【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的は、本発明によって、モータバイク型の自動二輪車用のタイヤであって、
2つのサイドウォールによって2つのビードに連結されたトレッドと、
トレッドの半径方向内側に位置していて少なくとも1つのクラウン層を含むクラウン補強材と、
クラウン補強材の半径方向内側に位置していて少なくとも1つの折り返しカーカス層を含むカーカス補強材と、を備え、
折り返しカーカス層は、各ビード内において、自由端を備えた折り返し部を形成するようビードワイヤ回りにタイヤの内側から外側に向かって折り返された相互に平行な
補強材を含み、
折り返しカーカス層は、クラウン部分及び側方部分を有し、
クラウン部分は、タイヤの赤道面に関して対称である第1の端と第2の端との間で軸方向に延び、
側方部分は、折り返し部の自由端の半径方向内側に位置した半径方向最も外側の第1の端からビードワイヤの半径方向最も内側の箇所の半径方向内側に位置した半径方向最も内側の第2の端まで半径方向内方に延びており、
クラウン部分の
補強材は、円周方向と少なくとも65°に等しい実質的に一定の角度をなし、側方部分の
補強材は、円周方向と、半径方向最も外側の第1の端から半径方向最も内側の第2の端まで、クラウン部分の
補強材のなす実質的に一定の角度よりも少なくとも5°小さい角度から増大する角度をなし、
折り返し部の
補強材は、円周方向と、側方部分の
補強材のなす角度と絶対値で見て等しく且つ符号が逆である角度をなすことを特徴とするタイヤによって達成された。
【0015】
折り返しカーカス層は、タイヤの赤道面の各側で各サイドウォール内において、移行部分を介して側方部分に連結されたクラウン部分を有し、各ビード内における側方部分の連続部として折り返し部が設けられている。
【0016】
クラウン部分は、タイヤの赤道面に関して対称である第1の端と第2の端との間で軸方向に延びている。タイヤの赤道面は、トレッド表面の中間を通り且つタイヤの回転軸線に垂直な平面である。換言すると、クラウン部分の中心は、タイヤの赤道面上に位置している。クラウン部分は、クラウン補強材の半径方向内側に位置し、その端は、トレッド表面の端の軸方向内側に位置し、即ち、クラウン部分の軸方向幅は、トレッドの軸方向幅よりも小さい。
【0017】
本発明によれば、クラウン部分の
補強材は、円周方向と絶対値で表して少なくとも65°に等しく、即ち、65°〜90°の実質的に一定の角度をなしている。
【0018】
実質的に半径方向(ラジアル)と呼ばれるクラウン部分の
補強材のこの角度付けによりタイヤに低いコーナリング剛性が与えられる。コーナリング剛性は、1°の横滑り角度がタイヤに加わった場合タイヤによって生じる側方力(横力)又はドリフトスラストであり、横滑り角度は、タイヤの赤道面と路面の交線である直線及び辿る経路に接する直線のなす角度である。この実質的に半径方向角度付けは、低いドリフトスラストを生じさせる可撓性のクラウンを得るのに寄与し、そして、これは、直線経路を辿る際にモータバイクが良好な安定性を維持するようにするという保証に寄与する。
【0019】
側方部分は、折り返し部の自由端の半径方向内側に位置した半径方向最も外側の第1の端からビードワイヤの半径方向最も内側の箇所の半径方向内側に位置する半径方向最も内側の第2の端まで半径方向内方に延びている。その半径方向最も外側の端は、クラウン部分の端に直に連結されておらず、この側方部分とクラウン部分との間の移行部を形成する移行部分に連結されている。その半径方向最も内側の端は、ビードワイヤの半径方向最も内側の箇所に向いた状態で位置決めされた状態で折り返し部に連結されている。この側方部分は、折り返し部の軸方向内側に位置している。
【0020】
本発明によれば、側方部分の
