(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
中空のフィルター材を容器内に収容し、前記フィルター材の内部流路及び外部流路のうち一方の流路に供給された液体が、前記フィルター材を通じて他方の流路に流れ込むことで前記液体を濾過するフィルター装置であって、
外蓋と、
前記外蓋の内側に当接することで、前記外蓋との間に密閉空間を形成する内蓋と、
前記内蓋及び前記フィルター材の一端側に取付けられ、前記フィルター材の前記内部流路と前記密閉空間を連通させる連通部材と、
前記外蓋とは異なる位置にて、前記外部流路に接続されて、前記液体が流入又は流出する第1の流出入口と、
貯留空間に接続されて、前記液体が流入又は流出する第2の流出入口と、
を備え、
前記貯留空間は、前記フィルター材の他端側に配置されて前記内部流路と連通し、
前記外蓋には、前記フィルター材の前記外部流路に対応する第1のベント及び前記密閉空間に対応する第2のベントが設けられている、フィルター装置。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0022】
[第1の実施形態]
図1及び
図2に示されるように、第1の実施形態に係るフィルター装置1は、液体を濾過するための装置である。濾過対象の液体(原液)としては、例えば、JISZ8803(2011年度版)に規定する測定方法に準拠して測定される粘度数十から数千もしくは数万mPa・s程度のコーティング液(感光剤、粘着剤、接着剤等)、フィルム原料(輝度向上フィルム、表面保護フィルム、偏光フィルム、反射防止フィルム、配向フィルム、ラッピングフィルム等)、透明樹脂、レジスト液、洗剤、化粧品(ジェル)等が挙げられる。
【0023】
(フィルター装置の構成)
以下、第1の実施形態に係るフィルター装置1の構成について説明する。フィルター装置1は、12本の筒状のフィルターカートリッジ(フィルター材)2と、フィルターカートリッジ2が収容された円筒状のシェル3と、シェル3の開口に配置される円板状の外蓋4と、外蓋4の内側に配置された円盤トレイ状の内蓋5を備えている。
【0024】
シェル3は、上方に開口を有する縦長円筒状の容器であり、開口を塞ぐように外蓋4が配置されている。円板状の外蓋4は、シェル3の開口周囲に形成されたフランジに支えられるように配置され、ボルト6によってシェル3に固定されている。ボルト6は、外蓋4の貫通孔4b及びシェル3のフランジの貫通孔3dに挿通された状態で、外蓋4の外周に沿って多数取付けられている。
【0025】
また、シェル3のフランジには、開口を囲むようにOリング7が配置されており、外蓋4とシェル3の間を封止している。外蓋4の開閉は、シェル3に取付けられたダビット8のハンドル部8aを操作することによって行われる。
【0026】
外蓋4の内側(下面4a側)には、上向きに開放された円盤トレイ状の内蓋5が下から当接しており、外蓋4と内蓋5の間に密閉空間Sが形成されている。密閉空間Sは、外蓋4の下面4aと内蓋5の内面5aによって囲まれた空間である。なお、外蓋4の下面4aは平面として形成されている。
【0027】
内蓋5は、その上端面5bにOリング(シール部材)9を有している。内蓋5の上端面5bが外蓋4の下面4aに当接され、Oリング9が外蓋4に押し付けられることで外蓋4及び内蓋5の間の密閉性が確保される。なお、内蓋5は、Oリングに代えて、ガスケットやその他のシール部材を有していてもよい。
【0028】
シェル3には、液体が流入又は流出する第1の流出入口3a及び第2の流出入口3bが形成されている。第1の流出入口3aは、例えばシェル3の側面に設けられ、フィルターカートリッジ2が配置された空間に接続されている。シェル3の内部には、液体の流れを拡散させるための板部材10が第1の流出入口3aに対応する位置に配置されている。なお、第1の流出入口3aは、シェル3の側面ではなく底面等に設けられていてもよい。また、板部材10は必ずしも備える必要はない。
【0029】
第2の流出入口3bは、シェル3の底部の側面に設けられ、シェル3の底部に形成された貯留空間Gに接続されている。シェル3の底面にはドレン3cが設けられている。
【0030】
