(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ドア部を駆動させる駆動部と、前記駆動部によって駆動されたドア部の閉扉時移動量を検出する閉扉時移動量検出部と、前記駆動部を制御する制御コンピュータとを備えた可動式ホーム柵の前記制御コンピュータに、閉扉動作の制御を行わせるためのプログラムであって、
前記閉扉時移動量が設定値に達した場合に閉扉動作を停止させる停止手段、
前記閉扉時移動量が前記設定値に達せずに前記ドア部の閉扉移動が停止したことを検出する戸先当接停止検出手段、
前記戸先当接停止検出手段により検出されたときの前記閉扉時移動量と前記設定値との差(以下「ショート長」という)が所定の戸挟み閾値条件を満たした場合に、戸挟みの発生を検出する戸挟み発生検出手段、
前記戸先当接停止検出手段による検出がなされ、且つ、前記ショート長が前記戸挟み閾値条件を満たさないことを少なくとも条件に含む所定の設定値低減実行条件を満たしたか否かを判定し、肯定判定の場合に前記設定値を低減させて更新する低減処理を実行する低減処理実行手段、
として前記制御コンピュータを機能させるためのプログラム。
前記低減処理実行手段は、前記戸先当接停止検出手段による検出がなされ、且つ、前記ショート長が前記戸挟み閾値条件を満たさないことが所定回数連続すること、を更に含めて前記設定値低減実行条件を満たしたか否かを判定する、
請求項1に記載のプログラム。
前記低減処理実行手段は、前記ショート長が許容範囲内であることを示す所定の許容長条件を満たさないこと、を更に含めて前記設定値低減実行条件を満たしたか否かを判定する、
請求項1又は2に記載のプログラム。
前記戸先当接停止検出手段による検出がなされずに前記停止手段により停止されたことが所定の継続条件を満たすまで繰り返されたか否かに基づいて閉扉時の戸先に隙間が発生した可能性を推定し、肯定推定された場合に前記設定値を増長させて更新する増長処理を実行する増長処理実行手段、
として前記制御コンピュータを更に機能させるための請求項1〜3の何れか一項に記載のプログラム。
ドア部を駆動させる駆動部と、前記駆動部によって駆動されたドア部の閉扉時移動量を検出する閉扉時移動量検出部とを備えた可動式ホーム柵の前記駆動部を制御する制御装置であって、
前記閉扉時移動量が設定値に達した場合に閉扉動作を停止させる停止手段と、
前記閉扉時移動量が前記設定値に達せずに前記ドア部の閉扉移動が停止したことを検出する戸先当接停止検出手段と、
前記戸先当接停止検出手段により検出されたときの前記閉扉時移動量と前記設定値との差(以下「ショート長」という)が所定の戸挟み閾値条件を満たした場合に、戸挟みの発生を検出する戸挟み発生検出手段と、
前記戸先当接停止検出手段による検出がなされ、且つ、前記ショート長が前記戸挟み閾値条件を満たさないことを少なくとも条件に含む所定の設定値低減実行条件を満たしたか否かを判定し、肯定判定の場合に前記設定値を低減させて更新する低減処理を実行する低減処理実行手段と、
を備えた制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された技術は、左右一対のドア部(可動扉)の一方の押付トルクを、他方の押付トルクよりも大きくするという技術であり、押付トルクが小さい方のドア部にはストッパー機構を設けずに、衝突するまで押付トルクを常時働かせ続けるという技術である。
【0007】
従って、確かに開口幅が広くなった場合に生じる戸先の隙間を解消することができるが、戸先が衝突するまで押付トルクが働くため、閉扉時には必ず衝突音が発生し得る状態であり、且つ、衝突時の反力が故障や劣化の原因になり得る。
