(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A)ポリイミド樹脂又はその前駆体であるポリアミド酸樹脂及び(B)平均粒子径500nm以下であり、かつ、酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムの少なくとも1種のマグネシウム成分と有機成分とを含み、前記有機成分として2個以上のヒドロキシル基を有する化合物を含み、前記有機成分を0.2〜20重量%含有するマグネシウム系微粒子を含むことを特徴とする複合樹脂組成物。
ポリイミド系成形体が、1)線膨張係数50ppm/K以下、2)全光線透過率85%以上及び3)ガラス転移温度300℃以上の少なくとも1つの特性を有する、請求項8に記載のポリイミド系成形体。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、(A)ポリイミド樹脂又はその前駆体であるポリアミド酸樹脂及び(B)平均粒子径500nm以下であり、かつ、酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムの少なくとも1種のマグネシウム成分を含むマグネシウム系微粒子を含むことを特徴とする。すなわち、本発明は、ポリイミド樹脂を含む組成物のほか、当該ポリイミド樹脂の前駆体となるポリアミド酸樹脂を含む組成物を包含するものである。
【0013】
さらに、本発明は、当該組成物を用いて得られる成形体、絶縁性基板又は電子デバイス、さらには当該組成物を含む耐熱絶縁材、耐熱塗料、耐熱コーティング材又は耐熱接着材に係る発明も包含する。
【0014】
1.複合樹脂組成物
本発明の複合樹脂組成物は、(A)ポリイミド樹脂又はその前駆体であるポリアミド酸樹脂及び(B)平均粒子径500nm以下であり、かつ、酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムの少なくとも1種のマグネシウム成分を含むマグネシウム系微粒子を含むことを特徴とする。
【0015】
1−1)ポリイミド樹脂又はポリアミド酸樹脂とその製造方法
ポリイミド樹脂又はポリアミド酸樹脂としては、特に限定されず、公知又は市販のものを使用することもできる。
【0016】
また、ポリイミド樹脂は、公知の方法によって製造されたものを使用することもできる。すなわち、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを出発原料として製造されるポリイミド樹脂も採用できる。この製造工程中に中間体として生成するポリアミド酸樹脂も、本発明組成物のポリアミド酸樹脂として採用することができる。
【0017】
本発明では、ポリイミド樹脂として、透明性等の見地より、下記一般式(1):
【0018】
【化3】
(但し、Xは、炭素数4〜12の4価の脂環族基であり、単環構造又は縮合環構造であっても良いものを示す。Yは、2価の有機基を示す。)で示される繰り返し単位構造含み、数平均分子量6000〜100000、かつ、重量平均分子量10000〜500000であるポリイミド樹脂(以下「本発明ポリイミド樹脂」ともいう。)が好ましい。
【0019】
出発原料
ポリイミド樹脂を製造するための出発原料であるテトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物は特に限定されず、次に示すようなものを使用することができる。
【0020】
テトラカルボン酸二無水物
テトラカルボン酸二無水物としては特に限定されず、公知又は市販のものを使用することもできる。例えば、脂環族テトラカルボン酸二無水物、芳香族テトラカルボン酸二無水物、脂肪族テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。より具体的には、以下のものが例示される。
【0021】
脂環族テトラカルボン酸二無水物としては、例えばビシクロ[4.2.0]オクタン−3,4,7,8−テトラカルボン酸二無水物(BCODA)、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシノルボナン−2−酢酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物又はこれらの誘導体が好適である。
【0022】
芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えばピロリメット酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、4,4’−(p−フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物、4,4’−(m−フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2−エチレンビス(アンヒドロトリメリテート)、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン又はこれらの誘導体を好適に用いることができる。
【0023】
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ペンタテトラカルボン酸二無水物又はこれらの誘導体を好適に使用することができる。
【0024】
上記の各誘導体としては、本発明の効果を妨げない範囲内において、例えばテトラカルボン酸、テトラカルボン酸のモノ、ジ、トリ又はテトラ酸塩化物、炭素数1〜4のアルコールとのモノ、ジ、トリ又はテトラエステル等を用いることができる。
【0025】
ジアミン化合物
ジアミン化合物としては特に限定されず、公知又は市販のものも使用することができる。例えば、脂環族ジアミン化合物、芳香族ジアミン化合物、脂肪族ジアミン化合物等が挙げられる。より具体的には、以下のものが例示される。
【0026】
脂環族ジアミン化合物としては、例えばジアミノシクロヘキサン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ジメチル−ジアミノジシクロヘキシルメタン、テトラメチル−ジアミノジシクロヘキシルメタン、ジアミノジシクロヘキシルプロパン、ジアミノビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビス(アミノメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、3(4),8(9)−ビス(アミノメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、3(3),8(9)−ビス(アミノメチル)トリシクロ[5.2.1.0
2.6]デカン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、イソホロシジアミン又はこれらの誘導体を好適に用いることができる。
【0027】