シェル3の内部は、仕切り板11によってフィルターカートリッジ2が配置された空間と貯留空間Gとに仕切られている。仕切り板11は、シェル3の内部で水平に設けられており、例えば溶接によってシェル3の内壁に固定されている。なお、フィルター装置1は、仕切り板11を使用しない構造であってもよく、濾過前の液体(未濾過液)と濾過後の液体(濾過液)を分離しておける構造であればよい。
【0031】
仕切り板11の上には、12本のフィルターカートリッジ2が配置されている。なお、本発明では、フィルターカートリッジ2の本数は限定されない。フィルターカートリッジ2の本数は1本であってもよく、2本以上(例えば15本や30本)であってもよい。
【0032】
中空のフィルターカートリッジ2は、シェル3内に外部流路Ra及び内部流路Rbを形成する。外部流路Raとは、中空のフィルターカートリッジ2の外側に形成される流路であり、内部流路Rbとは、中空のフィルターカートリッジ2の内側に形成される流路である。本実施形態では、外部流路Raは、内蓋5の密閉空間S、貯留空間G、及び内部流路Rbを除いたシェル3内部の空間において形成される流路に相当する。
【0033】
なお、中空とは、全体形状が内部に空間を有する形状であることを意味する。すなわち、中空のフィルターカートリッジとは、全体形状が筒状その他の内部空間を有するフィルターカートリッジであることを意味する。
【0034】
フィルターカートリッジ2は、上下方向に延在しており、下端側が中空の支持部材12を介して仕切り板11に支持されている。支持部材12は、例えば、径の異なる上段及び下段を有する二段筒状の部材である。
【0035】
支持部材12は、径の小さい下段側が仕切り板11を貫いて下方の貯留空間Gに突出しており、径の大きい上段側が仕切り板11の上でフィルターカートリッジ2と接続されている。フィルターカートリッジ2の内部流路Rbと貯留空間Gとは、支持部材12の内部を通じて連通している。
【0036】
なお、支持部材12の形状は上述したものに限られない。例えば、支持部材12は、段差のない筒状部材であってもよい。この場合には、仕切り板11の貫通孔と支持部材12の間をOリング等によってシールすることができる。また、支持部材12が貫通孔にねじ込まれてロックされるツイストロック式の構造であってもよい。
【0037】
フィルターカートリッジ2の上端側は、中空の連通部材13を介して内蓋5に接続されている。ここで、
図3は、フィルターカートリッジ2の上端側を示す拡大断面図である。
【0038】
図1〜
図3に示されるように、連通部材13は、フィルターカートリッジ2の内部流路Rbと内蓋5と外蓋4の間に形成される密閉空間Sとを連通させる部材である。連通部材13は、本体部16及びスプリング17を有している。
【0039】
本体部16は、円筒部18、シールプレート19、及びOリング20を含んでいる。円筒部18は、上下方向に延在するように配置されており、下端側がフィルターカートリッジ2の内部流路Rbに入り込んでいる。なお、本体部16の下端側がフィルターカートリッジ2の内部流路Rbに入り込まない形状であってもよい。
【0040】
また、円筒部18の上端側は、内蓋5の貫通孔5cを通じて密閉空間Sに入り込んでいる。内蓋5には、貫通孔5cから下方に延びるように筒状のガイド部5dが設けられており、円筒部18の上端側はガイド部5d内を通って密閉空間S内に突出している。内部流路Rb及び密閉空間Sは、円筒部18の内部を通じて連通している。
【0041】
円筒部18の上端側及び下端側にはテーパーがつけられており、内蓋5の貫通孔5c又は内部流路Rbに容易に差し込めるように形成されている。また、円筒部18の下端には、上方へ延びるスリット19aが形成されている。スリット19aは、フィルターカートリッジ2の上端の高さまで形成されており、フィルターカートリッジ2の内部流路Rbに存在する気泡はスリット19aを通じて円筒部18に入り込む。
【0042】
シールプレート19は、円筒部18を中心として取付けられた環状の板状部材である。シールプレート19は、円筒部18の下側でフィルターカートリッジ2の上端を抑えるように配置されている。シールプレート19の下面には、フィルターカートリッジ2とシールプレート19の間を封止するためのナイフエッジが形成されている。
