(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記気圧差発生装置が前記締結具の供給装置側の端部に設けられて、前記搬送路の前記締結具の供給装置側の端部に高圧空気を流入させる高圧空気発生装置であることを特徴とする請求項1又は2に記載の締結具の搬送装置。
前記可撓性チューブは、可撓性線状体の側面に溝を形成し、円板の外周面に切削刃を備えた切削具の回転軸を、この溝に沿わせて移動させてT字溝を形成し、T字溝形成後の前記線状体に被覆チューブを被せて形成されることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の締結具の搬送装置。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】(a)は比較技術におけるネジ搬送路で長いネジを搬送する場合を示す側断面図及び正面図、(b)は(a)に示したネジ搬送路で短いネジを搬送する場合を示す側断面図、(c)は(a)に示したネジ搬送路で搬送されたネジがネジ締め装置に到達した時の問題点を示す図、(d)は本出願における短いネジを搬送するための可撓性チューブを示す側断面図及び正面図、(e)は本出願のネジ搬送装置が搬送するネジの特徴を説明する図である。
【
図2】(a)はネジ供給側とネジ締め装置との間に配置された本出願の第1の形態のネジ搬送路と高圧空気発生装置を示す説明図、(b)は本出願のネジ搬送装置に用いられる可撓性チューブと可撓性チューブ内のネジの姿勢を説明する説明図である。
【
図3】ネジ供給側とネジ締め装置との間に配置された本出願の第2の形態のネジ搬送路と負圧発生装置を示す説明図である。
【
図4】(a)は本出願のネジ搬送装置が対象とするネジの各部の寸法を示すネジの側面図、(b)は(a)に示したネジを搬送する可撓性チューブに設けられた断面T字状のネジ搬送路の寸法を示す可撓性チューブの正面図、(c)は本出願の可撓性チューブに設けられた断面T字状孔のネジの軸部分の孔を広くした場合の可撓性チューブの正面図、(d)は本出願の可撓性チューブに設けられた断面T字状孔のネジの頭部分の孔を広くした場合の可撓性チューブの正面図である。
【
図5】(a)は本出願のネジ搬送装置が搬送するM1.0のネジの寸法を示すネジの側面図、(b)は(a)に示したネジを搬送する場合の可撓性チューブに設けるT字状孔の寸法の一例を示す可撓性チューブの正面図である。
【
図6】本出願のネジ搬送装置に使用する可撓性チューブの第1の実施例の製作方法を示すものであり、(a)は断面が円形の線状体の長手方向に所定深さのネジの軸部を受け入れ用の溝を形成した状態を示す可撓性チューブの正面図、(b)は(a)に示した状態の可撓性チューブに、溝に直交するネジの頭部受け入れ用の穴を形成した状態を示す可撓性チューブの正面図、(c)は(b)に示した可撓性チューブを被覆部材で覆った状態を示す可撓性チューブの正面図である。
【
図7】(a)は
図6(b)に示したネジの頭部受け入れ用の穴を形成する切削刃の例を2種類示す平面図、(b)は(a)に示した切削刃の一方が取り付けられた切削具の側面図、(c)は
図6(a)に示した可撓性チューブに(b)に示した切削具を使用してネジの頭部受け入れ用の穴を形成する工程を示す斜視図、(d)は(c)の工程によって可撓性チューブに形成されたT字状孔の寸法と公差を示す可撓性チューブの正面図である。
【
図8】本出願のネジ搬送装置に使用する可撓性チューブの第2の実施例の製作方法を示すものであり、(a)は断面が円形の線状体を長手方向に左右に二分割して合わせ面にネジの頭部と軸部を受け入れ用の溝を形成した状態を示す分割された可撓性チューブの正面図、(b)は(a)に示した分割状態の可撓性チューブの合わせ面を接合して可撓性チューブの第2の実施例を製作した状態を示す可撓性チューブの正面図である。
【
図9】本出願のネジ搬送装置に使用する可撓性チューブの第3の実施例の製作方法を示すものであり、(a)は帯状の板金又はシート状の樹脂材料を長手方向に沿って折り曲げ加工して、内部にT字状の空間を備えた可撓性チューブを形成した状態を示す可撓性チューブの正面図、(b)は(a)に示した可撓性チューブの斜視図、(c)は(a)、(b)に示した可撓性チューブの開口部を封止部材で塞いだ状態を示す可撓性チューブの正面図である。
