(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明について説明する。
本発明は、珪酸ナトリウムを原料として調整され、有機溶媒に分散されたときの動的光散乱法によって測定された平均粒子径(D2)が0.02〜0.3μmの範囲にあり、かつ、同範囲の粒度分布の頻度が95%以上で標準偏差が0.10μm以下である疎水性シリカ粉末である。
このような疎水性シリカ粉末を、以下では「本発明のシリカ粉末」ともいう。
【0010】
また、本発明は、次の工程1〜工程2に続いて、工程3〜工程4を1回〜6回反復して行うことを特徴とし、本発明のシリカ粉末が得られる、疎水性シリカ粉末の製造方法である。
工程1:珪酸ナトリウムを原料として調整され、平均粒子径(D1)が0.02〜0.3μmの範囲にあり、かつ、同範囲の粒度分布の頻度が95%以上で標準偏差が0.10μm以下であるシリカ微粒子が分散しているシリカゾルを脱陽イオン処理および脱陰イオン処理する工程。
工程2:前工程に続き、シリカゾルを噴霧乾燥し、シリカ粉末乾燥品を得る工程。
工程3:前工程に続き、水分存在下、前記シリカ粉末乾燥品にシラン化合物、またはシラン化合物およびシランカップリング剤を加え、混合し、疎水化シリカ粉末を得る工程。
工程4:前工程に続き、疎水化シリカ粉末を粉砕する工程。
このような疎水性シリカ粉末の製造方法を、以下では「本発明の製造方法」ともいう。
【0011】
<本発明の製造方法>
本発明の製造方法が備える工程1〜工程4について説明する。
【0012】
<工程1>
本発明の製造方法が備える工程1では、初めに、特定のシリカゾルを用意する。このシリカゾルは、珪酸ナトリウムを原料として調整されるものである。また、平均粒子径(D1)が0.02〜0.3μmの範囲にあり、かつ、同範囲の粒度分布の頻度が95%以上で標準偏差が0.10μm以下であるシリカ微粒子が分散しているものである。
【0013】
このようなシリカゾルは、本願出願人による特開昭63−045114号公報に記載の方法や、特開昭63−64911号公報に記載の、シード粒子として用いられる比較的小さな粒子径を有するシリカ粒子の分散液の製造方法によって得ることができる。
【0014】
また、このようなシリカゾルは、例えば、カレットを溶解等して得た珪酸ナトリウム水溶液について、陽イオン交換樹脂等を用いて陽イオン成分を除去して酸性珪酸液を得た後、この一部をシード液、別の一部をフィード液とし、前記シード液をアルカリ性(例えばpHを11〜12)に調整し、さらに好ましくは80〜90℃程度に保持し、ここへ、好ましくは1〜20℃とした前記フィード液を徐々に添加して得ることができる。
【0015】
工程1において用いるシリカゾルは、例えば上記のような方法によって得られるものであってシリカ微粒子が水に分散してなるものである。
【0016】
ここでシリカ微粒子の平均粒子径(D1)は0.02〜0.3μmの範囲であるが、0.03μm以上であることが好ましい。また、0.2μm以下であることが好ましく、0.16μm以下であることがより好ましい。
【0017】
シリカ微粒子の粒度分布における頻度(体積基準)は、その95%(体積%)以上が0.02〜0.3μmの範囲内である。この範囲内にある上記頻度は98%以上であることが好ましく、実質的に100%であることがさらに好ましい。
【0018】
シリカ微粒子の粒度分布における頻度(体積基準)は、その標準偏差(SD)が0.10μm以下であり、0.07μm以下であることが好ましい。
【0019】
前記シリカ微粒子の平均粒子径(D1)および粒度分布の頻度は、次のような方法で粒度分布を測定して得る値を意味するものとする。
初めに、シリカ微粒子が分散してなるシリカゾルに純水を添加して、シリカ微粒子の質量濃度を1質量%に調整し、10分超音波にて分散した後、従来公知の動的光散乱粒子径測定装置(例えば、日機装社製、マイクロトラック)にて、粒度分布を測定する。測定条件は、粒子屈折率:1.45、密度:2.2g/cm
3、溶媒屈折率:1.333、測定時間:60秒とする。そして、粒度分布(体積基準)を測定し、その粒度分布から平均粒子径(メジアン径、μm)と頻度(体積%)を読み取る。
なお、後述する実施例および比較例においても、シリカ微粒子の平均粒子径(D1)および粒度分布の頻度は、このような方法によって測定した。
【0020】
シリカ微粒子の比表面積は特に限定されないが、140m
2/g以下であることが好ましく、110m
2/g以下であることがより好ましい。より分散性に優れる疎水性シリカ粉末が得られるからである。
【0021】
なお、本発明において比表面積は、連続流動法によるBET1点法測定で求める値とする。この測定方法について具体的に説明する。初めに、シリカゾル50mlをHNO