また、開口幅は狭まる場合もある。狭まる場合には、衝突音の問題や、故障や劣化の問題が一層大きくなる。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みて考案されたものであり、その目的とするところは、温度変化によってプラットホームが床面方向に伸縮し、開口幅が変化した場合に対応することができる新たな可動式ホーム柵の制御技術を提案することである。特に、開口幅が狭まる場合に適切に対応可能な制御技術を提案することを第1の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための第1の発明は、
ドア部(例えば、
図2のドア部D)を駆動させる駆動部(例えば、
図2の駆動部200)と、前記駆動部によって駆動されたドア部の閉扉時移動量を検出する閉扉時移動量検出部(例えば、
図2の移動量検出部300)と、前記駆動部を制御する制御コンピュータ(例えば、
図2,
図4の制御装置100)とを備えた可動式ホーム柵(例えば、
図2のホーム柵1)の前記制御コンピュータに、閉扉動作の制御を行わせるためのプログラム(例えば、
図4の閉扉動作制御プログラム82)であって、
前記閉扉時移動量が設定値に達した場合に閉扉動作を停止させる停止手段(例えば、
図4の停止部31)、
前記閉扉時移動量が前記設定値に達せずに前記ドア部の閉扉移動が停止したことを検出する戸先当接停止検出手段(例えば、
図4の戸先当接停止検出部32)、
前記戸先当接停止検出手段により検出されたときの前記閉扉時移動量と前記設定値との差(以下「ショート長」という)が所定の戸挟み閾値条件を満たした場合に、戸挟みの発生を検出する戸挟み発生検出手段(例えば、
図4の戸挟み発生検出部33)、
前記戸先当接停止検出手段による検出がなされ、且つ、前記ショート長が前記戸挟み閾値条件を満たさないことを少なくとも条件に含む所定の設定値低減実行条件を満たしたか否かを判定し、肯定判定の場合に前記設定値を低減させて更新する低減処理を実行する低減処理実行手段(例えば、
図4の低減処理実行部34)、
として前記制御コンピュータを機能させるためのプログラムである。
【0010】
この第1の発明によれば、ドア部の閉扉時移動量が設定値に達した場合には閉扉動作が停止される。閉扉時移動量が設定値に達する前に閉扉動作が停止する場合は、戸先が何らかに当接して閉扉移動が停止したことを意味する。旅客の荷物等が挟まる戸挟みでなければ、当接する相手は、左右一対の両扉式であれば他方の戸先であり、支柱や固定パネルであればその固定部である。もしも戸挟みである場合には、閉扉時移動量と設定値の差であるショート長が所定の戸挟み閾値条件を満たすため、戸挟みを適切に検出することができる。戸挟みでないにも関わらず閉扉移動が停止した場合には、設定値低減実行条件を満たすことで、開口幅が狭まったことを適切に検出することができる。開口幅が狭まった場合には、設定値が低減されて更新されるため、以降の閉扉動作を適切に停止させることができるようになる。これにより、温度変化によってプラットホームが床面方向に伸縮し、開口幅が変化した場合にも適切に対応することができる。
【0011】
なお、温度変化によるプラットホームの伸縮はゆっくりと生じ、急激に生じるわけではない。
そこで、例えば、第2の発明として、前記低減処理実行手段が、前記戸先当接停止検出手段による検出がなされ、且つ、前記ショート長が前記戸挟み閾値条件を満たさないことが所定回数連続すること、を更に含めて前記設定値低減実行条件を満たしたか否かを判定する、第1の発明のプログラムを構成してもよい。
【0012】
また、第3の発明として、前記低減処理実行手段が、前記ショート長が許容範囲内であることを示す所定の許容長条件を満たさないこと、を更に含めて前記設定値低減実行条件を満たしたか否かを判定する、第1又は第2の発明のプログラムを構成することとしてもよい。
【0013】
この第3の発明によれば、閉扉時移動量と設定値との差が誤差の範囲内といった所定の許容長条件を満たす場合にまで設定値を低減させることがなくなる。
【0014】
また、第4の発明は、前記戸先当接停止検出手段による検出がなされずに前記停止手段により停止されたことが所定の継続条件を満たすまで繰り返されたか否かに基づいて閉扉時の戸先に隙間が発生した可能性を推定し、肯定推定された場合に前記設定値を増長させて更新する増長処理を実行する増長処理実行手段(例えば、
