(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6195576
(24)【登録日】2017年8月25日
(45)【発行日】2017年9月13日
(54)【発明の名称】画像のブロックを符号化する方法及び装置、並びに対応する再構成方法及び装置
(51)【国際特許分類】
H04N 19/105 20140101AFI20170904BHJP
H04N 19/147 20140101ALI20170904BHJP
H04N 19/176 20140101ALI20170904BHJP
H04N 19/593 20140101ALI20170904BHJP
【FI】
H04N19/105
H04N19/147
H04N19/176
H04N19/593
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-551583(P2014-551583)
(86)(22)【出願日】2013年1月7日
(65)【公表番号】特表2015-503877(P2015-503877A)
(43)【公表日】2015年2月2日
(86)【国際出願番号】EP2013050157
(87)【国際公開番号】WO2013104585
(87)【国際公開日】20130718
【審査請求日】2016年1月6日
(31)【優先権主張番号】12305050.2
(32)【優先日】2012年1月13日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501263810
【氏名又は名称】トムソン ライセンシング
【氏名又は名称原語表記】Thomson Licensing
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】シュルギー,サファ
(72)【発明者】
【氏名】ギュルモ,クリスティーヌ
(72)【発明者】
【氏名】トロ,ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】ギヨテル,フィリップ
【審査官】
山▲崎▼ 雄介
(56)【参考文献】
【文献】
特表2011−517227(JP,A)
【文献】
Mehmet Turkan, et al.,Image prediction based on non-negative matrix factorization,Acoustics, Speech and Signal Processing (ICASSP), 2011 IEEE International Conference on,IEEE,2011年 5月22日,pp.789-792,URL,http://ieeexplore.ieee.org/document/5946522/
【文献】
Safa Cherigui, et al.,Hybrid template and block matching algorithm for image intra prediction,Acoustics, Speech and Signal Processing (ICASSP), 2012 IEEE International Conference on,IEEE,2012年 3月25日,pp.781-784,URL,http://ieeexplore.ieee.org/document/6288000/
【文献】
Safa Cherigui, et al.,Map-Aided Locally Linear Embedding methods for image prediction,Image Processing (ICIP), 2012 19th IEEE International Conference on,IEEE,2012年 9月30日,pp.2909-2912,URL,http://ieeexplore.ieee.org/document/6467508/
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 19/00−19/98
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像のブロックを符号化する方法であって、当該方法は、処理手段を用いて、前記画像の一部を符号化し、再構成するステップを有し、
当該方法は更に、
前記再構成された部分内の1つの参照ブロックを、該1つの参照ブロックに隣接する1つの参照近傍と該1つの参照ブロックとを有する1つの参照パッチが、符号化されるべき前記ブロックの対応する近傍と符号化されるべき前記ブロックとを有するパッチに類似するように決定するステップと、
前記再構成された部分内の少なくとも1つの更なる参照ブロックを、各更なる参照ブロックに関し、該更なる参照ブロックに隣接する更なる参照近傍と該更なる参照ブロックとを有する更なる参照パッチが、前記1つの参照パッチに類似するように決定するステップと、