【
図10】(a)はネジ供給装置とネジ締め装置との間に可撓性チューブを90°曲げた状態で配置した実施例を示す図、(b)はネジ供給装置とネジ締め装置との間に可撓性チューブをU字状に曲げた状態で配置した実施例を示す図である。
【
図11】(a)は本出願の可撓性チューブにネジを供給するネジ供給装置の第1の実施例の構成を示す断面図、(b)は(a)に示したネジ供給装置の要部斜視図、(c)は本出願の可撓性チューブにネジを供給するネジ供給装置の第2の実施例の構成を示す断面図である。
【
図12】(a)は本出願の可撓性チューブとネジ締め装置との接続を示す断面図、(b)は(a)に示した可撓性チューブとネジ締め装置との接続の斜視図である。
【
図13】(a)は本出願の可撓性チューブにネジを供給するネジ供給装置の第3の実施例に使用するカートリッジの構成を示す断面図、(b)は(a)に示したカートリッジがネジ供給装置に装着され、ネジがエアで押し出される状態を示す断面図、(c)は(a)に示したカートリッジがネジ供給装置に装着され、ネジが押出装置で押し出される状態を示す断面図である。
【
図14】
図13(a)に示したカートリッジが可撓性チューブに取り付けられる状態を示す斜視図である。
【
図15】(a)は本出願の可撓性チューブにネジを供給するネジ供給装置の第3の実施例に使用するカートリッジの別の構成を示す断面図、(b)は(a)に示したカートリッジがネジ供給装置に装着され、ネジがエアで押し出される状態を示す断面図、(c)は(a)に示したカートリッジがネジ供給装置に装着され、ネジがエアと押出装置で押し出される状態を示す断面図である。
【
図16】ネジの頭部とネジ部との間にOリングが装着されたネジに対する本出願の可撓性チューブに設けられたT字状孔の形状を示す可撓性チューブの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を用いて本出願の実施の形態を、具体的な実施例に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施例では締結具がネジである場合を説明し、締結具の搬送装置はネジ搬送装置、締結具の供給装置はネジ供給装置、締結具の締結装置はネジ締め装置、搬送路はネジ搬送路として説明する。
【0013】
図1(a)は比較技術におけるネジを搬送するチューブ7で長いネジ8を搬送する場合を示すものであり、チューブ7の側断面図と正面図が示されている。比較技術においては、ネジ8がチューブ7の延伸方向と同じ向きで搬送されている。チューブ7で長いネジ8を搬送する場合は、長い軸部がチューブ7の延伸方向に沿って移動するので、ネジ8はチューブ7の延伸方向と同じ向きに移動するので問題は生じない。一方、同じチューブ7を用いて短いネジ6、即ち
図1(e)に示すように頭部61の直径φDに対して、ネジ全長Nが短いネジ6を搬送すると、
図1(b)に示すように軸部の姿勢がチューブ7で
拘束されないので、チューブ7内でネジ6が転がる。すると、このネジ6が、
図1(c)に示すようにチューブ7を経て、ネジ締め装置4のネジ流入部42から電動ドライバハウジング41の中に入った時に、ネジ6の姿勢が崩れ、電動ドライバ40でネジ締めできなくなる。
【0014】
このような理由から、短いネジは空気で圧送できないと一般に考えられてきた。これに対して、本願では、
図1(d)に示すように、可撓性チューブ1の中に、ネジ6の頭部収容部11と軸部収容部12を備えたT字状孔10をネジ搬送路として設けた。以後、符号10はT字状孔とネジ搬送路の両方に使用する。そして、ネジ搬送路10を備えた可撓性チューブ1で、短いネジ6を、ネジ6に正立姿勢を保持させたまま、高速でネジ供給装置からネジ締め装置に搬送することができた。
【0015】
図2(a)は、ネジ供給装置3とネジ締め装置4との間に配置された本出願のネジ搬送装置5の第1の形態を示すものである。ネジ搬送装置5は、ネジ搬送路を備えた可撓性チューブ1と高圧空気発生装置2Aとを備えている。可撓性チューブ1には、