図4の増長処理実行部35)、
として前記制御コンピュータを更に機能させるための第1〜第3の何れかの発明のプログラムである。
【0015】
この第4の発明によれば、閉扉時移動量が設定値に達することによる閉扉動作の停止が所定の継続条件を満たすまで繰り返された場合に、開口幅が広がり、戸先に隙間が生じた可能性があると推定する。そして、当該推定に応じて設定値を増長させて更新することができるため、開口幅が広がった場合にも適切に対応することができる。なお、仮に、この推定が誤りである場合には、開口幅に比べて設定値が大きくなるため、低減処理が実行されることとなるため、適切な設定値に戻される。
【0016】
また、第5の発明は、前記増長処理実行手段を、前記低減処理実行手段よりも低い頻度で機能させる、第4の発明のプログラムである。
【0017】
この第5の発明によれば、増長処理実行手段を低減処理実行手段よりも低い頻度で機能させることができる。開口幅がドア部のストローク長(設定値)よりも広い場合には、全閉時に戸先に若干の隙間が生じるが、戸先が衝突して停止するわけではない。従って、衝突音が発生することも、衝突時の反力が発生することもない。また、温度変化によるプラットホームの床面方向の伸縮はゆっくりと生じる。そのため、やみくもに増長処理実行手段を機能させるのではなく、低減処理実行手段に比べて増長処理実行手段を低い頻度で機能させることで、戸先に隙間が生じた可能性の推定精度を向上させることができる。
【0018】
また、第6の発明は、ドア部を駆動させる駆動部と、前記駆動部によって駆動されたドア部の閉扉時移動量を検出する閉扉時移動量検出部とを備えた可動式ホーム柵の前記駆動部を制御する制御装置(
図2,
図4の制御装置100)であって、
前記閉扉時移動量が設定値に達した場合に閉扉動作を停止させる停止手段と、
前記閉扉時移動量が前記設定値に達せずに前記ドア部の閉扉移動が停止したことを検出する戸先当接停止検出手段と、
前記戸先当接停止検出手段により検出されたときの前記閉扉時移動量と前記設定値との差(以下「ショート長」という)が所定の戸挟み閾値条件を満たした場合に、戸挟みの発生を検出する戸挟み発生検出手段と、
前記戸先当接停止検出手段による検出がなされ、且つ、前記ショート長が前記戸挟み閾値条件を満たさないことを少なくとも条件に含む所定の設定値低減実行条件を満たしたか否かを判定し、肯定判定の場合に前記設定値を低減させて更新する低減処理を実行する低減処理実行手段と、
を備えた制御装置である。
【0019】
この第6の発明によれば、第1の発明と同様の作用効果を奏する制御装置を実現することができる。
【0020】
また、第7の発明は、第6の発明の制御装置を備えた可動式ホーム柵である。
【0021】
この第7の発明によれば、第1の発明と同様の作用効果を奏する可動式ホーム柵を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を適用した実施形態の一例を説明するが、本発明を適用可能な形態は以下の実施形態に限られないことは勿論である。
【0024】
図1は、本実施形態の可動式ホーム柵(以下単に「ホーム柵」という)1の外観例を示す図である。本実施形態のホーム柵1は、プラットホームPL上に固定設置された左右の戸袋部DCL,DCRが、左右一対のドア部DL,DRを支持し、開閉駆動する構成を有している。なお、ホーム柵1の構成として、左右一対ではなく、左右どちらかのドア部および戸袋部を有する構成としてもよい。その場合には、ドア部は、戸袋部から所定距離離れて設けられた固定支柱や固定パネル等に戸先が接触した位置で全閉状態となる構成とする。すなわち、例えば、右ドア部DRと右戸袋部DCRとでホーム柵1を構成する場合には、
図1において左ドア部DLの位置に固定パネル等が設置された構成となる。
