(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、建物内で手摺を使って歩行する際には、自らの体重を手摺に預けながら歩行する場合が考えられる。その場合、歩行者の体重が手摺に対して作用することになるが、手摺が壁面から突出して取り付けられる上述の手摺構造では、歩行者が自らの体重を手摺に大きく預ける等して手摺に過大な荷重が作用した場合に、手摺が壁から外れたり手摺が下方に変形したりする等の不具合が生じる懸念がある。そのため、上述の手摺構造は、安定した歩行補助の点で不安を残すものとなっている。
【0005】
また、壁面から手摺が突出して取り付けられる上述の手摺構造では、手摺により壁の外観が損なわれるという問題もある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、壁の外観が損なわれるのを抑制しながら、安定した歩行補助を実現することができる建物の手摺構造を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく、第1の発明の建物の手摺構造は、屋内空間に面して設けられた壁部を備え、前記壁部における所定の高さ範囲には前記屋内空間側に張り出した張出部が設けられており、前記張出部は、前記壁部の幅方向に延びるように形成されており、前記張出部上には手摺として用いられる手摺部材が取り付けられていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、壁部における所定の高さ範囲に屋内空間側に張り出した張出部が設けられ、その張出部上に手摺部材が取り付けられている。この場合、手摺部材に歩行者の体重が作用すると、その荷重が張出部ひいては壁部によって支えられる。そのため、歩行者の体重を安定した状態で支えることができ、安定した歩行補助を実現することができる。また、手摺部材が壁部の張出部上に取り付けられているため、壁面から突出した状態で取り付けられる従来の壁付けの手摺と比べて、手摺と壁との一体感を高めることができる。そのため、壁の外観が損なわれるのを抑制しながら、安定した歩行補助を実現することができる。
【0009】
第2の発明の建物の手摺構造は、第1の発明において、前記壁部は、前記屋内空間に面して設けられた壁面材と、その壁面材の裏面側に設けられた下地フレームとを備え、前記壁面材として、前記張出部とは異なる部位に配置された第1壁面材と、前記張出部に配置された第2壁面材とを有しており、前記第1壁面材は、前記下地フレームに固定されており、前記下地フレームと前記第2壁面材との間には、当該第2壁面材の上端部及び下端部に沿ってそれぞれ延びる一対の横材が設けられており、前記各横材はそれぞれ前記下地フレームに固定されているとともに、それら各横材にそれぞれ前記第2壁面材が固定されており、前記手摺部材は、上側の前記横材の上面に取り付けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、壁部において屋内空間に面して設けられた壁面材のうち、張出部とは異なる部位に配置された第1壁面材が下地フレームに固定されている一方、張出部に配置された第2壁面材と下地フレームとの間に上下一対の横材が設けられている。これらの横材はいずれも下地フレームに固定され、それら各横材に対して第2壁面材が固定されている。そして、それら各横材のうち上側の横材の上面に手摺部材が取り付けられている。この場合、手摺部材に作用する歩行者の荷重が上側の横材ひいては下地フレームによって支えられる。下地フレームは壁部の骨組みを構成する比較的高強度の部材であるため、この場合、歩行者の荷重を安定した状態で支持することが可能となる。
【0011】
第3の発明の建物の手摺構造は、第2の発明において、前記各横材の間には、それら横材同士を上下に繋ぐ複数の縦材が設けられていることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、上下に配された各横材が複数の縦材を介して一体化されている。この場合、上下の各横材及び複数の縦材によってフレームが構成され、そのフレームが上下の各横材において下地フレームに固定されている。これにより、当該フレームが下地フレームに対して強固に固定されるため、当該フレーム(詳しくは上側の横材)の上に取り付けられた手摺部材に作用する歩行者の荷重をより一層安定した状態で支持することができる。
【0013】