図2(b)に示すように、頭部61と軸部(ネジ部)62を備え、軸部62の全長が短いネジ6を受け入れるためのT字状孔10がネジ搬送路10として設けられている。T字状孔10には、ネジ6の頭部61を収容する頭部収容部11と、軸部62を収容する軸部収容部12がある。T字状孔10は、ネジ6の軸線に沿った断面形状より僅かに大きい形状である。
【0016】
第1の形態のネジ搬送装置5にネジ6を供給するネジ供給装置3には、高圧空気発生装置2Aが接続されている。高圧空気発生装置2Aにはポンプ20、高圧タンク21及び電磁弁22があり、配管23で接続されている。ポンプ20は吸い込んだ空気(エア)を圧縮して高圧タンク21に送り込む。高圧タンク21には高圧のエアが蓄積されており、電磁弁22が開くと、電磁弁22が開いた時間だけ高圧のエアが可撓性チューブ1のネジ搬送路10に供給される。電磁弁22の開閉は、ネジ供給装置3によって行われる。従って、可撓性チューブ1のネジ搬送路10にネジ6を投入し、高圧エアを送ると、ネジ6はその姿勢がT字状孔10で拘束されたままエアと一緒に搬送される。この時のネジ6の向きは、
図1(a)のように横向きではなく、
図1(d)に示すように、可撓性チューブ1の長手方向Lに対して直交する方向Tとなる。高圧エアは瞬時にネジ搬送路10を流れるので、瞬時にネジ6を搬送できる。
【0017】
図3は、ネジ供給装置3とネジ締め装置4との間に配置された本出願のネジ搬送装置5の第2の形態を示すものである。ネジ搬送装置5にある可撓性チューブ1を用いてネジ6を搬送する場合、第1の形態では、ネジ供給装置3側に高圧空気発生装置2Aが設けられていた。一方、第2の形態では、ネジ締め装置4側に負圧発生装置2Vが設けられている。負圧発生装置2Vは、ポンプ24、負圧タンク25及び電磁弁26を備えており、配管23で接続されている。ポンプ20は負圧タンク25内の空気(エア)を吸引して外部に排出し、負圧タンク25内を負圧に保つ。負圧タンク25には負圧が蓄積されており、電磁弁26が開くと、電磁弁26が開いた時間だけ負圧が可撓性チューブ1のネジ締め装置4側の端部に供給される。また、負圧タンク25内の負圧は電動ドライバ40にも供給され、電動ドライバ40の先端部にネジ6を吸着させるのにも使用される。電磁弁26の開閉は、ネジ供給装置3が行っても良く、また、ネジ締め装置4が行っても良い。このように、ネジ6は可撓性チューブ1の両端に気圧差があれば、可撓性チューブ1のネジ搬送路10内を搬送される。
【0018】
ここで、本出願のネジ搬送装置5によって搬送されるネジ6の寸法と、可撓性チューブ1に設けられるネジ搬送路(T字状孔)10との関係について、
図4(a)から
図4(d)を用いて説明する。
図4(a)に示すネジ6では、符号Aは軸部62の直径、符号Bは軸部62の長さ、符号Cは頭部61の厚さ、符号Dは頭部61の直径(頭径)をそれぞれ示している。また、
図4(b)に示す可撓性チューブ1では、符号EはT字状孔10の軸部収容部12の直径、符号Fは軸部収容部12の長さ、符号Gは頭部収容部11の高さ、符号Hは頭部収容部11の直径をそれぞれ示している。ネジ6がT字状孔10に収まるには、当然A<E、B<F、C<G、D<Hである必要がある。
【0019】
次に、ネジ6の姿勢を拘束するには2種類あり、ネジ6の頭部61を使って拘束する方法と、ネジ6の軸部62を使って拘束する方がある。ネジ6の頭部61を使ってネジ6を拘束する場合を
図4(c)に示す。
図4(c)はネジ6が左端に偏って、頭部61が頭部収容部11から落ちかけている状態を示している。符号Xで示す部分でネジ6が落下せず拘束できるためには、D>E/2+H/2の関係が必要であり、ネジ6の頭部61が大きい場合に有効である。
図4(d)はネジ6の軸部62を使ってネジ6を拘束する方法を示している。符号Xで示す部分でネジ6が落下せず拘束できるには、E<A/2+D/2の関係が必要であり、ネジ6の頭部61が大きくない場合に有効である。
【0020】
尚、
図4(c)、
図4(d)は、ネジ6を拘束する条件を分かりやすく示したものであり、実際にはネジ6とT字状孔10の隙間を広くしすぎるのは良くない。これは、ネジ6とT字状孔10の隙間が広いと、エアでネジ6を搬送する時に、エアがネジ6を押す力が弱くなるので、T字状孔10内をネジ6が高速で移動することができなくなり、ネジ詰まりが発生する虞があるからである。