を有し、
2つのパッチ間の類似性は距離によって測定され、
当該方法は更に、前記1つの参照パッチを参照するベクトルと、前記1つの参照ブロックと前記少なくとも1つの更なる参照ブロックとの組み合わせに対する前記ブロックの残余と、を符号化するステップを有する、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記1つの参照ブロックと前記少なくとも1つの更なる参照ブロックとの前記組み合わせは、加重線形結合であり、該加重線形結合のための重みは、制約付き最小二乗問題又は非ローカルな平均問題を解くことによって決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記加重線形結合のための重みは、前記ブロックに隣接する前記近傍、前記1つの参照ブロックに隣接する前記1つの参照近傍、及び前記少なくとも1つの更なる参照ブロックに隣接する少なくとも1つの前記更なる近傍から決定される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記加重線形結合のための重みは、前記ブロック、前記1つの参照ブロック、及び前記少なくとも1つの更なる参照ブロックを用いて決定され、該重みは符号化される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記制約付き最小二乗問題は、局所線形組み込み又は非負行列因子分解を用いて解かれる、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
画像のブロックを符号化する装置であって、当該装置は、
前記画像の一部を符号化し、再構成し、
前記再構成された部分内の1つの参照ブロックを、該1つの参照ブロックに隣接する1つの参照近傍と該1つの参照ブロックとを有する1つの参照パッチが、符号化されるべき前記ブロックの対応する近傍と符号化されるべき前記ブロックとを有するパッチに類似するように決定し、
前記再構成された部分内の少なくとも1つの更なる参照ブロックを、各更なる参照ブロックに関し、該更なる参照ブロックに隣接する更なる参照近傍と該更なる参照ブロックとを有する更なる参照パッチが、前記1つの参照パッチに類似するように決定し、
2つのパッチ間の類似性は距離によって測定され、
前記1つの参照パッチを参照するベクトルと、前記1つの参照ブロックと前記少なくとも1つの更なる参照ブロックとの組み合わせに対する前記ブロックの残余と、を符号化する
ように構成された処理手段を有する、装置。
【請求項7】
画像のブロックを再構成する方法であって、当該方法は、処理手段を用いて、
前記画像の一部を復号化するステップと、
前記ブロックの符号化された残余を復号化し、前記再構成された部分内の参照パッチを参照する符号化されたベクトルを復号化するステップであり、前記参照パッチは、1つの参照ブロックに隣接する1つの参照近傍と該参照ブロックとを有する、ステップと、
少なくとも1つの更なる参照ブロックを、各更なる参照ブロックに関し、該更なる参照ブロックに隣接する更なる参照近傍と該更なる参照ブロックとを有する更なる参照パッチが、前記参照パッチに類似するように決定するステップと、
を行うことを有し、
2つのパッチ間の類似性は距離によって測定され、
当該方法は更に、前記処理手段を用いて、
前記残余を、前記参照ブロックと前記少なくとも1つの更なる参照ブロックとの組み合わせと結合することによって、前記ブロックを再構成するステップ
を行うことを有する、方法。
【請求項8】
前記参照ブロックと前記少なくとも1つの更なる参照ブロックとの前記組み合わせは、加重線形結合であり、該加重線形結合のための重みは、制約付き最小二乗問題又は非ローカルな平均問題を解くことによって、前記ブロックに隣接する近傍、前記参照ブロックに隣接する前記1つの参照近傍、及び前記少なくとも1つの更なる参照ブロックに隣接する少なくとも1つの前記更なる参照近傍から決定される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記制約付き最小二乗問題は、局所線形組み込み又は非負行列因子分解を用いて解かれる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記参照ブロックと前記少なくとも1つの更なる参照ブロックとの前記組み合わせは、加重線形結合であり、当該方法は更に、前記加重線形結合に関する符号化された重みを復号化することを有する、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
画像のブロックを再構成する装置であって、当該装置は、
前記画像の一部を復号化し、
