【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するのに有効な手段等につき、必要に応じて効果等を示しつつ説明する。なお以下においては、理解の容易のため、発明の実施の形態において対応する構成を括弧書き等で適宜示すが、この括弧書き等で示した具体的構成に限定されるものではない。
【0008】
手段1.床部(床部15)に設置され、水使用設備(例えば洗濯機40)と横並びに配設される建物用キャビネット(例えば洗面台20)であって、
前記建物用キャビネットの側板(側板23)において前記床部側となる部分に設けられ、前記水使用設備からの排水を前記床部における前記建物用キャビネットの設置部分に設けられた排水口(排水口16)へと導く排水管部材(例えば配管部材53,56や連結部材55や排水ホース42)を当該建物用キャビネットの外側から内側へと貫通させる貫通部(貫通孔51)を備え、
前記排水口が前記建物用キャビネットにおける奥側に位置するのに対し、前記貫通部が前記建物用キャビネットにおける手前側に位置するように構成されていることを特徴とする建物用キャビネット。
【0009】
手段1によれば、水使用設備にて使用された水は建物用キャビネット内を通じて同建物用キャビネットの設置部分に設けられた排水口へと導かれることとなる。このように水使用設備の排水にかかる構成を建物用キャビネット内に配設することにより、排水機能を担保しつつ水使用設備の設置スペースの圧迫を抑えることができる。また、水使用設備の設置作業やメンテナンス作業を行う場合であっても、水使用設備と建物用キャビネットとの隙間に手を入れるといった行為等も必要なく作業性の悪化を生じることもない。
【0010】
例えば、水使用設備から延びるホースによって排水管部材を構成し、その先端部を排水口へ接続する仕様である場合には以下の効果が期待できる。一般的にホースの全長には建物等の様々な仕様に対応すべくかなりの余裕代が付与されていることが多い。このような余裕代が過剰となった場合には、設置スペース周辺(例えば水使用設備と建物用キャビネットとの間)にて余剰部分が放置されることに起因して、見栄えの悪化、排水効率の低下、清掃等の妨げ等の各種不都合が生じ得る。この点、本手段に示す構成によれば貫通部を通じて建物キャビネット内にホースを収容することが可能となり、上記各種不都合を解消できる。
【0011】
手段2.前記建物用キャビネットの内部領域を上下に仕切る仕切り部(仕切り部27)を備え、
前記貫通部及び前記排水口は、前記仕切り部よりも下側に配設されていることを特徴とする手段1に記載の建物用キャビネット。
【0012】
手段2に示すように仕切り部よりも下側の領域に貫通部及び排水口を配する構成とすれば、建物用キャビネットが本来有する収容機能と水使用設備の排水機能とを好適に共存させることができる。
【0013】
手段3.前記仕切り部は、当該仕切り部よりも上側の領域が物品を収容可能な収容領域、同仕切り部よりも下側の領域が非収容領域となるように前記内部領域を仕切っていることを特徴とする手段2に記載の建物用キャビネット。
【0014】
手段3によれば、仕切り部によって建物キャビネットの内部領域を収容領域と非収容領域とに仕切ることにより非収容領域に排水管部材を配置することが可能となる。これにより、手段2に示した効果を好適に発揮させることができる。
【0015】
特に、手段2及び手段3において建物用キャビネットが洗面台等である場合には、その下部に蹴込みが設けられていることが多い。かかる構成では、蹴込み上方に仕切り板(底板)を配置してその上方領域が生活用品等の収容領域として使用される。その一方で、蹴込み内部領域についてはデッドスペースとなる。そこで、仕切り部によって蹴込み内部領域と収容領域とを仕切っている構成においては、この蹴込み内部領域を上記排水管部材の収容領域として活用することでデッドスペースの減縮に貢献できる。
【0016】
手段4.前記排水管部材は、前記排水口と前記貫通部とに亘って設けられたキャビネット内配管(配管部材53,56や連結部材55等)を有してなり、
前記貫通部には、前記水使用設備から延びるキャビネット外配管(排水ホース42)の一端部を接続可能な接続部(継ぎ手52)が設けられていることを特徴とする手段1乃至手段3のいずれか1つに記載の建物用キャビネット。
【0017】
手段4によれば、建物用キャビネットの内部には予めキャビネット内配管が設けられている。このため、住人等が水使用設備を設置する際には、キャビネット外配管を接続部に接続することにより排水経路が完成することとなる。ここで、接続部(貫通部)については建物用キャビネットにおける手前側部分に位置しているため、接続部が建物用キャビネットの奥側に位置している場合と比較して接続作業を容易に行うことができる。同様に水使用設備の入れ替え等に際して、同水使用設備を取り外す際にも接続解除作業が妨げられやすくなることを抑制できる。
【0018】
手段5.前記排水口は、前記側板寄りとなる位置に設けられており、
前記キャビネット内配管は、
前記排水口から前記建物用キャビネットの正面側へ延びる下流部分(下流側配管部材56)と、
前記貫通部から前記側板と交差する方向に延びる上流部分(上流側配管部材53)と、
前記キャビネットの手前側から奥側へとクランクすることによりそれら上流部分及び下流部分を繋ぐ中流部分(連結部材55)と
を有してなることを特徴とする手段4に記載の建物用キャビネット。
【0019】