【0025】
図2は、本実施形態のホーム柵1の機能構成を示すブロック図である。左戸袋部DCLの内部には、左ドア部DLを開閉駆動する駆動部200Lと、左ドア部DLが駆動されて移動した移動量(閉扉時移動量)を検出する移動量検出部300Lとが設置されている。同じく、右戸袋部DCRの内部には、右ドア部DRを開閉駆動する駆動部200Rと、右ドア部DRが駆動されて移動した移動量(閉扉時移動量)を検出する移動量検出部300Rとが設置されている。
【0026】
以下、左ドア部DLと右ドア部DRを包括してドア部Dと称し、左戸袋部DCLと右戸袋部DCRを包括して戸袋部DCと称する。また、駆動部200Lと駆動部200Rを包括して駆動部200と称し、移動量検出部300Lと移動量検出部300Rを包括して移動量検出部300と称する。
【0027】
駆動部200は、例えば、ベルト駆動方式やボールネジ駆動方式など、適宜公知技術を適用することができる。本実施形態では、少なくとも駆動の動力源としてモータを用いることとする。
【0028】
移動量検出部300は、駆動部200によるドア部Dの閉扉時の移動量を検出する。例えば、移動量検出部300を、駆動部200の動力源であるモータの回転角を検出するエンコーダで構成し、検出した回転角からドア部Dの移動量を換算して求めることができる。このときの換算機能は、移動量検出部300内に換算用の電子回路を内蔵することとしてもよいし、制御装置100がソフトウェア的に実現することとしてもよい。何れにせよ、モータの回転角は移動量と等価といえるため、移動量検出部300は移動量を検出・出力するといえる。
移動量検出部300により検出可能な移動量の精度(分解能)としては、少なくとも5mm単位以下の精度が好適であり、1mm単位以下の精度であるとより好適である。
【0029】
また、ホーム柵1は、左右の戸袋部DCL,DCRの一方に制御装置100を設置して備える。制御装置100は、外部から入力される指示信号に従って開扉/閉扉動作を制御し、ホーム柵1の動作状態を随時外部に出力する。具体的には、制御装置100は、移動量検出部300から入力される移動量をもとに、駆動部200の駆動を制御することでドア部Dの開扉/閉扉動作を制御する。
【0030】
図3は、仮に、設定値Cを固定とした場合の開口幅が変化したときのホーム柵1の全閉時の様子を俯瞰した図である。設定値Cとは、ホーム柵1に設定されたドア部Dを移動させる長さのことであり、規定のストローク長のことである。
図3(1)はある参照状態を示し、
図3(2)は参照状態に対して開口幅が狭まった状態を示し、
図3(3)は参照状態に対して開口幅が広がった状態を示す。
【0031】
ホーム柵1は、ドア部Dを設定値Cだけ移動するように駆動する。本実施形態のホーム柵1は左右の両扉式であるため、
図3(1)に示す参照状態では、設定値Cの2倍が開口幅W1となるように設定値Cが定められていることとする。従って、この参照状態の場合、ドア部Dが丁度設定値Cだけ移動されると、左右のドア部Dの戸先同士が接触して停止することとなる。ドア部Dの移動量Lは、設定値Cとなる。
【0032】
一方、プラットホームPLは、降雨や降雪、気温の低下等によって温度が低下すると、床面方向に収縮する。すると、
図3(2)に示すように開口幅が狭まり、
図3(1)の開口幅W1より狭い開口幅W2となる。ホーム柵1はドア部Dを設定値Cだけ移動するように駆動しようとするが、設定値Cの長さ分の移動の前に、左右のドア部Dの戸先が衝突する。このため、ドア部Dの移動量Lは、設定値Cよりも短い長さしか移動しない。この短くなった長さをショート長S(=設定値C−移動量L)と称する。この
図3(2)の状態は、戸先の衝突音の問題や、過大な駆動力・衝突時の反力発生に起因する故障や劣化の問題、等が生じ得る。
【0033】
また、プラットホームPLは、太陽光線や気温の上昇等によって温度が上昇し、床面方向に伸張する。すると、
図3(3)に示すように開口幅が広がり、