前記ブロックの符号化された残余を復号化し、前記再構成された部分内の参照パッチを参照する符号化されたベクトルを復号化し、前記参照パッチは、1つの参照ブロックに隣接する1つの参照近傍と該参照ブロックとを有し、
少なくとも1つの更なる参照ブロックを、各更なる参照ブロックに関し、該更なる参照ブロックに隣接する更なる参照近傍と該更なる参照ブロックとを有する更なる参照パッチが、前記参照パッチに類似するように決定し、
2つのパッチ間の類似性は距離によって測定され、
前記残余を、前記参照ブロックと前記少なくとも1つの更なる参照ブロックとの組み合わせと結合することによって、前記ブロックを再構成する
ように構成された処理手段を有する、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像ブロックの符号化及び再構成に関する。より具体的には、本発明は、画像の参照ブロックを用いたブロック予測に関する。
【背景技術】
【0002】
近傍組み込み(ネイバーエンベッディング)は、画像ブロックの残余符号化(レジデュアルエンコーディング)のための予測を決定すること及び残余符号化された画像ブロックを再構成することに使用される技術である。
【0003】
近傍組み込みにおいては、ブロックの予測又は近似のために組み合わされる参照ブロックが決定され、参照ブロックの決定は、そのブロックの空間的な近傍との、参照ブロックの空間的な近傍の類似性に基づく。2つのブロック間の類似性は、それらの意味内容(セマンティックコンテンツ)が同様であることを意味する。
【0004】
この近似又は予測は、エンコーダ側とデコーダ側と同じ方法で行われることができ、予測の残余分のみがエンコーダからデコーダに伝達あるいは伝送される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近傍の類似性のみに基づいて決定される参照ブロックに関し、本願発明者は、ブロックとの潜在的な相関欠如を認識した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
故に、画像のブロックを符号化するに関し、請求項1に係る方法と請求項7に係る装置とを提案する。この方法は、処理手段を用いて、画像の一部を符号化し且つ再構成し、少なくとも前記ブロックを用いて、前記再構成された部分内の1つの参照ブロックを決定し、前記1つの参照ブロックを参照するベクトルを決定し、前記1つの参照ブロックを用いて、前記再構成された部分内の少なくとも1つの更なる参照ブロックを決定し、決定されたベクトルと、前記1つの参照ブロックと前記少なくとも1つの更なる参照ブロックとの組み合わせに対する前記ブロックの残余と、を符号化することを有する。
【0007】
前記1つの参照ブロックの決定に前記ブロックを用いることは、それが前記ブロックに似ており、前記ブロックとの相関が維持されるように、前記1つの参照ブロックを選択することを可能にする。
【0008】
一実施形態において、前記1つの参照ブロックを決定するために、前記ブロックに隣接した再構成された近傍が更に用いられる。
【0009】
これ又は他の一実施形態において、前記少なくとも1つの更なる参照ブロックを決定するために、前記1つの参照ブロックに隣接した再構成された近傍が更に用いられる。
【0010】
更なる実施形態において、前記1つの参照ブロックと前記少なくとも1つの更なる参照ブロックとの前記組み合わせは、加重線形結合である。例えば、この加重線形結合のための重みは、制約付き最小二乗問題又は非ローカルな平均問題を解くことによって決定されることができる。
【0011】
前記加重線形結合のための重みは、前記ブロックに隣接する近傍、前記1つの参照ブロックに隣接する1つの近傍、及び前記少なくとも1つの更なる参照ブロックに隣接する少なくとも1つの更なる近傍から決定される。
【0012】
あるいは、前記加重線形結合のための重みは、前記ブロック、前記1つの参照ブロック、及び前記少なくとも1つの更なる参照ブロックを用いて決定され、該重みは符号化される。
【0013】
制約付き最小二乗問題の場合、局所線形組み込み又は非負行列因子分解を用いて、解を決定することができる。
【0014】
より更なる実施形態において、少なくとも前記ブロックを用いて、前記再構成された部分内の少なくとも1つの他の参照ブロックと、該少なくとも1つの他の参照ブロックを参照する少なくとも1つの他のベクトルとが決定される。該少なくとも1つの他の参照ブロックに隣接する少なくとも1つの他の近傍を用いて、前記再構成された部分内の少なくとも1つの更なる他の参照ブロックが決定され、前記残余のコストより、前記1つの他の参照ブロックと前記少なくとも1つの更なる他の参照ブロックとの更なる加重線形結合に対する前記ブロックの更なる残余のコストが高いことが決定される。前記残余及び前記更なる残余のコストは、予測コスト又は速度−歪みコストである。
【0015】
画像のブロックを再構成することに関し、請求項