第4の発明の建物の手摺構造は、第1乃至第3のいずれかの発明において、前記張出部は、その下端部が前記屋内空間の床面から上方に離間しており、前記床面と前記張出部の下端部との間には、前記屋内空間側に開口する凹部が形成されていることを特徴とする。
【0014】
ところで、歩行が困難な高齢者等は手摺部材を利用して歩行するだけでなく、車椅子に乗って屋内空間を移動することも考えられる。ここで、屋内空間が廊下等の幅狭の空間である場合に、上述のように壁部に張出部が設けられていると、屋内空間で車椅子を回旋させる際にフットレストの部分が張出部に干渉し回旋できなくなるおそれがある。そこで本発明では、この点に鑑みて、張出部の下端部を屋内空間の床面から上方に離間させることで、張出部の下端部と床面との間に凹部を形成している。これにより、屋内空間で車椅子を回施させる際にはフットレストを凹部に入り込ませて回施させることができるため、壁部に張出部が設けられた構成にあっても、車椅子を好適に利用することができる。
【0015】
第5の発明の建物の手摺構造は、第1乃至第4のいずれかの発明において、前記壁部において前記張出部が設けられた前記所定の高さ範囲には物品を収容可能な収容部が設けられていることを特徴とする。
【0016】
壁部において張出部が設けられた部位は他の部位と比べて壁厚が大きくなっている。そこで本発明では、この壁厚の部分を利用して物品を収容可能な収容部を設けている。この場合、張出部(壁厚部分)を手摺として利用することに加え、収容部の配設部位としても利用することができる。そのため、張出部の有効利用を図ることができる。
【0017】
第6の発明の建物の手摺構造は、第5の発明において、前記壁部は、前記屋内空間に面して設けられた壁面材と、その壁面材の裏面側に設けられた下地フレームとを備え、前記壁面材として、前記張出部とは異なる部位に配置された第1壁面材と、前記張出部に配置された第2壁面材とを有しており、前記第1壁面材は、前記下地フレームに固定されており、前記下地フレームと前記第2壁面材との間には、当該下地フレームに固定されているとともに当該第2壁面材が固定された張出フレームが設けられており、前記手摺部材は、前記張出フレーム上に取り付けられており、前記収容部は、前記張出フレームを構成する複数のフレーム材のうち隣り合う2つのフレーム材の間に挟み込まれるように配置され、それら各フレーム材にそれぞれ固定されていることを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、下地フレームに対して張出フレームが固定されているため、張出フレームを下地フレームに強固に一体化させることができる。そして、その張出フレーム上に手摺部材が取り付けられているため、手摺部材に作用する歩行者の荷重を安定した状態で支持することができる。また、かかる構成にあって、収容部が張出フレームにおける隣り合うフレーム材の間に挟み込まれるように配置され、その配置状態でそれら各フレーム材にそれぞれ固定されているため、収容部を壁部に安定した状態で設けることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、建物内の廊下に面して設けられた間仕切壁に本発明の手摺構造を適用している。なお、
図1は建物における廊下周辺の構成を示す縦断面図である。
【0021】
図1に示すように、住宅等の建物10には廊下11が設けられており、廊下11を挟んだ両側には間仕切壁12,13が設けられている。これら各間仕切壁12,13は廊下11を挟んで対向配置されている。間仕切壁12は、廊下11を居室14と仕切っており、間仕切壁13は、廊下11を居室15と仕切っている。なお、廊下11が屋内空間に相当し、間仕切壁13が壁部に相当する。
【0022】
間仕切壁12は、下地フレーム16と、その下地フレーム16を挟んだ両側にそれぞれ設けられた壁面材17,18とを備える。下地フレーム16は、上下一対のランナ21,22と、それら両ランナ21,22間に所定の間隔で設けられた複数のスタッド23とを有している。上下の各ランナ21,22はいずれも軽量溝形鋼よりなり、互いの溝部を上下に向き合わせた状態で配置されている。上側のランナ21は天井面24に対してビス等で固定され、下側のランナ22は床面25に対してビス等で固定されている。スタッド23は軽量角形鋼管よりなる。スタッド23は、その上端部が上側ランナ21の溝部に挿し入れられた状態で同ランナ21にビス等で固定され、その下端部が下側ランナ22の溝部に挿し入れられた状態で同ランナ22にビス等で固定されている。
【0023】