芳香族ジアミン化合物としては、例えばm−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、O−トリジン、m−トリジン又はこれらの誘導体を好適に用いることができる。
【0028】
脂肪族ジアミン化合物としては、例えば1,3−プロパンジアミン、1,4−テトラメチレンジアミン、1,5−ペンタメチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,7−ヘプタメチレンジアミン、1,8−オクタメチレンジアミン、1,9−ノナメチレンジアミン1,10−デカメチレンジアミン、イソホロンジアミン又はこれらの誘導体を好適に用いることができる。
【0029】
上記の各誘導体としては、本発明の効果を妨げない範囲内において、例えばアミノ基の一部をイソシアネート基に置換した化合物、シリル化した化合物等を用いることができる。
【0030】
反応条件
上記のような出発原料を反応させることによりポリイミド樹脂(又はポリアミド酸樹脂)を製造する。
【0031】
本発明に係るイミド化重合反応のモル比は、テトラカルボン酸二無水物100モルに対し、ジアミン化合物90〜110モルの割合であり、好ましくは95〜105モルであり、より好ましくは98〜102モルとすれば良い。この範囲内で反応を行うことにより、十分な重合度をもつポリイミド樹脂を得ることができる。
【0032】
反応は、液相で行うことが好ましい。その場合に用いる溶媒(反応溶媒)としては限定的でなく、例えば非プロトン系溶媒、フェノール系溶媒、エーテル系溶媒、カーボネート系溶媒等を好適に用いることができる。ワニス状のポリイミド樹脂組成物又はポリアミド酸樹脂組成物を製造する場合、溶媒の種類はワニス調製に使用する溶媒(有機溶剤)と同じものを使用することが望ましい。
【0033】
非プロトン系溶媒としては、例えばN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタム、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、テトラメチル尿素等のアミド系溶媒;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等のラクトン系溶媒;ヘキサメチルホスホリックアミド、ヘキサメチルホンフィントリアミド等の含リン系アミド系溶媒;ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄系溶媒;アセトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン系溶媒;ピコリン、ビリジン等のアミン系溶媒、酢酸(2−メトキシ−1−メチルエチル)等のエステル系溶媒等を挙げられる。
【0034】
フェノール系溶媒としては、例えばフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシリノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール等が挙げられる。
【0035】
エーテル系溶媒としては、例えばエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等が挙げられる。
【0036】
カーボネート系溶媒としては、例えばジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等が挙げられる。
【0037】
溶媒の使用量は特に制限されず、生成するポリイミド樹脂の所望の性状等に応じて適宜設定することができる。例えば、ポリイミド樹脂(特に全脂環族ポリイミド樹脂)が溶剤可溶性であり、その溶液を得る場合は、ポリイミド樹脂の全てが溶解できる量とすれば良く、特にポリイミド樹脂の濃度が5〜50重量%、好ましくは10〜40重量%、より好ましくは10〜30重量%となるように溶媒の使用量を決定すれば良い。
【0038】
テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを反応させる方法は、公知の方法と同様にすることができるが、例えば(1)反応溶媒と少量の共沸溶剤の存在下でテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを加熱し、生成水を共沸により系外に留出させる熱イミド化方法、(2)ポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミド酸樹脂を調製した後、無水酢酸、無水プロピオン酸等の酸無水物、ジシクロヘキシルカルボジイミド等のカルボジイミド化合物の脱水作用を用いる化学イミド化方法、(3)ポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミド酸樹脂を調製した後、300℃以上に加熱する熱イミド化方法等が挙げられる。
【0039】
上記の(2)又は(3)の方法で得られる前駆体はポリイミド樹脂の原料にもなるほか、本発明のポリアミド酸樹脂として回収することもできる。
【0040】
特に、全脂環族ポリイミド樹脂(溶剤可溶型ポリイミド樹脂)を製造する場合、上記(1)の方法を採用することが好ましい。例えば、溶媒中にテトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物の全量を溶解させるか、あるいはテトラカルボン酸二無水物及び/又はジアミン化合物を段階的に溶解させた後、好ましくは100〜250℃、より好ましくは150〜200℃に加熱し、共沸溶剤により系中の生成水を留去してイミド化重合反応を進行させる方法を好適に採用することができる。
【0041】
また、テトラカルボン酸二無水物に対し、ジアミン化合物を過剰に使用することにより、得られるポリイミド樹脂のポリマー末端をアミン末端(−NH
2)とすることができる。一方、テトラカルボン酸二無水物をジアミン化合物に対して過剰に使用することにより、得られるポリイミド樹脂のポリマー末端を酸末端(−COOH)とすることができる。
【0042】
上記の方法で使用される共沸溶剤としては、特に限定されないが、例えばトルエン、キシレン、ゾルベントナフサ等の芳香族炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素等を使用することができる。これらは1種又は2種以上で使用することができる。共沸溶剤の使用量は、反応溶媒量に対して通常1〜30重量%程度とし、特に5〜10重量%とすることが望ましい。
【0043】
反応系内は、反応系の着色防止及び安全性の観点から、不活性ガス雰囲気とすることが望ましい。通常は、反応系内の空気を不活性ガスで置換し、反応中は不活性ガスを流通させる方法を採用することができる。不活性ガスとしては、例えば窒素、アルゴン、ヘリウム等を使用することができる。
【0044】
イミド化重合に際しては、必要に応じて触媒を使用しても良いし、使用しなくても良い。反応後の触媒除去の工程を省略化できる等の見地より、無触媒下でイミド化重合反応を行うことが好ましい。
【0045】