手段5によれば、キャビネット内配管を側板に沿うようにして配置することができる。これにより、排水経路が無駄に長くなることを抑制することができる。また、接続部に近い位置に中流部分が存在すると、接続部付近での流れが悪くなり水漏れ等の発生要因となり得る。この点、上流部分を設けることで、流れが悪くなりやすい部分を接続部から遠ざけることができ、上記不都合の発生を抑えることができる。
【0020】
なお、建物用キャビネットに給排水機能が付与されている場合(例えば洗面台)においては、これら給排水用の配管を配設する必要があるが、本手段に示したようにキャビネット内配管の取り回しを工夫することにより、建物用キャビネット内における他の配管との共存を好適に実現できる。
【0021】
手段6.前記建物用キャビネットの内部領域を上下に仕切る仕切り部(仕切り部27)において前記排水口と対峙している部分を含む部分は、当該仕切り部よりも下側の領域を開放可能な可動板(可動体63)となっており、
前記可動板は、前記建物用キャビネットの奥行方向において前記排水口と前記貫通部とに亘って延びていることを特徴とする手段1乃至手段5のいずれか1つに記載の建物用キャビネット。
【0022】
手段6によれば、可動板を動かして排水口を露出させることにより、施工作業やメンテナンス作業を容易に行うことができる。特に、可動板が排水口と貫通部とに亘って延びていることにより、排水管部材の中間部分へのアクセスも容易となり上記効果を一層好適に発揮させることが可能となる。
【0023】
手段7.前記排水口は、前記側板寄りとなる位置に設けられており、
前記仕切り部は、前記建物用キャビネットに固定された固定板(固定板62)と前記可動板とを有してなり、
前記可動板は、前記側板に沿って前記建物用キャビネットの奥側へ延びる長板状をなしていることを特徴とする手段6に記載の建物用キャビネット。
【0024】
建物用キャビネットが仕切り部を有する構成においては、仕切り部自体が生活用品等の物品を載せる載置部として活用されやすく、手段6に示した可動板についても例外ではない。ここで、可動体を大きくしてしまうと、可動板を動かす都度当該可動上の物品を取り出す等する必要が生じ作業性が低下してしまう。そこで、本手段に示すように、可動板を側板に沿って奥側へ延びる長板状とすれば、手段5に示した効果を発揮させつつ、上述した収納機能の低下やメンテナンス等の際の準備作業が煩雑になることを抑制することができる。
【0025】
手段8.前記排水管部材は、前記貫通部を通じて前記建物用キャビネット内に挿通され、その先端部分が前記排水口に接続される構成となっており、
前記仕切り部は、前記建物用キャビネットに固定された固定板(固定板62)と、当該仕切り部よりも下側の領域を開放可能な可動板(可動板63)とを有してなり、
前記固定板と前記床部との間には、当該固定板を支える支柱(支柱71Z)が設けられていることを特徴とする手段2又は手段3に記載の建物用キャビネット。
【0026】
建物用キャビネットが仕切り部を有する構成においては、仕切り部自体が生活用品等の物品を載せる載置部として活用されやすく、可動板についても例外ではない。ここで本手段によれば、支柱によって固定板を支えることにより、上記載置機能を担保できるだけでなく、仕切り部が撓む等して仕切り部の下方領域が圧迫されることを回避できる。
【0027】
また、水使用設備から延びる排水管部材を建物用キャビネット内に収容すれば、手段1にて例示した効果を享受できる。しかしながら、排水管部材の余剰部分を無作為に収容した場合には、排水管部材の一部が折れ曲がったり潰れたり、更には排水管部材が建物用キャビネットに付属する他の構成と干渉したりすると想定される。このような不都合については、建物用キャビネット内における排水管部材の取り回しの自由度が高いほどその発生確率が高くなると想定される。また、建物用キャビネット外に排水管部材の余剰部分を配置する場合と比較して排水管部材の視認性が低下することを考慮すれば、水漏れ等の不都合が生じて初めて上記不都合の発生が発覚する可能性が高くなる。これは、上記付属する他の構成や排水機能の担保に鑑みて好ましいとはいえない。
【0028】
この点、本手段に示すように支柱を有する構成とした場合には、同支柱に対して排水管部材を引っ掛けたり巻き付けたりすることにより、排水管部材の取り回しをある程度制限することが可能となり、上記不都合の発生を抑えることができる。
【0029】
手段9.前記建物用キャビネットの奥側には、当該建物用キャビネットの水設備(例えば蛇口32)に水を供給するキャビネット用給水管(給水管34)と、その水設備にて使用された水を排出するキャビネット用排水管(洗面用排水管35)とが前記床部から上方に延出するようにして配設されており、
前記排水口は、前記床部において前記キャビネット用給水管及び前記キャビネット用排水管の配設領域と横並びとなる位置に配設されていることを特徴とする手段1乃至手段8のいずれか1つに記載の建物用キャビネット。
【0030】
手段9に示すように建物用キャビネット自体が給排水機能を有している場合には、その機能を実現するための配管が奥側に配置されるものと想定される。これは、建物用キャビネットの内部領域を生活用品等の物品を収容する収容領域として活用する上で好ましい配置である。このような建物用キャビネットに水使用設備用の排水管部材の一部を内蔵する場合には、排水口の位置をキャビネット用給水管及び前記キャビネット用排水管の配設領域と横並びとなる位置とすることが施工上好ましい。このような構成に手段1乃至手段8に示した技術的思想を適用することにより、貫通部を建物用キャビネットにおける手前側に配置したことの技術的意義が明確なものとなる。