3でpH3.5に調整し、1−プロパノール40mlを加え、110℃で16時間乾燥した試料について、乳鉢で粉砕後、マッフル炉にて500℃、1時間焼成し、測定用試料とする。そして、試料0.5gを測定セルに取り、窒素30体積%/ヘリウム70体積%混合ガス気流中、300℃で20分間脱ガス処理を行い、その上で試料を上記混合ガス気流中で液体窒素温度に保ち、窒素を試料に平衡吸着させる。次に、上記混合ガスを流しながら試料温度を徐々に室温まで上昇させ、その間に脱離した窒素の量を検出し、予め作成した検量線により、比表面積を算出する。このようなBET比表面積は、公知のBET式粉体比表面積測定装置(例えば、ユアサアイオニクス製、型番マルチソーブ12)を用いて測定することができる。
【0022】
シリカ微粒子の比表面積から算出される平均粒子径(D0)は、0.02〜0.3μmの範囲であることが好ましい。この平均粒子径(D0)は0.02μm以上であることが好ましい。また、0.2μm以下であることが好ましく、0.16μm以下であることがより好ましく、0.12μm以下であることがさらに好ましい。
ここで平均粒子径(D0)は、6000/(2.2×SA)から算出して求めるものとする。SAは比表面積を意味し、前述のBET1点法にて測定する値を意味する。
【0023】
シリカ微粒子の形状は球状および金平糖状からなる群から選ばれる少なくとも1つの形状であることが好ましい。
ここで、球状のシリカ微粒子は、走査型電子顕微鏡を用いて25万から50万倍に拡大した画像から読み取れる短径/長径比が0.8〜1.2の範囲内にあるものを意味するものとする。
また、金平糖状のシリカ微粒子は、球状シリカ微粒子の表面に複数の疣状突起が形成された物であり、その形状は概ね金平糖に類似している。このような複数の疣状突起が形成された表面については表面粗度によりその範囲が規定され、具体的には本願出願人による特開2008−169102号公報に規定されている。また、このような金平糖状のシリカゾルの製造方法についても、同公報に記載されている。
【0024】
シリカゾルに含まれるシリカ微粒子の濃度(固形分濃度)は特に限定されないが、5〜50質量%であることが好ましく、10〜40質量%であることがより好ましい。
【0025】
シリカゾルのpHは特に限定されないが、8〜11であることが好ましく、9〜10.5であることがより好ましい。
【0026】
シリカゾルは、HClやNaOH等の従来公知の安定剤を含むことができる。
【0027】
工程1では、上記のようなシリカゾルについて脱陽イオン処理および脱陰イオン処理を施す。
脱陽イオン処理と脱陰イオン処理とを施す順番は特に限定されないが、前記シリカゾルに脱陽イオン処理を施した後に脱陰イオン処理を施すことが好ましい。
【0028】
脱陽イオン処理は、前記シリカゾルに含まれる陽イオン成分の少なくとも一部(好ましくはほとんど全て)を除去できる処理であれば特に限定されず、例えば従来公知の処理を適用することができる。脱陽イオン処理は陽イオン交換処理であることが好ましい。陽イオン交換処理としては、例えば陽イオン交換樹脂とシリカゾルとを接触させる処理が挙げられる。
【0029】
脱陰イオン処理は、前記シリカゾルに含まれる陰イオン成分の少なくとも一部(好ましくはほとんど全て)を除去できる処理であれば特に限定されず、例えば従来公知の処理を適用することができる。脱陰イオン処理は陰イオン交換処理であることが好ましい。陰イオン交換処理としては、例えば陰イオン交換樹脂とシリカゾルとを接触させる処理が挙げられる。
【0030】
上記のようにして得られた脱陽イオン処理および脱陰イオン処理した後のシリカゾルを、次の工程2に供することができるが、上記のような処理を施した後のシリカゾルについて、さらに、ポリ塩化アルミニウムを加え、混合し、さらに脱陰イオン処理(好ましくは陰イオン交換処理)を施すことが好ましい。このような処理を行うと、負の電荷量が増え、分散性に優れた疎水性シリカ粉末を得ることができるからである。
【0031】
上記の脱陽イオン処理および脱陰イオン処理した後のシリカゾルと混合するポリ塩化アルミニウムは粉状のものであってもよいし、粉体が液体に分散した状態のものであってもよい。
また、前記シリカゾルとポリ塩化アルミニウムとの混合は従来公知の方法であってよく、例えば前記シリカゾルへポリ塩化アルミニウムを添加した後、攪拌機等を用いて撹拌することで混合することができる。
【0032】
前記シリカゾルとポリ塩化アルミニウムとの混合比は特に限定されないが、前記シリカゾルに含まれるシリカ微粒子の質量に対する、固体としてのポリ塩化アルミニウムのアルミナ換算質量の比(百分率)(すなわち、ポリ塩化アルミニウム中のアルミナ/シリカ微粒子×100)で、0.01〜4.0質量%であることが好ましく、0.1〜2.0質量%であることがより好ましい。
【0033】
その後の脱陰イオン処理は、前述の、前記シリカゾルに行われる脱陰イオン処理と同様であってよい。
【0034】
<工程2>
工程2では、工程1の処理を施された後のシリカゾルを噴霧乾燥し、シリカ粉末乾燥品を得る。
【0035】
噴霧乾燥は、シリカゾルをノズルからチャンバー内に噴霧し、チャンバー内で熱風と接触させ、瞬間的に乾燥させる方法である。噴霧乾燥法は、乾燥時間が短いため、比較的熱に弱い物質を用いる場合にも適しており、また、連続的に大量生産できるため低コストでシリカ粉末乾燥品を得ることができる。