【0021】
ここで、一例として、本出願のネジ搬送装置5が搬送するM1.0のネジ6の寸法を
図5(a)に示し、
図5(b)に、
図5(a)に示したネジ6を搬送する場合の可撓性チューブ1に設けるT字状孔10の寸法を示す。可撓性チューブ1に直径4mmのポリアセタールの丸棒を使用する。そして、
図5(b)に示した寸法のT字状孔10を形成し、開口部を塞いだ状態で
図5(a)に示した寸法のネジ6をT字状孔10の中に入れ、高圧エアを注入するとネジ6はその姿勢を拘束した状態で搬送できた。
【0022】
次に、本出願のネジ搬送装置で使用する可撓性チューブ1の製作方法について、幾つかの例を説明する。
図6(a)から
図6(c)は、本出願のネジ搬送装置5に使用する可撓性チューブ1の第1の実施例の製作方法を示すものである。第1の実施例では、まず
図6(a)に示すように、断面が円形の線状体1Hの長手方向に、所定深さのネジの軸部を受け入れるための用の溝(軸部収容部)12を形成する。次に、
図6(b)に示すように、
図6(a)に示した状態の線状体1Hに、ネジの頭部受け入れ用の孔11を溝12に直交する方向に形成してT字状孔10を形成する。そして最後に、
図6(c)に示すように、溝12からエアが漏れないように線状体1Hの全体を被覆チューブ13で覆って可撓性チューブ1とする。
【0023】
図6(a)に示した線状体1Hに設けられた溝12を利用して、
図6(b)に示した頭部収容部11を形成する道具として、
図7(a)に示した切削刃51を備える切削機(Tスロットカッタ)50(
図7(b)参照)がある。切削機50は本体53の先端部に回転軸52を備えており、この回転軸52に切削刃51が取り付けられる。そして、
図7(c)に示すように、回転軸52によって切削刃51を回転させ、回転軸52を線状体1Hに設けられている溝12に沿って移動させ、二点鎖線で示した部分を切削刃51で削り取ると、
図6(b)に示した頭部収容部11が形成される。
図7(d)は
図7(c)に示した手法で可撓性チューブ1に形成されたT字状孔10の寸法と公差を示すものである。
【0024】
本出願のネジ搬送装置を用いて搬送するネジの種類は様々な形状があり、可撓性チューブ1はネジの形状に合わせて個別に少量生産することになると考えられる。このような場合は、前述の切削具を使用した切削加工により可撓性チューブを製作する方が、個々の仕様に合わせられるので都合が良い。なお、線状体1Hとして断面が円形のものを使用しているが、線状体の断面は円形に限定されるものではない。
【0025】
図8は、本出願のネジ搬送装置5に使用する可撓性チューブ1の第2の実施例の製作方法を示すものである。第2の実施例では、
図8(a)に示すように、断面が円形の線状体1Hを長手方向に左右に二分割して左側線状体1Lと右側線状態1Rに分ける。そして、左側線状体1Lと右側線状態1Rの合わせ面1FL,1FRにそれぞれ、ネジの頭部収容部用の溝11L,11Rと、軸部収容部用の溝12L,12Rを形成する。この状態で、
図8(b)に示すように、左側線状体1Lと右側線状態1Rの合わせ面1FL,1FRを接合すれば、T字状孔10を備えた可撓性チューブ1ができる。
【0026】
第2の実施例の製作方法は、第1の実施例のように切削具を用いなくても加工できる利点があるが、左側線状体1Lと右側線状態1Rを合わせ面1FL,1FRで接合する際に誤差が生じ、精度が悪くなる虞がある。しかし、第2の実施例の製作方法は、M1.0の小さなネジを搬送する可撓性チューブに対しては不向きであるが、大きなネジであればネジとT字状孔10の隙間が広くても拘束できるので、搬送に支障がない。むしろ、ネジが大きくなると、可撓性チューブの直径が大きくなり、曲がりにくくなるので、分割することで曲がり易くすることができる。
【0027】
図9は、本出願のネジ搬送装置5に使用する可撓性チューブ1の第3の実施例の製作方法を示すものである。第3の実施例では、
図9(a)、(b)に示すように、帯状の板金又はシート状の樹脂材料を長手方向に沿って折り曲げ加工して、内部にT字状の空間15を備えた可撓性のチャンネル部材14を製作する。この場合は、チャンネル部材14に開口部16が形成される。そこで、