図3(1)の開口幅W1より広い開口幅W3となる。ホーム柵1はドア部Dを設定値Cだけ移動するように駆動する。従って、ドア部Dの移動量Lは設定値Cであるが、開口幅が広がった関係で、左右のドア部Dの戸先間に隙間が生じてしまう。この
図3(3)の状態は、戸先に隙間が生じることによる見栄えの問題、旅客が隙間に手を入れてドア部Dを無理に開扉させようとする等のいたずらの問題、等が生じ得る。
【0034】
本実施形態のホーム柵1では、設定値Cを適切に変更制御することで
図3(2)や
図3(3)に示した問題を解消する。
【0035】
図4は、本実施形態のホーム柵1に備えられた制御装置100の機能構成を示すブロック図である。制御装置100は外部から入力される指示信号に従って開扉/閉扉動作を制御し、動作状態を随時外部に出力する。開扉/閉扉動作の制御においては、移動量検出部300が検出した移動量をもとに駆動部200を駆動制御することでドア部Dを開扉/閉扉させる。制御装置100は、機能部として、制御部10と、操作部40と、表示部50と、通信部60と、記憶部80とを備えた一種の制御用のコンピュータである。
【0036】
操作部40は、プッシュスイッチやダイヤルなどを有して構成され、表示部50は、LEDや小型の液晶表示装置などを有して構成される。操作部40および表示部50は、作業員によってメンテナンス時に利用されるものであり、通常時には戸袋部DCのメンテナンス扉の内側に設置されて、旅客が操作および視認できないように構成される。
【0037】
通信部60は、駅装置や、プラットホームPL上に設置された駅係員が操作可能な操作装置などと通信接続され、列車の扉の開閉扉と連動したドア部Dの開扉/閉扉の指示信号を入力するとともに、動作状態を出力する。
【0038】
制御部10は、CPU(Central Processing Unit)やDSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサーや、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field-Programmable Gate Array)等の集積回路などを有して構成され、機能部として、ドア部Dの開扉動作を司る開扉動作制御部20と、閉扉動作を司る閉扉動作制御部30とを有する。開扉動作制御部20は、外部からの開扉指示信号に応じて機能する機能部であり、記憶部80に記憶された開扉動作制御プログラム81に従って駆動部200を駆動制御してドア部Dを開扉させる。
【0039】
閉扉動作制御部30は、外部からの閉扉指示信号に応じて機能する機能部であり、記憶部80に記憶された閉扉動作制御プログラム82に従って駆動部200を駆動制御してドア部Dを閉扉させる。閉扉動作制御部30には、停止部31と、戸先当接停止検出部32と、戸挟み発生検出部33と、低減処理実行部34と、増長処理実行部35とが含まれる。
【0040】
停止部31は、移動量検出部300が検出している移動量Lが、設定値Cとなった場合に駆動部200の駆動を停止してドア部Dの移動を停止させる機能部である。
【0041】
戸先当接停止検出部32は、ドア部Dの戸先が何かに当接して停止したことを検出する機能部である。具体的には、移動量検出部300が検出している移動量Lが、設定値Cに至る前に増加しなくなったことを検出することで、戸先が何かに当接して停止したことを検出する。
【0042】
戸挟み発生検出部33は、戸先当接停止検出部32による停止検出がなされた場合に、ドア部Dの移動停止が、旅客の荷物が戸先に挟まること等による戸挟みであるか否かを判定して、戸挟みの発生を検出する。具体的には、戸先当接停止検出部32による停止検出がなされた場合に、そのときのドア部Dの移動量Lと設定値Cとの差であるショート長S(=設定値C−移動量L)が、所定の戸挟み閾値条件を満たした場合に、戸挟みの発生を検出する。戸挟みの閾値条件としては、例えば10mm以上や15mm以上といった条件を定めることができる。