触媒を使用する場合は、塩基触媒又は酸触媒のいずれも使用することができる。塩基触媒としては、例えばピリジン、キノリン、イソキノリン、α−ピコリン、β−ピコリン、2,4−ルチジン、2,6−ルチジン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、イミダゾール、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン等の有機塩基触媒のほか、例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム等の無機塩基触媒が挙げられる。酸触媒としては、例えばクロトン酸、アクリル酸、トランス−3−ヘキセノイック酸、桂皮酸、安息香酸、メチル安息香酸、オキシ安息香酸、テレフタル酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸等が挙げられる。
【0046】
イミド化重合反応の反応時間は、仕込み比率、濃度等により異なるが、一般的には生成水の留出開始後2〜10時間程度とすることが好ましい。反応時間が短すぎる場合は、イミド化率が低くなることがある。他方、反応時間が長すぎる場合は、部分的に熱架橋反応を起こし、反応系が増粘したり、ゲル状物が副生したり、あるいは反応溶媒の熱劣化により反応系が着色することがある。
【0047】
イミド化重合反応で得られるポリイミド樹脂における分子量は限定的ではないが、好ましくは数平均分子量1000〜500000、かつ、重量平均分子量5000〜1000000であり、より好ましくは数平均分子量3000〜300000、かつ、重量平均分子量7000〜700000、さらに好ましくは数平均分子量6000〜100000、かつ、重量平均分子量10000〜500000に調整されることが推奨される。この範囲は、特に成形体を与えることができる程度の重合度を有している範囲である。
【0048】
上記のイミド化重合反応におけるイミド化率は、通常は70%以上であり、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上である。さらに、ポリイミド樹脂の用途等に応じて100%とする場合もある。
【0049】
イミド化重合反応においては、必要に応じて分子量の制御等を目的としてエンドキャップ剤を使用することもできる。エンドキャップ剤としては、公知又は市販のものを使用することができる。例えば、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水ナジック酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等の酸無水物ほか、アニリン、メチルアニリン、アリルアミン等のアミン系化合物を挙げることができる。
【0050】
<ポリイミド樹脂(又はポリアミド酸樹脂)の好ましい具体例>
本発明では、以下に示すようなポリイミド樹脂(又はポリアミド酸樹脂)を好適に採用することができる。すなわち、上記に示したような出発原料で特定の化合物を選択することによって、所望の物性を有するポリイミド樹脂(又はポリアミド酸樹脂)を製造することができる。特に、本発明では、透明性等の見地より、ポリイミド樹脂として下記一般式(1):
【0051】
【化4】
(但し、Xは、炭素数4〜12の4価の脂環族基であり、単環構造又は縮合環構造であっても良いものを示す。Yは、2価の有機基を示す。)で示される繰り返し単位構造含み、数平均分子量6000〜100000、かつ、重量平均分子量10000〜500000であるポリイミド樹脂(本発明ポリイミド樹脂)を製造する場合、あるいは、ポリアミド酸樹脂として下記一般式(2):
【0052】
【化5】
(但し、Xは、炭素数4〜12の4価の脂環族基であり、単環構造又は縮合環構造であっても良いものを示す。Yは、2価の有機基を示す。)で示される繰り返し単位構造含み、数平均分子量6000〜100000、かつ、重量平均分子量10000〜500000であるポリアミド酸樹脂(本発明ポリアミド酸樹脂)を製造する場合、カルボン酸二無水物としてビシクロ[4.2.0]オクタン−3,4,7,8−テトラカルボン酸二無水物(BCODA)を用いることにより好適に製造することができる。
【0053】
これらの場合、得られるポリイミド樹脂の特性等に応じて、前記BCODAの一部を他のテトラカルボン酸二無水物で置換することもできる。他のテトラカルボン酸二無水物で置換する場合は、全テトラカルボン酸二無水物のモル数に対し、好ましくは20モル%以下とし、より好ましくは10モル%以下とし、最も好ましくは5モル%以下とする。
【0054】
なお、BCODAは、公知又は市販のものを使用することができ、さらに公知の製造方法によって得られたものを使用することもできる。製造方法としては、例えばテトラヒドロフタル酸無水物と無水マレイン酸とを出発原料とし、液相中にて光照射下で光二量化反応させることによりBCODAを好適に合成することができる。より具体的には、テトラヒドロフタル酸無水物と無水マレイン酸とを好ましくは等モル量用い、これを溶媒(例えばメチルエチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル等のエステル系溶媒、ジオキサン等のエーテル系溶媒等)に溶解させた後、高圧水銀ランプ等を用いて250〜400nmの波長をもつ光を照射することにより光二量化反応を進行させることができる。
【0055】
特に、本発明ポリイミド樹脂(又は本発明ポリアミド酸樹脂)を製造する場合において、出発原料として使用するジアミン化合物を選択することによってポリイミド樹脂に対して所望の物性等を付与することができる。例えば、次のa)〜e)に示すような組み合わせで種々のタイプの本発明ポリイミド樹脂(又は本発明ポリアミド酸樹脂)を好適に製造することができる。
【0056】
a)ポリイミド樹脂A
ポリイミド樹脂Aは、BCODAと脂環族ジアミン化合物とを出発原料として用いることにより製造することができる。より具体的には、モル比でBCODA100に対して脂環族ジアミン化合物90〜110の範囲でイミド化重合反応させて溶剤可溶性ポリイミド樹脂Aを製造することができる。溶剤可溶性ポリイミド樹脂Aは、低熱膨張係数であり、無色透明性及び耐熱性に優れた溶剤可溶性ポリイミド樹脂である。例えば、ポリイミド樹脂Aの成形体からなるプラスチック基板は、電気部品、電子部品等に使用できる。また、ポリイミド樹脂Aは、耐熱絶縁材、耐熱塗料、耐熱コーティング材、耐熱接着材にも使用できる。かかる特性をより確実に得るという見地より、脂環族ジアミン化合物として、下記に示す化合物を好適に使用することができる。
【0058】
b)ポリイミド樹脂B
ポリイミド樹脂Bは、BCODAと脂環族ジアミン化合物及び芳香族ジアミン化合物とを出発原料として用いることにより製造することができる。より具体的には、脂環族ジアミン化合物と芳香族ジアミン化合物のモル比が80〜20:20〜80の範囲であり、かつ、モル比でBCODA100に対して、前記ジアミン化合物の合計が90〜110の範囲でイミド化重合反応させることにより溶剤可溶性ポリイミド樹脂Bを製造することができる。溶剤可溶性ポリイミド樹脂Bは、無色透明性及び耐熱性に優れ、低線膨張係数である溶剤可溶性ポリイミド樹脂である。ポリイミド樹脂Bの成形体からなるプラスチック基板は電気部品、電子部品等に使用できる。また、ポリイミド樹脂Bは、耐熱絶縁材、耐熱塗料、耐熱コーティング材、耐熱接着材等に使用できる。かかる特性をより確実に得るという見地より、脂環族ジアミン化合物及び芳香族ジアミン化合物として、下記に示す化合物をそれぞれ好適に使用することができる。