図9(c)に示すように、開口部16には断面が凸状の栓部材17を取り付ければ、可撓性のチャンネル部材14を可撓性チューブ1として使用することができる。
【0028】
なお、前述の可撓性のチャンネル部材14を板金又はシート状の樹脂材料で製作する場合を除いて、可撓性チューブ1の材料としては、ネジが滑りやすく、加工のしやすさ、寸法安定性の面からポリアセタールが良い。しかし、ネジが滑りやすく、加工のしやすさ、寸法安定性さえ満足できれば、他の樹脂や他の材料でも構わない。可撓性チューブに使用する材料の硬さについては、ネジ締め装置の電動ドライバの移動量が小さいのであれば、金属のような硬い材料でも良く、移動が大きい場合は樹脂のような柔らかい材料が良い。また、ネジ供給装置と電動ドライバの距離も重要であり、ネジ供給装置とネジ締め装置の距離が近い場合は、可撓性チューブの材料は柔らかい方が良く、離れていれば硬くても構わない。
【0029】
また、ポリアセタールを使用した可撓性チューブは、直径が4mm程度であれば曲がりやすいので、真っ直ぐな材料のまま切削し、後で曲げても問題なかった。これ以上太い材料では、溝加工後に熱加工などの方法で曲げた方が良い。尚、
図5(b)に示した実施例では、T字状孔10は可撓性チューブ1の下半分に偏って形成している。このため、T字状孔10より上の寸法Wが小さい場合、つまり全体を薄肉にすると、可撓性チューブ1を曲げた時に寸法Eで示す軸部収容部12の幅が狭くなる方向に変形してしまう。そこで、寸法Wを大きくとり、可撓性チューブ1の上半分を中実にすることで、曲げによる溝幅の変動を低減させることができる。
【0030】
更に、T字状孔10の形状はネジ6の寸法より大きく、且つできるだけ隙間が狭い方が良いが、可撓性チューブ1を曲げた時を考慮して、T字状孔10の寸法を決める必要がある。このようにして出来上がった可撓性チューブ1を用いて、
図10(a)に示すように、ネジ供給装置3と電動ドライバを備えたネジ締め装置4を接続し、可撓性チューブ1が曲がるように配置する。可撓性チューブ1が曲がり難い場合は、予め可撓性チューブ1を曲げ加工しておくと良い。可撓性チューブ1の曲がりについて更に説明すると、ネジ締め装置4の電動ドライバの移動量が小さい場合、可撓性チューブ1を曲げなくても良いが、電動ドライバの移動量が大きい場合は、曲げる角度にも注意が必要である。
【0031】
図10(a)に示すように、ネジ供給装置3と電動ドライバを備えたネジ締め装置4の間に、可撓性チューブ1が90°曲がるよう配置すると、矢印M方向に電動ドライバが移動した時に、可撓性チューブ1は破線のように無理な屈曲を強いられる。このような場合は、
図10(b)に示すように、可撓性チューブ1をUの字に曲げると、電動ドライバが移動しても、破線のようにU字のままの形状で可撓性チューブ1が曲がるので、可撓性チューブ1が電動ドライバの動きに追従し易い。よって、ネジ供給装置3と電動ドライバを備えたネジ締め装置4の間に配置する可撓性チューブ1は、U字曲げあるいは、それ以上の角度、つまり180度以上に曲げた方が良い。また、ネジ全長が長くなると、
図6(C)あるいは、
図8(b)に示すチューブは、断面が縦方向に長い形状になるが、この長くなる方向と、上記のチューブが曲がる方向は異なるので、問題はない。
【0032】
次に、本出願のネジ搬送装置5の可撓性チューブ1へのネジ供給装置3からのネジ6の供給について説明する。
図11(a)は、本出願の可撓性チューブ1にネジ6を供給するネジ供給装置3の第1の実施例の構成を示す断面図であり、
図11(b)は
図11(a)に示したネジ供給装置3の要部斜視図である。ネジ供給装置3には既存のディスク式ネジ供給装置を使用することができる。
【0033】
ディスク式ネジ供給装置には、回転するディスク30と図示しないネジ溜りがあり、ディスク30はネジ溜りからネジ6を1つずつネジ保持部31に入れて可撓性チューブ1まで運ぶ。可撓性チューブ1の底面にはネジ6を通過させるための円形の孔18Cがあり、ディスク30はネジ6をこの円形の孔18Cの直下まで運ぶ。ネジ6が円形の孔18Cの直下まで運ばれると、ディスク30の内部からP方向へエアが吐出され、ネジ6がネジ保持部31から円形の孔18Cを通過して可撓性チューブ1にあるT字状孔10に入る。すると、可撓性チューブ1の端部にQ方向のエアが送り込まれ、ネジ6がネジ締め装置3の電動ドライバ側へ搬送される。なお、符号δで示す区間では、ネジ6が拘束されないので、この区間はできるだけ短い方が良い。
