(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6195621
(24)【登録日】2017年8月25日
(45)【発行日】2017年9月13日
(54)【発明の名称】ブレードのピッチを制御するための装置および方法
(51)【国際特許分類】
B64C 11/40 20060101AFI20170904BHJP
F04D 29/36 20060101ALI20170904BHJP
F01D 7/00 20060101ALI20170904BHJP
【FI】
B64C11/40
F04D29/36 D
F01D7/00
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-537327(P2015-537327)
(86)(22)【出願日】2013年10月8日
(65)【公表番号】特表2016-500603(P2016-500603A)
(43)【公表日】2016年1月14日
(86)【国際出願番号】FR2013052402
(87)【国際公開番号】WO2014060681
(87)【国際公開日】20140424
【審査請求日】2016年9月15日
(31)【優先権主張番号】1259952
(32)【優先日】2012年10月18日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】516227272
【氏名又は名称】サフラン・エアクラフト・エンジンズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファーブル,アドリアン
(72)【発明者】
【氏名】ラルティーグ,ノルベール
【審査官】
前原 義明
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第03869221(US,A)
【文献】
特表2012−519248(JP,A)
【文献】
米国特許第06033182(US,A)
【文献】
国際公開第2012/131271(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0017086(US,A1)
【文献】
米国特許第06032899(US,A)
【文献】
米国特許第05028210(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0253891(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0099987(US,A1)
【文献】
特表2012−528035(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0277447(US,A1)
【文献】
米国特許第03873236(US,A)
【文献】
特開昭63−227907(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/138654(WO,A1)
【文献】
特表2013−528517(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 11/30
B64C 11/40
F01D 7/00
F04D 29/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレードに連結されるラジアル軸(6)と、その軸方向変位がラジアル軸(6)の回転を制御するコネクティングロッド(8)とを備えるファン(4)ロータ(3)のブレードのピッチを制御するための装置(1)であって、
ファン(4)軸(11)を中心にロータ(3)と共に回転移動する第1の部品(10)であり、その上に各コネクティングロッド(8)の1つの端部が固定される第1の部品(10)と、
第1の部品(10)に連結される第2の部品(12)と、
軸方向並進で前記第2の部品(12)を移動させ、その傾斜を変更することができる少なくとも3つのシリンダ(14)であり、第2の部品(12)の並進および傾斜が、第1の部品(10)の対応する並進および傾斜をもたらすシリンダを備え、
それによって、第1の部品(10)が回転すると、各コネクティングロッド(8)が、その回転中にブレードのピッチを変更するために第1の部品(10)の傾斜に依存する可変振幅の軸方向変位に従うことを特徴とする、装置。
【請求項2】
第2の部品(12)が、機械的軸受(16)によって第1の部品(10)に接続される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