【0036】
噴霧乾燥のための各条件は、得られるシリカ粉末乾燥品の粒子径等を考慮しながら、適宜調整することができる。例えば、熱風気流中に1〜3リットル/分の速度で噴霧することによって行われる。ここでノズル噴霧圧は0.2〜0.6MPaとすることが好ましい。また、この際、熱風の温度を、入口温度が好ましくは70〜400℃、より好ましくは100〜300℃、さらに好ましくは220〜240℃の範囲内、出口温度が好ましくは40〜60℃の範囲にあるように調整する。また、前記シリカゾルは、前記固形分濃度が1〜50質量%、好ましくは5〜30質量%となるように予め調整した後、これをスプレードライヤーを用いて噴霧乾燥することが好ましい。
【0037】
ここで出口温度を40〜60℃(好ましくは50〜60℃)とすると、得られるシリカ粉末乾燥品に適量の水分が残存し、次の工程において水分量を適切な範囲に調整する処理を省略することができるので好ましい。
【0038】
<工程3>
工程3では、工程2において得られたシリカ粉末乾燥品について、水分存在下、シラン化合物、またはシラン化合物およびシランカップリング剤を加え(すなわちシラン化合物のみを加えるか、シラン化合物とシランカップリング剤とを加え)、混合し、疎水化シリカ粉末を得る。
【0039】
シラン化合物として、ジシラザン化合物が好ましい。例えば、1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン、1,3−Bis(クロロメチル)テトラメチルジシラザン、1,3−Bis(3,3,3−トリフルオロプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,3−ジフェニルテトラメチルジシラザン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、ヘプタメチルジシラザン、1,1,3,3−テトラメチルジシラザン等が挙げられる。
ただし、本発明のシラン化合物には、後述するシランカップリング剤は含まれないものとする。
【0040】
ジシラザン化合物は1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン(ビス(トリメチルシリル)アミン、以下「HMDS」ともいう)が好ましい。HMDSは、通常、無色透明の液体として存在する。
シラン化合物(好ましくはHMDS)のシリカ粉末乾燥品への添加量は特に限定されないが、シリカ粉末乾燥品100質量部(ドライベース)に対して、0.5〜100質量部であることが好ましく、4〜60質量部であることがより好ましい。
【0041】
また、上記のシラン化合物とともにシランカップリング剤をシリカ粉末乾燥品へ添加することができるが、シランカップリング剤は添加しなくても良い。本発明では、シランカップリング剤は疎水性シリカ粉末の電荷制御剤として使用するためである。
シランカップリング剤は、YSiX
3やY
2SiX
2の一般式を持つものであり、Xはアルコキシ基などの加水分解性の置換基で無機質と反応し、Yは有機質と反応しやすいビニル基、エポキシ基、アミノ基などである。例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの炭酸塩、トリス−(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランが挙げられる。特に、正電荷の疎水性シリカ粉末を得たい場合は、3−アミノプロピルトリメトキシシランのようなアミノシランカップリング剤を用いることが好ましい。
【0042】
シラン化合物とともにシランカップリング剤を添加する場合、シランカップリング剤のシリカ粉末乾燥品への添加量は特に限定されないが、シリカ粉末乾燥品100質量部(ドライベース)に対して、0.5質量部以下であることが好ましく、0.05質量部以下であることがより好ましい。
【0043】
シラン化合物(好ましくはHMDS)、またはシラン化合物およびシランカップリング剤をシリカ粉末乾燥品へ加える際には、予め、シリカ粉末乾燥品の水分を含んでいる状態とする。すなわち、水分存在下にて、シリカ粉末乾燥品へシラン化合物、またはシラン化合物およびシランカップリング剤を加える。前述のように、工程2によって得られたシリカ粉末乾燥品に適量の水分が残存している場合は、その状態のまま、シリカ粉末乾燥品へシラン加工物、またはシラン化合物およびシランカップリング剤を加えてよいが、工程2によって得られたシリカ粉末乾燥品の水分量が不足している場合は水を加えて調整する。具体的にはシリカ粉末乾燥品の水分量が1〜30質量%である場合、水分量が適量であるとしてよい。この水分量は5〜25質量%であることが好ましく、10〜20質量%であることがより好ましい。
【0044】
シラン化合物(好ましくはHMDS)、またはシラン化合物およびシランカップリング剤をシリカ粉末乾燥品へ加え、混合する際は、高速撹拌装置等を用いて強撹拌することでシリカ粉末乾燥品とシラン化合物(好ましくはHMDS)またはシランカップリング剤との接触を促すことが好ましい。