壁面材17,18は、不燃性能を有する石膏ボードよりなる。各壁面材17,18のうち、壁面材17が下地フレーム16の廊下11側に設けられ、壁面材18が下地フレーム16の居室14側に設けられている。それら各壁面材17,18はそれぞれ下地フレーム16にビス等で固定されている。なお、各壁面材17,18の表面には、クロス等の壁仕上げ材(図示略)が貼り付けられている。
【0024】
続いて、間仕切壁13の構成について
図1に加え
図2に基づいて説明する。
図2は間仕切壁13の構成を示す正面図である。
【0025】
図1及び
図2に示すように、間仕切壁13は、間仕切壁12と同様、下地フレーム26と、その下地フレーム26を挟んだ両側にそれぞれ設けられた壁面材27,28とを備える。下地フレーム26は、下地フレーム16と同様、上下一対のランナ31,32と、それら両ランナ31,32間に所定の間隔で設けられた複数のスタッド33とを有している。上下の各ランナ31,32はいずれも軽量溝形鋼よりなり、互いの溝部を上下に向き合わせた状態で配置されている。上側のランナ31は天井面24に対してビス等で固定され、下側のランナ32は床面25に対してビス等で固定されている。スタッド33は軽量角形鋼管よりなる。スタッド33は、その上端部が上側ランナ31の溝部に挿し入れられた状態で同ランナ31にビス等で固定され、その下端部が下側ランナ32の溝部に挿し入れられた状態で同ランナ32にビス等で固定されている。
【0026】
壁面材27,28は、不燃性能を有する石膏ボードよりなる。各壁面材27,28のうち、壁面材27が下地フレーム26の廊下11側に設けられ、壁面材28が下地フレーム26の居室15側に設けられている。それら各壁面材27,28はそれぞれ横並びに複数ずつ設けられ、下地フレーム26に対してビス等で固定されている。なお、各壁面材27,28の表面には、クロス等の壁仕上げ材(図示略)が貼り付けられている。また、壁面材27と、その壁面材27に貼り付けられた壁仕上げ材とを含んで第1壁面材が構成されている。
【0027】
間仕切壁13には、高さ方向(上下方向)の一部に他の部位と比べて廊下11側に張り出した張出部35が設けられている。張出部35は、間仕切壁13の幅方向(横幅方向)に延びるように形成されており、詳しくは間仕切壁13の幅方向全域に亘って連続して形成されている。なお、間仕切壁13には、張出部35以外に廊下11側に張り出す張出部位が設けられていない。
【0028】
張出部35は、間仕切壁13の下部における所定の高さ範囲に形成されている。具体的には、張出部35は、その上端部が床面25から750〜850mm上方の位置に設定され、その下端部が床面25から250mm上方の位置に設定されている。この場合、張出部35の下端部は床面25から上方に離間しており、それにより床面25と張出部35の下端部との間には廊下11側に開口する凹部36が形成されている。この凹部36は、張出部35の長手方向(換言すると間仕切壁13の幅方向)に沿って延びており、詳しくは張出部35の長手方向全域に亘って延びている。本実施形態では、この凹部36に照明装置37が配設され、この照明装置37が常夜灯として利用されるようになっている。なお、
図2では便宜上、照明装置37の図示を省略している。
【0029】
また、間仕切壁13において張出部35が設けられている上記所定の高さ範囲では、壁厚がそれ以外の部位と比べて大きくなっている。そのため、以下においては、その壁厚が大きくされた部位を壁厚部分13aともいう。
【0030】
下地フレーム26の廊下11側には、張出部35の一部を構成する張出フレーム41が固定されている。張出フレーム41は、壁面材27よりも廊下11側に張り出して設けられている。張出フレーム41は、その上下の端部に配置された一対のランナ42,43と、それら各ランナ42,43間に所定の間隔で設けられた複数のスタッド44とを有している。なお、この場合、各ランナ42,43がそれぞれ横材に相当し、スタッド44が縦材に相当する。また、各ランナ42,43及びスタッド44がそれぞれフレーム材に相当する。
【0031】
上下の各ランナ42,43はいずれも軽量溝形鋼よりなり、互いの溝部を上下に向き合わせた状態で配置されている。各ランナ42,43はそれぞれ下地フレーム26の各スタッド33に対してビス等で固定されている。スタッド44は軽量角形鋼管よりなる。スタッド44は、その上端部が上側のランナ42の溝部に挿し入れられた状態で同ランナ42にビス等で固定され、その下端部が下側のランナ43の溝部に挿し入れられた状態で同ランナ43にビス等で固定されている。各スタッド44は、ランナ42,43の長手方向(間仕切壁13の幅方向)において下地フレーム26の各スタッド33と同位置に配置されている。この場合、スタッド44とスタッド33とは間仕切壁13の厚み方向に対向して配置されている。また、本実施形態では、各スタッド44をそれぞれスタッド33に対してビス等で固定してはいないが、固定するようにしてもよい。