シリンダ(14)をロータ(3)に連結する接続軸受(18)を備える、請求項1または2のいずれか一項に記載の装置。
【請求項4】
シリンダ(14)をファン(3)のダクト(20)に連結する弾性ダンパー(19)をまた備える、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
第1の部品(10)が、自在カップリング(21)を備える接続要素(22)によってロータ(3)に連結される、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
接続要素(22)がまた、ロータ(3)に対して第1の部品(10)の軸方向案内のためのキー(23)を備える、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
キー(23)に対して相補形の溝(30)を備え、その1つの表面(32)が、ロータの傾斜部品(26)との協働を可能にするように傾斜される、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
第1の部品(10)および/または第2の部品(12)の傾斜を制限するストッパ(29)を備える、請求項1から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
少なくとも1つのロータ(3)、および可変ピッチブレードを備えるターボ機械(5)のファン(4)であって、請求項1から8のいずれか一項に記載のそのブレードのピッチを設定する制御装置を備えることを特徴とする、ターボ機械(5)のファン(4)。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか一項に記載の制御装置(1)を用いて、ファン(4)ロータ(3)のブレードのピッチを制御するための方法であって、第1の部品(10)の傾斜を変更するのにシリンダ(14)を制御することから成るステップ(E1)を含み、それによって、第1の部品(10)の回転中に、各コネクティングロッド(8)が、第1の部品(10)の傾斜に依存する可変振幅の軸方向変位に沿って移動され、ブレードピッチが、ファン(4)の軸(11)を中心にその回転中に変化することを特徴とする、方法。
【請求項11】
ファン(4)の下流側に配置されるロータのもう1つの装置(1)の第1の部品(10)の傾斜と異なる、ファン(4)の上流側に配置されるロータの装置(1)の第1の部品(10)の傾斜を与えることから成るステップ(E21)を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
このステップ(E21)が、公称位置を中心に、装置(1)、または上流側ロータ、または下流側ロータの第1の部品(10)の傾斜を変動させることから成るステップ(E22)を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ロータ(3)の回転速度よりも高いかまたは低い周波数で装置(1)の第1の部品(10)の傾斜を変動させることから成るステップを含む、請求項10から12のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファンロータのブレードのピッチを制御するための装置、およびこの種の装置を備えるファンに関する。
【0002】
また、本発明は、この装置を使ってファンロータのブレードのピッチを制御するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
少なくとも1つのロータ、および可変ピッチブレードを備えるターボ機械ファンが、現時点での技術的水準において知られている。
【0004】
幾何学的ピッチとは、ブレードのプロファイルの翼弦とエンジン回転軸とによって形成される角度である。
【0005】
これは、ピボットによってブレードに結合されるラジアル軸と、軸方向変位がラジアル軸の回転を制御するコネクティングロッドと、すべてのコネクティングロッドが取り付けられる軸対称部品とを備える既知の装置を使用して実現され得る。
【0006】
シリンダが、軸対称部品の軸方向変位を制御し、これにより、ブレード全部のピッチが均等に調整され得るようにコネクティングロッドの軸方向変位が生じる。
【0007】
不均一な空気力学的流れが、特に、たとえば離陸時の航空機迎え角の影響、およびエンジン、翼、胴体、またはエンジンを航空機に連結するパイロンなどの他の要素の存在による伴流の影響を含む、さまざまな要因によりブレードに向けられる。
