(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6195495
(24)【登録日】2017年8月25日
(45)【発行日】2017年9月13日
(54)【発明の名称】X線検出器において3Dゴーストアーチファクトを低減させる方法
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20060101AFI20170904BHJP
G01T 1/20 20060101ALI20170904BHJP
【FI】
A61B6/00 320Z
A61B6/00 300Q
G01T1/20 E
G01T1/20 F
G01T1/20 G
G01T1/20 J
G01T1/20 L
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-190244(P2013-190244)
(22)【出願日】2013年9月13日
(62)【分割の表示】特願2008-539579(P2008-539579)の分割
【原出願日】2006年11月7日
(65)【公開番号】特開2014-28281(P2014-28281A)
(43)【公開日】2014年2月13日
【審査請求日】2013年10月8日
【審判番号】不服2016-2853(P2016-2853/J1)
【審判請求日】2016年2月25日
(31)【優先権主張番号】05110553.4
(32)【優先日】2005年11月9日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(72)【発明者】
【氏名】ファン デ ハール ペテル ホルヘ
【合議体】
【審判長】
伊藤 昌哉
【審判官】
福島 浩司
【審判官】
▲高▼見 重雄
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭10−201752号公報(JP,A)
【文献】
特開2001−309915(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC A61B 6/00-6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体に照射するX線源と、該被験体を通過したX線放射線を受け、該X線放射線の強度分布を表す電気信号を生成するX線検出器とを有するX線システムを使用して、前記被験体について得られるX線画像におけるアフターグローによるゴーストを低減させる方法であって、前記X線検出器が、該X線検出器に入射するX線放射線を受け、前記X線放射線を光学放射に変換するシンチレータを有し、前記方法は、前記X線源と前記X線検出器との間に被験体が存在しないとき、前記X線源にX線放射線ビームを生成させ、前記検出器に該X線放射線を受けさせ、前記検出器に入射する前記X線放射線により、前記検出器において生じる均一なゴーストを表す電気信号を生成させることにより、ゴースト除去スキャンを定期的に得るステップを有し、前記ゴースト除去スキャンに用いられる線量は、シンチレータトラップが実質的に満たされるような線量であり、それぞれの被験体についてのその後のスキャンを得るために使用される線量と実質的に同じオーダーの検出器線量である、方法。
【請求項2】
前記ゴースト除去スキャンが少なくとも1日1回実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記X線システムがスイッチオンされるとき、自動的に前記ゴースト除去スキャンが実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ゴースト除去スキャンが、40mGyのX線放射線検出器線量で実行される、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線検出器において、3Dゴーストアーチファクトを低減させる方法に関し、必ずしも排他的ではないが、特に例えばCアーム、及びボリュームCT(コンピュータ断層撮影)システムで柔らかい組織を画像化する間に使用することに適する。
【背景技術】
【0002】
図面の
図1を参照すると、通常のX線システムは、ロボットアーム3により、患者台2に近接して支持されるスイングアーム(Cアーク又はGアーク)1を有する。スイングアーム1内にハウジングされてX線管4が設けられ、X線検出器5が患者(図示略)を通過したX線を受けるとともに該X線の強度分布を表す電気信号を生成するように配置及び構成され、該電気信号から患者の照射された領域の3D画像が再構成され得る。スイングアーム1を移動させることにより、X線管4及び検出器5は、患者台2の上に横たわる患者に対して所望のいかなる位置及び方向でも位置され得る。患者の照射された領域の3D再構成画像は、ディスプレイスクリーン6上に表示される。
【0003】
X線検出器5は、X線放射線を光放射に変換するタリウムをドープされたヨウ化セシウム(CsI:Tl)を含む変換層と、該光放射から電子信号を得る複数の感光素子とを有する典型的なフラット検出器(FD)である。このようなX線検出器は、論文'Amorphous silicon pixel layers with Caesium Iodide converter for medical radiography', by T. Jing et al. in IEEE Transactions in nuclear science 41(1994)903-909から知られる。既知のX線検出器の変換層は、厚さ65乃至220μmの範囲のCsI:Tl層として形成される。アモルファスシリコンpinダイオードは、CsI:Tl層に入射するX線放射線により生成されるシンチレーション光を検出する感光素子として使用される。Tlドープレベルは、0.1乃至0.2モル%に維持される。