【0061】
c)ポリイミド樹脂C(ポリアミド酸樹脂C)
ポリイミド樹脂Cは、BCODAと1,4−ジアミノシクロヘキサン及び芳香族ジアミン化合物とを出発原料として用いることにより製造することができる。より具体的には、BCODAと、1,4−ジアミノシクロヘキサン及び芳香族ジアミン化合物とを、1,4−ジアミノシクロヘキサンと芳香族ジアミン化合物のモル比が10〜50:90〜50の範囲であり、かつ、モル比でBCODA100に対して、前記1,4−ジアミノシクロヘキサン及び芳香族ジアミン化合物の合計が90〜110の範囲でイミド化重合反応させることによってポリイミド樹脂Cを製造することができる。また、上記の出発原料を用いて共重合反応させることによって、ポリイミド樹脂Cの前駆体に相当するポリアミド酸樹脂Cを製造することもできる。ポリイミド樹脂Cは、高透明性であり、耐熱性に優れる上、低線膨張係数であるポリイミド樹脂である。ポリイミド樹脂Cの成形体からなるプラスチック基板は、電気部品、電子部品等に使用できる。また、ポリイミド樹脂Cは、耐熱絶縁材、耐熱塗料、耐熱コーティング材、耐熱接着材等にも使用できる。かかる特性をより確実に得るという見地より、芳香族ジアミン化合物として、下記に示す化合物を好適に使用することができる。
【0063】
d)ポリイミド樹脂E(ポリアミド酸樹脂D)
ポリイミド樹脂Eは、BCODAと芳香族ジアミン化合物とを出発原料として用いることにより製造することができる。より具体的には、BCODAと芳香族ジアミン化合物とを、モル比で該テトラカルボン酸二無水物100に対して、該ジアミン化合物の合計が90〜110の範囲でイミド化重合反応することによってポリイミド樹脂Eを製造することができる。また、上記の出発原料を用いて共重合反応させることによって、ポリイミド樹脂Eの前駆体に相当するポリアミド酸樹脂Eを製造することもできる。ポリイミド樹脂Eは、高透明性、耐熱性及び低線膨張係数に優れたポリイミド樹脂である。ポリイミド樹脂Eの成形体からなるプラスチック基板は、電気部品、電子部品等に使用できる。また、ポリイミド樹脂Eは、耐熱絶縁材、耐熱塗料、耐熱コーティング材、耐熱接着材等にも使用できる。かかる特性をより確実に得るという見地より、芳香族ジアミン化合物として、下記に示す化合物を好適に使用することができる。
【0065】
1−2)マグネシウム系微粒子とその製造方法
マグネシウム系微粒子(粉末)としては、平均粒子径500nm以下であり、かつ、酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムの少なくとも1種のマグネシウム成分と有機成分とを含むものを使用する。このようなマグネシウム系微粒子は、公知又は市販のものを使用することもできる。
【0066】
特に、本発明では、ポリイミド樹脂又はポリアミド酸樹脂中での分散性等がより優れているという点で、平均粒子径が500nm以下である微粒子であって、
(1)a)酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムの少なくとも1種のマグネシウム成分と、b)有機成分とを含有し、
(2)前記有機成分が2個以上のヒドロキシル基を有する化合物を含み、
(3)前記有機成分の含有量が0.2〜20重量%である、
ことを特徴とするマグネシウム系微粒子(本発明微粒子)を好適に用いることができる。以下、本発明微粒子とその製造方法について説明する。
【0067】
1−2−1)マグネシウム系微粒子
本発明微粒子の平均粒子径は、通常500nm以下であり、好ましくは200nm以下であり、より好ましくは100nm以下である。さらには、最大粒子径が100nm以下であることが好ましい。
【0068】
本発明微粒子(粉末)は、a)酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムの少なくとも1種のマグネシウム成分と、b)有機成分とを含有する。
【0069】
上記a)に関し、本発明微粒子は、マグネシウム成分として酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムの少なくとも1種を含む。すなわち、本発明微粒子は、マグネシウム成分として1)酸化マグネシウム単独で含む場合、2)水酸化マグネシウム単独で含む場合、3)酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムの両者を含む場合のいずれも包含される。
【0070】
前記3)の場合において、本発明微粒子に含まれる酸化マグネシウムと水酸化マグネシウムとの比率は限定されず、本発明微粒子の用途、使用条件等に応じて適宜設定することができる。なお、両者の比率は、例えば熱処理等により水酸化マグネシウムから酸化マグネシウムに変化させるよって任意に制御することができる。
【0071】
本発明微粒子に含まれる酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムの合計量が占める割合は特に限定的ではないが、80〜99.8重量%とすることが好ましく、特に90〜99.8重量%であることが好ましい。
【0072】
上記b)に関し、本発明微粒子は、前記マグネシウム成分のほかに有機成分を含有する。かかる有機成分は、2個以上のヒドロキシル基を有する化合物を含む。
【0073】
2個以上のヒドロキシル基を有する化合物としては本発明微粒子(粉末)に所望の分散性を与えるものであれば特に限定されず、例えば二価アルコール、三価アルコール等の多価アルコールを好適に用いることができる。これらの多価アルコールは、第一級アルコール、第二級アルコール、第三級アルコールのいずれタイプであっても良い。
【0074】
本発明では、前記の2個以上のヒドロキシル基を有する化合物として、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール等の二価アルコール;グリセリン等の三価アルコールを挙げることができる。本発明では、特にグリセリンを好適に用いることができる。
【0075】
また、2個以上のヒドロキシル基を有する化合物として、例えば3個以上のヒドロキシル基を有する多価アルコールのエステル化合物を使用することができる。例えば、3個以上のヒドロキシル基を有する多価アルコールにおいて、そのうちの1個のヒドロキシル基がエステル化されたエステル化合物を用いることができる。前記エステル化合物は、多価アルコールとカルボン酸とのエステル化反応により製造できる。前記カルボン酸としては、例えば酢酸、プロピオン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、シュウ酸、コハク酸、アクリル酸、マレイン酸、フマル酸等を挙げることができる。この中でも、カルボン酸として炭素数4〜18の脂肪族モノカルボン酸と多価アルコール化合物とのエステル化合物を好適に用いることができる。このようなエステル化合物としては、例えばグリセリンモノカプレート、グリセリンモノラウレート、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノオレート等を挙げることができる。