補強材は、円周方向と、半径方向最も外側の第1の端から半径方向最も内側の第2の端まで、クラウン部分の
補強材のなす実質的に一定の角度よりも少なくとも5°小さい角度から増大する角度をなす。この角度の変化は、連続的である。
【0021】
各サイドウォール内においてクラウン部分と側方部分との間の中間に位置する移行部分は、円周方向と、クラウン部分に連結された上述の移行部分の第1の端から側方部分に連結された上述の移行部分の第2の端まで連続的に減少する角度をなす
補強材から成る。
【0022】
折り返し部の
補強材は、円周方向と、側方部分の
補強材のなす角度と絶対値で見て等しく且つ符号が逆である角度をなす。側方部分は、折り返し部の軸方向内側に位置した状態で折り返し部に向いている。円周方向と折り返し部の
補強材のなす角度は、ビードワイヤの半径方向最も内側の箇所に向いた折り返し部の半径方向内側に位置する端から折り返し部の半径方向外側自由端まで絶対値で表して連続的に減少している。その結果、この側方領域内におけるカーカス補強材は、少なくとも側方部分及びこれと反対側の折り返し部で構成され、このカーカス補強材のそれぞれの
補強材は、タイヤの回転軸線を含む子午線平面に関し、絶対値で表して等しく且つ符号が逆の角度をなしてクロス掛けされている。
【0023】
側方部分及び折り返し部のそれぞれの
補強材のクロス掛けにより、湾曲した経路を辿っているタイヤが少なくとも30°に等しい大きいキャンバ角の状態にあるとき、タイヤの高いコーナリング剛性が得られる。キャンバ角は、タイヤの赤道面と路面に垂直であり且つ辿る経路に接した平面のなす角度である。キャンバ角が大きいと、側方部分と折り返し部とから成るカーカス補強材部分は、タイヤと路面の接触領域に対して垂直である。その結果、路面と接触状態にあるタイヤの部分は、比較的高い剛性を有する。したがって、タイヤは、高いスラストを生じさせ、湾曲した経路を辿っているときにモータバイクに良好な安定性を保証する。
【0024】
このように、2つのカーカス層部分の存在により(これらは、それぞれ、クラウンのところでは実質的に半径方向であり、サイドウォールのところでは折り返し部とクロス掛け関係をなしている)、モータバイクに対してそれぞれ直線走行状態の場合にはゼロキャンバ角について、カーブ走行状態の場合には少なくとも30°に等しい大きなキャンバ角について良好な安定性を保証することができる。
【0025】
有利には、クラウン部分の
補強材と円周方向とのなす実質的に一定の角度は、少なくとも80°に等しい。少なくとも80°に等しく、従って90°に近い角度がモータバイクに直線走行状態における最適の安定性を与える。
【0026】
これ又有利には、クラウン部分は、トレッドの幅の少なくとも0.3倍に等しく且つ多くとも0.9倍に等しい軸方向幅を有する。この値域により、トレッド表面に対して十分に幅が広いが過度には幅が広くないクラウン部分を提供することができ、その結果、直線走行状態且つゼロキャンバ角について路面との接触領域に対して垂直なカーカス補強材部分は、半径方向である。
【0027】
これ又有利には、側方部分の
補強材と円周方向とのなす角度は、45°〜80°の最小角度から55°〜85°の最大角度まで増大している。側方部分の
補強材の角度の変化の選択により、カーブにおいて且つ少なくとも30°に等しい大きなキャンバ角の場合に路面との接触領域に垂直なカーカス補強材部分の剛性を調節して、カーブにおける最適なモータバイク安定性を得ることができる。さらに、側方部分の
補強材の角度の変化は、クラウン部分中の
補強材について選択された実質的に一定の角度で決まる。
【0028】