8に係る方法と請求項
12に係る装置とを提案する。画像のブロックを再構成する方法は、処理手段を用いて、前記画像の一部を再構成し、前記ブロックの符号化された残余を復号化し、前記再構成された部分内の参照ブロックを参照する符号化されたベクトルを復号化し、前記参照ブロックを用いて、前記再構成された部分内の少なくとも1つの更なる参照ブロックを決定し、前記残余を、前記参照ブロックと前記少なくとも1つの更なる参照ブロックとの組み合わせと結合することによって、前記ブロックを再構成することを有する。
【0016】
更なる有利な実施形態の特徴が、従属請求項に記述される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明の例示的な実施形態を、図面に示し、以下の記載にて詳細に説明する。これらの例示的な実施形態は、請求項に規定される本発明の開示又は範囲を限定するためではなく、単に本発明を明らかにするために説明されるものである。図面は以下の図を含む。
【
図1】従来技術に係る近傍組み込みを示す図である。
【
図2】マップ支援による近傍組み込みの例示的な一実施形態を示す図である。
【
図3】最適化されたマップ支援による近傍組み込みの例示的な一実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、対応するように適応された処理装置を有する如何なる電子装置上で実現されてもよい。例えば、本発明は、テレビジョン、携帯電話、パーソナルコンピュータ、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ、ナビゲーションシステム、又はビデオオーディオシステムにて実現され得る。
【0019】
従来技術によれば、参照(リファレンス)ブロックRB1、RB2、RB3は、これら参照ブロックRB1、RB2、RB3に隣接するテンプレートMT1、MT2、MT3が、符号化あるいは再構成すべきブロックBLKに隣接するテンプレートTPLによく似るように決定される。これは、
図1に例示的に描かれており、そこでは、画像IMGの灰色領域は、予測で使用される符号化後のエンコーダ側、及び再構成で使用されるデコーダ側にて、既に再構成されており、また、画像IMGの白色領域はこれから符号化あるいは再構成されるものである。
【0020】
近傍組み込み法の提案する改良の例示的な一実施形態において、予測すべき現在ブロックBLKのテクスチャ(構造)情報を考慮するためにベクトルVECが使用される。
【0021】
すなわち、1つの参照ブロックRB1が、エンコーダ側でのブロックマッチング及び参照ベクトルVECの符号化、及びデコーダ側での、符号化された参照ベクトルVECの復号化により、現在ブロックBLKに似るように決定される。例えばユークリッド距離を用いて、ブロックの類似性又は相似性を測定することができ、探索領域内での最小距離を、最も近い一致と見なすことができる。探索領域は、再構成された画像の全体又はその一部とされ得る。
【0022】
そして、少なくとも1つの更なる参照ブロックRB2、RB3が、デコーダ側と同じ方法でエンコーダ側で決定される。すなわち、上記1つの参照ブロックRB1に似るように、少なくとも1つの第2の参照ブロックRB2、RB3が決定される。
【0023】
決定された重みを用いて加重された、上記1つの参照ブロックRB1の、上記少なくとも1つの更なる参照ブロックとの線形結合に対する、予測すべきブロックの残余の符号化の速度(レート)−歪みコストを最小化するよう、一対の重みを決定することができる。その後、決定された重みは、決定可能性を可能とするように符号化されなければならない。
【0024】
図2に例として描かれる更なる例示実施形態において、上記1つの参照ブロックRB1は、当該1つの参照ブロックRB1に隣接する1つの参照近傍を有する1つの参照パッチFMPが、現在ブロックの対応する近傍と現在ブロックBLKとを有するパッチPTCに似るように決定される。
図2において、近傍の形状及び位置は、単に例示目的で描かれており、他の形状及び位置も可能である。
【0025】
より更なる例示実施形態において、第2の参照ブロックRB2は、第2の参照近傍と当該第2の参照ブロックRB2とを有する第2の参照パッチMP2が上記1つの参照パッチFMPに似るように決定される。
【0026】
これらの概念は、k個のパッチ内のk個のブロックの加重線形結合を用いてブロックが予測されるとして、k個のパッチの選択へと拡張されることができる。k個のパッチのうちの1つは、この1つのパッチ内に含まれる少なくとも1つの参照ブロックが、予測すべきブロックに似るように決定される。すなわち、k個のパッチのうちの該1つは、予測すべきブロックを有する対応するパッチに自身が似るように決定される。
【0027】