【0034】
図11(a)、(b)で説明した実施例では、円形の孔18Cから可撓性チューブ1にあるT字状孔10に送り込まれたネジ6は、その進む方向を90°曲げるために、Q方向のエアの流れを使用している。一方、
図11(c)に示す第2の実施例では、円形の孔18Cから可撓性チューブ1にあるT字状孔10に送り込まれたネジ6の進む方向を90°曲げるために、アクチュエータ32Aとロッド32Bを備えた押出装置32が使用されている。押出装置32が使用される場合は、可撓性チューブ1内のネジ6の搬送が、
図3で説明した負圧によって行われる場合が考えられる。
【0035】
図12(a)は本出願の可撓性チューブ1とネジ締め装置4の接続を示す断面図であり、
図12(b)は
図12(a)に示した可撓性チューブ1とネジ締め装置4との接続の斜視図である。ネジ6が鉄等の磁性材であれば、電動ドライバ40にマグネットドライバを使用することにより、可撓性チューブ1のT字状孔10から出てきたネジ6を吸着できる。一方、ネジ6が非磁性材の場合は、ネジ6を真空吸着するのが一般的であり、電動ドライバ40の周囲をシリンダ43で覆ってエアを吸引し、ネジ6を吸着する。
【0036】
図12(a)、(b)に示したネジの吸着方法は一般的な方法として使われている。本出願のネジ搬送装置の可撓性チューブ1はネジ6をドライバ40に対してほぼ直角に搬送することができるので、可撓性チューブ1はシリンダ43に対して90°に近い角度で接続すると、ドライバ40がネジを吸着し易い。
【0037】
図13(a)は本出願の可撓性チューブ1にネジを供給するネジ供給装置3の第3の実施例に使用するカートリッジ33の構成を示すものであり、
図13(b)は
図13(a)に示したカートリッジ33が可撓性チューブ1に取り付けられた状態を示すものである。カートリッジ33は、
図14に示すように、矩形の箱体の中にある仕切板34にスリット36が設けられている。ネジ6の軸部はこのスリット36に挿入され、頭部が仕切板34に保持されてカートリッジ33内に横一列に並んでいる。一方、可撓性チューブ1の端部近傍の側面には、可撓性チューブ1の内部に設けられたT字状孔10に連通するT字状のネジ挿入孔18Tが設けられており、T字状のネジ挿入孔18Tの周囲にはカートリッジ33を取り付けるためのジョイント35が設けられている。カートリッジ33はこのジョイント35によって可撓性チューブ1の側面に取り付けられる。なお、
図14には被覆チューブ13の図示は省略してある。
【0038】
カートリッジ33の中に横一列に並んだネジ6は、
図13(b)に示す実施例では、高圧エアによって押し出されて可撓性チューブ1の内部に設けられたT字状孔10に供給される。一方、
図13(c)に示す実施例では、カートリッジ33の可撓性チューブ1から遠い側の端部にアクチュエータ32Aとロッド32Bを備えた押出装置32が設けられていて、ネジ6は押出装置32によって押し出される。第3の実施例のネジ供給装置3では、カートリッジ33を複数用意して、順次交換すれば、連続的にネジ6を可撓性チューブ1に供給することができる。この場合、空になったカートリッジ33は別置きされたネジ供給装置を用いてネジを充填し、カートリッジを循環させて用いることができる。こうすることで、高価なネジ供給装置を有効利用することができる。
【0039】
図15(a)は本出願の可撓性チューブ1にネジを供給するネジ供給装置3の第3の実施例に使用する別の構成のカートリッジ37を示すものである。カートリッジ37は、
図13(a)に示したカートリッジ33のネジ6の供給側を壁37Wで塞ぎ、壁37Wに隣接する天井板37Cにネジ供給孔37A、底板37Bに押出孔37Dを設けたものである。そして、カートリッジ37の内部には、ネジ供給孔37Aに滑らかに接続するガイド37Gが向けられている。
【0040】
図15(b)は