【0032】
下地フレーム26の廊下11側では、張出フレーム41が設けられていることで、壁面材27が張出フレーム41を挟んだ上下両側に分割して配置されている。つまり、張出フレーム41の上方には壁面材27aが配置され、張出フレーム41の下方には壁面材27bが配置されている。この場合、壁面材27aの下端部が張出フレーム41(詳しくはランナ42)の上面に当接し、壁面材27bの上端部が張出フレーム41(詳しくはランナ43)の下面に当接している。
【0033】
張出フレーム41の廊下11側には壁面材46が設けられている。壁面材46は、壁面材27,28と同じ石膏ボードよりなる。壁面材46は、その高さ寸法(上下寸法)が張出フレーム41の高さ寸法と略同じとなっており、詳しくは張出フレーム41の高さ寸法よりも若干大きくなっている。壁面材46は横並びに複数設けられている。壁面材46は、張出フレーム41の各ランナ42,43に上下に跨がって配置され、それら各ランナ42,43に対して廊下11側からビス等で固定されている。この壁面材46の固定状態において、壁面材46の上端部と張出フレーム41(詳しくは上側のランナ42)の上面とは同じ高さ位置に設定されている。
【0034】
なお、壁面材46の表面には、クロス等の壁仕上げ材(図示略)が貼り付けられている。この壁仕上げ材と壁面材46とを含んで第2壁面材が構成されている。また、この壁面材46(詳しくは壁仕上げ材も含む)と、張出フレーム41における壁面材27よりも廊下11側に張り出した部位とによって張出部35が構成されている。
【0035】
壁面材46の下端部と壁面材27bの上端部との間には、それら両者27b,46を短く繋ぐ繋ぎ材47が設けられている。繋ぎ材47は、壁面材46と同じ石膏ボードよりなる。繋ぎ材47は、下側のランナ43の下面にビス等で固定されている。
【0036】
張出部35上には、手摺部材としての笠木49が設けられている。笠木49は、木材により長尺平板状に形成され、張出フレーム41における上側のランナ42の上面に接着剤により固定されている。具体的には、笠木49は、幅方向の一端部を壁面材27aに当接させた状態で、かつ、他端部を壁面材46よりも若干廊下11側に突出させた状態でランナ42上に固定されている。なお、笠木49は必ずしも接着材により固定する必要はなく、ビスや釘等で固定してもよい。
【0037】
このように笠木49が張出部35上に取り付けられていることで、廊下11を歩行する際は笠木49を手摺として利用することが可能となっている。また、張出部35上への笠木49の取り付け状態では笠木49の上面が平坦面となっているため、笠木49の上面で手や肘を支えながら歩行(伝い歩き)することが可能となっている。なお、笠木49の上面が平坦面になっている点からすれば、笠木49を平手摺ということもできる。
【0038】
間仕切壁13の壁厚部分13aには物品を収容可能な収容部51が配設されている。収容部51は、壁厚部分13aの厚みと略同じ長さを有する四角筒状に形成されている。収容部51は、その両端の開口をそれぞれ廊下11側及び居室15側に向けて配設されている。また、収容部51は、張出フレーム41における隣り合うスタッド44の間及び、下地フレーム26における隣り合うスタッド33の間に挟み込まれるように配設されており、その配設状態において両側の側板部51aがそれぞれ各スタッド33,44にビス等で固定されている。なお、収容部51(側板部51a)は、必ずしも各フレーム26,41のスタッド33,44に固定する必要はなく、例えば張出フレーム41のスタッド44にのみ固定するようにしてもよい。
【0039】
各壁面材28,46にはそれぞれ、収容部51に対応する部位に開口部52,53が形成されている。この場合、壁面材46に形成された開口部52を介して廊下11から収容部51に物品を収容することができ、壁面材28に形成された開口部53を介して居室15から収容部51に物品を収容することができる。したがって、この収容部51には廊下11からも居室15からも物品を収容することが可能となっている。
【0040】
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0041】