【0076】
2個以上のヒドロキシル基を有する化合物として、例えば3個以上のヒドロキシル基を有する多価アルコールのエーテル化合物を使用することができる。例えば、3個以上のヒドロキシル基を有する多価アルコールにおいて、そのうちの1個のヒドロキシル基がエーテル化されたエーテル化合物を用いることができる。前記エーテル化合物は、多価アルコールとモノアルコールの脱水反応により製造できる。前記モノアルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール等を挙げることができる。この中でも、モノアルコールとして炭素数4〜18のモノアルコール化合物とのエーテル化合物を好適に用いることができる。このようなエーテル化合物としては、例えば3−ブトキシ−1,2−プロパンジオール、3−ヘキシルオキシ−1,2−プロパンジオール、3−オクチルオキシ−1,2−プロパンジオール、3−オクタデシルオキシ−1,2−プロパンジオール等を挙げることができる。
【0077】
本発明では、有機成分は本発明微粒子中に含有されていれば良く、その位置は限定されない。例えば、本発明微粒子の内部、本発明微粒子の表面部等のいずれに含まれていても良い。特に、本発明では、少なくとも本発明微粒子表面の一部又は全部にあることが好ましい。すなわち、少なくとも本発明微粒子の表面の一部又は全部が有機成分で被覆されていることが好ましい。
【0078】
2個以上のヒドロキシル基を有する化合物が有機成分中に占める割合は限定的ではない。例えば、通常は50〜100重量%とし、好ましくは80〜100重量%とし、より好ましくは90〜100重量%とすれば良い。
【0079】
本発明微粒子中における有機成分の含有量は通常0.2〜20重量%とし、特に0.2〜10重量%とすることが好ましい。有機成分の含有量が0.2重量%未満の場合は本発明微粒子が所望の分散性を発揮できなくなる。また、有機成分の含有量が20重量%を超える場合は、マグネシウム成分の本来の特性が損なわれるおそれがある。
【0080】
本発明微粒子中には、前記のようなマグネシウム成分と有機成分とが含まれるが、本発明の効果を妨げない範囲内において他の成分が含まれていても良い。従って、一般的にはマグネシウム成分と有機成分との合計量が本発明微粒子中95〜100重量%占めることが好ましく、特に99〜100重量%占めることがより好ましく、100重量%占めることが最も好ましい。他の成分としては、本発明微粒子を合成する際に使用された出発原料の未反応物等(但し、有機成分は除く。)が例示される。
【0081】
1−2−2)マグネシウム系微粒子の製造方法
本発明微粒子は、例えば1)マグネシウム塩、2)塩基ならびに3)2個以上のヒドロキシル基を有する化合物を液相中で反応させることにより反応生成物を得る工程を含む製造方法によって好適に製造することができる。
【0082】
本発明の製造方法では、出発原料として1)マグネシウム塩、2)塩基ならびに3)2個以上のヒドロキシル基を有する化合物を用いる。
【0083】
マグネシウム塩としては、特に限定的ではなく、例えば無機酸(鉱酸)の塩として塩化物、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等;有機酸塩としてギ酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩等が挙げられ、その他にも有機金属塩が挙げられる。本発明では、これらの中でもマグネシウムの有機酸塩(特にカルボン酸塩)が有機溶媒への溶解性という点で好ましい。従って、例えば酢酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム等を好ましく用いることができる。
【0084】
塩基としては、特に限定されず、例えば金属アルコキシド、アミン化合物、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を使用することができる。特に、本発明では、金属アルコキシドを好適に用いることができる。金属アルコキシドとしては、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムブトキシド等が例示される。塩基の添加量は、通常はマグネシウム塩1モルに対し、通常1〜10モル程度、好ましくは2〜5モルとすれば良い。
【0085】
2個以上のヒドロキシル基を有する化合物としては、前記1.で挙げたものを使用することができる。例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリンモノエステル等の二価アルコール;グリセリン等の三価アルコールのほか、3個以上のヒドロキシル基を有する多価アルコール化合物のエステル化合物を挙げることができる。本発明では、特にグリセリン、グリセリンモノエステル等を好適に用いることができる。グリセリンモノエステルとしては、例えばグリセリンモノカプレート、グリセリンモノラウレート、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノオレート等を挙げることができる。
【0086】
本発明の製造方法において、2個以上のヒドロキシル基を有する化合物の添加量は特に限定されないが、通常はマグネシウム塩1モルに対し、通常1〜20モル程度、好ましくは1〜10モルとすれば良い。
【0087】
出発原料としては、これらの成分のほか、本発明の効果を妨げない範囲内で他の成分が含まれていても良いが、特に上記1)〜3)の3成分からなることがより好ましい。
【0088】
これらの出発原料を液相中で反応させることによって反応物を生成させる。従って、液相として通常は有機溶媒を使用することができる。この場合、例えば前記の2個以上のヒドロキシル基を有する化合物が常温・常圧下で液体であるようなときは、それが出発原料としての役割を果たすとともに、有機溶媒としての役割を果たすことができるので、別途に有機溶媒を使用しなくて済むこともある。有機溶媒を使用する場合、その使用できる有機溶媒としては特に限定されないが、例えばメタノール、エタノール、プロパノール等の極性有機溶媒を好適に用いることができる。有機溶媒の使用量は限定的ではないが、前記のマグネシウム塩の濃度が通常0.1〜1.0モル/L、特に0.2〜0.8モル/Lとなるように適宜調整すれば良い。
【0089】
また、上記の反応条件としては、反応温度は5〜40℃程度とし、反応圧力は通常は大気圧下とすれば良い。反応時間は、反応温度、出発原料等によって異なるが、一般的には1〜24時間程度とすれば良い。
【0090】