残りの(k−1)個のパッチは、その後、更にこれら残りのパッチ内に含まれる参照近傍が、k個のパッチのうちの上記1つ内に含まれる近傍に似るように決定される。すなわち、
図2に例示的に描かれるように、残りの(k−1)個のパッチは、k個のパッチのうちの上記1つに似るように決定される。そして、行列状に積み重ねられ(各パッチがベクトル化され)、これらのパッチは更に、加重係数を計算するのに役立つことができる。パッチは、予測すべきブロックの近傍のテンプレート画素を近似するために選択される。これは、予測すべきブロックの未知の画素を推定するように、より良好に適応された、一組のパッチ及び対応する加重ベクトルを得ることを可能にする。テンプレート画素のみに基づくとき、重みは、エンコーダ側とデコーダ側とで同じ方法で決定されることができる。
【0028】
k個のパッチに拡張された概念の例示的な一実施形態は、予測すべき入力ブロックのk個のパッチの二段階探索により進められる所謂マップ支援近傍組み込み(Map-Aided Neighbour Embedding;MANE)法である。
【0029】
第一段階は、ブロックマッチング(BM)実施形態を用いて、予測すべきブロックとそれの対応する近傍(この近傍はテンプレートとも呼ばれている)とを有する現在パッチの、最もよく似ている参照パッチを探索することからなる。最もよく似ている参照パッチは、予測すべきブロックを有する現在パッチを用いて決定されるので、この最も近い参照パッチを参照するベクトルは、符号化の一部である。この段階はエンコーダ側で行われる。デコーダが、ベクトルを復号化し、それを用いて参照パッチを決定する。
【0030】
第二段階にて、この実施形態は、第一段階で見い出された最もよく似ているパッチの(k−1)個の最も近い一致である(k−1)個の更なる参照パッチを探索する。この段階は、符号化及び復号化に関して同じ方法で実行されることができる。
【0031】
現在パッチの最も近いパッチと(k−1)個の更なる参照パッチとを決定するために使用される距離は、現在ブロック及び対応するテンプレート画素を合わせたものと共通の位置にある画素を含むパッチ全体上で計算される。
【0032】
(k−1)個の最も近いパッチを決定するために、それに従って候補パッチをランク付けすることができる距離指標の例は、入力パッチ及び各候補パッチの画素によって形成されるベクトル間のユークリッド距離又は平均二乗誤差である。
【0033】
k個のパッチが決定されると、一実施形態において、本発明は、予測すべきブロックの線形近似に使用される重みを決定するよう、例えばLLE法又はNMF法をそれぞれ用いて、制約付き最小二乗問題を解くことによって進められる。
【0034】
重みは様々に決定されることができる。一実施形態において、決定された重みを用いて加重されたパッチ内に含まれる参照ブロックの線形結合に対する、予測すべきブロックの残余の符号化の速度−歪みコストを最小化するように、重みが決定される。その後、決定された重みは、再構成を可能にするために符号化されなければならない。
【0035】
ほぼ同じようにして、重みは、決定された重みを用いて加重された参照パッチの線形結合に対する、予測すべきブロックとそのテンプレートとを有する現在パッチの残余の符号化の速度−歪みコストを最小化するように決定されることができる。この場合も、決定された重みは、再構成を可能にするために符号化されなければならない。
【0036】
他の例では、重みは、決定された重みを用いて加重されたパッチ内に含まれる参照テンプレートの線形結合に対する、予測すべきブロックのテンプレートの残余の符号化の速度−歪みコストを最小化するように決定されることができる。この場合、重みはエンコーダ及びデコーダによって同じ方法で決定されることができ、重みを符号化する必要はない。
【0037】
図3に例示的に描かれるように、この概念は、FMP1及びFMP2として
図3にn=2に関して例示的に描かれた、各々がk個のパッチを有するn個の候補セットDIC1、DIC2へと更に拡張されることができる。すなわち、予測すべきブロックBLKとそれに対応する近傍TPLとを有する現在パッチPTCの、最も近い参照パッチFMP1だけでなく、現在パッチのn個の最も近い参照パッチFMP1、FMP2の組(セット)が決定される。
【0038】
n個の最も近い参照パッチFMP1、FMP2の各々に対し、提案する方法は、n個の最も近い参照パッチFMP1、FMP2のうちのそれぞれの1つの(k−1)個の最も近い一致である(k−1)個の更なる参照パッチMP21、MP22を探索することを有し、対応する速度−歪みコスト最小化重みを決定する。n個の候補セットのうち、他の何れの候補セットの速度−歪みコストよりも高くない速度−歪みコストをもたらす1つが選択される。ベクトルVEC1、VEC2のうち、選択された候補セットの最も近い参照パッチを参照する1つが、符号化あるいは復号化されるベクトルである。
【0039】