【0045】
シラン化合物(好ましくはHMDS)、またはシラン化合物およびシランカップリング剤をシリカ粉末乾燥品へ加える際は、所定量のシラン化合物(好ましくはHMDS)、またはシラン化合物およびシランカップリング剤を複数回に分けてシリカ粉末乾燥品へ加えることが好ましい。具体的には5回程度に分けて加えることが好ましい。すなわち、シリカ粉末乾燥品へ所望量のシラン化合物(好ましくはHMDS)、またはシラン化合物およびシランカップリング剤を加えた後、撹拌し、その後、再び、所定量のシラン化合物(好ましくはHMDS)、またはシラン化合物およびシランカップリング剤を加えて撹拌する操作を繰り返すことが好ましい。シリカ粉末乾燥品とシラン化合物(好ましくはHMDS)またはシランカップリング剤との接触をより促すことができ、得られる疎水性シリカ粉末における疎水性の程度が高まる傾向があるからである。
【0046】
シリカ粉末乾燥品へシラン化合物(好ましくはHMDS)、またはシラン化合物およびシランカップリング剤を加え、混合した後、乾燥処理を施すことが好ましい。例えば100〜200℃程度(好ましくは130〜160℃)の温度にて1〜5時間程度、乾燥処理することが好ましい。得られる疎水性シリカ粉末における疎水性の程度が高まる傾向があるからである。また、余剰のシラン化合物またはシランカップリング剤や副生成のメタノールやアンモニアを除去できるからである。
【0047】
シランカップリング剤をシリカ粉末乾燥品へ加える際には、前述したシラン化合物を加える前に行うことが好ましい。シラン化合物(好ましくはHMDS)を加えた後に加えると、シラン化合物の立体障害の影響を受け、所定量のシランカップリング剤を粉末に付与することができず、粉末の電荷量を制御できないからである。
【0048】
<工程4>
工程4では、工程3において得られた疎水化シリカ粉末を粉砕する。
粉砕は、高圧ガス(空気等)をミル内に噴射し原料を粉砕する高速旋回粉砕装置(ジェットミル)を用いることが好ましい。
【0049】
本発明の製造方法では、上記のような工程1および工程2を行った後、工程3〜工程4を1回〜6回反復して行う。例えば工程1、工程2、工程3および工程4を行った後に得られた疎水性シリカ粉末の平均粒子径(D2)や粒度分布が所望のものではなかった場合、再度、工程3および工程4を反復して行うことができる。すなわち、工程3および工程4を1セットとし、このセットを繰り返して行うことができる。したがって、工程4を行った後、得られた疎水性シリカ粉末の粒度分布を測定して、平均粒子径(D2)や粒度分布が所望の範囲内であるかを確認する操作を行うことが好ましい。
なお、工程1、工程2、工程3および工程4を行った後、工程3および工程4のセットを1回行った場合、反復回数は2回とカウントする。
また、前記工程1〜工程2に続いて、工程3〜工程4を1回〜6回反復して行った後、再度、工程3を行うことが好ましい。
上記の反復回数は1回〜6回であるが、上記のように工程1において、ポリ塩化アルミニウムを加え、混合し、さらに陰イオン交換処理した場合は、上記の工程3および工程4のセットの反復回数が1回〜3回であることが好ましい。この理由は、ポリ塩化アルミニウムをシリカ粒子に被覆したことにより、疎水性シリカ粉末の負の電荷量が大きくなり、解砕時に粒子の反発により再凝集しにくくなるためと、本発明者は考えている。
【0050】
このような本発明の製造方法によって、本発明のシリカ粉末を得ることができる。ただし、本発明のシリカ粉末は、珪酸ナトリウムを原料として調整されるのであれば、その製造方法は限定されない。
【0051】
<本発明のシリカ粉末>
本発明のシリカ粉末は、有機溶媒に分散されたときの動的光散乱法によって測定された平均粒子径(D2)が0.02〜0.3μmの範囲にあり、かつ、同範囲の粒度分布の頻度が95%以上で標準偏差が0.10μm以下である疎水性シリカ粉末である。
【0052】
本発明のシリカ粉末の平均粒子径(D2)は0.02〜0.3μmの範囲であるが、0.03μm以上であることが好ましい。また、0.2μm以下であることが好ましく、0.16μm以下であることがより好ましい。
【0053】
本発明のシリカ粉末の粒度分布における頻度(体積基準)は、その95%(体積%)以上が0.02〜0.3μmの範囲内である。この範囲内にある上記頻度は98%以上であることが好ましく、実質的に100%であることがさらに好ましい。
【0054】
本発明のシリカ粉末の粒度分布における頻度(体積基準)は、その標準偏差(SD)が0.10μm以下であり、0.07μm以下であることが好ましい。
【0055】
本発明のシリカ粉末の平均粒子径(D2)および粒度分布の頻度は、次のような方法で粒度分布を測定して得る値を意味するものとする。
初めに、測定粉末0.3gを秤量し、30gのメタノールで1%に希釈し、10分超音波にて分散した後、従来公知の動的光散乱粒子径測定装置(例えば、日機装社製、マイクロトラック)にて、粒度分布を測定する。測定条件は、粒子屈折率1.45、密度2.2g/cm