反応させる手順としては、特に制限されず、例えば;
(A)出発原料を同時に液相中に添加して反応させる方法、
(B)1)マグネシウム塩、2)塩基ならびに3)2個以上のヒドロキシル基を有する化合物の少なくとも1種をそれぞれ有機溶剤に溶解又は分散させて得られた各原料液を混合することにより反応させる方法、
(C)1)マグネシウム塩を有機溶剤に溶解又は分散させて得られた原料液と2)塩基及び3)2個以上のヒドロキシル基を有する化合物を有機溶媒に溶解又は分散させて得られた原料液とを混合することにより反応させる方法
等のいずれであっても良い。
【0091】
本発明では、2個以上のヒドロキシル基を有する化合物の水酸基が塩基によりイオン化しやすく、水酸化マグネシウム微粒子又は酸化マグネシウム微粒子への吸着が生じやすいという見地より、特に前記(C)の方法を好適に採用することができる。
【0092】
本発明の製造方法では、さらに上記反応生成物を熱処理することもできる。これによって、上記反応生成物である水酸化マグネシウムの一部又は全部を酸化マグネシウムに変化させることができる。
【0093】
熱処理温度は限定的ではないが、特に、水酸化マグネシウムの一部又は全部が酸化マグネシウムに変化する温度であって、なおかつ、有機成分が分解又は気化しない温度の範囲内とすることが好ましい。換言すれば、熱処理をする場合においては、水酸化マグネシウムの一部又は全部が酸化マグネシウムに変化する温度下でも変化しない有機成分を採用することが好ましい。例えば、有機成分としてグリセリンを使用すれば、300℃前後(例えば270〜330℃程度)での熱処理を実施することができるので、好適に酸化マグネシウムの微粒子を調製することができる。熱処理雰囲気は、通常は大気中又は酸化性雰囲気とすれば良い。
【0094】
1−3)その他の成分
本発明の複合樹脂組成物では、上記のポリイミド樹脂又はポリアミド酸樹脂及びマグネシウム系微粒子のほかに、本発明の効果を妨げない範囲内で他の成分が含まれていても良い。例えば、フィラー、着色剤、分散剤、導電助剤、帯電防止材、防腐剤、溶剤等の公知の樹脂組成物に充填されている添加剤を使用することができる。
【0095】
2.複合樹脂組成物の製造
本発明の複合樹脂組成物は、上記のような各成分を均一に混合することによって製造することができる。この場合、添加する順序は特に限定されず、同時に添加しても良いし、各成分を適宜順番に添加しても良い。混合は、例えばミキサー、ニーダー等の公知又は市販の装置を用いて実施することができる。
【0096】
3.複合樹脂組成物の性状
本発明の複合樹脂組成物は、粉末状等の固体あるいはワニス状等の液体のいずれの形態であっても良く、用途等に応じて適宜選択することができる。例えば、塗膜等を形成するためにワニス状(液体)で本発明組成物を使用する場合は、有機溶剤を含有させることによりワニス状の複合樹脂組成物(ワニス状組成物)を調製することができる。本発明のワニス状組成物は、特に貯蔵安定性に優れ、種々の用途に使用される。
【0097】
ワニス状組成物の調製方法としては、ワニス状のポリイミド樹脂又はポリアミド酸樹脂にマグネシウム系微粒子を混合することにより得られる。より具体的には、例えば(i)溶媒中での反応で得られたポリイミド樹脂又はポリアミド酸樹脂を含む液状反応生成物にマグネシウム系微粒子を混合する方法、(ii)溶媒中での反応により得られたポリイミド樹脂又はポリアミド酸樹脂を含む液状反応生成物からポリイミド樹脂又はポリアミド酸樹脂を単離し、次いで単離したポリイミド樹脂又はポリアミド酸樹脂を溶媒に溶解させて得られる溶液にマグネシウム系微粒子を混合する方法等が挙げられる。
【0098】
ワニス状組成物の粘度(25℃)は、所望の用途等に応じて適宜選択することができるが、通常は0.1〜500Pa・s程度とし、特に1〜100Pa・sとすることが望ましい。
【0099】
ワニス状組成物中のポリイミド樹脂又はポリアミド酸樹脂の濃度は限定的ではないが、好ましくは5〜50重量%とし、より好ましくは10〜40重量%とし、最も好ましくは10〜30重量%となるように調整すれば良い。
【0100】
ワニス状組成物の調製で使用される有機溶剤は、本発明に係るポリイミド樹脂を溶解させることができる有機溶剤であれば特に限定されないが、具体的には上記の反応溶媒として例示したものが挙げられる。これらは単独で又は混合系として用いることもできる。これらのうち、特にN−メチル−2ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、γ−ブチロラクトン等の少なくとも1種を好適に用いることができる。
【0101】
ワニス状組成物を用いてポリイミド樹脂又はポリアミド酸樹脂の塗膜を形成するに際し、乾燥工程を効率良く行う目的で、有機溶剤の一部を低沸点溶剤に代えることもできる。低沸点溶剤としては、例えばトルエン、キシレン、ソルベントナフサ等の芳香族炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素;プロピレングリコールモノメチルエーテル、又はアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類等が挙げられる。これらの低沸点溶剤を使用する場合の使用量は、全有機溶剤量に対して、好ましくは1〜30重量%、より好ましくは5〜20重量%の範囲が推奨される。
【0102】
また、ワニス状組成物中には、本発明の効果を妨げない範囲でその他の成分を添加しても良い。例えば、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂(本発明のポリイミド樹脂を除く。)、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂等の高分子化合物のほか、例えば平滑剤、レベリング剤、脱泡剤、難燃剤、消泡剤、酸化防止剤等が挙げられる。
【0103】
4.ポリイミド系成形体の製造方法及び特性
本発明の複合樹脂組成物を用いて成形体を製造する場合、公知の成形方法に従って所望の形状を有するポリイミド系成形体を得ることができる。例えば、前記のワニス状組成物を成形することによりフィルム状成形体を好適に製造することができる。この場合の成形方法としては、特に制限なく、公知の方法も使用できる。例えば、ワニス状組成物の塗膜を基板上に形成した後、塗膜から有機溶媒(溶剤)を除去する工程を含む製造方法により、フィルム状成形体を得ることができる。より具体的には、例えばPET基板(ポリエチレンテレフタレート基板)上にワニス状組成物をキャストし、真空乾燥機内(減圧度1〜10mmHg)で室温にて30分〜2時間かけて乾燥した後、さらに約200℃まで30分〜2時間で昇温し、その温度で1〜4時間溶剤を留去させる。室温まで冷却した後、真空乾燥機からPET基板上に形成されたフィルム状成形体を取出し、PET基板から剥離する。剥離したフィルム状成形体をステンレス鋼製の金属枠に固定し、再び真空乾燥機中にて室温から230〜280℃まで1〜4時間で昇温し、その温度で2〜5時間乾燥し、溶剤を完全に留去し、室温まで冷却後、真空乾燥機から取り出すことによってフィルム状成形体を得ることができる。このように得られたフィルム状成形体の厚みは、キャスト時の塗工厚みを調整することにより目的の厚さに調整することができる。