【0043】
Oリング20は、円筒部18を中心として例えば円筒部18の中腹部に配置されている。円筒部18には、Oリング20を嵌め込むための溝が形成されている。Oリング20は、円筒部18の側面と内蓋5のガイド部5dの内面の間を封止しており、密閉空間Sの貫通孔5cにおける密閉性を確保している。
【0044】
スプリング17は、円筒部18を中心として設けられたコイル状のスプリングである。スプリング17は、シールプレート19の上面と内蓋5の下面の間に圧縮された状態で配置され、弾性力によって内蓋5を外蓋4に向かって付勢している。また、スプリング17は、フィルターカートリッジ2を下向きに付勢することで、フィルターカートリッジ2と連通部材13の間のシール性を高めると共にフィルターカートリッジ2を高い安定性で保持している。
【0045】
連通部材13とフィルターカートリッジ2とは、別々の部材であってもよいが、連通部材13及びフィルターカートリッジが一体的に固定された一体構造体であってもよい。
【0046】
なお、フィルター装置1では、フィルターカートリッジ2によって濾過される液体の流れ方向は限定されない。
図1に示す矢印A,Bは濾過対象の液体の流れを例示している。詳細な濾過方法については後述する。
【0047】
外蓋4には、液体から気泡・気体を取り除くための第1のベント14及び第2のベント15が設けられている。第1のベント14は、フィルターカートリッジ2の外部流路Raに対応している。第1のベント14は、外蓋4の外周寄りの位置に配置されており、外部流路Raに対して接続されている。
【0048】
図3に、外部流路Raの液体中に存在する気泡・気体の移動を矢印C1として示す。矢印C1が示すように、外部流路Raの液体中に存在する気泡・気体は、浮力又は液面上昇によって上方に進み、第1のベント14へ向かって移動する。第1のベント14を開放することで、外部流路Raの液体中に存在する気泡・気体はシェル3の外に除去される。
【0049】
第2のベント15は、フィルターカートリッジ2の内部流路Rbに対応している。第2のベント15は、例えば第1のベント14よりも外蓋4の中央寄りに配置されており、密閉空間Sに対して接続されている。なお、第2のベント15を複数設けてもよい。
【0050】
図3に、内部流路Rbの液体中に存在する気泡・気体の移動を矢印C2として示す。矢印C2が示すように、内部流路Rbの液体中に存在する気泡・気体は、浮力又は液面上昇によって上方に進み、連通部材13を通じて密閉空間Sに入り込む。密閉空間Sに入り込んだ気泡・気体は、第2のベント15を開放することでシェル3の外に除去される。
【0051】
以上説明した第1の実施形態に係るフィルター装置1では、第1のベント14からフィルターカートリッジ2の外部流路Raの液体中に存在する気泡・気体を取り除くと共に、第2のベント15から密閉空間Sを介して内部流路Rbの液体中に存在する気泡・気体を取り除くことで、気泡の少ない濾過液を得ることができる。
【0052】
しかも、このフィルター装置1では、外蓋4と内蓋5の間に内部流路Rbと連通する密閉空間Sが形成されているので、内部流路Rbの気泡が密閉空間Sに収容されることで、第2のベント15を頻繁に開閉しなくても、気泡が内部流路Rbの液体に再び混入することが避けられ、気泡の混入を一層減少させることができる。
【0053】
また、このフィルター装置1では、外蓋4の第2のベント15は密閉空間Sと接続することで内部流路Rbと連通できるので、外蓋4の第2のベント15とフィルターカートリッジ2との厳密な位置合わせが不要となる。従って、このフィルター装置1では、厳密な位置合わせが不要なため、外蓋4等の寸法公差を大きく取ることができ、製造コストの低コスト化に有利である。
【0054】
更に、このフィルター装置1では、密閉空間Sに対応する第2のベント15を一つ設ければよいので、複数本のフィルターカートリッジ2のそれぞれの内部流路Rbに対して専用のベントを設ける態様と比べてベントの数を少なくすることができる。従って、このフィルター装置1では、多数のベントを設ける態様と異なり、操作性も考慮してベントの間隔を十分に確保する必要がないので、幅方向におけるフィルター装置の小型化が図られる。
【0055】