【0043】
低減処理実行部34は、所定の設定値低減実行条件を満たしたか否かを判定し、肯定判定の場合に設定値Cを低減させて更新する低減処理を実行する機能部である。所定の設定値低減実行条件には、少なくとも、戸先当接停止検出部32による停止検出がなされたが、ショート長Sが所定の戸挟み閾値条件を満たさなかったこと、という条件が含まれる。
【0044】
今回の閉扉動作において戸先当接停止検出部32による停止検出がなされたが、所定の戸挟み閾値条件を満たさない場合には、設定値Cを低減させて更新することとしてもよいが、本実施形態では、更に、過去の閉扉動作の履歴を加味して、設定値Cを低減させるか否かを判定する。
【0045】
具体的には、閉扉動作制御部30は、閉扉動作を行うごとに、当該閉扉動作における設定値C、移動量L、ショート長S、戸挟み発生検出の有無といったデータを対応付けて履歴データ87に記録する。履歴データ87は、最後の閉扉動作1回分の記録のみを保持するデータであってもよいが、本実施形態では例えば5回分といった複数回分の記録を保持することとする。
【0046】
低減処理実行部34は、今回の閉扉動作と、履歴データ87に記録された過去の閉扉動作記録とを参照して、戸先当接停止検出部32による停止検出がなされたが、所定の戸挟み閾値条件を満たさなかった閉扉動作が所定回数(例えば2回や3回)連続した場合に、設定値低減実行条件を満たしたとして、設定値Cを低減(例えば1mmや2mmなど)させて更新する。温度変化によるプラットホームの伸縮はゆっくりと生じ、急激に生じるわけではないため、所定回数の連続でもって設定値Cを低減させることとしても問題はない。むしろ、開口幅が狭まったことを確実に検出することができるため好適である。
【0047】
なお、ショート長Sが、所定の戸挟み閾値条件を満たさないが、誤差の範囲(許容範囲)と思える所定の許容長条件を満たす場合には、連続回数に含めないこととする。例えば、戸挟み閾値条件の閾値を15mmとし、許容長条件を2mm以内にするとする。各閉扉動作におけるショート長Sの履歴が、1mm、1mm、2mm、2mmと続いた場合には、何れも許容長条件を満たすショート長Sであるため、連続回数はゼロとなる。また、例えば、ショート長Sの履歴が、3mm、2mm、3mm、3mmと続いた場合には、許容長条件を満たさないショート長Sの連続回数を最新のものから遡って計数し、最後の2回が連続回数となる。このように、所定の許容長条件を満たさないことを、設定値低減実行条件に含めて設定値低減実行条件を判定する。これにより、開口幅が狭まったことをより確実に検出することができる。
【0048】
低減処理実行部34は、設定値低減実行条件を満たした場合には、設定値Cを低減させて更新する。低減させる幅は適宜設定することができる。例えば、1mmでもよいし、2mmでもよい。勿論、1mm未満としてもよい。
【0049】
増長処理実行部35は、戸先当接停止検出部32による停止検出がなされずに停止部31によって停止されたことが所定の継続条件を満たすまで繰り返されたか否かに基づいて閉扉時の戸先に隙間が発生した可能性を推定し、肯定推定された場合に設定値Cを増長させて更新する増長処理を実行する。
【0050】
具体的には、戸先当接停止検出部32による停止検出がなされずに停止部31によって駆動部200の駆動が停止された場合は、移動量Lと設定値Cとが同じとなる。この状態は、
図3(1)に示したような、設定値Cの2倍がちょうど開口幅W1である戸先に隙間が生じていない状態か、
図3(3)に示した戸先に隙間が生じた状態か、の何れかである。そこで、この状態となる閉扉動作が継続条件を満たすまで繰り返されるかどうかを判定し、継続条件を満たすまで繰り返された場合には、戸先に隙間が発生した可能性があると推定して、設定値Cを増長させて更新する増長処理を実行する。継続条件となる回数は、例えば5回や10回といった回数を適宜設定することができる。過密運行がなされる大都市圏の駅のホーム柵1であれば回数を多めに設定し、閑散線区の駅のホーム柵1であれば回数を少なめに設定するとよい。温度上昇によりプラットホームPLが所定長伸張するのにかかる時間と、停車列車の時間間隔とに応じて設定することができる。
