bとは、互いに平行で且つ平坦な面となっている。集光板2の第1端面2c以外の全ての端面には、集光板2の内部から外部に向けて進行する光(蛍光体8から放射された光)を、集光板2の内部に向けて反射する反射層6が、空気層を介して又は空気層を介さずに直接接触して設けられている。
【0090】
反射層6としては、銀、アルミニウム等の金属の膜からなる反射層;ESR(Enhanced Specular Reflector)反射フィルム(3M社製)等の誘電体多層膜からなる反射層等が例示できる。また、反射層は、入射した光を鏡面反射する鏡面反射層でもよく、入射した光を散乱反射する散乱反射層でもよい。反射層に散乱反射層を用いた場合には、太陽電池素子3の方向に直接向かう光の光量が増えるため、太陽電池素子3への集光効率が高まり、太陽電池モジュール1の発電量がより増大する。また、反射光が散乱されるため、時間や季節による発電量の変化が平均化される。なお、散乱反射層としては、マイクロ発泡PET(ポリエチレンテレフタレート)(古河電工社製)等からなるものが例示できる。
【0091】
反射板4は、形状が異なる点以外は、反射層6と同様のものとすることができる。
また、反射板4は、太陽Sからの光(太陽光L)のうち、集光板2に入射した入射光L1の一部を、集光板2の主面2aの法線に対して入射光L1(太陽光L)の入射光路側の所定方向に反射光として反射するものとすることもできる。
反射板4を設けることにより、太陽電池素子3への集光効率が高まり、太陽電池モジュール1の発電量がより増大する。
【0092】
入射光L1の一部を、前記所定方向に反射光として反射する反射板4としては、再帰性反射板、オフアクシス反射板が例示できる。
【0093】
再帰性反射板としては、樹脂からなる基材の表面上に空気層を介して、3つの平面を形成したプリズム形状を多数有するプリズム層(コーナーキューブアレイ)を有したものが例示でき、市販品としては、ハイ・インテンシティグレードHIP高輝度反射シート、ダイヤモンドグレードDG超高輝度反射シート(以上、3M社製)、プリズム型超高輝度再帰反射シート(日本カーバイド工業社製)等が例示できる。
また、再帰性反射板としては、入射した光をガラスビーズで屈折させ、裏側の反射層にて反射させて再び入射した方向に帰るように構成されたものも例示でき、市販品としては、エンジニアグレードEGP普通反射シート(3M社製)、封入レンズ型再帰反射シート、カプセルレンズ型再帰反射シート(以上、日本カーバイド工業社製)等が例示できる。
【0094】
オフアクシス反射板としては、例えば、アクリル板等の基板の一方の面にプリズム形状が付与され、このプリズム面にアルミニウム又は銀等の反射性材料が蒸着されて反射面とされ、さらにその表面に透明保護層がコーティングされて形成されたもの、4分の1波長の光学膜厚毎に、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層して誘電体の多層膜とし、この多層膜を所定の角度でスライスして(切り出して)得られた、誘電体多層膜からなるもの、透明基材中にて反射性板状粒子が所定方向に向けて整列配置されたものが例示できる。
【0095】
太陽電池素子3は、受光面が集光板2の第1端面2cに対向して配置されており、第1端面2cと光学接着されていることが好ましい。
【0096】
太陽電池素子3は、公知のものでよく、シリコン系太陽電池、化合物系太陽電池、量子ドット太陽電池、有機系太陽電池等が例示できる。これらの中でも、太陽電池素子3は、より高い効率で発電できることから、化合物半導体を用いた化合物系太陽電池又は量子ドット太陽電池であることが好ましい。
前記化合物系太陽電池としては、InGaP、GaAs、InGaAs,AlGaAs、Cu(In,Ga)Se
2、Cu(In,Ga)(Se,S)
2、CuInS
2、CdTe、CdS等を用いたものが例示できる。
前記量子ドット太陽電池としては、Si、InGaAs等を用いたものが例示できる。
ただし、価格や用途によっては、シリコン系太陽電池、有機系太陽電池等の他の種類の太陽電池が好ましい場合もある。
【0097】
なお、