【0104】
なお、複合樹脂組成物の樹脂成分がポリアミド酸樹脂を含む場合は、イミド化をすることによりポリイミド系成形体とすることができるが、イミド化は成形前又は成形後のいずれであっても良い。イミド化する方法は、前記と同様に従えば良い。
【0105】
本発明のポリイミド系成形体の線膨張係数の範囲は好ましくは50ppm/K以下であり、さらに好ましくは46ppm/K以下、特に43ppm/K以下が好ましい。線膨張係数は、本明細書及び特許請求の範囲において、後述の実施例に記載した方法にて得られる値である。例えば、上記の線膨張係数の範囲は、特に有機EL等の透明フレキシブル基板用途では有効な範囲である。
【0106】
本発明のポリイミド系成形体の無色透明性は、全光線透過率で評価することができる。全光線透過率の範囲は、好ましくは80%以上であり、さらに好ましくは85%以上、特に90%以上が好ましい。全光線透過率は、本明細書及び特許請求の範囲において、後述の実施例に記載した方法にて得られる値である。例えば、上記の全光線透過率の範囲は、特に無色透明性を要求される用途では有効な範囲である。
【0107】
ポリイミド系成形体の耐熱性は、ガラス転移温度で評価することができる。ガラス転移温度の範囲は好ましくは250℃以上であり、さらに好ましくは280℃以上、特に300℃以上が好ましい。ガラス転移温度は、本明細書及び特許請求の範囲において、後述の実施例に記載した方法にて得られる値である。例えば、上記のガラス転移温度の範囲は、特に耐熱性を要求される用途では有効な範囲である。
【0108】
本発明のポリイミド系成形体は種々の用途に適用できるが、特に絶縁性基板(配線基板)として好適に使用することができる。かかる絶縁性基板は、本発明のポリイミド系成形体が本来有する1)低い線膨張係数、2)高い全光線透過率及び3)高いガラス転移温度を有することにより、例えばフレキシブル透明基板等として利用することもできる。フレキシブル透明基板は電気部品又は電子部品で数多く使用されており、例えば電子ペーパー、有機太陽電池、有機EL照明、フレキシブル液晶ディスプレイ等の電子デバイスに適用することができる。このように、本発明は、本発明のポリイミド系成形体からなる絶縁性基板を備えた電子デバイスも包含する。
【0109】
5.耐熱性材料
また、本発明は、本発明の複合樹脂組成物を含む耐熱絶縁材、耐熱塗料、耐熱コーティング材又は耐熱接着材の耐熱性材料も包含する。これらは、例えば前記のワニス状組成物をそのまま又は他の添加剤を配合することにより提供される。この場合、耐熱性材料は、液体又は固体のいずれの形態で提供されても良い。これらは、公知の耐熱絶縁材、耐熱塗料、耐熱コーティング材又は耐熱接着材に含まれる樹脂成分等に代えて本発明の複合樹脂組成物を適用することにより使用することができる。
【実施例】
【0110】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。なお、本実施例中の「%」は「重量%」を示す。
【0111】
<化合物の略号>
[テトラカルボン酸二無水物]
・BCODA:ビシクロ[4.2.0]オクタン−3,4,7,8−テトラカルボン酸二無水物
[ジアミン化合物]
・HDAM:4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)
・DPE:4,4’−ジアミノジフェニルエーテル
[反応溶媒]
・NMP :N−メチル−2−ピロリドン
【0112】
<微粒子の有機成分含有量の測定(TG測定)>
微粒子の有機成分含有量Cを式(1)に従って算出した。
式(1) C=A−[B(100−A)/(100−B)]
A:100〜600℃での微粒子の重量%減(下記条件で測定)
B:30.9%(水酸化マグネシウムが酸化マグネシウムに熱変換した際に生じる脱水の重量%減)
C:有機成分含有量(%)
[測定条件]
装置 :SIIナノテクノロジー株式会社製 TG/DTA6200
測定温度:50〜600℃
昇温速度:10℃/min
測定雰囲気:窒素200mL/min
【0113】
<平均粒子径の測定>
透過型電子顕微鏡(TEM)測定にて20個以上の粒子を計測し、その平均値を求めた。
【0114】
<ポリアミド酸樹脂及びポリイミド樹脂の数平均分子量と重量平均分子量>
ポリアミド酸樹脂のNMP溶液(ポリアミド酸ワニス)又はポリイミド樹脂のNMP溶液(ポリイミド樹脂ワニス)約1gをN,N−ジメチルホルムアミド約30mlで希釈して、分子量測定用の試料溶液を調製する。ゲルパーミエーションクロマトクラフィー(GPC)を用いて下記の測定条件でポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を求めた。
[測定条件]
装置:東ソー株式会社製 EcoSEC HLC−8320GPC
カラム:東ソー株式会社製 SuperH−Hを1本とSuperHM−Mを3本直列に連結
カラム温度:40℃
溶離液:(5.15mmol/L−臭化リチウム+5.10mmol/L−リン酸)/N,N−ジメチルホルムアミド
流速:0.5mL/min
検出器:RI
【0115】
<線膨張係数>
JIS K7197(1991年)に準拠し、ポリイミドフィルム(40μm)を順風乾燥機内で300℃×30分間加熱して応力緩和処理を行った。このフィルムから切り取った4.0×10.0mmをエスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製TMA/SS6100を用いて100〜150℃の範囲を窒素流量200ml/min、昇温速度10℃/minの条件で測定し、その測定値の平均値を線膨張係数とした。
【0116】
<全光線透過率、ヘイズ>
JIS K7361−1(1997年)に準拠し、ポリイミドフィルム(40μm)を株式会社東洋精機製作所製HAZE−GUARDIIを用いて、D65光源を使用したシングルビーム法により測定した。
【0117】
<ガラス転移温度>
動的粘弾性測定装置RHEOGEL−E4000(ユーピーエム社製)を用いて、下記の測定条件下、ポリイミド系成形体のtanδを測定した。そのtanδの極大値をガラス転移温度(℃)とした。
測定条件;
測定モード:引張モード
正弦波:10Hz
昇温速度:5℃/min
空気流速:10L/min
【0118】
<機械的物性評価>
ポリイミド系成形体の「弾性率」、「強度」及び「伸び」は、インストロン製の万能材料試験機5565を用いて、JIS K−7161(1994年)に準拠して測定した。
【0119】
製造例1