また、このフィルター装置1では、フィルターカートリッジ2の本数を変えることなくフィルター装置の小型化を実現できるので、不要な内部スペースを減らして処理効率等を向上できると共に、濾過停止時におけるフィルター装置内の残液を少なくすることができ、運用コストの低コスト化に有利である。
【0056】
(フィルター装置の組立方法)
次に、第1の実施形態に係るフィルター装置1の組立方法について説明する。
図1〜
図3に示されるように、フィルター装置1の組立方法では、まずシェル3が用意される。シェル3の内部には、仕切り板11が予め固定されており、仕切り板11には、支持部材12を差し込むための貫通孔が形成されている。
【0057】
次に、シェル3内にフィルターカートリッジ2を配置するフィルターカートリッジ配置工程(フィルター材配置工程)が行われる。フィルターカートリッジ配置工程では、まず、仕切り板11の貫通孔に対して支持部材12が配置される。続いて、フィルターカートリッジ2の下端側がポストを介して支持部材12に対して取付けられる。ポストとは、フィルターカートリッジ2及び支持部材12の内部に挿通される筒状又は柱状のガイド部材である。なお、必ずしもポストを介してフィルターカートリッジ2を支持部材12に取付ける必要はない。
【0058】
その後、連通部材13を介してフィルターカートリッジ2に内蓋5を取付ける内蓋取付け工程が行われる。内蓋取付け工程には、本体部16にスプリング17を取り付けて連通部材13を組み立てる工程が含まれてもよい。内蓋取付け工程において、連通部材13は、先にフィルターカートリッジ2に対して取り付けられてもよく、先に内蓋5の貫通孔5cに対して取り付けられてもよい。
【0059】
なお、フィルターカートリッジ2及び連通部材13が一体的に固定された一体構造体を採用した場合には、一体構造体に対して内蓋5を取付けるだけでよく、内蓋取付け工程を短時間で完了させることができる。
【0060】
続いて、内蓋5と当接するように外蓋4を取付ける外蓋取付け工程が行われる。外蓋取付け工程では、第1のベント14が外部流路Raに接続され、第2のベント15が密閉空間Sに接続されるように外蓋4が配置される。外蓋4はシェル3に取付けられたダビット8を利用して取付けられてもよい。
【0061】
外蓋4の下面4aに対して内蓋5の上端面5bのOリング9が当接することで、外蓋4と内蓋5の間に密閉空間Sが形成される。内蓋5は連通部材13のスプリング17によって外蓋4に押し付けられる。
【0062】
以上説明した第1の実施形態に係るフィルター装置1の組立方法では、密閉空間Sを介して第2のベント15とフィルターカートリッジ2の内部流路Rbとが連通されるので、重量のある外蓋4をフィルターカートリッジ2に対して厳密に位置合わせしなくとも、内部流路Rbの液体中に存在する気泡・気体を第2のベント15を通じて除去することができ、組立作業を容易にすることができる。
【0063】
また、この組立方法では、複数本のフィルターカートリッジ2の内部流路Rbが密閉空間Sにまとめられ、密閉空間Sに対応する第2のベント15が外蓋4に設けられているので、複数本のフィルターカートリッジ2のそれぞれの内部流路Rbに対して専用のベントを設ける態様と比べて複数本のフィルターカートリッジ2と専用のベントとの厳密な位置合わせを行う必要がなく、組立作業が容易になる。
【0064】
更に、この組立方法では、連通部材13のスプリング17により外蓋4に向かって内蓋5を付勢し、内蓋5の上端面5bのOリング9が外蓋4に当接されることで、密閉空間Sの密閉性を簡素な構成で容易に確保することができる。従って、この組立方法では、外蓋4に対して内蓋5を厳密に位置合わせしなくとも、密閉性を容易に確保できるので、組立作業が容易になる。
【0065】
(フィルター装置を用いた濾過方法及び濾過液の製造方法)
次に、第1の実施形態に係るフィルター装置1を用いた濾過方法及び濾過液の製造方法について説明する。フィルター装置1では、液体の流れ方向は特に限定されず、
図1の矢印A又は矢印Bに沿って液体の濾過を行うことができる。まず、
図1の矢印Aに沿って液体が流れる場合について説明する。
【0066】