3、溶媒屈折率1.329、測定時間60秒とする。そして、粒度分布(体積基準)を測定し、その粒度分布から平均粒子径(メジアン径、μm)を算出し、さらに上記範囲内の頻度(体積%)を読み取る。
なお、後述する実施例および比較例においても、本発明のシリカ粉末(疎水性シリカ粉末)の平均粒子径(D2)および粒度分布の頻度は、このような方法によって測定した。
【0056】
本発明のシリカ粉末の比表面積は特に限定されないが、7m
2/g以上であることが好ましく、18m
2/g以上であることがより好ましい。また、128m
2/g以下であることが好ましく、110m
2/g以下であることがより好ましい。
【0057】
本発明のシリカ粉末の比表面積は、前述のBET1点法によって測定して得る値を意味するものとする。
【0058】
本発明のシリカ粉末の形状は特に限定されないが、球状および金平糖状からなる群から選ばれる少なくとも1つの形状であることが好ましい。球状および金平糖状の定義は、前述のシリカ微粒子の場合と同様とする。
本発明のシリカ粉末は金平糖状であると、本発明のシリカ粉末をトナー外添剤として利用したときに、アンカー効果によって本発明のシリカ粉末がトナー表面から脱落し難くなり、流動性、耐久性、印字性能が向上し好ましい。
【0059】
本発明のシリカ粉末は疎水性を呈する。その程度は、次に説明する疎水性評価方法によって得られる値が40〜70%となることが好ましく、45〜65%となることがより好ましく、49〜62%となることがさらに好ましい。
【0060】
疎水性評価方法について説明する。
初めに、ガラス容器に純水50.0mlを加えた後、回転子を入れ、測定粉末0.5gを加える。そして、回転数600rpmにて撹拌しながらガラス容器内の純水の表面へメタノールを滴下し、液上部に浮いている粉末が全て分散された時点のメタノール量を確認し、以下の式1にて疎水性を算出する。
式1:疎水性(%)=メタノール量(ml)÷(純水量(ml)+メタノール量(ml))×100
なお、後述する実施例および比較例においても、本発明のシリカ粉末(疎水性シリカ粉末)の疎水性の程度は、このような方法によって測定した。
【0061】
本発明のシリカ粉末の静電電荷量は負となり得る。前述のように工程1においてポリ塩化アルミニウムを加え、混合し、さらに陰イオン交換処理すると、静電電荷量がより小さくなる。具体的には、−1.0〜−5.0nC/g(好ましくは−3.0〜−5.0nC/g程度)となり得る。
【0062】
また、前述の工程3において、シラン化合物とともにシランカップリング剤をシリカ粉末乾燥品へ添加すると、静電電荷量が大きくなる。具体的には+1.0〜+5.0nC/g(好ましくは+3.0〜+5.0nC/g程度)となり得る。
【0063】
ここで本発明のシリカ粉末の静電電荷量は、測定試料1gを用いたファラデーゲージ法によって測定して得る値を意味するものとする。
なお、後述する実施例および比較例においても、本発明のシリカ粉末(疎水性シリカ粉末)の静電電荷量は、このような方法によって測定した。
【0064】
上記のような平均粒子径(D1)に対する平均粒子径(D2)の比(D2/D1)の値は、概ね1.2以下となり、好ましくは1.1以下、より好ましくは0.8〜1.1、さらに好ましくは0.9〜1.0となり得る。
また、上記のような平均粒子径(D0)に対する平均粒子径(D2)の比(D2/D0)の値は、概ね1.8以下となり、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.4以下、より好ましくは0.9〜1.3、さらに好ましくは1.0〜1.2となり得る。D2/D0がこのような範囲よりも小さすぎると1次粒子が壊れた可能性があり、逆にこのような範囲よりも大きすぎると1次粒子の状態ではなく凝集体として存在していると考えられる。
したがって、本発明のシリカ粉末(疎水性シリカ粉末)は、有機溶媒(メタノール)内では粒子単体の状態で分散している(単分散状態)ものと考えられる。
このような本発明のシリカ粉末をトナー外添剤として用いた場合、トナーの表面にシリカ粉末が単粒子の状態で付着するため、流動性や帯電量を設計しやすく、かつ個々の外添トナーが均一化するため、印字性能が優れたものとなり、好ましい。
【0065】
これに対して、従来品は単分散していないと考えられる。例えば特許文献4に実施例1〜実施例5として記されているシリカ粉末について、本発明における平均粒子径(D0)および平均粒子径(D2)に相当する値を得て、これらの比(D2/D0)を算出したところ、1.7〜5.5となった。したがって、シリカ粉末は単分散ではなく、凝集体として存在し、この凝集体が溶媒に分散している状態と考えられる。
このような凝集体として存在するシリカ粉末をトナー外添剤として用いた場合、大きい凝集体がトナーの表面に埋没する等、シリカ粉末が均一に付着し難くなるため、流動性および帯電量が不均一となり、トナー自体の性能悪化に繋がり、印字性能が悪くなり、好ましくない。
なお、特許文献4に記載の方法は、有機溶媒を除去する操作が必須となるため、製造コストが高くなる点でも好ましくない。
【0066】