図15(a)に示したカートリッジ37が可撓性チューブ1に取り付けられた状態を示すものである。この実施例のカートリッジ37はカートリッジ33と同様の矩形の箱体であり、その中にネジ6が横一列に並んでいる。一方、可撓性チューブ1の端部近傍の底面には、可撓性チューブ1の内部に設けられたT字状孔10に連通する円形の孔18Cが設けられており、円形の孔18Cの周囲にはカートリッジ37を取り付けるためのジョイント35が設けられている。カートリッジ37はこのジョイント35によって可撓性チューブ1の底面に取り付けられる。
【0041】
カートリッジ37の中に横一列に並んだネジ6は、
図15(b)に示す実施例では、高圧エアPによって押し出されてネジ供給孔37Aを通り、可撓性チューブ1の内部に設けられたT字状孔10に、円形の孔18Cを通じて供給される。高圧エアPはカートリッジ37の押出孔37Dからカートリッジ37内に供給される。カートリッジ37から高圧エアによってネジ6が1つ可撓性チューブ1の内部に供給されると、カートリッジ37の開口部側から高圧エアによってネジ6が壁37W側に移動させられ、次のネジ6が円形の孔18Cの直下に位置するようになる。
【0042】
一方、
図15(c)に示す実施例では、カートリッジ37の押出孔37Dの直下には高圧エア供給源ではなく、アクチュエータ32Aとロッド32Bを備えた押出装置32が設けられていて、ネジ6は押出装置32によって押し上げられる。第3の実施例のネジ供給装置3でも、カートリッジ37を複数用意して、順次交換すれば、連続的にネジ6を可撓性チューブ1に供給することができる。カートリッジ37から押出装置32によってネジ6が1つ可撓性チューブ1の内部に供給されると、カートリッジ37の開口部側から高圧エアによってネジ6が壁37W側に移動させられ、次のネジ6が円形の孔18Cの直下に位置するようになる。
【0043】
以上説明した実施例では、締結具の搬送装置としてネジ搬送装置を説明しているが、本出願の締結具の搬送装置はネジと同形状の締結具、例えばリベットでも勿論搬送ができ、回転体の形状であれば搬送が可能である。また、
図16に示すように、防水用のOリング63が付いたネジ6では、可撓性チューブ1に形成するネジ搬送路10に、Oリング63の部分を収容するOリング収容部19を設けることにより解決できる。即ち、搬送する締結具に多少の凹凸があってもその形状に合わせてネジ搬送路10を変形させれば対応可能なので、本実施例で説明したT字状孔とは、概ね全体の形状がT字状であるということを意味する。
【0044】
以上、本出願を特にその好ましい実施の形態を参照して詳細に説明した。本出願の容易な理解のために、本出願の具体的な形態を以下に付記する。
【0045】
(付記1) 締結具を、締結具の供給装置から締結具の締結装置に搬送する締結具の搬送装置であって、
前記締結具の供給装置と前記締結具の締結装置の間に配置され、搬送路を備えた可撓性チューブと、
前記可撓性チューブの前記締結具の供給装置側の端部と前記締結具の締結装置側の端部の何れか一方に設けられ、前記搬送路の両端部の間に、前記締結具を搬送するための気圧差を発生させる気圧差発生装置とを備え、
前記搬送路の断面形状を、前記締結具を前記軸部が搬送方向に対して直交する方向に受け入れて移動させることが可能なT字状断面に形成したことを特徴とする締結具の搬送装置。
(付記2) 前記気圧差発生装置が前記締結具の供給装置側の端部に設けられて、前記搬送路の前記締結具の供給装置側の端部に高圧空気を流入させる高圧空気発生装置であることを特徴とする付記1に記載の締結具の搬送装置。
(付記3) 気圧差発生装置が前記締結具の締結装置側の端部に設けられて、前記搬送路の前記締結具の締結装置側の端部に負圧を印加する負圧発生装置であることを特徴とする付記1に記載の締結具の搬送装置。
(付記4) 前記可撓性チューブの前記締結具の供給装置側の端部の側面に、前記締結具が通過可能なT字状孔が設けられており、
前記締結具の供給装置には、前記T字状孔に取り付け可能であり、内部に複数の締結具が頭部を上側にして横一列に並んで収容された、両端に開口部を有するカートリッジと、前記カートリッジの前記可撓性チューブへの取付側と反対側に設けられ、前記カートリッジ内に収容された前記締結具を1個ずつ、前記T字状孔を通して前記ネジ搬送路内に供給する締結具送出装置が設けられていることを特徴とする付記1から3の何れかに記載の締結具の搬送装置。