図1〜2では、太陽電池素子3を集光板2の一つの第1端面2cのみに設置した例を示したが、太陽電池素子3は集光板2の複数の端面に設置してもよい。太陽電池素子3を集光板2の一部の端面(1辺、2辺又は3辺)に設置する場合には、太陽電池素子3が設置されていない端面に、反射層6を設置することが好ましい。
【0098】
図2に示すように枠体5は、アルミニウム等のフレームからなり、集光板2の主面2aを外部に臨ませ、その状態で集光板2の四周を保持するとともに、太陽電池素子3も集光板2とともに保持している。集光板2の主面2aを外部に臨ませる開口部5aには、ガラス等の透明部材が嵌め込まれていてもよい。このような構成のもとに集光板2は、枠体5から外部に臨む主面2aが光入射面となっており、集光板2の第1端面2cが光射出面となっている。また、主面2aから入射した外光(太陽光)の一部は、背面2bを透過して反射板4に入射するようになっている。
【0099】
太陽電池モジュール1は、
図1〜2に示したように、集光板2の主面2aを太陽Sに対向させて設置される。そして、太陽電池モジュール1は、太陽Sからの光(太陽光L)の一部を入射光L1として集光板2の主面2aで受光し、集光板2中の蛍光体8に入射光L1が吸収され、蛍光体8が発光する。このとき生じた蛍光体8からの放射光は、集光板2の透明基材7中を伝播し、第1端面2cから射出され、太陽電池素子3に導入される。このように、前記射出光を受光することで、太陽電池素子3は電力を発生する。
【0100】
なお、本実施形態では、集光板2として、透明基材7中に蛍光体8が分散されたものを示したが、集光板はこのような構成に限定されず、例えば、
図3A又は
図3Bに示す構成のものでもよい。
【0101】
図3Aに示す集光板は、アクリル板等からなる板状の透明基材7の表面に、蛍光体(図示せず)を分散させた塗料を塗布し、蛍光体層26を形成したものである。前記塗料は、蛍光体とこれを分散させる透明樹脂とを含有するものである。すなわち、この塗料中の透明樹脂が、蛍光体を均一に分散させる透明基材となる。
【0102】
図3Bに示す集光板は、前記蛍光体層26の表面(透明基材7とは反対側の表面)に、さらに透明保護層(透明層)27を設けたものである。
透明保護層27の材質としては、各種の透明樹脂が例示できる。例えば、透明保護層27は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニリデン又はポリアミド等からなる透明樹脂フィルムを、蛍光体層26上にラミネートすることで形成できる。また、透明保護層27は、酢酸セルロース、エチルセルロース、セルロースアセテートブチレート等のセルロース誘導体や、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、ポリカーボネート、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルホルマール、ポリウレタン等の透明樹脂を溶解させた塗布液を調製し、これを蛍光体層26上に塗布した後、乾燥させることによっても形成できる。
【0103】
また、本実施形態の太陽電池モジュール1は、建物の平面からなる側壁面に設置するものとして、
図4Aに示すような、平板状の集光板2及び平板状の反射板(反射体)4を用い、これによって全体を平板状に構成したものであるが、太陽電池モジュールは、設置面の形状等に応じて、全体形状を調節してもよい。
【0104】
このような平板状以外の太陽電池モジュールとしては、表面が曲面状である建物の壁面に対応させて、
図4Bに示すように、全体を湾曲させた曲板状のものが例示できる。
この場合、集光板2としては、
図3A、
図3Bに示したような、透明基材の表面に蛍光体を分散させた塗料を塗布し、蛍光体層を形成したものが好ましい。透明基材を所望の湾曲形状(曲板状)に形成しておくことで、その表面に所望の湾曲形状の蛍光体層を形成できる。また、反射板としては、基板を所望の湾曲形状(曲板状)に形成し、その表面上に再帰性シートを貼設したものが例示できる。
【0105】