【0004】
既知のX線検出器の変換層が高い変換効率を有するが、かなりの残光(アフターグロー)を被る。アフターグローは、X線の入射の際、変換層又はシンチレータにおいて、いわゆる「トラッピング」効果により生じ、変換層において発生される光放射が、X線が入射しなくなった後のいくらかの(短い)期間続く現象である。国際特許公開公報WO03/100460は、CsI:Tlが超高純度であり、Tlドープレベルが0.25乃至1.00at%の範囲内の範囲内にあるCsI:Tl変換層を有するX線検出器を記載する。結果として、X線の入射後に生成され続ける光放射のレベルが低下され、それゆえ、アフターグローがそれにしたがって減少される。
【0005】
ブライトバーン又は「ゴースト」は、シンチレータ内のゲイン効果により生じる「トラッピング」により生じる他の(より長期間の)現象であり、通常表示される画像に円形のアーチファクトを生成する、3D再構成が非常に影響を受けやすい長期間続くゴーストを生じさせる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、X線検出器のゴーストにより生じる3D再構成画像のアーチファクトの出現を更に低減させる改善された方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によると、被験体に照射するX線源と、該被験体を通過したX線放射線を受け、該X線の強度分布を示す電気信号を生成するX線検出器とを有するX線システムを使用して、被験体に関して得られるX線画像の差分ゴーストを低減させる方法が提供され、該X線検出器は、自身に入射するX線放射線を受け、該X線放射線を光放射に変換するシンチレータを有し、前記方法は、前記X線源とX線検出器との間に被験体がいないときに、前記X線源にX線放射線ビームを生成させ、前記検出器に対して前記X線放射線を受けさせるとともに、前記検出器において、入射する前記X線により生じる均一なゴーストを表す電気信号を生成させることにより、ゴースト除去(デゴースト)スキャンを周期的に得るステップを有する。
【0008】
したがって、各々の後続のスキャンの間に、更なる著しいゴーストが生成され得ないように、ゴースト除去スキャンが、シンチレータ(通常CsI:Tlシンチレータ)内に高い度合いの「トラッピング」を生じさせるので、ゴースト除去スキャンの獲得に続いて得られるスキャンにおける差分ゴーストの発生は、かなり低減される。
【0009】
好ましくは、ゴースト除去スキャンは、少なくとも1日1回、場合によりX線システムがスイッチオンにされるとき自動的に実行される。有益なことに、ゴースト除去スキャンは、比較的高いX線放射線検出器線量で、通常それぞれの被験体に関する後続のスキャンを得るために使用されるものと実質的に同じオーダーの線量で実行される。
【0010】
本発明のこれら及び他の態様は、以下に記載される実施例から明らかになり、該実施例を参照して明らかにされるであろう。本発明の実施例は、単に例として、添付の図を参照して記載されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の例示的な実施例によるX線検出器を使用するX線システムの概略的な側面図である。
【
図2】
図2は、複数の検出器素子を有するCMOSチップの展開図である。
【
図3】
図3は、例示的なX線システムのX線検出器に組み込まれるセンサマトリクスの回路図を示す。
【
図4】
図4は、本発明の例示的な実施例による方法における主要なステップを図示する概略的なフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面の
図1を参照して記載され、図示されるようなシステムに使用される平面X線検出器は、通常複数の行に配置される複数の検出器素子から構成される。
図2は、このような検出器を形成するとともに、複数の検出器素子を有するCMS基板の展開図を示す。複数のフォトダイオード8及び関連付けられる増幅器素子(図示略)は、同じ基板上に集積化csemiconductor技術で実現される。したがって、CMOSチップ9は、検出器素子10(画像素子又はピクセルとも呼ばれる)が、マトリクスの形態で配置され、例えばこの場合、前記素子は、縦方向に6行、横方向に9列配置されて実現される。完全な検出器アレイ3は、通常、複数の連続して配置されるチップ9からなる。
【0013】
各々のCMOSチップ9の上に、CMOSチップ9と同程度の大きさのシンチレータ11により形成される変換層が配置される。シンチレータ11は、TlをドープしたCsIにより形成され、光学接着剤13の薄い層により、前記CMOSチップに対して正確に位置されるようにCMOSチップに接続される。吸収層14は、シンチレータの個々の結晶12の間に設けられる。
【0014】
CMOSチップ9は、接着層16によりプリント回路ボード又はPCB15に取り付けられる。CMOSチップ9からPCB15への電気接続は、ボンドパッド17へのリードにより形成される。
【0015】
X線放射線が検出器に入射する場合、X線量(γ)は、シンチレータ11に吸収され、可視光に変換される。図面の
図3を参照すると、X線画像における各々のピクセルに対して、フォトセンサ素子22、収集キャパシタ23、及びスイッチング素子40を有するセンサ素子21が設けられる。電荷は、入射X線からフォトセンサ素子22により得られ、該電荷は、収集キャパシタ23により収集される。収集電極3は、それぞれの収集キャパシタ23の部分を形成する。センサ素子の各々の列に対してそれぞれ読取線19が設けられ、各々の収集キャパシタンス23は、自身のスイッチング素子40を経由してそれぞれの読取線19に結合される。フォトセンサ素子は基板60に設けられ、例として