【0051】
また、プラットホームPLが伸張して戸先に隙間が生じるほどの温度変化が起こるには、ある程度の時間がかかる。そこで、本実施形態では、時間間隔をおいて増長処理実行部35を機能させる。例えば、30分や1時間毎に増長処理実行部35を機能させることとしてもよいが、本実施形態では、次のようにする。すなわち、最後に設定値Cを更新してから所定時間(例えば30分や1時間)が経過した場合に増長処理実行部35を機能させる。これにより、戸先に隙間が発生した可能性の推定精度を向上させることができる。
【0052】
本実施形態では、増長処理実行部35は、低減処理実行部34よりも低い頻度で機能することとなる。開口幅がドア部のストローク長(設定値C)よりも広い場合には、全閉時に戸先に若干の隙間が生じるが、戸先が衝突して停止するわけではない。従って、衝突音が発生することも、衝突時の反力が発生することもない。また、温度変化によるプラットホームの床面方向の伸縮はゆっくりと生じる。そのため、やみくもに増長処理実行部35を機能させるのではなく、低減処理実行部34に比べて増長処理実行部35を低い頻度で機能させることで、戸先に隙間が生じた可能性の推定精度を向上させることができる。
【0053】
記憶部80は、例えば、ハードディスクやフラッシュメモリの他、一時記憶用のメモリなどの記憶装置で構成され、開扉動作制御プログラム81と、閉扉動作制御プログラム82と、設定値Cと、移動量Lと、ショート長Sと、履歴データ87と、タイマー値88とを記憶する。
開扉動作制御プログラム81および閉扉動作制御プログラム82は、制御装置100を開扉動作制御部20および閉扉動作制御部30としてそれぞれ機能させるためのプログラムである。
【0054】
設定値C、移動量L、ショート長Sは上述した通りであり、設定値Cは低減処理または増長処理によって適宜更新される。移動量Lおよびショート長Sには、今回の閉扉動作に係る値が格納される。
【0055】
履歴データ87は、例えば
図5に示すデータ構造を有しており、閉扉動作が行われる毎に、制御部10によって、その閉扉動作における設定値Cと、移動量Lと、ショート長Sと、戸挟み発生有無とが対応付けて動作記録として格納される。また、動作記録は、時系列に格納される。履歴データ87は例えばリングバッファとして構成し、最新の動作記録から遡って過去所定数の動作記録を格納する。
【0056】
タイマー値88は、増長処理実行部35を機能させる時間間隔を制御するための時間情報であり、最後に設定値Cが更新されてからの経過時間を示す。タイマー値88の計時更新は、制御部10によって随時行われる。
【0057】
次に、閉扉動作制御プログラム82に従った閉扉動作制御について説明する。
図6は、閉扉動作制御プログラム82に従って閉扉動作制御部30が実行する閉扉動作制御の流れを示したフローチャートである。閉扉動作制御は、ホーム柵1の外部から閉扉指示信号が入力された場合に読み出されて実行される。
【0058】
まず、閉扉動作制御部30は、駆動部200を駆動させてドア部Dの閉扉移動を開始させる(ステップS2)。移動量検出部300から閉扉動作制御部30へは随時、移動量Lが入力され、移動量Lが設定値Cに達せず(ステップS4:NO)、移動量Lが増加しなくなってドア部Dの移動停止が検出されない限り(ステップS6:NO)、駆動部200の駆動が継続される。
【0059】
移動量Lが設定値Cに達しない間に(ステップS4:NO)、移動量Lの増加が停止した場合には、戸先当接停止検出部32が、戸先に何らかが接触してドア部Dの移動が停止したことを検出する(ステップS6:YES)。また、停止が検出された場合、設定値Cと移動量Lとの差であるショート長Sが、戸挟み閾値条件を満たすならば(ステップS8:YES)、戸挟み発生検出部33が戸挟みの発生を検出し、閉扉動作制御部30が駆動部200を逆駆動させて一時的に開扉動作を行った後(ステップS10)、再度閉扉駆動制御を開始する(ステップS2)。このとき、移動量Lは、開扉動作分だけ減算される。