図1の矢印Aに示されるように、濾過対象となる液体は、シェル3の第1の流出入口3aを通じて供給され、シェル3内の外部流路Raに入り込む。外部流路Raの液体中に存在する気泡・気体は、浮力又は液面上昇により上方へ移動し、第1のベント14を通じて除去される(
図3の矢印C1参照)。
【0067】
外部流路Raに入り込んだ液体は、板部材10を迂回してフィルターカートリッジ2へと至る。なお、板部材10は必ず設ける必要はない。その後、液体は、フィルターカートリッジ2を通過して内部流路Rbに入り込む。このとき、液体中の異物はフィルターカートリッジ2によって取り除かれる。
【0068】
内部流路Rbの液体中に存在する気泡・気体は、浮力又は液面上昇により上方に移動し、連通部材13を通じて密閉空間Sに収容され、第2のベント15を通じて除去される(
図3の矢印C1参照)。
【0069】
内部流路Rbに入り込んだ液体は、
図1の矢印Aが示すように下に向かって流れ、支持部材12の内部を通過してシェル3底部の貯留空間Gに入り込む。貯留空間Gに入り込んだ液体は、濾過液として第2の流出入口3bから流れ出る。このようにしてフィルター装置1を用いた濾過液が製造される。
【0070】
図1の矢印Aに示す流れでは、フィルターカートリッジ2の抵抗があるため、フィルターカートリッジ2の内部圧力が外部圧力より低くなるように圧力差が生じる。これにより、内蓋5は、外部流路Ra側から外蓋4側に向かって押し付けられるように圧力を受け、密閉空間Sの密閉性がより強く保たれる。
【0071】
次に、
図1の矢印Bに沿って液体が流れる場合について説明する。
図1の矢印Bに示されるように、濾過対象となる液体は、シェル3の第2の流出入口3bを通じて供給され、シェル3底部の貯留空間Gに入り込む。
【0072】
貯留空間Gに入り込んだ液体は、支持部材12を通じてフィルターカートリッジ2の内部流路Rbに入り込む。内部流路Rbに入り込んだ液体は、フィルターカートリッジ2内を上方に流れる過程でフィルターカートリッジ2を横方向に通過して外部流路Raに入り込む。このとき、液体中の異物はフィルターカートリッジ2によって取り除かれる。
【0073】
外部流路Raに入りこんだ液体は、濾過液として第1の流出入口3aから流れ出る。なお、気泡・気体の移動については矢印Aの場合と同じため説明を省略する。
【0074】
以上説明した第1の実施形態に係るフィルター装置1の濾過方法及び濾過液の製造方法では、液体を濾過するに当たり、外部流路Raの液体中に存在する気泡・気体を第1のベント14から取り除くと共に、密閉空間Sを介して内部流路Rbの液体中に存在する気泡・気体を第2のベント15から取り除くことで、気泡の少ない濾過液を得ることができる。しかも、これらの方法では、内部流路Rbの液体中に存在する気泡・気体が浮力又は液面上昇により密閉空間Sに収容されることで、第2のベント15を頻繁に開閉しなくとも、内部流路Rbの液体に気泡が再び混入することが避けられるので、気泡のより少ない濾過液を得ることができる。
【0075】
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態に係るフィルター装置21の構成について
図4を参照して説明する。
図4において、
図1と同じ構成要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0076】
図4に示す第2の実施形態に係るフィルター装置21は、第1の実施形態に係るフィルター装置1と比べて、内蓋5を支える棒状の支持体22を備える点と、仕切り板23がシェル3に固定されていない点が異なっている。なお、支持体22は、第1の実施形態に係るフィルター装置1に設けてもよい。
【0077】
具体的には、フィルター装置21は、内蓋5を外蓋4に向かって押し付けるための棒状の支持体22を備えている。支持体22は、フィルターカートリッジ2に沿って上下方向に延在する十分な剛性を有する棒材であり、内蓋5及び仕切り板23の間に配置されている。
【0078】
なお、支持体22は、棒状のものに限られず、筒状や板状等であってもよい。また、支持体22を複数本備えてもよく、複数本備える場合には必ずしもシェル3の中心に配置する必要はない。
【0079】