より全域的(グローバル)な速度−歪みコストの最小化を可能にすることにより、決定された重みを用いて加重されたパッチ内に含まれる参照テンプレートの線形結合に対する、予測すべきブロックのテンプレートの残余の符号化の速度−歪みコストを最小化する、ように決定された重みを用いて重みを符号化する必要なく、良好な予測を達成することができる。
【0040】
換言すれば、この実施形態の基礎となる基本的な考えは、所与の基準を最小化することになる“最適”マッチングベクトルによりk個の参照パッチを選択するというものである。それにより、使用されるマッチングベクトルは、現状技術による近傍組み込みに基づく予測より良好に適応された参照ブロックを見い出す助けとなる。
【0041】
k個のパッチに拡張された概念の例示的な一実施形態は、ブロック予測のために加重線形結合に結合されるk個のブロックの三段階探索を実行する所謂oMANE(optimized Map-Aided Neighbourhood Embedding)実施形態である。
【0042】
1) ブロックBLK及び隣接する近傍若しくはテンプレートTPLを有するパッチPTCの、L個の参照パッチFMP1、FMP2が決定される。これらL個の参照パッチFMP1、FMP2は、例えばユークリッド距離である組み込み予測誤差に基づく距離指標に関して、パッチPTCに最もよく似ているものである。各参照パッチFMP1、FMP2は、それぞれの参照ベクトルVEC1、VEC2と関連付けられる。
【0043】
2) 段階1で見い出された各参照パッチFMP1、FMP2に対し、その参照パッチFMP1、FMP2に含まれるそれぞれの参照ブロックRB11、RB12と、その参照パッチFMP1、FMP2に一致あるいは類似する更なるパッチMP12、MP22に含まれるk−1個の更なる参照ブロックRB21、RB22とを有するディクショナリDIC1、DIC2が構築され、そして、ディクショナリ内のブロックの加重線形結合を用いて予測が決定される。
【0044】
3) L個のディクショナリのうち現在ブロックを予測するために保持されることになる1つのディクショナリに関連付けられた一組の重みV
lを選択するために、2つの距離指標を考慮することができる。1つは、組み込み予測誤差に直接的に基づく距離指標であり、例えば、それは、最良の予測l
optを得るための、ディクショナリA
ulに基づく予測A
ulV
lと予測すべき現在ブロックX
uとの間の二乗誤差の最小和とすることができる:
【0045】
【数1】
第2の1つは、再構成されたブロックの品質とブロックの符号化コストとの間での最良の妥協点を提供する予測を選択することが望ましい場合の、組み込み速度−歪みコストに基づく距離指標である。すなわち、再構成されたブロックの品質とブロックの符号化コストとの間での最良の妥協点を提供する予測、すなわち:
【0046】
【数2】
を選択するために、速度−歪みコストが最小化される。ここで、Dlは、SSE距離メトリックを用いることによって現在ブロックと再構成されたブロックとの間の歪みを表し、Rlは、少なくとも、ディクショナリA
ulに基づく予測A
ulV
lに対するブロックの残余を符号化することの、符号化コストである。構文要素(シンタックスエレメント)の符号化コストを更に考慮に入れることができる。
【0047】
最後に、選択されたディクショナリの参照パッチに関連付けられた参照ベクトルが符号化される。
【0048】
現状技術と比較して、本発明は、速度歪み性能を向上させるという利点を有する。
【0049】
ターゲットとする例示的な産業用途は、ビデオ配信技術(圧縮を含む)及びディスプレイ技術である。ビデオ圧縮及びコンテンツ表現に関する用途にも関心が持たれる。
(付記1) 画像のブロックを符号化する方法であって、当該方法は、処理手段を用いて、
前記画像の一部を符号化し、再構成するステップと、
少なくとも前記ブロックを用いて、前記再構成された部分内の1つの参照ブロックを、該参照ブロックが前記少なくとも1つのブロックと似ているように決定し、且つ前記1つの参照ブロックを参照するベクトルを決定するステップと、
前記1つの参照ブロックを用いて、前記再構成された部分内の少なくとも1つの更なる参照ブロックを、前記1つの参照ブロックが該少なくとも1つの更なる参照ブロックと似ているように決定するステップと、
決定された前記ベクトルと、前記1つの参照ブロックと前記少なくとも1つの更なる参照ブロックとの組み合わせに対する前記ブロックの残余と、を符号化するステップと
を行うことを有する、方法。
(付記2) 前記1つの参照ブロックを決定するために、前記ブロックに隣接した再構成された近傍が更に用いられる、付記1に記載の方法。
(付記3) 前記少なくとも1つの更なる参照ブロックを決定するために、前記1つの参照ブロックに隣接した再構成された近傍が更に用いられる、付記1又は2に記載の方法。