【0008】
この不均一性により、ブレードに、より一般的にはピッチ制御装置に負荷が生じる。
【0009】
また、ブレードは、航空機操縦に関連するジャイロ効果に起因する変形を受けやすい。
【0010】
上に挙げた負荷および変形は、ブレードまたはピッチ制御装置などのファン部品の早期の機械的摩耗を引き起こす場合がある。
【0011】
上流側プロペラロータおよび下流側プロペラロータを備えるファンの場合は、望ましくないカップリングが、上流側ロータのブレードと下流側ロータのブレードとの間に存在し得る。
【0012】
このカップリングは、機械的であり、これは望ましくない機械的振動が増幅される場合があることを意味し、かつ騒音を伴い、これは音響振動の増幅を引き起こす。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、現時点での技術的水準の欠点を克服するために、ファンロータブレードのピッチを制御するための装置を開示するものであり、ピボットによってブレードに連結されるラジアル軸と、その軸方向変位がラジアル軸の回転を制御するコネクティングロッドとを備える装置であって、この装置は、ファン軸を中心にロータと共に回転移動する第1の部品であり、その上に各コネクティングロッドの1つの端部が固定される第1の部品と、第1の部品に連結される第2の部品と、軸方向並進で前記第2の部品を移動させ、その傾斜を変更することができる少なくとも3つのシリンダであり、第2の部品の並進および傾斜が、第1の部品の対応する並進および傾斜をもたらすシリンダを備え、それによって、第1の部品が回転すると、各コネクティングロッドが、その回転中にブレードのピッチを変更するために第1の部品の傾斜に依存する可変振幅の軸方向変位に従うことを特徴とする。
【0014】
本発明は、少なくとも1つのロータ、および可変ピッチブレードを備えるターボ機械ファンであって、そのブレードのための前記ピッチ制御装置を備えることを特徴とする、ターボ機械ファンに関する。
【0015】
最後に、本発明はまた、前記制御装置を利用して、ファンロータのブレードのピッチを制御するための方法であって、第1の部品の傾斜を変更するのにシリンダを制御することから成るステップを含み、それによって、第1の部品の回転中に、軸方向変位が、各コネクティングロッドに加えられ、その振幅が、可変であり、第1の部品の傾斜に依存し、ブレードピッチが、ファンの軸を中心にその回転中に変化することを特徴とする、方法に関する。
【0016】
本発明は、その回転中に、各ブレードのピッチを変更するのに使用され得る。特に、ブレードピッチは、回転の範囲内でその位置に応じて変化する。
【0017】
したがって、ピッチ制御を適切に設定すると、装置およびファンは、特定の障害物(翼、胴体、等)による空気力学的流れの外乱を受けないことが保証される。
【0018】
結果として、ファンは、よりロバストであり、より長い寿命を有する。
【0019】
そのうえ、上流側ロータブレードと下流側ロータブレードとの間のカップリングが減少され、それにより、望ましくない機械的増幅および騒音増幅が低減される。
【0020】
最後に、故障が生じた場合には、装置は、即座のエンジン停止を行う必要性を回避する低下運転モードを有する。
【0021】
本発明の他の特徴および利点は、単に例示を目的として与えられ、決して限定的でなく、かつ添付の図面を参照して読まれるべきである次の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】ファンのロータブレードのピッチを制御するための装置の実施形態を示す図である。
【
図5】部品のうちの1つがシリンダによって傾斜された場合の装置の一部の立体視を示す図である。
【
図6】部品のうちの1つがシリンダによって傾斜された場合の装置の一部の立体視を示す図である。
【
図7】ロータの傾斜部品に対する装置の案内の実施形態を示す図である。
【
図8】ファンにおける装置の取付け部品を示す図である。
【
図9】ブレードピッチを制御するための方法の実施形態を示す図である。
【
図10】それらの回転中にブレードピッチを変更するための制御を示す図である。
【
図11】それらの回転中にブレードピッチを変更するための制御を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1〜
図6は、ファン4ロータ3のブレードのピッチを制御するための装置1の1つの実施形態を示している。
【0024】