また、フィルター装置21では、貯留空間Gを形成する仕切り板23がシェル3に対して固定されていない。円板状の仕切り板23は、シェル3の支持部3eの上に配置されている。支持部3eは、シェル3の内周面に沿って環状に形成された棚状の部位であり、仕切り板23を下から支持している。
【0080】
仕切り板23は、上から棒状の支持体22によって支持部3eに押し付けられている。すなわち、支持体22は、上端側で内蓋5を外蓋4に押し付けると共に、下端側で仕切り板23をシェル3の支持部3eに対して押し付けている。支持部3eの上面には、Oリング24がシェル3の内周面に沿って配置されており、Oリング24が仕切り板23の下面に当接することで貯留空間Gの密閉性が確保されている。なお、Oリング24以外のシール部材を採用してもよい。
【0081】
以上説明した第2の実施形態に係るフィルター装置21では、支持体22により内蓋5を外蓋4に押し付けるので、スプリング17の力のみで内蓋5を押し付ける場合と比べて、安定して内蓋5を支持することができ、密閉空間Sの密閉性を十分に確保することができる。なお、第2の実施形態に係るフィルター装置21では、必ずしもスプリング17を備える必要はない。
【0082】
また、このフィルター装置21では、例えば、仕切り板23をシェル3に固定しない構成を選択することで、メンテナンスの際に仕切り板23を取り外して効率的に作業することができる。しかも、このフィルター装置21では、支持体22が上端側で内蓋5を外蓋4に押し付けながら、下端側で仕切り板23をシェル3の支持部3eに押し付けるので、簡素な構成で密閉空間Sと貯留空間Gの密閉性を確保することができる。
【0083】
なお、フィルター装置21において、必ずしも仕切り板23を取り外し可能にする必要はない。この場合、支持体22は、仕切り板23を押し付ける必要はなく、シェル3の内壁等を足場として内蓋5を押し付ける態様であってもよい。また、フィルター装置21においても、フィルターカートリッジ2及び連通部材13が一体的に固定された一体構造体を採用してもよい。
【0084】
本発明は、上述した第1及び第2の実施形態に限定されるものではない。
図5は、他の実施形態に係る外蓋30及び内蓋31の構成を示す断面図である。
【0085】
図5に示されるように、外蓋30の下面30aには、下方に突出して環状突部30bが形成されている。環状突部30bは、円盤トレイ状の内蓋31の外周を囲むように形成されており、内蓋31は環状突部30bと嵌合している。
【0086】
内蓋31は、上端面31bではなく、横方向で環状突部30bの内面と当接するOリング32を有している。Oリング32は、内蓋31の上端面31b側で内蓋31の外周に沿って配置されている。
【0087】
外蓋30及び内蓋31では、Oリング32が外蓋30の環状突部30bに横方向で当接することで、外蓋30と内蓋31の間の密閉性が確保される。しかも、外蓋30及び内蓋31では、内蓋31が多少下に移動したとしてもOリング32が環状突部30bに当接している限り、密閉空間Sの密閉性を確保することができるので、信頼性の高い密閉空間Sを形成することができる。
【0088】
続いて、
図6は、更に他の実施形態に係る内蓋41の構成を示す平面図である。
図6に示されるように、内蓋41は、三つの扇形状の分割体42,43,44に分けられる。すなわち、三つの扇形状の分割体42,43,44は、互いに組み合わさることで円形状の内蓋41を構成している。
【0089】
分割体42,43,44は、それぞれが扇形トレイ状に形成されており、外蓋に当接されることでそれぞれの内部に密閉空間Sを形成する。分割体42,43,44には、連通部材を介してフィルターカートリッジと接続するための貫通孔42a、43a、44aが形成されている。
【0090】
また、分割体42,43,44には、外蓋に当接することで密閉性を確保するためのOリング45,46,47がそれぞれ配置されている。なお、Oリングに代えて、密閉性を確保する他のシール部材を採用してもよい。
【0091】
この内蓋31では、内蓋31が三つの分割体42,43,44に分けられることで、分割体42,43,44ごとにフィルターカートリッジと位置合わせを行うことができるので、フィルター装置の組立作業を容易にすることができる。このような分割構造は、特に、フィルターカートリッジの本数が多い場合に有効である。