このように本発明のシリカ粉末は、平均粒子径が小さく、粒度分布が極めてシャープであり、かつ、高分散性(単分散であり、凝集していない)である。
本発明のシリカ粉末は、前述のようにトナー外添剤として好ましく利用でき、その他にもフィルムやコート材として好ましく利用することができる。
【実施例】
【0067】
以下に本発明の実施例について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0068】
以下の実施例および比較例における物性の測定方法および評価方法について説明する。
比表面積は、測定装置としてユアサアイオニクス製、型番マルチソーブ12を用い、前述の方法で測定した。また、前述の方法で比表面積から平均粒子径(D0)を求めた。
シリカ微粒子(シリカゾル)の平均粒子径(D1)および頻度、ならびに、疎水性シリカ粉末の平均粒子径(D2)および頻度は、動的光散乱粒子径測定装置として日機装社製、マイクロトラックを用い、前述の方法によって測定した。
疎水性シリカ粉末の疎水性の評価は、前述の方法によって測定し、値を算出した。
疎水性シリカ粉末の静電電荷量は、春日電機社製、KQ−1400を用い、前述の方法で測定して求めた。
【0069】
<実施例1> 球状120nm疎水性シリカ粉末の製法
工程A:球状120nmシリカゾル(日揮触媒化成株式会社製、Spherical Slurry(登録商標)、SS−120)20kgに陽イオン交換樹脂5.4Lを加えて30分陽イオン交換を行った後、樹脂を分離して得た陽イオン交換品に、陰イオン交換樹脂0.36Lを加えて30分撹拌し、樹脂を分離して、陰イオン交換品19kgを得た。
工程B:陰イオン交換品2.2kgを、NIROスプレー装置にて、スラリー流量2L/Hr、ノズル噴霧圧0.4MPa、入口温度220〜240℃の条件で噴霧して、シリカ粉末乾燥品243.8gを得た。このシリカ粉末乾燥品の水分含有率は10〜20質量%と考えられる。
工程C:得られたシリカ粉末乾燥品100gを高速ミキサーへ投入し、10分ミキサー粉砕を行った後、HMDS(ヘキサメチルジシラザン)を1.8g加え、ミキサー粉砕による表面処理を行い、本操作を合計5回繰り返したのち、150℃で3Hr乾燥させ表面処理品107gを得た。本操作を2回実施し、合計210gの表面処理品を得た。
工程D:表面処理品134gをアイシンナノテクノロジーズ社製、ナノジェットマイザーNJ−50にて、処理量2g/min、押込み圧1.5MPa、粉砕圧0.4MPaにて粉砕を行い、粉砕品121gを得た。
【0070】
得られた粉砕品の動的光散乱粒子径測定装置による平均粒子径(D2)は0.16μm、頻度100%の1ピークを示した。また、標準偏差(SD)は0.019であった。なお、出発原料の動的光散乱粒子径測定装置による平均粒子径(D1)は0.16μm、頻度100%であり、D2/D1の比は1.0であった。また、疎水性は60%であり、静電電荷量−1.2nC/gであった。
【0071】
<実施例2> 球状80nm疎水性シリカ粉末の製法
工程A:球状80nmシリカゾル(日揮触媒化成株式会社製、Cataloid(登録商標)、SI−80P)2.5kgに純水2.5kgを加えて20%へ希釈し、陽イオン交換樹脂0.6Lを加えて30分陽イオン交換を行った後、樹脂を分離して得た陽イオン交換品に、陰イオン交換樹脂0.13Lを加えて30分撹拌し、樹脂を分離して、陰イオン交換品4.9kgを得た。
工程B:陰イオン交換品4.7kgを、NIROスプレー装置にて、スラリー流量2L/Hr、ノズル噴霧圧0.4MPa、入口温度220〜240℃の条件で噴霧して、シリカ粉末乾燥品686gを得た。
工程C:得られたシリカ粉末乾燥品100gを高速ミキサーへ投入し、10分ミキサー粉砕を行った後、HMDS(ヘキサメチルジシラザン)を3.5g加え、ミキサー粉砕による表面処理を行い、本操作を合計5回繰り返したのち、150℃で3Hr乾燥させ表面処理品91.2gを得た。
工程D:表面処理品28gをアイシンナノテクノロジーズ社製、ナノジェットマイザーNJ−50にて、処理量2g/min、押込み圧1.5MPa、粉砕圧0.4MPaにて粉砕を行い、粉砕品23.5gを得た。
工程E:本粉砕品の動的光散乱粒子径測定装置による平均粒子径(D2)は0.16μmで、0.11μmのピーク頻度が84%で、0.35μmのピークの頻度が16%であったため、本粉砕品19gを高速ミキサーへ投入し、10分ミキサー粉砕を行った後、HMDS(ヘキサメチルジシラザン)を0.7g加え、ミキサー粉砕による再表面処理を行い、本操作を合計5回繰り返したのち、150℃で3Hr乾燥させ、再表面処理品16.4gを得た。
【0072】
得られた再表面処理品の動的光散乱粒子径測定装置による平均粒子径(D2)は0.12μm、頻度100%の1ピークを示した。また、標準偏差(SD)は0.026であった。なお、出発原料の動的光散乱粒子径測定装置による平均粒子径(D1)は0.12μm、頻度100%であり、D2/D1の比は1.0であった。また、疎水性は60%であり、静電電荷量−1.0nC/gであった。
【0073】