なお、上記の曲板状の集光板を、建物の平板状の壁面に設置してもよい。この場合の反射板は、上記と同様に曲板状でもよいし、平板状でもよい。
また、太陽電池モジュールは、建物の屋根や柱、電柱等にも設置できる。例えば、屋根に設置する場合には、
図4Bに示した曲板状のものと同様の手法で、集光板や反射板を瓦状や波状等に形成し、太陽電池モジュール全体を瓦状や波状等に形成すればよい。
【0106】
また、電柱等の柱に設置する場合には、
図4Cに示すように中空円柱状(円筒状)の集光板2と、その内周面側に配置された中空円柱状(円筒状)の反射体4と、集光板2の端面に配置された中空円柱状(円筒状)又はリング状の太陽電池素子3とを備えた、全体が中空円柱状(円筒状)の太陽電池モジュールを形成し、これを柱に外挿して設置するのが好ましい。なお、中空部の形状は、ここでは、その軸に対して垂直な方向の形状が円形の場合について例示しているが、外挿する対象物の形状に応じて適宜調節すればよく、円形に限定されるものではない。
【0107】
また、
図4Dに示すように円柱状の集光部材2eを平面状に並べて見かけ上板状体、すなわち集光板2として設置してもよい。集光部材2eの一方の端面(端部)には、太陽電池素子3が配置されている。さらに、集光部材2eを柔軟に互いに連結させることで、平面でない曲面などに自由に形を変えて設置することもできる。また、すだれのような形状に構成することで、必要なときに展開して集光を行い、必要でないときには巻き取って収納するなどの調整も可能である。
【0108】
また、本発明における集光板としては、
図5Aに示すようなプリズム形状を有する集光板28を用いてもよい。この集光板28は、光入射面となる主面28aと反対側の背面に、プリズム面29を有するものである。プリズム面29は、
図5Bに示すように一方の端面側に向くスロープ面29aを多数形成したもので、入射した光L1がこのスロープ面29aにて屈折することにより、
図5Aに示すように一方の端面側に配置された太陽電池素子3に射出されるようになっている。また、このような光L1と同様に伝播する蛍光体8からの放射光も、同様に太陽電池素子3に射出されるようになっている。
【0109】
さらに、本発明における集光板としては、
図5Cに示すように、プリズム面29を有し、且つ厚さが太陽電池素子3から遠ざかるにつれて徐々に薄くなるように形成された、クサビ形状の集光板30を用いてよい。このように形成されることで集光板30は、入射した光L1及び蛍光体8からの放射光が、その内部を全反射する回数が減り、光がスロープ面29aで屈折されることにより生じる光のロスが低減する。したがって、光の取り出し効率が高くなる。
【0110】
また、本発明における集光板としては、
図5Dに示すように、前記集光板2と、プリズム形状を有する形状集光板28(30)とを積層したタンデム構造としたものも例示できる。この場合、プリズム形状を有する形状集光板28(30)は、化合物(I)を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。
【0111】
<太陽光発電装置>
本発明に係る太陽光発電装置は、上記の本発明に係る太陽電池モジュールを備えたことを特徴とする。
図6は、本発明に係る太陽光発電装置の一実施形態の概略構成図である。
ここに示す太陽光発電装置1000は、太陽Sからの太陽光のエネルギーを電力に変換する太陽電池モジュール1001と、太陽電池モジュール1001から出力された直流電力を交流電力に変換するインバータ(直流/交流変換器)1004と、太陽電池モジュール1001から出力された直流電力を蓄える蓄電池1005と、を備えている。
【0112】
太陽電池モジュール1001は、上記の本発明に係る太陽電池モジュールであり、太陽光を集光する集光部材(集光板)1002と、集光部材1002によって集光された太陽光によって発電を行う太陽電池素子1003とを備えている。
【0113】
太陽光発電装置1000は、外部の電子機器1006に対して電力を供給する。電子機器1006には、必要に応じて補助電力源1007から電力が供給される。
このような構成の太陽光発電装置1000は、上記の本発明に係る太陽電池モジュールを備えているため、発電量に優れる。