間仕切壁13における所定の高さ範囲に廊下11側に張り出した張出部35を設け、その張出部35上に手摺として用いられる笠木49を取り付けた。この場合、笠木49に歩行者の体重が作用すると、その荷重が張出部35ひいては間仕切壁13によって支えられる。そのため、歩行者の体重を安定した状態で支えることができ、安定した歩行補助を実現することができる。また、笠木49が間仕切壁13の張出部35上に取り付けられているため、壁面から突出した状態で取り付けられる従来の壁付けの手摺と比べて、手摺と間仕切壁13との一体感を高めることができる。そのため、間仕切壁13の外観が損なわれるのを抑制しながら、安定した歩行補助を実現することができる。
【0042】
張出部35において廊下11に面して配置された壁面材46(詳しくはその表面の壁仕上げ材を含む)と下地フレーム26との間に上下一対のランナ42,43を配設し、それら各ランナ42,43をそれぞれ下地フレーム26に固定するとともにそれら各ランナ42,43に壁面材46を固定した。そして、上側のランナ42の上面に笠木49を取り付けた。この場合、笠木49に作用する歩行者の荷重は上側のランナ42ひいては下地フレーム26によって支えられる。ここで、下地フレーム26は間仕切壁13の骨組みを構成する比較的高強度の部材であるため、この場合、歩行者の荷重を安定した状態で支持することが可能となる。
【0043】
具体的には、上下の各ランナ42,43の間にそれらランナ42,43同士を上下に繋ぐ複数のスタッド44を所定間隔で配設した。この場合、上下の各ランナ42,43と複数のスタッド44とにより張出フレーム41が構成され、その張出フレーム41が上下の各ランナ42,43において下地フレーム26に固定される。これにより、張出フレーム41が下地フレーム26に対して強固に固定されるため、その張出フレーム41(詳しくは上側のランナ42)上に取り付けられる笠木49に作用する歩行者の荷重をより一層安定した状態で支持することができる。
【0044】
ところで、歩行の困難な高齢者等は笠木49を用いて廊下11を歩行するだけでなく、車椅子に乗って廊下11を移動する場合も考えられる。そこで、上記の実施形態では、この点に鑑みて、張出部35の下端部を廊下11の床面25から上方に離間させることで、床面25と張出部35の下端部との間に廊下11側に開口した凹部36を形成した。これにより、例えば廊下11で車椅子を回施させる際にはフットレストを凹部36に入り込ませて回施させることができる。そのため、幅狭の廊下11に面した間仕切壁13に張出部35を設けた構成にあっても、車椅子を廊下11において好適に利用することができる。
【0045】
間仕切壁13において張出部35が設けられた所定の高さ範囲、換言すると間仕切壁13において張出部35が設けられているが故に壁厚とされた部分(壁厚部分13a)に物品を収容可能な収容部51を設けた。この場合、張出部35を手摺として利用することに加えて、収容部51の配設部位としても利用することができるため、張出部35の有効利用を図ることができる。
【0046】
収容部51を隣り合うスタッド44の間に挟み込まれるように配置し、その配置状態でそれら各スタッド44にそれぞれ固定した。これにより、収容部51を間仕切壁13に対して安定した状態で固定することができる。そのため、例えば収容部51に比較的重量の大きい物品を収容することが可能となる。また、収容部51を、さらに隣り合うスタッド33の間に挟み込まれるように配置し、それら各スタッド33にそれぞれ固定したため、収容部51を間仕切壁13に対してより安定した状態で固定することができる。
【0047】
張出フレーム41の各スタッド44をそれぞれ下地フレーム26のスタッド33と間仕切壁13の厚み方向に対向させて配置した。この場合、張出フレーム41上の笠木49からスタッド44に作用する歩行者の荷重をスタッド33により受けることができるため、張出フレーム41を構成するランナ42,43及びスタッド44に求められる剛性(強度)を小さくすることができる。そのため、ランナ42,43及びスタッド44として、特段高強度のものを用いる必要はなく、部材コストの低減等の効果を得ることが可能となる。また、収容部51を、隣り合うスタッド44間及び隣り合うスタッド33間に跨がって配設する上で、収容部51の幅寸法を隣り合うスタッド44間の間隔まで大きくすることができる利点もある。
【0048】
張出部35を構成する張出フレーム41を、下地フレーム26と同様、軽量鉄骨材からなるフレーム材(具体的にはランナ42,43及びスタッド44)により構成したため、比較的容易に張出部35(ひいては間仕切壁13)を施工することができる。
【0049】