【0060】
また、戸挟み閾値条件を満たさないならば(ステップS8:NO)、低減処理実行部34が低減処理を実行する(ステップS12)。
図7は、低減処理のフローチャートを示す図である。低減処理では、低減処理実行部34が、ショート長Sや履歴データ87を参照して、設定値低減実行条件を満たすか否かを判定し(ステップA2)、満たす場合には(ステップA2:YES)、設定値Cを所定量だけ低減して更新し(ステップA4)、タイマー値88をリセットする(ステップA6)。
なお、設定値低減実行条件を満たさない場合には(ステップA2:NO)、そのまま低減処理を終了する。
【0061】
図6に戻り、ステップS4において、移動量Lが設定値Cに達したと判断された場合には(ステップS4:YES)、停止部31が、駆動部200の駆動を停止させることで、ドア部Dの閉扉移動を停止させる(ステップS14)。
次いで、最後の設定値Cの更新から所定時間経過したか否かを、タイマー値88を用いて判定する(ステップS16)。所定時間経過していた場合には(ステップS16:YES)、増長処理実行部35を機能させて増長処理を実行する(ステップS18)。
【0062】
図8は、増長処理のフローチャートを示す図である。増長処理では、増長処理実行部35が、履歴データ87を参照して、戸先に隙間が発生した可能性を推定する(ステップB2)。可能性有りと推定される場合には(ステップB2:YES)、設定値Cを所定量だけ増長させて更新し(ステップB4)、タイマー値88をリセットする(ステップB6)。
なお、戸先に隙間が発生した可能性が無いと推定される場合には(ステップB2:NO)、そのまま増長処理を終了する。
【0063】
図6に戻り、低減処理(ステップS12)を終了した後、増長処理(ステップS18)を終了した後、或いは、最後の設定値Cの更新から所定時間が経過していない場合(ステップS16)には、閉扉動作制御を終了する。
【0064】
以上、本実施形態によれば、ドア部Dの移動量Lが設定値Cに達した場合には閉扉動作が停止される。移動量Lが設定値Cに達する前にドア部Dの移動が停止する場合は、戸先が何らかに当接して停止したことを意味する。旅客の荷物等が挟まる戸挟みでなければ、当接する相手は、左右一対の両扉式であれば他方の戸先であり、支柱や固定パネルであればその固定部である。もしも戸挟みである場合には、移動量Lと設定値Cの差であるショート長Sが所定の戸挟み閾値条件を満たすため、戸挟みを適切に検出することができる。戸挟みでないにも関わらず閉扉移動が停止した場合には、設定値低減実行条件を満たすことで、開口幅が狭まったことを適切に検出することができる。開口幅が狭まった場合には、設定値Cが低減されて更新されるため、以降の閉扉動作を適切に停止させることができるようになる。これにより、温度変化によってプラットホームが床面方向に伸縮し、開口幅が変化した場合にも適切に対応することができる。
【0065】
また、移動量Lが設定値Cに達することによる閉扉動作の停止が所定の継続条件を満たすまで繰り返された場合には、開口幅が広がり、戸先に隙間が生じた可能性があると推定する。そして、当該推定に応じて設定値Cを増長させて更新することができるため、開口幅が広がった場合にも適切に対応することができる。なお、仮に、この推定が誤りである場合には、開口幅に比べて設定値Cが大きくなるため、低減処理が実行されることとなるため、適切な設定値Cに戻される。
【0066】
なお、本発明を適用可能な形態は、上述した実施形態に限られるものではない。
例えば、上述した実施形態では、左右両扉式のホーム柵の例を説明したが、左右どちらかの片扉式のホーム柵に本発明を適用することもできる。