【0092】
なお、内蓋31の分割体の数は、三つに限られず、フィルターカートリッジの本数や配置によって二つであってもよく、四つ以上であってもよい。また、分割体42,43,44の形状は、扇形トレイ状に限られず、台形トレイ状や環状トレイ状であってもよい。また、分割体42,43,44は、必ずしも組み合わせることで一つの円形状を成す必要はなく、別々に配置されてもよい。
【0093】
なお、複数の密閉空間Sを形成した場合には、密閉空間Sごとに対応するベントを設ける必要がある。但し、分割体42,43,44の内部空間を連通させて一つの密閉空間Sを形成した場合には、密閉空間Sに対応する少なくとも一つのベントを設ければよい。
【0094】
図7は、一体型のフィルターカートリッジ50を示す側面図である。
図7に示されるように、フィルターカートリッジ50は、フィルターカートリッジ本体51に対して連通部材52及び支持部材53が固定された一体構造体である。フィルターカートリッジ50は、フィルターカートリッジ本体51、連通部材52、及び支持部材53がカートリッジとして一体的に交換される。
【0095】
一体型のフィルターカートリッジ50では、支持部材53がシェル3に対して取付けられると共に連通部材52が内蓋5の貫通孔5cに対して取付けられる。連通部材52には、内蓋5の貫通孔5cに対して密閉性を確保するためのOリング54が設けられている。
【0096】
支持部材53は、筒状のフィルターカートリッジ本体51に固定された環状のシールプレート55と、シールプレート55から下方に延びる筒状体56を有している。筒状体56の側面には、段差が形成されており、二本のOリング57,58が配置されている。
【0097】
図8(a)は、一体型のフィルターカートリッジ50の支持に関する一態様を示す図である。
図8(a)に示すフィルターカートリッジ50は、フィルターカートリッジ本体51と一体的に構成された支持部材53が仕切り板11に直接取付けられることで支持されている。具体的には、支持部材53の筒状体56が仕切り板11の貫通孔に対して嵌め込まれることで、フィルターカートリッジ50が支持されている。
【0098】
図8(b)は、一体型のフィルターカートリッジ50の支持に関する他の態様を示す図である。
図8(b)に示すフィルターカートリッジ50は、仕切り板11の貫通孔に固定されたパイプ59に対して支持部材53が取付けられることで支持されている。具体的には、支持部材53の筒状体56がパイプ59の内部に嵌め込まれることで、フィルターカートリッジ50が支持されている。この場合、仕切り板11が薄くても、二本のOリング57,58によって密閉性を十分に確保することができる。
【0099】
なお、第1及び第2の実施形態において、支持部材12に代えて
図7及び
図8に示す支持部材53を備えてもよい。この場合、支持部材53をフィルターカートリッジ2と一体にしてもよく、別体としてもよい。
【0100】
一体型のフィルターカートリッジは、連通部材及び支持部材の両方を有するものに限られない。
【0101】
図9(a)は、他の実施形態に係る一体型のフィルターカートリッジを示す図である。
図9(a)に示す一体型のフィルターカートリッジ60は、フィルターカートリッジ本体61に対して連通部材62のみが固定された一体構造体である。連通部材62には、Oリング63が設けられている。このフィルターカートリッジ60の下端側には、例えば
図1に示す支持部材12などを配置することができる。フィルターカートリッジ60では、フィルターカートリッジ本体61及び連通部材62がカートリッジとして一体的に交換される。
【0102】
図9(b)は、更に他の実施形態に係る一体型のフィルターカートリッジを示す図である。
図9(b)に示す一体型のフィルターカートリッジ70は、フィルターカートリッジ本体71に対して支持部材72のみが固定された一体構造体である。このフィルターカートリッジ70の上端側には、例えば
図1に示す連通部材13を配置することができる。フィルターカートリッジ70では、フィルターカートリッジ本体71及び支持部材72がカートリッジとして一体的に交換される。なお、フィルターカートリッジ70では、支持部材72に代えて
図7に示す支持部材53を採用してもよい。