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
【0050】
(1)例えば
図3に示すように、収容部61をコンセント62を収容するために利用してもよい。なお、
図3において(a)は間仕切壁13における収容部61周辺を示す正面図であり、(b)が(a)のA−A線断面図であり、(c)が(a)のB−B線断面図である。
図3(a)〜(c)では、間仕切壁13における壁厚部分13aに2つの収容部61a,61bが配設されている。これら各収容部61a,61bはいずれも一側面が開口された四角箱状に形成されており、壁厚部分13aにおいて開口部を廊下11に向けた状態で配置されている。各収容部61a,61bは、スタッド44を挟んで横並びに隣り合って配置されている。また、各収容部61a,61bは、隣り合うスタッド44の間に挟み込まれた状態で配設され、それら各スタッド44にビス等で固定されている。なお、本例の収容部61a,61bは、上記実施形態の収容部51とは異なり、壁厚部分13aにおいて概ね張出部35にのみ配設されている。
【0051】
各収容部61a,61bにはそれぞれコンセント62が設けられている。収容部61aには、その奥板部にコンセント62が取り付けられており、収容部61bには、その下板部にコンセント62が取り付けられている。この場合、コンセント62にプラグ63を差し込んで利用する際、そのプラグ63を収容部61a,61b内に収容することができる。
【0052】
なお、収容部61に、コンセント62に代えて、スイッチを設けたりリモコンを設けたりしてもよい。
【0053】
(2)上記実施形態では、廊下11(屋内空間に相当)に面した間仕切壁13に本発明の手摺構造を適用したが、トイレや玄関等他の屋内空間に面した壁部に本発明の手摺構造を適用してもよい。
図4には、トイレ65に面した間仕切壁66に本発明の手摺構造を適用した場合の例が示されている。この例によれば、トイレ65へ出入りする際に、間仕切壁66の張出部70上に設けられた笠木69を用いて出入りすることができる。また、
図4では、間仕切壁66の壁厚部分66aに設けられた収容部67にトイレットペーパを取り付けるためのペーパホルダ68が収容されている。
【0054】
(3)上記実施形態では、収容部51を、張出フレーム41を構成する隣り合うスタッド44(フレーム材に相当)の間に挟み込まれるように配置し、それら各スタッド44に対してそれぞれ固定したが、これを変更してもよい。例えば、収容部が縦長形状である場合に、その収容部を、張出フレーム41を構成する隣り合うランナ42,43(フレーム材に相当)の間に上下に挟み込まれるように配置し、それら各ランナ42,43に対してそれぞれ固定するようにしてもよい。この場合にも、収容部51を間仕切壁13に対して安定した状態で固定することができる。
【0055】
(4)上記実施形態では、ランナ42,43を上下に一対のみ設けたが、これら各ランナ42,43に加えてさらに、各ランナ42,43の中間位置にランナを設けてもよい。また、上記実施形態では、ランナ42,43同士を上下に繋ぐスタッド44を下地フレーム26のスタッド33と同じ間隔(ピッチ)で設けたが、これらスタッド44の間隔は必ずしもスタッド33の間隔と同じである必要はなく、例えばスタッド33の間隔よりも大きくしてもよい。さらに、各ランナ42,43の間にスタッド44を設けないようにしてもよい。
【0056】
(5)上記実施形態では、長尺平板状の笠木49を用いたが、笠木49の形状は必ずしもこれに限らない。例えば
図5に示す笠木69は、平板部69aとその平板部69aの先端部に設けられた丸棒状の掴み部69bとを有して形成されている。この場合、笠木69は掴み部69bが張出部35よりも廊下11側に位置した状態で張出フレーム41(ランナ42)上に取り付けられている。この笠木69によれば、平板部69a上にて手を摺らせながら歩行できることに加え、掴み部69bをつかみながら歩行することもできる。そのため、手摺としての機能にバリエーションをもたせることができる。
【0057】
また、上記実施形態では、笠木49を木製としたが、これを変更して樹脂製や金属製としてもよい。
【0058】
(6)上記実施形態では、廊下11を居室15と仕切る間仕切壁13に本発明の手摺構造を適用したが、例えば廊下11が外壁部により屋外と仕切られている場合に、その外壁部に対して本発明の手摺構造を適用してもよい。この場合にも、外壁部に廊下11側に張り出す張出部を設け、その張出部上に手摺部材を取り付ければよい。なお、かかる場合には、外壁部が「屋内空間に面して設けられた壁部」に相当する。