側方部分は、有利には、タイヤの子午線断面の設計断面高さの少なくとも0.5倍に等しく且つ多くとも0.9倍に等しい半径方向高さを有する。この半径方向高さは、カーブにおいて且つ少なくとも30°に等しい大きなキャンバ角の場合に路面との接触領域に垂直なカーカス補強材部分の軸方向幅を定める。この特徴は、大きなキャンバ角の場合のカーブで乗車走行するためにコーナリング剛性を調節する手段としてのパラメータである。
【0029】
特定の一実施形態によれば、カーカス補強材は、サイドウォール内において折り返し部のあるカーカス層の軸方向外側に位置し且つサイドウォール内においてその折り返し部の軸方向内側に位置した折り返し部のないカーカス層を更に有し、このカーカス層の
補強材は、円周方向と少なくとも65°に等しい角度をなしている。この特定の実施形態では、剛性レベルは、折り返し部のある単一のカーカス層を有するカーカス補強材と比較して増大している。この形態では、カーカス補強材のクラウン部分は、2つの実質的に半径方向のカーカス層を有し、これに対し、カーカス補強材の側方部分は、内側から外側に軸方向に見て、折り返し部のあるカーカス層の側方部分、折り返し部のあるカーカス層の折り返し部及び折り返し部のないカーカス層の側方部分で構成された3つのカーカス層を有する。
【0030】
カーカス層の
補強材は、繊維材料、好ましくはポリエステル又は
ポリアミドで作られる。これら材料は、モータバイク用タイヤの性能とこれらの製造費との間の有利な妥協策に鑑みてモータバイク用タイヤの分野において一般的に用いられている。弾性率及び破断強度の面でも良好な性能を備えた繊維材料であるアラミドは、高性能タイヤ、例えば競争(レース)用のタイヤに用いられている場合がある。
【0031】
好ましい一実施形態によれば、クラウン補強材は、円周方向と多くとも5°に等しい角度をなす円周方向
補強材を含む円周方向クラウン層を有する。円周方向クラウン層は、タイヤの円周方向剛性を高め、タイヤが過度に変形状態になることなく高い速度を達成することができるようにするためにモータバイクのリヤに取り付けられるように構成されたタイヤに一般的に用いられている。
【0032】
別の実施形態によれば、クラウン補強材は、円周方向と15°〜35°の角度をなすと共に1つの層と次の層との間でクロス掛けされている円周方向
補強材を含む2つの実働クラウン層を有する。このようなクラウン補強材は、特にカーブにおいてタイヤによる側方スラストの発生の一因になる。
【0033】
クラウン補強材は又、円周方向と15°〜35°の角度をなすと共に1つの層と次の層との間でクロス掛け関係をなした円周方向
補強材を有する2つの実働クラウン層と、円周方向と多くとも5°に等しい角度をなしている円周方向
補強材を有する円周方向クラウン層とを組み合わせているのが良い。
【0034】
クラウン層の
補強材は、繊維材料、好ましくはポリエステル若しくは
ポリアミドで作られ又は金属で作られる。カーカス補強層の場合と同様、繊維材料は、モータバイク用タイヤの性能とこれらの製造費との間の有利な妥協策に鑑みてモータバイク用タイヤの分野において一般的に用いられている。しかしながら、高い弾性及び高い破断強度を備えた材料の使用は、クラウン補強材を機械的に工作するのに必要であることが分かっている場合がある。アラミド又は金属は、この目的のために使用できる。
【0035】
折り返し部のあるカーカス層の折り返し部の半径方向外端は、有利には、ある特定のオーバーラップ長さにわたった少なくとも1つのクラウン層と接触状態にあるのが良く、その結果、カーカス層のクラウン部分の軸方向幅は、トレッドの幅の0.3倍〜0.9倍であるのが良い。互いに接触状態にある折り返し部とカーカス層とのこのオーバーラップ長さは、側方部分とクラウン部分との間の移行部を定める移行部分の幅に影響を及ぼす。
【0036】
本発明の他の有利な特徴及び細部は、
図1より
図2を参照して行われる本発明の説明から以下において明らかになろう。