(付記4) 前記1つの参照ブロックと前記少なくとも1つの更なる参照ブロックとの前記組み合わせは、加重線形結合であり、該加重線形結合のための重みは、制約付き最小二乗問題又は非ローカルな平均問題を解くことによって決定される、付記1乃至3の何れか一に記載の方法。
(付記5) 前記加重線形結合のための重みは、前記ブロックに隣接する近傍、前記1つの参照ブロックに隣接する1つの近傍、及び前記少なくとも1つの更なる参照ブロックに隣接する少なくとも1つの更なる近傍から決定される、付記4に記載の方法。
(付記6) 前記加重線形結合のための重みは、前記ブロック、前記1つの参照ブロック、及び前記少なくとも1つの更なる参照ブロックを用いて決定され、該重みは符号化される、付記4に記載の方法。
(付記7) 前記制約付き最小二乗問題は、局所線形組み込み又は非負行列因子分解を用いて解かれる、付記4に記載の方法。
(付記8) 当該方法は更に、前記処理手段を用いて、
少なくとも前記ブロックを用いて、前記再構成された部分内の少なくとも1つの他の参照ブロックを、該少なくとも1つの他の参照ブロックの各々が前記少なくとも1つのブロックと似ているように決定し、且つ前記少なくとも1つの他の参照ブロックを参照する少なくとも1つの他のベクトルを決定するステップと、
前記少なくとも1つの他の参照ブロックを用いて、前記画像の前記再構成された部分内の少なくとも1つの更なる他の参照ブロックを、該少なくとも1つの更なる他の参照ブロックの各々が前記少なくとも1つの他の参照ブロックの1つと似ているように決定するステップと、
前記残余の速度−歪みコスト又は予測誤差より、前記他の参照ブロックの1つと前記少なくとも1つの更なる他の参照ブロックとの更なる加重線形結合に対する前記ブロックの更なる残余の速度−歪みコスト又は予測誤差が、高いことを決定するステップと
を行うことを有する、付記4乃至7の何れか一に記載の方法。
(付記9) 画像のブロックを符号化する装置であって、当該装置は、
前記画像の一部を符号化し、再構成し、
少なくとも前記ブロックを用いて、前記再構成された部分内の1つの参照ブロックを、該参照ブロックが前記少なくとも1つのブロックと似ているように決定し、且つ前記1つの参照ブロックを参照するベクトルを決定し、
前記1つの参照ブロックを用いて、前記再構成された部分内の少なくとも1つの更なる参照ブロックを、前記1つの参照ブロックが該少なくとも1つの更なる参照ブロックと似ているように決定し、
決定された前記ベクトルと、前記1つの参照ブロックと前記少なくとも1つの更なる参照ブロックとの組み合わせに対する前記ブロックの残余と、を符号化する
ように構成された処理手段を有する、装置。
(付記10) 画像のブロックを再構成する方法であって、当該方法は、処理手段を用いて、
前記画像の一部を復号化するステップと、
前記ブロックの符号化された残余を復号化し、前記再構成された部分内の参照ブロックを参照する符号化されたベクトルを復号化するステップと、
前記参照ブロックを用いて、前記再構成された部分内の少なくとも1つの更なる参照ブロックを決定するステップと、
前記残余を、前記参照ブロックと前記少なくとも1つの更なる参照ブロックとの組み合わせと結合することによって、前記ブロックを再構成するステップと
を行うことを有する、方法。
(付記11) 前記少なくとも1つの更なる参照ブロックを決定するために、前記参照ブロックに隣接した再構成された近傍が更に用いられる、付記10に記載の方法。
(付記12) 前記参照ブロックと前記少なくとも1つの更なる参照ブロックとの前記組み合わせは、加重線形結合であり、該加重線形結合のための重みは、制約付き最小二乗問題又は非ローカルな平均問題を解くことによって、前記ブロックに隣接する近傍、前記参照ブロックに隣接する1つの近傍、及び前記少なくとも1つの更なる参照ブロックに隣接する少なくとも1つの更なる近傍から決定される、付記10又は11に記載の方法。
(付記13) 前記制約付き最小二乗問題は、局所線形組み込み又は非負行列因子分解を用いて解かれる、付記12に記載の方法。
(付記14) 前記参照ブロックと前記少なくとも1つの更なる参照ブロックとの前記組み合わせは、加重線形結合であり、当該方法は更に、前記加重線形結合に関する符号化された重みを復号化することを有する、付記10又は11に記載の方法。
(付記15) 画像のブロックを再構成する装置であって、当該装置は、
前記画像の一部を復号化し、
前記ブロックの符号化された残余を復号化し、前記再構成された部分内の参照ブロックを参照する符号化されたベクトルを復号化し、
前記参照ブロック、及び/又は前記参照ブロックに隣接した再構成された近傍、を用いて、前記再構成された部分内の少なくとも1つの更なる参照ブロックを決定し、
前記残余を、前記参照ブロックと前記少なくとも1つの更なる参照ブロックとの組み合わせと結合することによって、前記ブロックを再構成する
ように構成された処理手段を有する、装置。