<実施例3> 球状45nm疎水性シリカ粉末の製法
球状45nmシリカゾル(日揮触媒化成株式会社製、Cataloid(登録商標)、SI−45P)を用いて、実施例2と同様に工程A、Bを行い、シリカ粉末乾燥品100gに対してHMDSを6.3g加えた以外は同様とした工程Cを行い、その後、工程D、Eを実施した後、さらに工程D、Eを実施した。
【0074】
得られた再表面処理品の動的光散乱粒子径測定装置による(D2)は0.06μm、頻度100%の1ピークを示した。また、標準偏差(SD)は0.040であった。なお、出発原料の動的光散乱粒子径測定装置による平均粒子径(D1)は0.06μm、頻度100%であり、D2/D1の比は1.0であった。また、疎水性は62%であり、静電電荷量−0.8nC/gであった。
【0075】
<実施例4> 球状25nm疎水性シリカ粉末の製法
球状25nmシリカゾル(日揮触媒化成株式会社製、Cataloid(登録商標)、SI−50)を用いて、実施例2と同様に工程A、Bを行い、シリカ粉末乾燥品100gに対してHMDSを11.3g加えた以外は同様とした工程Cを行い、その後、工程D、Eを実施した後、さらに工程D、Eを3回繰り返し実施した。
【0076】
得られた再表面処理品の動的光散乱粒子径測定装置による平均粒子径(D2)は0.03μm、頻度100%の1ピークを示した。また、標準偏差(SD)は0.055であった。なお、出発原料の動的光散乱粒子径測定装置による平均粒子径(D1)は0.03μm、頻度100%であり、D2/D1の比は1.0であった。また、疎水性は61%であり、静電電荷量−0.7nC/gであった。
【0077】
<実施例5> 金平糖状80nm疎水性シリカ粉末の製法
金平糖状80nmシリカゾル(日揮触媒化成株式会社製、Cataloid(登録商標)、CO−80A)を用いて、実施例2と同様に工程A、Bを行い、シリカ粉末乾燥品100gに対してHMDSを4.7g加えた以外は同様とした工程Cを行い、その後、工程D、Eを実施した。
【0078】
得られた再表面処理品の動的光散乱粒子径測定装置による(D2)は0.12μm、頻度100%の1ピークを示した。また、標準偏差(SD)は0.020であった。なお、出発原料の動的光散乱粒子径測定装置による平均粒子径(D1)は0.13μm、頻度100%であり、D2/D1の比は0.9であった。また、疎水性は58%であり、静電電荷量−0.2nC/gであった。
【0079】
<実施例6> 球状45nm疎水性シリカ粉末の製法(ポリ塩化アルミニウム)
工程A:球状45nmシリカゾル(日揮触媒化成株式会社製、Cataloid(登録商標)、SI−45P)1.5kgに純水1.5kgを加えて20%へ希釈し、陽イオン交換樹脂0.34L加えて30分陽イオン交換を行った後、樹脂を分離して得た陽イオン交換品に、陰イオン交換樹脂0.078Lを加えて30分撹拌し、樹脂を分離して、陰イオン交換品2.8kgを得た。
工程A1:陰イオン交換品2.6kgにポリ塩化アルミニウム(多木化学社製;23.55%)を10.14g添加し10分撹拌した後、純水を加えて5%に希釈し、陰イオン交換樹脂0.13Lを加えて30分撹拌した後、樹脂を分離して陰イオン交換品8.56kgを得た。
工程B:工程A1によって得られた陰イオン交換品8.56kgを、NIROスプレー装置にて、スラリー流量2L/Hr、ノズル噴霧圧0.4MPa、入口温度220〜240℃の条件で噴霧してシリカ粉末乾燥品280.1gを得た。
工程C:得られたシリカ粉末乾燥品100gを高速ミキサーへ投入し、10分ミキサー粉砕を行った後、HMDS(ヘキサメチルジシラザン)を6.3g加え、ミキサー粉砕による表面処理を行い、本操作を合計5回繰り返したのち、150度で3Hr乾燥させ表面処理品95.2gを得た。
工程D:表面処理品70gをアイシンナノテクノロジーズ社製、ナノジェットマイザーNJ−50にて、処理量2g/min、押込み圧1.5MPa、粉砕圧0.2MPaにて粉砕を行い、粉砕品66.5gを得た。
工程E:本粉砕品の動的光散乱粒子径測定装置による平均粒子径(D2)は0.22μmで、0.08μmのピーク頻度が91%で、1.4μmのピークの頻度が9%であったため、本粉砕品60gを高速ミキサーへ投入し、10分ミキサー粉砕を行った後、HMDS(ヘキサメチルジシラザン)を3.8g加え、ミキサー粉砕による再表面処理を行い、本操作を合計5回繰り返したのち、150℃で3Hr乾燥させ、再表面処理品57gを得た。
【0080】
得られた再表面処理品の動的光散乱粒子径測定装置による平均粒子径(D2)は0.06μm、頻度100%の1ピークを示した。また、標準偏差(SD)は0.042であった。なお、出発原料の動的光散乱粒子径測定装置による平均粒子径(D1)は0.06μm、頻度100%であり、D2/D1の比は1.0であった。また、疎水性は49%であり、静電電荷量−3.5nC/gであった。
【0081】
<実施例7> 球状80nm疎水性シリカ粉末の製法