BCODAは特許文献US3423431を参考に製造した。より具体的には、内容積1500ml内部照射型パイレックス(登録商標)ガラス製五つ口反応フラスコに無水マレイン酸95.0g(969mmol)と1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物192.0g(1262mmol)及び酢酸n−ブチル1200gを仕込み、反応器外壁をアルミ箔で被いながら室温で撹拌溶解させた。さらに窒素ガスを用いて15分間バブリングし、反応容器中の酸素を除いた。続いて、撹拌しながら反応容器を20℃に冷却し、フラスコ中央部の光源冷却管中の400W高圧水銀ランプを用いて光照射を24時間続けた。反応終了後、析出した結晶を濾過により回収し、その結晶を酢酸n−ブチル60gで洗浄し、ついで乾燥することによりBCODA結晶59.9g(239mmol、収率25%)を得た。
【0120】
製造例2
撹拌機、窒素導入管を備えた5Lの4つ口フラスコに塩基としてナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液617g(3.2mol)、有機成分としてグリセリンを147g(1.6mol)加え、室温にて1時間撹拌して溶液Aを作成した。酢酸マグネシウム・四水和物343g(1.6mol)をメタノール1700gに溶解させた溶液Bを別途作成し、撹拌しながら溶液Bを溶液Aに加え、室温にて20時間反応した。析出した白色沈殿物を遠心分離器にて得た後、メタノール2Lに撹拌しながら加え再分散させた。遠心分離器にて白色沈殿物を得た後、アセトン2Lにて撹拌しながら加え再分散させた。遠心分離にて白色沈殿物を得た後、大気下80℃で30分間乾燥してマグネシウム系微粒子89g(1.5mol、収率95%)を得た。得られた微粒子はX線回折分析にて水酸化マグネシウムを含むことを確認した(
図1)。前記微粒子の粒子径は51nmであった。また、前記微粒子の有機成分含有量は1.9%であった。
【0121】
製造例3
塩基をナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液1542g(8.0mol)に、有機成分として乳酸144g(1.6mol)に変更した以外は、
製造例2と同様の方法でマグネシウム系微粒子89g(1.5mol、収率95%)を調製した。得られた微粒子はX線回折分析にて水酸化マグネシウムを含むことを確認した(
図3)。前記微粒子の粒子径は70nmであった。また、前記微粒子の有機成分含有量は0.1%であった。
【0122】
製造例4
温度計、撹拌機、窒素導入管、分液デカンタ及び、冷却管を備えた200mLの4つ口フラスコにBCODA13.01g(52mmol)、ジアミン化合物としてHDAM5.47g(26mmol)とDPE5.21g(26mmol)、反応溶媒としてNMP114.8g、共沸溶剤としてキシレン12.8gを仕込み、反応系内を窒素置換した後、窒素気流下、180℃で攪拌し、生成水を系外に除去しながら5時間脱水イミド化重合反応を行った。反応後、樹脂濃度が15重量%になるようにNMPを追加し、ポリイミド樹脂のNMP溶液(ポリイミドワニス)を得た。得られたポリイミド樹脂の平均分子量はMwが81000、Mnが13000であった。
【0123】
製造例5
撹拌機を備え付けた200mL三角フラスコにジアミンとしてDPE10.41g(52mmol)とNMP132.7gを加え15分間撹拌した後に、BCODA13.01g(52mmol)を加えてから終夜撹拌してポリアミド酸ワニスを得た。得られたポリアミド酸ワニスの平均分子量はMwが141000、Mnが57000であった。
【0124】
実施例1
製造例4に記載のポリイミドワニス100gに製造例2に記載の水酸化マグネシウム微粒子1.67g(ポリイミド樹脂に対して水酸化マグネシウムが10wt%)を加え、吉田機械興業製の高圧分散装置「ナノヴェイタNV−200」を用いて200MPaの圧力下で10パス分散化を行った。このようにしてワニス状の複合樹脂組成物を調製した。
得られたワニス状複合樹脂組成物を用い、ガラス基板上にバーコーターを用いて乾燥膜厚が40μmとなるよう塗布し、真空乾燥機内で真空下(減圧度10mmHg以下)、300℃×1時間乾燥し、室温へ冷却後、ガラス基板より剥離させ、ポリイミド系成形体(フィルム)を得た。得られたポリイミド系成形体(複合化フィルム)の線膨張係数、全光線透過率、ヘイズ、ガラス転移温度及び機械的特性の測定結果を表1に示す。なお、得られたポリイミドフィルムをX線回折分析したところ、ポリイミドフィルム中の水酸化マグネシウムの一部が酸化マグネシウムに変換されていることが確認された(
図2)。
【0125】
実施例2
製造例5に記載のポリアミド酸ワニス100gに製造例2に記載の水酸化マグネシウム微粒子1.67gを加え、吉田機械興業製の高圧分散装置「ナノヴェイタNV−200」を用いて200MPaの圧力下で10パス分散化を行った。このようにしてワニス状の複合樹脂組成物を調製した。
得られたワニス状複合樹脂組成物を用い、ガラス基板上にバーコーターを用いて乾燥膜厚が40μmとなるよう塗布し、真空乾燥機内で真空下(減圧度10mmHg以下)、300℃×1時間乾燥し、室温へ冷却後、ガラス基板より剥離させ、ポリイミド系成形体(フィルム)を得た。得られたポリイミド系成形体(複合化フィルム)の線膨張係数、全光線透過率、ヘイズ、ガラス転移温度及び機械的特性の測定結果を表1に示す。
【0126】
比較例1
製造例4で得られたポリイミドワニスを、ガラス基板上にバーコーターを用いて、乾燥膜厚が40μmとなるよう塗布し、真空乾燥機内で真空下(減圧度10mmHg以下)、300℃×1時間乾燥し、室温へ冷却後、ガラス基板より剥離させ、ポリイミド系成形体(フィルム)を得た。得られたポリイミド系成形体の線膨張係数、全光線透過率、ヘイズ、ガラス転移温度及び機械的特性の測定結果を表1に示す。
【0127】
比較例2
製造例5で得られたポリアミド酸ワニスを、ガラス基板上にバーコーターを用いて、乾燥膜厚が40μmとなるよう塗布し、真空乾燥機内で真空下(減圧度10mmHg以下)、300℃×1時間乾燥し、室温へ冷却後、ガラス基板より剥離させ、ポリイミド系成形体(フィルム)を得た。得られたポリイミド系成形体の線膨張係数、全光線透過率、ヘイズ、ガラス転移温度及び機械的特性の測定結果を表1に示す。
【0128】
比較例3
水酸化マグネシウム微粒子を製造例3に記載のものに変更した以外は実施例2と同様の方法でワニス状の複合樹脂組成物を得た。
得られたワニス状の複合樹脂組成物を、ガラス基板上にバーコーターを用いて、乾燥膜厚が40μmとなるよう塗布し、真空乾燥機内で真空下(減圧度10mmHg以下)、300℃×1時間乾燥し、室温へ冷却後、ガラス基板より剥離させ、ポリイミド系成形体(フィルム)を得た。得られたポリイミド系成形体(複合化フィルム)の線膨張係数、全光線透過率、ヘイズ、ガラス転移温度及び機械的特性の測定結果を表1に示す。
【0129】
【表1】
【0130】
表1の結果からも明らかなように、実施例1及び実施例2で得られたポリイミドフィルムは、比較例1及び比較例2で得られたポリイミドフィルムと比較して、Tgが向上し、線膨張係数が低減していることがわかる。また、実施例1及び実施例2で得られたポリイミドフィルムは、全光線透過率は88%以上、ヘイズが5以下であり、高い透明性を保持していることがわかる。さらに、比較例3の結果から、有機成分含有量が0.1%と少ないと分散性が低下し、ポリイミドフィルムの全光線透過率が低下及びヘイズが上昇することがわかる。