【実施例】
【0114】
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0115】
<化合物(I)の製造>[実施例1]
下記手順に従い、化合物(I)として、下記式(1A)−101及び(1B)−101で表される化合物(以下、それぞれ「化合物(1A)−101」、「化合物(1B)−101」と略記する)を製造した。
【0116】
(化合物(Iac)製造工程)
2000ml三つ口フラスコに、アルゴンガス気流下、フェニルボロン酸(56g、0.46mol)、4−ブロモ−1,2−ジメトキシベンゼン(50g、0.23mol)、炭酸ナトリウム(117g、1.10mol)、PdCl
2(PPh
3)
2(5.0g、6.2mmol)、トルエン(1000ml)、水(930ml)を仕込んだ。
次いで、反応液を還流するまで昇温し、9時間撹拌して反応させた。
反応終了後、反応液を室温まで冷却し、不溶物をセライトろ過により除去した。そして、ろ液を分液して、有機層を水(500ml)で2回洗浄し、さらに飽和食塩水(500ml)で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムを用いて有機層を脱水し、活性炭ろ過を行った。そして、得られたろ液を濃縮した後、エタノールを加えて晶析し、結晶をろ取して乾燥させることにより、化合物(Iac)として下記式(1)−101acで表される化合物(以下、「化合物(1)−101ac」と略記する)を得た(収量26g、収率52.8%)。
化合物(1)−101acが得られたことは、NMR測定及びIR測定により確認した。なお、化合物(1)−101acは、化合物(Iabc)にも該当するものである。
【0117】
【化9】
【0118】
(化合物(Iabb)製造工程)
2000ml三つ口フラスコに、1,2−ジメトキシベンゼン(50g、0.36mol)、化合物(1)−101ac(19.3g、0.09mol)、塩化鉄(III)(117g、0.72mol)、ジクロロメタン(1250ml)を仕込み、室温で2時間撹拌して反応させた。
反応終了後、反応液を氷水(600ml)に加えて分液し、有機層を水(500ml)で2回洗浄し、さらに飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムを用いて有機層を脱水し、活性炭ろ過を行った。そして、得られたろ液を濃縮した後、エタノールを加えて晶析し、結晶をろ取してエタノールでスラリー洗浄し、乾燥させることにより、化合物(Iabb)として下記式(1)−101abbで表される化合物(以下、「化合物(1)−101abb」と略記する)を得た(収量17.2g、収率54.9%)。
化合物(1)−101abbが得られたことは、MS測定、NMR測定及びIR測定により確認した。例えば、MS測定では、親イオンピークm/z=348のスペクトルを確認した。
【0119】
【化10】
【0120】
(化合物(Iaba)製造工程)
500ml三つ口フラスコに、化合物(1)−101abb(9g、26mmol)、47%臭化水素酸(187ml)、酢酸(187ml)を仕込んだ。
次いで、反応液を還流するまで昇温し、一夜撹拌して反応させた。このとき、反応の進行に伴い、反応液は均一な液となった。
反応終了後、反応液を室温まで冷却し、濃縮した後、炭酸水素ナトリウムを用いて得られた濃縮物のpHを3に調整し、酢酸エチルで抽出を行った。そして、抽出液を水(50ml)で3回洗浄し、さらに飽和食塩水で洗浄した後、活性炭及び無水硫酸マグネシウムを加えて撹拌し、ろ過を行った。そして、得られたろ液を濃縮乾固した後、析出した結晶を取り出して乾燥させることにより、化合物(Iaba)として下記式(1)−101abaで表される化合物(以下、「化合物(1)−101aba」と略記する)を得た(収量7.4g、収率98.7%)。
化合物(1)−101abaが得られたことは、NMR測定及びIR測定により確認した。例えば、NMR測定では、脱メチル化されたことを確認し、IR測定では、−OH伸縮振動を確認した。
【0121】