工程C:実施例2と同様の工程A、Bを行い、得られたシリカ粉末乾燥品100gを高速ミキサーへ投入し、10分ミキサー粉砕を行った後、3−アミノプロピルトリメトキシシランを0.3g加え、ミキサー粉砕による表面処理を行い、本操作を合計5回繰り返した。その後、さらにHMDS(ヘキサメチルジシラザン)を3.5g加え、実施例2と同様、ミキサー粉砕による表面処理を行い、本操作を合計5回繰り返し、150℃で3Hr乾燥させ表面処理品98.4gを得た。本操作を3回実施し、合計288gの表面処理品を得た。
工程D:表面処理品280gをアイシンナノテクノロジーズ社製、ナノジェットマイザーNJ−50にて、処理量2g/min、押込み圧1.5MPa、粉砕圧0.4MPaにて粉砕を行い、粉砕品254gを得た。
工程E:工程Dの粉砕品100gを高速ミキサーへ投入し、10分ミキサー粉砕を行った後、HMDS(ヘキサメチルジシラザン)を0.7g加え、ミキサー粉砕による再表面処理を行い、本操作を合計5回繰り返したのち、150℃で3Hr乾燥させ、再表面処理品95.0gを得た。
【0082】
得られた再表面処理品の動的光散乱粒子径測定装置による平均粒子径(D2)は0.13μm、頻度100%の1ピークを示した。また、標準偏差(SD)は0.045であった。なお、出発原料の動的光散乱粒子径測定装置による平均粒子径(D1)は0.12μm、頻度100%であり、D2/D1の比は1.1であった。また、疎水性は47%であり、静電電荷量+3.0nC/gであった。
【0083】
<比較例1> 球状120nm疎水性シリカ粉末の製法
工程A:球状120nmシリカゾル(日揮触媒化成株式会社製、Sphrical Slurry(登録商標)、SS−120)20kgに陽イオン交換樹脂5.4Lを加えて30分陽イオン交換を行った後、樹脂を分離して得た陽イオン交換品に、陰イオン交換樹脂0.36Lを加えて30分撹拌し、樹脂を分離して、陰イオン交換品19kgを得た。
工程B:陰イオン交換品2.2kgを、NIROスプレー装置にて、スラリー流量2L/Hr、ノズル噴霧圧0.4MPa、入口温度220〜240℃の条件で噴霧して、シリカ粉末乾燥品243.8gを得た。
工程C:得られたシリカ粉末乾燥品100gを高速ミキサーへ投入し、10分ミキサー粉砕を行った後、HMDS(ヘキサメチルジシラザン)を1.8g加え、ミキサー粉砕による表面処理を行い、本操作を合計5回繰り返したのち、150℃で3Hr乾燥させ表面処理品107gを得た。本操作を2回実施し、合計210gの表面処理品を得た。
【0084】
得られた表面処理品の動的光散乱粒子径測定装置による平均粒子径(D2)は0.34μmで、0.19μmのピーク頻度が86%で、1.1μmのピークの頻度が14%であった。また、標準偏差(SD)は1.526であった。
【0085】
<比較例2> 球状80nm疎水性シリカ粉末の製法
工程A:球状80nmシリカゾル(日揮触媒化成株式会社製、Cataloid(登録商標)、SI−80P)2.5kgに純水2.5kgを加えて20%へ希釈し、陽イオン交換樹脂0.6Lを加えて30分陽イオン交換を行った後、樹脂を分離して得た陽イオン交換品に、陰イオン交換樹脂0.13Lを加えて30分撹拌し、樹脂を分離して、陰イオン交換品4.9kgを得た。
工程B:陰イオン交換品4.7kgを、NIROスプレー装置にて、スラリー流量2L/Hr、ノズル噴霧圧0.4MPa、入口温度220〜240℃の条件で噴霧してシリカ粉末乾燥品686gを得た。
工程C:得られたシリカ粉末乾燥品100gを高速ミキサーへ投入し、10分ミキサー粉砕を行った後、HMDS(ヘキサメチルジシラザン)を3.5g加え、ミキサー粉砕による表面処理を行い、本操作を合計5回繰り返したのち、150℃で3Hr乾燥させ表面処理品91.2gを得た。
工程D:表面処理品28gをアイシンナノテクノロジーズ社製、ナノジェットマイザーNJ−50にて、処理量2g/min、押込み圧1.5MPa、粉砕圧0.4MPaにて粉砕を行い、粉砕品23.5gを得た。
【0086】
得られた粉砕品の動的光散乱粒子径測定装置による平均粒子径(D2)は0.15μmで、0.12μmのピーク頻度が90%で、0.38μmのピークの頻度が10%であった。また、標準偏差(SD)は0.109であった。
【0087】
<比較例3> 球状45nm疎水性シリカ粉末の製法
球状45nmシリカゾル(日揮触媒化成株式会社製、Cataloid(登録商標)、SI−45P)を用いて、比較例2と同様に工程A、Bを行い、シリカ粉末乾燥品100gに対してHMDSを6.3g加えた以外は同様とした工程Cを行った。
工程D:表面処理品28gをアイシンナノテクノロジーズ社製、ナノジェットマイザーNJ−50にて、処理量2g/min、押込み圧1.5MPa、粉砕圧0.4MPaにて粉砕を行い、粉砕品23.3gを得た。
【0088】
得られた粉砕品の動的光散乱粒子径測定装置による平均粒子径(D2)は0.32μmで、0.08μmのピークの頻度が72%で、0.32μmのピークの頻度が7%で、1.07μmのピークの頻度が21%であった。また、標準偏差(SD)は0.408であった。
【0089】
実施例1〜7および比較例1〜3における出発原料、工程の特徴および製品の特長について、第1表にまとめる。
【0090】
【表1】