(付記5) 前記可撓性チューブの前記締結具の供給装置側の端部の底面に、前記締結具が通過可能な円形の孔が設けられており、
前記締結具の供給装置には、前記円形の孔に取り付け可能であり、内部に複数の締結具が頭部を上側にして横一列に並んで収容され、一端に開口部を有し、他端が壁で閉じられて天井部にネジ供給孔を有するカートリッジと、前記カートリッジの前記壁側に設けられ、前記カートリッジ内に収容された前記締結具を1個ずつ、前記ネジ供給孔と前記円形の孔を通して前記搬送路内に供給する締結具送出装置が設けられていることを特徴とする付記1から3の何れかに記載の締結具の搬送装置。
【0046】
(付記6) 前記可撓性チューブの前記締結具の供給装置側の端部の底面に、前記締結具が通過可能な円形の孔が設けられており、
前記締結具の供給装置には、締結具溜りから1個ずつ締結具が供給されて締結具保持部に保持され、回転することにより保持した前記締結具を前記円形の孔の直下に運ぶディスクと、前記締結具が前記円形の孔の直下に位置した時に、前記締結具を前記円形の孔を通して前記搬送路内に供給する締結具の送出装置が設けられていることを特徴とする付記1から3の何れかに記載の締結具の搬送装置。
(付記7) 前記締結具の送出装置が、前記カートリッジの前記可撓性チューブへの取付側と反対側から高圧空気を流入させる装置であることを特徴とする付記4から6の何れかに記載の締結具の搬送装置。
(付記8) 前記締結具の送出装置が、前記カートリッジの前記可撓性チューブへの取付側と反対側に設けられて、前記カートリッジ内に収容された前記締結具を1個ずつアクチュエータとロッドにより前記搬送路内に押し出す押出装置であることを特徴とする付記4から6の何れかに記載の締結具の搬送装置。
(付記9) 前記搬送路の断面形状と前記締結具の軸線方向の断面形状との間の前記隙間が0.1mmであることを特徴とする付記1から8の何れかに記載の締結具の搬送装置。
(付記10) 前記可撓性チューブは、可撓性線状体の側面に溝を形成し、円板の外周面に切削刃を備えたカッタの回転軸を、この溝に沿わせて移動させてT字溝を形成し、T字溝形成後の前記線状体に被覆チューブを被せて形成されることを特徴とする付記1から9の何れかに記載の締結具の搬送装置。
【0047】
(付記11) 前記可撓性チューブは、可撓性線状体をその軸線方向に2分割し、両分割面に前記締結具の頭部用の深溝と前記締結具の軸用の浅溝を形成した後、前記分割面を張り合わせて形成されることを特徴とする付記1から9の何れかに記載の締結具搬送装置。
(付記12) 前記可撓性チューブは、可撓性の金属板又はシート状の樹脂材料を中空のT字状に折り曲げて形成され、開口部が断面が凸状の栓部材で長手方向に封止されて形成されることを特徴とする付記1から9の何れかに記載の締結具の搬送装置。
(付記13) 前記可撓性線状体の断面が、直径4〜5mmの円形であることを特徴とする付記10又は11に記載の締結具の搬送装置。
(付記14) 締結具を、締結具の供給側から締結具の使用側に搬送する締結具の搬送方法であって、
前記締結具の供給側と前記締結具の使用側の間に配置する可撓性チューブに、前記締結具をその軸が搬送方向に対して直交する方向に受け入れて移動させることが可能なT字状の断面形状を備えた搬送路を形成し、
前記締結具をその軸が前記可撓性チューブの延伸方向と直交する向きに前記搬送路内に拘束し、
前記可撓性チューブの前記締結具の供給側と前記締結具の使用側の両端部間に発生させた気圧差によって、前記締結具を1個ずつ前記搬送路内を、前記拘束姿勢を保持した状態で搬送することを特徴とする締結具の搬送方法。
(付記15) 前記気圧差を、前記締結具の供給側に設けた高圧空気発生装置から高圧空気を前記搬送路内に流入させることによって発生させることを特徴とする付記12に記載の締結具の搬送方法。
(付記16) 前記気圧差を、前記締結具の使用側に設けた負圧発生装置から負圧を前記搬送路に印加することによって発生させることを特徴とする付記12に記載の締結具の搬送方法。