【化11】
【0122】
(化合物(Iab)製造工程(2))
200ml三つ口フラスコに、化合物(1)−101aba(5g、17.1mmol)、1−ブロモ−2−エチルヘキサン(19.8g、102.6mmol)、炭酸カリウム(14.2g、102.6mmol)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF、150ml)を仕込んだ。
次いで、反応液を90℃まで昇温し、5時間撹拌して反応させた。
反応終了後、反応液を室温まで冷却し、水(300ml)及びジクロロメタン(100ml)の混合溶媒中に加えて分液し、水層をジクロロメタン(50ml)で抽出した。そして、抽出した有機層を合一し、水(50ml)で2回洗浄し、さらに飽和食塩水で洗浄した後、活性炭及び無水硫酸マグネシウムを加えて撹拌し、ろ過を行った。そして、得られたろ液を濃縮して、ヘキサン/酢酸エチル(5/1、体積比)の混合溶媒を用いて濃縮残分をシリカゲル(65g)に通すカラムクロマトグラフィーを行い、得られたフラクションを濃縮乾固することにより、オイル状の化合物(Iab)として下記式(1)−101abで表される化合物(以下、「化合物(1)−101ab」と略記する)を得た(収量12.9g、収率101.5%)。
化合物(1)−101abが得られたことは、MS測定、NMR測定及びIR測定により確認した。例えば、MS測定では、親イオンピークm/z=741のスペクトルを確認した。また、NMR測定では、2−エチルヘキシルオキシ基の存在を確認し、IR測定では、−OH伸縮振動の消失を確認した。
【0123】
【化12】
【0124】
(化合物(Iaa)製造工程)
500ml三つ口フラスコに、化合物(1)−101ab(12.4g、16.7mmol)、ジクロロメタン(250ml)を仕込み、−5〜0℃まで冷却した。ここへ、臭素(16.0g、100.0mmol)をジクロロメタン(250ml)に溶解させたものを、0℃以下となるように滴下し、滴下終了後、2時間撹拌して、薄層クロマトグラフィー(TLC)により、反応終了を確認した。
次いで、反応液をチオ硫酸ナトリウム水溶液中に加えて、撹拌後、分液し、有機層を水(100ml)で2回洗浄し、さらに飽和食塩水(100ml)で洗浄した後、活性炭及び無水硫酸マグネシウムを加えて撹拌し、ろ過を行った。そして、得られたろ液を濃縮して、ヘキサン/クロロホルム(9/1、体積比)の混合溶媒を用いて濃縮残分をシリカゲル(300g)に通すカラムクロマトグラフィーを行い、トリブロム体、テトラブロム体等の不純物を除去して、目的物を含むフラクション(6g)をエタノール(30ml)中に分散させ、タール状の固形物をろ取し、乾燥させることにより、化合物(Iaa)として下記式(1)−101aaで表される化合物(以下、「化合物(1)−101aa」と略記する)を得た(収量4.6g、収率30.7%)。
化合物(1)−101aaが得られたことは、MS測定、NMR測定及びIR測定により確認した。例えば、MS測定では、親イオンピークm/z=898のスペクトルを確認した。
【0125】
【化13】
【0126】
(化合物(Ia)製造工程)
200ml三つ口フラスコに、アルゴンガス気流下、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0.10g、0.11mmol)、rac−BINAP(0.14g、0.22mmol)、トルエン(140ml)を仕込み、110℃で30分間撹拌した。
次いで、これを室温まで冷却し、ここへ、化合物(1)−101aa(4g、4.4mmol)、ベンゾフェノンイミン(2.06g、11.4mmol)、ナトリウムt−ブトキシド(1.09g、11.4mmol)を添加し、反応液を還流するまで昇温し、一夜撹拌して反応させた。
反応終了後、反応液を室温まで冷却し、不溶物をセライトろ過により除去した。そして、母液に水(50ml)を加えて撹拌し、分液して、有機層を水(50ml)で洗浄し、さらに飽和食塩水(50ml)で洗浄した後、活性炭及び無水硫酸マグネシウムを加えて撹拌し、ろ過を行った。そして、得られたろ液を濃縮して、濃縮残分をエタノール(35ml)中に分散させ、結晶をろ取し、乾燥させることにより、2個の式「−N=C(C