装置1は、ブレード(図示せず)に接続されるラジアル軸6を備える。従来、ブレードの足部は、ピボットによってラジアル軸6に取り付けられる。ラジアル軸6は、その軸線を中心に回転することができる。
【0025】
また、装置1は、各ブレードのためのコネクティングロッド8を備え、その軸方向変位は、その軸線を中心とするラジアル軸6の回転を制御する。コネクティング8の一部は、たとえばピボットリンクを通して、このためにラジアル軸6に接続される。
【0026】
また、装置1は、第1の部品10を備える。この第1の部品10は、ファン4のロータ3に固定される。
【0027】
したがって、第1の部品10は、ファン4の軸11を中心にロータ3と共に回転移動するということである。
【0028】
コネクティングロッド8の他端31は、第1の部品10に固定される。
【0029】
また、装置1は、第1の部品10に連結される第2の部品12を備え、その役割は、下記に開示される。
【0030】
第1および第2の部品10、12は、通常、軸対称部品である。たとえば、第1の部品10は環状であり、第2の部品12はディスクである。
【0031】
装置1は、前記第2の部品12をファン4の軸11を中心に軸方向並進で移動させ、その傾斜を変更することができる少なくとも3つのシリンダ14を備える。したがって、第2の部品12は、シリンダ14によって制御される少なくとも3自由度を有する。これらのシリンダ14は、たとえば、従来の油圧シリンダであってもよい。
【0032】
シリンダ14のいかなる制御もない場合は、第2の部品12は、通常、半径方向平面(垂直な平面)に配置され、シリンダ14は、この公称位置に対して第2の部品12を傾斜させるように使用される。
【0033】
1つの構成においては、これらのシリンダ14は、互いから120°に配置される。一般に、シリンダ14は、同じ平面に配置される。
【0034】
第1の部品10および第2の部品12は、機械的に接続され、したがって、第2の部品12の軸方向並進および傾斜は、第1の部品10の対応する軸方向並進および傾斜を生じる。
【0035】
たとえば
図3および
図4においては、3つのシリンダは、正確に同じ延長部品を有する。第1の部品10および第2の部品12は、半径方向平面に配置される。
【0036】
図5および
図6においては、シリンダのうちの1つ(シリンダ14
A)が、延長指令(たとえば、シリンダが150mmの延長部品から200mmの延長部品に変化する)を受け取るが、他のシリンダ(12B、12C)は、それらの最初の延長部品を保持する。
【0037】
結果として、第2の部品12、およびしたがって第1の部品10は、半径方向平面に対して傾斜される平面の方へ移動される。
【0038】
第2の部品12を傾斜させると、半径方向平面に対して第1の部品10が傾斜する。結果として、第1の部品10を傾斜させた後に、第1の部品は、半径方向平面から傾斜された平面で回転移動する。
【0039】
この傾斜により、第1の部品10が回転すると、各コネクティングロッド8は、可変振幅の軸方向変位を受ける。これは、コネクティングロッド8の端部31が第1の部品10に接続され、半径方向平面に対して傾斜される平面でそれ自体自由に回転できるということによる。したがって、回転中に、各コネクティングロッド8は、回転の間に変化する軸方向変位を有する。
【0040】
コネクティングロッド8の軸方向変位の振幅は、第1の部品10の傾斜に依存する。第1の部品10の傾斜が大きければ大きいほど、それだけその振幅は回転の間に変化することになる。
【0041】
この構成により、装置1は、その回転中にブレードのピッチを変更するのに使用され得る。
【0042】
特に、各ブレードのピッチは、回転時のその位置に依存する。したがって、所与の瞬間において、ロータの異なるブレードは、回転の間にそれらの位置に依存する異なるピッチを有する。
【0043】
第1の部品10の並進は、コネクティングロッド8の共通の並進、およびしたがってラジアル軸6の回転を生じるので、この並進は、すべてのブレードのピッチを調整する。
【0044】
第1の部品10の傾斜は、回転時にブレードのサイクリックピッチ制御を生じる。第1の部品10の所与の傾斜の場合、所与のブレードのピッチは、コネクティングロッド8の軸方向変位に応じて周期的に変化する。
【0045】
1つの例示的な実施形態によれば、第2の部品12は、機械的軸受16によって第1の部品10に接続される。
【0046】
実際に、第2の部品12は、ファンのケーシング(固定部)に接続されるが、第1の部品10は、ファンロータ3に接続される。
【0047】
たとえば、ボールベアリングが使用され得る。
【0048】