図3は、3×3センサ素子のみを示すが、実用的な実施例において、より多くのセンサ素子、例えば2000×2000が使用される。
【0016】
収集された電荷を読み出すため、収集キャパシタンスからの電荷をそれぞれの読み出し線に伝えるように、関連するスイッチング素子40が閉じられる。別個の読取線19は、出力信号が多重化回路25に供給されるそれぞれの高感度出力増幅器24に結合される。電子画像信号は、多重化回路25により出力信号から構成される。スイッチング画像信号40は、アドレス線27により各々の行に対してスイッチング素子に結合される行駆動回路26により制御される。多重化回路は、電子画像信号を例えばモニタ6に供給し、該モニタに、X線画像の画像情報が表示されるか、又は電子画像信号が、更なる処理のために画像プロセッサ29に供給され得る。
【0017】
したがって、図面の
図1に戻って参照すると、既知のX線システムにおいて、検査されるべき患者は、患者台2の上に位置され、それから、X線管4により放出されるX線ビームで照射される。患者のX線吸収の局部的な差異により、X線影画像がX線検出器に検出される。X線検出器5に組み込まれるセンサマトリクスにより、X線画像は、電子画像信号に変換される。電子画像信号は、X線画像の画像情報が表示されるモニタ6に供給される。
【0018】
上で説明されるように、平面検出器に使用されるCsI:Tlシンチレータは、(通常)円形のアーチファクトを内部に生じさせるという点で、3D再構成画像の品質に不都合な影響を与える長時間続くゴーストが生じるという欠点を被る。このようなゴースト画像は、シンチレータ内の差分ゲイン効果により生じられ、シンチレータ内のトラッピング効果と組み合わせて、不均一放射線を通じて生成される。ゴーストがゲイン効果であるので、該ゴーストは、(理論的に)ゲイン補正を適用することを通じて補正され得る。ゲイン補正は、「空気」の画像(すなわち、X線管とX線検出器との間にいかなる物体もなく(コリメーションもなく)得られる画像)に基づき、ゴーストは、ゲイン補正が適用される場合、物体の画像と「分けられる」。しかしながら、シンチレータ内にアフターグローが生成される前に、ゲインスキャンが実行される(すなわち空気の画像が得られる)場合、このようなゲイン補正は役立たないであろう。言い換えると、ゴーストは、各々のスキャンとともに変化する傾向にあり、(従来の方法における)ゲインスキャンは、一日に1回のみ得ることができ、上述のゲイン補正方法は、それゆえ変化するゴーストに対処することができない。
【0019】
この問題は、本発明の例示的な実施例にしたがって、非常に高い(蓄積された)検出器線量(約40mGy)で「ゴースト除去」スキャン(「空気」スキャン)を(好ましくは各々の日の開始の際に)得ることにより克服される。この結果、(シンチレータトラップのほとんどが満たされるので)強いが均一なゴーストとなり、これにより、強い差分ゴーストの更なる生成を回避する。したがって、第1の例において、内在する強いゴーストが生成され、その結果、全てのその後に得られるスキャンに同じ内在するゴーストが存在し、補正されることを必要とする更なる差分(変化)ゴーストは生成されない。したがって、不均一ゴーストは、初期の「ゴースト除去」スキャンの間、強いが均一のゴーストの生成により抑制される。ゴーストは、通常一日の時間スケールにおいて減衰し、したがってゴースト除去スキャンは、好ましくは1日に1回繰り返されるべきである。それゆえ、2,3日使用されていないシステムは、「ゴースト除去」スキャンが最初に実行されない限り、差分ゴーストに対して非常に影響を受けやすい。
【0020】
したがって、図面の
図4を参照して要約すれば、本発明による方法は、比較的高い検出器線量において「空気」の画像を得ることによりゴースト除去スキャンを実行するステップ100と、それぞれの被験体に関して続いてスキャンを実行するステップ102と、いつ最後のゴースト除去スキャンが実行されてから所定の期間が経過するかを決定するステップ104と、ゴースト除去スキャンを繰り返すステップとを有する。
【0021】
上述の実施例は、本発明を制限するのではなく説明し、当業者らは、請求項により規定される本発明の範囲から逸脱することなく多くの代替の実施例を設計することができるであろうということは、留意されるべきである。請求項において、括弧に挟まれた参照符号は、請求項を制限するとして解釈されるべきではない。「有する」等の言葉は、全体として請求項又は明細書に列挙された以外の要素又はステップの存在を排除しない。要素に対する単数の表記は、このような要素の複数を指すことを排除せず、逆も同様である。本発明は、いくつかの別個の要素を有するハードウェア、及び適切にプログラムされたコンピュータにより実施され得る。いくつかの手段を列挙する装置の請求項において、これらの手段のいくつかは、ハードウェアの同一のアイテムにより実現され得る。異なる従属請求項に共通してある手段が繰り返されるという単なる事実は、これらの手段の組合せが有利に使用され得ないことを示さない。
【符号の説明】
【0022】
1:アーム
2:患者台
3:検出器アレイ
4:X線管
5:X線検出器
6:モニタ
8:フォトダイオード
9:CMOSチップ
10:検出器素子
11:シンチレータ
13:光学接着剤
14:吸収層
15:PCB
16:接着層
17:ボンドパッド
19:読取線
21:センサ素子
22:フォトセンサ素子
23:収集キャパシタ
24:出力増幅器
25:多重化回路
26:駆動回路
27:アドレス線
29:画像プロセッサ
40:スイッチング素子
60:基板
100:ゴースト除去スキャンを実行するステップ
102:スキャンを実行するステップ
104:いつ最後のゴースト除去スキャンが実行されてから所定の期間が経過するかを決定するステップ