6H
5)
2」で表される基を有する前記中間体(2,3−ジベンゾフェノンイミン−6,7,10,11−テトラキス(2−エチルヘキシロキシ)トリフェニレン)を得た(収量4.5g、収率93.7%)。
前記中間体が得られたことは、NMR測定及びIR測定により確認した。例えば、
1H−NMR測定では、「アルキル基のH数:ベンゼン環のH数」の比が、72.4:26.1であることを確認した。
【0127】
100ml三つ口フラスコに、前記中間体(4g、3.64mmol)、2M塩酸(3.8ml、7.64mmol)、テトラヒドロフラン(THF、100ml)を仕込み、30分間撹拌して反応させた。
反応終了後、反応液に水(100ml)及び酢酸エチル(200ml)を加えて撹拌し、分液し、水層を酢酸エチル(50ml)で抽出した。そして、抽出した有機層を合一し、水(50ml)で洗浄し、さらに飽和食塩水(50ml)で洗浄した後、活性炭及び無水硫酸マグネシウムを加えて撹拌し、ろ過を行った。そして、得られたろ液を濃縮し、エタノール(50ml)を加えて溶解させ、さらに25%水酸化ナトリウム水溶液を数滴加えて、溶液のpHを9〜10に調整した後、ここに水及びジエチルエーテルを加えて撹拌し、抽出を行った。そして、得られた有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムを加えて脱水し、濃縮した。ヘキサン/酢酸エチル(5/1、体積比)の混合溶媒を用いて濃縮残分をシリカゲル(60g)に通すカラムクロマトグラフィーを行い、目的物を含むフラクションを濃縮することにより、化合物(Ia)として下記式(1)−101aで表される化合物(以下、「化合物(1)−101a」と略記する)を得た(収量1.9g、収率61.9%)。
化合物(1)−101aが得られたことは、MS測定、NMR測定及びIR測定により確認した。例えば、MS測定では、親イオンピークm/z=771のスペクトルを確認した。また、
1H−NMR測定では、「アルキル基のH数:ベンゼン環のH数」の比が、68.4:6(理論値は68:6)であることを確認した。
【0128】
【化14】
【0129】
(化合物(Id)製造工程)
1000ml三つ口フラスコに、アルゴンガス気流下、クロロ硫酸(500g、4.29mol)を仕込み、ここに室温下、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物(50g、0.127mol)を20分間かけて添加し、次いで、ヨウ素(8.5g、0.024mol)を添加した。
次いで、反応液を70℃まで昇温し、6時間撹拌して反応させた。
反応終了後、反応液を室温まで冷却し、氷水(2000ml)でクエンチしたところ、反応液は暗褐色から朱色に変色し、結晶が析出した。この結晶をろ取し、水(1000ml)で3回スラリー洗浄した後、アセトニトリル(500ml)で3回スラリー洗浄し、ろ取した結晶を乾燥させることにより、化合物(Id)として下記式(1)−101dで表される化合物(以下、「化合物(1)−101d」と略記する)を得た(収量50.1g、収率74.4%)。
化合物(1)−101dが得られたことは、MS測定、イオンクロマトグラフィー及びIR測定により確認した。例えば、MS測定では、分子イオンピークm/z=530のスペクトルを確認した。また、イオンクロマトグラフィーでは、酸素燃焼法により塩素含量が25.1%(理論値26.8%)であることを確認した。
【0130】
【化15】
【0131】
(化合物(Ibb)製造工程)
300ml三つ口フラスコに、化合物(1)−101d(20g、37.7mmol)、n−ペンチルアミン(13.1g、150.8mmol)、プロピオン酸(225g)を仕込んだ。
次いで、反応液を140℃まで昇温し、24時間撹拌して反応させた。
反応終了後、反応液を室温まで冷却し、結晶を析出させてろ取し、この結晶を10%炭酸水素ナトリウム水溶液(400ml)でスラリー洗浄した後、水(200ml)でスラリー洗浄し、ろ取した結晶をメタノールでかけ洗いして乾燥させることにより、化合物(Ibb)として下記式(1)−101bbで表される化合物(以下、「化合物(1)−101bb」と略記する)を得た(収量21.7g、収率86.1%)。