第1の部品10をロータ3に接続するために、装置1は、接続要素22を備え、その1つの実施形態が、
図1および
図2に示されている。
【0049】
接続要素22は、第1の部品10をファンの軸11を中心に回転するロータ3に接続するために自在カップリング21を備える。この自在カップリング21は、ピン35によって接続され、かつ第1の部品10を取り囲む2つの環状部品33、34の形で、
図2に略示されている。
【0050】
そのうえ、接続要素22には、ロータ3に対して第1の部品10の軸方向案内を可能にするようにキーまたは溝23が設けられる。これらのキー23は、ロータ3に対して第1の部品10の軸方向案内のために使用される。
【0051】
1つの実施形態においては、キー23は、傾斜シェル26に対する軸方向案内に関係する。たとえば、これは、ファンオイルを含むチャンバの壁であってもよく、これは、ドレンを可能にするように傾斜しなければならない。
【0052】
キー23の上面および底面は、エンジン軸線に平行である。
【0053】
また、シェル26には、キー23に対して相補形の溝30が設けられる。これらの相補形の溝30は、オイルドレン機能を実施するように(ファン4の軸11に対して傾斜される)傾斜溝底面32を有する(この機能は、部品26の本来の機能である)。
【0054】
キー23に対して相補形の溝30の頂部の表面36は、他の表面32は傾斜されるが、傾斜部品26との協働を可能にするように水平である。
【0055】
1つの例示的な実施形態によれば、キー23は、自在カップリング21の外側表面に配置される。
【0056】
場合によっては、いくつかのファンの下流側に配置されるロータの場合のように、装置1、および特にシリンダ14を固定するという問題が生じる。
【0057】
これらの下流側ロータの場合は、ファン構造とのリンクになり得るものはない。なぜなら、このレベルの部品は、このようなリンクに必要な力に耐えることができないからである。たとえば、これは、油圧チャンネル、およびいくつかのセンサのための電力供給を含む、ファンダクト20である場合があり、前記ダクト20は、装置1によって加えられる力に耐えることができない。
【0058】
したがって、固定座標系が再構築されなければならない。
【0059】
これを実現するために、1つの例示的な実施形態によれば、装置1は、シリンダ14をロータ3の構造に連結する接続軸受18を備える。装置1によって加えられる軸方向および半径方向力は、この軸受18によって耐えられる。
【0060】
そのうえ、1つの実施例によれば、装置1はまた、シリンダ14をファン4のダクト20に接続する弾性ダンパー19備える。このダンパー19は、熱効果による軸方向変形を減衰させ、かつダクト20と、軸受18が固定されるロータ3の構造との間に配置されることが有利である。特に、たとえば金属ベローズであり得るこのダンパー19は、軸方向負荷がダクト20に加えられることを防ぎ、構成が静的に不確定であることを防ぐ。
【0061】
したがって、ダクト20は、装置1によるいかなる構造的負荷にも対抗しない。
【0062】
装置1においては、少なくとも3つのシリンダ14が取り付けられる。これらのシリンダ14は、通常、先行技術による環状のシリンダよりも取り付けるのに簡単な従来のシリンダである。
【0063】
1つの実施形態においては、ストッパ29が、装置の故障率の増加を回避するために、第1の部品10および/または第2の部品12の傾斜を制限するように設けられる。たとえば、ストッパ29は、自在カップリング21に取り付けられ得る。あるいは、ストッパ29は、第2の部品12上の所定の位置に置かれてもよい。
【0064】
傾斜を閾値、たとえばプラスまたはマイナス5°に制限することによって、ブレードピッチの変動振幅は、たとえばプラスまたはマイナス2°に制限される(これらの値は、例示に過ぎず、限定的なものではない)。
【0065】
したがって、3つのシリンダ14のうちの1つに故障がある場合には、低下運転モードが生じるが、これは、ピッチの変動振幅が制限されるので、エンジン停止を必要としない。
【0066】
シリンダ14は、制御ユニットによって制御され、これは、たとえば航空機コンピュータに一体化され得る。制御ユニットは、下記に開示されるピッチ制御方法の実施形態を実施するようにプログラムされ得る。
【0067】
特に、装置1は、二重反転プロペラを備えるオープンロータ型ファン4に使用され得る。この場合は、第1の装置が、上流側プロペラのロータブレードのピッチを設定するように使用され、第2の装置は、下流側プロペラのロータブレードのピッチを設定するように使用される。
【0068】
制御方法