化合物(1)−101bbが得られたことは、MS測定、NMR測定及びIR測定により確認した。例えば、MS測定では、親イオンピークm/z=668のスペクトルを確認した。また、NMR測定では、n−ペンチル基の存在を確認した。
【0132】
【化16】
【0133】
(化合物(Iba)製造工程)
1000ml三つ口フラスコに、化合物(1)−101bb(20g、0.03mol)、化合物(Ic)として下記式(1)−101cで表される化合物(4−ドデシルフェノール、以下、「化合物(1)−101c」と略記する)(47.2g、0.18mol)、炭酸カリウム(24.8g、0.18mol)、N−メチルピロリドン(600ml)を仕込んだ。
次いで、反応液を140℃まで昇温し、24時間撹拌して反応させた。
反応終了後、反応液を室温まで冷却し、2N塩酸中に加えて、タール状固形物をろ取し、これを水(1000ml)でスラリー洗浄した後、メタノール(1000ml)で2回スラリー洗浄し、さらにタール状固形物をろ取した(ウエット状態で65g)。このタール状固形物をジクロロメタン(300ml)に溶解させ、ろ過して得られたろ液を、液量が200ml程度になるまで濃縮した後、ジクロロメタン/ヘキサン(1/1、体積比)の混合溶媒を用いて濃縮残分をシリカゲル(250g)に通すカラムクロマトグラフィーを行い、タール状の化合物(Iba)として下記式(1)−101baで表される化合物(以下、「化合物(1)−101ba」と略記する)を得た(収量23.0g)。
化合物(1)−101baが得られたことは、NMR測定及びIR測定により確認した。例えば、
1H−NMR測定では、「アルキル基のH数:ベンゼン環のH数」の比が、123.76:20.02(理論値は121:20)であることを確認した。
【0134】
【化17】
【0135】
(化合物(Ib)製造工程(2))
300ml三つ口フラスコに、化合物(1)−101ba(22g、14mmol)、85%水酸化カリウム(98g、1490mmol)、2−プロパノール(220m)を仕込んだ。
次いで、反応液を還流するまで昇温し、72時間撹拌して反応させた。このとき、反応液は赤紫色から緑色に変色した。
反応終了後、反応液を室温まで冷却し、8%塩酸でpHを4に調整して、析出したタール状固形物をろ取し、これを水(500ml)で2回スラリー洗浄した後、メタノール(500ml)で2回スラリー洗浄して、固形物をろ取し、室温で乾燥させることにより、化合物(Ib)として下記式(1)−101bで表される化合物(以下、「化合物(1)−101b」と略記する)を得た(収量14g、収率70%)。
化合物(1)−101bが得られたことは、NMR測定及びIR測定により確認した。
例えば、
1H−NMR測定では、「アルキル基のH数:ベンゼン環のH数」の比が、104.80:19.98(理論値は100:20)であることを確認した。
【0136】
【化18】
【0137】
(化合物(I)製造工程)
100ml三つ口フラスコに、化合物(1)−101b(0.75g、0.52mmol)、化合物(1)−101a(1.6g、2.08mmol)、ピラジン(0.16g、2.08mmol)、フェノール(16g)、トルエン(16ml)を仕込んだ。
次いで、反応液を昇温し、系内で副生した水をトルエンとの共沸脱水により系外に取り出した。そして、留出温度100℃でフェノール(16g)を加え、反応液を145℃まで昇温し、さらに24 時間撹拌して反応させた。
反応終了後、反応液を室温まで冷却し、メタノール(160ml)中に加えて、析出した結晶をろ取し、これをジクロロメタン(25ml)に溶解させ、ろ過した。そして、ジクロロメタン/ヘキサン(1/1、体積比)の混合溶媒を用いて、得られたろ液をシリカゲル(120g)に通すカラムクロマトグラフィーを行い、目的物を含むフラクション(0.9g)をジクロロメタン(20ml)に溶解させ、ここに活性炭を加えて撹拌し、ろ過を行った。そして、得られたろ液を濃縮乾固して、得られた固形物をメタノールでスラリー洗浄し、室温で乾燥させることにより、化合物(1A)−101及び(1B)−101の混合物を得た。
化合物(1A)−101及び(1B)−101が得られたことは、NMR測定、UV−VIS吸収スペクトル測定、蛍光スペクトル測定及びIR測定により確認した。例えば、
1H−NMR測定では、「アルキル基のH数:ベンゼン環のH数」の比が、276.0:36.9であることを確認した。このときの
1H−NMRのスペクトルデータを
図7に示す。また、UV−VIS吸収スペクトル測定では、波長範囲500〜800nmにおいて、吸収極大値(λ
max)が波長626nm及び674nmで観測された。そして、蛍光スペクトル測定では、波長720nmに極大値を有する蛍光スペクトルが観測された。なお、化合物(1A)−101及び(1B)−101は、ほぼ同じ吸光特性及び発光特性を示し、どちらも上記の吸収極大値を有しており、かつ同様の蛍光スペクトルを有していると考えられる。このときのUV−VIS吸収スペクトル及び蛍光スペクトルのデータを
図8に示す。
図8のグラフのうち、左側の縦軸は吸光度の目盛りを示し、右側の縦軸は蛍光強度の目盛りを示している。また、IRのスペクトルデータを
図9に示す。
【0138】
【化19】
【0139】
化合物(1A)−101は、光の吸収ピーク波長が626nm及び674nmで、十分に長波長の光を吸収可能である。また、発光のピーク波長が720nmであり、放射光(蛍光)は十分に長波長である。さらに、蛍光量子収率は10%である。
なお、Gaussian09(Gaussian社製)を用い、B3LYP/6−31+g(d)により求めた、化合物(1A)−101の光の吸収ピーク波長は696nmであり、上記の実測値と近い値であった。
【0140】
[実施例2]
化合物(Ia)として化合物(1)−101aに代えて、下記式(1)−102aで表される化合物を使用すること以外は、実施例1と同様の方法で、化合物(I)として下記式(1A)−102及び(1B)−102で表される化合物(以下、それぞれ「化合物(1A)−102」、「化合物(1B)−102」と略記する)を製造する。
【0141】
Gaussian09(Gaussian社製)を用い、B3LYP/6−31+g(d)により求めた、化合物(1A)−102及び(1B)−102の光の吸収ピーク波長は696nmである。
【0142】
【化20】
【0143】
なお、化合物(1)−102aは、化合物(Iab)製造工程(2)において、1−ブロモ−2−エチルヘキサンに代えてシクロヘキシルブロミドを用いること以外は、上記の化合物(1)−101aの場合と同様の方法で製造する。
【0144】
[実施例3]
化合物(Ia)として化合物(1)−101aに代えて、下記式(1)−103aで表される化合物を使用すること以外は、実施例1と同様の方法で、化合物(I)として下記式(1A)−103及び(1B)−103で表される化合物(以下、それぞれ「化合物(1A)−103」、「化合物(1B)−103」と略記する)を製造する。
【0145】
Gaussian09(Gaussian社製)を用い、B3LYP/6−31+g(d)により求めた、化合物(1A)−103及び(1B)−103の光の吸収ピーク波長は696nmである。
【0146】
【化21】
【0147】
なお、化合物(1)−103aは、化合物(Iaba)製造工程、及び化合物(Iab)製造工程(2)を行わず、化合物(Iabb)製造工程で得られた化合物(1)−101abbを、化合物(Iaa)製造工程において、化合物(1)−101abに代えて使用すること以外は、上記の化合物(1)−101aの場合と同様の方法で製造する。
【0148】
<太陽電池モジュールの製造>[実施例4]
蛍光体8として、実施例1〜3の化合物(I)をそれぞれ別々に用い、
図1〜3に示す太陽電池モジュール1を製造する。
【0149】
[実施例5]
蛍光体8として、実施例1〜3の化合物(I)をそれぞれ別々に用い、さらに化合物(I)以外のその他の蛍光体も併用して、
図1〜3に示す太陽電池モジュール1を製造する。