1つの実施形態においては、ブレードのピッチを制御するための方法は、第1の部品10の傾斜を変更するのにシリンダ14を制御することから成るステップE1を含む。
【0069】
第1の部品10の回転中に、各コネクティングロッド8は、第1の部品10の傾斜に依存する可変振幅の軸方向変位に沿って移動される。
【0070】
結果として、ブレードピッチは、ファン4の軸11を中心にブレードの回転中に変化する。
【0071】
シリンダ14によって加えられる制御は、第2の部品12の傾斜を通して、第1の部品10の傾斜を選択する。
【0072】
この制御は、たとえば飛行条件に応じて、または航空機の状態に応じて飛行中に変化し得る。
【0073】
また、第2の部品12にシリンダ14によって加えられる並進制御は、ロータ3のすべてのブレードのピッチに共通の変更を加える。
【0074】
制御の略例が、
図10に示されている。第2の部品12に加えられるシリンダ14による並進指令は、すべてのブレードに45°のピッチを加える(曲線39)。
【0075】
第2の部品12を傾斜すると、第1の部品10の傾斜が生じ、この第1の部品10の傾斜は、その回転の間にブレードの位置に応じて各ブレードのピッチの正弦波形の変動を導く(曲線40)。
【0076】
回転中にブレードのピッチの周期的変化を制御する第1の部品10の傾斜は、ファン4の上流側の障害物、たとえば翼または胴体などの存在による、圧力および揚力損失を低減するように選択される。
【0077】
障害物に起因する揚力の損失は、シミュレーションによってまたは試験によって知られ得る固定されたプロファイルによって揚力の損失を作り出す。ブレードピッチは、これらの損失が生じる領域において揚力の損失を補償するように、これらのデータから選択される。
【0078】
図11に示される1つの実施形態においては、マルチサイクリックまたはサブサイクリック制御が適用される。
【0079】
1つの実施例によれば、本方法は、ロータ3の回転速度よりも高い周波数で装置1の第1の部品10の傾斜を変動させることから成るステップを含む(曲線41)。特に、これは、いわゆるマルチサイクリック制御であることができ、換言すれば、変動周波数は、ロータ回転周波数の倍数である。
【0080】
1つの実施例によれば、本方法は、ロータ3の回転速度よりも低い周波数で装置1の第1の部品10の傾斜を変動させることから成るステップを含む(曲線42)。特に、これは、いわゆるサブサイクリック制御であることができ、換言すれば、変動周波数は、ロータの回転周波数の分数である。
【0081】
特に、これらのブレードピッチ制御は、望ましくない音響および/または機械的増幅を低減することができる。
【0082】
特に、各プロペラの空気音響対称性が破壊され、上流側プロペラと下流側プロペラとの間の干渉雑音が低減され得る。
【0083】
上流側ロータ3および下流側ロータ3を備えるファン4の場合は、1つの実施形態において、本方法は、ファン4の下流側ロータ3のブレードのピッチの周期的変化と異なる、回転中のファン4の上流側ロータ3のブレードのピッチの周期的変化を得ることから成るステップE2
1を含むことができる。
【0084】
これは、下流側のロータのもう1つの装置1の第1の部品10の傾斜と異なる、上流側に配置されるロータの装置1の第1の部品10の傾斜を与えることによって行われ得る。
【0085】
結果として、上流側ブレードと下流側ブレードとの間の空気音響結合が低減され、これは、ブレード間の干渉雑音、および機械的振動の増幅を低減することができる。
【0086】
1つの例示的な実施形態によれば、このステップE2
1は、公称位置を中心に、上流側ロータまたは下流側ロータの第1の部品10の傾斜を変動させることから成るステップE2
2を含む。
【0087】
たとえば、公称位置は、傾斜に、およびしたがってブレードのピッチに対応するように選択され、これは、上記に開示されたように、所与の障害物の空気力学的影響を低減することができる。
【0088】
また、この公称位置を中心とする傾斜の変動は、上流側ブレードと下流側ブレードとの間の干渉雑音をまた低減するように行われ、この変動は、(たとえば、上流側の変動の存在および下流側の変動の非存在により、あるいは上流側と下流側との間の異なる変動の選択により)上流側および下流側で異なる。したがって、上流側および下流側ブレードの機械的および音響結合が低減されるか、または除去さえされる。
【0089】
理解され得るように、本発明は、ファンブレードに影響を及ぼす不均一な空気力学的流れの、およびブレードに起因する騒音の有害な影響を低減することができる。